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第27話 崩れる日常

 ……うん、眠れない。

 やはりどこかのベッドというのは寝にくいものだ。

 僕も賢人と同じような部屋だったみたいで、はっきり言って広い。家具やベッド全てが豪華であまり慣れない。


 時計をちらっと確認すると既に3時を回っている。

 明日は9時くらいから会議と聞いているから、最悪寝坊するくらいなら徹夜でもいいのかな。


 いや、よく考えたらそもそも僕は会議に参加する必要もないわけで、寝坊してもいいのかもしれない。

 ……レイナさんでも流石に寝坊はしないと思うが。






 扉の鍵がカチャカチャ鳴った。

 ……おいおい、誰か侵入してくるとかある? エルザさんに護衛でも任せればよかったのか。


 でも、よく考えたら闇討ちに来た時点で僕はやばい。


 そして鍵が外される。

 ……とりあえず僕は薄目を開けつつ狸寝入りをする。万が一にでも僕の荷物を盗むくらいなら甘んじて受け入れよう。


 影は一人。

 人型で足音から特徴はない。とりあえず筋肉モリモリな感じではなさそう。


 僕を殺しに来たら……無理だよなぁ。

 まさかこんな場所で暗殺者が来たら無理だ。


 僕は息を押し殺し、さも眠っているようにスルーする。



 荷物を漁っているようだ。

 ナイフは手元に置いてあるけど、金目の物も大してない。そしたら何故だ?


 何かを探している?


 あ、やばい。近づいてきた。

 僕は目を瞑って気配を探る、心臓の音が聞こえるんじゃないかと思えるほど拍動している。


 ……止まった。

 僕は薄目を開けると、何者かがナイフを振り上げている。


 やば。


「あっぶなっ!?」


 僕は流石に狸寝入りをやめて体をゴロゴロと回転させてベッドから転げ落ちる。

 汗だらだらで服に張り付くが、そんなことを気にしている余裕もない。


 向かい合うが黒いローブに仮面をつけているせいでいまいち性別や体格などはわかりにくい。手にはナイフを握りしめているが僕にはわかる。あまり握り慣れていない。


 僕がナイフを使うときには腰を落として、半身で構える。ナイフのように射程が短い武器を使うときにはいつでも投げられるように、選択肢を増やした状態にしていた方がいい。


 それなのに、この暗殺者はナイフをまるで剣のようにしていることを見るに素人か使い慣れていない武器だ。

 そもそも魔法での遠距離戦が主流になっている現代戦においてナイフ一つで魔法を使わないというのはおかしい。


 つまり、魔法が使えない事情があるのだ。

 そうでなければいきなり不意打ちで魔法を撃てばよかった。


 ベッドを挟んで僕と暗殺者は対峙する。

 

 僕は警戒しながら内ポケットからナイフを取り出して逆手に構える。

 レイナさんから弟子祝いに貰ったナイフで、魔力などが込められているわけではなく単純に丈夫なもののようだ。


 僕が用心深い性格で良かったよ、まったく。

 ナイフなんて手放していたら勝てるわけがない。


 ……それに、実はこっちにはもう一つ飛び道具があるんだよね。



僕はもう一つポケットからなるべくゆったりとした動きで水筒を取り出す。

 急に動くとそれが戦いの火蓋になりかねない。


 多分彼か彼女かは知らないが、僕がナイフを出しても無反応だったからこちらにもリアクションは起こさないと読んでいた。


 だが、予想に反して素人の殺し屋は水筒の方に視線を落とす。



 よくわからないけど、これはチャンスだ。


 僕は不意を打ってナイフを相手の顔面に向けて投げつける。

 

「!?」


 いきなり武器を手放すと思っていなかったのか、明らかに不自然な態勢でかわした。

 そこを僕は狙って水筒を利き手ではないが左手でこれまた相手の顔面に放り投げ、僕は前に駆け出す。


 この距離であれば相手が水筒に反応している時間で僕は攻撃射程範囲に入る。

 今のナイフへの反応でそれは確信に変わった。


 そして更に予想外なことが起こる。殺し屋はナイフを避けたのにも関わらず、水筒をキャッチしてしまう。何もかも素人だ。

 でもとりあえずこれで僕の攻撃範囲だ。


「くらえ!」


 僕はベッドを踏み台にして跳躍し、相手のこれまた顔面に向けて飛び膝蹴りを打ち込む。

 顔面であれば、防がれたり避けられたりしない限り一撃で殺し合いを終わらせることができる。


仮面が金属製だったからか、僕の膝にもものすごい衝撃が走るがその分相手にも同様のダメージを与えられるはずだ。


 そのまま押し倒して僕は相手の胴体の上で馬乗りになる。

 ふらふらになりながらも抵抗してくるが、僕は手刀で相手のナイフを叩き落とし、もう一度顔面に向けて拳を振り下ろした。



「ふぅ、怖かった。危ない危ない」


 敵が脱力して力が抜けたのを確認して、僕は一息つく。

 一般人に戦闘させるとかおかしいよね、こういうのは誰かに任せて僕は静かにしていたい。


 日頃レイナさんに組手と称してボコボコにされていたのが役立つとはね。


「さて、お顔を拝聴させてもらおうか」


 正直馬乗りになった時点で気が付いていたが、敵は女だ。

 僕と同じくらいの身長体格だが。




 「…………ふーん」


 おやおや、これはどういうことだろうか。

 仮面を外すと、そこにはブロンドの髪がはみ出る。


 眼鏡を外していたエルザさんだ。さて、色々きな臭くなってきたぞ?


 僕は手際よくシーツをナイフで割いて細くし、彼女を雁字搦めに捕獲しておいた。


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