表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/119

Chapter7♯4 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter7 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く


登場人物


貴志 鳴海(なるみ) 19歳男子

Chapter7における主人公。昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の副部長として合同朗読劇や部誌の制作などを行っていた。波音高校卒業も無鉄砲な性格と菜摘を一番に想う気持ちは変わっておらず、時々叱られながらも菜摘のことを守ろうと必死に人生を歩んでいる。後に鳴海は滅びかけた世界で暮らす老人へと成り果てるが、今の鳴海はまだそのことを知る由もない。


早乙女 菜摘(なつみ) 19歳女子

Chapter7におけるもう一人の主人公でありメインヒロイン。鳴海と同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の部長を務めていた。病弱だが性格は明るく優しい。鳴海と過ごす時間、そして鳴海自身の人生を大切にしている。鳴海や両親に心配をかけさせたくないと思っている割には、危なっかしい場面も少なくはない。輪廻転生によって奇跡の力を引き継いでいるものの、その力によってあらゆる代償を強いられている。


貴志 由夏理(ゆかり)

鳴海、風夏の母親。現在は交通事故で亡くなっている。すみれ、潤、紘とは同級生で、高校時代は潤が部長を務める映画研究会に所属していた。どちらかと言うと不器用な性格な持ち主だが、手先は器用でマジックが得意。また、誰とでも打ち解ける性格をしている


貴志 (ひろ)

鳴海、風夏の父親。現在は交通事故で亡くなっている。由夏理、すみれ、潤と同級生。波音高校生時代は、潤が部長を務める映画研究会に所属していた。由夏理以上に不器用な性格で、鳴海と同様に暴力沙汰の喧嘩を起こすことも多い。


早乙女 すみれ 46歳女子

優しくて美しい菜摘の母親。波音高校生時代は、由夏理、紘と同じく潤が部長を務める映画研究会に所属しており、中でも由夏理とは親友だった。娘の恋人である鳴海のことを、実の子供のように気にかけている。


早乙女 (じゅん) 47歳男子

永遠の厨二病を患ってしまった菜摘の父親。歳はすみれより一つ上だが、学年は由夏理、すみれ、紘と同じ。波音高校生時代は、映画研究会の部長を務めており、”キツネ様の奇跡”という未完の大作を監督していた。


貴志/神北 風夏(ふうか) 25歳女子

看護師の仕事をしている6つ年上の鳴海の姉。一条智秋とは波音高校時代からの親友であり、彼女がヤクザの娘ということを知りながらも親しくしている。最近引越しを決意したものの、引越しの準備を鳴海と菜摘に押し付けている。引越しが終了次第、神北龍造と結婚する予定。


神北(かみきた) 龍造(りゅうぞう) 25歳男子

風夏の恋人。緋空海鮮市場で魚介類を売る仕事をしている真面目な好青年で、鳴海や菜摘にも分け隔てなく接する。割と変人が集まりがちの鳴海の周囲の中では、とにかく普通に良い人とも言える。因みに風夏との出会いは合コンらしい。


南 汐莉(しおり) 16歳女子

Chapter5の主人公でありメインヒロイン。鳴海と菜摘の後輩で、現在は波音高校の二年生。鳴海たちが波音高校を卒業しても、一人で文芸部と軽音部のガールズバンド”魔女っ子の少女団”を掛け持ちするが上手くいかず、叶わぬ響紀への恋や、同級生との距離感など、様々な問題で苦しむことになった。荻原早季が波音高校の屋上から飛び降りる瞬間を目撃して以降、”神谷の声”が頭から離れなくなり、Chapter5の終盤に命を落としてしまう。20Years Diaryという日記帳に日々の出来事を記録していたが、亡くなる直前に日記を明日香に譲っている。


一条 雪音(ゆきね) 19歳女子

鳴海たちと同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部に所属していた。才色兼備で、在学中は優等生のふりをしていたが、その正体は波音町周辺を牛耳っている組織”一条会”の会長。本当の性格は自信過剰で、文芸部での活動中に鳴海や嶺二のことをよく振り回していた。完璧なものと奇跡の力に対する執着心が人一倍強い。また、鳴海たちに波音物語を勧めた張本人でもある。


伊桜(いざくら) 京也(けいや) 32歳男子

緋空事務所で働いている生真面目な鳴海の先輩。中学生の娘がいるため、一児の父でもある。仕事に対して一切の文句を言わず、常にノルマをこなしながら働いている。緋空浜周囲にあるお店の経営者や同僚からの信頼も厚い。口下手なところもあるが、鳴海の面倒をしっかり見ており、彼の”メンター”となっている。


荻原 早季(さき) 15歳(?)女子

どこからやって来たのか、何を目的をしているのか、いつからこの世界にいたのか、何もかもが謎に包まれた存在。現在は波音高校の新一年生のふりをして、神谷が受け持つ一年六組の生徒の中に紛れ込んでいる。Chapter5で波音高校の屋上から自ら命を捨てるも、その後どうなったのかは不明。


瑠璃(るり)

鳴海よりも少し歳上で、極めて中性的な容姿をしている。鳴海のことを強く慕っている素振りをするが、鳴海には瑠璃が何者なのかよく分かっていない。伊桜同様に鳴海の”メンター”として重要な役割を果たす。


来栖(くるす) (まこと) 59歳男子

緋空事務所の社長。


神谷 志郎(しろう) 44歳男子

Chapter5の主人公にして、汐莉と同様にChapter5の終盤で命を落としてしまう数学教師。普段は波音高校の一年六組の担任をしながら、授業を行っていた。昨年度までは鳴海たちの担任でもあり、文芸部の顧問も務めていたが、生徒たちからの評判は決して著しくなかった。幼い頃から鬱屈とした日々を過ごして来たからか、発言が支離滅裂だったり、感情の変化が激しかったりする部分がある。Chapter5で早季と出会い、地球や子供たちの未来について真剣に考えるようになった。


貴志 希海(のぞみ) 女子

貴志の名字を持つ謎の人物。


三枝 琶子(わこ) 女子

“The Three Branches”というバンドを三枝碧斗と組みながら、世界中を旅している。ギター、ベース、ピアノ、ボーカルなど、どこかの響紀のようにバンド内では様々なパートをそつなくこなしている。


三枝 碧斗(あおと) 男子

“The Three Branches”というバンドを琶子と組みながら、世界中を旅している、が、バンドからベースとドラムメンバーが連続で14人も脱退しており、なかなか目立った活動が出来てない。どこかの響紀のようにやけに聞き分けが悪いところがある。


有馬 千早(ちはや) 女子

ゲームセンターギャラクシーフィールドで働いている、千春によく似た店員。


太田 美羽(みう) 30代後半女子

緋空事務所で働いている女性社員。


目黒 哲夫(てつお) 30代後半男子

緋空事務所で働いている男性社員。


一条 佐助(さすけ) 男子

雪音と智秋の父親にして、”一条会”のかつての会長。物腰は柔らかいが、多くのヤクザを手玉にしていた。


一条 智秋(ちあき) 25歳女子

雪音の姉にして風夏の親友。一条佐助の死後、若き”一条会”の会長として活動をしていたが、体調を崩し、入院生活を強いられることとなる。智秋が病に伏してから、会長の座は妹の雪音に移行した。


神谷 絵美(えみ) 30歳女子

神谷の妻、現在妊娠中。


神谷 七海(ななみ) 女子

神谷志郎と神谷絵美の娘。


天城 明日香(あすか) 19歳女子

鳴海、菜摘、嶺二、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。お節介かつ真面目な性格の持ち主で、よく鳴海や嶺二のことを叱っていた存在でもある。波音高校在学時に響紀からの猛烈なアプローチを受け、付き合うこととなった。現在も、保育士になる資格を取るために専門学校に通いながら、響紀と交際している。Chapter5の終盤にて汐莉から20Years Diaryを譲り受けたが、最終的にその日記は滅びかけた世界のナツとスズの手に渡っている。


白石 嶺二(れいじ) 19歳男子

鳴海、菜摘、明日香、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。鳴海の悪友で、彼と共に数多の悪事を働かせてきたが、実は仲間想いな奴でもある。軽音部との合同朗読劇の成功を目指すために裏で奔走したり、雪音のわがままに付き合わされたりで、意外にも苦労は多い。その要因として千春への恋心があり、消えてしまった千春との再会を目的に、鳴海たちを様々なことに巻き込んでいた。現在は千春への想いを心の中にしまい、上京してゲーム関係の専門学校に通っている。


三枝 響紀(ひびき) 16歳女子

波音高校に通う二年生で、軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”のリーダー。愛する明日香関係のことを含めても、何かとエキセントリックな言動が目立っているが、音楽的センスや学力など、高い才能を秘めており、昨年度に行われた文芸部との合同朗読劇でも、あらゆる分野で多大な(?)を貢献している。


永山 詩穂(しほ) 16歳女子

波音高校に通う二年生、汐莉、響紀と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はベース。メンタルが不安定なところがあり、Chapter5では色恋沙汰の問題もあって汐莉と喧嘩をしてしまう。


奥野 真彩(まあや) 16歳女子

波音高校に通う二年生、汐莉、響紀、詩穂と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はドラム。どちらかと言うと我が強い集まりの魔女っ子少女団の中では、比較的協調性のある方。だが食に関しては我が強くなる。


双葉 篤志(あつし) 19歳男子

鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音と元同級生で、波音高校在学中は天文学部に所属していた。雪音とは幼馴染であり、その縁で”一条会”のメンバーにもなっている。


井沢 由香(ゆか)

波音高校の新一年生で神谷の教え子。Chapter5では神谷に反抗し、彼のことを追い詰めていた。


伊桜 真緒(まお) 37歳女子

伊桜京也の妻。旦那とは違い、口下手ではなく愛想良い。


伊桜 陽芽乃(ひめの) 13歳女子

礼儀正しい伊桜京也の娘。海亜中学校という東京の学校に通っている。


水木 由美(ゆみ) 52歳女子

鳴海の伯母で、由夏理の姉。幼い頃の鳴海と風夏の面倒をよく見ていた。


水木 優我(ゆうが) 男子

鳴海の伯父で、由夏理の兄。若くして亡くなっているため、鳴海は面識がない。


鳴海とぶつかった観光客の男 男子

・・・?


少年S 17歳男子

・・・?


サン 女子

・・・?


ミツナ 19歳女子

・・・?


