Chapter6卒業編♯52 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
登場人物
滅びかけた世界
ナツ 16歳女子
ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。
スズ 15歳女子
マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。
老人 男
ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・
中年期の明日香 女子
老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。
七海 女子
中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。
老人と同世代の男兵士1 男子
中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。
レキ 女子
老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。
老人と同世代の男兵士2 男子
中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。
滅んでいない世界
貴志 鳴海 18歳男子
波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。
早乙女 菜摘 18歳女子
波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。
白石 嶺二 18歳男子
波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。
天城 明日香 18歳女子
波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。
南 汐莉15歳女子
波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。
一条 雪音18歳女子
波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・
柊木 千春女子
Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。
三枝 響紀15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。
永山 詩穂15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。
奥野 真彩15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。
早乙女 すみれ45歳女子
菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。
早乙女 潤46歳男子
菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。
神谷 志郎43歳男子
波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。
荻原 早季15歳女子
Chapter5に登場した正体不明の少女。
貴志 風夏24歳女子
鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。
一条 智秋24歳女子
雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。
双葉 篤志18歳男子
波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。
有馬 勇64歳男子
波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。
細田 周平15歳男子
野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。
貴志 紘
鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。
貴志 由香里
鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。
神谷 絵美29歳女子
神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。
波音物語に関連する人物
白瀬 波音23歳女子
波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。
佐田 奈緒衛17歳男子
波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。
凛21歳女子
波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。
明智 光秀55歳男子
織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。
織田 信長48歳男子
天下を取るだろうと言われていた武将。
一世 年齢不明 男子
ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。
Chapter6卒業編♯52 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
◯1670滅びかけた世界:道路(夕方)
◯1208、◯1209、◯1211、◯1220、◯1221、◯1226、◯1233、◯1235、◯1239、◯1241、◯1243、◯1246、◯1251、◯1253、◯1255、◯1259、◯1261、◯1263、◯1265、◯1275、◯1277、◯1290、◯1294、◯1296、◯1297、◯1298、◯1299、◯1415、◯1419、◯1425、◯1427、◯1433、◯1435、◯1447、◯1451、◯1475、◯1477、◯1479、◯1483、◯1484、◯1485、◯1501、◯1503、◯1510、◯1512、◯1519、◯1527、◯1530、◯1532、◯1534、◯1542、◯1545、◯1547、◯1548、◯1550、◯1624、◯1626、◯1627、◯1636、◯1637、◯1638、そしてスズと千春が出会った◯1505、◯1507と同日
◯1636の続き
夕日が沈みかけている
千春は一人道路を歩いている
千春は刃の欠けた剣と、ギャラクシーフィールドのコインを持っている
建物の多くは損壊していて、草木が生い茂っている
道路はガタガタで、亀裂が入っている場所もある
千春は鳴海と菜摘を探している
千春「(声 モノローグ)ここは・・・明らかに異常なのです・・・(少し間を開けて)人を見かけないのは・・・人が死んでしまっているから・・・?先ほどの遺体は日本人ではなさそうでしたが・・・でも、この町は日本のどこかだと思います。使われている文字も日本語なので・・・」
少しすると波音高校が見えて来る
千春は波音高校の存在に気付く
千春「(波音高校を見て)あ、あれは波音高校!!」
千春は波音高校に向かって走り出す
◯1671貴志家リビング(日替わり/朝)
外は快晴
時刻は七時半過ぎ
リビングのテレビではニュースが流れている
リビングで立って話をしている鳴海と風夏
鳴海は制服姿
風夏はセレモニースーツを着ている
鳴海「こ、来なくて良いって言ったじゃないか・・・」
風夏「いやいや卒業式だよ?」
鳴海「卒業式だから来ないでくれって頼んでたつもりなんだが・・・」
風夏「弟の晴れ舞台くらい見に行きまーす」
鳴海「晴れ舞台って・・・」
風夏「晴れ舞台は晴れ舞台」
少しの沈黙が流れる
風夏は鳴海に抱きつく
鳴海「(風夏に抱きつかれたまま)お、おい!」
風夏「(鳴海に抱きついたまま)卒業おめでとうだこの野郎!!」
鳴海「(風夏に抱きつかれたまま)い、祝うならもっと他の言い方があるだろ・・・」
風夏は鳴海に抱きつくのをやめる
風夏「いやはや・・・鳴海が卒業出来てお姉ちゃんは本当に嬉しいよ・・・」
鳴海「あ、ああ」
風夏「こいつに集団生活は無理だって思い込んでた一昨年の私をぶん殴ってやりたいね」
鳴海「そ、そんなことを思っていたのか・・・」
風夏「だって鳴海は学校サボってたでしょー」
再び沈黙が流れる
風夏「お姉ちゃんがどんだけあんたのことを心配したか・・・てか心配し過ぎて10円ハゲが出来たこともあるんだよ」
鳴海「ま、マジか・・・(少し間を開けて)色々迷惑をかけたな・・・」
風夏「そりゃーまーねー。私がハゲ散らかしてる時に、鳴海は嶺二と学校をサボってハンバーガーを食べてたらしいじゃん?」
鳴海「す、すまん・・・」
少しの沈黙が流れる
風夏「まっ、そんな昔のことは良いんだけどさ。鳴海が高校を卒業してくれたんだから」
鳴海「姉貴」
風夏「何だい弟」
鳴海「ありがとう」
再び沈黙が流れる
風夏「菜摘ちゃんを待たせてるんだから、早く迎えに行っておいで」
鳴海「(頷き)おう」
◯1672早乙女家前(朝)
快晴
菜摘の家の前にいる鳴海
菜摘の家のインターホンを押す鳴海
少しすると菜摘、すみれが家から出て来る
すみれはセレモニースーツを着ている
菜摘「おはよう、鳴海くん」
鳴海「お、おはよう・・・ございます」
すみれ「おはようございます」
菜摘「じゃあ行くね、お母さん」
すみれ「二人とも気をつけて行ってらっしゃい」
菜摘「うん!!」
鳴海「は、はい!!」
鳴海と菜摘は波音高校を目指して歩き出す
すみれは鳴海と菜摘が見えなくなるまで家に入らない
鳴海「すみれさんと潤さんも後から来るんだろ?」
菜摘「もちろん!!」
鳴海「うちの姉貴と同じか・・・」
菜摘「風夏さんも来るんだ!!良かったね鳴海くん!!」
鳴海「良くはないけどな・・・」
菜摘「えっ、そうなの?」
鳴海「逆に菜摘は学校に家族がいて嫌だと思わないのか?」
菜摘「全然嫌じゃないけど・・・心配なことがあるんだ・・・」
鳴海「心配なこと・・・?」
菜摘「うん・・・お父さんの・・・」
鳴海「親父さんの・・・?」
菜摘「20年前に買ったズボンが太ったせいで履けなくなっちゃったんだ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「あー・・・菜摘・・・」
菜摘「ん?」
鳴海「親父さんのズボンが心配なのか・・・?」
