Chapter6卒業編♯36 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
登場人物
滅びかけた世界
ナツ 16歳女子
ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。
スズ 15歳女子
マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。
老人 男
ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・
中年期の明日香 女子
老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。
七海 女子
中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。
老人と同世代の男兵士1 男子
中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。
レキ 女子
老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。
老人と同世代の男兵士2 男子
中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。
滅んでいない世界
貴志 鳴海 18歳男子
波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。
早乙女 菜摘 18歳女子
波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。
白石 嶺二 18歳男子
波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。
天城 明日香 18歳女子
波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。
南 汐莉15歳女子
波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。
一条 雪音18歳女子
波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・
柊木 千春女子
Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。
三枝 響紀15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。
永山 詩穂15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。
奥野 真彩15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。
早乙女 すみれ45歳女子
菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。
早乙女 潤46歳男子
菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。
神谷 志郎43歳男子
波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。
荻原 早季15歳女子
Chapter5に登場した正体不明の少女。
貴志 風夏24歳女子
鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。
一条 智秋24歳女子
雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。
双葉 篤志18歳男子
波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。
有馬 勇64歳男子
波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。
細田 周平15歳男子
野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。
貴志 紘
鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。
貴志 由香里
鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。
神谷 絵美29歳女子
神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。
波音物語に関連する人物
白瀬 波音23歳女子
波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。
佐田 奈緒衛17歳男子
波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。
凛21歳女子
波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。