X(えっくす) 25歳女子

・・・?


Y(わい) 25歳男子

・・・?


ドクターS(どくたーえす) 19歳女子

・・・?


シュタイン 23歳男子

・・・?






伊桜の「滅ばずの少年の物語」に出て来る人物


リーヴェ 17歳?女子

奇跡の力を宿した少女。よくいちご味のアイスキャンディーを食べている。


メーア 19歳?男子

リーヴェの世界で暮らす名も無き少年。全身が真っ黒く、顔も見えなかったが、リーヴェとの交流によって本当の姿が現れるようになり、メーアという名前を手にした。


バウム 15歳?男子

お願いの交換こをしながら旅をしていたが、リーヴェと出会う。


盲目の少女 15歳?女子

バウムが旅の途中で出会う少女。両目が失明している。


トラオリア 12歳?少女

伊桜の話に登場する二卵性の双子の妹。


エルガラ 12歳?男子

伊桜の話に登場する二卵性の双子の兄。






滅びかけた世界


老人 男子

貴志鳴海の成れの果て。元兵士で、滅びかけた世界の緋空浜の掃除をしながら生きている。


ナツ 女子

母親が自殺してしまい、滅びかけた世界を1人で彷徨っていたところ、スズと出会い共に旅をするようになった。波音高校に訪れて以降は、掃除だけを繰り返し続けている老人のことを非難している。


スズ 女子

ナツの相棒。マイペースで、ナツとは違い学問や過去の歴史にそれほど興味がない。常に腹ペコなため、食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。


柊木 千春(ちはる) 15、6歳女子

元々はゲームセンターギャラクシーフィールドにあったオリジナルのゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”に登場するヒロインだったが、奇跡によって現実にやって来る。Chapter2までは波音高校の一年生のふりをして、文芸部の活動に参加していた。鳴海たちには学園祭の終了時に姿を消したと思われている。Chapter6の終盤で滅びかけた世界に行き、ナツ、スズ、老人と出会っている。

Chapter7♯4 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く


◯1786鳴海の夢/緋空浜(約30年前/昼前)

 快晴 

 蝉が鳴いている

 約30年前の緋空浜の浜辺を歩いている鳴海

 太陽の光が緋空浜の波に反射し、キラキラと光っている

 浜辺にはゴミがなく、◯1785の緋空浜に比べるととても綺麗

 浜辺では数人の学生たちが映画らしきものの撮影を行っている

 緋空浜には鳴海や撮影を行っている学生たち以外にも、釣りやウォーキングをしている人、海で泳いだり浜辺で遊んでいる人などたくさんの人がいる

 鳴海は周囲を見ながら歩いている


鳴海「(周囲を見ながら 声 モノローグ)母とぶつかった時や、公園で喋った時と同じ感覚の夢だ・・・(少し間を開けて)これで3回目だな・・・」


 鳴海は周囲を見ながら浜辺で数人の学生たちが撮影を行っていることに気付く


鳴海「(周囲を見ながら浜辺で数人の学生たちが撮影を行っていることに気付いて 声 モノローグ)こんなところでドラマの撮影か・・・」


 撮影を行っている数人の学生たちの中に菜摘に背格好がよく似た人がいる

 背格好が菜摘によく似た人は後ろを向いており、顔は鳴海に見えていない

 背格好が菜摘によく似た人はレフ板を持っていて、撮影の手伝いをしている

 鳴海は撮影を行っている数人の学生たちの中に背格好が菜摘によく似た人がいることに気付き、走って声をかけに行く


鳴海「(レフ板を持っている菜摘によく似た人に向かって)お、おい!!菜摘もここにいたのか!!」


 背格好が菜摘によく似た人がレフ板を下げる

 振り返ってる背格好が菜摘によく似た人


すみれ「(振り返って)ん・・・?」


 振り返ったのは菜摘ではなく、18歳のすみれ

 18歳のすみれは背格好、顔が菜摘にとても似ている

 すみれは波音高校の制服ではなく私服を着ている

 驚いてすみれのことを見ている鳴海

 

鳴海「(驚いてすみれのことを見たまま)ま、マジかよ・・・」

すみれ「どちら様・・・?」

鳴海「(驚いてすみれのことを見たまま)えっと・・・お、俺は・・・(少し間を開けて)ま、待てよ・・・この人がここにいるということは・・・奴も近くに・・・」


 すみれのことを見ている鳴海はいきなり肩を掴まれる

 鳴海は肩を掴まれたまますみれのことを見るのをやめる

 恐る恐る肩を掴んで来た相手のことを見る鳴海

 鳴海の肩を掴んでいるのはすみれと同じく18歳の潤

 潤は波音高校の制服ではなく私服を着ており、右手には旧式のビデオカメラを持っている


潤「(左手で鳴海の肩を掴んだまま)おい」


 潤に肩を掴まれている鳴海は潤と目が合う


鳴海「(潤に肩を掴まれたまま潤と目が合って)や、やばい・・・」

潤「(左手で鳴海の肩を掴み鳴海と目が合ったまま)すみれをナンパするなら覚悟を持って来やがれってんだよ!!」


 潤は左手で鳴海の肩を掴み鳴海と目が合ったまま右足で鳴海の左足を引っ掛ける

 左手で鳴海の肩を掴んだまま右足で鳴海の左足を引っ掛けて鳴海のことを転ばす潤

 潤は鳴海の肩を離す

 潤に左足を引っ掛けられた鳴海は背中から勢いよく倒れるように転ぶ


すみれ「じゅ、潤くん!!」

潤「おう、何だ」

すみれ「喧嘩しちゃダメでしょう!!」

潤「今の奴は変態だぞ」

すみれ「だからと言って倒さなくても・・・」


 鳴海は体を起こす


鳴海「(体を起こして)お、俺がナンパなんかするわけないだろ!!」

由夏理「あー!!君いつかの少年じゃん!!」


 鳴海は周囲を見る

 鳴海の周りにはすみれと潤の他に、18歳の由夏理、同じく18歳の紘がいる

 紘は◯1690で菜摘が見ていた”キツネ様の奇跡”と同じ狐のお面を被っており、服装も◯1690の菜摘が見ていた”キツネ様の奇跡”と完全に同じになっている

 紘と同様に由夏理の服装は◯1690の菜摘が見ていた”キツネ様の奇跡”と完全に同じ

 由夏理と紘は波音高校の制服ではなく私服を着ている

 由夏理のことを見る鳴海


鳴海「(由夏理のことを見て小声でボソッと)まただ・・・」

紘「(狐のお面を被ったまま)由夏理の知り合いか」

由夏理「まあね〜、少年とはマブダチでさ〜」


 鳴海は由夏理のことを見るのをやめる


鳴海「(由夏理のことを見るのをやめて)な、何がマブダチだ・・・」


 紘は狐のお面を被ったまま鳴海に手を差し伸ばす


紘「(狐のお面を被ったまま鳴海に手を伸ばして)すまないな、お前を殴った奴は救いようのない馬鹿なんだ」

潤「あぁん!?」

紘「(狐のお面を被り鳴海に手を差し出したまま)今の返事で馬鹿だって分かっただろう?」


 鳴海は差し伸ばして来ている狐のお面を被った紘の手を取る


鳴海「(差し伸ばして来ている狐のお面を被った紘の手を取って)あ、ああ」


 鳴海は差し伸ばして来ている狐のお面を被った紘の手を取って立ち上がる


由夏理「お久だね少年、元気してた?」


 鳴海は狐のお面を被った紘の手を離す

 少しの沈黙が流れる


由夏理「まさか私のこと忘れてないよね・・・?」

鳴海「ああ・・・」


 再び沈黙が流れる

 鳴海は由夏理、狐のお面を被った紘、すみれ、潤のことを見る

 

すみれ「由夏理・・・この子・・・誰・・・?」

由夏理「それが私もよく知らないんだけどさー・・・」

すみれ「えっ・・・?どういうこと・・・?」

由夏理「どういうこと何だろうねー少年」

鳴海「お、俺に聞かないでくれ」

潤「てめえ何校の何年だよ?」

鳴海「あー・・・ど、どこだったかな・・・」

潤「すみれ、こいつ喧嘩売ってるぞ」

すみれ「落ち着いて潤くん」

潤「落ち着いて喧嘩を買おうすみれ」

すみれ「喧嘩は買っちゃいけません」

潤「先に喧嘩を売ったのはこいつだぞ」

鳴海「しょ、初対面の相手に喧嘩を売るわけないだろ!!」

由夏理「初対面?少年ってすみれと潤とは知り合いっぽい感じじゃなかった?」


 すみれと潤は顔を見合わせる


潤「(すみれと顔を見合わせて)こいつすみれの知り合いだったのか?」

すみれ「(潤と顔を見合わせたまま)初めましてだけど・・・」


 すみれと潤は顔を見合わせるのをやめる


鳴海「しょ、初対面だしそもそも俺はこんな人たちのことを知らないぞ!!」

由夏理「何で嘘をつくのさ少年、前に会った時はすみれと潤のことを知り合いであり、知り合いじゃないって謎過ぎるコメントをしてたじゃん」

鳴海「そ、そんなことは言ってない!!」

由夏理「少年の嘘つきー」


 少しの沈黙が流れる


潤「おい、お前何校の何年か言えよ」

鳴海「お、俺は・・・波音高校の・・・卒業生だ」

潤「(驚いて)な、何!?そ、卒業生だと!?」

鳴海「あ、ああ」

紘「(狐のお面を被ったまま)先輩だったのか」


 鳴海は狐のお面を被った紘のことを見る


紘「(狐のお面を被ったまま)何だ?」


 鳴海は狐のお面を被った紘から顔を逸らす


鳴海「(狐のお面を被った紘から顔を逸らして)べ、別に何も・・」

由夏理「少年はよくキョドキョドするんだよねー」

鳴海「きょ、キョドキョド・・・?」

由夏理「挙動不審のキョドキョド」

潤「先輩なのに緊張してんのかお前」


 鳴海は狐のお面を被った紘から顔を逸らすのをやめる


鳴海「(狐のお面を被った紘から顔を逸らすのをやめて)き、緊張はしてない」

潤「じゃあ何でキョドキョドしてんだ」

鳴海「こ、コミュニケーションを取るのが苦手なんだよ」

潤「やっぱ緊張してんじゃねえか」

すみれ「キョドキョドの名前は何て言うの?」

由夏理「知らないんだなこれが」

鳴海「お、俺は佐田奈緒衛だ」


 再び沈黙が流れる


潤「馬鹿だろこいつ」

由夏理「ちょっとねー、でも良い子だからさ」

鳴海「そ、そうだ、お、俺は良い人だ」

すみれ「確かに・・・ちょっと・・・お馬鹿さんっぽいですね・・・」


 少しの沈黙が流れる

 

