Chapter7♯2 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter7 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
登場人物
貴志 鳴海 19歳男子
Chapter7における主人公。昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の副部長として合同朗読劇や部誌の制作などを行っていた。波音高校卒業も無鉄砲な性格と菜摘を一番に想う気持ちは変わっておらず、時々叱られながらも菜摘のことを守ろうと必死に人生を歩んでいる。後に鳴海は滅びかけた世界で暮らす老人へと成り果てるが、今の鳴海はまだそのことを知る由もない。
早乙女 菜摘 19歳女子
Chapter7におけるもう一人の主人公でありメインヒロイン。鳴海と同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の部長を務めていた。病弱だが性格は明るく優しい。鳴海と過ごす時間、そして鳴海自身の人生を大切にしている。鳴海や両親に心配をかけさせたくないと思っている割には、危なっかしい場面も少なくはない。輪廻転生によって奇跡の力を引き継いでいるものの、その力によってあらゆる代償を強いられている。
貴志 由夏理
鳴海、風夏の母親。現在は交通事故で亡くなっている。すみれ、潤、紘とは同級生で、高校時代は潤が部長を務める映画研究会に所属していた。どちらかと言うと不器用な性格な持ち主だが、手先は器用でマジックが得意。また、誰とでも打ち解ける性格をしている
貴志 紘
鳴海、風夏の父親。現在は交通事故で亡くなっている。由夏理、すみれ、潤と同級生。波音高校生時代は、潤が部長を務める映画研究会に所属していた。由夏理以上に不器用な性格で、鳴海と同様に暴力沙汰の喧嘩を起こすことも多い。
早乙女 すみれ 46歳女子
優しくて美しい菜摘の母親。波音高校生時代は、由夏理、紘と同じく潤が部長を務める映画研究会に所属しており、中でも由夏理とは親友だった。娘の恋人である鳴海のことを、実の子供のように気にかけている。
早乙女 潤 47歳男子
永遠の厨二病を患ってしまった菜摘の父親。歳はすみれより一つ上だが、学年は由夏理、すみれ、紘と同じ。波音高校生時代は、映画研究会の部長を務めており、”キツネ様の奇跡”という未完の大作を監督していた。
貴志/神北 風夏 25歳女子
看護師の仕事をしている6つ年上の鳴海の姉。一条智秋とは波音高校時代からの親友であり、彼女がヤクザの娘ということを知りながらも親しくしている。最近引越しを決意したものの、引越しの準備を鳴海と菜摘に押し付けている。引越しが終了次第、神北龍造と結婚する予定。
神北 龍造 25歳男子
風夏の恋人。緋空海鮮市場で魚介類を売る仕事をしている真面目な好青年で、鳴海や菜摘にも分け隔てなく接する。割と変人が集まりがちの鳴海の周囲の中では、とにかく普通に良い人とも言える。因みに風夏との出会いは合コンらしい。
南 汐莉 16歳女子
Chapter5の主人公でありメインヒロイン。鳴海と菜摘の後輩で、現在は波音高校の二年生。鳴海たちが波音高校を卒業しても、一人で文芸部と軽音部のガールズバンド”魔女っ子の少女団”を掛け持ちするが上手くいかず、叶わぬ響紀への恋や、同級生との距離感など、様々な問題で苦しむことになった。荻原早季が波音高校の屋上から飛び降りる瞬間を目撃して以降、”神谷の声”が頭から離れなくなり、Chapter5の終盤に命を落としてしまう。20Years Diaryという日記帳に日々の出来事を記録していたが、亡くなる直前に日記を明日香に譲っている。
一条 雪音 19歳女子
鳴海たちと同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部に所属していた。才色兼備で、在学中は優等生のふりをしていたが、その正体は波音町周辺を牛耳っている組織”一条会”の会長。本当の性格は自信過剰で、文芸部での活動中に鳴海や嶺二のことをよく振り回していた。完璧なものと奇跡の力に対する執着心が人一倍強い。また、鳴海たちに波音物語を勧めた張本人でもある。
伊桜 京也 32歳男子
緋空事務所で働いている生真面目な鳴海の先輩。中学生の娘がいるため、一児の父でもある。仕事に対して一切の文句を言わず、常にノルマをこなしながら働いている。緋空浜周囲にあるお店の経営者や同僚からの信頼も厚い。口下手なところもあるが、鳴海の面倒をしっかり見ており、彼の”メンター”となっている。
荻原 早季 15歳(?)女子
どこからやって来たのか、何を目的をしているのか、いつからこの世界にいたのか、何もかもが謎に包まれた存在。現在は波音高校の新一年生のふりをして、神谷が受け持つ一年六組の生徒の中に紛れ込んでいる。Chapter5で波音高校の屋上から自ら命を捨てるも、その後どうなったのかは不明。
瑠璃
鳴海よりも少し歳上で、極めて中性的な容姿をしている。鳴海のことを強く慕っている素振りをするが、鳴海には瑠璃が何者なのかよく分かっていない。伊桜同様に鳴海の”メンター”として重要な役割を果たす。
来栖 真 59歳男子
緋空事務所の社長。
神谷 志郎 44歳男子
Chapter5の主人公にして、汐莉と同様にChapter5の終盤で命を落としてしまう数学教師。普段は波音高校の一年六組の担任をしながら、授業を行っていた。昨年度までは鳴海たちの担任でもあり、文芸部の顧問も務めていたが、生徒たちからの評判は決して著しくなかった。幼い頃から鬱屈とした日々を過ごして来たからか、発言が支離滅裂だったり、感情の変化が激しかったりする部分がある。Chapter5で早季と出会い、地球や子供たちの未来について真剣に考えるようになった。
貴志 希海 女子
貴志の名字を持つ謎の人物。
三枝 琶子 女子
“The Three Branches”というバンドを三枝碧斗と組みながら、世界中を旅している。ギター、ベース、ピアノ、ボーカルなど、どこかの響紀のようにバンド内では様々なパートをそつなくこなしている。
三枝 碧斗 男子
“The Three Branches”というバンドを琶子と組みながら、世界中を旅している、が、バンドからベースとドラムメンバーが連続で14人も脱退しており、なかなか目立った活動が出来てない。どこかの響紀のようにやけに聞き分けが悪いところがある。
有馬 千早 女子
ゲームセンターギャラクシーフィールドで働いている、千春によく似た店員。
太田 美羽 30代後半女子
緋空事務所で働いている女性社員。
目黒 哲夫 30代後半男子
緋空事務所で働いている男性社員。
一条 佐助 男子
雪音と智秋の父親にして、”一条会”のかつての会長。物腰は柔らかいが、多くのヤクザを手玉にしていた。
一条 智秋 25歳女子
雪音の姉にして風夏の親友。一条佐助の死後、若き”一条会”の会長として活動をしていたが、体調を崩し、入院生活を強いられることとなる。智秋が病に伏してから、会長の座は妹の雪音に移行した。
神谷 絵美 30歳女子
神谷の妻、現在妊娠中。
神谷 七海 女子
神谷志郎と神谷絵美の娘。
天城 明日香 19歳女子
鳴海、菜摘、嶺二、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。お節介かつ真面目な性格の持ち主で、よく鳴海や嶺二のことを叱っていた存在でもある。波音高校在学時に響紀からの猛烈なアプローチを受け、付き合うこととなった。現在も、保育士になる資格を取るために専門学校に通いながら、響紀と交際している。Chapter5の終盤にて汐莉から20Years Diaryを譲り受けたが、最終的にその日記は滅びかけた世界のナツとスズの手に渡っている。
白石 嶺二 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。鳴海の悪友で、彼と共に数多の悪事を働かせてきたが、実は仲間想いな奴でもある。軽音部との合同朗読劇の成功を目指すために裏で奔走したり、雪音のわがままに付き合わされたりで、意外にも苦労は多い。その要因として千春への恋心があり、消えてしまった千春との再会を目的に、鳴海たちを様々なことに巻き込んでいた。現在は千春への想いを心の中にしまい、上京してゲーム関係の専門学校に通っている。
三枝 響紀 16歳女子
波音高校に通う二年生で、軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”のリーダー。愛する明日香関係のことを含めても、何かとエキセントリックな言動が目立っているが、音楽的センスや学力など、高い才能を秘めており、昨年度に行われた文芸部との合同朗読劇でも、あらゆる分野で多大な(?)を貢献している。
永山 詩穂 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はベース。メンタルが不安定なところがあり、Chapter5では色恋沙汰の問題もあって汐莉と喧嘩をしてしまう。
奥野 真彩 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀、詩穂と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はドラム。どちらかと言うと我が強い集まりの魔女っ子少女団の中では、比較的協調性のある方。だが食に関しては我が強くなる。
双葉 篤志 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音と元同級生で、波音高校在学中は天文学部に所属していた。雪音とは幼馴染であり、その縁で”一条会”のメンバーにもなっている。
井沢 由香
波音高校の新一年生で神谷の教え子。Chapter5では神谷に反抗し、彼のことを追い詰めていた。
伊桜 真緒 37歳女子
伊桜京也の妻。旦那とは違い、口下手ではなく愛想良い。
伊桜 陽芽乃 13歳女子
礼儀正しい伊桜京也の娘。海亜中学校という東京の学校に通っている。
水木 由美 52歳女子
鳴海の伯母で、由夏理の姉。幼い頃の鳴海と風夏の面倒をよく見ていた。
水木 優我 男子
鳴海の伯父で、由夏理の兄。若くして亡くなっているため、鳴海は面識がない。
鳴海とぶつかった観光客の男 男子
・・・?
少年S 17歳男子
・・・?
サン 女子
・・・?
ミツナ 19歳女子
・・・?
X 25歳女子
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Y 25歳男子
・・・?
ドクターS 19歳女子
・・・?
シュタイン 23歳男子
・・・?
