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Chapter6卒業編♯45 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


登場人物


滅びかけた世界


ナツ 16歳女子

ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。


スズ 15歳女子

マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。

ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。


老人 男

ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・


中年期の明日香 女子

老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。


七海 女子

中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。


老人と同世代の男兵士1 男子

中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。


レキ 女子

老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。


老人と同世代の男兵士2 男子

中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。






滅んでいない世界


貴志 鳴海(なるみ) 18歳男子

波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。


早乙女 菜摘(なつみ) 18歳女子

波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。


白石 嶺二(れいじ) 18歳男子

波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。


天城 明日香(あすか) 18歳女子

波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。


南 汐莉(しおり)15歳女子

波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。


一条 雪音(ゆきね)18歳女子

波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・


柊木 千春(ちはる)女子

Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。


三枝 響紀(ひびき)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。


永山 詩穂(しほ)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。


奥野 真彩(まあや)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。


早乙女 すみれ45歳女子

菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。


早乙女 (じゅん)46歳男子

菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。


神谷 志郎(しろう)43歳男子

波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。


荻原 早季(さき)15歳女子

Chapter5に登場した正体不明の少女。


貴志 風夏(ふうか)24歳女子

鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。


一条 智秋(ちあき)24歳女子

雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。


双葉 篤志(あつし)18歳男子

波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。


有馬 (いさむ)64歳男子

波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。


細田 周平(しゅうへい)15歳男子

野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。


貴志 (ひろ)

鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。


貴志 由香里(ゆかり)

鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。


神谷 絵美(えみ)29歳女子

神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。


波音物語に関連する人物






白瀬 波音(なみね)23歳女子

波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。


佐田 奈緒衛(なおえ)17歳男子

波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。


(りん)21歳女子

波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。


明智 光秀(みつひで)55歳男子

織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。


織田 信長(のぶなが)48歳男子

天下を取るだろうと言われていた武将。


一世(いっせい) 年齢不明 男子

ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。

Chapter6卒業編♯45 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


◯1565貴志家リビング(日替わり/朝)

 外は晴れている

 時刻は七時半過ぎ

 制服姿で椅子に座ってニュースを見ている鳴海

 キッチンで風夏が弁当を作っている


ニュースキャスター「波音町で起きた震度・・・」

鳴海「(声 モノローグ)大騒ぎになった割に、昨日の地震による被害は皆無に等しかった」


◯1566波音高校校門(朝)

 たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く

 校門の前で部員募集を行っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている

 鳴海たちは通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している


鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)ニュースでは地震の情報を取り扱っていたものの、波の音については触れられていない。(少し間を開けて)俺は姉貴に確認してみたが、波の音なんて聞いてないと言われてしまった」


 鳴海たちの前を通りかかる生徒たちは、文芸部のことを気に留めず周りの生徒たちと楽しそうに話をしながら校舎内へ入って行く


◯1567波音高校特別教室の四/文芸部室(午前中)

 文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音

 教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある

 教室の窓際で話をしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音

 校庭では一年生男子生徒が体育の授業を受けている


鳴海「(話をしながら 声 モノローグ)三年生を送る会当日に様々な異常現象が起きていたのにも関わらず、波音高校の外ではほとんどの出来事が話題にすらなっていない」


◯1568波音高校食堂(昼)

 昼休み

 食堂にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 混んでいる食堂

 注文に並ぶ生徒がたくさんいる

 昼食を食べ終えている鳴海たち

 食堂のテーブルはほとんど埋まっている

 鳴海たちは話をしている


鳴海「(話をしながら 声 モノローグ)学園祭が終わった時の感覚と近かった。みんなまだ夢を見てるような・・・現実と幻想の狭間で彷徨っているような・・・不思議な浮遊感が体に残っている」


◯1569早乙女家に向かう道中(放課後/夕方) 

 夕日が沈みかけている

 菜摘を家に送っている鳴海

 部活帰りの学生がたくさんいる

 鳴海と菜摘は話をしている


鳴海「(菜摘と話をしながら 声 モノローグ)だからと言って特に変わったことはない。千春が消えた前回の朗読劇とは違って、今はみんながいる」


◯1570緋空寺/波音の部屋(500年前/日替わり/夕方)