紘「(狐のお面を被ったまま)俺はそろそろ抜けるぞ」

由夏理「まだ始まったばっかじゃん!!」

紘「(狐のお面を被ったまま)仕事があるんだ」

潤「撮影はどうするんだよ!!」


 紘は狐のお面を被ったまま鳴海のことを見る


紘「(狐のお面を被ったまま鳴海のことを見て)500年前から来たタイムトラベラーに代役を任せよう」

鳴海「は・・・?」


 由夏理、すみれ、潤が鳴海のことを見る


潤「(鳴海のことを見て)よく見たらこいつ・・・背が紘とほとんど同じだな・・・」

紘「(狐のお面を被り鳴海のことを見たまま)ああ、常に仮面を被ったキツネ様の役なら出来るはずだ」


 すみれは鳴海のことを見るのをやめる


すみれ「(鳴海のことを見るのをやめて)でも声はどうするの?」

紘「(狐のお面を被り鳴海のことを見たまま)それなら後で別撮りをすれば良い」

潤「(鳴海のことを見たまま)しょうがねえ・・・そうするか・・・」


 潤は鳴海のことを見るのをやめる


潤「(鳴海のことを見るのをやめて)紘、今日はご苦労だったな、仕事に行って良いぞ」


 紘は狐のお面を被ったまま鳴海のことを見るのをやめる


紘「(狐のお面を被ったまま鳴海のことを見るのをやめて)すまない、潤」

潤「今日のことは貸しとして覚えておけよ」

紘「(狐のお面を被ったまま)ああ

鳴海「(大きな声で)ま、待て待て!!!!何勝手にそっちで話を進めてるんだよ!!!!」

潤「いけねえか?」

鳴海「(大きな声で)いけないだろ!!!!」

由夏理「とりあえず少年は暇だったら撮影を手伝ってよ。夏休み中に撮り終えて映画祭に提出したいからさ」

鳴海「な、夏休み中に撮り終えて映画祭!?」

由夏理「どうして君は私の言葉をリピートするのかね」

鳴海「わ、悪い・・・じゃなくて何で俺にやらせ・・・」


 紘は鳴海の話を無視して狐のお面を外す

 初めて紘の顔を見る鳴海

 鳴海は紘の顔を見た瞬間話途中で口を閉じる

 狐のお面を鳴海に差し出す紘


紘「(狐のお面を鳴海に差し出して)頼まれてくれないか?」


 再び沈黙が流れる


紘「(狐のお面を顔を逸らしている鳴海に差し出したまま)そう難しい役所じゃない」


 鳴海は再び狐のお面を鳴海に差し出して来ている紘から顔を逸らす

 紘から顔を逸らしたまま少し悩んだ後、紘から狐のお面を受け取る鳴海


紘「ありがとう」

鳴海「(紘から顔を逸らしたまま)い、いや・・・」

紘「由夏理」

由夏理「うん」


 鳴海は紘から顔を逸らすのをやめる

 キスをする由夏理と紘

 鳴海は由夏理と紘の呆然としながら見ている


すみれ「ヒューヒュー!」


 紘は由夏理とキスをするのをやめる


紘「(由夏理とキスをするのをやめて)また明日会おう」


 由夏理は頷く


紘「じゃあな、潤、すみれ」

潤「ああ」

 

 すみれは紘に手を振る


すみれ「(紘に手を振って)バイバイ」


 紘は走って緋空浜から離れて行く

 走って行っている紘の後ろ姿を呆然と見ている鳴海


由夏理「(自慢げに)どうだい少年、私の彼氏、なかなかイケてるでしょー?」

鳴海「(走って行っている紘の後ろ姿を呆然と見たまま)い、イケてるかはさておき・・・な、仲が良いのは分かった・・・」

由夏理「そりゃあ付き合ってるからねー」

鳴海「(走って行っている紘の後ろ姿を見たまま)そ、そうか・・・」


 鳴海は走って行っている紘の後ろ姿を見続ける


 時間経過


 鳴海は狐のお面を被っている

 ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けている潤

 すみれは太陽の光をレフ板に反射させて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らしている


鳴海「(狐のお面を被ったまま)お、俺はどうすれば良いんだ?」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま)由夏理に合わせてセリフを吐け」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)せ、セリフって台本とかないのか?」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま)ねえよ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)だ、台本がないのにドラマなんか作れるわけないだろ!!」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま)ドラマじゃなくてムービーな」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)そ、そんな細かいことを訂正する前に台本を・・・」


 すみれはレフ板を下げて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らすのをやめる

 ポケットから小さなメモ用紙を取り出すすみれ

 すみれはレフ板を下げたまま小さなメモ用紙を狐のお面を被っている鳴海に差し出す


すみれ「(レフ板を下げたまま小さなメモ用紙を狐のお面を被っている鳴海に差し出して)はい、キョドキョド」

鳴海「(狐のお面を被り小さなメモ用紙をすみれに差し出されたまま)な、何ですか・・・?」

すみれ「(レフ板を下げて小さなメモ用紙を狐のお面を被っている鳴海に差し出したまま)台本のようなもの・・・?」


 鳴海は狐のお面を被り小さなメモ用紙をすみれから受け取る


鳴海「(狐のお面を被ったまま小さなメモ用紙をすみれから受け取って)あ、ありがとうございます・・・さすがすみれさんは頼りになりますね・・・」

すみれ「どうして私の名前を知ってるんですか?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)へっ・・・?」

すみれ「キョドキョドは、どうして、私の、名前を、知ってるんですか?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)そ、それは・・・す、すみれさんが有名人だからです!!」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま)こいつ、また喧嘩を売ってるらしいぞ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)う、売ってねえよ!!」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま)由夏理のダチじゃなきゃてめえの間抜け面に一発ぶち込んでたところだ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)あ、あんたの方が喧嘩を売ってるだろ!!」


 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けるのをやめる


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けるのをやめて)てめえはさっきから女優に失礼をこきまくってるんだぞ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)じょ、女優?」

すみれ「やめてよ、潤くん」

潤「すみれ、こいつは女優のお前に・・・」

すみれ「(潤の話を遮って)女優じゃなくて女優の卵です」

潤「でもテレビに出てたじゃねえか!!」

すみれ「1カットだけだしセリフも一言だけでしたよ」

潤「テレビに1カットしか出てなくても俺の愛する彼女に失礼なことを言う奴は許せねえ!!」

すみれ「ありがとう潤くん、後でデートをしてあげるから今は大人しくしていましょうね」

潤「おう!!」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)す、すみれさんが・・・女優・・・?」

由夏理「少年、テレビって知ってる?でっかい箱みたいな物で、映像を映し出す・・・」

鳴海「(狐のお面を被ったまま由夏理の話を遮って)ば、馬鹿にするなよ」

由夏理「だって君、この世界のことをなーんも分かってなさそうじゃん」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)い、いくら俺が馬鹿でもテレビくらい知っているぞ」

由夏理「なるほど・・・少年は自称佐田奈緒衛で、テレビのことは知ってると・・・」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)す、既に高校を卒業しているという情報も忘れないでくれ」

由夏理「そっかそっか、年下っぽく見える少年が実は年上だったって覚えておく」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)あ、ああ」

潤「お前、何で名前を隠すんだよ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)い、色々事情があるんだ」

すみれ「事情って言えないようなことが?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)そ、そうです」

由夏理「名前を隠す訳をお姉さんたちに話してみなよー、ひろーい心で受け止めてあげるからさー」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)な、なんか信用出来ないんだが・・・」

由夏理「私らの信頼度は気にしなさんなよ少年、だから君の秘密を告白してちょうだい」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「(狐のお面を被ったまま)お、俺が名前を言わないのはだな・・・」

由夏理「何々?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)お、お、お、お、お、俺が・・・」

潤「お、ばかっかだな」

すみれ「そうだね」


 再び沈黙が流れる


由夏理「まーた黙っちゃったじゃーん!!」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)す、すまん・・・」


 少しの沈黙が流れる


由夏理「じゃあそろそろ撮影始めようかねー」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)な、名前を隠す訳を聞かないのか・・・?」

由夏理「ん、もちろん今聞いてあげても良いんだけど、君が言いたくなった時に聞くのが一番かなって思ってさ」

潤「まあ俺たちも無理して言いたくないことを言わせるほど悪魔じゃねえしな」

すみれ「うんうん」

由夏理「でも少年、私はこれでも気になってるんだからね、少年の名前が何なのか」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)い、いつか言うよ」

由夏理「いつか、ね・・・そのいつかを待って、私たちはキツネ様の奇跡を完成させないとなー・・・」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)キツネ様の奇跡?」

すみれ「潤くんが撮ってる自主映画のタイトルです」

鳴海「(狐のお面を被ったまま小声でボソッと)親子揃って作品のテーマは奇跡か・・・」

すみれ「ん?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま慌てて)な、何でもないです!!」

潤「勘違いするんじゃねえぞ紘の代理、俺はお前になんか興味ねえ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)わ、分かってるよ」


 鳴海は狐のお面を被ったまますみれから貰った小さなメモ用紙を見る

 小さなメモ用紙には”今日の撮影、シーン13、カット3、緋空浜でユカリとキツネ様の会話”と書かれている


鳴海「(狐のお面を被ったまま小さなメモ用紙を見て)こ、これは・・・台本なのか・・・?」

潤「台詞回しは自分で考えろよ」


 鳴海は狐のお面を被ったまま小さなメモ用紙を見るのをやめる


鳴海「(狐のお面を被ったまま小さなメモ用紙を見るのをやめて)は・・・?」

潤「俺たちは今から波音ヌーヴェルバーグを作るんだぞ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)ぬ、ヌーヴェルバーグって何だ?」

由夏理「潤は映画で波音町に新しい波を起こしたいんだってさ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)い、意味が分からないんだが・・・」

