第77話 おやすみなさい
「ゼロ様、助けにきました!」
……マジか、というべきか。
レイナさんが単機突入していなかったのか。
涙が出ているけれど、予想外な展開に僕の頭は一転クリアになる。
「こいつを殺せ!」
僕を見て、その惨状に一瞬怯んだ様にアヤメちゃんは固まるが、ドクターの声にクナイを構えなおす。
天井に向けられた声はうめき声で呼応するように、上からカメレオン軍団が落ちてくる。
……いやいやいや、5匹なんて見分けがついていなかっただけか、僕の感度の悪い耳には10体以上落ちてくる音が聞こえてきた。
僕とアヤメちゃんを殺すために突っ込んでくるのだが、ここでまた更なる邪魔が入る。
まるで『僕の内側』から出現する様に、そして僕らを膜で囲うように『銀色の液体』が一気に広がる。
球体が完成すると同時にカメレオンが多数のしかかってくるが、まるで鋼鉄のように全く攻撃を通さない。
「……ロミアちゃん。どこに……隠れていたの」
僕の内側という表現は微妙だが、服の中から出現したように見えるんだけど。
それだったらもっと早く助けてくれても、とか思ったりもしたが……
「失礼します。一部をゼロ様に隠していたので、何が起こっていたのかは把握できていませんでしたが、これはまた随分と」
死にかけといいたかったのかもしれないが、液体は流石に黙った。
……死にかけてもわかる、隠していたってなんでだ、というかいつからだ。
「エルザさんと【支配者】、アヤメも来ています。あとペガス君も」
くノ一が僕に状況を説明してくれる。
液体が一旦解除され、カメレオンたちが距離を取っているようだ、特にドクターを守るように複数体が盾になっていると思う。
もう瞼が上がらないからよくわからない。
「な、なんなんだよこいつら……」
「貴方が、私の仲間を傷つけたのですね? 万死に値する」
怖い……ロミアちゃんの声が怒りに満ちている。
何か一瞬閃光が入ったかと思うと、カメレオンが両断されている。
多分ロミアちゃんの姿が全然別の位置にいるから、高速で動いているの……か?
ドクターは明らかに狼狽した様子で自分の切断された腕を未だに見つめていたが、ロミアちゃんの出現で慌てたように一体のカメレオンに飛び乗る。
「かった……」
その様子を見ることなく、アヤメちゃんは僕の鎖を破壊しようと試みているが魔法で強化されているのか、椅子すら破壊できない。
更にアヤメちゃんが入ってきたであろう入口側の壁一面がバラバラに粉砕され、僕の身長よりも大きいハルバードを持ったエルザさん、慌てた様子のセリカちゃんとモカちゃんが走ってくる。
……どうやってそんな馬鹿でかい斧を操っているんだ。
「アヤメ、任せて!」
ロミアちゃんが数多くのカメレオンを相手にしているのを見て、エルザさんとモカちゃんが加勢しに行き、セリカちゃんが僕の鎖を掴む。
「あ、りがと……」
「だ、大丈夫ですか!?」
鎖を外された僕だったが、そのまま崩れ落ちる。
美少女二人に支えてもらって、何とか引きずられていく。
息をのんだ様なセリカちゃんの反応を感じつつ、二人の少女の体温を感じて初めて自分が救出されたのだと思えてくる。
「ド、クターは?」
ここで漸くドクターの確認をするのだが、僕は薄い目を開けるけれど、最早あの男はいない。逃げたのか……レイナさんから逃げられるとは思わないが。
「何こいつら、硬すぎるんですけどー!」
モカちゃんが何やら叫んでいるが、その眼前では人の顔面を備え付けたカメレオン同士が正面衝突している。
多分、精神支配して同士討ちにしているの……かな。
「本当ですよね!」
ハルバードを振り回してカメレオンの喉元を狙うが、深手を負わせるものの切断させることはできない。その分衝撃で壁にたたきつけられている。
如何にロミアちゃんの攻撃力が高いということがわかる……流石魔王軍幹部だ。
「い、今回復魔法使いますね!」
「いや、いい……意味ない、から」
僕は薄れゆく意識の中で、セリカちゃんに断りを入れる。
今更、僕に対してそんな無駄な魔法を使わなくていいんだ。
なんか、安心したのか急に全身が痛い。
左腕とかなんで逆向きに曲がってんだよ、いたいいたいいたい。
え、待って。死ぬよこれ。マジで死ぬ。
「セ……セリカちゃん」
「なんですか! 無理して話さないでください!」
「おやすみ」
僕はもう無理なので、意識を素早く手放した。