伊桜の「滅ばずの少年の物語」に出て来る人物
リーヴェ 17歳?女子
奇跡の力を宿した少女。よくいちご味のアイスキャンディーを食べている。
メーア 19歳?男子
リーヴェの世界で暮らす名も無き少年。全身が真っ黒く、顔も見えなかったが、リーヴェとの交流によって本当の姿が現れるようになり、メーアという名前を手にした。
バウム 15歳?男子
お願いの交換こをしながら旅をしていたが、リーヴェと出会う。
盲目の少女 15歳?女子
バウムが旅の途中で出会う少女。両目が失明している。
トラオリア 12歳?少女
伊桜の話に登場する二卵性の双子の妹。
エルガラ 12歳?男子
伊桜の話に登場する二卵性の双子の兄。
滅びかけた世界
老人 男子
貴志鳴海の成れの果て。元兵士で、滅びかけた世界の緋空浜の掃除をしながら生きている。
ナツ 女子
母親が自殺してしまい、滅びかけた世界を1人で彷徨っていたところ、スズと出会い共に旅をするようになった。波音高校に訪れて以降は、掃除だけを繰り返し続けている老人のことを非難している。
スズ 女子
ナツの相棒。マイペースで、ナツとは違い学問や過去の歴史にそれほど興味がない。常に腹ペコなため、食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
柊木 千春 15、6歳女子
元々はゲームセンターギャラクシーフィールドにあったオリジナルのゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”に登場するヒロインだったが、奇跡によって現実にやって来る。Chapter2までは波音高校の一年生のふりをして、文芸部の活動に参加していた。鳴海たちには学園祭の終了時に姿を消したと思われている。Chapter6の終盤で滅びかけた世界に行き、ナツ、スズ、老人と出会っている。
Chapter7♯2 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
◯1694貴志家リビング(日替わり/昼)
波音高校を卒業してから数週間後
外は晴れている
リビングにいる鳴海、菜摘、風夏
リビングには風夏の荷物が入ったたくさんの段ボール箱が山積みになって置いてある
鳴海、菜摘、風夏は荷物の片付けをしつつ、引越しの準備をしている
段ボール箱を持ち運んでいる鳴海と風夏
菜摘は段ボール箱にプチプチに包まれた食器を詰めている
菜摘の隣にはプチプチに包まれたたくさんの食器が置いてある
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
“アルバム”と書いてある段ボール箱をテーブルに置く風夏
風夏は"アルバム”と書いてある段ボール箱を開ける
風夏「菜摘ちゃーん、4歳くらいの時の鳴海の写真が出て来たよー!!」
鳴海「(段ボール箱を持ち運びながら)お、おい!!」
菜摘は段ボール箱にプチプチに包まれた食器を詰めるのをやめる
菜摘「(段ボール箱にプチプチに包まれた食器を詰めるのをやめて)ご、ごめん鳴海くん!!」
鳴海「(段ボール箱を床に置き)ま、まだ見るなとも言ってないだろ・・・」
菜摘は鳴海の話を無視してテーブルの方に行く
テーブルの上に置いた”アルバム”と書いてある段ボール箱から1枚の写真を取り出す風夏
風夏は写真を菜摘に差し出す
写真を風夏から受け取る菜摘
菜摘「(風夏から写真を受け取って)ありがとうございます風夏さん!!」
風夏「いえいえ〜」
鳴海は段ボール箱を床に置く
段ボール箱を床に置いてテーブルの方に行く鳴海
菜摘は風夏から受け取った写真を見る
菜摘が風夏から受け取った写真にはベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の鳴海が写っている
ベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の鳴海は手に1枚の写真を持っている
ベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の鳴海が持っている写真には、緋空浜の浜辺にいる紘が写っている
菜摘「(ベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の鳴海の写真を見ながら)見てみて鳴海くん、写真の鳴海くんも今の鳴海くんにそっくりだよ」
鳴海「そっくりも何も同一人物なんだが・・・」
菜摘「(ベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の鳴海の写真を見ながら)あれ・・・?この時の鳴海くん、手に何か持ってる?」
風夏「ああ、それはパパの写真だね」
鳴海「か、貸してくれ、菜摘」
菜摘はベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の鳴海の写真を鳴海に差し出す
菜摘「(ベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の鳴海の写真を鳴海に差し出して)はい」
鳴海は菜摘からベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の自分の写真を受け取る
ベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の自分の写真を見る鳴海
風夏「パパが家にいないって泣いてた鳴海に、ママが写真を持たせてくれたんだよ。鳴海は写真を渡されてその後すぐに寝落ちしちゃったんだけど・・・」
菜摘「優しいお母さんだったんですね」
鳴海はベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の自分の写真を見るのをやめる
鳴海「(ベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の自分の写真を見るのをやめて)記憶にないけどな・・・」
菜摘は鳴海からベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の鳴海の写真を奪い取る
鳴海「(ベッドの上で横向けに眠っている4歳頃の自分の写真を菜摘に奪い取られて)な、何するんだよ菜摘!!」
菜摘「風夏さん、この可愛い鳴海くんの写真を私に譲ってください!」
風夏「もちろん良いとも」
菜摘「ありがとうございます!!」
風夏「他にも欲しい写真があったら言ってね、菜摘ちゃん」
菜摘「そ、そんな・・・こ、この1枚だけでも私は・・・」風夏「良いの良いの。菜摘ちゃんには手伝ってもらってるんだから」
鳴海「ま、待て。お、俺の写真は俺に所有権があるんじゃないのか?」
風夏「この家の物はまだ全部お姉ちゃんに所有権があるんだけど〜?家賃もお姉ちゃんが払ってるんだし〜」
少しの沈黙が流れる
鳴海「わ、分かったよ・・・た、ただあんまり変な写真は欲しがるんじゃないぞ菜摘・・・」
菜摘「変な写真?」
鳴海「く、黒歴史が写ってるような写真のことだ・・・」
菜摘「鳴海くん、私鳴海くんの黒歴史なんて気にしないよ」
鳴海「写真の内容によっては羞恥心で俺が倒れるんだぞ、それでも良いのか菜摘」
菜摘「文芸部で鍛えた鋼のメンタルを持ってる鳴海くんなら、写真如きじゃ倒れないと思うな・・・」
鳴海「ぶ、文芸部OBは朗読劇を行った反動で一般人よりもメンタルが弱体化してるんだよ」
菜摘「そ、そうなの・・・?」
鳴海「あ、ああ」
風夏「意地張ってないでぽんぽん写真を渡しちゃいなよ、鳴海」
鳴海「渡せるか!!」
再び沈黙が流れる
風夏「菜摘ちゃんは鳴海の言うことを気にせず、数々の黒歴史が写った写真を持って行って良いからね」
鳴海「だ、だから気にしてくれって・・・」
菜摘「風夏さんのご厚意に甘えちゃダメ・・・?鳴海くん・・・」
鳴海「だ、ダメ・・・ではないが・・・」
菜摘「じゃあ貰っても大丈夫・・・?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「大丈夫ということにしよう・・・」
菜摘「ありがとう鳴海くん!!」
鳴海「お、おう・・・」
風夏はテーブルの上の”アルバム”と書いてある段ボール箱を漁り始める
”アルバム”と書いてある段ボール箱から写真を取り出す風夏
風夏は”アルバム”と書いてある段ボール箱から取り出した写真を菜摘に見せる
風夏「(”アルバム”と書いてある段ボール箱から取り出した写真を菜摘に見せて)菜摘ちゃん、こういうのとかどう?」
菜摘は風夏が持っている写真を見る
菜摘「(風夏が持っている写真を見て)あ〜!!鳴海くん可愛い〜!!」
風夏「(写真を菜摘に見せたまま)だよね〜!!この時はまだ天使だったんだよ鳴海も!!」
鳴海「(呆れて)俺・・・片付けやっとくからな・・・」
風夏「(写真を菜摘に見せたまま)あ、よろしく〜」
鳴海は菜摘と風夏から離れて行く
床に置いてあった段ボール箱を持つ鳴海
鳴海は段ボール箱を運び始める
鳴海「(段ボール箱を持ち運びながら 声 モノローグ)波音高校を卒業した俺と菜摘は・・・夜勤明けの姉貴と共に引越しの準備を手伝っていた・・・」
◯1695回想/貴志家リビング(昼)
外は晴れている
リビングにいる鳴海と風夏
鳴海と風夏はテーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている
テーブルの上には結婚式のプランが書かれた様々なパンフレットが置いてある
話をしている鳴海と風夏
風夏は鳴海と話をしながら結婚式のプランが書かれたパンフレットをパラパラとめくっている
風夏「(結婚式のプランが書かれたパンフレットをパラパラとめくりながら)結婚式って準備がめんどくさいんだよね〜」
鳴海「好きな相手と結婚出来るんだからめんどくさくても良いじゃないか」
風夏「(結婚式のプランが書かれたパンフレットをパラパラとめくりながら)好きな相手と結婚するのに何でめんどくさいことをしなきゃいけないのかな〜。準備は市役所がやってくれたら楽ちんなのにさ〜」
鳴海「市役所がやるわけないだろ・・・」
風夏「(結婚式のプランが書かれたパンフレットをパラパラとめくりながら)結婚式の準備と引越しの準備を市役所がやってくれたらどれだけ私の精神的負担が軽くなるか・・・」
鳴海「引越し業者の人が手伝ってくれるのに市役所にやらせようとするのかよ・・・」
風夏「(結婚式のプランが書かれたパンフレットをパラパラとめくりながら)だって引越しはさ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「引越しが何だ?」
風夏は結婚式のプランが書かれたパンフレットを閉じる
風夏「お姉ちゃん、良いことを思いついちゃった」
鳴海は立ち上がる
鳴海「(立ち上がって)お、俺、急用を思い出したから出かけて・・・」
風夏「(鳴海の話を遮って)待てこら弟」
再び沈黙が流れる
風夏「鳴海、お姉ちゃんと楽しいお喋りをしよう」
鳴海「こ、断る・・・」
風夏「そんな冷たい反応をするなら菜摘ちゃんに鳴海の下着を全部プレゼントしちゃおうかな〜・・・」
鳴海「ど、どんな脅しだよ!!というかそんな物要らないだろ!!」
風夏「要らなくても強制でプレゼントするけど・・・?」
少しの沈黙が流れる
鳴海は椅子に座る