潤「俺は夢の中を泳いでるような映画を撮りてえんだ」


 再び沈黙が流れる


由夏理「高三最後の夏休み、つまり私たちにとって最後の青春を、君にも付き合って欲しいわけだよ少年」


 鳴海は狐のお面を被ったまま再び小さなメモ用紙を見る


鳴海「(狐のお面を被ったまま小さなメモ用紙を見て)だ、だがこのメモには撮影シーンの詳細が雑に書いてあるだけだぞ」

すみれ「雑・・・かな・・・?」

 

 鳴海は狐のお面を被ったまま小さなメモ用紙を見るのをやめるう


鳴海「(狐のお面を被ったまま小さなメモ用紙を見るのをやめて)ざ、雑過ぎてこれじゃ手伝いたくても手伝えませんよ!!」

潤「こいつ、手伝いたいとか言いつつも本当は手伝う気がないんだろ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)そ、そうじゃねえ。す、すみれさんから貰ったメモを見ても物語の内容が・・・」

潤「(鳴海の話を遮って)てめえすみれに話があるんだったらまずは俺の顔を通してからだぞ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)お、落ち着け、お、俺は別にあなたたちと争いたいわけじゃないんだ」

すみれ「でも争いを持ち込むを人はみんなそう言うよ、別に争いたかったわけじゃないって」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)そ、そうなのか・・・じゃなくて、そうなんですか・・・?」

すみれ「どうしてキョドキョドは私にだけ敬語なの?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)と、特に深い意味は・・・」

由夏理「少年はすみれのことが好きなのかい」

鳴海「(狐のお面を被ったまま大きな声で)そ、そんなわけないだろ!!!!」

潤「もしてめえがすみれのことが好きで俺に喧嘩を・・・」

鳴海「(狐のお面を被ったまま潤の話を遮って大きな声で)喧嘩なんかしねえよ!!!!」


 少しの沈黙が流れる


すみれ「キョドキョド」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)な、なんすか・・・?」

すみれ「私のことが好きなのは嬉しいけど、私は潤くんとお付き合いしているから、キョドキョドのラブメッセージは受け取れませんよ」

由夏理「(少し笑って)君、フラれちゃったね」


 再び沈黙が流れる


鳴海「(狐のお面を被ったまま小声でボソッと)な、何でこんなに話が通じないんだ・・・まだ文芸部や軽音部の連中との方が会話が成り立った気がするぞ・・・」

潤「すみれ、シーン13を撮るぞ」

すみれ「はーい」


 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向ける

 下げていたレフ板を上げ、太陽の光を反射させて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らすすみれ


由夏理「少年にはキツネ様の奇跡のあらすじを教えてあげよう」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)あ、ああ・・・」

由夏理「主人公は私が演じるユカリ、彼女は恋人と上手くいってないんだけど、波音町に存在している神様、キツネ様がユカリの前に現れて・・・」


 時間経過


 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗き撮影をしている

 変わらず太陽の光をレフ板に反射させて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らしているすみれ


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗き撮影をしたまま)どうした?もう回ってるんだぞ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)ほ、本当にそんなセリフで良いのか?」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗き撮影を)ヌーヴェルバーグは何でもありなんだよ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)だ、だからそのヌーヴェルバーグとやらがよく分からないままなんだが・・・」

由夏理「少年、私が言った通りにやってみて。君なら上手く出来ると思うからさ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)お、おう・・・」

由夏理「じゃあいくよ」


 鳴海は狐のお面を被ったまま頷く


由夏理「君がキツネ様なの?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)そ、そ、そ、そうだよ」


 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗いたままカメラの撮影ボタンを押す


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗いたままカメラの撮影ボタンを押して)カットだ馬鹿たれ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)お、俺がいけなかったのか?」


 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたままファインダーを覗くのをやめる


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたままファインダーを覗くのをやめて)てめえだよ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)な、何が悪かったんだ?」

すみれ「(太陽の光をレフ板に反射させて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らしたまま)キョドキョドは不自然過ぎたかな」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)ふ、不自然って・・・俺は演技未経験なんですよ・・・」

由夏理「私も未経験だって」


 少しの沈黙が流れる


すみれ「(太陽の光をレフ板に反射させて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らしたまま)由夏理、緊張をほぐすために何か見せてあげたらどうですか?」

由夏理「よし・・・潤、小銭貸して」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま)何で俺の金を・・・」

由夏理「撮影を手伝ってあげてるんだから良いじゃん。ね?貸してよ」


 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま、渋々ポケットから500円玉を一枚取り出す 

 ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま、500円玉を由夏理に差し出す潤


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま、500円玉を由夏理に差し出して)後で必ず返すんだぞ」


 由夏理は500円玉を潤から受け取る


由夏理「(500円玉を潤から受け取って)もちろん返すとも。さあ少年、よーく見ててね」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)あ、ああ」


 由夏理は500円玉を右手の親指に乗せる

 右手に乗せていた500円玉を弾く由夏理

 由夏理は宙に浮かんだ500円玉を素早く左右のどちらかの手で取る

 両手で拳を作り、狐のお面を被った鳴海の前に突き出す由夏理


由夏理「(両手の拳を狐のお面を被った鳴海の前に突き出して)どっちに入ってるでしょう?」


 鳴海は狐のお面を被ったまま目の前に突き出されている由夏理の両手の拳を見る


鳴海「(狐のお面を被ったまま目の前に突き出されている由夏理の両手の拳を見て)右手か・・・?」


 由夏理は右手を開き、右手のひらを狐のお面を被った鳴海に見せる

 由夏理の右手のひらに500円玉はない


鳴海「(狐のお面を被り目の前に突き出されている由夏理の左手の拳を見たまま)右にないなら左だろ?」


 由夏理は右手に続き左手を開き、左手のひらを狐のお面を被った鳴海に見せる

 右手同様に、由夏理の左手のひらに500円玉はない

 開いた両手を狐のお面を被った鳴海によく見せる由夏理


由夏理「(開いた両手を狐のお面を被った鳴海によく見せて)残念でした〜」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理の両手のひらを見ながら)ど、どこにやったんだ?」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま)由夏理は亜空間に金を飛ばして宇宙の法則を捻じ曲げたんだよ」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理の両手のひらを見ながら)亜空間に金を飛ばして・・・宇宙の法則を・・・?」

すみれ「(太陽の光をレフ板に反射させて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らしたまま)潤くんは格好付けて難しいことを言いたいんです」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま)違うなすみれ・・・俺はロマンに取り憑かれ、宇宙の神秘を・・・」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理の両手のひらを見ながら潤の話を遮って)そんなことよりも結局は金はどこに行ったんだ?」


 由夏理は開いた両手を狐のお面を被った鳴海に見せるのをやめる


由夏理「(開いた両手を狐のお面を被った鳴海に見せるのをやめて少し笑って)君には特別に魔法を見せてあげよう」


 由夏理は両手で何かを投げるような動作をする 

 続けて何かをキャッチするような動作をし、素早く両手で拳を作る由夏理

 由夏理は再び両手の拳を狐のお面を被った鳴海の前に突き出す

 狐のお面を被ったまま目の前に突き出されている由夏理の両手の拳を見る鳴海


鳴海「(狐のお面を被ったまま目の前に突き出されている由夏理の両手の拳を見て)ど、どちらにも入ってないはずだろ?」

由夏理「(両手の拳を狐のお面を被った鳴海に突き出したまま)そういうずるいのは無しだって少年。だからどっちか選んでよ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま目の前に突き出されている由夏理の両手の拳を見たまま)じゃあ・・・左だ」


 由夏理はゆっくり両手を開き、手のひらを狐のお面を被った鳴海に見せる

 由夏理の右手、左手の上にはそれぞれ一枚ずつ500円玉がある

 由夏理が行ったマジックは、Chapter6◯783で滅びかけた世界の老人がナツとスズに見せたマジックと完全に同じ

 鳴海は狐のお面を被ったまま由夏理の両手の上の500円玉を見ている


鳴海「(狐のお面を被り由夏理の両手の上の500円玉を見たまま)ふ、増えてるじゃないか」

由夏理「(両手のひらを狐のお面を被った鳴海に見せたまま少し笑って)そりゃマジックだからね」

鳴海「(狐のお面を被ったまま由夏理の両手の上の500円玉を見て)す、凄い技だな・・・」


 由夏理は両手のひらを狐のお面を被った鳴海に見せるのをやめる

 500円玉の一枚を狐のお面を被った鳴海に差し出す


由夏理「(500円玉の一枚を狐のお面を被った鳴海に差し出して)このお金で撮影後に冷えた缶ジュースでも買うと良いさ、少年」

鳴海「(狐のお面を被り500円玉の一枚を由夏理に差し出されたまま)な、何もしてないのに金を貰うわけには・・・」

由夏理「(500円玉の一枚を狐のお面を被った鳴海に差し出したまま)君、変なところで遠慮してると人生を損するよ」


 再び沈黙が流れる


由夏理「(500円玉の一枚を狐のお面を被った鳴海に差し出したまま)ほら、受け取って」


 少し悩んだ後、鳴海は狐のお面を被ったまま500円玉の一枚を由夏理から受け取る

 狐のお面を被ったまま由夏理から貰った500円玉をポケットにしまう鳴海


由夏理「よーし、これで撮影を再開・・・」

すみれ「(太陽の光をレフ板に反射させて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らしたまま由夏理の話を遮って)由夏理、潤くんの500円は?」

由夏理「か、借りたって言わなかった?」

すみれ「(太陽の光をレフ板に反射させて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らしたまま)借りた物は返さなきゃいけない、そうでしょう?」


 少しの沈黙が流れる


すみれ「(太陽の光をレフ板に反射させて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らしたまま)まさかお金を盗むつもりじゃないですよね?由夏理」

由夏理「別に盗まないって・・・」


 由夏理はもう一枚の500円玉を潤に差し出す

 ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま、500円玉を由夏理から受け取る


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま、500円玉を由夏理から受け取って)全く油断も隙もない女だな・・・」

由夏理「そいつはどうも・・・」


 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま、500円玉をポケットにしまう


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま、500円玉をポケットにしまって)紘の代理、緊張はほぐれたか?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)ま、まあな」

由夏理「お姉さんたちのおかげだね、少年」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)あ、ああ」

すみれ「じゃあさっきのところをもう一度撮りましょう、由夏理、キョドキョド、準備をお願い」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)じゅ、準備って・・・?」

すみれ「心の準備だよ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)わ、分かりました・・・ちょっと待っててください・・・」


