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第67話 末の静寂

「サイオンさん、これは?」


 帰宅して数日、サイオンさんが何かものすごい量の紙束を持ってきていた。

 因みにレイナさんは少し前から遠出をしているようで結構時間が経っているのだが、かなり大変な仕事をしているようだ。


 セリカちゃんは自宅に、ロミアちゃんも魔王城に戻っているようなのでまた久し振りにのんびり独居生活だ。



紙束を見ると全てオーテルダムから来たもので、オースティン卿からの苦情だった。

 如何にして僕が資料を盗んだだの、義賊を味方しただの、火事の弁償をしろだの、謝罪しに来いだのもう途中で読むのが面倒になってきた。


 これが魔導評議会に送られてきたようで、向こうがクレーム対応してくれるものの一応僕の方に送ってきたようだ。

 そして僕は暇であり、そしてサイオンさんも時間が空いていたみたいなので紅茶に誘っていた。無言ではあるが会話にならないわけではない。



「……まったく、暇な人だ」


 これだから貴族は……ということではなく、この人の本質なのだろう。

 多分全て自分の思い通りに行くと信じて疑わない、周りの責任であるということか。



 僕は紅茶を一口含み、一応は全部目を通した。

 でもやはり有益な情報があるわけでもなく、大半が残念な文章だった。



 ただ、その中で一つだけ気になる文章があった。

 火事に伴い、雇っていた使用人や部下たちがこぞってやめたことへの慰謝料を要求するものだった。


 そうか、義賊の人々はやめていったのか。

 そこからどう変わるのかは知らないが、勝手に頑張ってください。



「サイオンさんはオーテルダムには行ったことは?」


 あるみたいだ。


「リゾート地って何か僕は落ち着かなくて嫌です。それならこうやってのんびりしている方が一番助かるというか」


 それもそうだ、とでもいうように頷くサイオンさん。

 確かに彼がのんびりしている姿は全然イメージできない。


 歴戦の戦士は引退しても、その強靭な肉体は維持されている。【運び屋】という異名の通り、どこにでも運びに行くからかなり危険な場所にも行くようだ。

 基本的にはレイナさんの専属に近いけれど、たまに他でも仕事をしていると聞いたことがある。

 


「そういえばサイオンさんって禁呪について何か知っていますか?」


 沈黙する鳥人族。

 それは知らないという意味なのだろうか、それとも話す気がないという意味なのだろうか。

 微細な変化でも僕は読み取れるけれど、流石に変化がないのはわからない。


 うーんと僕は反応に困っていると、彼は懐からメモ帳を取り出して器用に文字を書いていく。


『レイナに話してみればいいのでは?』


「それもそうですが……少し忙しそうなんですよね」



 サイオンさんは苦笑している。

 どういう意味なのかはよく分からないが。


『お前が言えば、すぐにでも帰るだろうに』


「どうなんですかね」


 そんな雑談をしながら、サイオンさんと会話……筆談による僕らのコミュニケーションが続いた。





 僕は一人、寝る前に考えていた。


 ……禁呪。

 最近随分とその話題が増えた気がする。


 元々は魔神が使用していたとされる、自己以外の他者の魔力を用いる特殊な魔法。強大な力と引き換えに、その他者の魔力を無念に吸収し続ける。

 また、術者は魔法陣の中に囚われ、魔神以外には自由に魔法を解くことはできないとされている。


 今は禁呪が書かれた魔導書については全て魔導評議会で保管することが決まっているが、それでもそのすべてを収められているわけではない。

 特に前回のブーザー教団のように評議会と敵対するような組織は協力するわけでもなく、噂では王族も何冊か持っているとも。

 その魔導書は誰が書き記したものなのかも伝わっていないが、何故かその魔導書は誰でも読むことができるというものだ。



 僕は前にブーザー教団の幹部らしい奴らの足を切断することで助け出したのだが、あの時に謎の黒い触手のようなものが出ていたらしい。

 さて、あれはなんなのか……



 そして今回、オーテルダムで入手した資料で新しいことが分かった。

 そもそも禁呪とは何なのかとか根本にかかわるものだった。何故今更そんな資料が発見されたのかはわからない。


 どうしてもタイミング的に裏を考えたくはなるのだが、今は大事なことではないと思っている。



「魔神を復活させるための魔法……とはね」


 禁呪によって吸収される魔力が魔神への供物となる。

 その報酬としてとんでもない魔法を扱うことが許されるという事だ。


 これは資料には書いていなかったが、魔神はそもそも実態があるものではないのだ。何者かに憑依することによってその実体が認められるのだが、魔神という名にはそぐわない事実だ。


 所謂世間的には魔神というのは魔王の中で格段に危険な魔族、禁呪を使うという認識だが実際には違う。

 魔神と始めに呼ばれたせいで混同されることもあるが、魔王にその『魔神と呼ばれる何か』が憑依したことによって魔神と呼ばれるようになったのだ。


 その憑依されたものを依り代と呼ばれていて、魔王からの言葉で既に何者か、魔神になる可能性があるものがいるらしい。



「……魔神が復活する日も近い、か」


 そう考えると、魔導評議会を襲ったブーザー教団のボスというのが『魔神と呼ばれる何か』の依り代になっているんだと思う。

 依り代がそもそも『魔神と呼ばれる何か』に操られているのか、自ら復活させようとしているのかはわからない。でも、厄介なことだ。



 実は僕は、そこまで心配していない。

 だって、レイナさんがいるのだから。


 あの人で無理なら、多分世界は滅ぶだけだ。


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