菜摘「そうじゃなくて、お父さんが太っちゃったことが心配なんだ」
鳴海「卒業式と・・・全く関係ないな・・・」
菜摘「うん」
再び沈黙が流れる
鳴海「最初で最後の一緒に登校する日なのに・・・親父さんが太っちまったってのが話題で良いのか・・・」
菜摘「よ、良くないかも・・・」
鳴海「な、菜摘、話題を変えるぞ」
菜摘「そ、そうだね」
鳴海「きょ、今日は3月12日・・・つ、つまり財布の日だな・・・」
菜摘「財布が欲しいの?鳴海くん」
鳴海「い、いや・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「えっと、3月12日は・・・」
菜摘「(鳴海の話を遮って)鳴海くん」
鳴海「な、何だ?」
菜摘「私、鳴海くんと高校最後の一年間を過ごせて良かった」
鳴海「そ、卒業式が始まる前にそういう話をするのか・・・」
菜摘「卒業式が始まったら私泣いちゃうもん」
鳴海「お、俺も泣くかもしれないぞ菜摘・・・」
菜摘「(驚いて)えっ!?本当に!?」
鳴海「で、出来るだけ耐える予定ではあるが・・・」
菜摘「我慢しなくても良いのに・・・」
鳴海「俺と菜摘だけが泣いてる卒業式だったりしてな・・・」
菜摘「明日香ちゃんも絶対泣くと思うよ、鳴海くん」
鳴海「そうか?」
菜摘「うん、明日香ちゃんの泣き顔を見て、響紀ちゃんも泣くんじゃないかな」
鳴海「ああ・・・それはあり得そうだ・・・」
◯1673滅びかけた世界:波音高校前(夕方)
◯1208、◯1209、◯1211、◯1220、◯1221、◯1226、◯1233、◯1235、◯1239、◯1241、◯1243、◯1246、◯1251、◯1253、◯1255、◯1259、◯1261、◯1263、◯1265、◯1275、◯1277、◯1290、◯1294、◯1296、◯1297、◯1298、◯1299、◯1415、◯1419、◯1425、◯1427、◯1433、◯1435、◯1447、◯1451、◯1475、◯1477、◯1479、◯1483、◯1484、◯1485、◯1501、◯1503、◯1510、◯1512、◯1519、◯1527、◯1530、◯1532、◯1534、◯1542、◯1545、◯1547、◯1548、◯1550、◯1624、◯1626、◯1627、◯1636、◯1637、◯1638、◯1670、そしてスズと千春が出会った◯1505、◯1507と同日
◯1670の続き
夕日が沈みかけている
鳴海と菜摘を探して波音高校の前にやって来た千春
千春は刃の欠けた剣と、ギャラクシーフィールドのコインを持っている
波音高校の校舎は古く、ボロボロになっている
波音高校の前で立ち止まっている千春
千春はボロボロになった波音高校の校舎を見ている
波音高校の表札には、消えかかった字で波音高校と書かれている
千春「(ボロボロになった波音高校の校舎を見ながら)あ、あり得ません・・・こんなの・・・私の知ってる波音高校じゃないのです・・・」
◯1674波音高校前(朝)
波音高校の前で立ち止まっている鳴海と菜摘
波音高校の周囲には桜が咲いている
たくさんの生徒たちが波音高校の中に入って行く
鳴海と菜摘がいるところは、◯1673の滅びかけた世界の千春がいるところと完全に同じ
菜摘は波音高校の校舎を見ている
鳴海「菜摘、卒業したって校舎はいつでも見れるじゃないか」
菜摘「(波音高校の校舎を見ながら)そうだけど・・・在学中に見れるのは今日が最後だから・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海も波音高校の校舎を見る
鳴海「(波音高校の校舎を見ながら)ここから始まったんだもんな・・・」
菜摘「(波音高校の校舎を見ながら)うん・・・」
◯1675滅びかけた世界:波音高校三年三組の教室(夕方)
◯1208、◯1209、◯1211、◯1220、◯1221、◯1226、◯1233、◯1235、◯1239、◯1241、◯1243、◯1246、◯1251、◯1253、◯1255、◯1259、◯1261、◯1263、◯1265、◯1275、◯1277、◯1290、◯1294、◯1296、◯1297、◯1298、◯1299、◯1415、◯1419、◯1425、◯1427、◯1433、◯1435、◯1447、◯1451、◯1475、◯1477、◯1479、◯1483、◯1484、◯1485、◯1501、◯1503、◯1510、◯1512、◯1519、◯1527、◯1530、◯1532、◯1534、◯1542、◯1545、◯1547、◯1548、◯1550、◯1624、◯1626、◯1627、◯1636、◯1637、◯1638、◯1670、◯1673、そしてスズと千春が出会った◯1505、◯1507と同日
◯1673の続き
鳴海と菜摘を探して三年三組の教室にやって来た千春
千春は刃の欠けた剣と、ギャラクシーフィールドのコインを持っている
教室の中には机と椅子が30脚以上ある
ナツとスズが使っていた机、椅子が2脚だけ黒板の前に置いてあり、それ以外は後ろに下げられてある
教室の中には小さなゴミやほこりが溜まっている
千春は教室の窓際で校庭を見ている
千春「(校庭を見ながら)三年生を送る会はどうなってしまったんでしょうか・・・」
千春は校庭を見るのをやめて、ギャラクシーフィールドのコインを見る
千春は少しの間ギャラクシーフィールドのコインを見続ける
ギャラクシーフィールドのコインをポケットにしまう千春
◯1676波音高校三年三組の教室(朝)
教室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
神谷はまだ来ていない
どんどん教室に入ってくる生徒たち
教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている
教室の中は普段よりも騒がしい
教室の中には泣いている生徒も何人かいる
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音が教室の窓際で話をしている
鳴海たちがいるところは、◯1675の滅びかけた世界の千春がいるところと完全に同じ
泣いている明日香
菜摘「(心配そうに)明日香ちゃん・・・大丈夫・・・?」
明日香「(泣きながら)へ、平気に決まってるでしょ・・・」
鳴海「とても平気とは思えない返事だな・・・」
嶺二「明日香、専門に行っても頑張れよ」
明日香「(泣きながら)う、うるさい・・・」
鳴海「嶺二、お前更に泣かせようとしてるだろ」
嶺二「俺は細やかな気持ちで明日香の夢をおーえんしてんだよ」
雪音「細やかな気持ちって何?」
嶺二「あっさりした塩ラーメンみたいな気持ちだ」
少しの沈黙が流れる
明日香「(泣きながら)馬鹿・・・」
菜摘「卒業式なのに、明日香ちゃんを怒らせちゃダメだよ」
明日香「(泣きながら)べ、別に怒ってないし・・・」
雪音「最後まで鳴海と嶺二は明日香を困らせるんだね」
鳴海「ま、待て、俺は困らせてないぞ」
再び沈黙が流れる
鳴海「と、突然無言になるなよ。俺は何も悪くないのにお前たちが黙ったせいで俺が・・・」
神谷が教室に入って来る
神谷「全員廊下に出るんだー!!」
座っていた生徒たちが立ち上がる
生徒たちはぞろぞろと廊下に出る
嶺二「んじゃ卒業しにいこーぜ」
鳴海「コンビニに行く感覚だな・・・」
雪音「でもコンビニより体育館の方が近くない?」
菜摘「うん、そうだね」
鳴海「うん、そうだね、じゃないだろ!!ツッコミはないのか!!」
明日香はポケットからハンカチを取り出し、涙を拭う
明日香「(ハンカチで涙を拭いながら)ツッコミは鳴海の仕事でしょ・・・」
鳴海「明日香もツッコミを入れる側の人間だろ・・・」
ハンカチで涙を拭った後、ハンカチをポケットにしまう明日香
神谷「鳴海!!嶺二!!明日香!!菜摘!!雪音!!君たちも早く廊下に出なさい!!」
嶺二「だりーけど廊下に馳せ参じるか・・・あーだりーだりー・・・」
鳴海「コンビニに行く感覚で卒業する割にはめちゃくちゃめんどくさがるんだな・・・」
◯1677波音高校三年生廊下(朝)
三年生廊下にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩、神谷、双葉、細田
汐莉、響紀、詩穂、真彩、細田を含む一年生たちは花のブローチを持っている
汐莉たちは鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音、双葉を含む三年生たちに花のブローチを渡したり、つけたりしている
詩穂が雪音に花のブローチを差し出す
詩穂「(花のブローチを雪音に差し出したまま)これ・・・」
雪音「(花のブローチを詩穂から受け取り)わざわざありがと」
雪音は襟元に花のブローチをつける
響紀「(大きな声で)明日香ちゃんの初めては私が!!!!」
響紀は素早く明日香の襟元に花のブローチをつける
明日香「あ、ありがと・・・響紀・・・」
響紀「明日香ちゃん可愛い」
明日香「そ、そういうことは言わなくて良いから・・・」
響紀「でも可愛くて可愛くて可愛くて明日香ちゃんは・・・」
明日香と響紀は話を続ける
汐莉が菜摘に声をかける
汐莉「菜摘先輩、卒業おめでとうございます」
菜摘「ありがとう!!汐莉ちゃん!!」
汐莉「(花のブローチを菜摘に見せて)先輩につけて良いですか?」
菜摘「うん!!お願いするね!!」
汐莉は菜摘の襟元に花のブローチをつける
汐莉「完璧です、菜摘先輩」
菜摘「ありがとう」
汐莉は鳴海に花のブローチを差し出す
汐莉「(花のブローチを鳴海に差し出たまま)鳴海先輩もどうぞ」
鳴海「(花のブローチを汐莉から受け取り)おう」
鳴海は襟元に花のブローチをつける
汐莉「程々に似合ってますよ、鳴海先輩」
鳴海「程々なんだな・・・」
汐莉「はい」
嶺二「誰かー・・・俺にもブローチをー・・・」
鳴海「後輩に慕われてない可哀想な奴がいるぞ・・・」
菜摘「汐莉ちゃん、嶺二くんにもブローチを渡してあげたら・・・?」
汐莉「すみません、私のは在庫が切れました」
少しの沈黙が流れる
嶺二「もしかして・・・俺・・・卒業出来ないんじゃね・・・?」
鳴海「留年か、もう一年間気楽に頑張るんだな、嶺二」
嶺二「(大きな声で)ブローチがないだけで何で卒業出来ねーんだよ!!!!」
鳴海「お前が卒業できないって言ったんだろ・・・」
真彩「れーじくん、ブローチまだ貰ってないんすか?」
鳴海「そうだ、嶺二は可哀想な奴だからまだブローチを貰ってない」
嶺二「(大きな声で)可哀想な奴扱いすんじゃねえ!!!!」
真彩が嶺二に花のブローチを差し出す
真彩「(花のブローチを嶺二に差し出したまま)ご卒業、おめでとうっす」
嶺二「(花のブローチを真彩から受け取り)サンキューまあやん!!」
菜摘「良かったね嶺二くん」
嶺二「おうよ!!