 鳴海は狐のお面を外す

 狐のお面を見る鳴海


鳴海「(狐のお面を見て小声で)ぜ、全力だ・・・全力でやるんだ・・・こ、これは俺の夢なんだから、俺の思い通りになるはず・・・合同朗読劇を思い出せ・・・響紀が言ってたじゃないか・・・お、俺は人の上に立って物事を成功させることが出来るって・・・高校生のすみれさんたちに大人の力を教えてやるんだ・・・良いか・・・た、確かに演技は未経験だが、俺には文芸部で培った経験値がある・・・朗読劇で奈緒衛を演じた時のように、俺はキツネ様とかいう意味不明なキャラクターを・・・」


 狐のお面を見たままぶつぶつ独り言を言っている鳴海のことを見ている由夏理、すみれ、潤


すみれ「(太陽の光をレフ板に反射させて鳴海と由夏理のことを照らして、狐のお面を見てぶつぶつ独り言を言っている鳴海のことを見たまま)何言ってるんだろう」

潤「(ビデオカメラを鳴海と由夏理に向けたまま、狐のお面を見てぶつぶつ独り言を言っている鳴海のことを見たまま)さあな」

由夏理「(狐のお面を見てぶつぶつ独り言を言っている鳴海を見たまま)少年、リラックスして」


 鳴海は狐のお面を見るのをやめる


鳴海「(狐のお面を見るのをやめて)だ、大丈夫だ。俺は大丈夫だ」


 再び沈黙が流れる


由夏理「(鳴海のことを見たまま)君、本当に大丈夫なの?」

鳴海「お、おう」


 鳴海は狐のお面を被る


鳴海「(狐のお面を被って)さ、撮影とやらをやろうじゃないか」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて鳴海のことを見たまま)セリフを噛むなよ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)し、心配するな。せ、セリフを噛まずに読むのは俺の得意分野なんだ」


 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま鳴海のことを見るのをやめる

 ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま、ファインダーを覗く潤


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま、ファインダーを覗いて)さっきは死ぬほど噛んでいたけどな」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)さ、さっきはさっきだろ」


 すみれは太陽の光をレフ板に反射させて鳴海と由夏理のことを照らしたまま鳴海のことを見るのをやめる


すみれ「(太陽の光をレフ板に反射させて鳴海と由夏理のことを照らしたまま鳴海のことを見るのをやめて)潤くん、キョドキョドを緊張させないで」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗いたまま)分かってるよすみれ」


 由夏理は鳴海のことを見るのをやめる


由夏理「(鳴海のことを見るのをやめて少し笑って)大丈夫だって二人とも、私少年となら出来る気がするからさ」


 鳴海は狐のお面を被ったままチラッと由夏理のことを見る


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗いたまま)その言葉嘘じゃないと信じてやるか・・・」


 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗き撮影ボタンを押して撮影を始める


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗き撮影ボタンを押して撮影を始めて)シーン13、カット3、テイク2、アクション!!」


 少しの沈黙が流れる


由夏理「君がキツネ様なの?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)そうだよ」


 狐のお面を被った鳴海と由夏理が撮影しているシーンは、◯1690で菜摘が見ていた”キツネ様の奇跡”の由夏理と狐のお面を被った紘が会話をするシーンと完全に同じ


鳴海「(狐のお面を被ったまま)僕は・・・君が夢の中で望んだからやって来たんだ」

由夏理「望んだのかな、私」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)望んださ。(少し間を開けて)君がジュリエットになりたくなかったら、緋空浜から離れたかったら、涙が止まらなかったら、現実から映画の世界に入りたかったら、夢の中でキツネ様と3回唱えるんだ。そしたら僕が君の前に現れて、奇跡を起こすよ」

由夏理「奇跡?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)ああ」

由夏理「私、永遠が欲しいんだ」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)太陽が沈んで月が浮かび、日が変わって、恋人と喧嘩してしまうのが嫌なんだね?」

由夏理「うん。幸せなおとぎ話みたいな人生じゃなきゃ嫌なの」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)それなら夢の中で僕の名前を3回唱えてくれ。キツネ様・・・キツネ様・・・キツネ様・・・」

由夏理「キツネ様は私の世界を変えてくれる?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)変えるよ。太陽をもっと眩しくする。月をもっと神秘的にする。海をもっと深くする。山をもっと・・・」

由夏理「(鳴海の話を遮って)私はこの町から逃げられない・・・キツネ様、私がヒロと出会ってから、波音町は私から自由を奪うようになったんだ」


 再び沈黙が流れる


由夏理「どこか遠くの地へ行ってしまいたいけど・・・それが出来ない」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)君は・・・危険なものに惹かれているんだ・・・」

由夏理「危険なものって・・・愛・・・?」


 鳴海は狐のお面を被ったまま頷く


由夏理「キツネ様は謎に満ちてるね」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)君だって謎に満ちているさ」

由夏理「私のことが知りたい?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)ああ」

由夏理「私の過去?それとも未来?キツネ様は私の何が知りたいの?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)全てだよ」

由夏理「神様なのに知りたいんだ・・・」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)神様なんて、名ばかりの存在さ」

由夏理「そうだね、君が本当にキツネ様なのかも分からないもんね」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)でも僕たちが出会ったのは奇跡だ。その事実は揺るがない」

由夏理「私は今、現実で奇跡を見てるの?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)そうだよ。ここは映画の中でも、夢の中でも、海の中でもない、現実なんだ」


 少しの沈黙が流れる

 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗いたままカメラの撮影ボタンを押す


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けて、ファインダーを覗いたままカメラの撮影ボタンを押して)カットだカットカット!!」

由夏理「すっごい良かったよ少年!!」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)えっ・・・?」


 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたままカメラのファイダーを覗くのをやめる


潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたままカメラのファイダーを覗くのをやめて)てめえは紘より演技が出来るかもしれねえな」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)そ、そうか・・・?」

すみれ「キョドキョドも一緒に役者を目指す?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)い、いや・・・目指しませんけど・・・」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま)この勢いで次のシーンも・・・」

由夏理「(潤の話を遮って)あーごめん、私そろそろバイトだからさ」

潤「(ビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けたまま)何で紘も由夏理もここぞって時にバイトを入れやがるんだよ」

由夏理「そりゃあ働き盛りだしねー」


 すみれはレフ板を下げて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らすのをやめる


すみれ「(レフ板を下げて狐のお面を被った鳴海と由夏理のことを照らすのをやて)潤くん、今日の撮影はここら辺で終わりにしましょう?」


 再び沈黙が流れる

 潤はビデオカメラを狐のお面を被った鳴海と由夏理に向けるのをやめる

 舌打ちをする


潤「(舌打ちをして)チッ・・・これじゃ全然完成しねえ・・・」

すみれ「潤くん」

潤「何だよ」

すみれ「今舌打ちしたよね」

潤「それが何だってんだ?」

すみれ「舌打ちをしたら反省文だよ」

潤「俺はその程度じゃ反省文は書かねえ、大体すみれ、たった一回の舌打ちで」

すみれ「(潤の話を遮って)一回でもいけませんよ、潤くん」


 少しの沈黙が流れる


潤「気をつけりゃあ良いんだろ・・・」

すみれ「うん」

由夏理「説教ならあっちではやらないでよー、私がまた店長に怒られるんだからさー」

すみれ「ごめん、由夏理」

潤「俺たちよりもお前んのところの店長はどうにかしてくれよ」

由夏理「悪いけどそれは無理な話だねー」

潤「あのクソジジイ・・・毎回毎回俺と紘に帰れって言ってきやがるんだよな・・・」

すみれ「それは潤くんがお仕事の邪魔をするからでしょう」

潤「邪魔はしてねえよ、ちょっくら騒いでたらあいつがブチギレるんだ」

すみれ「そのちょっくら騒ぐのがいけないんです」

潤「すみれ、頭ではいけないと分かっていてもだな、騒ぎたくなるのが男というもんなんだ」

すみれ「そんなことを言ったっていけないことはいけません」

由夏理「心配ないって二人とも、多分だけどこの時間の店長は外で休憩してるからさ」

潤「そいつはありがてえ!!行こうぜすみれ!!」

すみれ「私は騒がな・・・」


 潤はビデオカメラを持ってない方の手で話途中だったすみれのレフ板を持っていない方の手を握り、走る


すみれ「(潤にレフ板を持ってない方の手を引っ張られて走りながら)もう潤くんってば!!私の話を聞かなきゃデートしてあげないよ!!」

潤「(レフ板を持ってない方のすみれの手を引っ張って走りながら)デート出来なくて困るのはすみれも一緒じゃねえか!!」


 狐のお面を被った鳴海と由夏理は走って行っているすみれ、潤のことを見ている

 走って行っているすみれと潤のことを見るのをやめる由夏理

 由夏理は歩き出す

 鳴海は変わらず狐のお面を被ったまま走って行っているすみれと潤のことを見ている

 立ち止まる由夏理

 由夏理は振り返る


由夏理「(振り返って)何してんの?少年」


 鳴海は狐のお面を被ったまま走って行っているすみれと潤のことを見るのをやめる


鳴海「(狐のお面を被ったまま走って行っているすみれと潤のことを見るのをやめて)べ、別に・・・」

由夏理「すみれと潤のことが気になるのかい」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)そ、そういうわけじゃない」

由夏理「(少し笑って)君って分かりやすいからさ、狐のお面で顔を隠していても嘘をついてるってすぐバレちゃうね」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)う、嘘なんか・・・」

由夏理「(少し笑いながら)嘘なんか?」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)お、俺は・・・嘘をついてるつもりはない・・・」


 再び沈黙が流れる


由夏理「やっぱり君、あいつにそっくりだ」


 鳴海は狐のお面を被ったまま俯く


鳴海「(狐のお面を被ったまま俯いて)あなたの彼氏にか・・・?」

由夏理「うん」


 少しの沈黙が流れる


由夏理「少年」

鳴海「(狐のお面を被り俯いたまま)何だ・・・?」

由夏理「少年もおいでよ」

鳴海「(狐のお面を被り俯いて)俺は・・・あなたたちといても・・・良いのか」

由夏理「(少し笑って)何言ってるのさ、私たちは友達なのに」


 再び沈黙が流れる

 鳴海は狐のお面を被ったまま顔を上げる

 狐のお面を被ったまま歩き出す鳴海

 由夏理は狐のお面を被った鳴海に合わせて歩き出す


鳴海「(狐のお面を被ったまま)ば、バイトってどこでしてるんだ?」

由夏理「緋空浜、おっさんばっかが集まる小さな飲食店で、全然儲かってないんだけど、居心地だけは良いんだよねー・・・」


 狐のお面を被った鳴海と由夏理は話を続ける


鳴海「(狐のお面を被ったまま由夏理と話をしながら 声 モノローグ)奇しくも、母たちが作っているキツネ様の奇跡という作品は、俺自身や両親の関係が投影されているようだった」


