第41話 会いに行きました
いやいや、今日もそういう感じですか。
翌朝、僕は欠伸をしながら大きく伸びをする。
本日も全く眠れずに目が冴えるばかり、結局何を試験しようか考えて時間はつぶれた。
悩む時間はいくらでもあったから好きなだけ悩み、結果として前回ネーカを紹介したように、今度は別のモンスターのところに行くことにした。
「今回は多分二人が全く行ったことのない方にいくよ」
「確かにこっち側は、あまりないですね」
「私もです。こちらは王都の方と真逆ですよね」
森の館を中心として、北側には王都が、東側にはネーカの住処や物置、西側には世界樹のある山がある。南側には背の高い木々が多くなっているが、こちらには湖がある。
南側は自然豊かでモンスターの数も多いが、比較的穏やかなのが多い気がする。とはいえ、僕一人で歩くとき前提で、二人を連れているとどうなるんだろう。
こちらにもネーカと同じように森を守護する番人がいるわけで、彼はレイナさんが暇だから連れてきたという過去を持つ。
モンスターながら僕にも比較的懐いてくれているような気はするが、ネーカとは違って話してもくれないしそこまで知性は高いように見えない。
魔力で他のものを判断していないという事なんだろう。
「こっち側には湖があって、そこの主に会いに行こうかと」
「その主を倒せばいいんですね!」
自信満々に言っているが、心配になる。
この森にいて、ネーカとかとんでもないモンスターがいるにもかかわらずよくもまあそう言える。
ネーカとは違うけど流石に彼も圧倒的に強い。というかレイナさんのペットだから戦わないでほしいと思うが、何も言わない。
僕ら三人はのんびりと歩を進めていくのだが、今までの自主練のせいなのか肉体派二人に何とか歩きのスピードを合わせられている。
とはいっても、小走りでパタパタしているのは変わらない。
「セリカ、少し遅く歩こうか?」
「大丈夫です! そもそもこれも試験の一つかもしれませんし!」
いや、違うけどね。
というか歩くスピードで試験ってそれはもう試験ではないと思います。
「セリカ、そこ」
「ほんとだ」
アヤメちゃんが積極的に索敵を担当しているのだが、どうやってそんなに気配を探すことができるのだろうか。
僕は完全にモンスター対峙は二人に任せている
流石にこちら側にはあまり来ないから結構適当に進んでいる。
時たま、僕が過去に修行で森の地図を作らされた時の目印を頼りに進んでいく。
懐かしいな。
昔は少しでも物音がしたら隠れて進んでいたんだっけ。今にして思えば、多分確実にレイナさんかそのペットたちが僕を守ってくれていたんだろうけどあの時は本気で死ぬと思っていた。
モンスターが出ないことを常に祈っていたし、近くで現れた時には自分が自然の一部のように擬態することに必死だった。
そもそも僕の性質というか、魔力がないからこそ安全だったことについてはもう少し後に判明した。
そういう意味では一人で歩いている方が安全なのかも知れない。
「ゼロ様?」
「あ、ごめんごめん。久しぶりに来たから迷っちゃった」
「えっ!?」
二人は驚愕の表情をしている辺り、当たり前だが今の現在地をわかっているのは僕だけだ。大体どこの方角にどれくらい歩いたかというのはわかるから、正直仮に道に迷っても太陽の位置や景色から何とか帰れそうだ。
「嘘だよ、ちょっと確認してた」
昔削った木の幹にある目印を二人に見せる。
僕にだけわかるようになっているそれを見ても、多分全く意味が分からないのだろう。
ただ、別にそれでいいのだ。これはあくまでも僕が地図を作るうえで付けた印だし、万が一敵が来たときにはこれをヒントにされても困る。
歩くこと数時間、朝から出発した僕らは昼ご飯を食べてさらに少しそこから歩いた。
「うわぁ、大きな湖ですね!」
「こんなものがあるなんて、世界は広いですね」
どれくらいの大きさなのかは僕も知らないが、とても大きな湖だ。よくモンスターが水源を確保するために集まってきているのは知っている。
「おーい、ペガス君!」
「大声なんて出して大丈夫なのですか?」
どこにいるのかはわからないが、僕はとりあえず大きな声で呼び出してみる。
ここは彼の管轄内だからいきなり他のモンスターが僕に襲い掛かってくるということはないはずだ。確証はないけど、そもそも彼はどこにいるかわからないし。
「ペ、ペガサスですか? 野生のものは初めて見ました……」
僕は湖の際にいるのだが、二人が近くの大木まで下がっていった。
そう、ペガス君とは野生のペガサスで、レイナさんが命名している。
これについては命名センスを疑わざるを得ないのだが、ネーカの名前も実は彼女がつけている。
大きさは全長4mくらいの巨大な白馬みたいなもので背中には立派な翼、額には僕くらいは貫通できそうな角が生えている。
清らかな女性のみしか乗せないといい、また悪を即時に見抜く鋭い目を持つと言われている。僕は知らないけど。
ペガサス種の持っている角には毒などを癒す力があると言われ、過去に人間に乱獲されており、数はめっきり減ってしまっていた。更に、それが類似しているユニコーンの角の勘違いだとわかった時には、大量に殺された後だった。
なんとも人間のエゴによって頭数が減ってしまっている彼らペガサス。
今では人間社会で馬車などを引くために育成が積極的に行われていて、この前の魔導評議会での行き帰りもペガス君の同種だ。ただ大きさは全然違う。
「ペガス君、久し振り」
翼で空から滑空してきて、湖の上に蹄を置いて、飼い主の弟子である僕にも首を垂れる。
僕にも懐いてくれるし、昔レイナさんの修業が辛すぎて逃げ出した時も彼の場所に家出したこともある。