鳴海「は、話をしよう、姉貴」
風夏「よし来た。引越しの準備を手伝ってくれるんだね、ありがとう愛してるよ」
鳴海「話が話になってないんだが・・・」
風夏「鳴海」
鳴海「な、何だ」
風夏「引越しの準備を手伝ってくれたら・・・(少し間を開けて)5月分の家賃と光熱費はお姉ちゃんが払おう」
鳴海「ど、どんな取引だよ・・・」
風夏「私がお金を払えば、鳴海は4月中にバイト先か就職先を探す余裕が出来るでしょ」
再び沈黙が流れる
風夏「この家は鳴海と菜摘ちゃんに譲るからさ、早くお金を稼ぐ方法を見つけなよ」
鳴海「あ、ああ・・・わ、悪いな姉貴・・・」
風夏「うん。その代わり引越しの手伝いだからねー」
◯1696回想戻り/貴志家玄関(昼)
玄関にいる鳴海
玄関には風夏の荷物が入ったたくさんの段ボール箱が山積みになって置いてある
鳴海は段ボール箱を持っている
玄関に段ボール箱を置く鳴海
鳴海は玄関に山積みになっているたくさんの段ボール箱を見る
鳴海「(玄関に山積みになったたくさんの段ボール箱を見て)それにしたって荷物が多過ぎるだろ・・・」
鳴海は玄関に山積みになったたくさんの段ボール箱を見たまま深くため息を吐き出す
鳴海「(玄関に山積みになったたくさんの段ボール箱を見たまま深くため息を吐き出して)そりゃこれだけの物があったら引越すのはめんどくさいだろうな・・・」
鳴海は玄関に置いてある山積みになったたくさんの段ボール箱を見るのをやめる
リビングに向かって歩き始める鳴海
鳴海「(声 モノローグ)誤算だったのは姉貴の荷物が尋常じゃないくらい多かったことと、何故か菜摘まで引越しの準備を手伝っていることの二つだ。(少し間を開けて)菜摘は俺たち姉弟に付き合ってくれている。元は俺が姉貴の引越しの準備を手伝わなきゃいけない、なんて菜摘に言ってしまったのが原因だが・・・」
◯1697貴志家リビング(昼)
リビングにいる鳴海、菜摘、風夏
リビングには風夏の荷物が入ったたくさんの段ボール箱が山積みになって置いてある
リビングにはプチプチに包まれた食器と、プチプチに包まれた食器を詰めている途中の段ボール箱が置いてある
鳴海は段ボール箱に風夏の本を詰めている
鳴海の隣には風夏の本が何冊も置いてある
テーブルの上には”アルバム”と書いてある段ボール箱と、幼い頃の鳴海、風夏、由夏理、紘が写ったたくさんの写真が置いてある
菜摘と風夏はテーブルの上の写真を見ながら楽しそうに話をしている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
鳴海は隣に置いてあった風夏の本を手に取る
鳴海が手に取った風夏の本は文庫本の波音物語
文庫本の波音物語を見ている鳴海
鳴海「(文庫本の波音物語を見ながら小声で)またな・・・」
鳴海は文庫本の波音物語の表紙を優しく撫でて、段ボール箱に詰める
チラッと菜摘のことを見る鳴海
菜摘は変わらずテーブルの上の写真を見ながら楽しそうに風夏と話をしている
鳴海「(声 モノローグ)俺は波音高校を卒業してからというもの、嶺二、明日香、南、一条が遠くに行ってしまったように感じていた。今や南以外は波高生でも文芸部員でもない・・・旧友たちは俺を置いてどんどん自分の人生を歩んでいるが、菜摘だけは違った。菜摘は今日も俺の側にいる。(少し間を開けて)俺も嶺二たちみたいに大人にならなくてはいけない・・・大人になって・・・菜摘のことを守るんだ」
時間経過
夕方になっている
外は曇っている
鳴海と菜摘は段ボール箱を持ち運んでいる
テーブルの上には段ボール箱と幼い頃の鳴海、風夏、由夏理、紘が写ったたくさんの写真が置いてある
テーブルの上の写真を片付けている風夏
風夏「(テーブルの上の写真を片付けながら)曇って来たね〜・・・こりゃ明日の緋空祭りは雨で中止かな〜・・・」
菜摘「(段ボール箱を持ち運びながら)残念です・・・」
鳴海「(段ボール箱を持ち運びながら)まだ晴れるかもしれないだろ、菜摘」
菜摘「(段ボール箱を持ち運びながら)うん・・・そうだね」
少しの沈黙が流れる
風夏「(テーブルの上の写真を片付けながら小声でボソッと)雨だと緋空祭りの蝶々人間は見れなかったんだよねー・・・」
◯1698早乙女家に向かう道中(夕方)
空は曇っている
菜摘を家に送っている鳴海
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
道には緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
道には所々に咲いている桜の木がある
話をしている鳴海と菜摘
鳴海「明日さ、欲しい物があったら何でも言ってくれよ」
菜摘「えっ?」
鳴海「姉貴の引越しの手伝ってくれたお礼がしたいんだ」
菜摘「お、お礼なんて鳴海くんに申し訳ないよ」
鳴海「気にするな、菜摘」
菜摘「で、でも・・・」
鳴海「でもは無しだ」
少しの沈黙が流れる
菜摘「鳴海くん・・・前にお祭りは好きじゃないって言ってなかった・・・?」
鳴海「そ、そんなこと言ったか?」
菜摘「うん・・・ちょうど去年の今頃・・・確かお祭りの話をしたよ」
再び沈黙が流れる
鳴海「祭りが嫌いでも、菜摘と一緒に行く祭りは別物だ」
菜摘「そ、そうなの・・・?」
鳴海「おう」
菜摘「私・・・鳴海くんを色んなところに振り回してるけど・・・良いのかな・・・」
鳴海「振り回してるって、たかが祭りだぞ」
菜摘「お祭りもだけど・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「菜摘は祭りデートが嫌なのか?」
菜摘「い、嫌じゃないよ!!」
鳴海「な、なら明日は晴れたら緋空祭りでデートだ。い、良いな?菜摘」
菜摘「わ、分かった・・・明日は晴れたら鳴海くんと緋空祭りでデートする・・・」
鳴海「り、リピートしなくて良いんだぞ」
菜摘「ご、ごめん・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海はチラッと緋空祭りに合わせて道に吊るされた提灯を見る
鳴海「(チラッと緋空祭りに合わせて道に吊るされた提灯を見て 声 モノローグ)確かに俺は昔から祭りと呼ばれる行事が嫌いだった・・・」
◯1699回想/緋空浜の近く/緋空祭り会場(約十数年前/夜)
満月が出ている
緋空浜の周囲で緋空祭りが行われている
5歳頃の鳴海が一人緋空祭りにいる
5歳頃の鳴海がいるところは緋空浜の近く
緋空祭りではたこ焼き、チョコバナナ、りんご飴、射的、水風船のヨーヨー釣り、焼きそば、じゃがバター、わたあめ、カステラ、かき氷、金魚すくい、唐揚げ、フライドポテト、おもちゃのくじ引き、お面が売られているお店などのたくさんの屋台がある
緋空祭りには浴衣や甚平を着た大勢の人がいる
緋空祭りにいる大勢の人はお面を被っていたり、飲食をしていたり、水風船のヨーヨーを持っていたり、屋台の射的で遊んでいたりする
道には緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
吊るされたたくさんの提灯は全て赤く光っている
5歳頃の鳴海は周囲を見ながら由夏理、紘、風夏の姿を探している
5歳頃の鳴海は周囲を見ながら由夏理、紘、風夏の姿を探しているが、幼い鳴海の目線では由夏理たちがどこにいるのか分からない
鳴海「(声 モノローグ)夜にたくさんの人がいて、たくさんの屋台が出て、たくさんの提灯が吊るされて、この世かどうかも分からないような雰囲気に包まれていて、子供の俺には怖くてしょうがなかった」
少しするとはっぴを着たたくさんの男たちが掛け声を上げながら神輿を担いで来る
神輿を担いで来る男たちに続いて、浴衣を着て笠を被ったたくさんの女たちが踊りながらやって来る
浴衣を着て笠を被った女たちの中には、太鼓を持っている女もいる
浴衣を着て笠を被った女たちの何人かが太鼓を叩いている
緋空祭りは神輿を担いだ男たちの掛け声、浴衣を着て笠を被った女たちが叩く太鼓の音、祭りに来た人たちの騒ぎでうるさくなっている
5歳頃の鳴海は変わらず周囲を見ながら由夏理、紘、風夏の姿を探しているが、人が多過ぎてますます探すのが困難になっている
5歳頃の鳴海は”ママ!!”、”パパ!!”、”お姉ちゃん!!”と周囲に向かって叫んでいる
5歳頃の鳴海は”ママ!!”、”パパ!!”、”お姉ちゃん!!”と周囲に向かって叫んでいるが、鳴海の周りにいる人たちは鳴海のことを気に留めていない
泣き出す5歳頃の鳴海
鳴海「(声 モノローグ)いつだったか緋空祭りで迷子になったことがある。母も、父も、姉貴も、一緒に来たはずなのに気が付いたらいなくなっていた。数分の出来事だったのか、数時間の出来事だったのか、もう分からない。ただ俺は、泣きながら一人で永遠にも感じられるような時間を彷徨っていた」
すれ違う大人たちの足が5歳頃の泣いている鳴海の肩とぶつかる
5歳頃の鳴海はその場で泣き続ける
5歳頃の鳴海の周囲にいる人たちは、変わらず泣いている鳴海のことを気に留めていない
鳴海「(声 モノローグ)思い出すだけで血の気が引く体験だ」
少しすると泣いている5歳頃の鳴海に一人の男が声をかけて来る
声をかけて来た男の顔はぼんやりしていて、5歳頃の鳴海にはよく見えない
声をかけて来た男は紺色の甚平を着ている
鳴海「(声 モノローグ)結局俺が泣き続けていると、一人の男が声をかけて来た。顔はよく覚えていないが・・・歳は今の俺と同じくらいか、少し上だったと思う」
泣いている5歳頃の鳴海に声をかけて来た男は、鳴海に手を差し伸ばす
5歳頃の鳴海は泣きながら差し伸ばして来ている鳴海に声をかけて来た男の手を取る
泣いている5歳頃の鳴海と鳴海に声をかけて来た男は、手を繋ぎながら由夏理、紘、風夏を探しに行く
鳴海「(声 モノローグ)赤の他人なのに、お兄さんは一瞬で姉貴たちを見つけ出した」
泣いている5歳頃の鳴海と鳴海に声をかけて来た男が30歳頃の由夏理、同じく30歳頃の紘、10歳頃の風夏と出会う
由夏理は鳴海に声をかけて来た男に礼を言い、泣いている5歳頃の鳴海を強く抱き締める
泣いている5歳頃の鳴海に声をかけて来た男は鳴海の手を離し、そのままどこかへ行く
鳴海「(声 モノローグ)お兄さんがその後どこに行ったのかは分からない。交通事故が起きる前の俺の記憶は曖昧なため、今となっては一連の出来事そのものが本当にあったのかも怪しかった」
由夏理は変わらず泣いている5歳頃の鳴海を強く抱き締めている
泣いている5歳頃の鳴海を強く抱き締めたまま泣き出す由夏理
5歳頃の鳴海と由夏理が泣いている
泣いている5歳頃の鳴海と由夏理の頭を撫でる10歳頃の風夏
鳴海「(声 モノローグ)俺に釣られて母も泣いていたような気がする。そして泣きじゃくる俺たちに・・・親父は・・・」
紘は泣きながら5歳頃の鳴海を強く抱き締めている由夏理と、同じく泣いている鳴海に対して怒っている
鳴海「(声 モノローグ)怒っていた・・・」
時間経過
緋空祭りの屋台を見て回っている5歳頃の鳴海、由夏理、紘、10歳頃の風夏
5歳頃の鳴海は由夏理と、10歳頃の風夏は紘と手を繋いでいる
鳴海「(声 モノローグ)内容は忘れたが・・・俺はしょっちゅう親父に叱られていた・・・」
5歳頃の鳴海は由夏理と手を繋ぎながら水風船のヨーヨー釣りの屋台を指差す
10歳頃の風夏と手を繋いだまま紘がポケットから小銭を取り出す
