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第108話 そこまで適当ではありませんでした

 僕はまずあの時の光景をレイナさんに伝えた。

 真っ白い部屋。無数の引き出し。そして心臓がなかったこと。



「それだけでエルザを疑えるのか?」


「いえ、その時点では誰か内通者がいるんだろうなって思っただけです。流石にあんなに速い展開になるとは想定できないでしょうし、どこかから情報が洩れていると考えるのが妥当でしょう。候補になるのは賢人とアル君、エルザさん、ロミアちゃんの7名なので、仮に適当でもそんなに悪い確率ではないと思っていました」


 これは嘘ではない。

 それに、内通者がそのまま依り代である可能性もあると思っていたからそこまで分の悪い勝負ではない。


 レイナさんは納得していないようだ。まあ、僕もそれを言われたらそんな顔をする。

 これだけ聞けばただの偶然だ。



「僕は気付きって言葉が嫌いなんですけど、本当に偶然、その白い部屋で色々考えて気が付いたんですよね。流石に何時間も思考していましたから」


 自分の記憶を頼りに、誰かを内通者に仕立て上げられないかと考えていた。



「エルザさんと初対面で会ったときに、紅茶を飲んでとても一瞬驚いたような表情になったんですよね」


「それだけで疑ったのか?」


 紅茶を飲んだのはモカちゃん、アル君、エルザさん、ロミアちゃん。つまり賢人を除いた4名だ。モカちゃんは精神系魔法についてすぐに自ら言った。アル君はそもそも飲まなかった。ロミアちゃんは何も反応を示さなかった。


 ロミアちゃんは後にモカちゃんに心を読み取られたことから、恐らく自らに精神系魔法をかけていなかったと思われる。つまり、そういうことをしなければ無反応というのは至って普通の反応になるわけだ。

 そうなればレイナさんで読心されているわけだし、そんなわけでロミアちゃんは弾いた。



「そして魔導評議会での事件。流石に多少の疑問は持っていましたよ」


 僕は順序を追って説明する。

 レイナさんがどこまでこの事件を知っているかわからないからなるべく丁寧に。


 僕の知っている時系列で言うと、会議があった日の深夜近い時刻に僕は作業員が動いているのを確認している。そして、日付が変わって3時くらいにエルザさんから襲撃を受けた。そしてモカちゃんを迎えに行くと、禁呪が発動されているという話を聞かされる。

 その後日談として、エルザさんの仮面には洗脳効果があると。


「ではいつから禁呪は発動していたのか。幹部の話が本当だとすると日付が変わる前なんですよね」


 彼らはボスが消えたのは日付が変わってからだと言っていた。そしてそのせいで解呪の仕方を知らされていない状態で動けなくなったのだと。

 となると、禁呪は発動されたのは僕が作業員を見た時間よりも後ろで、尚且つ日付が変わる前。



「となると、エルザさんはブーザー教団のボスによる洗脳効果のあった仮面に、更に禁呪による洗脳がかかっていることになる」


 それではエルザさんにいつ洗脳効果のある仮面をつけたのか。

 それはボスが日付を越えてから抜けたタイミングしかないはずだ。


「ということはそのボスが持っていた洗脳効果の仮面は禁呪の洗脳よりも強力ってことになりませんかね」


 眠らせる洗脳を上回り、僕に襲い掛かったのだからそう考えられる。

 そんなことが有り得るのか。


 そして何であんな格好だったのかとか謎が多かった。



「それだったら、そもそも嘘だって考えた方が楽だなって。その洗脳効果がある仮面っていうのが後付けかなって」


 エルザさんがブーザー教団のボスであると考えてしまえば、全てすんなり済んでしまうわけだ。

 僕を襲いに行ったのは会議室で禁呪を発動させた後に姿を消してから。



「あと、僕の寝ていた部屋に来た時に何故か荷物を始め漁っていたんです。あの時はなんでだろうと思っていたんですが」


 今なら推測できる。

 あの時紅茶の入った水筒を探していたんだ。多分馬車で何らかの洗脳が解けてしまって、それが不都合だったのだろう。原因を調べるために探していた。


 だからこそ、僕がナイフを投げた時には回避したのに、水筒を投げられた時には注意を奪われてしまったわけだ。



「多分、あの場では狸寝入りをしていたんでしょうね。そしてレイナさんが内外の交通を封じている結界を破壊する前後に禁呪の魔導書を盗んだ。そのあたりの前後は僕には見当もつきませんが」


 エルザさんからしたら、別に恐らく僕を殺してもよかったんだろう。

 でも、殺した場合にはエルザさんが本気で調査に乗り出して暴れる可能性があったわけだから泳がせたと考えるのが無難かもしれない。


「それに、流石の僕もエルザさんの身体チェックまではしていないですしね」


「……なるほどね」


 もしかしたら泳がせた一因として、僕を初めて認識したわけだから【不可視】の実力を調べたかったのかもしれない。

 魔力がないという状況がどういうことなのか。




「と、まあここまで適当に長々話しましたが、これはさっき考えた推理です。ナイフで刺すまでは考えもしませんでしたよ」


 答えが知っている状況では違和感に気が付けるわけだ。


「実際本当に怪しいって思ったのはノートル学園に呼び出されたときですよ」


 誰かが補助をしなければドクターが僕をノートル学園へ行かせることは無理だ。

 それは禁呪であっても限界はある。


「内情を知っている内通者が適任ってことか」


 この館に迎えに来ていたが、そもそも場所を知っているなら僕が巻き込まれた魔導評議会の事件の時にも家まで迎えに来るんじゃないかとか。

 ではいつ知ったのか、レイナさんの手紙を郵便受けにいれた時だとか。


 エルザさんがそもそも裏切り者であれば、僕を迎えに来たと言っても違和感は全くない。

 それに、僕は理事長室によった帰りに襲撃されている。


 その気まぐれな行動を把握していたのはエルザさんと理事長。

 


「色々杜撰なんですよ。ヒントが残り過ぎて、僕を騙すためにミスリードしているのかと思ってしまいましたよ」


 だが、騙すにしてももっと対処できると思う。


「だから、まるっきり7回のうちの1回というわけではないんです」


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