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第46話 何やら避けられました

「ゼロ様、戻りました……」


 非常に怖がりながらセリカちゃんが戻ってきた。

 別に彼女に対しては何も声を荒げていないけど、僕の気配を感じ取ったのかも知らない。


「一応紹介しておくね、ロミアちゃん」


 ざっくりとこれまでのあらましを説明する。ただ、彼女が魔王軍の幹部であるという事だけは言わないでおく。

 新しい五大賢人である【不可視】が気になって化けて遊んでみたという設定だ。


 何故これを説明するのか、ロミアちゃんは少し不思議そうだった。

 僕からしたら、それは至極当たり前だ。


 ある意味、これはけじめみたいなものだ。


 だってロミアちゃんのことを秘密にしていればアヤメちゃんが出会った人は誰なのか、セリカちゃんだと思っていた人を疑い続けなければならない。

 それで二人の仲が悪くなっても嫌だ、別に僕はロミアちゃんのことを裁く気もないし裁く権利はないと思う。



「ほえ?」


「誠に申し訳ありませんでした」


 全くの予想外ということで、セリカちゃんはとても不思議そうな顔をしていた。


「ま、今後も多分遊びに来ると思うけど、仲良くしてあげて」


「わかりました、私セリカって言います。ゼロ様の一番弟子です!」


 二番はいないけどね。

 しかし、セリカちゃんは素直な子ですごくよかった。僕だったらこんな怪しいこと言われても信用なんてできないわけだし。

 自分の姿に1ヶ月も変装されていたとか怖すぎる。



「ありがとうございます、お優しいんですね」


「い、いえいえ! そんなことないです!  それに……」


「それに?」


 セリカちゃんはすごく真剣な口調になる


「……どうやったらスタイルよくなるか聞きたいです!」


 ……なんで君はそう一番聞く意味のない子に質問するんだよ。

 せめてモカちゃんとかに聞いてみればいいのにさ、液体の女性にそれは。


 余程おかしい質問だったからか、おかしそうに上品にロミアちゃんは笑った。


 そして少しだけ三人で話したのち、またセリカちゃんには二人を迎えに行ってもらうことにした。

 流石にモカちゃんも凹んでいそうだし、かまってあげよう。



「一つ、重ねてお礼を申し上げます」


「何が?」


 ロミアちゃんは笑みを消していて、表情からしても圧倒的に真剣だ。

 僕は流石に茶化さないように心掛け、椅子に深く座りなおして姿勢を正した。



「あなたが私のことを友人と言っていただいたことです」


 それにどんな意味があったのか。


「油断していたとはいえ【支配者】に恐らく心を読まれていますし、私が魔皇帝軍の幹部であることは読まれているでしょう。」


 うん、なんか全然僕の思っていない話の展開になっている。普通に友達って言ってくれて嬉しいなみたいな話かと思っていたのに。


 でも、表情から見ても冗談を言っているような雰囲気ではない。


「そうだろうね、でも公言はさせないよ。そんなの許されることではない」


 幹部はおっとりと笑う。



「今魔皇帝軍と人間軍は停戦協定が結ばれていますし、その状態で五大賢人の一人に刺客を送ったとなると、戦争になることは避けられませんでした。だからこそばれそうなときには逃げろと私が言われているわけですし」


……それもそうか。

そういえばそうだ。僕はなんもそんなことを考えていなかったけど、そうだわ。今停戦状態だった。


「ただ、今回ゼロ様、あなたが私のことを友達と言ってくださったので最悪の事態は避けられそうです」


「お、おう……」


「私たちも勿論人間と戦う気はありません。だからこそ細心の注意を払って私を送り込んでいるのです。」


 こう見えても、私、強いんですよ?とロミアちゃんは指を融合させて一本の剣に変形させて僕の首筋に寸止めする。

 本気で殺そうとすればすぐにでも殺されそうだ。

 それはそうか、幹部ってことはある意味魔王軍でのナンバー2の一人という事だ。魔法も使えない一般人相手にするには十分すぎる。


「勿論僕もだよ。それに僕はね、美人には弱いからなるべく穏便にしたいんだよ」


「私の変身を解除してもそう言ってくださるのですね」


 すごく嬉しそうに言ってくれる。

 別に僕からしたら、話が通じる相手であれば蛇だろうが、液体だろうが、魔王だろうが、魔神だろうがなんでもいいんだよ。


「そうだ、数日でいいんだけどみんなと一緒に過ごしてみない?」


「え?」


「僕がモカちゃんにしっかり話してみるから、五大賢人の彼女の誤解が解けてから帰ったほうがいいと思うんだ」


 もしもあやふやの状態になると、先走って魔王軍が攻めてくるとか、人間軍が攻めてくるとかとんでもないことになりそうな気がするのだ。

 早めに危険な芽をつぶしておいた方がいい……絶対にいいのだ。



「よろしいのですか?」


「別にそれは僕の許可じゃないと思うよ。ロミアちゃんがどう思うかどう考えるかってことだと思う」


 ロミアちゃんはここで生活してきて、初めて満面の笑みに変わる。

 大人びている風貌ではあるものの、あどけないいい笑顔だった。


「あなたの友達になれて幸せです」






「あ、すごくいいことを言ってもらったところだったけど、最後に思い出した。ロミアちゃんがセリカちゃんに化けている……というか絶対に別人だって思った点が一つ」


「なんでしょう?」





「セリカちゃんはね、ロミアちゃんみたいな『まともな料理』は作れないんだよ」




 こうして僕は、偶然にも魔王軍と人間軍の戦争を回避することに成功したようで、新たな友達が一人?増えたのだった。


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