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Chapter6卒業編♯47 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


登場人物


滅びかけた世界


ナツ 16歳女子

ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。


スズ 15歳女子

マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。

ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。


老人 男

ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・


中年期の明日香 女子

老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。


七海 女子

中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。


老人と同世代の男兵士1 男子

中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。


レキ 女子

老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。


老人と同世代の男兵士2 男子

中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。






滅んでいない世界


貴志 鳴海(なるみ) 18歳男子

波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。


早乙女 菜摘(なつみ) 18歳女子

波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。


白石 嶺二(れいじ) 18歳男子

波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。


天城 明日香(あすか) 18歳女子

波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。


南 汐莉(しおり)15歳女子

波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。


一条 雪音(ゆきね)18歳女子

波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・


柊木 千春(ちはる)女子

Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。


三枝 響紀(ひびき)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。


永山 詩穂(しほ)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。


奥野 真彩(まあや)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。


早乙女 すみれ45歳女子

菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。


早乙女 (じゅん)46歳男子

菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。


神谷 志郎(しろう)43歳男子

波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。


荻原 早季(さき)15歳女子

Chapter5に登場した正体不明の少女。


貴志 風夏(ふうか)24歳女子

鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。


一条 智秋(ちあき)24歳女子

雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。


双葉 篤志(あつし)18歳男子

波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。


有馬 (いさむ)64歳男子

波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。


細田 周平(しゅうへい)15歳男子

野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。


貴志 (ひろ)

鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。


貴志 由香里(ゆかり)

鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。


神谷 絵美(えみ)29歳女子

神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。


波音物語に関連する人物






白瀬 波音(なみね)23歳女子

波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。


佐田 奈緒衛(なおえ)17歳男子

波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。


(りん)21歳女子

波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。


明智 光秀(みつひで)55歳男子

織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。


織田 信長(のぶなが)48歳男子

天下を取るだろうと言われていた武将。


一世(いっせい) 年齢不明 男子

ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。

Chapter6卒業編♯47 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


◯1590緋空寺/境内(500年前/日替わり/朝)

 快晴

 緋空寺の境内にいる波音

 まだ荒れ果てていない緋空寺の境内

 緋空寺には何箇所かに黒く焼け焦げた跡が残っている

 境内の外れの方に奈緒衛のお墓がある

 墓石には佐田 奈緒衛と彫られている

 お墓の近くには奈緒衛が使っていた日本刀が地面に刺さっている

 波音は奈緒衛の墓石を濡れた雑巾で拭いている

 波音の横には水が入った木材のたらいが置いてある

 少しすると一世が波音の方にやって来る

 一世は髪と髭がボサボサに生えている


波音「(奈緒衛の墓石を濡れた雑巾で拭きながら)昨晩は騒がしてしまってすまなかったのう」


 少しの沈黙が流れる


波音「(奈緒衛の墓石を濡れた雑巾で拭きながら)すまなかったでは許さぬか・・・しかしうっかり住持様が行灯を蹴り飛ばしてしまってな、おそらく寝ぼけておったのだろうが・・・とにかくお主に怪我がなくて良かった、一世よ」

一世「俺は黒焦げになって死ぬところだったんだぞ」

波音「(奈緒衛の墓石を濡れた雑巾で拭きながら)うむ。それはそうであるな」


 再び沈黙が流れる


一世「海人が特別な力を持ってるってのは何度か耳にした噂だが・・・あんたはその力で俺を助けたのか」

波音「(奈緒衛の墓石を濡れた雑巾で拭きながら)一応は助けたことになるのう」

一世「何で見殺しにしなかった?俺はクズだぞ。あんたをぶっ殺そうとした男だぞ」


◯1591◯1365の回想/本能寺/信長の寝室(500年前/朝)

 信長の部屋にいる波音と奈緒衛

 首を斬り落とされて死んだ信長がいる

 信長の遺体は腹と首から血を流しながら倒れている

 波音の足元には信長の生首が転がっている 

 信長の死体の腹には日本刀が突き刺さっている

 部屋中に信長の血が飛び散っている

 波音は俯いている


波音「(声)私は昔から男を火の粉から守るのが得意なのだ」


◯1592回想戻り/緋空寺/境内(500年前/朝)