嶺二は襟元に花のブローチをつける
鳴海「嶺二は困った時に奥野から色々貰い過ぎだな」
嶺二「そーか?」
鳴海「購買のメロンパンとバレンタインのチョコを貰ってただろ」
再び沈黙が流れる
嶺二「ま、まあやん、お返しは東京からゆーそーするから後で住所を教えてくれ」
真彩「はい!!自分!!たくさんのお菓子を待ってますんで!!」
嶺二「た、たくさん・・・」
真彩「たくさんっす!!」
◯1678波音高校体育館/卒業式会場(午前中)
体育館には鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩、神谷、双葉、細田、すみれ、潤、風夏、その他大勢たくさんの人がいる
体育館には卒業式の飾り付けがされている
体育館にはパイプ椅子が並べられてあり、生徒たち、教師たち、保護者たちがパイプ椅子に座っている
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音、双葉を含む三年生たちは花のブローチを襟につけている
風夏、すみれ、そして生徒たちの保護者はセレモニースーツを着ている
潤はスーツを着ている
神谷を含む教師たちは体育館の壁際でパイプ椅子に座っている
教師たちの何人かはマイクを持っている
ステージの上には横断幕が張ってあり、横断幕には”波音高校 卒業式”と書かれている
ステージの上には教卓とマイクがある
校長の上野がステージで挨拶をしている
菜摘と明日香が泣いている
上野「えー、本年も見事な桜が咲き、卒業生の皆様のお顔のような・・・」
あくびをする嶺二
時間経過
上野の挨拶は終わっている
菜摘と明日香は変わらず泣いている
教師「続きまして、在校生代表による送辞 在校生代表 三枝響紀」
響紀「(立ち上がり大きな声で)はい!!!!」
顔を見合わせる鳴海と嶺二
嶺二「(鳴海と顔を見合わせたまま)響紀ちゃんでだいじょーぶかよ・・・」
鳴海「(嶺二と顔を見合わせたまま)そもそも一年生が在校生の代表をして良いのか・・・」
ステージの上に登る響紀
響紀は咳払いをする
ステージの上の響紀のことを見る鳴海と嶺二
響紀「三年生の皆さん、卒業おめでとうございます。というのは置いといて、まずはハーモニカで一曲聴いてください」
鳴海「(驚いて大きな声で)はっ!?!?」
体育館中にいる人全員が一斉に鳴海のことを見る
響紀「鳴海くん、何か問題でもありますか」
鳴海「い、いや・・・ないです・・・」
響紀はポケットからハーモニカを取り出す
響紀がポケットから取り出したハーモニカは、鳴海がクリスマスにプレゼントした物
ハーモニカを吹き始める響紀
響紀がハーモニカで吹いてる曲はサイモン&ガーファンクルの”スカボロー・フェア”
菜摘「(泣きながら)ううっ・・・響紀ちゃん・・・」
鳴海「何でハーモニカを吹く後輩を見て感動してるんだよ・・・」
明日香「(泣きながら)な、鳴海は黙ってて・・・」
深くため息を吐く鳴海
鳴海たちを含む体育館にいる人たち全員が響紀のハーモニカを聴いている
少しすると響紀は”スカボロー・フェア”を吹き終える
鳴海たちを含む体育館にいる人たち全員が拍手をする
響紀「どうもどうも」
少しすると拍手が鳴り止む
響紀はポケットにハーモニカをしまう
響紀「突然ですが、私は走るのが好きです」
嶺二「マジで突然じゃねーか・・・」
響紀「小学生の時は地元の陸上クラブに所属していて、中学校でも部活は陸上をしていました。クラブでも、部活でも、私はただ走っていました。(少し間を開けて)私はよく、僅かながらに変わっているね、と人から言われます」
鳴海「僅かではないだろ・・・」
響紀「実際のところ、私は僅かながらに変わっているんだと思います。僅かながらに変わっていることが原因なのか分かりませんが、中学生の頃も、小学生の頃も、幼稚園生の頃も、私には友達がいませんでした。私の記憶では、最初に出来た友達はイマジナリーフレンドのばきゃんだくんだったと思います。ばきゃんだくんは、父が持っていた古いレコードの形をした超生命体で、私の言うことを何でも聞いてくれました。レコードなのに、私の話を聞いてくれました。一般的にレコードは、音楽を聴くためにあるものなのですが、ばきゃんだくんは・・・(少し間を開けて)とにかく友達がいなかったわけです」
鳴海「ばきゃんだくんはどうなったんだよ・・・」
菜摘「(泣きながら)ううっ・・・ばきゃんだくん・・・」
鳴海「今の話のどこに涙を流す要素があったんだ・・・」
響紀「私はある時、現実の友達がいないことに悲しさを覚えました。何故なら私は一人ぼっちだったからです。スポーツが出来ても、勉強が出来ても、走ることが好きな女に友達は出来ませんでした。そして私は、中学校から逃げるように敢えて遠い波音高校に進学しました。波音高校に受験をした理由は、知らない人しかいない環境の方が、友達も出来やすいんじゃないかと考えたからです。結果は大成功でした。私は軽音部に所属して、三人もの友達をゲットしてしまいました。友達がいる高校生活はとても楽しくて、充実しています」
◯1679滅びかけた世界:波音高校体育館(夕方)
◯1208、◯1209、◯1211、◯1220、◯1221、◯1226、◯1233、◯1235、◯1239、◯1241、◯1243、◯1246、◯1251、◯1253、◯1255、◯1259、◯1261、◯1263、◯1265、◯1275、◯1277、◯1290、◯1294、◯1296、◯1297、◯1298、◯1299、◯1415、◯1419、◯1425、◯1427、◯1433、◯1435、◯1447、◯1451、◯1475、◯1477、◯1479、◯1483、◯1484、◯1485、◯1501、◯1503、◯1510、◯1512、◯1519、◯1527、◯1530、◯1532、◯1534、◯1542、◯1545、◯1547、◯1548、◯1550、◯1624、◯1626、◯1627、◯1636、◯1637、◯1638、◯1670、◯1673、◯1675、そしてスズと千春が出会った◯1505、◯1507と同日
◯1675の続き
鳴海と菜摘を探して体育館にやって来た千春
千春は刃の欠けた剣と、ギャラクシーフィールドのコインを持っている
損壊した屋根から 夕日の光が差し込んで来ている
体育館の扉は壊れ、閉まらなくなっている
体育館はステージを含め、ほとんどの場所に灰でいっぱいになったビニール袋が置いてある
体育館は隅の一箇所だけ、灰の入ったビニール袋が置いてない場所があり、そこには体育の授業で使うようなマットが敷かれてある
マットの上には災害用の毛布が何枚か置いてあり、その脇には、数冊の本、小さな電化製品、吸い切ったタバコが積まれている灰皿、着替え、酒のボトル、空になったタバコの箱、薬の入った小さな小瓶、何個も繋がったドッグタグ、数枚の古い写真など、老人の所有物と思わしき様々な物がまとめられてある
数冊の本の中には、かつて老人が汐莉から貰った”年下と上手に会話を行う本”も置いてある
老人の所有物がまとめられてある場所以外は、灰の入ったビニール袋が積まれてある
”年下と上手に会話を行う本”の上には文芸部の部室で自撮りした写真と老眼鏡が置いてある
自撮りした写真には鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉が写っている
写真の嶺二と汐莉の間には不自然なスペースがある
写真は傷と汚れが付いており、色も劣化している
文芸部の部室で自撮りした写真は、Chapter6◯485の明日香が見ていた写真と同じ物
千春は入り口付近に立って呆然としている
響紀「(声)学園祭が終わってから一、二週間後の昼休みに、私が友達と歩いていると、とんでもない変人と遭遇しました。僅かながらに変わっている私よりも変人です。その変な人は今日、卒業する三年生で、名前は白石嶺二くんと言います。私が初めて嶺二くんと出会った時、嶺二くんは私を柊木千春という女生徒と見間違えて泣き出しました。正直私は、こいつやべえと思いました」
千春は体育館から出て行く
◯1680波音高校体育館/卒業式会場(午前中)
体育館には鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩、神谷、双葉、細田、すみれ、潤、風夏、その他大勢たくさんの人がいる
体育館には卒業式の飾り付けがされている
体育館にはパイプ椅子が並べられてあり、全員がパイプ椅子に座っている
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音、双葉を含む三年生たちは花のブローチを襟につけている
風夏、すみれ、そして生徒たちの保護者はセレモニースーツを着ている
潤はスーツを着ている
神谷を含む教師たちは体育館の壁際でパイプ椅子に座っている
教師たちの何人かはマイクを持っている
ステージの上には横断幕が張ってあり、横断幕には”波音高校 卒業式”と書かれている
ステージの上には教卓とマイクがある
ステージの上で響紀が在校生を代表して送辞を行っている
