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第57話 事の発端

「……はい? バカンスですか?」



 僕はまた魔導評議会から呼び出しを受けていた。

 まあ、気が付いたら僕も一員になっていたのだから拒否権は与えられていなかった。


 レイナさんと五大賢人、その護衛の合計11人の中で僕は素っ頓狂な声を上げていた。

 11人というのは、僕の護衛はいないからだ。


 館にはセリカちゃんがいたわけだが、流石に彼女を護衛として本部に呼ぶ気にはなれなかった。彼女はすごく期待したような表情だったけれど。



「ああ、前回の事件の功労者への慰安旅行ということだ」


【粉砕者】が説明してくれた。

そしてモカちゃんが一緒に同行する様に声を上げるが、【猛吹雪】からぴしゃりと言い放たれる。


「貴女はこの前休暇を取ったのよ。これは彼への贈り物」


「えー! 【不可視】君と一緒に行きたかったのに!」


 因みに彼女の休暇は僕への館にきたことで消費されていたらしい。つまり、今回の旅行は1週間前後だろうか。

 そしてそもそも僕は警戒しているのだが、何故魔導評議会でわざわざ慰安旅行を提供してくれるのか、確実に裏があるわけだ。



「是非セリカとかも誘ってやれよ。全部金はこっちで出してやるから」


 こっちというのは魔導評議会のことなんだろう。

 というかレイナさん、それは完全に公私混同してませんか?


 別にいいけれど、僕は頬杖を突きながらなんて返答をしようか考える。

 正直拒否するのも面倒だけれど、わざわざ見ず知らずの土地でバカンスというのも考え物だ。


 僕からしたらいつもいる館でのんびりすることが一番休めるのに……



「……で、皆さんは僕に何をさせたいんですか?」


 先に聞いた方が話が早いと思って質問する。

 実際のところ、レイナさんに行けと言われたら答えは一つしかない。


 【要塞】はいつも通り顎鬚を撫でている。


「ほぅ、話が早いのぅ」


 いや、僕は行くとは一言も言っていない。単純に先に質問をしただけだ。



「まったく、せっかちだねぇ。物事には順序ってものがあんだろ?」


 あんたが言うか。

 僕にとんでもない修行をさせまくった師匠、あんたがそれを言うか!


 とは思ったけど、表情には出さない。出していないつもりだ。それに、最近は全然そういう修行はない気がする。


 ……もしかしたら最後はセリカちゃんを弟子にさせたことだろうか。



「どうせ拒否権がないんだから先にバカンスの行き先くらい聞いたらどうだい」


 バカンスに拒否権がないってどういうことだよ。

 それはもはや慰安旅行ではあるまい。


 レイナさんは後ろに控えているエルザさんの方をちらりと視線を向ける。

 あ、そういえばエルザさん復職したんだ。


 僕と眼を合わせてくれないエルザさんは一枚の紙を取り出してつらつらと話し始める。


「【不可視】様には南の都市、オーテルダムへ向かっていただきます。そこではおよそ1週間のバカンスの予定となっています。オーテルダムは観光都市で海でのレジャーや大自然の満喫、歴史的な建造物など多数ありますのでそこで先の事件での疲れを慰安していただく予定です」


 ……うん、結構時間たっているから疲れも残っているわけもないし、そもそも僕は何もしていない。

 海とは巨大な湖のようなものだが塩分の多い水によって構成されているという知識は知っているが、行ったことがない。少しだけ興味はあるものの、そもそも僕の住んでいるところが十分に大自然なんですけど。


 僕が不満そうな表情をしているのがわかったのか、【粉砕者】は苦笑いをしながら言い足す。



「君が勤勉な学習者であるということを【皇帝】から聞いている。たまには外の世界で歴史的な文献についても学ぶというのはどうだろうか。興味深いものもあるだろう」


「まあ、本や資料を読むのは好きですが」


「有名な博物館もある。そこからは五大賢人の名で貸し切りにしておこう」


 ……うん、確かに拒否権はないんだけど。

 ないんだけど、勝手に周りでとんとん拍子に決められると、捻くれ者の僕からしたら何とかしていかないという可能性を模索したくなる。



「それでだな、【皇帝】の護衛であるエルザ嬢がそちらの方出身という事で同行してもらうことにした。それ以外のメンバーは君が自由に選びたまえ。10名程度であれば許可がでるはずだ」


「なんか今館にロミアもいるみたいだからそいつも連れとけ」


「…………」


 僕は閉口せざるを得なかった。

 なんでロミアちゃんのことを知っているんだ。レイナさんには一言も言っていないはずなのに。


 当のレイナさんは腕を組みつつ、テーブルの上に足を乗せながら足を組んでいる。はっきり言ってマナーとしては最悪なのだが、ここまでの美女がやると絵画のようにずっと見ていられる不思議な感じがする。

……じゃない。見惚れている場合ではない。


 ということは多分ロミアちゃんが魔王軍幹部であることもばれていると考えるのが自然だが、それでもレイナさんが大して何も言わないし今回のバカンスに連れていけということは害があるわけではないとの判断だ。



「……わかりました、わかりましたよ」


「いい返事ね」


 【猛吹雪】が静かに言うのだが、完全に皮肉に聞こえてしまう。僕はやけくそで言っているのだから。


「出発はいつですか? 今からとか言わないですよね?」


「いや、【不可視】君。流石にそんな急なわけないでしょ……」


 エルザさんが声には出さないが少し笑みを浮かべた。これはレイナさんの滅茶苦茶具合を知っているからだろう。



「そのあたりについては追って知らせる」


 はぁ……セリカちゃんとロミアちゃん、エルザさんの4人。

 傍から見たら美女たちに囲まれてのバカンスだけど、気が進まない。


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