 快晴

 緋空寺の境内にいる波音と一世

 まだ荒れ果てていない緋空寺の境内

 緋空寺には何箇所かに黒く焼け焦げた跡が残っている

 境内の外れの方に奈緒衛のお墓がある

 墓石には佐田 奈緒衛と彫られている

 お墓の近くには奈緒衛が使っていた日本刀が地面に刺さっている

 波音は奈緒衛の墓石を濡れた雑巾で拭いている

 波音の横には水が入った木材のたらいが置いてある

 一世は波音の後ろに立っている

 一世は髪と髭がボサボサに生えている


一世「見殺さなかった理由が分からねえんだよ」

波音「(奈緒衛の墓石を濡れた雑巾で拭きながら)理由など必要か?」


 少しの沈黙が流れる


波音「(奈緒衛の墓石を濡れた雑巾で拭きながら)私はお主が死ぬところを見とうなかっただけだ」


 波音は水が入った木材のたらいで雑巾を洗い始める


波音「(水が入った木材のたらいで雑巾を洗いながら)かつては私も復讐を望み生きておった。そなたのように、憎悪に突き動かされるままに刀を振ったことも少なくはない。(少し間を開けて)一世よ、そなたは真っ直ぐで強い意志を持っておる。その意志をここら一帯の者の力にするのであれば、私はお主に知恵、信頼、敬意を授けよう。一番にはなれぬだろうが、お主なら集落を活性化出来るはずだ。さすればいずれ人々はお主のことを愛するようになるぞ」

一世「あんたに救われた借りを返せってなら、一瞬だけあんたの犬になってやっても良い」

波音「(水が入った木材のたらいで雑巾を洗いながら)誰もそのようなことは申しておらぬわ」


 水が入った木材のたらいで雑巾を洗うのをやめる波音


波音「私がお主を今の定めから救ってやる」

一世「てめえは一度ばかりではなく二度も俺様を救うのか?」

波音「無論だ」


◯1593緋空寺/書斎(500年前/日替わり/昼)

 外は快晴

 たくさんの本棚に囲まれた部屋にいる波音と一世

 本棚の中には絵が描かれた巻物、和歌集、短歌集、随筆などの様々な本がある

 本棚を見ている波音

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 

波音「(本棚を見ながら)お主も書物を読むと良い」

一世「意味がねえことを俺にさせるんじゃねえ」

波音「(本棚を見ながら)意味ならあるぞ、一世よ。書物はそなたを賢くするからのう」


 波音は一冊の本を本棚から取り出す

 一冊の本を一世に差し出す波音


波音「(一冊の本を一世に差し出したまま)お主には利口になってもらわねばな」


◯1594緋空寺/波音の部屋(500年前/昼過ぎ)

 狭い和室にいる波音と一世

 波音が使っていた日本刀、装束、畳まれた布団が部屋の隅に置いてある

 机に向かって畳に座っている波音

 机の上には菜摘が波音に宛てて書いた筆文字(古語)の手紙(和紙)、書きかけの波音物語/波音の手記、墨、筆が置いてある

 波音は筆を手に取り、筆先に墨をつける

 波音物語/波音の手記の続きを書き始める波音

 一世は立っている

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 一世は一冊の本を持っている


波音「(波音物語/波音の手記を書きながら)お主も座らぬか」

一世「部屋に戻らせろ」

波音「(波音物語/波音の手記を書きながら)ここで書物を読むのだ」


 少しの沈黙が流れる


波音「(波音物語/波音の手記を書きながら)案ずるな。お主の邪魔はせぬよ」


 再び沈黙が流れる

 渋々座り、本を読み始める一世

 

◯1595緋空寺/境内(500年前/日替わり/昼)

 快晴

 緋空寺の境内にいる波音、一世、住持たち、そしてたくさんの村人たち

 まだ荒れ果てていない緋空寺の境内

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 波音たちは何箇所かに黒く焼け焦げた跡が残っている緋空寺を見ている

 

波音「(箇所かに黒く焼け焦げた跡が残っている緋空寺を見ながら)手直しがいるのう・・・」

村人1「波音様、おら余った木を持ってるもんで、よかったら使ってくだせえ」

波音「(箇所かに黒く焼け焦げた跡が残っている緋空寺をやめて)良いのか?木はそなたにとって大切な家族だろう?」

村人1「おら、恩返しがしてえんです。波音様が来てくださってから、米も魚もたくさん取れるようになって、子供たちの体も強くなりました。だから波音様、木は遠慮せんで貰っちまってくだせえ」