菜摘と明日香が泣いている
響紀「嶺二くんは頭が悪くて、鬱陶しくて、情に厚くて、格好良くて、面白くて、天才な人です。私が嶺二くんと出会わなければ、私の人生がここまで輝くことはなかったでしょう。私が明日香ちゃんと知り合えたのも、軽音部と文芸部で素晴らしい経験が出来たのも、全部嶺二くんのお陰です。本当にありがとうございます。誰が何と言おうが、あなたは最高の先輩です」
鳴海はチラッと嶺二のことを見る
嶺二は泣いている
響紀「嶺二くん、千春さんと再会出来たら私に紹介してくださいね。彼女のために作った曲が、私の家には眠ってますから。(少し間を開けて)雪音さん、私は雪音さんの気持ちが少しだけ分かる気がします。私は中学生の頃、人を見下し馬鹿にしていました。自分を守りたくて、自分を強く見せるために、人を蔑んでいました。決して誇れることではありませんが、どんな人間にもそういう一面があると私は思っています。だから雪音さん、雪音さんが大人になって、私と会う機会があったら、違う一面も見せてください。よろしくお願いします」
雪音は俯いて響紀の話を聞いている
響紀「鳴海くん、僅かながらに変わっている私が鳴海さんに迷惑をかけたかもしれません。文芸部の人と過ごす時間が楽しくて、つい調子に乗ってしまいました。ごめんなさい。それから、こいつ使えねえ副部長だなって密かに思っていたことも謝ります、本当にごめんなさい」
鳴海「(少し笑いながら)使えなかったのは事実だからな・・・」
響紀「菜摘さんが入院して、文芸部と軽音部の指示を鳴海くんが出すようになってから、私は合同朗読劇が成功するのか心配で胃が千切れそうになりました。鳴海くんは人の上に立つのが向いてないし、菜摘さんのことに気を取られて、朗読劇を投げ出すんじゃないかって・・・そう思っていましたが・・・全くもって違いましたね・・・馬鹿な後輩を許してください。(少し間を開けて)鳴海くんは人の上に立って、物事を成功させることが出来る凄い人材です」
鳴海は涙を流す
響紀「私も鳴海くんのような、凄いリーダーになれるように頑張ります」
鳴海「(泣きながら)響紀はもう十分凄い奴じゃないか・・・」
響紀「菜摘さん、いつもみんなに優しくて、平等に接する菜摘さんを見て、私には不思議に思うことがあります。どうして菜摘さんは色々なものを愛せるんですか?天使なんですか?聖母なんですか?」
菜摘「(泣きながら)ただの人間だよ・・・」
響紀「中学生の頃の私は、人を蔑んで自分を強く見せようとしていましたが、本当に強い人は菜摘さんのような人なんだって、あなたと出会ってから知りました。自分を愛せること、他人を愛せることが、強さになるんですか?私でも・・・僅かながらに変わっている私でも・・・菜摘さんみたいな強い女の子になれますか?菜摘さん、またいつか菜摘さんの生き方を教えてください」
菜摘「(泣きながら)響紀ちゃん・・・」
少しの沈黙が流れる
響紀は涙を流す
響紀「(泣きながら)明日香ちゃん・・・こんな私のことを毎日肯定してくれて、ありがとう。響紀は可愛いんだからとか、響紀の歌は格好良いとか、明日香ちゃんに褒められだけで、私は生きる力が凄く湧いてくる・・・私・・・父親以外から褒められたことってほとんどなくて・・・でも馬鹿だから・・・とりあえず自信があるフリをして、勢いで突っ走って、それで恥をかいて・・・どうするのが正解だったのかなって悩んでると、必ず明日香ちゃんが褒めてくれるよね。(少し間を開けて)いつも私の不安は明日香ちゃんが消してくれています」
明日香は号泣している
響紀「(泣きながら)私は世界で一番幸せな高校生です!!好きって言葉じゃ言い表せないほど大好きな明日香ちゃんが、私の話を聞いてくれて、私のことを褒めてくれて、私を暗闇から助け出してくれます!!ありがとう明日香ちゃん!!大好きだよ!!」
明日香「(号泣しながら)私も・・・響紀のことが大好き・・・」
響紀「(泣きながら)先輩たちと出会えたこと・・先輩たちと一緒に部活が出来たこと・・・そして先輩たちと友達になれたこと・・・全部・・・私にとっては奇跡です!!(少し間を開けて)本当は・・・卒業するなよスイートメロンパン野郎、もっと・・・もっと私たち後輩のことを構えよ、遊んでくれよって・・・言いたいけど・・・今日は卒業式なので、汚い言葉は使いません。改めて三年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます」
響紀は頭を下げる
鳴海たちを含む体育館にいる人たち全員が拍手をする
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、詩穂、真彩は号泣している
雪音は変わらず俯いている
◯1681波音高校前(昼過ぎ)
波音高校の前にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩、神谷、双葉、細田、その他大勢の生徒や教師たち
波音高校の周囲には桜が咲いている
鳴海、菜摘、明日香、雪音、双葉を含む三年生たちは花のブローチを襟につけている
生徒たちは波音高校の前で教師や友人たちと別れの挨拶をしている
鳴海は明日香と話をしている
明日香「頑張りなさいよ、鳴海」
鳴海「おう、明日香もな」
明日香「あんたに言われなくたって努力するのが私なんだけど?」
鳴海「そうか・・・確かにそうだったな」
明日香「じゃあ、菜摘を大切にね」
鳴海「挨拶して行かないのか?」
明日香「いちいち声をかけてたら別れが寂しくなるでしょ」
明日香はチラッと菜摘のことを見る
菜摘は詩穂と真彩と話をしている
明日香「だから嶺二にも鳴海の方から適当に言っといて」
鳴海「適当って何だよ・・・」
明日香「馬鹿を治せ、とか・・・?」
響紀が明日香の元に駆け寄って来る
響紀「(明日香の元に駆け寄り)明日香ちゃん!!さっきの送辞どうだった!?」
明日香「ハーモニカを除けば120点ね」
響紀「満点まであと380点か・・・」
明日香「(笑いながら)何で500点が満点なのよ」
響紀「1000点満点にしとく?」
明日香「響紀は100点中120点を叩き出した、それで良いでしょ?」
明日香は鳴海に手を振り、響紀と話をしながら歩いて行く
明日香と響紀は波音高校から離れて行く
嶺二は雪音と話をしている
汐莉が鳴海のところにやって来る
汐莉「明日香先輩はもう行っちゃったんですね」
鳴海「ああ、いちいち声をかけてたら別れが寂しくなるってさ」
汐莉「そうですか・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「南・・・あのさ・・・俺・・・」
汐莉「(鳴海の話を遮って)寂しいです」
鳴海「えっ・・・?」
汐莉「先輩たちと別れるのは、はっきり言って寂しいです」
鳴海「お、俺だって寂しいからな」
汐莉「鳴海先輩」
鳴海「お、おう」
汐莉「先輩たちと別れるのは寂しいですけど、せいせいもします」
再び沈黙が流れる
汐莉「私、先輩たちがいない中で新しい高校生活をエンジョイ出来るように頑張りますね」
鳴海「新しい高校生活、か・・・そうだな・・・南たちは卒業まで後二年もあるもんな・・・俺や菜摘たちが出来なかったくらいエンジョイしてくれよ」
汐莉「(頷き)はい!!」
汐莉は鳴海から離れ菜摘の元へ行く
菜摘は詩穂と真彩と話を終えている
嶺二は変わらず雪音と話をしている
雪音「絶対に後悔させてやるから」
嶺二「雪音ちゃんこそ、このまま進んで後悔してもしらねーぞ」
雪音「私が後悔すると思ってるんだ?」
嶺二「道を間違えれば後悔するだろ」
少しの沈黙が流れる
嶺二「最後に握手でもするか・・・」
雪音「私はもう二度とあなたの手を握らないって決めてるの」
嶺二「そーかよ・・・じゃーな・・・」
嶺二は雪音から離れ鳴海の元へ行く
鳴海「またフラれたのか、超モテない系」
嶺二「誰だよちょーモテない系って」
鳴海「嶺二しかいないだろ」
嶺二「俺はちょーモテない系でもなければフラれてもねえ」
鳴海「そうなのか・・・東京で超モテる系になれると良いな」
嶺二「モテるのなんからくしょーだろ、東京には世界各国の美女が集まってるんだぜ?」
鳴海「世界各国の美女が嶺二に好意を向けるのか?」
嶺二「当たりめーよ」
鳴海「自信を無くして出戻りしないようにな・・・」
嶺二「おう」
周囲を見る嶺二
嶺二「(周囲を見ながら)ところで明日香と響紀ちゃんはどこにいるんだ?」
鳴海「あいつらならもう行ったぞ」
嶺二「(周囲を見るのをやめて)ま、マジかよ・・・別れの挨拶も無しか・・・」
鳴海「馬鹿を治せっていうのが別れの挨拶だろうな」
嶺二「馬鹿を治せ?」
鳴海「明日香がそう伝えろって言ってたんだよ」
嶺二「あいつまた俺のことを馬鹿にしやがったな・・・」
鳴海「仕方がないだろ、俺たちは馬鹿なんだからさ」
嶺二「鳴海も自分が馬鹿だと認めんのか?」
鳴海「今日だけは認めよう」
嶺二「今日だけかよ」
鳴海「今日だけだ」
少しの沈黙が流れる
嶺二「鳴海とこんな会話が出来るのもこれが最後か・・・」
鳴海「そうだな」
嶺二は鳴海に手を差し出す
鳴海は嶺二の手を握る