鳴海「(声 モノローグ)親父はほとんど家にいなくて・・・母以上にどういう人だったのか覚えていない・・・」
10歳頃の風夏と手を繋いだまま100円玉を5歳頃の鳴海に差し出して、紘は鳴海に話をする
鳴海「(声 モノローグ)ただ一つはっきり印象に残っているのは・・・祭りで売られているヨーヨーは人の命を吸い取るから、買う時には気をつけろ、という意味不明な助言を貰ったことだった。おそらく・・・親父は冗談のつもりで話をしていたんだろうが・・・(少し間を開けて)ガキの俺は本気にして・・・お兄さんのおかげで家族と再会出来たのに怖くなって・・・祭りのことが更に嫌いになって・・・あれこれ考えて・・・その後でまた泣いたような気がする」
◯1700回想戻り/早乙女家に向かう道中(夕方)
菜摘を家に送っている鳴海
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
道には緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
道には所々に咲いている桜の木がある
ボーッとしている鳴海
菜摘「鳴海くん?どうしたの?」
鳴海「ん・・・?」
菜摘「何か考え事をしていたんだよね・・・?」
鳴海「あ、いや・・・」
菜摘「鳴海くん・・・」
鳴海「な、何だ?」
菜摘「本当に・・・お母さんのことを覚えていないの・・・?」
鳴海「ど、どうしてそんなことを聞くんだ?」
菜摘「だって鳴海くん・・・写真をほとんど見ようとしなかったし・・・私と風夏さんの会話にも入って来ないから・・・本当は・・・覚えてないんじゃなくて・・・思い出したくないだけ・・・」
鳴海「(菜摘の話を遮って)か、考え過ぎだぞ菜摘」
菜摘「そっか・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「ひ、緋空祭り・・・」
菜摘「うん」
鳴海「ど、どんな屋台が開いてるか楽しみだな」
菜摘「そうだね。鳴海くんは食べたい物とか、やってみたいことはある?」
鳴海「特にはないが・・・菜摘はあるのか?」
菜摘「うーん・・・私はりんご飴が食べたいかな・・・」
鳴海「りんご飴は手と口の周りがドチャクソベタベタになるぞ」
菜摘「ドチャクソ?」
鳴海「ドチャスイートメロンパンが食べたいだ」
菜摘「鳴海くん、りんご飴は工夫して食べればそんなにベタベタにならないよ」
鳴海「そうなのか?」
菜摘「うん!!棒に紙ナプキンを何枚も巻いて、ちょっとずつかじったら綺麗に食べられるんだ」
鳴海「しかしたとえ綺麗に食べられたとしても、りんご飴は量が多いだろ」
菜摘「そこは気合いじゃないかな、鳴海くん」
鳴海「気合いでどうするつもりだ・・・」
菜摘「気合いで食べるんだよ」
再び沈黙が流れる
鳴海「さ、最近はいちご飴やぶどう飴もあるんだから、わざわざでかいりんごを選ぶ必要はないと思うぞ・・・」
菜摘「でも味はりんごが最強じゃない・・・?禁断の果実味だし・・・」
鳴海「意味深な言い方だな・・・」
菜摘「私がリンゴ飴を食べている間に、鳴海くんは射的とかヨーヨー釣りをしてても大丈夫だよ」
鳴海「射的ならやっても良いが・・・」
菜摘「ヨーヨー釣りはしたくないなの?鳴海くん」
鳴海「しゃ、射的と違ってヨーヨー釣りは難しくて苦手なんだよ」
菜摘「難しい・・・かな・・・?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「菜摘は・・・祭りで売られているヨーヨーの噂を知っているか・・・?」
菜摘「噂・・・?」
鳴海「ああ。ヨーヨー釣りのヨーヨーは人の命を吸い取るらしいんだ」
菜摘「きゅ、吸収するってこと・・・?」
鳴海「多分な・・・だから祭りでヨーヨーを持ってる奴は実質幽霊だぞ」
菜摘「こ、怖い話だね・・・これからはヨーヨーを含めて風船には手を出さないように・・・ってそんなわけあるかーい」
再び沈黙が流れる
菜摘「な、鳴海くん・・・私のツッコミ・・・間違えてた・・・?」
鳴海「いや・・・今のは俺のボケ方が良くなかったな・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「と、とにかくヨーヨー釣りはしないつもりだ」
菜摘「う、うん・・・私もやめとうかな・・・お化けだと思われたくないし・・・」
◯1701貴志家鳴海の自室(深夜)
外は弱い雨が降っている
片付いている鳴海の部屋
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラが置いてある
ベッドの上で横になっている鳴海
鳴海の部屋はカーテンが閉められている
鳴海「(声 モノローグ)俺は両親の性格さえ覚えていなかった上に・・・菜摘の言う通り思い出したいとも考えていなかった・・・記憶はパンドラの箱だ・・・開けた後に後悔するくらいなら、最初から開けない方が良い。(少し間を開けて)そんな俺の気持ちとは裏腹に、俺は数日前から夢の中で過去を旅するようになっていた」
◯1702鳴海の夢/公園(約30年前/朝)
◯1693の続き
快晴
約30年前の公園にいる鳴海と18歳の由夏理
由夏理は波音高校の制服を着ている
公園には一本の桜の木がある
公園にある桜の木は咲いている
ブランコに座っている鳴海と由夏理
由夏理の右脚の膝下には擦り傷が出来ている
ブランコの近くには由夏理のママチャリが止めてある
チラチラと由夏理の顔を見ている鳴海
由夏理「何見てんの?少年」
鳴海は慌てて由夏理から顔を背ける
鳴海「(慌てて由夏理から顔を背けて)み、見てねえって・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(由夏理から顔を背けたまま)きょ、今日は始業式だろ・・・」
由夏理「うん」
鳴海「(由夏理から顔を背けたまま)ち、遅刻するぞ・・・」
由夏理「君こそ遅刻するよ」
鳴海「(由夏理から顔を背けたまま)お、俺は高校生じゃないって言ってるだろ・・・」
由夏理「なら幾つなの?」
鳴海「(由夏理から顔を背けたまま)じゅ、18だ」
由夏理「同い年じゃん!!」
鳴海「(由夏理から顔を背けたまま)こ、この間高校を卒業したんだよ」
由夏理「てことは一個上?少年、全然歳上って感じがしないけど」
再び沈黙が流れる
由夏理は顔を背けている鳴海のことを見る
由夏理「(顔を背けている鳴海のことを見て)君、どっかで見たことある気がするんだよね〜」
鳴海「(由夏理から顔を背けたまま)き、気のせいだ」
由夏理「(顔を背けている鳴海のことを見たまま)良いからこっち向いてよ少年」
鳴海「(由夏理から顔を背けたまま)む、向くわけないだろ・・・」
少しの沈黙が流れる
由夏理は顔を背けている鳴海のことを見たまま立ち上がる
顔を背けている鳴海のことを見たまま鳴海の前に行く由夏理
由夏理は顔を背けている鳴海のことを見たまま鳴海の目の前で立ち止まる
鳴海「(由夏理から顔を背けたまま)な、なんか文句でも・・・」
由夏理は顔を背けている鳴海のことを見たまま、話途中だった鳴海の顔を掴み無理矢理自分の方に向ける
鳴海「(顔を由夏理に掴まれ由夏理の方に向けられて)お、おい!!」
由夏理は鳴海の顔を掴み無理矢理自分の方に向けたまま鳴海の顔をよく見る
由夏理「(鳴海の顔を掴み無理矢理自分の方に向けたまま鳴海の顔をよく見て)やっぱり」
鳴海「(顔を由夏理に掴まれ由夏理の方に向けられたまま)な、何だよ・・・」
由夏理は鳴海の顔をよく見たまま鳴海の顔を離す
鳴海の顔を見るのをやめる由夏理
由夏理はブランコに座りに行く
由夏理「(ブランコに座りに行って)君さ、私の彼氏に似てるんだよね」
鳴海「え・・・?」
由夏理「だーかーら、私の彼氏に似てるんだって」
鳴海「つ、つまり・・・お、俺は・・・あなたの彼氏に・・・」
由夏理「リピートしなくても良いってば」
再び沈黙が流れる
由夏理「少年、名前は?」
鳴海「な、名前?」
由夏理「うん」
鳴海「えっと・・・(少し間を開けて)さ、佐田奈緒衛だ」
由夏理「(少し笑って)君、馬鹿なの?」
少しの沈黙が流れる
由夏理「嘘つくのが下手なところも紘に似てるし」
鳴海「ひ、紘って・・・」
由夏理「私の彼氏」
鳴海「そ、そうか・・・」
再び沈黙が流れる
由夏理「で、名前は?」
鳴海「き、聞かないでくれ・・・」
由夏理「言えない理由でもあるのかい」
鳴海「あ、ああ・・・」
由夏理「(少し笑って)君って変わってるね」
鳴海「し、始業式をサボってる奴に言われたくないんだが・・・」
由夏理「(少し笑いながら)確かに」
鳴海「な、何で学校をサボってるんだよ」
由夏理「(鳴海の真似をして)き、聞かないでくれ」
鳴海「が、学校ってのは真面目に通っておいた方が良いんだぞ」
由夏理「おっ、少年の分際で説教かね?」
鳴海「少年じゃなくて青年な・・・」
由夏理「少年って感じがするんだから少年で良いの、分かった?少年」
鳴海「ご、強引に物事を決めて学校をサボっていると後で大変な目に遭うぞ・・・」
由夏理「その口ぶりからしてさ、君も強引に物事を決めて学校をサボってたタイプじゃん?」
鳴海「そ、その通りだよ・・・」
由夏理「少年、出席日数は足りたの?」
鳴海「当たり前だろ・・・」
由夏理「凄いじゃん」
鳴海「(小声でボソッと)別に凄くもないけどな・・・」
由夏理「私このままだと卒業出来なさそうなんだよね〜」
鳴海「(驚いて)は!?」
由夏理「(少し笑って)こう見えてもサボりの常習犯だからさ」
鳴海「いや・・・こう見えてもって・・・」
由夏理「少年、私これでも試験の点数は良いんだぞ」
鳴海「な、なら学校に行けよ」
由夏理「別に行ってもつまらないじゃん?」
鳴海「が、学校には彼氏がいるだろ・・・?」
由夏理「あいつは今日サボるらしいし」
少しの沈黙が流れる
鳴海「ど、同級生に・・・(少し間を開けて)早乙女って奴はいないか・・・?」
由夏理「いるいる、潤のことでしょ?」
鳴海「そ、そうだ。お、おそらくだが潤さんの恋人に・・・」
由夏理「(鳴海の話を遮って)すみれ?」
鳴海「あ、ああ」
由夏理「少年、二人と知り合いなの?」
鳴海「し、知り合いであり・・・し、知り合いじゃない」
由夏理「まさか君ってすみれの元彼・・・?」
鳴海「(慌てて)ち、違う!!」
由夏理「お母さんの前歯に誓って違うんだね?」
鳴海「お、お母さんの前歯・・・?」
由夏理「誓えるの?」
鳴海「ち、誓うとも」
再び沈黙が流れる
由夏理「ひょっとしてマジで誓ってる?」
鳴海「あ、ああ」
由夏理「少年・・・」
鳴海「な、何だ」
由夏理「今の・・・冗談だからさ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「い、言っとくけど俺は冗談だと分かっていながら敢えてスルーしたんだぞ!!」
由夏理「君は自ら地雷に突っ込むタイプなのかい・・・?」
鳴海「ぼ、ボケは触れない方が輝く時もあるんだよ!!」
由夏理「今のやつは絶対触れた方が輝いてたって・・・」
鳴海「と、というかボケる暇があったら学校に行ったらどうだ!?」
由夏理「ボケるので疲れたし、その前に君のせいで転んで怪我したし、彼氏もいないし、今日はサボったって良いじゃん?」
鳴海「す、すみれさんと潤さんがいるのに行かないのか」
由夏理「すみれたちと学校にいても、君と公園にいても、喋って終わるしさ。喋るだけなら学校に行かなくても良いかなってなるんだよね」
