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第80話 自己弁護

「そこは魔神を復活させるための研究施設だったんだけど、魔力がない特異体質だから研究対象って感じかな」


 そこで行われた非道の数々については、なるべくオブラートに包んで僕は伝える。


 人体実験のように扱われた日々。

 消えていく他の被験体。


 禁呪に魔力を吸われ死んでいく人々。



 僕は意図的に忘れようとしていたものを、今回の一件で完全に蘇ってきた。



「多分これは客観的な評価で、僕は年齢の割にはとても優秀だったんだよ。他の魔力がない子供も僕以外に5人くらいかな、いたんだけど」


 あの時はなるべく思考を凍らせて如何に感情を殺しているかに必死だったけれど、今にして思えば疑問が出てくる。


 何故、魔力がないのは僕と同年齢の子供だったのか。

 後にも先にも僕と同様の体質、魔力0の人は追加されていない。


 つまり、こう考えてもおかしくはない。

 僕らが生まれたタイミングで、何かが起こって魔力がなくなった?


 いや、実際のところよくわからない。

 


「禁呪っていうのは基本的に他人の魔力を媒介にするけれど、そもそも術者は自らの意志では解除できないように仕組まれている。原理は知らないけれどドクター……僕を監禁した男が言うには、多分禁呪と術者の魔力が結びついてしまうらしい」


 つまり、発動した時点で術者も死ぬことが確定する。

 まあ正確に言うと、前に僕がやったみたいに足を切断すれば生きることはできるわけだが。


「その中で、魔力がない人間が術者の場合には、魔法陣から出るだけで解呪できるわけ。こうして僕は禁呪をいくらでも発動できる存在となった」


 やろうと思えば、今だって禁呪を行える。

 発動させることのできる呪文を知っているし、誰かが魔力供給さえしてくれればいつだって。


「解呪しなくてもドクターからしたらよかったみたいだけれど、しかし得られる情報量は多少増えるからという理由で僕が来てからは殆ど僕が禁呪を発動させていた」


 僕の前任者は同年代の少女だったみたいだけれど、先に心が壊れたみたいだ。

 まあ、自分の周りにいる人々が魔力を吸われて死に続けていくわけだしね。


 僕はその前の時点である程度心が壊れていたわけだし、なんとも思わなかった。いや、思わないとやってられなかっただけかもしれないが。



「でも、いくら経っても魔神は復活できなかった。なんでだろうね」


 答えは、恐らく依り代以外での復活というのは望めないからだと思う。

 それかそもそも魔神復活のための魔力が足りていないか。


 でも、僕が知っている間でも何百人かが死んでいると思う。

 これも後程知ったのだが、あの施設は王立研究所であり死刑囚や罪人などを処分していたみたいだ。



「そして痺れを切らしたドクターは、何を血迷ったのか。自分自身で禁呪を発動させたんだ」


 今にして思えば、あれは何かに操られていたのかもしれない。魔導協会本部でも洗脳されていたような話を四人の幹部は言っていたし、そうなのかもしれない。


「その時、僕は自然と体が動いたんだよ」


 この男に魔法を発動させてはならない。

 僕は部屋にあった、巨大な斧を使ってドクターを真っ二つにしたと。


 今は多少鍛えているから扱えるのかもしれないが、あの時はまだ8歳だし遠心力でなんとか振り回しただけだ。

 だからこそ太腿辺りを一刀両断された。



「モカちゃんは後々聞いていると思うけど、僕にとって魔導評議会で幹部の脚を切断していったのは二回目だったってことだ」


 正確にはそれ以外に解呪の方法を知らなかったわけだが。

 思い切り捩じ切ったからか、ドクターは偶然にも魔法陣を踏まずに転がり、近くのランプは倒れて火の手が上がった


 ドクターからしたらダメージを負うことなど想定外だったようで、僕は近くにあったランプを次々と叩き落して研究所を燃やした。


 他の職員は火災を止めることに必死になっていて僕を止めるどころではなかったようで、何とか逃げ出すことができた。


 命からがら逃げだした僕は、その後にレイナさんに救われてこの森に引っ越してきたと。



「その時にレイナさんにプロポーズをしたけれど見事玉砕をして、そこから僕は年上のお姉さまが好きになりました、と。これでおしまい」


 なるべく最後に笑えるような、適当に冗談を言ったつもりだったのだが、見事に滑った。

 誰もが無言で僕の言葉を聞いており、この空気感をどうすればいいんだ。


 ちらりとレイナさんを見るが、彼女は呆れたようにため息をついていた。



「何故かずっと僕は勘違いされ続けていたんだけれど、僕には全く戦闘能力なんてないし、魔法も使えない、壊れた人形なんだよ」



 気が付いたら、元弟子と忍者娘が静かに泣いていた。

 そんなに泣けるほど面白い話をした覚えはないんだけどな。


「間違って舞台に上がってしまったそんな人形は舞台袖に引っ込もうかと。正直一生裏方で、レイナさんの介護をして余生を過ごすつもりだったんだけど、なんかレイナさんに勝手に二つ名をつけられたり、弟子を取らされたり、忍者衆の頭領にさせられたり、五大賢人にされたり、魔王軍幹部が来たりすることになってたと。困っちゃうよね」


 こう思うと、僕の最近はすごいサクセスストーリーっぽい。

 でも、別に僕は平穏な毎日を過ごしたいわけで、そんな風に楽しみたい方にはぜひとも変わっていただきたい所存だ。


 あくまでも、静かに、のんびりと、穏やかに生きていければいいのに。



「隠していたのは謝るよ。前に迫害を受けていたから怖かったんだよ。でも、君たちが勝手に勘違いしたんだ。君たちが悪い、僕は悪くない」


 なるべく明るく、なるべく生き生きと、なるべく溌溂(はつらつ)に僕は言い放った。


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