鳴海と嶺二は握手をしている
嶺二「(鳴海と握手をしながら)三年三組三銃士も・・・俺と鳴海のかっけえ友情も・・・これにてお開きだ」
鳴海「(嶺二と握手をしながら)ついに・・・終わる時か・・・」
嶺二「(鳴海と握手をしながら)終わる方が美しい人間関係ってのもあるんだぞ、鳴海。それに縁がありゃまた再会するだろ」
鳴海「(嶺二と握手をしながら)ああ。何せ俺と嶺二と明日香は三年間も同じクラスだったからな・・・」
嶺二「(鳴海と握手をしながら)まさに腐れ縁ってやつだぜ」
鳴海と嶺二は握手をやめる
嶺二「それじゃーな、相棒」
鳴海「おう、嶺二も元気でやれよ」
嶺二は頷き鳴海から離れて行く
嶺二は波音高校から遠ざかって行く
雪音と双葉が嶺二のことを見ている
双葉「(嶺二のことを見ながら)雪音」
雪音「(嶺二のことを見ながら)どうでも良いから、あんな奴のことなんか」
少しの沈黙が流れる
双葉「(嶺二のことを見るのをやめて)また後で・・・」
雪音「(嶺二のことを見ながら)うん」
双葉は雪音から離れて行く
波音高校から遠ざかって行く双葉
菜摘は汐莉と話をしている
菜摘と汐莉は泣いている
汐莉「(泣きながら)私・・・役立たずな後輩で・・・」
菜摘「(泣きながら)汐莉ちゃんは役立たずな後輩なんかじゃない・・・賢くて、才能に溢れてる素敵な後輩が汐莉ちゃんだよ」
汐莉「(泣きながら)でも・・・私・・・」
菜摘「(泣きながら)大丈夫・・・大丈夫だよ汐莉ちゃん。汐莉ちゃんはたくさんの可能性を秘めてるもん。だから、自分の進みたい道に進むんだよ。私汐莉ちゃんのことを応援してるから、頑張ってね」
汐莉「(泣きながら)はい・・・文芸部は私が守ります・・・」
菜摘「(泣きながら)うん!!」
菜摘は汐莉のことを抱きしめる
汐莉も菜摘のことを抱きしめる
汐莉「(泣きながら菜摘と抱き合って)菜摘先輩・・・体に気をつけてください・・・」
菜摘「(泣きながら汐莉と抱き合って)汐莉ちゃんも・・・元気で・・・」
菜摘は汐莉は抱き合うのをやめる
菜摘「(泣きながら)バイバイ、汐莉ちゃん」
汐莉「(泣きながら)さようなら・・・菜摘先輩・・・」
菜摘は汐莉から離れ雪音の元へ行く
鳴海も菜摘に合わせて雪音の元へ行く
雪音「何?二人して」
菜摘「(泣きながら)挨拶に来たんだ・・・」
雪音「明日香たちもう帰ったけど?」
菜摘「(泣きながら)分かってる・・・雪音ちゃんに挨拶がしたくて・・・」
雪音「そう・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「げ、元気でな」
雪音「そっちもね」
菜摘「(泣きながら)雪音ちゃん・・・(少し間を開けて)奇跡は起きるよ・・・」
再び沈黙が流れる
風夏「おーい!!鳴海ー!!菜摘ちゃーん!!」
風夏の声が聞こえた方を見る鳴海と菜摘
波音高校の近くに一台の車が止まっている
車の近く立っている風夏
車の運転席には潤がいる
車の助手席にはすみれがいる
風夏とすみれはセレモニースーツを着ている
潤はスーツを着ている
すみれが助手席から鳴海と菜摘に手を振っている
運転席から潤が出て来る
潤「卒業祝いに美味い飯を食いに行くぞ、鳴海もおまけでついて来い」
鳴海「おまけかよ・・・」
涙を拭う菜摘
菜摘「(涙を拭って)じゃあね、雪音ちゃん!!」
雪音「うん」
菜摘は鳴海の手を掴み、潤の車が止まっている方に引っ張って行く
菜摘「(鳴海の手を引っ張って)行こう鳴海くん!!」
鳴海「(菜摘に引っ張られながら)お、おう!!」
鳴海と菜摘は走って潤の車が止まっている方に向かう
鳴海と菜摘のことを見ている汐莉と雪音
汐莉は変わらず泣いている
鳴海と菜摘は潤の車の後部座席に乗り込む
潤の車が進み始める
潤の車はあっという間に見えなくなる
神谷が汐莉のところにやって来る
神谷「今の車は・・・?」
汐莉は涙を拭う
汐莉「(涙を拭って)菜摘先輩のお父さんの車です」
神谷「そうか・・・鳴海と菜摘も卒業したのか・・・」
汐莉「はい・・・」
神谷「先生だけの考えもしれないが・・・問題児が卒業するのは・・・寂しさもあり・・・清々しさもありで・・・複雑な気持ちになるよ・・・」
汐莉「私もです、神谷先生・・・心が・・・置いていかれたみたいで・・・」
神谷「新年度を迎えれば心も切り替わる。人の脳みそは我慢することで成長するんだ、汐莉」
汐莉「そうなんですか・・・?」
神谷「ああ、よく覚えとくと良い。我慢は大人への第一歩だとね」
汐莉「はい・・・」
◯1682道路(昼過ぎ)
潤の車が道路を走っている
鳴海、菜摘、風夏が後部座席に乗っている
潤は運転をしている
すみれは助手席に座っている
鳴海と菜摘は花のブローチを襟につけている
風夏とすみれはセレモニースーツを着ている
潤はスーツを着ている
鳴海「俺たち・・・卒業・・・したんだな・・・」
菜摘「うん・・・」
風夏「ちょっとだけ大人になった気分でしょー?」
菜摘「風夏さん・・・むしろ私は凄く大人になった気がします・・・」
鳴海「ああ・・・」
潤「(運転をしながら)お前たちはまだクソガキだぞ」
すみれ「潤くん」
潤「(運転をしながら)お前たちはまだ子供だぞ」
鳴海「(小声でボソッと)言い直すなよ・・・」
潤「(運転をしながら)すみれ、音楽をかけてくれないか?」
すみれ「分かった、何が良い?」
潤「(運転をしながら)名曲なら何でも良いぞ」
すみれは車のサンバイザー収納ポケットを開く
サンバイザー収納ポケットの中にはたくさんのCDがある
すみれは一枚のCDを取り出し、ナビの下のプレーヤーにディスクを入れる
音楽の再生ボタンを押すすみれ
CDプレーヤーからルイ・アームストロングの”この素晴らしき世界”が流れ始める
風夏「良い曲だ〜・・・」
”この素晴らしき世界”を聴きながら涙を流す鳴海
菜摘は鳴海の手を握る
菜摘のことを見る鳴海
菜摘も涙を流している
菜摘「(鳴海の手を握って涙を流したまま)鳴海くん・・・」
鳴海も菜摘の手を握る
鳴海「(菜摘と手を握って涙を流したまま)菜摘・・・波高は卒業しちまったけど・・・それも悪くないよな」
菜摘「(鳴海と手を握って涙を流したまま)うん・・・悪くないよ、鳴海くん」
菜摘は鳴海と手を握って涙を流したまま鳴海に笑顔を見せる
鳴海も同じように菜摘と手を握って涙を流したまま菜摘に笑顔を見せる
鳴海たちが乗った車は”この素晴らしき世界”を流しながら進み続ける
車の窓からはたくさんの咲いた桜が見える
◯1683波音高校特別教室の四/文芸部室(夕方)
◯1208、◯1209、◯1211、◯1220、◯1221、◯1226、◯1233、◯1235、◯1239、◯1241、◯1243、◯1246、◯1251、◯1253、◯1255、◯1259、◯1261、◯1263、◯1265、◯1275、◯1277、◯1290、◯1294、◯1296、◯1297、◯1298、◯1299、◯1415、◯1419、◯1425、◯1427、◯1433、◯1435、◯1447、◯1451、◯1475、◯1477、◯1479、◯1483、◯1484、◯1485、◯1501、◯1503、◯1510、◯1512、◯1519、◯1527、◯1530、◯1532、◯1534、◯1542、◯1545、◯1547、◯1548、◯1550、◯1624、◯1626、◯1627、◯1636、◯1637、◯1638、◯1670、◯1673、◯1675、◯1679、そしてスズと千春が出会った◯1505、◯1507と同日
◯1637の続き
夕日が沈みかけている
文芸部の部室にいる老人
教室の中に半壊している旧式のパソコン六台と同じく半壊している旧式のプリンターが一台ある
椅子や机、教室全体に小さなゴミが溜まっている
教室の窓から夕日の光が差し込み、ほこりが浮かんで見えている
教室の窓際には白骨化した遺体が二体並んで壁にもたれている
老人の肩にはボルトアクションライフルがかけられている
教室の隅の方には老人が波音博物館から盗んだ日本刀、槍、薙刀を立て掛けられてある
教室の隅の方に立て掛けてある日本刀は、◯1248、◯1250、◯1252で千春が見ていた物であり、◯1393、◯1456、◯1459、◯1462、◯1465、◯1467、◯1469、◯1471で波音が使用していた日本刀と同じ物
教室には老人から貰ったロシア兵の双眼鏡、ショッピングモールから盗んだ服、本、化粧品、拾ったサングラス、手鏡、ビー玉、ベレー帽、大きなぬいぐるみなどが置いてある
老人は20Years Diaryを手に持って見ている
老人「(20Years Diaryを見ながら)俺にこの日記を読む権利はないだろう・・・?汐莉・・・明日香・・・」
◯1684回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(夕方)
春頃
夕日が沈みかけている
文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春
教室の隅にプリンター一台と部員募集の紙が置いてある
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、千春は部誌制作を行っている