波音「すまぬな・・・お主の思いやりに感謝するぞ」


 時間経過


 たくさんの丸太が緋空寺の境内に置いてある

 波音と村人たちが手斧を使って丸太を切っている

 少し離れたところから一世と住持たちが丸太を切る波音たちのことを見ている


住持「(手斧を使って丸太を切っている波音たちのことを見ながら)あなたも手伝ったらいかかです」

一世「(手斧を使って丸太を切っている波音たちのことを見ながら)坊主共がやれよ」


◯1596貴志家リビング(日替わり/朝)

 外は快晴

 時刻は七時半過ぎ

 テーブルの上に置き手紙がある

 置き手紙には“やべえ花粉だよ花粉!!あ、鳴海が波高を卒業したらお姉ちゃんは籍を入れる準備を始めます。”と書かれている

 制服姿で椅子に座って置き手紙を見ている鳴海


鳴海「(置き手紙を見ながら)花粉がやばいのは認めるが・・・何で俺が卒業するまで結婚の準備を始めないんだよ・・・」


◯1597波音高校校門(朝)

 快晴

 たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く

 校門の前で部員募集を行っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている

 鳴海たちは通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している


鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)俺たちの高校生活は終わろうとしていた」


 鳴海たちの前を通りかかる生徒たちは、文芸部のことを気に留めず周りの生徒たちと楽しそうに話をしながら校舎内へ入って行く


◯1598波音高校食堂(昼)

 昼休み

 食堂にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 混んでいる食堂

 注文に並ぶ生徒がたくさんいる

 昼食を食べ終えている鳴海たち

 食堂のテーブルはほとんど埋まっている

 鳴海たちは話をしている


菜摘「雪音ちゃん、一世さんはその後どうなったの?」


◯1599緋空寺/波音の部屋(500年前/日替わり/昼前)

 外は快晴

 狭い和室にいる波音と一世

 波音が使っていた日本刀、装束、畳まれた布団が部屋の隅に置いてある

 机に向かって畳に座っている波音

 机の上には菜摘が波音に宛てて書いた筆文字(古語)の手紙(和紙)、書きかけの波音物語/波音の手記、墨が置いてある

 波音は筆を使い、波音物語/波音の手記の続きを書いている

 一世は座って一冊の本を読んでいる

 一世は髪と髭がボサボサに生えている


雪音「(声)波音村に暮らし続けたんじゃない」


◯1600波音高校食堂(昼)

 昼休み

 食堂にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 混んでいる食堂

 注文に並ぶ生徒がたくさんいる

 昼食を食べ終えている鳴海たち

 食堂のテーブルはほとんど埋まっている

 鳴海たちは話をしている


真彩「いっせーって誰のことっすか?」

嶺二「雪音ちゃんの与太話に登場する柄のわりーおっさんだよ」

真彩「はあ・・・」

詩穂「汐莉は部誌を書かないの?」

汐莉「書きたいけど、まずは部員を集めたいし・・・」

菜摘「詩穂ちゃん、一世さんは部誌のキャラクターじゃなくて、500年前に生きていた人だよ」

詩穂「波音物語にいたかな・・・そんな人・・・」

鳴海「波音が緋空寺で暮らしてから出会った男らしいんだ」

真彩「へぇ〜、世の中いろんな人がいるな〜」

明日香「本当に実在したか分からないけどね」

真彩「え?」

嶺二「だから言ったじゃーねか、雪音ちゃんの与太話だってな」

菜摘「み、みんな雪音ちゃんの話を信じてみようよ」

汐莉「信じる価値はあるんですか」

雪音「ないと思うけど」

鳴海「一条がそんなふうに言ってたら、誰も信じないぞ」

雪音「鳴海、人間って嘘をつくんだよ」


 少しの沈黙が流れる


響紀「実在した証拠があれば、雪音さんの話を全員信じると思いますが」


 再び沈黙が流れる


真彩「いっせーって人は波音と出会ってどうなったんすか?」


◯1601緋空寺/境内(500年前/日替わり/昼)

