Chapter7♯1 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
Chapter7概要
合同朗読劇を成功させて波音高校を卒業した鳴海と菜摘。風夏の恋人である神北龍造を紹介され、貴志家の輪が広がる中、鳴海が望むことはたった一つだけ、菜摘と過ごす幸せな日々だった。菜摘は鳴海を支えながらも、残された時間と力をあることに使う。やがてそれは、熱狂的な想いを孕んで、交通事故で死んだ両親のことを鳴海から思い出させるのであった。
弱る菜摘と眠っていた記憶と向き合う鳴海は、強烈な怒り、悲しみ、焦りを対処することが出来ない。”最悪な時代”を回避しようとする汐莉、神谷、早季の裏で、鳴海は徐々に死に始める。切なくて残酷な奇跡が、”貴志鳴海”を名も無き”老人”へと変えて行くのだった・・・
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter7
√鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
登場人物
貴志 鳴海 19歳男子
Chapter7における主人公。昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の副部長として合同朗読劇や部誌の制作などを行っていた。波音高校卒業も無鉄砲な性格と菜摘を一番に想う気持ちは変わっておらず、時々叱られながらも菜摘のことを守ろうと必死に人生を歩んでいる。後に鳴海は滅びかけた世界で暮らす老人へと成り果てるが、今の鳴海はまだそのことを知る由もない。
早乙女 菜摘 19歳女子
Chapter7におけるもう一人の主人公でありメインヒロイン。鳴海と同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の部長を務めていた。病弱だが性格は明るく優しい。鳴海と過ごす時間、そして鳴海自身の人生を大切にしている。鳴海や両親に心配をかけさせたくないと思っている割には、危なっかしい場面も少なくはない。輪廻転生によって奇跡の力を引き継いでいるものの、その力によってあらゆる代償を強いられている。
貴志 由夏理
鳴海、風夏の母親。現在は交通事故で亡くなっている。すみれ、潤、紘とは同級生で、高校時代は潤が部長を務める映画研究会に所属していた。どちらかと言うと不器用な性格な持ち主だが、手先は器用でマジックが得意。また、誰とでも打ち解ける性格をしている
貴志 紘
鳴海、風夏の父親。現在は交通事故で亡くなっている。由夏理、すみれ、潤と同級生。波音高校生時代は、潤が部長を務める映画研究会に所属していた。由夏理以上に不器用な性格で、鳴海と同様に暴力沙汰の喧嘩を起こすことも多い。
早乙女 すみれ 46歳女子
優しくて美しい菜摘の母親。波音高校生時代は、由夏理、紘と同じく潤が部長を務める映画研究会に所属しており、中でも由夏理とは親友だった。娘の恋人である鳴海のことを、実の子供のように気にかけている。
早乙女 潤 47歳男子
永遠の厨二病を患ってしまった菜摘の父親。歳はすみれより一つ上だが、学年は由夏理、すみれ、紘と同じ。波音高校生時代は、映画研究会の部長を務めており、”キツネ様の奇跡”という未完の大作を監督していた。
貴志/神北 風夏 25歳女子
看護師の仕事をしている6つ年上の鳴海の姉。一条智秋とは波音高校時代からの親友であり、彼女がヤクザの娘ということを知りながらも親しくしている。最近引越しを決意したものの、引越しの準備を鳴海と菜摘に押し付けている。引越しが終了次第、神北龍造と結婚する予定。
神北 龍造 25歳男子
風夏の恋人。緋空海鮮市場で魚介類を売る仕事をしている真面目な好青年で、鳴海や菜摘にも分け隔てなく接する。割と変人が集まりがちの鳴海の周囲の中では、とにかく普通に良い人とも言える。因みに風夏との出会いは合コンらしい。
南 汐莉 16歳女子
Chapter5の主人公でありメインヒロイン。鳴海と菜摘の後輩で、現在は波音高校の二年生。鳴海たちが波音高校を卒業しても、一人で文芸部と軽音部のガールズバンド”魔女っ子の少女団”を掛け持ちするが上手くいかず、叶わぬ響紀への恋や、同級生との距離感など、様々な問題で苦しむことになった。荻原早季が波音高校の屋上から飛び降りる瞬間を目撃して以降、”神谷の声”が頭から離れなくなり、Chapter5の終盤に命を落としてしまう。20Years Diaryという日記帳に日々の出来事を記録していたが、亡くなる直前に日記を明日香に譲っている。
一条 雪音 19歳女子