明智 光秀55歳男子
織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。
織田 信長48歳男子
天下を取るだろうと言われていた武将。
一世 年齢不明 男子
ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。
Chapter6卒業編♯36 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
◯1389薬師の家/和室(500年前/深夜)
とても狭い薬師の家の和室
畳の上に布団が敷かれており、凛がその布団で眠っている
波音が凛の側で座っている
部屋の隅に行灯が二つある
部屋の明かりは行灯二つのみ
外では鈴虫が鳴いている
波音は凛の胸の近くにそっと顔を埋める
波音「(凛の胸の近くに顔を埋めたまま)凛・・・死んではならぬ・・・死んではならぬぞ・・・」
時間経過
凛が目を覚ます
凛「うっ・・・な、波音様・・・?ここは・・・一体・・・」
波音「(体を起こして)り、凛!!無事でおったか・・・今度ばかりはお主の命も潰えてしまったのかと思ったぞ・・・」
凛「眠っていただけでございますよ。私の死が訪れるのはもう少し先のようです、波音様」
深く息を吐く波音
波音「永遠の眠りも覚悟したが・・・奇跡が起きたようだな・・・(少し間を開けて)凛よ・・・そなたほど心配をかけさせる女中は滅多におらぬぞ・・・」
凛「も、申し訳ございませぬ・・・波音様・・・」
時間経過
変わらず布団の上で横になったままの凛
波音も変わらず凛の側で座っている
話をしている波音と凛
凛「三人の肉体が滅びても、いずれ魂たちは再会する。とてもとても美しいことでございましょう?それこそ奇跡のような確率なのに・・・(少し間を開けて)波音様、この願い、聞き入ってもらえませんか?」
波音「しかしながら魂のみの再会では・・・まことの意味で再び巡り会ったとは言えぬぞ・・・」
凛「それでも・・・それでも良いのです。我らの魂を持つ者が、我らの行く末を定めてくださります」
少しの沈黙が流れる
波音「凛よ、何故輪廻にこだわるのだ?お主は幸福に満足しておらぬのか?」
凛「そうではございませぬ・・・波音様、我らが輪廻するのは運命ですゆえ・・・」
時間経過
畳の上にはたくさんの薬草が置いてある
波音が初老の薬師の首に日本刀を当てている
波音が使っている日本刀は、◯1248、◯1250、◯1252で千春が波音博物館で見ていた物であり、滅びかけた世界の老人が盗んだ日本刀と同じ物
波音の後ろに立っている凛
薬師は波音たちに背中を向けている
薬師「(背中を向けたまま)こ、殺さないでくれ!!」
波音は薬師の背中に向かって日本刀を振り上げる
凛「(大きな声で)波音様!!!」
凛の声で波音の動きが止まる
波音の日本刀は振り上げられたままの状態
凛「戦でもない時に・・・無闇に命を奪ってはなりませぬ。このお方は、私めを救ってくださったのでしょう?」
波音「(日本刀を薬師の背中に向かって振り上げたまま)今はそのようなことを気にかけている場合ではない!」
凛「お止めください波音様・・・このお方を殺めなくても私たちは死にませぬ・・・」
少しの沈黙が流れる
波音「(日本刀を薬師の背中に向かって振り上げたまま)仕方あるまい・・・」
波音は日本刀の持ち方を変え、薬師の背中に峰打ちをする
薬師は意識を失いその場に倒れる
日本刀を鞘に収める波音
波音「峰打ちだ、これで良いか?」
凛「はい!!」
◯1390音羽川(500年前/日替わり/早朝)
日が登り始めている
波音、凛、そして薬草が詰まった風呂敷を乗せた馬が川沿いを走っている
波音たちを乗せた馬が走っている場所は◯1371で波音、奈緒衛、凛が水遊びをした場所の近く
音羽川はとても長く自然が多い
音羽川の周囲は森になっている
音羽川の流れは穏やか
音羽川の近くには一軒の民家がある
民家は◯1373で波音、奈緒衛、凛が寝泊まりしたところで、民家の周囲には明智光秀の旗印がたくさん立てられている
民家の近くには数多くの馬が木に繋がれている
波音は繋がれた明智軍の馬のことを視認する
波音「(馬を走らせながら 声 モノローグ)既に光秀と家臣たちは山の中か・・・」
◯1391波音高校体育館(日替わり/放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
体育館にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
体育館には鳴海たちの他にもたくさんの生徒がいる
ステージの上に立っている鳴海、明日香、汐莉、雪音
鳴海、明日香、汐莉、雪音は朗読劇用の波音物語を持っている
鳴海たちの前にはマイクスタンドが置いてある
菜摘はパイプ椅子に座ってステージを見ている
菜摘は朗読劇用の波音物語を持っている
嶺二、響紀、詩穂、真彩は朗読劇用の波音物語を持って上手側のステージの袖に立っている
鳴海、明日香、汐莉、雪音の後ろにはリードギター、サイドギター、ベース、ドラム、その他機材が置いてある
マイクを持った生徒会の二年生男子生徒がステージの近くにいる
鳴海、明日香、汐莉、雪音がステージの上で朗読の練習を行っている
鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら 声 モノローグ)俺は・・・俺たちは・・・脇目も振らず波音物語に向き合い続けた・・・」
明日香「(朗読劇用の波音物語を読みながら)光秀は波音たちが緋空浜を目指していると見越し、山へ潜行していた。(少し間を開けて)時間はない。波音は先回りをして奈緒衛の元へ急いだ」
鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら)凛は無事なのか?」
雪音「(朗読劇用の波音物語を読みながら)うむ、何とか一命は取り留めたが・・・」
汐莉「(朗読劇用の波音物語を読みながら)申し訳ございません・・・な、波音様・・・奈緒衛様・・・」
鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら)何故凛が謝るんだ」
汐莉「(朗読劇用の波音物語を読みながら)少々・・・体が疲れて・・・」
雪音「(朗読劇用の波音物語を読みながら)川辺で休むと良い、凛」
汐莉「(朗読劇用の波音物語を読みながら)はい・・・」
生徒会の二年生男子生徒「(鳴海に向かって)貴志先輩、合同朗読劇の尺をもう少し減らしてください」
鳴海「減らせだと?」
生徒会の二年生男子生徒「は、はい。他の部よりも文芸部と軽音部の時間が長いので・・・あ、あと、一年生と二年生の合唱を4時前までに終わらせてくれって安西先生に頼まれて・・・」
嶺二「(生徒会の二年生男子の話を遮って)俺らだって急いで朗読劇をやってるんだよ。分かったらどっか行きやがれ生徒会」
生徒会の二年生男子生徒「き、決められた時間をオーバーしたら僕が怒られるんですよ!!」
嶺二「生徒会ってのは一般生徒に怒って先生から怒られるのが仕事だろーが」
生徒会の二年生男子生徒「ぼ、僕は三年生の送る会の準備がしたいのであって、あなた方問題児のように怒られたいわけじゃないんです!!」
嶺二「誰だよ問題児って」
生徒会の二年生男子生徒「白石先輩と貴志先輩のことですよ!!」
顔を見合わせる鳴海と嶺二
少しの沈黙が流れる
明日香「響紀、あの子あんたと同じ生徒会なんでしょ?」
響紀「(上手側のステージの袖から出て来て)そうですね」
生徒会の二年生男子生徒「さ、三枝!!君もこの人たちを説得してくれ!!」
響紀「お断りします」
生徒会の二年生男子生徒「こ、断って良い立場にいる人間じゃないだろ!!」
響紀「私は生徒会メンバーですが、生徒会という立場に興味はありません。なのでクビにしたきゃどうぞしてください。特に気にしないので。ああ、良かったら私の仕事を引き継いでもらえませんか?正直めんどくさいんですよね、学校行事の準備って」
再び沈黙が流れる
詩穂「生徒会を物ともしない響紀くん強過ぎる・・・」
真彩「本人は気にしてないけど誰よりもめんどーな性格してるよ、あいつ・・・」
少しの沈黙が流れる
生徒会の二年生男子生徒「(イライラしながら)3分です!!3分きっかり短くしてください!!」
生徒会の二年生男子生徒はイライラしながらステージから離れて行く
雪音「どうするの、総合演出兼副部長さん」
鳴海「菜摘に聞くしかない・・・菜摘!!こっちに来てくれ!!」
菜摘はパイプ椅子から立ち上がり、鳴海たちのところへ向かう
ステージの上に登って来る菜摘
菜摘「どうしたの?」
鳴海「生徒会のクズ野郎が朗読劇の尺をあと3分削れって言ってるんだ」
菜摘「クズ野郎?」
鳴海「く、クズ野郎は言い過ぎたな。生徒会の・・・パン粉野郎が朗読劇の尺を・・・」
菜摘「(鳴海の話を遮って)野郎もダメだよ、鳴海くん」
再び沈黙が流れる
鳴海「せ、生徒会の・・・(少し間を開けて)は、はちゃめちゃに良い奴が朗読劇の尺をあと3分削ってくれって言い出して来やがったんだ。も、もちろんはちゃめちゃに良い奴なんだけどさ、でもそいつが言ってることははちゃめちゃにおかしいと思うんだよ」
汐莉「何故か鳴海先輩もはちゃめちゃにおかしくなってますね」
鳴海「お、俺がおかしいのは語彙力が・・・ってそんなことよりもどうすれば良いか教えてくれ、菜摘」
菜摘「削れって指示が出たんだから、出来ることは一つしかないんじゃないかな・・・」
鳴海「やっぱりそうか・・・」
明日香「何なの?出来ることって」
鳴海「台本のカットだ」
嶺二「(驚いて)ま、マジかよ!?」
菜摘「それしかないよ。時間を気にしながら朗読をするのは危ないし・・・」
真彩「い、今からカットなんて出来るんすか・・・?」
鳴海「出来なくてもやるしかないんだ」
菜摘「うん」
雪音「削るなら序盤の方で良いんじゃない。無駄が多いから」
嶺二「無駄って言うなよ」
雪音「波音たちの雑談はストーリーとほとんど関係ないじゃん。だから削っちゃおうよ」
少しの沈黙が流れる
菜摘「分かった、今日帰ったら書き直すね。また明日新しい台本を印刷して持って来る」
雪音「そう。じゃあよろしく」
◯1392早乙女家に向かう道中(放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
菜摘を家に送っている鳴海
部活帰りの学生がたくさんいる
鳴海と菜摘はマフラーと手袋をしている
鳴海は紺色の、菜摘は白色のマフラーと手袋をしている
マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている
鳴海と菜摘は話をしている
鳴海「菜摘、俺にも手伝わせてくれ。一晩で書き直しと印刷をするのは大変だろ」
菜摘「ううん、大丈夫だよ」
鳴海「夏休みに一から波音物語の台本を作った時は、俺も手伝ったじゃないか。なのにどうして今はダメなんだ」
菜摘「本番前に鳴海くんを疲れさせるわけにはいかないもん」
鳴海「菜摘はそんな小さなことを気にしてたのか」
菜摘「ち、小さくないよ!!年度末試験だってあるのに!!」
鳴海「良いから手伝わせてくれ、菜摘」
菜摘「で、でも・・・」
鳴海「そうだ、これからは、でもをふわとろきな粉揚げパンが食べたいに変えないか?」
菜摘「でもは接続詞だし、鳴海がよく使ってる汚い言葉とは全然違う意味だよ・・・」
鳴海「ふわとろきな粉揚げパンが食べたいって言いたくなきゃ、俺に手伝わせろ」
菜摘「えー・・・」
少しの沈黙が流れる
菜摘「じゃ、じゃあ・・・少しだけ手伝ってもらおうかな・・・」
鳴海「おう」
◯1393早乙女家菜摘の自室(放課後/夜)
綺麗な菜摘の部屋
菜摘の部屋にいる鳴海と菜摘
菜摘の部屋にはベッド、低いテーブル、勉強机、パソコン、プリンターなどが置いてある
ベッドはマットレス、掛け布団、枕が片付けられ、骨組みだけの状態になっている
テーブルの上には朗読劇用の波音物語、パソコン、菜摘が創作に使っているノートが置いてある
床に座って話をしている鳴海と菜摘
鳴海は朗読劇用の波音物語をパラパラとめくっている
鳴海「(朗読劇用の波音物語をパラパラとめくりながら)しかし削るのも簡単じゃないな・・・」
菜摘「そうだね。雪音ちゃんはストーリーに関係ないって言ってたけど、波音さんたちのやり取りは三人の関係を表す大切な場面になってるし・・・」
鳴海「(朗読劇用の波音物語をパラパラとめくりながら)もっと具体的にセリフで表現するのはどうだ?」
菜摘「セリフってどんな?」
鳴海「(朗読劇用の波音物語をパラパラとめくりながら)家族とか・・・勝利とか・・・敗北とか・・・」
菜摘「それだと直接的過ぎない・・・?」
鳴海「(朗読劇用の波音物語をパラパラとめくりながら)まあ・・・直接的ではあるが・・・」
少しの沈黙が流れる
朗読劇用の波音物語を閉じる鳴海
鳴海「勝利とか敗北は保留として・・・家族はどうだ?実際の歴史でも波音たちは家族みたいな間柄だったんじゃないのか?」
菜摘「波音さんたちは・・・きっと家族よりも家族だったと思う・・・(少し間を開けて)あの時代ってお互いの存在が全てだったんじゃないかな・・・」
鳴海「それなら多少説明口調でも、事実を伝えるために家族って単語を使った方が良いと思うぞ」
再び沈黙が流れる
菜摘「私分かったよ、鳴海くん」
鳴海「何が分かったんだ?」
菜摘「キーワードは家族、なんだね」
鳴海「そ、そうだな・・・家族が・・・キーワードだ・・・」
◯1394森/小川(500年前/昼過ぎ)
◯1390の続き
快晴
たくさんのセミが鳴いている
森の中に小さな小川がある
森の中にはたくさんの大きな木が育っている
大木にもたれて話をしている波音と奈緒衛
凛は川辺で眠っている
一頭の馬の手綱が波音たちの近くの木に結ばれている
薬草を積んだ馬が倒れている
薬草を積んだ馬は腹に斬り傷があり、血を流している
波音「凛がどこまで保つか・・・不安だ・・・」
奈緒衛「薬草があるではないか」
波音「この暑さでは薬草も使い物にならなくなるだろう・・・」
奈緒衛「では薬草が使えるうちに緋空に辿り着くぞ、波音」
波音「お主が思ってるよりも緋空は先なのだ・・・」
奈緒衛「でも確実に近付いているだろ?」
少しの沈黙が流れる
波音「奈緒衛よ・・・本当のことを申すと私は・・・」
波音は何か言いかけていたが黙る
奈緒衛「は、話を続けてくれよ!!気になるだろ!!」
波音「た、大した話ではないのだ」
奈緒衛「そ、そうなのか?深刻なことかと思っていたぞ」
波音「し、深刻ではない。私個人の話だからな」
奈緒衛「波音、何を言いかけていたのか教えてくれよ。俺たち家族だろ?」
波音「家族、か・・・」
◯1395◯811の回想/社殿/波音の寝室縁側(500年前/朝)
外では雨が降っている
波音の部屋は狭い和室
波音の部屋には畳まれた布団が置いてある
和室の縁側に座っている波音、奈緒衛、凛
和室の縁側からは中庭が見える
中庭には一本の松の木が生えている
中庭には水たまりが出来ている
話をしている波音、奈緒衛、凛
凛「家族なんてろくなものではないと、彼はそう申していました」
奈緒衛「彼?そいつは男なのか?」
凛「はい。奈緒衛様と同じ年頃の青年でございます」
◯1396回想戻り/森/小川(500年前/昼過ぎ)
◯1390、◯1340の続き
快晴
たくさんのセミが鳴いている
森の中に小さな小川がある
森の中にはたくさんの大きな木が育っている
大木にもたれて話をしている波音と奈緒衛
凛は川辺で眠っている
一頭の馬の手綱が波音たちの近くの木に結ばれている
薬草を積んだ馬が倒れている
薬草を積んだ馬は腹に斬り傷があり、血を流している
奈緒衛「これだけ苦楽を共にしているのだぞ、家族も同然だ」
波音「そなたは・・・私や凛の家族で嬉しいのか?」
奈緒衛「あ、ああ!!とても嬉しいよ!!」