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第50話 再会

「…………これは、どういうことなんだ」


 気がついたら二人がいない。

 いや、これは流石におかしい。え、どういうこと?


「え、セリカちゃん? モカちゃん?」


 少し戻ったところにもいない。

 いや、流石に僕が先頭に立って後ろに並んで二人がいたはずなのだが、数秒間見てないうちに姿形全くなくなっている。


 二人が僕に何も言わずにいなくなるなんて常識的に考えられない。

 そもそも僕しか道を知らないのだから、ある意味自殺行為だ。


 ……二人が僕への悪戯という候補も即座に消す。

 モカちゃんがセリカちゃんにする可能性はあっても、僕にやるとは思えない。



 待て、どうする。

 僕は自由に森の中を歩けるが、ここで動くと本格的に向こうは迷子だ。


 深くため息をついて、僕は目を閉じる。

 こういう時こそ冷静に考えろ。頭はクールに動かし続けなくては。


 誘拐の本線も否定。

 二人が全く声を出せない状態で誘拐されるとは思えない。モカちゃんはあれでも五大賢人だ。



 仕方ない、ネーカを呼ぼう。

 彼女の住処からは遠いが、少し戻れば僕の笛が聞こえる範囲だろう。


 彼女の鱗から作った特別な笛で、普通の人には全く聞こえない波長らしい。



 僕は大急ぎで元来た道を戻り、それまでに二人が見つかればよし、無理であればネーカに捜索してもらう。

 これが一番無難なはずだ。



「ぜろ、ドウシタノ」


「ごめん、遠くまで呼び出して。急いで女性二人を探してほしい」


 僕は彼女に二人の特徴は説明する必要はない。

 そもそもネーカは温度と振動で探知しているから、二人分の体温を探してもらうのが一番早いはずだ。



「迷子?」


「日が暮れる前にとりあえず探さないとまずいでしょ」


 ネーカは僕をひょいと頭の上にのせて、するすると森の中を進んでいく。

 僕はもう見つけたのかと確認すると、肯定が帰ってくる。


「チョット遠メ」


 それもそのはずで、僕がそもそも大蛇を呼び出すためにかなり家の方まで戻ってきたから仕方ない。

 僕だって二人の命がかかっている以上悠長には構えられなかった。



 僕が走って戻ったスピードよりも何倍も速く森を抜け、その間にモンスターがいれば容赦なくなぎ倒していく。



「……いた!」


「ゼロ様!」

「ゼロ君!」


 二人仲良く僕を視認して安堵の息を漏らす。

 そしてモカちゃんの表情は凍り付く。


 まあ、緊急事態だったから仕方ないよね。


「コノめす見タコトナイ」


「うん、僕の友達でモカって言うんだ。セリカちゃんと同じで食べたらだめだよ」


 モカちゃんは自分よりも小柄なセリカちゃんの後ろに隠れてしまった。

 ネーカはそこまで気にしていないようで、首をかしげる。

 そしてその動きで僕は頭の上から滑り落ちて受け身を取りながら地面に着地する。



「二人とも、なんでここにいるの? 僕の後ろについてきてたと思ったのに」


 二人がいたのは、迷子になったとわかった場所からかなり離れていた。

 しかし、山を見れば最悪行先はわかるはずなのに、何故だ。


 更に二人が口を揃えてこう言うのだから困った。



「ゼロ君が急にいなくなったんだよ?」


「はい、ゼロ様が急に消えてしまって、それではじめは止まっていたのですが、家の方向に戻ったほうがいいかなって思って」


 ……僕がいなくなった?

 いや、僕はずっと前を歩いていたはずだし、そもそも僕は君らの姿は振り返らないとわからないけれど、君らからしたら僕の姿はずっと見えるはずだ。


 キツネにつままれたように僕はキョトンとした表情だっただろう。それで二人も更に不思議そうな表情を浮かべた。



「……とりあえず一旦戻ろうか。うーん、こんなこと一度もなかったんだけど」



 一つ、最低でもわかることとしてこれは普通の状態ではない。

 原因もわからずに同じことをするほど僕は間抜けではない。



「二人とも別に怪我はないんだよね?」


 モカちゃんにはまだネーカの危険性について話していないので、一応目で近づかないように牽制しながら、ダメージを追っていないか確認する。

 とはいえ、モンスターが近くにいなかったことから問題なさそうだが。


「大丈夫だよ、でも怖かったぁ」


 流石に今からわざわざ歩いて帰るのも嫌なので、ネーカの頭の上に乗せてもらって移動することにする。

 モカちゃんは、セリカちゃんにしがみつくように震えながらネーカの上に座っている。


 前回レイナさんの時もそうだったけど、行きは時間がかかるのに何故帰りはこんなにも楽なのだろうか……

 

「ネーカ、ありがとうね。また今度会いに行くから」


「ウン」


 表情は変わらないが、ネーカは多分嬉しそうに森の中に消えていった。

 基本的に彼女は僕が何か頼むと嬉しそうに引き受けてくれるから、頼りにされたいんだろう。



「モカちゃん、大丈夫?」


「…………あの大蛇、何?」


「さぁ? どんな種類かは僕も知らないけど」


 モカちゃんが言いたいことは違ったらしい。

 青ざめた表情のまま、両腕を自分の身体を守るように巻き付けている。



「……ごめんねゼロ君。あの大蛇、なんか思考が何個もあるみたい? デジャビュ……みたいなのが多すぎて気持ち悪くなった」


 何が言いたいのかよくわからないし、多分モカちゃんもどういえばいいのかもわからないようだ。


「ゼロ君が大好きだし、その思いは胸やけするくらい一致しているんだけど……」


「とりあえずご飯でも食べて落ち着こうか。アル君が作ってくれてそうな匂いもするわけだし」



 僕らは館に戻っていった。


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