鳴海たちと同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部に所属していた。才色兼備で、在学中は優等生のふりをしていたが、その正体は波音町周辺を牛耳っている組織”一条会”の会長。本当の性格は自信過剰で、文芸部での活動中に鳴海や嶺二のことをよく振り回していた。完璧なものと奇跡の力に対する執着心が人一倍強い。また、鳴海たちに波音物語を勧めた張本人でもある。
伊桜 京也 32歳男子
緋空事務所で働いている生真面目な鳴海の先輩。中学生の娘がいるため、一児の父でもある。仕事に対して一切の文句を言わず、常にノルマをこなしながら働いている。緋空浜周囲にあるお店の経営者や同僚からの信頼も厚い。口下手なところもあるが、鳴海の面倒をしっかり見ており、彼の”メンター”となっている。
荻原 早季 15歳(?)女子
どこからやって来たのか、何を目的をしているのか、いつからこの世界にいたのか、何もかもが謎に包まれた存在。現在は波音高校の新一年生のふりをして、神谷が受け持つ一年六組の生徒の中に紛れ込んでいる。Chapter5で波音高校の屋上から自ら命を捨てるも、その後どうなったのかは不明。
瑠璃
鳴海よりも少し歳上で、極めて中性的な容姿をしている。鳴海のことを強く慕っている素振りをするが、鳴海には瑠璃が何者なのかよく分かっていない。伊桜同様に鳴海の”メンター”として重要な役割を果たす。
来栖 真 59歳男子
緋空事務所の社長。
神谷 志郎 44歳男子
Chapter5の主人公にして、汐莉と同様にChapter5の終盤で命を落としてしまう数学教師。普段は波音高校の一年六組の担任をしながら、授業を行っていた。昨年度までは鳴海たちの担任でもあり、文芸部の顧問も務めていたが、生徒たちからの評判は決して著しくなかった。幼い頃から鬱屈とした日々を過ごして来たからか、発言が支離滅裂だったり、感情の変化が激しかったりする部分がある。Chapter5で早季と出会い、地球や子供たちの未来について真剣に考えるようになった。
貴志 希海 女子
貴志の名字を持つ謎の人物。
三枝 琶子 女子
“The Three Branches”というバンドを三枝碧斗と組みながら、世界中を旅している。ギター、ベース、ピアノ、ボーカルなど、どこかの響紀のようにバンド内では様々なパートをそつなくこなしている。
三枝 碧斗 男子
“The Three Branches”というバンドを琶子と組みながら、世界中を旅している、が、バンドからベースとドラムメンバーが連続で14人も脱退しており、なかなか目立った活動が出来てない。どこかの響紀のようにやけに聞き分けが悪いところがある。
有馬 千早 女子
ゲームセンターギャラクシーフィールドで働いている、千春によく似た店員。
太田 美羽 30代後半女子
緋空事務所で働いている女性社員。
目黒 哲夫 30代後半男子
緋空事務所で働いている男性社員。
一条 佐助 男子
雪音と智秋の父親にして、”一条会”のかつての会長。物腰は柔らかいが、多くのヤクザを手玉にしていた。
一条 智秋 25歳女子
雪音の姉にして風夏の親友。一条佐助の死後、若き”一条会”の会長として活動をしていたが、体調を崩し、入院生活を強いられることとなる。智秋が病に伏してから、会長の座は妹の雪音に移行した。
神谷 絵美 30歳女子
神谷の妻、現在妊娠中。
神谷 七海 女子
神谷志郎と神谷絵美の娘。
天城 明日香 19歳女子
鳴海、菜摘、嶺二、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。お節介かつ真面目な性格の持ち主で、よく鳴海や嶺二のことを叱っていた存在でもある。波音高校在学時に響紀からの猛烈なアプローチを受け、付き合うこととなった。現在も、保育士になる資格を取るために専門学校に通いながら、響紀と交際している。Chapter5の終盤にて汐莉から20Years Diaryを譲り受けたが、最終的にその日記は滅びかけた世界のナツとスズの手に渡っている。
白石 嶺二 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。鳴海の悪友で、彼と共に数多の悪事を働かせてきたが、実は仲間想いな奴でもある。軽音部との合同朗読劇の成功を目指すために裏で奔走したり、雪音のわがままに付き合わされたりで、意外にも苦労は多い。その要因として千春への恋心があり、消えてしまった千春との再会を目的に、鳴海たちを様々なことに巻き込んでいた。現在は千春への想いを心の中にしまい、上京してゲーム関係の専門学校に通っている。
三枝 響紀 16歳女子