 快晴

 緋空寺の境内にいる波音、一世、住持たち、そしてたくさんの村人たち

 まだ荒れ果てていない緋空寺の境内

 緋空寺には何箇所かに黒く焼け焦げた跡が残っている

 波音とたくさんの村人たちが緋空寺の修理を行っている

 木材、和釘、金槌を使って焼け焦げた緋空寺の壁を建て替えている波音とたくさんの村人たち

 少し離れたところから一世と住持たちが焼け焦げた緋空寺の壁を建て替えている波音たちのことを見ている

 一世は髪と髭がボサボサに生えている


雪音「(声)彼はしばらく・・・」


◯1602緋空寺/講堂(500年前/日替わり/朝)

 外は曇っている

 広い畳の部屋にいる波音、一世、住持たち、そしてたくさんの村人たち

 住持の指示に従い波音と数人の村人たちが慎重に仏像を運んでいる

 一世と住持たちが仏像を運ぶ波音たちのことを見ている


雪音「(声)波音たちの生活を観察しながら・・・」


◯1603緋空寺/波音の部屋(500年前/日替わり/昼過ぎ)

 外は曇っている

 狭い和室にいる波音と一世

 波音が使っていた日本刀、装束、畳まれた布団が部屋の隅に置いてある

 机に向かって畳に座っている波音

 机の上には菜摘が波音に宛てて書いた筆文字(古語)の手紙(和紙)、書きかけの波音物語/波音の手記、墨が置いてある

 波音は筆を使い、波音物語/波音の手記の続きを書いている

 一世は座って一冊の本を読んでいる

 一世は髪と髭がボサボサに生えている


雪音「(声)考えて過ごしたんだと思う」

鳴海「(声)何を考えたんだ?」


◯1604緋空寺/境内(500年前/日替わり/朝)

 強い雨が降っている

 緋空寺の境内にいる波音と一世

 まだ荒れ果てていない緋空寺の境内

 境内の外れの方に奈緒衛のお墓がある

 墓石には佐田 奈緒衛と彫られている

 お墓の近くには奈緒衛が使っていた日本刀が地面に刺さっている

 波音は奈緒衛の墓石が濡れないように地面に和傘を置いている

 波音は地面に座り、奈緒衛のお墓に話をしている

 波音はずぶ濡れになっている

 一世は和傘をさして遠くの方から波音のことを見ている

 一世は髪と髭がボサボサに生えている


雪音「(声)波音に運命を任せて良いか・・・」


◯1605波音高校食堂(昼)

 昼休み

 食堂にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 混んでいる食堂

 注文に並ぶ生徒がたくさんいる

 昼食を食べ終えている鳴海たち

 食堂のテーブルはほとんど埋まっている

 鳴海たちは話をしている


嶺二「んで?一世は決断出来たのかよ?」

雪音「嶺二は私の与太話を信じないんじゃなかった?」

嶺二「そりゃそーだ。雪音ちゃん自体が信じなくて良いって言ってるしな」


 少しの沈黙が流れる


雪音「一世の話は私が小さい頃に姉から聞かされたの・・・姉は・・・両親が生きていた頃に両親から聞かされて・・・(少し間を開けて)姉は私よりも話すのが上手だったけど、私にはどうでも良かった。一世が実在したとしても、しなくてもね。まさに今の嶺二たちと一緒だよ」

菜摘「私にはどうでも良くない。雪音ちゃんの話を信じてるもん」

雪音「そう・・・」


 再びち沈黙が流れる


雪音「結局一世は・・・」


◯1606緋空寺/境内(500年前/日替わり/昼)

 晴れている

 緋空寺の境内にいる波音、一世、住持たち、そしてたくさんの村人たち

 まだ荒れ果てていない緋空寺の境内

 緋空寺には何箇所かに黒く焼け焦げた跡が残っている

 波音とたくさんの村人たちが緋空寺の修理を行っている

 木材、和釘、金槌を使って焼け焦げた緋空寺の壁を建て替えている波音とたくさんの村人たち

 少し離れたところから一世と住持たちが焼け焦げた緋空寺の壁を建て替えている波音たちのことを見ている

 一世は髪と髭がボサボサに生えている


雪音「(声)運命を波音に任せることにした」


 一世は波音たちのところに行く

 若い女が大きな木材を和釘と金槌を使って緋空寺の壁に打ち付けている

 一世が力付くで若い女から金槌を奪い取る

 波音が一世のことを見る

 一世は若い女に代わって、大きな木材を金槌で緋空寺の壁に打ち付けている

 波音は若い女に代わって、大きな木材を金槌で緋空寺の壁に打ち付けている一世のことを見ている


◯1607波音高校食堂(昼)