鳴海「と、友達と喋る時間を大切にしないと卒業する時に後悔するぞ」
由夏理「それだったら今少年と喋ってるって」
鳴海「な、何で俺となんだ・・・」
由夏理「君、面白くて可愛いじゃん?」
鳴海「が、学校に行ってくれ」
由夏理「どうしてさ」
鳴海「あ、あなたに・・・後悔して欲しくないんだ」
再び沈黙が流れる
由夏理「後悔して欲しくない、か・・・」
由夏理は立ち上がる
由夏理「(立ち上がって)そこまで言われてサボるのは嫌だから、君のために今日は出席するよ」
鳴海「そ、そうか・・・良かった・・・」
由夏理は止めていたママチャリのスタンドを外す
ママチャリに乗る由夏理
鳴海「け、怪我は大丈夫か?」
由夏理「(ママチャリに乗ったまま)一応はね〜」
鳴海「す、すまん・・・」
由夏理「(ママチャリに乗ったまま)交通事故には気をつけるんだよ、佐田奈緒衛くん」
由夏理はママチャリに乗ったまま鳴海にウインクをする
鳴海「あ、あなたも気をつけてくれ」
由夏理「(ママチャリに乗ったまま)うん、じゃあ少年、チャオ」
鳴海「ちゃ、チャオ・・・」
由夏理はママチャリを漕ぎ始め、波音高校に向かう
ママチャリを漕いでいる由夏理の後ろ姿を見ている鳴海
突然、強い風が吹く
強い風が吹いて公園に咲いていた桜の木からたくさんの花びらが散る
◯1703貴志家鳴海の自室(日替わり/朝)
片付いている鳴海の部屋
ベッドで眠っている鳴海
鳴海の部屋はカーテンが閉められている
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラが置いてある
ベッドで眠っていた鳴海が目を覚ます
体を起こす鳴海
鳴海「(体を起こして小声でボソッと)交通事故に気をつけろ、か・・・」
鳴海はベッドから出る
カーテンを開ける鳴海
外は雨が降っている
外は緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
外は所々に桜の木が咲いている
外は雨の影響で散った桜の花びらが地面に落ちている
鳴海は外を見ている
◯1704早乙女家菜摘の自室(昼)
外は雨が降っている
綺麗な菜摘の部屋
菜摘の部屋にいる鳴海と菜摘
菜摘の部屋にはベッド、低いテーブル、勉強机、パソコン、プリンターなどが置いてある
ベッドはマットレス、掛け布団、枕が片付けられ、骨組みだけの状態になっている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
鳴海と菜摘は床に座っている
話をしている鳴海と菜摘
鳴海「今年の緋空祭りは三日間やるんだろ?」
菜摘「うん・・・」
鳴海「そう気を落とすなよ、菜摘。明日明後日は晴れるかもしれないぞ」
菜摘は俯く
少しの沈黙が流れる
鳴海「元気・・・ないな・・・」
菜摘「(俯いたまま)ごめんね・・・」
鳴海「な、何で菜摘が謝るんだよ」
菜摘「(俯いたまま)鳴海くんとお祭りでデートをする約束だったから・・・」
鳴海「雨が降ってるのは菜摘のせいじゃないだろ」
再び沈黙が流れる
鳴海「よし・・・俺がガキの頃に緋空祭りで体験した心温まるエピソードを菜摘に聞かせてやろう・・・」
菜摘は顔を上げる
菜摘「(顔を上げて)心温まるエピソード?」
鳴海「そうだ。笑いあり涙ありの素敵な話だぞ」
菜摘「涙があったら悲しくならない・・・?」
鳴海「安心しろ菜摘、これはむしろ元気が出るような話なんだ」
菜摘「そっか・・・じゃあ聞かせて、鳴海くん」
鳴海「おう。これはまだ俺がそこら辺に浮かんでいるほこりよりも小さかった頃の出来事でさ・・・」
菜摘「さすがに小さ過ぎないかな・・・」
鳴海「話に臨場感をつけるために多少オーバーな表現をしているんだ菜摘。だから所々おかしな部分があっても気にしないでくれ」
菜摘「う、うん・・・」
鳴海「ほこりよりも小さかった俺の周りには、戦艦並みの巨体を持った大人たちがいて、俺は迷子、通称ロストボーイに・・・」
鳴海は話を続ける
時間経過
菜摘「確かに良い話だったけど、鳴海くんがお兄さんの顔を覚えていなかったり、どこに行ったのか分からなかったりして、少し不思議な感じもする体験だね」
鳴海「ああ。もしかしたら、俺と別れた後は金魚すくいでもしてたのかもしれないが・・・」
菜摘「鳴海くん」
鳴海「ん?」
鳴海「鳴海くんはお祭りで金魚すくいをしたことある?」
鳴海「金魚すくいは・・・覚えてないな・・・(少し間を開けて)菜摘はあるのか?」
菜摘「小さい頃に一度だけあるよ。一匹すくったけど・・・すぐに死んじゃったんだ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「切ないな・・・」
菜摘「うん・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「な、菜摘」
菜摘「何?」
鳴海「こ、今度姉貴の旦那の野郎が挨拶しに俺の家に来るんだが・・・そ、その時は出来れば菜摘も一緒にいてくれないか」
菜摘「えっ?」
鳴海「あ、姉貴が菜摘にもいて欲しいって話しててさ・・・」
菜摘「そ、そうなの?」
鳴海「あ、ああ。な、菜摘も家族になるかもしれないからって言ってるんだ」
菜摘「私と・・・家族に・・・?」
鳴海「ぎ、義理の妹になるかもってことだろ」
菜摘「(驚いて大きな声で)ぎ、義理の妹!?!?」
鳴海「あ、姉貴が馬鹿なことを言ってるだけだから本気にしな・・・」
菜摘「(鳴海の話を遮って)わ、私風夏さんと家族になりたい!!」
少しの沈黙が流れる
鳴海「じゃ、じゃあ・・・(少し間を開けて)な、菜摘は俺と・・・」
菜摘「そ、そのつもりだよ・・・鳴海くん・・・」
鳴海「い、良いのか・・・?」
菜摘「も、もちろん・・・鳴海くんじゃなきゃ、私嫌だもん・・・」
鳴海「そ、そうか・・・(少し間を開けて)す、すみれさんと潤さんは俺たちのことを反対しそうだが・・・」
菜摘「き、きっと二人とも私たちのことを応援してくれると思うよ鳴海くん」
鳴海「ど、どうしてそう思うんだ?」
菜摘「だってお母さんは鳴海くんのことが大好きだって言っているし・・・お父さんは鳴海くんのことを義理の息子って呼んでるから・・・」
鳴海「よ、余計に心配になってきたんだが・・・」
菜摘「えぇっ!?」
鳴海「菜摘、潤さんが俺のことを義理の息子って呼ぶのはふざけ半分だぞ」
菜摘「そ、そんなことないよ。お父さん、よく義理の息子は生きてるかって聞いて来るもん」
鳴海「どんな意図があって聞いてるんだよ・・・」
菜摘「お父さんにとって鳴海くんは親友の子供だから、きっと気にかけたくなるんじゃないかな」
鳴海「だとしても聞き方ってものがあるだろ・・・」
菜摘「(少し笑って)多分面と向かって鳴海くんに話しかけるのが恥ずかしいんだよ」
鳴海「そうらしいな・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「菜摘」
菜摘「ん?」
鳴海「元気は出たか?」
菜摘「私はずっと元気だよ鳴海くん」
鳴海「緋空祭りに行けなくて落ち込んでいただろ」
菜摘「落ち込んでただけだもん」
鳴海「それを元気がないって言うんじゃないのか」
菜摘「鳴海くん、落ち込んでいる時は落ち込んでいる時で、元気がない時は元気がない時なんだよ」
鳴海「元気がない時と落ち込んでる時の違いは何なんだ・・・?」
菜摘「んー・・・元気がない時はもうダメって感じで・・・落ち込んでいる時はグサグサって感じかな・・・?」
鳴海「違いがよく分からないぞ・・・」
菜摘「元気がない時よりも落ち込んでいる時の方が心にダメージを負ってる気がするよ」
鳴海「そ、そうなのか・・・」
菜摘「うん!!」
鳴海「(声 モノローグ)緋空祭りは毎年4月の上旬に開催する波音町の最も大きな行事だ。期間は年々によって異なるが、最短で3日間、最長で5日間開かれる」
◯1705帰路(夕方)
雨が降っている
傘をさして自宅に向かっている鳴海
部活帰りの波音高校の生徒がたくさんいる
道には緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
道には所々に咲いている桜の木がある
雨の影響で散った桜の花びらが地面に落ちている
鳴海「(声 モノローグ)今年の緋空祭りは開催期間が短く、3日間しかなかった」
◯1706貴志家リビング(夜)
外は雨が降っている
リビングにいる鳴海
鳴海はテーブルに向かって椅子に座っている
テーブルの上にはご飯、味噌汁、さんまの塩焼き、サラダなどが並べられてある
一人夕飯を食べている鳴海
鳴海「(夕飯を食べながら 声 モノローグ)雨の中で開かれるほど、緋空祭りは俺と菜摘に優しくない」
◯1707貴志家鳴海の自室(深夜)
外は雨が降っている
片付いている鳴海の部屋
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラが置いてある
鳴海は窓際に立ってカーテンの隙間から外を見ている
雨は降り続ける
外で緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
外で所々に桜の木が咲いている
外は雨の影響で散った桜の花びらが地面に落ちている
鳴海「(カーテンの隙間から外を見ながら 声 モノローグ)また・・・またこの世界が・・・菜摘から楽しみを奪おうとしている・・・」
◯1708早乙女家菜摘の自室(日替わり/昼)
外は雨が降っている
綺麗な菜摘の部屋
菜摘の部屋にいる鳴海と菜摘
菜摘の部屋にはベッド、低いテーブル、勉強机、パソコン、プリンターなどが置いてある
ベッドはマットレス、掛け布団、枕が片付けられ、骨組みだけの状態になっている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
低いテーブルにを挟んで向かい合って床に座っている鳴海と菜摘
低いテーブルの上には箱ティッシュ、黒いペン、青色のリボン、青色の毛糸などが置いてある
鳴海と菜摘はてるてる坊主を作っている
てるてる坊主を作り話をしている鳴海と菜摘
鳴海「(てるてる坊主を作って菜摘と話をしながら 声 モノローグ)それでも菜摘は明るく振る舞っていた」
時間経過
完成した二つのてるてる坊主が菜摘の部屋の窓際に吊るされている
二つのてるてる坊主には顔が描かれており、青色の毛糸で吊るされている
窓際に吊るされたてるてる坊主を見ながら話をしている鳴海と菜摘
鳴海「(菜摘と話をしながら窓際に吊るされたてるてる坊主を見て 声 モノローグ)菜摘はいつもそうだ。辛くても、苦しくても、一生懸命、1秒1秒を大切にしながら過ごしている」
菜摘は窓際に吊るされたてるてる坊主を見て鳴海と話をしながら楽しそうに笑っている
◯1709帰路(夕方)
雨が降っている
傘をさして自宅に向かっている鳴海
部活帰りの波音高校の生徒がたくさんいる
道には緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
道には所々に咲いている桜の木がある
雨の影響で散った桜の花びらが地面に落ちている
鳴海「(声 モノローグ)時々、俺が菜摘をそうさせているのではないかと思った」
◯1710貴志家リビング(夜)
外は雨が降っている
一人リビングにいる鳴海
リビングには風夏の荷物が入ったたくさんの段ボール箱が山積みになって置いてある
