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第45話 乱入されました

そして僕は他の状況証拠を話していく。


 そもそもレイナさんに弟子入りしようとするセリカちゃんが、彼女と話すのに緊張するようなタイプではないこと。

 そしてセリカちゃんは自分の父親をお父さんと呼んでいたこと。

 包丁がダメだったはずなのに、小さなナイフではなく普段僕が使っている包丁を手にしていたこと。

 

「あとね、これはレイナさんしか知らない秘密なんだけど」


 正直言うと秘密にしているわけではなく、僕が話す人がいなかっただけだ。

 

「僕は周りに気配があると全く眠れないんだ。勿論寝てても起きるわけだけど。ロミアちゃんが来て数日、ずっと夜寝かせてもらえなかったんだよ。おかげで僕は寝不足だよ」


 勿論アヤメちゃんが僕の館を探索する可能性を否定はしない。ただ、レイナさんの館を自由に出入りできる彼女が、わざわざ僕がいるタイミングで侵入する方が可能性は圧倒的に低いだろう。

 であれば、この館にいるもう一人を疑うのは当たり前の自明だろう。


「形態を変えていてもわかるものですか……それはお見逸れしました」


「それにね、完全に君が偽物だってわかったのはペガス君に出会ったときかな。実はそれまで」


「…………」


 ペガス君は二人を前にしてかなり威嚇していたが、つまりそういうことなのだ。

 その時点ではかなり怪しいとは思っていたからこそ、示唆する所見としては十分だった。


「それにね、セリカちゃんは前にネイカに会った時にもおぶっているんだよ。そしたらなんで急に今回は断ったんだろうか」


僕にはわからないが、例えば、触れられてしまうとばれてしまう状況なのだろうか。それだったらアヤメちゃんがはじめ抱き着いていたから考えにくい。また、体温なども考慮するが、それもアヤメちゃんが触れていたわけだし違和感くらい抱きそうだ。

 それならば……

「例えば、体重は変えられないとか」


「…………かなり警戒していましたし、なるべく気を付けていたはずなのですが」


 降参する様に両手をあげる。

 元々からロミアちゃんに戦う意思は見られていないが、よりやる気なさげだ。


「ロミアちゃんの本体が液体だとしたら、密度によって体の大きさとか変えられるとはもうんだけど、やっぱり無理なんだね。だからこそ僕におぶられるわけにはいかなかった」


 と、まあ色々理由をそれっぽく話してみたけど、結局答えがわかっているからこその答え合わせだ。

 一から答えを出しているわけではない。



「さて、まあこの話はそれくらいにして。なんでこの館に侵入したの? 僕らに危害を加えようとしているならいくらでも機会はあったはずなのに、それはしていない。何かを探していた?」


 ロミアちゃんは腕組みをするのだが、胸元が下から押し上げられるようだ。まあ液体が本体だとしたら彼女は自由に好みに合わせて体格が変えられる。


「魔皇帝より、あなたを調べるように言われていました」


「……僕?」


 頷く幹部。

 流石にそれは予想外だった。僕はてっきりレイナさんの偵察でもするのかと思っていたのに。


「私の能力で、対象が魔力を展開すると、その魔力や見た目をコピーすることができるのです。そうやってセリカ様のもコピーさせて頂いたのですが」


 ……なんという強すぎる能力。そして彼女の説明が続くが、自分の魔力量を越えられるものではなく、あくまでも自分に合わせてコピーできるようだ。


「レイナさんのをコピーしたらどうなるの?」


 彼女は初めて表情を崩す。それは苦悶、苦悩、苦痛などあまりよい感情ではなさそう。


「彼女の魔力は……よくわかりません。十人十色、自由自在と言いますか……気持ちのいいものではないのでもう嫌ですね」


 言葉では表現しにくいみたいだ。

 まあレイナさんをコピーしようというのは流石に無理だろう。


「で、なんで僕をコピーしようとしたのさ」


「わかりません。私はそのように命じられましたので。ただ、ばれそうな場合には逃げろと言われていました」


 ……ばれてますけどね。


「貴方の言う試験に落ちた時点で厳しいと判断して、なるべく彼女らしく振舞っていたはずですが……」


「確かにそれ以降はわからなかったよ。でも、一応僕だって何もしてないわけじゃないんだよ」


 廊下の方が少し騒がしくなる。

 あれ、僕が呼んだのは一人だけのはずだったんだけど……


「ゼロ様、ただいま帰りました!」

「ゼロ君、遊びに来たよー!」


 扉が勢いよくあけられ、セリカちゃんとモカちゃん、アル君が入ってきた。

 あれ、賢人組を呼んだ覚えはない。


「褐色お姉さんはどなたですか?」


「待ってたよ、セリカちゃん。そして……二人もようこそ」



 ロミアちゃんを見た瞬間、モカちゃんの表情が凍る。

 数秒彼女のことを見ていたのだろうか、彼女の時間がまるで停止しているようだ。


「ゼロ君、待って。これ」


「これって言わない」


 ロミアちゃんを指して、敵意をむき出しにしている。

 ……この子はすぐに心を読んだのか。恐らく幹部であるためある程度は抵抗しているのだろうが、それでも何かを読み取ったのだろう。



「な、なんでこんなやつ」


「モカちゃん。僕の友達の心を勝手に読むな。失礼極まりない」


「あっ……」


 ロミアちゃんが初めて少し慌てたような表情に変わる、一瞬呆気に取られていたようだが彼女が誰だかわかったようだ。

 一つだけまず彼女に伝えたい、僕は彼女を嵌めようだなんて思っていない。


「モカ、いい加減にしろよ」


「あ……ご、ごめんなさい」


 僕は初めて彼女を呼び捨てにする。僕だって普段ならもう少し穏便なことを言いたいのだが、流石にマナーがなすぎる。勝手に僕らのフィールドに入ってきて、勝手に思考を読むなど許される行為ではない。

 それが誰だろうと関係ない、仮にレイナさんでも僕ははっきり言う。


 モカちゃんは青ざめながら狼狽しているがアル君は何か言うでもないし、セリカちゃんもあたふたと僕とモカちゃんを視線で往復している。



「…………セリカちゃん、悪いけどその二人をどこか別の部屋に置いてきて。そのあとでこの部屋に戻ってきてくれるかな」


 なるべく苛立ちを抑えて、なるべく平静を保ちながら自分の弟子に伝える。

 弾かれるように動いたセリカちゃんを見て、僕は有無を言わさぬように手で追いやった。


「ぜ、ゼロ君……」


「ごめんね、今モカちゃんいたら結構むかつくから少し席を外してって言ってる」


 彼女にはストレートに言うようにする。

 心を読まれない僕からしたら、面倒だがしっかり表現しなくてはならない。



「モカ様」


 アル君はモカちゃんの首根っこを掴んで素早く運んで行った。

 部屋から出るときに、アル君はペコリと頭を下げていった。



「……ごめんね、本当に」


「いえ……ありがとうございます」


 セリカちゃんが戻ってくるまで、少しだけ気まずい時間が流れた。


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