 昼休み

 食堂にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 混んでいる食堂

 注文に並ぶ生徒がたくさんいる

 昼食を食べ終えている鳴海たち

 食堂のテーブルはほとんど埋まっている

 鳴海たちは話をしている


明日香「一世物語も一件落着したってわけね」

鳴海「あ、あっさりし過ぎだろ・・・話はそれで終わりなのか・・・?」

雪音「うん。後は普通の展開が続くから」

汐莉「私普通じゃないんで、雪音先輩の言葉足らずな説明だとちょっと意味が分からないんですけど」


◯1608緋空寺/講堂(500年前/日替わり/昼前)

 外は晴れている

 広い畳の部屋にいる波音と一世

 畳に座っている波音

 波音は短刀を持っている

 一世の前には水が入った木材のたらいが置いてある

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 波音は一世に短刀を差し出す


雪音「(声)普通は普通」


 一世は少し悩んだ後、短刀を波音から受け取る

 短刀を鞘から抜く一世

 一世は目の前に置いてある水が入った木材のたらいを見る

 たらいの水には一世の顔が反射して映っている

 一世はたらいの水に反射して映る自分の顔を見ながら、短刀でボサボサに生えた髪の毛を斬り落とし始める


雪音「(声)身なりを整えて・・・」


◯1609集落/桜の木の下(500年前/日替わり/夕方)

 夕日が沈みかけている

 集落には古民家がたくさんある

 集落に一本の大きな桜の木が生えている

 桜は満開になっている

 桜の木の下にイグサで出来た大きな敷物が敷いてある

 イグサで出来た大きな敷物の上に波音、一世、住持たち、そしてたくさんの村人たちが座っている

 イグサで出来た大きな敷物の上には三色団子、急須、茶碗などが波音たち用に置いてある

 波音は数人の子供たちと話をしている

 一世は髭が剃られ、髪型が整えられている

 たくさんの村人の中には若い女もいる

 若い女は◯1606で一世に金槌を奪われ、緋空寺の壁の修理を代わりにやってもらった女

 一世は三色団子を食べながら若い女と話をしている

 

雪音「(声)面倒な村人たちに媚を売って・・・」


 一人の子供が地面に落ちていた桜の花びらを拾う

 桜の花びらを波音に差し出す一人の子供

 波音は一人の子供から桜の花びらを受け取る

 波音は桜の花びらを手のひらに乗せて目を瞑る

 妖術を使う波音

 波音が妖術を使ったことで、波音の手のひらに乗せてあった桜の花びらはふわふわと宙に浮かび始める

 子供の一人がふわふわと宙に浮かんだは桜の花びらを捕まえようとする

 ふわふわと宙に浮かんだは桜の花びらは子供の指の隙間を擦り抜け、波音たちから離れて行く

 子供たちはふわふわと宙に浮かんで移動する桜の花びらを追いかける

 一世と話をしている若い女は顔が赤くなっている


雪音「(声)新しく生きる目的を見つけ・・・」


 一世は三色団子を食べながらふわふわと宙に浮かんでいる桜の花びらを見る

 子供たちがふわふわと宙に浮かんでいる桜の花びらを捕まえようとしているが、桜の花びらは捕まらない

 一世は三色団子を食べながらふわふわと宙に浮かんでいる桜の花びらを見るのをやめて、波音のことを見る

 波音は変わらず目を瞑っている


雪音「(声)一世は次の運命に進んだの」


◯1610緋空寺/境内(500年前/日替わり/昼)