椅子に座りパソコンと向かい合ってタイピングをしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、千春
汐莉は一人部誌制作を終え、椅子に座って20Years Diaryに日記をつけている
鳴海と嶺二はタイピングがほとんど進んでいない
タイピングをやめる鳴海
鳴海「もう少しで部誌に使えそうなアイデアが出て来そうなんだが・・・そのもう少しからどうやって書き進めたら良いのか分からないな・・・」
嶺二「(タイピングをやめて)全くだぜ・・・」
明日香「(タイピングをしながら)鳴海、嶺二、喋ってないで真面目に作業をしてよ」
鳴海「真面目にしてるじゃないか、明日香」
明日香「(タイピングをしながら)タイピングをやめてる時点で、真面目とは言えないと思うんだけど・・・」
嶺二「俺たちは真面目だけどよ、才能が現代に追いついてねえんだ」
汐莉「(20Years Diaryに日記をつけながら)才能があるんだったら早く書いてください」
嶺二「だから、才能はあるけど時代が俺らに追いついてねーんだって」
汐莉「(20Years Diaryに日記をつけながら)意味不明です」
鳴海「まああれだ」
嶺二「そーそー、あれだよな」
菜摘「(タイピングをやめて)あれって・・・?」
鳴海「あ、あれと言えばあれだろ」
菜摘「ごめん・・・私にはよく分からない・・・」
嶺二「ち、千春ちゃんなら分かるんじゃねーか?」
千春「(タイピングをやめて)あ、あの・・・私も・・・」
嶺二「あ、あれだぞ千春ちゃん!!もう分かるよな!?」
少しの沈黙が流れる
千春「ごめんなさい・・・」
明日香「(タイピングをしながら)千春、こんな奴に謝らなくても良いんだから」
嶺二「誰よだよこんな奴って」
汐莉「(20Years Diaryに日記をつけながら)意味不明な白石先輩のことでは?」
嶺二「しつれーな後輩だな」
鳴海「早乙女、南、千春、嶺二は元々ちょっとあれなんだ。分かるだろ、明日香」
明日香「(タイピングをしながら)そうね、こいつは一年の時からあれだった」
嶺二「お、おめーらの俺のことを馬鹿にしてんだろ!!」
鳴海「馬鹿にはしてない。そうだよな、千春」
千春「えっと・・・何て言ったら良いのか・・・」
菜摘「貴志くん、千春ちゃんが困ってるよ」
嶺二「そーだぞ!!千春ちゃんを困らせるな!!」
鳴海「わ、悪い」
千春「れ、嶺二さん・・・私・・・困ってはないです・・・」
鳴海「いや絶対困ってるだろ!!」
再び沈黙が流れる
千春「少し・・・困ってます・・・」
菜摘「貴志くん!!」
鳴海「わ、悪いって言ってるだろ!!」
汐莉「(20Years Diaryに日記をつけながら)謝って許されるなら警察は要りませんよ、先輩」
鳴海「お、脅さないでくれ」
汐莉「(20Years Diaryに日記をつけながら)事実ですから」
少しの沈黙が流れる
嶺二「気分転換でもしねーか」
明日香「(タイピングをやめて)例えば?」
嶺二「とりあえず高校生らしいことをやろーぜ」
汐莉「(20Years Diaryに日記をつけるのをやめて)高校生らしいことですか・・・」
嶺二「そーそー」
鳴海「なら写真を撮ってお菓子を食っとけば良いだろ」
菜摘「写真を撮ってお菓子を食べることが高校生らしいことなの・・・?」
鳴海「多分な」
汐莉「適当に言ってますよね、貴志先輩」
鳴海「そんなことはないぞ、俺は真面目だからな」
明日香「どうしてそんなに分かりやすい嘘をついちゃうの・・・」
鳴海「わ、悪気は無いんだ」
嶺二「鳴海が不真面目なのはどーでも良いけどよ、写真とお菓子はありだろ」
明日香「そうね」
嶺二「せっかくだからみんなで撮ろーぜ」
菜摘「でも神谷先生がいないよ」
嶺二「あんなおっさんは高校生の写真に要らねーだろ」
菜摘「そ、そっか・・・」
立ち上がる明日香
鳴海「どこに行くんだ?明日香」
明日香「えっ、写真撮ってコンビニでしょ」
鳴海「い、今からか?」
明日香「違うの?菜摘」
菜摘「うーん・・・(少し間を開けて)じゃあ休憩を兼ねて気分転換をしよっか」
嶺二「よっしゃ!!明日香!!スマホだ!!」
明日香「何で私のなのよ・・・」
嶺二「明日香、喋ってないで真面目に作業をしろ」
舌打ちをする明日香
菜摘「ま、まあまあ明日香ちゃん・・・」
明日香はポケットからスマホを取り出し、インカメラを開く
明日香「ほらみんな集まって」
鳴海、菜摘、汐莉、嶺二が立ち上がり、明日香の側に行く
千春「わ、私もでしょうか・・・?」
明日香「(呆れて)当たり前でしょ」
千春は立ち上がり、明日香の側に行く
ピースをする菜摘、汐莉、明日香
明日香は無言でシャッターを連写する
鳴海「おい・・・せめて何か言ってから撮れよ・・・」
明日香「もう30枚くらい撮ったのにまだ撮るの?鳴海」
鳴海「い、いや・・・」
菜摘「写真見せて、明日香ちゃん」
明日香は自撮りした写真を鳴海たちに見せる
明日香が自撮りした写真は、Chapter6◯485の明日香が見ていた写真と完全に同じ
明日香が自撮りした写真は、滅びかけた世界の老人が持っている写真とほとんど同じだが、唯一千春の姿が映っていることだけ違う
明日香が自撮りした写真は、千春の姿が映っていることを除けば、滅びかけた世界の老人が持っている文芸部の部室で自撮りした写真と完全に同じ
菜摘「(明日香が自撮りした写真を見ながら)綺麗に撮れてるね!!」
明日香「(自撮りした写真を鳴海たちに見せながら)そうでしょ」
菜摘「(明日香が自撮りした写真を見ながら)うん!!」
嶺二「(明日香が自撮りした写真を見ながら)でも若干俺と千春ちゃんの距離が離れてるな・・・」
千春「(明日香が自撮りした写真を見ながら)も、もう少し近かった方が良かったですか・・・?」
嶺二「(明日香が自撮りした写真を見ながら)とーぜんだろ」
少しの沈黙が流れる
千春「(明日香が自撮りした写真を見ながら)わ、私・・・写真ってよく知らなくて・・・」
嶺二「(明日香が自撮りした写真を見ながら)俺も詳しくはねーぞ」
再び沈黙が流れる
汐莉「(明日香が自撮りした写真を見るのをやめて)お菓子を買いに行きますか・・・」
菜摘「(明日香が自撮りした写真を見るのをやめて)そ、そうだね」
明日香はスマホをポケットにしまう
鳴海「お前たちは先に行っててくれ」
菜摘「え?貴志くんは来ないの?」
鳴海「後から行くよ。俺はもう少し部誌の展開について考えたいんだ」
明日香「あんたが写真とお菓子って提案したのに・・・」
鳴海「すまん」
少しの沈黙が流れる
嶺二「んじゃー鳴海を置いて俺らは行くぞー」
汐莉「はーい」
明日香「鳴海、早く来なさいよ」
鳴海「ああ」
鳴海は自分の席に戻る
明日香、嶺二、汐莉、千春が部室から出て行く
部室には鳴海と菜摘だけが残る
鳴海「早乙女、お前も明日香たちと一緒に行って良いんだぞ」
菜摘「ううん。私は貴志くんのことを待つよ」
鳴海「な、何で待つんだ?」
菜摘「だって仲間だもん」
鳴海「そ、そうか・・・」
菜摘「うん!!」
鳴海「な、なあ早乙女」
菜摘「何?」
鳴海「ぶ、部誌の内容のことで、お前に意見を聞いても良いか・・・?」
菜摘「もちろんだよ貴志くん!!」
鳴海「ま、まずは主人公なんだが・・・そいつは一人で世界を旅していて・・・」
鳴海は菜摘に部誌の内容を話し続ける
菜摘は自分の椅子を鳴海の席の隣に置く
椅子に座る菜摘
菜摘は鳴海の隣で鳴海の話を聞いている
◯1685回想戻り/波音高校特別教室の四/文芸部室(夕方)
◯1208、◯1209、◯1211、◯1220、◯1221、◯1226、◯1233、◯1235、◯1239、◯1241、◯1243、◯1246、◯1251、◯1253、◯1255、◯1259、◯1261、◯1263、◯1265、◯1275、◯1277、◯1290、◯1294、◯1296、◯1297、◯1298、◯1299、◯1415、◯1419、◯1425、◯1427、◯1433、◯1435、◯1447、◯1451、◯1475、◯1477、◯1479、◯1483、◯1484、◯1485、◯1501、◯1503、◯1510、◯1512、◯1519、◯1527、◯1530、◯1532、◯1534、◯1542、◯1545、◯1547、◯1548、◯1550、◯1624、◯1626、◯1627、◯1636、◯1637、◯1638、◯1670、◯1673、◯1675、◯1679、◯1683、そしてスズと千春が出会った◯1505、◯1507と同日
◯1683の続き
夕日が沈みかけている
文芸部の部室にいる老人
教室の中に半壊している旧式のパソコン六台と同じく半壊している旧式のプリンターが一台ある
椅子や机、教室全体に小さなゴミが溜まっている
教室の窓から夕日の光が差し込み、ほこりが浮かんで見えている
教室の窓際には白骨化した遺体が二体並んで壁にもたれている
老人の肩にはボルトアクションライフルがかけられている
教室の隅の方には老人が波音博物館から盗んだ日本刀、槍、薙刀を立て掛けられてある
