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第104話 最後の戦い

 何が起こったかはわからない。とりあえずわかるのはレイナさんが僕を脇に抱えて跳躍していること。眼下では炸裂音を鳴り響いていること。


 ……そっか。やっぱりそれで合っていたのか。

 人間以外と勘って当たるもんだね。


「お前……エルザが依り代だっていつ気が付いていた」


 怖いくらい真顔で僕を瞬きもしないで睨んでくる。

 僕は笑ってごまかそうとしたけど、多分今はそんな余裕がない時だろう。


 他の仲間がどうなっているのか、その状況を把握している余裕もない。特に精神系特化させているモカちゃんはアル君が何とか助けに入っているのだろうか。



「気づいたのはさっきですよ。全く疑ってもいませんでしたから。それこそレイナさんが近くに置いていた時点で隠し通せるとは思いませんから」


「……だが、現に刺したわけだろ」


 空中で停止したレイナさんに突如として雷が連打で降り注ぐ。

 僕の方から視線を外さないまま、そのすべてを防ぎきる。



「確率論でしたよ。レイナさんやリイランさんを除いた誰かが内通者だと思っていましたから。でも」


 高速で空中を移動するレイナさんのせいで、思い切り酔いそうになっているから言葉が少しでなくなる。

 更に天候が変わり、まるで猛吹雪(ブリザード)のように雪の一つ一つが意思を持つように、小さな虫の集合体のように老体を中心に蠢いていた。



「あれが魔神だ」


「いや、【猛吹雪】でしょ」


 こんな時にも冗談を言うレイナさん。

 流石に僕でもわかる。


 というかエルザさんが依り代だったのだ。

 猛吹雪と突風のせいで姿は見えていないが、【要塞】が防御を固めて【猛吹雪】と【粉砕者】が突っ込んでいくのが見えた。


「理由については今度紅茶でも飲みながら話しましょう。そして余裕があれば僕を安全なところに置いてくれません? 巻き添えで死にそうなんですけど」


「大丈夫だ、ゼロ。お前の周りに防御壁を作っておくからそこにいろ」


 ドレスのスカート部分を短く切り裂き、ついでに靴も脱ぎ始める我が師匠。

 凍結、地割れなど起こしている部分に着地して、僕を解放する。更に、服をぽんぽんと投げてよこしてくるこの余裕さよ。

 

「ちょっと眼帯借りるぞ」


「いや、悠長すぎません?」


 他の人が死闘をしている中で、のんびり僕から眼帯を外してそれをヘアゴムのように使って髪を束ねる。



「たまにはかわいい弟子の前でかっこいい姿を見せるのが師匠ってもんだろ? そこで見てろよ。大丈夫だ、絶対にその防御壁は壊されねえから」


 真紅の瞳が自信を示している。

 ……まったく、仕方ない。


「最強の敵が相手なのに余裕過ぎて困っちゃいますよ」


「当然だ。あたしが世界最強だからな」


 レイナさんが軽くその場で跳躍して



「え?」


 飛んできた何かを蹴り飛ばす。

 それがエルザさんだった頭だとかろうじて目で追えただろうか。


 ……元自分の護衛の頭部をボールのように蹴り返すその様子はいろんな意味でシュール過ぎた。



「世界最強で超絶美人の蹂躙する勇姿、目に焼き付けておけ」



 僕が瞬きする間もなく姿が消えて、すぐ先で爆裂音が弾ける。



「……いや、眼で追えないんですけど」


 誰か僕に解説してくれよ。




 更に更に天候は変わり、雪は全て溶けて地面から火柱が立ち上る。

 それが魔神がやったのか、レイナさんがやったかはもうわからない。


 僕の真下にも出現したが、レイナさんが言ったように防御壁が攻撃を一切通さない。



 魔神はエルザさんの見た目からは全く変化はないのだが、とりあえずそのあたりに頭だの足だの散らばっているところを見ると、破壊されて超再生しているようだ。


 勿論衣服は再生しないので全裸に近くなっていくのだが、最早女性としての魅力などない。



「……心臓には」


 ナイフが刺さったままだ。

 僕の、文字通りの不可視の一撃はどれくらいのダメージが入ったんだろうか。


 あれで潰せているのかはわからないが、実際どうなんだろう。



 アル君がモカちゃんを抱きかかえたまま、只管火柱を回避していく。


 【要塞】が地面を硬化させて、下からの攻撃をある程度抑えているが圧倒的に数が多すぎる。


 【粉砕者】は拳を構えて紙一重で攻撃を与えようと接近を試みている。


 【猛吹雪】はこんな高温の中なのに、氷の剣を空中に無数に出現して魔神に射出している。


 ロミアちゃんはリイランさんの盾として防御する役割になっている。



 そして、レイナさんとリイランさんは魔神を挟み込むように拳を振るっていた。

 ……魔術師ってなんなんだろう。


 最後は殴り合いってどうなんだろう、これ。



 魔神はリイランさんの攻撃は受け止めるものの、レイナさんの攻撃は回避でしのぐ。

 その間に他の攻撃を浴びているものの、そこまで気にしていない様子だ。



「……びっくりしたなぁ」


 僕に向かって指を向けると、一瞬の閃光。

 防御壁がなかったら何かの攻撃で即死だ。


 その隙を逃さず、【粉砕者】が僕に向けていた右腕を掴んで、文字通りに引きちぎる。



「上!!」


 モカちゃんが叫ぶ。

 ワンテンポ遅れて、光の土砂降りが辺り一帯を包み込む。


 光が地面に当たった、防御壁に当たったと同時に鼓膜が破れるんじゃないかというような爆発音が連鎖的に轟く。

 それが、魔神による攻撃だとはわかるけれど、文字通り桁違い過ぎる。


 そしてその間にリイランさんが魔神の首を二度切り落としているのもまた桁違いだ。




……多分、レイナさんの攻撃だけは直撃できないんだ。

他の攻撃を浴びてでも避けないといけないんだ。


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