 快晴

 Chapter4の◯602と同じシーン

 緋空寺の境内にいる波音と一世

 まだ荒れ果てていない緋空寺の境内

 緋空寺に何箇所かあった黒く焼け焦げた跡は修理されて消えている

 境内の外れの方に奈緒衛のお墓がある

 墓石には佐田 奈緒衛と彫られている

 お墓の近くには奈緒衛が使っていた日本刀が地面に刺さっている

 奈緒衛のお墓の前に立っている波音

 波音は髪の毛が少し短くなっており、体も以前より痩せている

 波音は右手に酒が入った徳利を持っている

 波音は左手を握り締めている

 波音の左手の中には向日葵の種がある

 酒が入った徳利を地面に置く波音

 一世は遠くの方から波音のことを見ている

 左手に持っていた向日葵の種を奈緒衛のお墓の隣に埋める波音

 波音は目を瞑る

 妖術を使う波音


雪音「(声)波音が作った運命にね・・・」


 地面からゆっくり向日葵の芽が出て、葉が大きくなる

 向日葵の葉の間につぼみが出来る 

 一世は奈緒衛のお墓の隣で成長する向日葵を見ている

 向日葵はつぼみが開く

 波音は目を開ける

 一輪の向日葵が奈緒衛のお墓の隣で咲いている

 風で向日葵が揺れている


嶺二「(声)めでたしめでたしになったのか?」


 一世は変わらず奈緒衛の隣で咲いた向日葵を見ている


◯1611波音高校食堂(昼)

 昼休み

 食堂にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 混んでいる食堂

 注文に並ぶ生徒がたくさんいる

 昼食を食べ終えている鳴海たち

 食堂のテーブルはほとんど埋まっている

 鳴海たちは話をしている


雪音「めでたしめでたしだよ。結婚して、子供が出来て、死ぬまで幸せに暮らして、それで一世の人生は終わったんだから」

真彩「なんか・・・ハッピーエンド感がないっすね・・・」

雪音「当たり前じゃん。普通どんな人でも最後には死ぬんだもの」


 雪音はチラッと汐莉のことを見る

 少しの沈黙が流れる


鳴海「最後には死ぬから後悔しないように生きるんだろ」

菜摘「そうだよ、だからみんな一生懸命になるんだよ」

雪音「一生懸命生きたからと言って、努力したからと言って、死ぬ時に報われるとは限らなくない?」


 再び沈黙が流れる

 立ち上がる嶺二


嶺二「そろそろ部員を集めに行こーぜ、こんな話を続けてたら昼休みが終わっちまうよ」

汐莉「(立ち上がり)嶺二先輩にしては珍しく空気を読んで正しいことを言ってますね」

嶺二「いつも空気読んでるだろ!!」


 明日香、響紀、詩穂、真彩も立ち上がる


詩穂「食べ過ぎたから運動しないと・・・真彩、今日バッティングセンターに行こうよ」

真彩「え〜、つか食べ過ぎたからじゃなくて山田くんに会いたいだけじゃねえの〜?」

詩穂「細田」

真彩「それそれ、細田くん」

明日香「バッティングかー・・・最近行ってないなー・・・・」

響紀「私のラブボールをバッティングしてください、明日香ちゃん」

明日香「何よ、ラブボールって」

嶺二「7個集めたら願いが叶うボールだな」

汐莉「ドラゴンが出て来ちゃうやつじゃないですか」

嶺二「そーそー」

真彩「自分願いが叶うなら、ツチノコに会ってみたいっすね」

嶺二「雪音ちゃんの与太話じゃないんだし願いなんて努力しなきゃ叶わねーと思うぜ」

真彩「努力するんで誰か一生分の飯を作ってくれ〜・・・」


 明日香、嶺二、汐莉、響紀、詩穂、真彩は話をしながら食堂の出口に向かっている

 鳴海、菜摘、雪音は変わらず座っている

 少しの沈黙が流れる


雪音「信じなくて・・・良いから・・・」

菜摘「雪音ちゃんは智秋さんのお話を信じたいんだよね・・・?」

雪音「別に・・・」


 再び沈黙が流れる


鳴海「菜摘、一条・・・俺たちも・・・」

 

 雪音は立ち上がる


雪音「行くんでしょ?」

鳴海「あ、ああ」


 鳴海と菜摘も立ち上がる


◯1612波音高校特別教室の四/文芸部室(夕方)

 夕日が沈みかけている

 文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩、神谷

 教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある

 円の形に椅子を並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 神谷は円とは別のところに椅子を置き座っている