波音高校に通う二年生で、軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”のリーダー。愛する明日香関係のことを含めても、何かとエキセントリックな言動が目立っているが、音楽的センスや学力など、高い才能を秘めており、昨年度に行われた文芸部との合同朗読劇でも、あらゆる分野で多大な(?)を貢献している。
永山 詩穂 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はベース。メンタルが不安定なところがあり、Chapter5では色恋沙汰の問題もあって汐莉と喧嘩をしてしまう。
奥野 真彩 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀、詩穂と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はドラム。どちらかと言うと我が強い集まりの魔女っ子少女団の中では、比較的協調性のある方。だが食に関しては我が強くなる。
双葉 篤志 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音と元同級生で、波音高校在学中は天文学部に所属していた。雪音とは幼馴染であり、その縁で”一条会”のメンバーにもなっている。
井沢 由香
波音高校の新一年生で神谷の教え子。Chapter5では神谷に反抗し、彼のことを追い詰めていた。
伊桜 真緒 37歳女子
伊桜京也の妻。旦那とは違い、口下手ではなく愛想良い。
伊桜 陽芽乃 13歳女子
礼儀正しい伊桜京也の娘。海亜中学校という東京の学校に通っている。
水木 由美 52歳女子
鳴海の伯母で、由夏理の姉。幼い頃の鳴海と風夏の面倒をよく見ていた。
水木 優我 男子
鳴海の伯父で、由夏理の兄。若くして亡くなっているため、鳴海は面識がない。
鳴海とぶつかった観光客の男 男子
・・・?
少年S 17歳男子
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サン 女子
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ミツナ 19歳女子
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X 25歳女子
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Y 25歳男子
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ドクターS 19歳女子
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シュタイン 23歳男子
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伊桜の「滅ばずの少年の物語」に出て来る人物
リーヴェ 17歳?女子
奇跡の力を宿した少女。よくいちご味のアイスキャンディーを食べている。
メーア 19歳?男子
リーヴェの世界で暮らす名も無き少年。全身が真っ黒く、顔も見えなかったが、リーヴェとの交流によって本当の姿が現れるようになり、メーアという名前を手にした。
バウム 15歳?男子
お願いの交換こをしながら旅をしていたが、リーヴェと出会う。
盲目の少女 15歳?女子
バウムが旅の途中で出会う少女。両目が失明している。
トラオリア 12歳?少女
伊桜の話に登場する二卵性の双子の妹。
エルガラ 12歳?男子
伊桜の話に登場する二卵性の双子の兄。
滅びかけた世界
老人 男子
貴志鳴海の成れの果て。元兵士で、滅びかけた世界の緋空浜の掃除をしながら生きている。
ナツ 女子
母親が自殺してしまい、滅びかけた世界を1人で彷徨っていたところ、スズと出会い共に旅をするようになった。波音高校に訪れて以降は、掃除だけを繰り返し続けている老人のことを非難している。
スズ 女子
ナツの相棒。マイペースで、ナツとは違い学問や過去の歴史にそれほど興味がない。常に腹ペコなため、食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
柊木 千春 15、6歳女子
元々はゲームセンターギャラクシーフィールドにあったオリジナルのゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”に登場するヒロインだったが、奇跡によって現実にやって来る。Chapter2までは波音高校の一年生のふりをして、文芸部の活動に参加していた。鳴海たちには学園祭の終了時に姿を消したと思われている。Chapter6の終盤で滅びかけた世界に行き、ナツ、スズ、老人と出会っている。