教室の隅の方に立て掛けてある日本刀は、◯1248、◯1250、◯1252で千春が見ていた物であり、◯1393、◯1456、◯1459、◯1462、◯1465、◯1467、◯1469、◯1471で波音が使用していた日本刀と同じ物
教室には老人から貰ったロシア兵の双眼鏡、ショッピングモールから盗んだ服、本、化粧品、拾ったサングラス、手鏡、ビー玉、ベレー帽、大きなぬいぐるみなどが置いてある
老人は20Years Diaryを手に持って見ている
千春「あ、あの!!こ、こんにちは・・・」
老人は振り返る
教室の扉の方に千春が立っている
千春は刃の欠けた剣を持っている
老人は千春の姿を見て驚く
千春は教室の中に入る
老人「(千春のことを見て驚いたまま)スズが出会ったのは・・・お前だったのか・・・」
千春「えっと・・・わ、私のことが見えてるんですよね・・・?」
老人「(千春のことを見て驚いたまま)あ、ああ・・・もちろん見えているよ」
千春「よ、良かった・・・私、人を探してここに来たんですけど・・・この高校は・・・波音高校で・・・合ってますか・・・?」
老人「そうだ、ここは波音高校だった場所だ」
千春「だ、だった・・・ご、ごめんなさい、私混乱してるみたいです・・・私の知ってる波音高校は・・・こんなところじゃなくて・・・」
少しの沈黙が流れる
老人「千春・・・お前は一体いつから来た・・・?ナツとスズがお前のことを呼び寄せてないんだとしたら・・・どうやったんだ・・・?今までどこに消え失せていた・・・?」
千春「い、いつってそれだと私が過去や未来から・・・ま、待ってください!!あ、あなたは私のことを知ってるんですか!?」
老人「知っていて当然だろう・・・」
千春「あなたは・・・ゲームセンターギャラクシーフィールドのお客さんですか・・・?それとも・・・別のところで・・・?」
再び沈黙が流れる
千春は老人が20Years Diaryを持っているに気づく
千春「(20Years Diaryを見て)そ、その日記は・・・私の友人の物です・・・」
老人「ああ・・・俺もそいつとは友人だったよ・・・」
千春「あ、あなたは誰なんですか!?」
老人「俺は・・・(少し間を開けて)貴志鳴海だ・・・」
千春「な、鳴海さん・・・?」
千春は混乱している
千春「(混乱しながら)そ、そんなはずはないです!!あなたが鳴海さんだなんて!!」
老人「千春、お前はここに来る直前に何をしていた・・・?」
千春「(混乱しながら)ろ、朗読劇を鑑賞していて・・・それから地震が起きて・・・な、菜摘さんと鳴海さんを探しに・・・(少し間を開けて)そ、そうです、菜摘さんはどこにいるんですか?」
老人「菜摘が・・・お前を滅びかけた世界に届けたんだな・・・」
少しの沈黙が流れる
千春「(大きな声で)答えてください!!!!菜摘さんはどこにいるんですか!?!?」
老人「死んだよ・・・」
千春「え・・・?」
老人「菜摘も・・・嶺二も・・・明日香も・・・汐莉も・・・みんな死んでしまった」
千春「い、今・・・何て・・・」
老人「俺は・・・みんなを助けられなくて・・・」
再び沈黙が流れる
千春「こ、ここは・・・未来なんですか・・・」
老人「そうだ・・・千春は菜摘の力でこの滅びかけた世界にやって来たんだろう・・・」
少しの沈黙が流れる
ナツとスズが教室にやって来る
スズ「あっ!!(千春を指差して)いたよなっちゃん!!」
ナツは千春のことを見て驚く
ナツ「(千春のことを見て驚いたまま)ほ、本当だったんだ・・・」
老人は床にそっと20Years Diaryを置く
教室の扉の方へ向かって歩き出す老人
千春「ど、どこへ行くんです?」
老人「そろそろ夕飯の時間だ」
スズ「ゆーめし!!ゆーめし!!ゆーめし!!春巻きの妖精とゆーめし!!」
老人は教室から出て行く
老人について行くスズ
波音高校の廊下を歩いているスズと老人
廊下の窓から夕日の光が差し込み、ほこりが浮かんで見えている
廊下には生活用品のゴミ、遺骨、かつて授業で使われていた道具など様々な物が散乱している
老人「(声 モノローグ)腐れ縁がまた巡り会ったよ、嶺二・・・菜摘が友情を取り留めてくれたお陰だ・・・」
スズと老人の遠くの方では二羽のスズメが何かを咥えて飛んでいる
◯1686波音高校特別教室の四/文芸部室(夕方)
◯1208、◯1209、◯1211、◯1220、◯1221、◯1226、◯1233、◯1235、◯1239、◯1241、◯1243、◯1246、◯1251、◯1253、◯1255、◯1259、◯1261、◯1263、◯1265、◯1275、◯1277、◯1290、◯1294、◯1296、◯1297、◯1298、◯1299、◯1415、◯1419、◯1425、◯1427、◯1433、◯1435、◯1447、◯1451、◯1475、◯1477、◯1479、◯1483、◯1484、◯1485、◯1501、◯1503、◯1510、◯1512、◯1519、◯1527、◯1530、◯1532、◯1534、◯1542、◯1545、◯1547、◯1548、◯1550、◯1624、◯1626、◯1627、◯1636、◯1637、◯1638、◯1670、◯1673、◯1675、◯1679、◯1683、◯1685、そしてスズと千春が出会った◯1505、◯1507と同日
◯1685の続き
夕日が沈みかけている
文芸部の部室にいる千春
千春は刃の欠けた剣を持っている
教室の扉の方に立って千春のことを見ているナツ
教室の中に半壊している旧式のパソコン六台と同じく半壊している旧式のプリンターが一台ある
椅子や机、教室全体に小さなゴミが溜まっている
教室の窓から夕日の光が差し込み、ほこりが浮かんで見えている
教室の窓際には白骨化した遺体が二体並んで壁にもたれている
教室の隅の方には老人が波音博物館から盗んだ日本刀、槍、薙刀を立て掛けられてある
教室の隅の方に立て掛けてある日本刀は、◯1248、◯1250、◯1252で千春が見ていた物であり、◯1393、◯1456、◯1459、◯1462、◯1465、◯1467、◯1469、◯1471で波音が使用していた日本刀と同じ物
教室には老人から貰ったロシア兵の双眼鏡、20Years Diary、ショッピングモールから盗んだ服、本、化粧品、拾ったサングラス、手鏡、ビー玉、ベレー帽、大きなぬいぐるみなどが置いてある
教室の中に入るナツ
千春は俯く
千春「(俯いたまま)菜摘さん・・・どうしてこんなことをしたのです・・・」
ナツ「探してる人が・・・見つからなかったの・・・?」
千春「(俯いたまま)はい・・・」
ナツ「そうなんだ・・・」
少しの沈黙が流れる
ナツ「名前・・・聞いても良い・・・?」
千春「(俯いたまま)柊木・・・千春です・・・」
ナツ「じゃあ・・・ハルだね」
顔を上げる千春
千春「あなたの名前は・・・?」
ナツ「私はナツ」
千春「ハルと・・・ナツ・・・ですか・・・」
ナツ「うん」
千春「あなたは・・・」
再び沈黙が流れる
千春はナツのことを見ている
千春にはナツの姿が菜摘に見える
菜摘「(心配そうに)千春ちゃん・・・?大丈夫・・・?何かあったの・・・?」
千春は涙を流す
千春「(泣きながら)菜摘さん・・・私・・・本当は消えるはずだったんです・・・なのに私はまた菜摘さんに力を・・・」
千春は涙を拭う
千春には菜摘ではなく元のナツの姿が見えている
千春「ごめんなさい・・・」
ナツ「な、何が・・・?」
千春「人間とは・・・直接謝る生き物なのです・・・」
ナツ「そ、そうだね・・・(少し間を開けて心配そうに)大丈夫?」
千春「はい・・・」
二羽のスズメが教室の中に入って来る
二羽のスズメはそれぞれ金色に光り輝く手紙を咥えている
二羽のスズメはナツと千春の近くで金色に光り輝く手紙を落とす
二羽のスズメは旧式のパソコンの上に止まる
二羽のススメは鳴いている
ナツと千春の側には金色に光り輝く二通の手紙が落ちている
金色に光り輝く手紙の一通には封筒に”鳴海くんへ”と書かれており、もう一通の金色に光り輝く手紙の封筒には”千春ちゃんへ”と書かれている
金色に光り輝く二通の手紙はどちらもかつて菜摘が書いたもの
ナツはかつて菜摘が鳴海に宛てて書いた金色に光り輝く手紙を拾う
千春はかつて菜摘が千春に宛てて書いた金色に光り輝く手紙を拾う
ナツと千春はそれぞれ拾った金色に光り輝く手紙を見る
ナツ「(かつて菜摘が鳴海に宛てて書いた金色に光り輝く手紙を見ながら)ジジイのだ・・・」
二通の手紙の光は徐々に弱くなり、少しすると二通の手紙からは完全に光が消える
ナツは二羽のスズメが止まっていた旧式のパソコンの方を見るが、二羽のスズメはいなくなっている
千春「(かつて菜摘が千春に宛てて書いた手紙を見ながら)菜摘さん・・・」
少しの沈黙が流れる
千春は再び俯く
俯いた千春のことを見るナツ
◯1687◯1148の回想/滅びかけた世界:波音高校特別教室の四/文芸部室(夜)
教室の中に半壊している旧式のパソコン六台と同じく半壊している旧式のプリンターが一台ある
椅子や机、教室全体に小さなゴミが溜まっている
教室の壁際にいるナツ、スズ、老人
老人の肩にはボルトアクションライフルがかけられている