 夕日が沈みかけている

 狭い和室にいる波音と一世

 波音が使っていた日本刀、装束、畳まれた布団が部屋の隅に置いてある

 部屋には机がある

 机の上には菜摘が波音に宛てて書いた筆文字(古語)の手紙(和紙)、書きかけの波音物語/波音の手記、筆、数冊の本が置いてある

 畳に座っている波音と一世

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 話をしている波音と一世


波音「眠りこけておったようだな」


 少しの沈黙が流れる


波音「もう夕暮れになっておる。今日も飯を食って泊まっていくと良い」

一世「あんた・・・何が目的だ」

波音「私はお主を助けたいだけだが・・・」

一世「何故助ける?」

波音「善行を続ければ、いつの日か私の魂を持つ者も救われるからだ」


 再び沈黙が流れる


波音「そろそろ・・・お主の名を知りたいのう」

一世「教えて何になるんだ」

波音「名を呼べるようになるではないか」

一世「てめえに名を教えれば、俺がここにいると都で抜かすだろ」

波音「お主は用心深いな・・・」


 少しの沈黙が流れる


波音「そなた、一番になって見返したいと申しておったか」

一世「ああ」

波音「負け犬を嫌うのだな」

一世「俺は勝ちてえんだ!!」

波音「徳川相手に勝利を得るのは不可能だろう」

一世「てめえに何が分かるんだよ!!」

波音「家康殿は策士だ。お主のような頭が柔らかくない者は、大人しく小さな地で暮らしておる方が幸福になれるぞ」

一世「(大きな声で)黙れ黙れ黙れ!!!!」

波音「打首になっても良いのか?」

一世「(大きな声で)俺は簡単には死なねえ!!!!」

波音「確かにだ、お主は運が強そうに見受ける」

一世「(大きな声で)だからてめえの首を取って都に行ってやる!!!!」

波音「逃げて生き延びた上杉謙信の家臣が都に参るのか?」

一世「てめえの首がありゃ俺は死なねえんだよ!!!!

波音「仲間も、刀も、金も、飯もないお主が、私の首を守り切れるとは思えぬな。きっと盗賊に襲われてお主は殺されるぞ」

一世「刀はてめえのを貰って行く」

波音「刀だけか、欲しいのは」

一世「金もだ!!」


再び沈黙が流れる


波音「私の条件を飲めば、刀、金、首はお主にくれてやろう」

一世「条件だと?」

波音「うむ。私の代わりに集落の者の生活を手立てして欲しいのだ」

一世「俺様がか?」

波音「無論お主様だよ」

一世「冗談じゃねえ!!俺は人が嫌いなんだ!!」

波音「私が死んでから私の代わりを務めれば良いのだぞ」

一世「死んでから?」

波音「そうだ。訳あって私は長生き出来ぬ体でのう。だからすぐにこの首はお主のものになるぞ」

一世「あんたが死ぬまでは俺はどこにいれば良いんだ」

波音「この寺の一部屋をそなたに貸そう」


 少しの沈黙が流れる


一世「てめえが死んだらてめえの首と刀と金は俺の物になるんだな」

波音「(頷き)うむ」

一世「てめえが死ぬまで俺はここで暮らせば良いのか?」

波音「(頷き)その通りだ。飯も出そう」


 再び沈黙が流れる

 波音は一世に手を差し出す

 一世は波音の手を取る

 波音と一世は握手をする


一世「(波音と握手をしながら)後悔するなよ。てめえの首はもう俺様の物だからな」

波音「(一世と握手をしながら)このような賢い取引で後悔などせぬわ」


 波音と一世は握手をやめる


波音「取引ついでにお主の名を聞かせてはくれぬか」

一世「名はどうでも良いだろう」

波音「知っておきたいのだ、私の首を手にする者の名を」


 少しの沈黙が流れる


一世「一つの世と書いて一世と読む・・・覚えておけ」

波音「一世か・・・」


◯1571緋空寺/境内(500年前/夕方)

 夕日が沈みかけている

 まだ荒れ果てていない緋空寺境内

 境内の道を掃除している波音と数人の住持たち

 波音と数人の住持たちは箒を使って枯れ葉を集めている

 波音と住持が話をしている


波音「(箒で掃きながら)彼には私の首を条件に集落の者の面倒を見るように頼みました」

住持「(箒で掃きながら)それはそれは・・・しかし、波音の思惑通りに使えるようになりますか?」

波音「(箒で掃きながら)お任せください住持様。あのような男を手玉にするのは容易いことでございます」


◯1572緋空寺/一世の部屋(500年前/日替わり/昼前)

 外は快晴

 狭い和室に布団を敷き、その上でいびきをかきながら眠っている一世

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 いきなり部屋のふすまが勢いよく開き、部屋に波音が入って来る


波音「(大きな声で)お、起きるのだ一世!!!!敵襲だぞ!!!!」


 目を覚ます一世


波音「(大きな声で)早く立たぬか!!!!敵軍がすぐそこまで来ておるのだぞ!!!!」


 一世は慌てて立ち上がる


一世「て、敵軍だと!?」

波音「うむ!!」


◯1573緋空寺/書斎(500年前/昼前)

 たくさんの本棚に囲まれた部屋にいる波音と一世

 本棚の中には絵が描かれた巻物、和歌集、短歌集、随筆などの様々な本がある

 本棚を見ている波音

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 

一世「(大きな声で)敵軍が来てるのに逃げねえのかよ!!!!」

波音「(本棚から和歌集を数冊手に取り)落ち着くのだ一世。奴らには狙いがある」

一世「狙い・・・?」

波音「うむ・・・あの武将は和歌を好んでおるのだ・・・」

 