Chapter7♯1 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
◯1690早乙女家リビング(昼)
波音高校を卒業してから数日後
外は快晴
一人リビングにいる菜摘
菜摘は1本のVHSテープと2枚の写真を持っている
菜摘が持っているVHSテープの背ラベルには”キツネ様の奇跡(未完)”と書かれている
菜摘が持っている2枚の写真は、入学式を迎えた波音高校の前で、鳴海の母、由夏理が制服姿で立って写っている写真と、公園らしき場所で5、6歳ごろの鳴海と由夏理が手を繋ぎながら写っている写真
菜摘が持っている2枚の写真は滅びかけた世界の老人が持っている写真と完全に同じ物
菜摘が持っている2枚の写真はChapter6◯605で鳴海の家から菜摘が盗んだ物
菜摘はクリスマスに鳴海から貰った青いクリスタルがついているネックレスと、同じくクリスマスに汐莉から貰った小さな青いクリスタルがついているブレスレットをそれぞれ首と手首につけている
菜摘は2枚の写真と、”キツネ様の奇跡(未完)”というタイトルのVHSテープを見ている
2枚の写真と、”キツネ様の奇跡(未完)”というタイトルのVHSテープを見ながらキャンディーズの”やさしい悪魔”を鼻歌で歌っている菜摘
時間経過
ソファに座ってテレビを見ている菜摘
菜摘は変わらず2枚の写真を手に持っている
テレビでは”キツネ様の奇跡”が再生されている
”キツネ様の奇跡”は画質が粗い
”キツネ様の奇跡”には18歳だった頃の鳴海の母、由夏理と、同じく18歳だった頃の鳴海の父、紘が出演している
紘は狐のお面を被っていて、顔が見えなくなっている
”キツネ様の奇跡”の由夏理と狐のお面を被った紘は緋空浜の浜辺にいる
“キツネ様の奇跡”の緋空浜はゴミがなく綺麗
話をしている”キツネ様の奇跡”の由夏理と狐のお面を被った紘
由夏理「君がキツネ様なの?」
紘「(狐のお面を被ったまま)そうだよ」
菜摘「(“キツネ様の奇跡を見ながら”)行ってらっしゃい、鳴海くん」
菜摘が見ていた”キツネ様の奇跡”の画面下に白い文字で、”これは名も無き少年が実際に体験した奇跡と夢の物語である。出来事の信憑性を高めるため、脚色せずに少年の記憶を物語に落とし込んだ。なお一部詳細が不明な点、説明のつかない現象、未確認の関係者も可能な限り描いている。”と表示される
◯1691鳴海の夢/通学路(約30年前/朝)
快晴
約30年前の通学路を一人歩いている鳴海
道には緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
一軒家、アパート、車などのデザインが古くなっている
道には所々に咲いている桜の木がある
鳴海は周囲を見ながら歩いている
波音高校に向かって走っている男子生徒が二人いる
波音高校の男子生徒1「(走りながら)始業式から遅刻だ!!」
波音高校の男子生徒2 「(走りながら)急げ!!遅れたら田口に半殺しにされるぞ!!」
鳴海は波音高校の男子生徒1、波音高校の男子生徒2とすれ違う
周囲を見るのをやめる鳴海
鳴海は立ち止まる
振り返ってすれ違った波音高校の男子生徒1と波音高校の男子生徒2のことを見る鳴海
波音高校の男子生徒1と波音高校の男子生徒2は変わらず走って波音高校を目指している
◯1692回想/波音高校三年三組の教室(朝)
外は快晴
波音高校の三年三組の教室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
朝のHRの前の時間
神谷はまだ来ていない
どんどん教室に入ってくる生徒たち
教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音が教室の窓際で話をしている
鳴海「運良く遅刻しないで済んだな、その代わり宿題は犠牲になったが」
菜摘「その代わり・・・?」
◯1693回想戻り/鳴海の夢/通学路(約30年前/朝)
約30年前の通学路のど真ん中で立ち止まっている鳴海
道には緋空祭りに合わせてたくさんの提灯が吊るされている
道には所々に咲いている桜の木がある
一軒家、アパート、車などのデザインが古くなっている
鳴海「懐かしいな・・・俺もちょっと前までは波高の生徒で・・・」
曲がり角からママチャリに乗った波音高校の女子生徒が飛び出して来る
鳴海「嶺二たちと一緒に・・・」
ママチャリに乗った波音高校の女子生徒が飛び出して来たことに気付く鳴海