◯1787鳴海の夢/“The Hizora are House”店内(約30年前/昼過ぎ)

 外は蝉が鳴いている

 約30年前の緋空浜の浜辺にあるお洒落で小さな居酒屋“The Hizora are House”にいる鳴海、由夏理、すみれ、潤

 店にはカウンターとテーブル席があり、50代くらいの3人の男の客がカウンターに向かって椅子に座っている

 カウンターの中には厨房があり、様々な調味料と料理道具が一式揃っている

 カウンターの奥にはワイン、ビール、ウイスキー、ウォッカ、ジン、ブランデー、ラム、リキュールなどのたくさんの種類の酒とグラスが置いてある

 店の壁にはレフ板が立てかけてある

 店からは緋空浜の浜辺が見える

 浜辺にはゴミがなく、◯1785の緋空浜に比べるととても綺麗

 太陽の光が緋空浜の波に反射し、キラキラと光っている

 緋空浜には釣りやウォーキングをしている人、海で泳いだり浜辺で遊んでいる人など様々な人がいる

 鳴海は狐のお面を被っている

 由夏理の服装は◯1690の菜摘が見ていた”キツネ様の奇跡”と完全に同じ

 由夏理は腰にエプロンをつけている

 由夏理はカウンターの中にいる

 すみれと潤はテーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている

 すみれと潤のテーブルの上には旧式のビデオカメラが置いてある

 すみれと潤は話をしている

 狐のお面を被ったまま店内を見ている鳴海


鳴海「(狐のお面を被り店内を見たまま)ここは居酒屋じゃないか・・・」

由夏理「少年も座りなよ」


 鳴海は狐のお面を被ったまま店内を見るのをやめる


鳴海「(狐のお面を被ったまま店内を見るのをやめて)あ、ああ」


 鳴海は狐のお面を被ったまますみれと潤がいるところと同じテーブルに向かって椅子に座る

 狐のお面を被ったままカウンターの中にいる由夏理のことを見る鳴海


カウンターにいる男の客1「由夏理ちゃん、酒!!」

由夏理「お酒は店長に頼んでよー」

カウンターにいる男の客2「店長ならさっきタバコを吸いに行っちまったんだって」

由夏理「まーたタバコー?」

カウンターにいる男の客3 「別れた奥さんの話をしたからなぁ・・・」

カウンターにいる男の客2「店長もいい加減、あんな女のことは忘れれば良いのによ・・・」

由夏理「25年間の結婚生活の果てに離婚したんだから簡単には忘れられないでしょー、しかも奥さんの方の浮気だったしさー」

カウンターにいる男の客1「男じゃなくても浮気はするってことだな」

由夏理「人は恋する生き物だからねー」

カウンターにいる男の客1「そうそう、惚れちまったら最後ってことで酒を頼む」

由夏理「はーい」

カウンターにいる男の客2「由夏理ちゃん、俺にも酒をくれ」

由夏理「いつもので良いの?」

カウンターにいる男の客2「いつものだ」

カウンターにいる男の客3「由夏理ちゃん、俺もこいつらと同じで」

由夏理「いつものご注文を承りましたー」


 由夏理はカウンターの奥にあったショットグラスを3個手に取る

 ショットグラスを3個カウンターに置く由夏理

 由夏理はカウンターの奥にに置いてあったウイスキーを2本を手に取る

 カウンターにいる男の客1が頼んだウイスキーをショットグラスに注ぐ由夏理

 続けてウイスキーをカウンターにいる男の客2、カウンターにいる男の客3のショットグラスに注ぐ由夏理

 由夏理はショットグラスにウイスキーを注ぐのをやめる

 ウイスキーが注がれたショットグラスをカウンターにいる男の客1、カウンターにいる男の客2、カウンターにいる男の客3の前に置く由夏理


由夏理「(ウイスキーが注がれたショットグラスをカウンターにいる男の客1、カウンターにいる男の客2、カウンターにいる男の客3の前に置いて)お待たせしましたー」


 カウンターにいる男の客1、カウンターにいる男の客2、カウンターにいる男の客3はウイスキーが注がれたショットグラスを手に取る


カウンターにいる男の客1「(ウイスキーが注がれたショットグラスを手に取って)美人な由夏理ちゃんに乾杯!」

カウンターにいる男の客2・カウンターにいる男の客3「(ウイスキーが注がれたショットグラスを持ったまま)乾杯!!」


 カウンターにいる男の客1、カウンターにいる男の客2、カウンターにいる男の客3はショットグラスで乾杯をして一気にウイスキーを飲み干す

 変わらず狐のお面を被ったままカウンターの中にいる由夏理のことを見ている鳴海

 すみれと潤は変わらず話をしている


潤「緋空浜でバイクのシーンが撮れなきゃな・・・」

すみれ「狐のお面を付けたままバイクを運転するんでしょう?危険じゃない?」

潤「スピードを落とせば大丈夫だと思うが・・・それよりも不安材料は撮影許可が貰えるかだ」

すみれ「何とか成功出来る道を探そうね、潤くん」

潤「ああ」

すみれ「潤くんの夢は私の夢だから、潤くんが描いたラストシーンを私たちが見て、それで大人になりましょう」

潤「そうだな、すみれ。一緒に夢を叶えようぜ」

すみれ「うん」


 由夏理はカウンターの中の厨房で料理をしている

 ローストビーフを薄く切り分けている由夏理

 カウンターには皿が置いてある

 由夏理は薄く切り分けたローストビーフを皿に丁寧に盛り付ける

 く切り分けたローストビーフを皿に丁寧に盛り付けて、近くに置いてあった胡椒とローストビーフのソースを手に取る由夏理

 由夏理はローストビーフのソースを薄く切り分けたローストビーフにかける

 ローストビーフのソースを薄く切り分けたローストビーフにかけるのをやめる由夏理

 由夏理はローストビーフのソースを元あった場所に置く

 薄く切り分けたローストビーフに胡椒を振りかける由夏理

 

カウンターにいる男の客1「由夏理ちゃん、胡椒は愛の味じゃないの?」

由夏理「(薄く切り分けたローストビーフに胡椒を振りかけながら)おじさんには申し訳ないけどそれは大切の人限定」


 由夏理は薄く切り分けたローストビーフに胡椒を振りかけるのをやめる

 胡椒を元あった場所に置く由夏理


カウンターにいる男の客2「大切な人って彼氏のことかよ〜」

由夏理「そうそう」

カウンターにいる男の客3「若いもんに負けるってのは辛いな・・・」

由夏理「おじさんたちも後30年若かったらね〜」


 由夏理はエプロンで手を軽く拭く

 エプロンで手を軽く拭いて、薄く切り分けて盛り付けられたローストビーフをカウンターにいる男の客1、カウンターにいる男の客2、カウンターにいる男の客3の前に置く

 

カウンターにいる男の客1「ケッ・・・タイムトラベルが出来たら若い頃の自分をここに連れて来て由夏理ちゃんに告白させるよ俺は」

由夏理「私お嫁さんを大事にしない男の人ってどうかと思うな〜」

カウンターにいる男の客1「大事にしてるんだよこれでも」


 由夏理は近くに置いてあった箸を3膳手に取る


由夏理「(近くに置いてあった箸を3膳手に取って)でも若い女の子をナンパしまくってるんでしょ〜?」

カウンターにいる男の客2「由夏理ちゃん、男にも事情があるんだよ」


 由夏理はローストビーフが薄く切り分けて盛り付けられている皿に箸を3膳置く


由夏理「(ローストビーフが薄く切り分けて盛り付けられている皿に箸を3膳置いて)事情ねー。私が奥さんだったらそういう事情は・・・」

カウンターにいる男の客3「(由夏理の話を遮って)ゆ、由夏理ちゃん、ジャグリングを見せてよ」

由夏理「あ、今話を変えようとしたでしょ」

カウンターにいる男の客3「ち、違う違う。店長がいないうちに由夏理ちゃんの大道芸が見たいんだよ」

由夏理「えー・・・」


 少しの沈黙が流れる


カウンターにいる男の客3「チップを払うからさ、見せてよ」

由夏理「弾んでくれるなら見せてあげるけどさ」

カウンターにいる男の客3「サービスするって由夏理ちゃん」

由夏理「分かったよおじさん。すみれ、ちょっと手伝ってくれない?」

すみれ「ん?お手玉やるの?」

由夏理「ジャグリングって言ってよ、これは正月にお婆ちゃんが見せるやつとは違うんだからさ」

すみれ「ジャグリング、ね、了解。でもバレたらまた店長さんに怒られない?由夏理」

由夏理「まあその時はその時で」

すみれ「良いのかなぁ・・・そんな考え方で・・・」

潤「手伝って来いよ、すみれ」

すみれ「うーん・・・」

鳴海「(狐のお面を被りカウンターの中にいる由夏理のことを見たまま)じゃ、ジャグリングをする気なのか?」

潤「ああ」

鳴海「(狐のお面を被りカウンターの中にいる由夏理のことを見たまま)し、失敗するリスクがあるんだったらやめとけよ」

由夏理「リスクなんかないって少年、私、手先だけは器用だからね」


 再び沈黙が流れる


潤「(狐のお面を被ったまま)紘の代理に由夏理の技を見せようぜ、すみれ」

すみれ「じゃあ・・・キョドキョドのために少しだけね・・・」


 すみれは立ち上がる

 カウンターの奥にあったジンのボトルを4本手に取る由夏理

 由夏理はカウンターから出る

 由夏理がいるところに行くすみれ

 由夏理はジンのボトルを2本すみれに差し出す

 ジンのボトルを2本由夏理から受け取るすみれ


すみれ「(ジンのボトルを2本由夏理から受け取って)タイミングは?」

由夏理「いつも通り、良きところで」

すみれ「分かった」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理のことを見たまま)お、おい、まさか酒のボトルを使うのか?」