教室の窓際には白骨化した遺体が二体並んで壁にもたれている
ナツ、スズ、老人は二体の遺体がもたれている壁とは別の壁際にいる
ナツの近くには老人から貰ったロシア兵の双眼鏡、ショッピングモールから盗んだ服、本や化粧品などが置いてある
スズの近くには拾ったサングラス、手鏡、ビー玉、ショッピングモールから盗んだ服、ベレー帽、化粧品や大きなぬいぐるみなどが置いてある
20Years Diaryを持っているナツ
ナツ、スズ、老人は話をしている
ナツ「私たちがあんたみたいにならないためにはどうすれば良い?」
老人「後悔しない道を選ぶしかない。(少し間を開けて)一つだけ確かのは、他人に手を差し伸べる機会を見逃さないのが大事だということだろう。君たちの手には一生の後悔が残るか、或いはこの世界を共に生き抜く仲間との絆が残るか、差し伸べるかどうかで分かれる運命だからな」
◯1688回想戻り/波音高校特別教室の四/文芸部室(夕方)
◯1208、◯1209、◯1211、◯1220、◯1221、◯1226、◯1233、◯1235、◯1239、◯1241、◯1243、◯1246、◯1251、◯1253、◯1255、◯1259、◯1261、◯1263、◯1265、◯1275、◯1277、◯1290、◯1294、◯1296、◯1297、◯1298、◯1299、◯1415、◯1419、◯1425、◯1427、◯1433、◯1435、◯1447、◯1451、◯1475、◯1477、◯1479、◯1483、◯1484、◯1485、◯1501、◯1503、◯1510、◯1512、◯1519、◯1527、◯1530、◯1532、◯1534、◯1542、◯1545、◯1547、◯1548、◯1550、◯1624、◯1626、◯1627、◯1636、◯1637、◯1638、◯1670、◯1673、◯1675、◯1679、◯1683、◯1685、◯1686、そしてスズと千春が出会った◯1505、◯1507と同日
◯1686の続き
夕日が沈みかけている
文芸部の部室にいるナツと千春
ナツはかつて菜摘が鳴海に宛てて書いた手紙を持っている
千春は刃の欠けた剣と、かつて菜摘が千春に宛てて書いた手紙を持っている
教室の中に半壊している旧式のパソコン六台と同じく半壊している旧式のプリンターが一台ある
椅子や机、教室全体に小さなゴミが溜まっている
教室の窓から夕日の光が差し込み、ほこりが浮かんで見えている
教室の窓際には白骨化した遺体が二体並んで壁にもたれている
教室の隅の方には老人が波音博物館から盗んだ日本刀、槍、薙刀を立て掛けられてある
教室の隅の方に立て掛けてある日本刀は、◯1248、◯1250、◯1252で千春が見ていた物であり、◯1393、◯1456、◯1459、◯1462、◯1465、◯1467、◯1469、◯1471で波音が使用していた日本刀と同じ物
教室には老人から貰ったロシア兵の双眼鏡、20Years Diary、ショッピングモールから盗んだ服、本、化粧品、拾ったサングラス、手鏡、ビー玉、ベレー帽、大きなぬいぐるみなどが置いてある
千春は俯いている
俯いた千春のことを見ているナツ
ナツ「(俯いた千春のことを見ながら)あのさ・・・良かったら私たちと一緒に・・・ご飯を食べない・・・?」
千春は顔を上げる
ナツは千春に手を差し出す
ナツ「(千春に手を差し出したまま)歓迎するよ」
千春「私なんかがいて・・・良いんでしょうか・・・」
ナツ「(千春に手を差し出したまま)うん。四人で・・・仲良くやろ?」
千春はナツの手を取ろうか悩む
千春は少し悩んだ後、刃のかけた剣を老人が波音博物館から盗んだ日本刀、槍、薙刀と同じように教室の隅の方に立て掛ける
千春はナツの手を取る
千春「(ナツの手を取ったまま)よ、よろしくお願いします・・・」
ナツ「(千春の手を握り)こちらこそ、よろしく」
ナツは千春の手を握り、教室から出て行く
ナツは千春の手を引っ張っている
ナツと千春は手を繋いで波音高校の廊下を歩いている
廊下の窓から夕日の光が差し込み、ほこりが浮かんで見えている
廊下には生活用品のゴミ、遺骨、かつて授業で使われていた道具など様々な物が散乱している
千春「(ナツに手を引っ張られながら 声 モノローグ)私・・・この子のことを信じます・・・菜摘さんのことを信じます・・・鳴海さんとも協力して、皆さんが報われるような奇跡を必ず起こします・・・だから嶺二さん・・・パパ・・・菜摘さん・・・汐莉・・・明日香さん・・・雪音さん・・・奇跡を起こすその日まで・・・人間じゃない私が・・・人間の皆さんに恩返しをするその日まで・・・どうか待っていてください・・・」
ナツは千春の手を引っ張って、スズと老人の後を追う
ナツと千春は手を繋いだまま廊下を歩き続ける
◯1689早乙女家菜摘の自室(昼過ぎ)
綺麗な菜摘の部屋
菜摘の部屋には誰もいない
菜摘の部屋にはベッド、低いテーブル、勉強机、パソコン、プリンターなどが置いてある
机の上には朗読劇用の波音物語、原作の波音物語、鳴海がアイリッシュイベントで購入したステンレス製の小さな三つ葉のキーホルダー、入学式を迎えた波音高校の前で、鳴海の母、由夏理が制服姿で立って写っている写真、公園らしき場所で5、6歳ごろの鳴海と由夏理が手を繋ぎながら写っている写真が置いてある
ステンレス製の小さな三つ葉のキーホルダーの葉の部分には、グリーンのストーンがついている
入学式を迎えた波音高校の前で、鳴海の母、由夏理が制服姿で立って写っている写真と、公園らしき場所で5、6歳ごろの鳴海と由夏理が手を繋ぎながら写っている写真は、滅びかけた世界の老人が持っている写真と完全に同じ物
入学式を迎えた波音高校の前で、鳴海の母、由夏理が制服姿で立って写っている写真と、公園らしき場所で5、6歳ごろの鳴海と由夏理が手を繋ぎながら写っている写真が金色に光り輝いている
鳴海が合同朗読劇の成功で得た自信を折られ、家族を喪失する物語、Chapter7√鳴海(菜摘-由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如くへと続く…
合宿編、生徒会選挙編、卒業編と三部作形式で続いて来た「向日葵が教えてくれる、波には背かないで Chapter6 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海」ですが、今回でついに完結となります。
書き手として、雑感の一つでも残そう...と思いつつも、大したことが浮かびません。たくさんのキャラクターを描きながら、とにかく長い物語を無事に終わらせられて今はホッとしたいところなんですが、特にそういう気持ちにもなれず(実はChapter6 卒業編を書き終えたのは今から一年近く前でした)。毎週投稿で一年も経つとは、改めてChapter6の長さに驚きですね...
もはや書き終わった時の記憶も曖昧ですが、千春、雪音、早季のシーンが自分でも気に入っていて、今後の物語で彼女たちを描くのがとても楽しみになっています。
今後と言えばですが、これからの「向日葵が教えてくれる、波には背かないで」について少し告知させてください。まず次回作のChapter7 √鳴海(菜摘-由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如くへ、こちらは現在執筆中です。この子がまた一筋縄では行かず、Chapter6の合宿編、生徒会選挙編、卒業編の三部作を合わせた尺よりも長尺になっています(長過ぎ)。メインキャラクターは高校卒業後の鳴海と菜摘、そして今まで描かれることのなかった鳴海の両親です、Chapter7の肝心のストーリーはネタバレ厳禁のため語れませんが、Chapter4、5同様に外伝的で、新キャラクターも多く、独自性の強いエピソードになると思います。貴志家に焦点が当たっていて、滅びかけた世界ではなく、現在の鳴海と菜摘、そして貴志家の過去を交互に...そんな感じです、曖昧な説明ですみません。あ、時系列はChapter5と同じです。ようやく汐莉と神谷の裏で鳴海がしていたことが明かされるので、楽しみにお待ちください。
そしてChapter7に続くChapter8について、当初の予定だと雪音と智秋の物語を描くつもりでしたが、これを白紙にし、先にChapter8で大人になった鳴海たちの、言わば望まぬ形での同窓会を紡ぐことに決めました。一条家に関しては、Chapter7、8、9と、これから少しずつ書き進めることになりそうです。
まだまだたくさんのお話が残っている「向日葵が教えてくれる、波には背かないで」ですが、ちょうど鳴海たちが波音高校を卒業したChapter6で、全体の半分くらいのところに来ました。ここからは青春を描くことはないでしょう、世界が滅び行く運命なのに、いつまでも部活気分じゃいられませんから。
最後にここまで読んだくださった方、本当にありがとうございます。Chapter7は夏頃の投稿になると思いますが、これからも「向日葵が教えてくれる、波には背かないで」の応援をよろしくお願いします。