 話をしている鳴海たち


神谷「三年生を送る会の振り替えは六日の日曜日になったよ」

鳴海「あ、明後日じゃないか・・・」

神谷「他の曜日はどうしても空いてなくてね、だから今年度限りの特別待遇をすることに決まったんだ」

菜摘「神谷先生」

神谷「何かな、菜摘」

菜摘「日曜日は一般生徒も登校するんですか?」

神谷「するにはするが任意でだ。強制ではなく自主的に登校して来た生徒のみで今回の三年生を送る会は行う」


 少しの沈黙が流れる


嶺二「観客はいねえかもしれねーってことかよ・・・」

神谷「嶺二、日曜日は先生方にとっても大切な休日なんだぞ。君は休みを奪い取るつもりか?」

嶺二「へ、平日に振り替えてくれてれば良か・・・」

神谷「(嶺二の話を遮って)平日は体育館が空いてなかったんだ。空いてなかったから空いてなかったんだよ。俺が職員会議で頼んでも奴らは俺を笑いながら見て・・・」


 神谷はニヤニヤ笑い始める


神谷「(ニヤニヤ笑いながら小さな声で)子供たちのために言ってるのに聞いちゃくれない・・・理解したぞ・・・大人の頭は数字の8みたいにうさぎが走り回ってアリスの目玉をクッキーにしようとしてるんだな・・・俺はティーパーティーに呼ばれ・・・」

汐莉「(神谷の話を遮って)か、神谷先生・・・?どうかしたんですか・・・?」


 神谷はニヤニヤ笑うのをやめる


神谷「職員室のプリンターの調子が悪いんだよ。隣町の中学校に配布しなきゃいけないプリントがあるんだけど、遅れそうでね。だから困ってるんだ」

菜摘「部室のプリンターをつか・・・」

明日香「(菜摘の話を遮って)に、日曜日は頑張ります!!先生もお疲れだと思いますけど頑張ってください!!」


 立ち上がる神谷


神谷「教師が生徒に励まされてるようじゃ、先生もまだまだだな。合同朗読を楽しみにして俺も頑張るよ」

明日香「は、はい!!」


 神谷は教室の扉の方に歩いて行く

 扉の前で立ち止まる神谷


神谷「言い忘れてたけど、明日は学校説明会があって君たち生徒は校舎に出入り禁止になるんだ。もちろん今日も体育館は使用出来ないから、今のうちに朗読劇の練習を重ねておくように」


 神谷は部室から出て行く

 少しの沈黙が流れる


詩穂「じ、実質・・・ぶっつけ本番ってこと・・・?」

菜摘「う、うん・・・」

鳴海「結局俺たちに時間は無し、か・・・使えない変人教師だ・・・」

菜摘「明日香ちゃん、どうして神谷先生にプリンターを貸してあげなかったの?」

明日香「だって面倒くさそうだったし・・・だいたいプリンターのために部室にいられても邪魔でしょ」

菜摘「それは・・・そうだけど・・・」


 再び沈黙が流れる


嶺二「つか任意でのとうこーってやべーだろ」

真彩「そうっすね・・・お客さんが入るか心配っす・・・」

響紀「一般生徒が少なかったら文芸部の宣伝になりませんよ」

雪音「本格的に廃部確定じゃん」

鳴海「おい」雪音「何?まだ諦めるなって言うの?」

鳴海「そうだ。合同朗読劇が始まってもないのに諦めるな」

菜摘「雪音ちゃん、私たちにはまだ可能性があるよ」


 少しの沈黙が流れる


汐莉「合同朗読劇で新入部員が集まらなくても・・・私が責任を持って先輩たちから文芸部を引き継ぎます」

菜摘「汐莉ちゃん・・・」

汐莉「菜摘先輩、今は残された時間で練習をしましょう。本番を楽しむために」菜摘「う、うん!!」

鳴海「よし!!明後日に向けて最終確認をするぞ!!」

菜摘・明日香・嶺二・汐莉・響紀・詩穂・真彩「おー!!」


◯1613早乙女家に向かう道中(放課後/夕方) 

 夕日が沈みかけている

 菜摘を家に送っている鳴海

 部活帰りの学生がたくさんいる

 鳴海と菜摘は話をしている


鳴海「一番最悪なルートだけは免れたな、菜摘」

菜摘「一番最悪なルートって朗読劇の中止?」

鳴海「ああ」

菜摘「そうだね。日曜日に来てくれる人が少なくても、文芸部と軽音部で朗読劇が出来るんだから、私は十分嬉しいな」

鳴海「(声 モノローグ)卒業式まで残り8日・・・(少し間を開けて)チャンスはもう一生ない・・・明後日こそ、合同朗読劇を・・・みんなで楽しもう・・・それで良いんだ・・・それだけで・・・良いんだ・・・」

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