由夏理「そのまさかだよ、少年」

カウンターにいる男の客2「坊主、由夏理ちゃんの恋人なんだからこのくらいのことは見慣れてるだろ?」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理のことを見たまま)い、いや、俺は・・・」

潤「こいつは紘じゃねえよ」

カウンターにいる男の客2「そ、そうなのか?シルエットが似てるもんだからてっきり奴かと・・・」

由夏理「少年は・・・」


 由夏理はジンのボトルを1本宙に投げる


由夏理「(ジンのボトルを1本宙に投げて)確かに紘に・・・」


 由夏理はもう1本のジンのボトルを宙に投げる

 ジンのボトル2本でジャグリングをする由夏理

 

由夏理「(ジンのボトル2本でジャグリングをして)よく似てるよね」


 由夏理がジャグリングをしている2本のジンのボトルは、天井スレスレのところまで上がっては落ちて来る

 由夏理のジャグリングを見ている狐のお面を被った鳴海、すみれ、潤、カウンターにいる男の客1、カウンターにいる男の客2、カウンターにいる男の客3


すみれ「(由夏理がジンのボトル2本で行っているジャグリングを見ながら)もう2本いくよ、由夏理」

由夏理「(ジンのボトル2本でジャグリングをしながら)オッケー」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理のジャグリングを見ながら)し、失敗したらどうするんだよ!?」

由夏理「(ジンのボトル2本でジャグリングをしながら)大丈夫だから見てなって少年、すみれ、投げて」

すみれ「(由夏理がジンのボトル2本で行っているジャグリングを見ながら)うん」


 すみれは由夏理がジンのボトル2本で行っているジャグリングを見ながら、持っていたジンのボトルの1本をジャグリングをしている由夏理に向かって軽く投げる

 ジンのボトル2本でジャグリングをしながら、すみれが投げたジンのボトル1本をキャッチしてジャグリングに加える由夏理

 由夏理はジンのボトル3本でジャグリングをしている

 拍手をするカウンターにいる男の客1、拍手をするカウンターにいる男の客2、拍手をするカウンターにいる男の客3

 

鳴海「(狐のお面を被り由夏理がジンのボトル3本で行っているジャグリングを見ながら)も、もう1本増やすつもりなら・・・」


 鳴海が狐のお面を被ったまま話をしている途中で、由夏理がジンのボトル2本で行っているジャグリングを見ながらもう1本のジンのボトルを由夏理に向かって軽く投げるすみれ

 由夏理はジンのボトル3本でジャグリングをしながら、すみれが投げたジンのボトル1本をキャッチしてジャグリングに加える

 ジンのボトル4本で器用にジャグリングをしている由夏理


由夏理「(ジンのボトル4本で器用にジャグリングをしながら)少年!!見てる!?」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理がジンのボトル4本で器用に行っているジャグリングを見ながら)も、もちろん見てはいるが・・・」

由夏理「(ジンのボトル4本で器用にジャグリングをしながら)凄いでしょ!?」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理がジンのボトル4本で器用に行っているジャグリングを見ながら)す、凄いのは分かったからもうやめるんだ、わ、割れたら怪我をするぞ」

由夏理「(ジンのボトル4本で器用にジャグリングをしながら)凄いと思ったなら素直に褒めてよー!!」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理がジンのボトル4本で器用に行っているジャグリングを見ながら)す、すまん・・・」

由夏理「(ジンのボトル4本で器用にジャグリングをしながら)少年は押しが弱いんだからさー!!そんなんじゃ女の子に嫌われちゃうぞー!!」

すみれ「(由夏理がジンのボトル4本で器用に行っているジャグリングを見ながら)嫌われちゃいますよ、キョドキョド」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理がジンのボトル4本で器用に行っているジャグリングを見ながら)す、すみれさんまで言わなくても・・・」

潤「(由夏理がジンのボトル4本で器用に行っているジャグリングを見ながら)嫌われるぞ紘の代理」

鳴海「(狐のお面を被り由夏理がジンのボトル4本で器用に行っているジャグリングを見ながら小声でボソッと)あんたは逆に押しが強過ぎるんだよ・・・」

由夏理「(ジンのボトル4本で器用にジャグリングをしながら)女の子は褒めて伸ばしてあげないとね少年」


 一人の男が店の中に入って来る

 店に入った来た男はタバコ休憩を終えた店長

 拍手をやめるカウンターにいる男の客1、カウンターにいる男の客2、カウンターにいる男の客3

 店長はジンのボトル4本で器用にジャグリングをしている由夏理のことを見る


店長「(ジンのボトル4本で器用にジャグリングをしている由夏理のことを見て怒鳴り声で)み、店の酒になんてことをしやがるんだバイト!!!!」

由夏理「(ジンのボトル4本で器用にジャグリングをしながら)ご、ごめんなさい!!」


 由夏理は素早くジャグリングをしていたジンのボトルを4本順番にカウンターの奥に置いていき、ジャグリングをやめる


由夏理「(ジャグリングをやめて)で、でも落としてませんよ店長!!」

店長「(由夏理のことを見たまま怒鳴り声で)何がでもだ!!!!お前は仕事をサボって貴志や早乙女たちと遊んでたんだろ!!!!」

由夏理「別に遊んでませんし!!」

店長「(由夏理のことを見たまま怒鳴り声で)貴志がいる時にいつも調子に乗るのはお前じゃねえか!!!!」


 少しの沈黙が流れる


すみれ「て、店長さん、今日は紘くんはいませんけど・・・」


 店長は由夏理のことを見るのをやめる

 狐のお面を被った鳴海のことを指差す店長


店長「(狐のお面を被った鳴海のことを指差して怒鳴り声で)じゃあそこにいるのは誰なんだよ!!!!」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)お、俺はだな・・・」

店長「(狐のお面を被った鳴海のことを指差したまま怒鳴り声で)仮面を外して素顔を見せろ!!!!」

鳴海「(狐のお面を被ったまま)あ、ああ」


 鳴海は狐のお面を外す

 狐のお面をテーブルの上に置く鳴海

 再び沈黙が流れる

 鳴海のことを指差すのをやめる


店長「(鳴海のことを指差すのをやめて)何だ貴志とは違うのか」

鳴海「べ、別人だからな」

店長「おいクソガキ」

鳴海・潤「クソガキじゃねえ!!」

すみれ「潤くんとキョドキョド息がぴったり」

潤「こいつはクソガキだが俺はクソガキじゃねえんだよ分かったかクソジジイ」

鳴海「お、俺をクソガキ扱いするなよ!!」

潤「卒業生だか何だか知らねえがお前はクソガキだ!!」

鳴海「そういうあんたが一番ガキ・・・」

潤「(鳴海の話を遮って怒鳴り声で)二人ともクソガキだろ!!!!店の邪魔をしやがって!!!!」

由夏理「店長、潤たちはお店を盛り上げて・・・」

店長「(由夏理の話を遮って怒鳴り声で)バイトのお前は外で掃除しろ!!!!」

由夏理「店長がすれば良いじゃん」

店長「(怒鳴り声で)黙って俺の言うことを聞け!!!!」

由夏理「全く怒りっぽい人なんだからさ・・・」

潤「すみれ、こんなしょっぼい店はやめて違うところに遊びに行こうぜ」

店長「(怒鳴り声で)しょぼいだあ!?」

潤「すみれ、こんなしょっぼくて雑魚い店はやめて違うところに遊びに行こうぜ」

すみれ「でも由夏理は?」

由夏理「私は店長に監禁されてるから二人で遊んで来なよ」


 潤は立ち上がる


潤「なら二本立てでも見るか・・・」

すみれ「あ、じゃあホラー映画にしようよ」

潤「ほ、ホラーはダメだすみれ」


 潤はテーブルの上のビデオカメラを手に取る

 

すみれ「怖いの?潤くん」

潤「こ、怖いわけねえだろ!!」

すみれ「潤くんは意外と怖がりなんだよね」

潤「す、すみれ!!お、俺は怖がりなんかじゃねえぞ!!」

すみれ「はいはい」

 

 すみれは立ち上がる

 店の壁に立てかけてあったレフ板を手に取る潤

 

潤「ほ、ホラーじゃなくてSFにしねえか、火星人をレーザーガンでぶっ殺すようなゲテモノ系の・・・」

すみれ「(潤の話を遮って)ゲテモノは嫌だ」

潤「火星人を爆発で吹っ飛ばすんだぞ、すみれ、楽しそうだと思わねえのか?」

すみれ「潤くん、先週見た木星からの侵略者Zもそんなような話だったでしょう?」

潤「あれは木星人で、今日のは火星人だ。チワワとドーベルマンくらいの違いが両者には・・・」


 すみれと潤は話をしながら店から出て行く

 再び沈黙が流れる

 

店長「よく喋るクソガキ共だ・・・」

由夏理「だからすみれと潤と一緒にいると楽しいんじゃん?」

店長「(怒鳴り声で)バイトは早くゴミ出しに行け!!!!」

由夏理「は、はいただいま!!」


 由夏理は走って店から出て行く

 鳴海のところにまでやって来る店長

 鳴海の前で立ち止まる


店長「(鳴海の前で立ち止まって)最後はお前だ」

鳴海「お、俺がなんすか?」

店長「お前は頼む気がなさそうだな」

鳴海「た、頼むって?」

店長「飯だよ飯、こう見えてもうちは居酒屋でな、未成年のクソガキだろうがジュース一つ頼まずに滞在されちゃ困るんだよ」

鳴海「そ、それは・・・す、すいません」


 少しの沈黙が流れる


店長「謝罪を行うとは立派だな」

鳴海「あ、謝るのは昔から得意・・・」

店長「(鳴海の話を遮って)頼む気がないなら今すぐここから出て行け」


 鳴海は慌てて立ち上がる


店長「早く」

鳴海「わ、分かったよ」


 鳴海は店から出て緋空浜に行く

 浜辺には変わらずたくさんの人がおり、釣りやウォーキングをしている

 鳴海は立ち止まって周囲を見る

 鳴海の遠くの方ではすみれと潤が浜辺を歩いている

 鳴海は周囲を見るのをやめる

 遠くの方で浜辺を歩いているすみれと潤の後ろ姿を見る鳴海


由夏理「あの二人もラブラブだよねー」


 鳴海は遠くの方で浜辺を歩いているすみれと潤の後ろ姿を見るのをやめる

 振り返る鳴海

 鳴海の後ろには両手にゴミの入った大きなゴミ袋を持った由夏理が立っている


鳴海「真面目なすみれさんが潤さんみたいな男と付き合うなんてな・・・」

由夏理「君、すみれのことを誤解してるよ」

鳴海「そ、そうか・・・?」

由夏理「(少し笑って)すみれはああ見えても隠れ不良なんだって、じゃなきゃ私や紘と友達になれなかっただろうし」

鳴海「す、すみれさんが不良かどうかはともかく良い友達なんだな」

由夏理「(少し笑いながら)まあね。ところで少年には私たちの他に友達がいないの?」

鳴海「えっ?」

由夏理「君、いつも一人だからさ」

鳴海「お、俺にだって友達くらい・・・」


◯1788Chapter6◯1101の回想/一条家リビング(昼過ぎ)