ママチャリに乗った波音高校の女子生徒「(大きな声で)ああああぶつかるうううううう!!!!」
鳴海「うわっ!!」
ママチャリに乗った波音高校の女子生徒は鳴海とぶつからないように思いっきりハンドルを切る
思いっきりハンドルを切った際にバランスを崩し転倒するママチャリに乗った波音高校の女子生徒は
転倒した波音高校の女子生徒「いたたたた・・・」
鳴海「だ、大丈夫か・・・?」
転倒した波音高校の女子生徒「大丈夫じゃない!!君が道の真ん中で突っ立ってるからこっちは大怪我したじゃん!!」
鳴海「わ、悪い・・・」
鳴海は転倒した波音高校の女子生徒のママチャリを立たせて、スタンドを下ろす
転倒した波音高校の女子生徒「見てよこれ!!」
鳴海「えっ?」
転倒した波音高校の女子生徒は自分の右脚の膝下を指差す
鳴海は転倒した波音高校の女子生徒の右脚の膝下を見る
転倒した波音高校の女子生徒の右脚の膝下は擦りむけて血が流れている
転倒した波音高校の女子生徒「(擦りむけて血が流れている自分の右脚の膝下を指差しながら)血!!痛い!!大怪我!!大事故!!私女の子!!悪いのは君!!」
鳴海「(転倒した波音高校の女子生徒の擦りむけて血が流れている右脚の膝下を見たまま)も、申し訳ない・・・って何で片言なんだ・・・」
転倒した波音高校の女子生徒は擦りむけて血が流れている自分の右脚の膝下を指差すのをやめる
転倒した波音高校の女子生徒「(擦りむけて血が流れている自分の右脚の膝下を指差すのをやめて)片言の方が気持ちが伝わるかと思ってさ」
鳴海「(転倒した波音高校の女子生徒の擦りむけて血が流れている右脚の膝下を見たまま)な、なるほど・・・」
鳴海は転倒した波音高校の女子生徒の擦りむけて血が流れている右脚の膝下を見るのをやめる
転倒した波音高校の女子生徒に手を差し伸ばす鳴海
鳴海「(転倒した波音高校の女子生徒に手を差し伸ばして)立てるか?」
転倒した波音高校の女子生徒は差し伸ばして来ている鳴海の手を取る
差し伸ばして来ている鳴海の手を取って立ち上がる転倒した波音高校の女子生徒
波音高校の女子生徒「(差し伸ばして来ている鳴海の手を取って立ち上がって)悪いね、少年」
波音高校の女子生徒は鳴海の手を離す
鳴海「少年って・・・俺はお前より歳が・・・」
鳴海は波音高校の女子生徒の顔を初めて見る
波音高校の女子生徒の顔を見て唖然とする鳴海
波音高校の女子生徒「どうしたの?少年」
波音高校の女子生徒は18歳だった頃の鳴海の母、由夏理
鳴海「(由夏理のことを見て唖然としながら)う、嘘だろ・・・」
由夏理「ん?何が?」
少しの沈黙が流れる
由夏理「もしかして、私たち前にも会ったことがあった?」
再び沈黙が流れる
由夏理「おーい、聞いてるのかね少年」
鳴海「(由夏理のことを見て唖然としながら)い、いや・・・その・・・」
由夏理「私の顔がそんなに珍しいの?」
鳴海「(由夏理のことを見たまま)ち、違うんだ」
由夏理「じゃあ何さ」
鳴海「(由夏理のことを見たまま)あ、あなたは・・・」
由夏理「うん」
少しの沈黙が流れる
鳴海は由夏理のことを見るのをやめる
鳴海「(由夏理のことを見るのをやめて)な、なんて言ったら良いのか・・・よ、要するにあれなんだが・・・ま、まあ・・・そういうことで・・・(少し間を開けて)そ、そんな感じなんだ」
由夏理「分かるか馬鹿!!」
鳴海「(小声でボソッと)お、俺のツッコミのオリジナルを見た気がするな・・・」
由夏理「えっ?」
鳴海「(慌てて)な、何でもない!!」
由夏理「君、学校サボってるんでしょ?」
鳴海「そ、そもそも俺は高校生じゃ・・・」
由夏理「大学生のふりをして騙そうったってそうはいかないんだからね?」
鳴海「だ、騙すつもりなんて・・・」
由夏理「(鳴海の話を遮って)良いから私の自転車を運ぶの手伝ってよ、少年」
鳴海「お、俺が・・・あ、あ、あなたの自転車を・・・そ、その・・・は、運ぶのか・・・」
由夏理「何ゴニョゴニョ言ってるの?」
再び沈黙が流れる
鳴海は少し悩んだ後、由夏理のママチャリのスタンドを外す
由夏理「じゃあ行こうか、少年」
由夏理は歩き出す
由夏理のママチャリを押しながら歩く鳴海
鳴海「(由夏理のママチャリを押しながら 声 モノローグ)1993年、4月5日、午前8時12分32秒。俺は夢の中で高校三年生の母と出会った」
ご無沙汰してます、ななです。
なんと丸2年ぶりの「向日葵が教えてくれる、波には背かないで」の投稿になります。
Chapter7はかつてないほどスローな物語ですが、Chapter6のように区切らずに完成させました。これから定期的に投稿していくので、最後まで楽しんで頂けると幸いです。