鳴海はテーブルに向かって椅子に座っている
テーブルの上には箱ティッシュ、輪ゴム、黒いペン、タコ糸が置いてある
鳴海はてるてる坊主を作っている
テーブルの上の輪ゴムを手に取る鳴海
鳴海は輪ゴムでてるてる坊主を止める
鳴海「(輪ゴムでてるてる坊主を止めながら 声 モノローグ)菜摘が無理をする原因は、俺にあるんじゃないだろうか」
鳴海は輪ゴムでてるてる坊主を止める
テーブルの上の黒いペンを手に取る鳴海
鳴海は輪ゴムで止めたてるてる坊主に黒いペンで顔を描く
鳴海「(輪ゴムで止めたてるてる坊主に黒いペンで顔を描きながら 声 モノローグ)この世界と同じように・・・」
鳴海は輪ゴムで止めたてるてる坊主の顔を黒いペンで描き終える
黒いペンをテーブルの上に置く鳴海
鳴海は顔が描かれたてるてる坊主を見る
鳴海「(顔が描かれたてるてる坊主を見る 声 モノローグ)俺はあいつを苦しめているのかもしれない」
◯1711貴志家鳴海の自室(深夜)
外は雨が降っている
片付いている鳴海の部屋
鳴海の部屋はカーテンが開かれてある
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラが置いてある
窓際には鳴海が作った一つのてるてる坊主がタコ糸で吊るされている
てるてる坊主には顔が描かれている
ベッドの上で横になっている鳴海
鳴海「(声 モノローグ)もし俺がそんなことを言えば、菜摘は怒るだろう。菜摘は俺のこういう思考回路を、文芸部の活動を通して変えようとしていたはずだ。どんな理由にしろ、俺が菜摘を追い詰めるわけにはいかない・・・」
◯1712貴志家リビング(日替わり/朝)
外は雨が降っている
時刻は九時半過ぎ
リビングには風夏の荷物が入ったたくさんの段ボール箱が山積みになって置いてある
椅子に座ってテレビのニュースを見ている鳴海
鳴海はてるてる坊主を握り締めている
ニュースキャスター1「各地に咲いた桜は、雨の影響で・・・」
鳴海「(テレビのニュースを見ながら 声 モノローグ)結局、緋空祭りが開催する予定だった3日間で、太陽が顔を出すことは一度もなかった」
鳴海はテレビのニュースを見ながらてるてる坊主を握り締めるのをやめる
テレビのニュースを見ながらテーブルの上にてるてる坊主を置く鳴海
テーブルの上のてるてる坊主はくしゃくしゃになっている
テーブルの上のてるてる坊主には顔が描かれている
テレビのニュースを見るのをやめる
立ち上がる鳴海
◯1713早乙女家菜摘の自室(昼過ぎ)
外は弱い雨が降っている
綺麗な菜摘の部屋
菜摘の部屋にいる鳴海、菜摘、すみれ、潤
菜摘の部屋にはベッド、低いテーブル、勉強机、パソコン、プリンターなどが置いてある
ベッドはマットレス、掛け布団、枕が片付けられ、骨組みだけの状態になっている
菜摘の部屋には鳴海と菜摘が作った二つのてるてる坊主が窓際に吊るされている
二つのてるてる坊主には顔が描かれており、青色の毛糸で吊るされている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
低いテーブルに向かって床に座っている鳴海、菜摘、すみれ、潤
低いテーブルの上には”怒り爆発!!理不尽すごろく!!”というタイトルのボードゲームが置いてある
低いテーブルの上の”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”を見ている鳴海と菜摘
鳴海「(低いテーブルの上の”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”を見ながら)何だこれ・・・」
潤「すみれ、最近の若者は字も読めないらしいぞ」
すみれ「そうなんですか?」
鳴海「(低いテーブルの上の”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”を見ながら)いや・・・読めますけど・・・」
少しの沈黙が流れる
菜摘「(低いテーブルの上の”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”を見ながら)お父さん・・・」
潤「何だ?我が愛おしいドーターよ」
菜摘「(低いテーブルの上の”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”を見ながら)今から何をするの・・・?」
潤「怒り爆発人生理不尽すごろくをするんだ」
鳴海「(低いテーブルの上の”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”を見ながら)何のためにそんなもんをやるんだよ・・・」
潤「雨の日と言ったらボドゲだろ義理の息子」
再び沈黙が流れる
鳴海は低いテーブルの上の”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”を見るのをやめる
鳴海「(低いテーブルの上の”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”を見るのをやめて)雨でもこんなくだらないゲームを・・・」
すみれは話途中の鳴海の耳元に顔を近付ける
すみれ「(鳴海の耳元に顔を近付けて鳴海の話を遮り小さな声で)すごろくは緋空祭りの代わりです・・・菜摘のために、私たちに付き合ってくれませんか、鳴海くん」
鳴海「(小声で)そ、そういうことなら・・・分かりました・・・」
すみれは鳴海の耳元から顔を離す
鳴海「(大きな声で)な、菜摘!!!雨と言ったらすごろくしかないぞ!!!」
菜摘は低いテーブルの上の”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”を見るのをやめる
菜摘「(低いテーブルの上の”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”を見るのをやめて)そうかな・・・?」
鳴海「(大きな声で)おう!!!」
菜摘「鳴海くんはこのおもちゃで遊んだことがあるの?」
鳴海「こいつはないが普通のすごろくなら・・・」
◯1714回想/貴志家リビング(約十数年前/昼過ぎ)
外は快晴
リビングにいる30歳頃の由夏理と同じく30歳頃の紘、10歳頃の風夏
テーブルの上にはボードゲームのすごろくが箱から出して置いてある
話をしている由夏理と紘
キッチンには5歳頃の鳴海と10歳頃の風夏がいる
キッチンに隠れながら由夏理と紘の会話を聞いている5歳頃の鳴海と10歳頃の風夏
紘「勘弁してくれ由夏理、俺は仕事で疲れているんだ」
少しの沈黙が流れる
由夏理「(小声で)紘、たまには鳴海の言うことを聞いてあげなよ」
紘「たまには?先週末、君がどこかのカフェで遊んでいる間に俺は鳴海と風夏をギャラクシーフィールドへ連れて行ったんだぞ」
由夏理「(小声で)あ、あの時はちょっと休んでいただけで・・・」
再び沈黙が流れる
紘「(小声でボソッと)クソッ・・・疲れているのにこんなくだらないことをしなきゃいけないのか・・・」
少しの沈黙が流れる
紘「一回だけだぞ、由夏理」
由夏理は頷く
◯1715回想戻り/早乙女家菜摘の自室(昼過ぎ)
外は弱い雨が降っている
綺麗な菜摘の部屋
菜摘の部屋にいる鳴海、菜摘、すみれ、潤
菜摘の部屋にはベッド、低いテーブル、勉強机、パソコン、プリンターなどが置いてある
ベッドはマットレス、掛け布団、枕が片付けられ、骨組みだけの状態になっている
菜摘の部屋には鳴海と菜摘が作った二つのてるてる坊主が窓際に吊るされている
二つのてるてる坊主には顔が描かれており、青色の毛糸で吊るされている
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
低いテーブルに向かって床に座っている鳴海、菜摘、すみれ、潤
低いテーブルの上には”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”というタイトルのボードゲームが置いてある
鳴海「親父・・・」
潤「父親がどうかしたのか?」
鳴海「い、いや・・・(少し間を開けて)昔、似たようなゲームを家族でやろうとしたことがあってさ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「と、とにかくこいつをやってみるか」
菜摘「う、うん」
時間経過
低いテーブルの上に”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”が箱から出して置いてある
低いテーブルの上には”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”のボード、箱、サイコロ一つ、プレイヤー用の小さな2頭身の駒三つ、”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”で使う紙幣、借用書、駒と同じサイズの車、駒と同じサイズの家が置いてある
すみれは”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”の取り扱い説明書を読んでいる
鳴海「じゃ、じゃあいくぞ・・・」
鳴海は低いテーブルの上にあるサイコロを手に取ろうとする
すみれ「(”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”の取り扱い説明書を読みながら)あ、待って」
鳴海「 (低いテーブルの上にあるサイコロを手に取ろうとしたまま)えっ?」
すみれ「(”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”の取り扱い説明書を読みながら)注意書きに、一番手だからと言って真っ先にゴール出来ると思うんじゃないぞって書いてありますよ」
鳴海「(低いテーブルの上にあるサイコロを手に取ろうとしたまま)そ、そうですか・・・」
鳴海は低いテーブルの上にあるサイコロを手に取る
菜摘「が、頑張れ鳴海くん」
鳴海「お、おう」
鳴海はサイコロを投げる
サイコロの目は6を出す
鳴海「よし!!」
潤は舌打ちをする
2頭身の駒を6マス進める鳴海
鳴海「(2頭身の駒を6マス進めながら)やっぱりこういうゲームは一番手が有利に決まって・・・」
鳴海は”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”のボードの6マス目に2頭身の駒を置く
話途中で黙る鳴海
菜摘「鳴海くん・・・?どうしたの・・・?」
再び沈黙が流れる
潤「ヤングでダンディーな俺が義理の息子に代わって文字を読んでやろう」
潤は”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”のボードの6マス目を読む
潤「(”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”のボードの6マス目を読みながら)新たな旅の始まり!!調子に乗って2000万円の高級車を購入し、1950万円の借金をする。借金まみれだが気分は最高、愛車を運転しながら心を躍らせるのも束の間、カナリアに見惚れてしまい交通事故を起こす。致命傷を負ったため5回休み」
鳴海「(大きな声で)り、理不尽過ぎるだろ!!!!」