 外は快晴

  一条家のリビングにいる鳴海と嶺二

 鳴海はスーツ姿で袖をまくっており、スーツの下に着ているワイシャツの裾をズボンから出している

 嶺二はタキシードを着て、髪の毛をワックスで固めている

 雪音の家のリビングは和風で広く、床の半分以上が畳で出来ている

 雪音の家のリビングの照明は旅館にあるような和紙が巻いてあるペンダントライトと、同じく和紙が巻いてあるフロアランプの二種類

 鳴海と嶺二はテーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている

 話をしている鳴海と嶺二


鳴海「俺たちはただの腐れ縁だろ」

嶺二「まーその可能性も捨て切れねーか・・・」


◯1789Chapter6◯676の回想/波音高校三年三組の教室(朝)

 外は快晴

 教室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音

 朝のHRの前の時間

 神谷はまだ来ていない

 どんどん教室に入ってくる生徒たち

 教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている

 明日香は自分の席に座っている

 明日香の席の近くで明日香と話をしている鳴海

 菜摘、嶺二、雪音が教室の窓際で鳴海のことを見ながら話をしている 

 

明日香「もう昔みたいに優しくはしない。鳴海が困り果てても、私は助けないからね」


◯1790Chapter6◯1138の回想/波音高校休憩所(朝)

 波音高校の休憩所にいる鳴海と汐莉

 波音高校の休憩所には自販機、丸いテーブル、椅子が置いてあり、小さな広場になっている

 丸いテーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている鳴海と汐莉

 汐莉の目の前にはぶどうジュースが置いてある

 波音高校の休憩所には鳴海と汐莉以外生徒はいない

 鳴海は汐莉に手を差し出している

 鳴海の手を取る鳴海


汐莉「(差し出して来ている鳴海の手を取って)私と鳴海先輩の間にある壁は・・・越えない方が良いんです。お互いのために、これ以上親しくなるのはやめておきましょう」


 汐莉は差し出して来ている鳴海の手を鳴海の膝の上に乗せる


汐莉「(差し出して来ている鳴海の手を鳴海の膝の上に乗せて)先輩は私のことを名前で呼ばないでくださいね、私も、鳴海くんって絶対に呼びませんから。(少し間を開けて)これで今まで通りに戻りますよ、鳴海先輩」


◯1791回想戻り/鳴海の夢/緋空浜/(約30年前/昼過ぎ)

 蝉が鳴いている

 約30年前の緋空浜の浜辺にいる鳴海と由夏理

 太陽の光が緋空浜の波に反射し、キラキラと光っている

 緋空浜には釣りやウォーキングをしている人、海で泳いだり浜辺で遊んでいる人など様々な人がいる

 鳴海と由夏理がいるところは由夏理がバイトをしている居酒屋”The Hizora are House”の近く

 由夏理は腰にエプロンをつけており、両手にはゴミの入った大きなゴミ袋を持っている

 緋空浜の浜辺にはゴミがなく、◯1785の緋空浜に比べるととても綺麗

 話をしている鳴海と由夏理


鳴海「と、友達なら数え切れないほどいるぞ」

由夏理「少年はどうしてそんなに分かりやすい嘘をつくのさ」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「ご、ゴミ出しをするのか?」

由夏理「そうだよ、こう見えても私はキャリアウーマンだからね」

鳴海「きゃ、キャリアウーマンではないだろ・・・」

由夏理「少年、ツッコミをするならもっとはっきり言いなよ」

鳴海「あ、ああ」


 再び沈黙が流れる


鳴海「きゃ、キャリアウーマンではないだろ!!」

由夏理「ん、良いね良いね、私が求めてたのはまさにそういうツッコミだよ」

鳴海「そ、そうか・・・き、期待に添えて何よりだ」

由夏理「うん」


 少しの沈黙が流れる


由夏理「君さ、友達がいないならいつでも私たちのところにおいでよ」

鳴海「お、おいでって・・・ど、どこに行けば良いんだ?」

由夏理「(少し笑って)そんなの映画研究会に決まってるじゃん?」

鳴海「そ、そうか・・・あなたたちは映画研究会繋がりだったのか・・・」

由夏理「(少し笑いながら)気付くのが遅いって少年」

鳴海「しゅ、趣味で撮影をしてるのかと思ってたんだ」

由夏理「部活だよ部活」

鳴海「(驚いて)よ、4人だけで活動をしていても部活として認められるのか?」

由夏理「残念ながら私たちは映画研究会は非公式の部活。先公たちが部活は5人いなきゃ結成出来ないって頭の悪いことを言っててさ」

鳴海「あ、頭の悪いこと、か・・・確かにそうだよな・・・」

由夏理「(少し笑って)だから君が映研に入ってくれれば、私たちはモノホンの部活になれるんだよ」

鳴海「お、俺は卒業生だぞ」

由夏理「(少し笑いながら)少年、卒業生にしては年上っぽく見えないし、多分いけるって」

鳴海「(小声でボソッと)千春を文芸部に入れた時と同じやり方か・・・」

由夏理「えっ?」

鳴海「さ、誘ってくれたのは嬉しいんだが、俺はもう部活をやり切ったんだ」

由夏理「少年、何部だったの?」


 再び沈黙が流れる


鳴海「(声 モノローグ)し、しまった・・・面倒な質問が来たぞ・・・こ、この時代に文芸部が存在していたのか分からない以上、ここは適当に答えるしか・・・」

由夏理「少年・・・?」

鳴海「ぶ、ぶんげ・・・じゃ、じゃなくて俺は秘密結社竹とんぼ同好会に所属していたんだ!!」

由夏理「(少し笑って)やっぱりさ、君って面白いよね」

鳴海「そ、そうか?」

由夏理「(少し笑いながら)うん。きっと少年は潤と仲良くなれるよ、君たちはまだ色々拗らせてるみたいだし?」


 少しの沈黙が流れる


由夏理「で?本当は文芸部に所属してたの?少年」

鳴海「ど、どうしてそれを・・・」

由夏理「私さ、人の心が読めるんだ。透視ってやつが出来るんだよ」

鳴海「(驚いて)そ、そんなことが出来るのか!?」


 再び沈黙が流れる


由夏理「君、純粋過ぎ。他人が何を考えてるかなんて私に分かるわけないじゃん」

鳴海「じゃ、じゃあ・・・(少し間を開けて)どうして俺が文芸部員だったってことを知ってるんだ・・・?」

由夏理「(少し笑って)さっき少年は、ぶんげ・・・って言いかけた後に秘密結社竹とんぼ会に所属してたってお馬鹿さんな嘘をついたからね」

鳴海「な、なるほど・・・」

由夏理「でも文芸部ってさ」

鳴海「ああ」

由夏理「(小さな声で)波高に・・・」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「ぶ、文芸部がどうかしたのか?」

由夏理「(少し笑って)まあそういうことだよ、少年」

鳴海「な、何がそういうことなんだ」

由夏理「(少し笑いながら)友達がいなかったら、いつでも私たちのところにおいでってこと。大歓迎するからさ」

鳴海「あ、ああ」

由夏理「もしかしたら私たちの方が人手不足で、少年のことを呼び出すかもしれないからね?」

鳴海「ど、どうやって呼び出すつもりだ?」

由夏理「そんなの少年が言ってたじゃん。夢の中で3回唱えろって」

鳴海「そ、それはキツネ様の奇跡のセリフじゃないか」

由夏理「(少し笑って)そのセリフを言ったのは君でしょ?」

鳴海「お、俺は潤さんの指示に従っただけで・・・」

由夏理「(鳴海の話を遮って)分かってるって少年。君とはまだまだ付き合いが続きそうな気がしてさ、もちろん、それでも君の心は読めないけどね」


 再び沈黙が流れる


由夏理「じゃあ・・・少年、またいつか・・・」

鳴海「(由夏理の話を遮って)ご、ゴミ出しをするんだったら俺にも手伝わせてくれ!!」

由夏理「(少し笑って)私とゴミ出しなんかしても楽しくないと思うよー」

鳴海「きょ、協力したって良いじゃないか!!」

由夏理「ありがと少年、でも気持ちだけで十分だって」

鳴海「そ、そんな・・・」

由夏理「落ち込むことじゃないでしょ?たかがバイトの掃除なんだからさ」


 少しの沈黙が流れる


由夏理「じゃあ少年・・・チャオ」

鳴海「ちゃ、チャオ・・・」


 由夏理は両手にゴミの入った大きなゴミ袋を持ったまま、”The Hizora are House”の裏側に行く

 鳴海は変わらず”The Hizora are House”の近くで立っている

 緋空浜の海を見る鳴海

 波には変わらず太陽の光が反射し、キラキラと光っている

 鳴海は緋空浜の海を見続ける


◯1792貴志家鳴海の自室(日替わり/朝)

 片付いている鳴海の部屋

 ベッドで眠っている鳴海

 鳴海の部屋はカーテンが閉められている

 鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない

 机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、くしゃくしゃになったてるてる坊主が置いてある

 机の上のてるてる坊主には顔が描かれている

 ベッドで眠っていた鳴海が目を覚ます

 体を起こす鳴海

 鳴海はボーッとしている


鳴海「(ボーッとしたまま 声 モノローグ)俺は・・・俺は限りなく現実の過去と等しい世界を、夢を通して見ていたのだろうか?」


 ベッドから出る鳴海

 鳴海はカーテンを開ける

 外は快晴

 外は波音高校に登校している生徒がたくさんいる

 外を見ている鳴海


鳴海「(外を見ながら 声 モノローグ)高校三年生の母と夢の中で出会うのはもう3回目にもなるが、俺はまだ母のことを何も分かっていないような気がしてならなかった」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