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第42話 怯えちゃいました


「元気だった?」


 僕の言葉は一応わかるのか、嬉しそうに(いなな)く。

 膝を折って僕の手の届く範囲まで態勢を沈めてくれるので、僕は彼の(たてがみ)を撫でる。


 …………あれ。

 いつもであれば、もっと心を許してくれそうなのだがやや今日は固い。

 なんだろうと思い、彼の視線の先を追うと美少女二人をとらえていた。更にその眼は鋭い眼光だ。


 僕はレイナさん以外にこのペガサスが人に会うところを見たことはないが、レイナさんとは対応がかなり違う。まあレイナさんは彼の飼い主なのだから当たり前かもしれないが。


「二人とも触ってみる? ペガス君が許してくれればだけど」


 全く近づこうともしない二人に一応声をかけてみるが、ふるふると首を横に振っている。

 特にアヤメちゃんは隣にいる自分よりも小柄な少女に抱き着くような形で怯えている。


「……一応答えたくなかったら答えなくていいけど、清純な女性にはかなり紳士なモンスターなんだけどね」


 清純とはどういう意味なのかは言わなくてもわかると思い、流石にぼかして表現している。

 しかし、他の二人に対しては随分友好的な雰囲気を見せようとしてくれない。流石にこれは僕でも予想外だ。

 もっともっと温和な感じでいてくれると思ったんだけど……


 そう思っていると、ペガス君は四つの足を水面に着地……置いて、僕の横を通って少し女性らに近づく。


 翼を広げ、鼻息荒くしているその様は威嚇と言っても過言ではない。


「ひ、ひぃっ……!?」


 仲良く後退りして大木の陰に隠れる。

 うーん、これは試験としては不合格にしてもいいんだけど、なんでこんなにペガス君は不機嫌なんだろう。まあそういうときもあるのか。


 それか僕と同じでグラマーな女の子が好きなんだろうか、知らないけど。


「ふぅ、じゃあもう僕らは帰るからいつも通り守護宜しくね」


 長居をしていてもあまりいい影響を与えないと判断した僕は、湖の淵から離れて二人のもとに近寄ろうとするが……ペガス君は僕の服を口で優しくつまむ。


 鼻息が僕にかかるが、意外と何のにおいもしない。モンスターらしい獣臭とかも全然しない。

 彼が何を伝えてくれているのかわからないが、心配?してくれているようだ。



「大丈夫だよ」


 僕は最後に顔をぽんぽんと撫でてあげると解放し、大空を駆けて行った。



「二人ともそんなに怖がらなくても。温厚なのになぁ……」


「……あんなに大きなペガサスなんて初めて見ましたから」

「目が怖いです」


 確かに大きいのは大きいと思うけれど、レイナさんのペットなんだから安全だと思うんだけどね。


「いつまで地面と戯れるんだい? そろそろ帰ろうか」


「えっと……」

「腰抜けちゃいました」


 アヤメちゃんが抱き着いているのかと思っていたら、途中から逆になっていたみたいだ。

 ネイカの時もそうだけど、腰抜けやすいのかな。


 ……そもそも腰が抜けるってどういう状況を言うんだろうか。

 

「仕方ない、おぶろうか」


「いえ!大丈夫です! もうちょっとしたら起きれますし!」


「そう?」


「ゼロ殿、セリカも流石に女の子なのでそういうのはちょっと……」


 君たち仲いいんだよね?

 流石に、というのが面白すぎる。僕からしたら、一応生物学上女性には女性扱いしているんだけど、アヤメちゃんの中では定義が違うようだ。


「アヤメ、絶対馬鹿にしてるよね?」


 ご立腹な様子で手をパタパタ動かしているが、小柄だしそもそも地面に座り込んでいるわけだし全く怖くはない。


「だってセリカって女性らしくは成長してないじゃん」


「ひどっ!?」


 涙目で文句を言っているが、アヤメと自分の体格を比較したのだろう。少し悲しそうな表情で僕の方を見てくる。


 別に女性の体形について僕は何も言わないけれど、アヤメちゃんも比較的控えめな方だと思う。もっとこう、自信満々に言えるとしたらレイナさんやエルザさん、モカちゃん辺りか。


「まあ別に待つのはいいけど、あまりにも時間かかると日が暮れるよ。流石にネーカを呼び出すには遠すぎると思うしなぁ」


「それでしたら私が呼びますか?」


 アヤメちゃんは忍びの特異的な動きである印を組むと、近くの地面から比較的大きめの蛇が現れる。当たり前の話だが、ネーカよりも小さい。

 それでも腰が抜けた少女一人くらいは運べるようで、するすると率先して進み始めた。

 身体の一部をとぐろを巻くように円形の面を作り、その上に乗せて運ぶというよくわからない原理だがすごい技術だ。


「この蛇がアヤメの使い魔? コータさんの烏みたいに」


「うん、そうだよ。ネーカのような大きさはないけど、私と視覚も共有できるんだよ」


 それはすごい。

 下手な男がそういう忍術?魔術を覚えたらお風呂とか覗けるんじゃないかな……うん、僕だったらリスクが高すぎて流石にしないけど。


「それよりも、あの蛇は帰り道わかってるの? 今のところは合ってるけど」


「多分大丈夫です。それではゼロ殿も急ぎましょう」


 いや、別に急ぐ理由はないけど。

 僕からしたら夜までに帰れればいい。


 こうしてペガス君との対面はあまりうまくいかなかった。

 恐らく、彼が不機嫌だったせいなのだが……僕のせいじゃないよね。


 でも、結果として、彼に認められることで修業を行うことにしよう、今考えた。


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