菜摘「こ、高級車は財産になるよ、鳴海くん」
鳴海「仮に大破した高級車が財産になったとしても借金が溜まり過ぎだ・・・」
すみれ「(”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”の取り扱い説明書を読みながら)因みに、説明書によると事故にあった車の価値は元の値段の1/50になるんですって」
鳴海「40万でどうやって借金を返せば良いんだよ・・・」
潤は笑いながら鳴海の背中を叩く
潤「(笑いながら鳴海の背中を叩いて)菜摘、こういう借金男とは結婚するんじゃねえぞ」
鳴海「お、おい!!」
潤は鳴海の背中を叩くのをやめる
潤「(鳴海の背中を叩くのをやめて)何だよ義理の借金息子」
鳴海「変な呼び名をつけないでくれ、そ、それから俺と菜摘の・・・」
潤「(鳴海の話を遮って)借金を返してから話は続けるんだな!!」
少しの沈黙が流れる
鳴海はため息を吐き出す
鳴海「(ため息を吐き出して)分かったよ・・・」
潤は低いテーブルの上のサイコロを手に取る
潤「いくぜ!!」
潤はサイコロを勢いよく低いテーブルの上に叩きつける
サイコロは低いテーブルにぶつかってどこかに転がって行く
再び沈黙が流れる
すみれ「潤くん」
潤「はい」
すみれ「どうしてサイコロを叩きつけたの?」
潤「つ、つい手が滑っちまったんだよ!!」
すみれ「わざとやったんでしょう?」
潤「わ、わざとじゃねえ!!手が滑ったんだよ!!」
鳴海「過ちを認めないのは大人として情けないぞ」
潤「生まれてから半年程度で借金まみれになったお子ちゃまに大人の何が分かるんだ?」
菜摘「お父さん、鳴海くんは私と同い年だよ」
潤「な、何・・・?つ、つまりこいつは菜摘の同級生だったのか・・・?」
菜摘「うん」
鳴海「何で初めて知ったみたいなリアクションなんだよ・・・」
潤「てめえだって俺やすみれの歳を知らないだろう」
鳴海「すみれさんは20歳で、あんたは80歳くらいじゃないのか」
潤「あぁん!?」
すみれ「(嬉しそうに)に、20歳だなんてそんなそんな・・・」
鳴海「すみれさん、若過ぎて菜摘のお姉さんに見えますよ」
菜摘・すみれ「(驚いて大きな声で)ええっ!?」
鳴海「さ、さすがは親子・・・反応まで完璧に一緒だ・・・」
潤「すみれは菜摘の妹かもしれん」
鳴海「そ、そうだな・・・ってアホか」
すみれ「やっぱり年相応ですよね・・・」
鳴海「い、いや!!と、年相応ではないと思いますよ!!」
菜摘「お母さんは老けてるってこと・・・?」
鳴海「ぎゃ、逆だ菜摘!!若く見えるってことだよ!!」
菜摘「そ、そうだよね・・・」
潤「すみれは菜摘の妹かもしれんからな」
鳴海「あんたは何度同じボケを繰り返すんだ・・・」
すみれ「(悲しそうに)ボケているの・・・?潤くん・・・」
潤「(大きな声で)ボケじゃないこれは愛だよすみれ!!!!」
すみれ「あ・・・い・・・?」
潤「(大きな声で)愛だ!!!!すみれ!!!!俺たちの娘に愛を見せつけよう!!!!」
菜摘「は、恥ずかしいよお父さん・・・」
潤「すみれ、菜摘と義理の息子に愛を教えてやってくれ」
すみれ「分かりました・・・菜摘・・・鳴海くん・・・愛っていうのは・・・(少し間を開けて)胡椒みたいな物なの」
少しの沈黙が流れる
菜摘「へ、へえー・・・そ、そうだったんだー・・・」
鳴海「よく分からないから適当に相槌を打っただろ菜摘・・・」
菜摘「わ、分かってるもん!!あ、愛は胡椒なんだよ鳴海くん!!」
鳴海「そう言われても俺にはどうやったら愛と胡椒がイコールになるのか謎なんだが・・・」
菜摘「い、いつか鳴海くんにも分かるようになるよ!!」
鳴海「そ、そうか・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「で・・・次は菜摘の番だろ」
菜摘「次って・・・?」
鳴海「(呆れて)すごろくのことだよ・・・」
菜摘「鳴海くん」
鳴海「どうした」
菜摘「サイコロがないよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海は潤のことを見る
慌てて鳴海から顔を背ける潤
潤「(慌てて鳴海から顔を背けて)さ、サイコロなんて俺は知らねえからな」
鳴海は顔を背けている潤のことを見るのをやめる
鳴海「(顔を背けている潤のことを見るのをやめて)ったく・・・お爺ちゃんが・・・」
潤は鳴海から顔を背けるのをやめる
潤「(鳴海から顔を背けるのをやめて)て、てめえ今何つった!!」
鳴海「お爺ちゃんだよお爺ちゃん」
潤「おじさんは認めるがお爺ちゃんはまだだろこの野郎!!」
鳴海「分かった分かった。(少し間を開けて)菜摘、すみれさん、やらかしたお爺ちゃんのために俺たちでサイコロを探しましょう」
菜摘「そ、そうだね」
潤「おい義理の借金息子・・・今度俺のことを名前以外の変なあだ名で呼んだら怒りの大パンチをお見舞いするからな・・・」
鳴海「あんたも相当変なあだ名で俺のことを呼んでいるだろ・・・」
時間経過
菜摘の部屋の隅々を見てサイコロを探している鳴海、菜摘、すみれ、潤
すみれ「(サイコロを探しながら)潤くん・・・どこにやったの・・・?」
潤「(サイコロを探しながら)分からん・・・」
鳴海「(サイコロを探しながら)諦めて別のサイコロを使ったほうが良いんじゃないですか?」
菜摘「(サイコロを探しながら)ダメだよ鳴海くん、サイコロは我が家に一つしかないもん」
鳴海「(サイコロを探しながら)今時サイコロくらいスマホのアプリでも代用出来ると思うぞ・・・」
菜摘「(サイコロを探しながら)えっ?そうなの?」
鳴海「(サイコロを探しながら)多分な」
潤「(サイコロを探しながら)現代っ子ってのはすぐに諦めやがるぜ・・・」
鳴海「(サイコロを探しながら)言っとくけど現代っ子の俺はあんたよりも物を大事に扱っているぞ」
潤「(サイコロを探しながら)俺も普段は大事にしているが、今日は勢い余ったんだ」
鳴海「(サイコロを探しながら)どうだかな・・・」
鳴海は菜摘の勉強机の下を覗く
菜摘の勉強机の下にはサイコロがある
サイコロを見つける鳴海
鳴海「(菜摘の勉強机の下を覗いたままサイコロを見つけて)あ、あったぞ!!」
潤はサイコロを探すのをやめる
潤「(サイコロを探すのをやめて)でかした義理の借金息子!!」
鳴海「(菜摘の勉強机の下を覗いたまま)感謝しろよ義理のお爺ちゃん」
潤「おう義理の借金サイコロ息子!!」
菜摘とすみれはサイコロを探すのをやめる
菜摘「(サイコロを探すのをやめて)どこにあったの?鳴海くん」
鳴海「(菜摘の勉強机の下を覗いたまま)机の下だ。今取ってやるから待って・・・」
菜摘「(鳴海の話を遮って)私、使えそうな棒を探して来る!!」
鳴海「(菜摘の勉強机の下を覗いたまま)あ、ああ」
菜摘は走って部屋から出て行く
菜摘の勉強机の下を覗いたまま勉強机の下に手を伸ばす鳴海
鳴海は菜摘の勉強机の下を覗いたまま勉強机の下に手を伸ばすが、もう少しのところでサイコロには手が届かない
鳴海「(菜摘の勉強机の下を覗いて勉強机の下に手を伸ばしたまま)クソッ・・・もう少しなのに・・・」
潤「ほらほら頑張れよ義理の借金サイコロ息子」
鳴海「(菜摘の勉強机の下を覗いて勉強机の下に手を伸ばしたまま)うるせえクソジジイ・・・」
潤「(少し笑って)早くしないと菜摘が来ちまうぞ」
鳴海「(菜摘の勉強机の下を覗いて勉強机の下に手を伸ばしたまま)わ、分かってるよ」
鳴海は菜摘の勉強机の下を覗いて勉強机の下に手を伸ばし続けるが、変わらずもう少しのところでサイコロには手が届かない
少しすると菜摘が部屋に戻って来る
菜摘は釣り竿を持っている
潤「時間切れだな、義理の借金サイコロ息子」
鳴海は菜摘の勉強机の下を覗いて勉強机の下に手を伸ばしたまま舌打ちをする
鳴海「(菜摘の勉強机の下を覗いて勉強机の下に手を伸ばしたまま舌打ちをして)チッ・・・」
鳴海は菜摘の勉強机の下を覗いたまま勉強机の下に手を伸ばすのをやめる
釣り竿を勉強机の下を覗いている鳴海に差し出す菜摘
菜摘「(釣り竿を勉強机の下を覗いている鳴海に差し出して)お待たせ、鳴海くん」
鳴海は釣り竿を菜摘に差し出されたまま菜摘の勉強机の下を覗くのをやめる
釣り竿を菜摘から受け取る鳴海
鳴海「(釣り竿を菜摘から受け取って)わ、悪いな・・・」
菜摘「ううん!!」
潤「釣り竿を持って来たうちの娘に感謝し・・・って俺の釣り竿じゃねえかそれは!!」
菜摘「ん・・・?」
鳴海は菜摘の勉強机の下に潤の釣り竿を突っ込む
鳴海「(菜摘の勉強机の下に潤の釣り竿を突っ込んで)すまん手が滑ってほこりだらけの机の下に入っちまった」
潤「(大きな声で)ぬおおおおおおおおおお俺の釣り竿があああああああああああ!!!!」
すみれ「潤くん、あんまり大きな声を出すとお隣さんから苦情が来るよ」
潤「すみれ・・・釣り竿はたっかいんだぞ・・・」
すみれ「高くても、サイコロを無くしたのは潤くんでしょう?」
潤「くっ・・・」
鳴海は潤の釣り竿を使って菜摘の勉強机の下からサイコロを取り出す
潤の釣り竿はほこりだらけになっている
サイコロは6の目が出ている
鳴海はほこりだらけの釣り竿とサイコロを潤に差し出す
鳴海「(ほこりだらけの釣り竿とサイコロを潤に差し出して)おらよ」
潤はほこりだらけの釣り竿とサイコロを鳴海から受け取る
潤「(ほこりだらけの釣り竿とサイコロを鳴海から受け取って)お、俺の・・・俺の・・・釣り竿が・・・」
鳴海「サイコロの目、6だからな、誤魔化すなよ」
潤「ま、まさか俺も義理の借金サイコロ釣り竿息子と同じ人生を・・・」
鳴海「(少し笑って)その通りだ、義理の借金ほこりお爺ちゃん」
潤「く、屈辱だ・・・こんなクソガキに・・・俺が・・・」
すみれ「潤くん」
潤「く、屈辱だ・・・こんな子供に・・・俺が・・・」
時間経過
”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”をプレイし終えた鳴海、菜摘、すみれ、潤
鳴海の近くには”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”で使う大量の借用書だけが置いてある
菜摘の近くには”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”で使う数枚の紙幣が置いてある
すみれの近くには”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”で使う大量の紙幣が置いてある
潤の近くには鳴海ほどではないが”怒り爆発!!人生理不尽すごろく!!”で使う大量の借用書が置いてある
潤「(笑いながら)ハーハッハッハッハ!!勝利とは最高だな!!」
鳴海「(呆れて)三着は勝利とは言わないだろ・・・」
潤「義理の借金サイコロ釣り竿息子より先に上がったんだから勝利なんだよ」
菜摘「お父さん・・・そういうの私大人気ないと思う・・・」
潤「な、何だって・・・?」
菜摘「お父さんのことを大人気ないって言ったんだよ」
潤「な、菜摘・・・お父さんは勝ったんだぞ・・・」
菜摘「うん」
潤「か、勝ったなら・・・大人気なくないよな・・・?」
菜摘「ううん」
再び沈黙が流れる
すみれ「娘の恋人相手に勝敗をこだわるのは大人気ないですよ、潤くん」
潤「す、すみれまでそんなことを言うのか・・・」
鳴海「実際大人気ないだろ・・・」