◯1574緋空寺/境内(500年前/昼前)

 快晴

 緋空寺の境内にいる波音、一世、10歳くらいの男の子

 まだ荒れ果てていない緋空寺の境内

 波音は数冊の和歌集を持っている

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 波音は数冊の和歌集を10歳くらいの男の子に差し出す


10歳くらいの男の子「(数冊の和歌集を波音から受け取り)ありがとうございます波音様!!」

波音「何のことはない、母上によろしく伝えるのだぞ」

10歳くらいの男の子「はい!!」


 10歳くらいの男の子は走って緋空寺の境内から出て行く


波音「ふう・・・手強い武将だったな、一世」


 波音は横を見るが、一世はどこにもいない


◯1575緋空寺/一世の部屋(500年前/夕方)

 夕日が沈みかけている

 狭い和室に布団を敷き、その上で横になっている一世

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 いきなり部屋のふすまが勢いよく開き、部屋に波音が入って来る


波音「(大きな声で)お、起きるのだ一世!!!!」

一世「俺に構うな」

波音「(大きな声で)一大事なのだぞ!!!!駄々をこねてる場合ではない!!!!」


 少しの沈黙が流れる


波音「(大きな声で)干し芋を運んでいた荷車が泥の溝にはまってしまった!!!!このままだと今晩は飯抜きだ!!!!」

一世「てめえでどうにかしろ」

波音「(大きな声で)非力な女子と集落の者ではどうにもならぬ!!!!お主のような力持ちの男がいなくては!!!!」


 再び沈黙が流れる

 波音は一世の手を取り無理矢理立たせる

 一世は波音の手を引き離そうとする


一世「(波音の手を引き離そうとしながら)さ、触るんじゃねえ!!」

波音「(一世の手を掴んだまま大きな声で)私とてお主の手は触りとうないが生き抜くためだ!!!!」


 波音は一世の手を掴んだまま走って部屋を出る


◯1576緋空寺付近の田んぼ道(500年前/夕方)

 夕日が沈みかけている

 田んぼ道にいる波音、一世、村人

 田んぼ道はぬかるんでいる

 田んぼ道には干し芋を大量に積んだ荷車が泥の溝にはまって動けなくなっている

 荷車を思いっきり引いている一世

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 荷車は全く動いていない

 波音と村人は荷車を思いっきり引いている一世のことを見ている


村人「(荷車を思いっきり引いている一世のことを見ながら小さな声で)波音様・・・あの男は・・・米を盗んだ者なんじゃ・・・」

波音「(荷車を思いっきり引いている一世のことを見ながら小さな声で)すまぬが付き合ってくれ」

村人「(荷車を思いっきり引いている一世のことを見ながら小さな声で)は、はい・・・しかし俺たちも手伝った方が良くはありませんか・・・?」

波音「(荷車を思いっきり引いている一世のことを見ながら小さな声で)それはならぬ。奴一人でどうにかさせるのだ」


 少ししてから荷車が泥の溝から抜け出す


波音「良くやった一世!!力持ちのお主のお陰で皆が救われたぞ!!」


 一世は荷車を引くのをやめる 

 一世は痰を吐き出す

 村人の脇腹を突く波音


波音「(村人の脇腹を突きながら小さな声で)ほれ、お主も何か申すのだ」

村人「ち、力持ちで助かりました!!」


◯1577緋空寺/一世の部屋(500年前/夜)

 狭い和室に布団を敷き、その上で横になっている一世

 一世は髪と髭がボサボサに生えている

 部屋の隅に行灯が置いてある

 行灯の火は灯されている

 いきなり部屋のふすまが勢いよく開き、部屋に波音が入って来る

 波音は味噌汁と麦飯を持っている


波音「(大きな声で)起きるのだ一世!!!!我が軍の初勝利を祝した宴を開くぞ!!!!」


 波音は味噌汁と麦飯を布団の上で横になった一世の隣に置こうとする


波音「(味噌汁と麦飯を布団の上で横になった一世の隣に置きながら)お主の活躍がなければ今日の戦は・・・」

一世「(波音が置こうとしていた味噌汁と麦飯を手で払い落として大きな声で)調子に乗るなクソ女!!!!」


 部屋の畳に味噌汁と麦飯が散らばる

 一世は立ち上がる


一世「(大きな声で)俺は何でも屋じゃねえんだよ!!!!分かったら早く死にやがれ!!!!俺はてめえの首にしか興味がねえんだ!!!!」


 少しの沈黙が流れる


波音「そうであったな・・・一世よ、無理強いしてすまなかった。(少し間を開けて)私はそなたの友になりたかったのだ」

一世「俺にとっちゃあんたは歩く銭でしかねえ。だからおかしな考えは捨てろ」


 再び沈黙が流れる


波音「歩く銭から、銭以外を得ようとは思わぬのか?」

一世「金がありゃあ良いんだよ」

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