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第29話 知られざる効能



 彼女の辛そうな状態を見るに、嘘をついている様子はない。

 僕には全く効いていなかったが、常にモカちゃんは戦っているようだ。


「ずっと眠くて。全開で抵抗(レジスト)してるんだけど、そのせいで殆ど魔法が使えないの今」


 90%以上をそちらに割いているせいで、まともに精神魔法などは使えないみたいだ。

 通常洗脳魔法は対象を選択して発動するのだが、最早それが空間全体に蔓延しているみたいだ。


 一度抵抗しても収まる気配もないようだ。

 そして傾眠傾向の洗脳で、意識を保つのに集中しているようだ。


「ほら、アルだってそこで洗脳されてるよ。多分エルザちゃんでもかかっているってことは耐えられるのモカくらいだと思う」


 確かに横のソファでイケメンが寝ている。

 近寄って確認してみると、確かに息はしているようだが声をかけても揺らしても全く起きる様子がない。


「でもエルザさんは僕を殺しに来たよ。返り討ちにしたけど」


「……ゼロ君って体術すごいんだね」


「まあ、レイナさんにボコボコにされてたし」


 作業服の男たちの服の中を漁っている間、モカちゃんはずっと僕にべったりくっついてきて結構邪魔してくる。

 眼があっても顔を真っ赤にして照れ隠しのように笑っている。


「ゼロ君ってかっこいいね」


「あの、ごめん。せめてこの緊急事態が終わってから言ってくれないかな」


 普段だったらもう少しかまってあげられるけど、流石にこの状態では無理だ。

 慌てたようにモカちゃんが謝ってくるけど、少し泣きそうだ。


 ここで泣かれる方が困ってしまう。


「そういえばこれ、何なの?」


 【支配者】とは思えずただの美少女っぽいモカちゃんが水筒を拾ってくれる。


「これは紅茶だよ。モカちゃんは飲む?」


「えー、モカはコーヒーの方が好きかな」


「よし、モカちゃん。君とは戦争だ」


「待って待って!モカ、ゼロ君に合わせる!」


 そういえばモカちゃんちゃんとサイドテールに結んだんだね。

 ふむ、男たちからは何も手掛かりはない、と。


 僕は一旦落ち着くために紅茶を飲むことにする。

 モカちゃんが欲しそうにしていたので、彼女にも渡してみるのだが……



「……ゼロ君、これ何?」


「いや、だから紅茶だって」


 一口飲んだモカちゃんが完全に思考停止したように止まる。

 表情も苦悶様から驚愕に代わっている。なんかエルザさんが飲んだ時と同じような感じだ。そんなに変な味だろうか。


「これって耐精神系魔法の効果でもあるの?」


「え、なんだって?」


「これ飲んだらかなり洗脳魔法が緩まったんだけど。これくらいで抑えられるなら、多分モカ精神魔法を少しは使えるよー」


 ……知らなかった。

 世界樹の葉というのはそういう効果もあったのか。まあ、確かに致命傷でも回復させてくれるらしいし、そんな付属効果があったとは。


「ゼロ君ってホントすごいんだね」


 なんかめっちゃ尊敬と敬愛の目で見られるんだけど、流石にこれは僕も予想外だ。

 いや、そもそもレイナさんに言われて持ってきたわけだし、あの人はこれを予見していたとかあるのか? ……それだったらレイナさんが助けに来る可能性もあるが、時間がかかるかもしれないな。


「禁呪でも世界樹の葉って効果あるんだね、そしたらアル君に飲ませてみる?」


「うーん、多分ダメだと思う。モカは抵抗できる前提だからいいけど、飲ませても洗脳魔法に勝てないなら無駄遣いになるよ」


 確かに。

 僕は必要ないとはいえ、これが持続的な効果かもわからない。モカちゃんが動ける今は彼女に必要な物を費やすべきではないか。



「……さて、残りはこいつらから聞こうか」


「大丈夫? モカの魔法じゃ限界あるよ?」


「逆算なんだけど、さっきからエルザさんもこの男たちも全く魔法を使っていないんだよね。だから敵側は使えないんじゃないかな?」


 別に全く確信も推測もあったものではない。

 でも、そもそも魔法が使えるならどう見ても詰んでいるし、更に言うとここから一人でも援軍が来たらこれまた詰んでいる。


 ただ、選択肢が広すぎて考えれば沼にはまる。ここでマイノリティを拾うくらいならマジョリティを拾い続けて生き残る確率を高めておくしかない。


「うーん、そんな魔法聞いたこともないけど、モカは使えるよ?」


「そもそも洗脳魔法が相手にかかっていないってことは、それを防ぐ魔法が使われている。その場合魔法が使えないとか、禁呪だから実際のところわからないけど。でもどうせ使えたら僕ら一般人なんてすぐ殺されるから仕方ないよ」


 腹を括るしかない。


 とはいえ、相手も洗脳されているのかもしれないし万が一にも備えて僕一人でやるか。


「悪いんだけど、モカちゃん。一人僕の部屋に運んで尋問するから部屋で待っててもらえる?」


 僕はとりあえず一人、軽そうな方をずるずると引き摺りながら僕の部屋に運ぶ。

 はっきり言って気絶している男なんて運べるものではないのだが、僕だって伊達に農業やレイナさんの修業で筋力が付いているんだ。

 それに引きずっても敵だから問題ないし。


 モカちゃんは不思議そうに聞き返す。


「え、尋問するの? モカいたほうがよくない?」


「……少し過激だしモカちゃんは見ない方がいいかなって」


 泣き止んでからはニコニコしているモカちゃんの前で、流石に血生臭いものは見せたくないかもしれない。

 彼女は苦笑しながらひらひらと手のひらを動かす。


「もう、モカのこと女の子扱いしてくれるのはすっごく嬉しいけど、一応四大賢人の一人だよ? 大丈夫大丈夫、人くらい殺せるから」


「いや、ごめん。流石に殺すつもりはないから」


 ……確かにそれもそうか。

 この年齢で四大賢人になるような才覚だし、いろいろな人から怨まれることも多いだろう。そのあたりは流石だ。


 モカちゃんには男を運ぶほどの筋力がないので、僕が二往復して連れてくる。

 因みにエルザさんは倒れた状態から全く変わっておらず、意識も戻っていないようだ。



「僕のやり方に口を出さないってことを約束して」


「うん、もしも不穏なことしそうだって心読めたらすぐに助けるから」



 よし、ここから尋問だ。


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