潤「え、ええい!!もう一戦やるぞ!!」
鳴海「ま、またやるのか?」
潤「今日は日付が変わるまでこのすごろくをやり続けて、圧倒的な勝利をお前に見せつけてやるんだ」
鳴海「そういうところが大人気ないんだと思うぞ・・・」
潤「(大きな声で)ここには絶対に負けられねえ戦いがあるんだよ!!!!」
菜摘「燃え上がってるね、お父さん」
潤「(大きな声で)菜摘!!!!お父さんは愛する娘のために頑張るぞ!!!!」
菜摘「う、うん・・・」
潤「早速再戦といきたいところだが・・・その前に一休みするか・・・鳴海」
鳴海「な、何だよ」
潤「少し付き合え」
鳴海「は・・・?」
◯1716早乙女家前(昼過ぎ)
雨が降っている
菜摘の家の前にいる鳴海と潤
鳴海と潤は傘をさしている
道には緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
道には所々に咲いている桜の木がある
雨の影響で散った桜の花びらが地面に落ちている
地面にある桜の花びらは雨水に流されている
鳴海「何で外にまで連れ出したんだ?」
潤「まあちょっとな・・・」
潤はポケットからタバコの箱とZIPPOライターを取り出す
タバコの箱からタバコを一本取り出す潤
潤はタバコを口に咥える潤
ZIPPOライターを使ってタバコに火を付ける潤
潤はタバコの煙を吐き出す
ZIPPOライターとタバコの箱をポケットにしまう潤
鳴海「タバコ、前から吸ってたのか?」
潤「(タバコを咥えたまま)いや」
少しの沈黙が流れる
潤「(タバコを咥えたまま)俺も弱い人間だ」
鳴海「どういう意味だよ」
潤「(タバコを咥えたまま)去年、菜摘が入院してからまた吸うようになっちまった」
鳴海「またってことは昔も吸ってたんだな」
潤「(タバコを咥えたまま)ああ。菜摘が生まれる前はタバコを吸いながら時々パチ屋に行ったもんだ」
鳴海「賭け事はやめておけよ、あんたの性格だと破産するぞ」
潤「(タバコを咥えたまま)俺もそう思って菜摘が生まれる前にやめたんだよ」
再び沈黙が流れる
鳴海「すみれさんも吸ってるのか?」
潤「(タバコを咥えたまま)あいつが吸うわけないだろ」
鳴海「そ、そうだよな・・・」
潤「(タバコを咥えたまま)とは言え・・・若い頃はすみれも吸っていたがな」
鳴海「い、今も若いだろ」
潤「(タバコを咥えたまま)本当に若かった頃だよ」
鳴海「菜摘が生まれる前か?」
潤「(タバコを咥えたまま)そんなとこだ。(少し間を開けて)若いと何をしでかすか分からねえから、お前も気をつけろよ」
鳴海「あ、ああ」
少しの沈黙が流れる
潤「(タバコを咥えたまま)菜摘は鳴海と緋空祭りに行きたがっていたぞ」
鳴海「そ、そうか・・・」
潤「(タバコを咥えたまま)あいつがちっちゃかった頃は・・・お母さんとお父さんとお祭りに行きたいって騒いでいたのに、それがいつの間にかでっかくなって・・・今じゃ俺ら親とは祭りに行きたがらなくなっちまった」
鳴海「な、菜摘は・・・潤さんとすみれさんとも行ってくれると思うぞ」
潤「(タバコを咥えたまま)親のわがままで子に無理はさせたくねえって話なんだよ、これは」
鳴海「よ、よく分からないが・・・大変なんだな・・・あんたも・・・」
潤「(タバコを咥えたまま)もちろん親ってのは大変なもんだ。菜摘の笑顔のためにやれることはしなきゃならねえ、俺とすみれはそう決めて、18年間菜摘の面倒を見て来たんだ」
再び沈黙が流れる
潤「(タバコを咥えたまま)鳴海・・・」
鳴海「ん?」
潤「(タバコを咥えたまま)お前が・・・両親のことを聞きたくなったら・・・いつでも俺のところへ来い。遠慮はするなよ、鳴海。お前には知る権利があるんだ」
鳴海「あんたは・・・両親のことを知りたいという俺の想いに応えてくれるのか」
潤「(タバコを咥えたまま)ああ」
鳴海「菜摘が言ってたぞ、あんたにとって俺は親友の息子だから気にかけたくなるんじゃないかって」
潤「(タバコを咥えたまま)ただ親友の息子ってだけじゃない。お前は菜摘の大切な恋人だ、癪だがな」
鳴海「なら世話になり過ぎないように注意するよ」
潤「(タバコを咥えたまま)偉そうに大口を叩くんじゃねえ。お前の人生は前途多難なんだぞ」
鳴海「菜摘やあんたたらがいれば大丈夫さ」
潤「(タバコを咥えたまま小声でボソッと)お前はまだまだガキンチョだな・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「な、なあ」
潤「(タバコを咥えたまま)何だ」
鳴海「母は・・・どんな人だった・・・?」
潤「(タバコを咥えたまま)お前のお袋か・・・そうだな・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「お、俺の知りたいという想いに答えてくれるんじゃないのか」
潤はタバコの煙を吐き出す
潤「(タバコを咥えたままタバコの煙を吐き出して)言葉を選んでるんだから急かすなよ」
鳴海「わ、悪い・・・」
潤「(タバコを咥えたまま)由夏理は・・・自由人っぽくてな・・・」
◯1717◯1702の回想/鳴海の夢/公園(約30年前/朝)
快晴
約30年前の公園にいる鳴海と18歳の由夏理
由夏理は波音高校の制服を着ている
公園には一本の桜の木がある
公園にある桜の木は咲いている
ブランコに座っている鳴海
由夏理の右脚の膝下には擦り傷が出来ている
ブランコの近くには由夏理のママチャリが止めてある
由夏理は鳴海の目の前に立っている
由夏理の右脚の膝下に擦り傷が出来ている
ブランコの近くには由夏理のママチャリが止めてある
鳴海の顔を掴み無理矢理自分の方に向けたまま鳴海の顔をよく見ている由夏理
話をしている鳴海と由夏理
潤「(声)特に高校生の頃は何にも縛られずに生きている感じがしたよ」
由夏理は鳴海の顔をよく見たまま鳴海の顔を離す
鳴海の顔を見るのをやめる由夏理
由夏理はブランコに座りに行く
潤「(声)お前のお袋は親父以上に頑固で不器用な性格だったから、俺たちは苦労させられたもんだ」
鳴海と由夏理は変わらず話を続けている
◯1718回想戻り/早乙女家前(昼過ぎ)
雨が降っている
菜摘の家の前にいる鳴海と潤
鳴海と潤は傘をさしている
潤はタバコを吸っている
道には緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
道には所々に咲いている桜の木がある
雨の影響で散った桜の花びらが地面に落ちている
地面にある桜の花びらは雨水に流されている
話をしている鳴海と潤
鳴海「が、学校にはちゃんと出席していたのか・・・?」
潤「(タバコを咥えたまま)俺、すみれ、紘、由夏理の4人の中で真面目に学校に通っていたのはすみれだけだぞ」
鳴海「さ、三年の出席日数とか単位は大丈夫だったんだよな・・・?」
潤「(タバコを咥えたまま)ああ」
鳴海「そうか・・・良かった・・・」
潤「(タバコを咥えたまま)ずいぶん変なことを聞きやがるんだな」
鳴海「は、母親の成績を気にしちゃいけないのか」
潤「(タバコを咥えたまま)いけなくなんかねえよ。子が親に興味を持つのは自然の成り行きだ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「俺は母親と父親のどっちに似ていると思う?」
潤「(タバコを咥えたまま)そんなのはお前が似ていると思う方に決まってるだろ」
鳴海「そ、それが自分じゃ分からないんだよ」
潤「(タバコを咥えたまま少し笑って)ならどっちにも似ているということだな」
潤はタバコの煙を吐き出す
鳴海「(声 モノローグ)この日の晩、俺は菜摘の家で夕飯を食べた」
◯1719早乙女家リビング(夜)
外は雨が降っている
早乙女家リビングにいる鳴海、菜摘、すみれ、潤
テーブルに向かって椅子に座っている鳴海、菜摘、すみれ、潤
テーブルの上にはキムチ鍋と取り皿が置いてある
キムチ鍋の具材は豚肉、ニラ、豆腐、白菜
取り皿は鳴海たちそれぞれの分が用意されてある
話をしている鳴海、菜摘、墨絵、潤
話をしながら菜箸を使って取り皿にキムチ鍋をよそっている鳴海
鳴海「(菜箸を使ってキムチ鍋をよそいながら 声 モノローグ)メニューはちょうど一年前の俺が初めて菜摘の家を訪れた時と同じ鍋だった」
鳴海は話をしながら取り皿にキムチ鍋をよそい終える
話をしながら菜箸を使って取り皿にキムチ鍋をよそい始める菜摘
鳴海「(話をしながら 声 モノローグ)俺の心の中ではどうしようもなく多くの感情が錯綜し、同時に混乱を招いている。一年前に戻りたいという想い・・・ほんの少しだが確実に湧き出ている両親への興味・・・18年間、菜摘の笑顔を絶やさなかったすみれさんと潤さんへの強い尊敬の念・・・嫌いな緋空祭りに対する怒り・・・気まぐれに菜摘に楽しみを与え奪うこの世界への憎悪・・・」
菜摘は話をしながら取り皿にキムチ鍋をよそい終える
話をしながら菜箸を使って取り皿にキムチ鍋をよそい始めるすみれ
鳴海「(話をしながら 声 モノローグ)そういう感情とどうやって折り合いつけるか・・・どうやって向き合って前に進んで行くか・・・どうやったら俺はクソガキじゃなくなるのか・・・」
すみれは話をしながら取り皿にキムチ鍋をよそい終える
◯1720帰路(夜)
雨が降っている
傘をさして自宅に向かっている鳴海
道には緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
道には所々に咲いている桜の木がある
雨の影響で散った桜の花びらが地面に落ちている
地面にある桜の花びらは雨水に流されている
鳴海「(声 モノローグ)俺が色々考えていると、不意に母の顔が浮かんだ。(少し間を開けて)夢の中で出会った高校生の母は、決して大人びている感じはせず、むしろ潤さんが言っていたように自由人っぽくて、まだあどけなさが残っていた。そんな人が・・・いずれ俺の親になるなんて・・・現実は変だ・・・」
◯1721貴志家リビング(夜)
外は雨が降っている
家に帰って来た鳴海
リビングには風夏の荷物が入ったたくさんの段ボール箱が山積みになって置いてある
鳴海はリビングの電気をつける
鳴海「まあ・・・夢を現実だと思っている俺も変か・・・」
鳴海はテーブルの上に家の鍵を置く
テーブルの上には家の鍵の他にくしゃくしゃになったてるてる坊主が置いてある
テーブルの上のてるてる坊主には顔が描かれている
◯1722貴志家鳴海の自室(深夜)
外は雨が降っている
片付いている鳴海の部屋
鳴海の部屋はカーテンが開かれてある
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、くしゃくしゃになったてるてる坊主が置いてある
机の上のてるてる坊主には顔が描かれている
ベッドの上で横になっている鳴海
鳴海はベッドの上で横になったままスマホを見ている
鳴海はスマホのインターネットの検索欄に”波音町 仕事 高卒”と打ち込む
鳴海「(スマホを見ながらマホのインターネットの検索欄に”波音町 仕事 高卒”と打ち込んで 声 モノローグ)いつまでも夢ばかりを見ているわけにはいかない」
鳴海はスマホのインターネットで求人サイトを見ている
スマホの求人サイトには波音町で働ける様々な中小企業の紹介が載っている
鳴海「(スマホのインターネットで求人サイトを見ながら 声 モノローグ)早く新しい生活を始めないと・・・」




