Chapter6卒業編♯35 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
登場人物
滅びかけた世界
ナツ 16歳女子
ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。
スズ 15歳女子
マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。
老人 男
ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・
中年期の明日香 女子
老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。
七海 女子
中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。
老人と同世代の男兵士1 男子
中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。
レキ 女子
老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。
老人と同世代の男兵士2 男子
中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。
滅んでいない世界
貴志 鳴海 18歳男子
波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。
早乙女 菜摘 18歳女子
波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。
白石 嶺二 18歳男子
波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。
天城 明日香 18歳女子
波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。
南 汐莉15歳女子
波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。
一条 雪音18歳女子
波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・
柊木 千春女子
Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。
三枝 響紀15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。
永山 詩穂15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。
奥野 真彩15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。
早乙女 すみれ45歳女子
菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。
早乙女 潤46歳男子
菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。
神谷 志郎43歳男子
波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。
荻原 早季15歳女子
Chapter5に登場した正体不明の少女。
貴志 風夏24歳女子
鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。
一条 智秋24歳女子
雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。
双葉 篤志18歳男子
波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。
有馬 勇64歳男子
波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。
細田 周平15歳男子
野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。
貴志 紘
鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。
貴志 由香里
鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。
神谷 絵美29歳女子
神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。
波音物語に関連する人物
白瀬 波音23歳女子
波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。
佐田 奈緒衛17歳男子
波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。
凛21歳女子
波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。
明智 光秀55歳男子
織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。
織田 信長48歳男子
天下を取るだろうと言われていた武将。
一世 年齢不明 男子
ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。
Chapter6卒業編♯35 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
◯1368貴志家リビング(日替わり/朝)
外は晴れている
時刻は七時半過ぎ
テーブルの上に置き手紙がある
置き手紙には“冷蔵庫の空きがないので急いでチョコを食べてください”と書かれている
リビングのテレビではニュースが流れている
制服姿で椅子に座って置き手紙見ている鳴海
鳴海「(置き手紙を見ながら小声でボソッと)あ、あんなに可愛いチョコを冷蔵庫の空きがないからという理由だけで食べれるわけないだろ・・・」
◯1369波音高校校門(朝)
たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く
校門の前で部員募集を行っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている
鳴海たちは通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、響紀、詩穂、真彩はマフラーと手袋を身につけている
鳴海と嶺二は紺色の、菜摘、汐莉、響紀、詩穂、真彩は白色のマフラーと手袋を身につけている
マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている
雪音だけ嶺二から貰ったマフラーと手袋をしていない
雪音の指先が赤くなっている
鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)文芸部です!!!!部員を集めてます!!!!」
菜摘「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)チラシだけでも良かったら!!!!」
明日香「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)お願いしまーす!!!!」
嶺二「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)特別教室の四で待ってるぞー!!!!」
汐莉「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)来年度私と一緒に文芸部の活動をしてくれる方を募集中です!!!!」
鳴海たちの前を通りかかる生徒たちは、文芸部のことを気に留めず周りの生徒たちと楽しそうに話をしながら校舎内へ入って行く
◯1370波音高校特別教室の四/文芸部室(午前中)
文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある
教室の窓際で話をしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
雪音「部員募集、部誌制作、朗読劇の練習以外にすることはないの?」
菜摘「そうだなぁ・・・」
考え込む菜摘
明日香「まず文芸部には他のことをする余裕がないと思うんだけど・・・」
鳴海「その通りだ」
嶺二「雪音ちゃん、朗読劇の本番は三月の一日なんだぞ。分かってんのかよお前」
雪音「それが何?」
嶺二「何って・・・あのな・・・俺ですらふざけずに文芸部の活動に参加してるってのにてめーは・・・」
雪音「嶺二、朗読劇の練習で昭和のラブホの色を再現してたよね?あれってふざけてたんじゃないの?」
嶺二「ふ、ふざけてるのはてめーの頭だろーが!!つか何で雪音ちゃんは昭和のラブホの色を知ってんだよ!!」
雪音「え、知ってるなんて言ってないけど?」
嶺二「ならピンクの照明をラブホの色で例えんじゃねえ!!」
少しの沈黙が流れる
明日香「雪音・・・あんた最近おかしくない・・・?」
雪音「同じことを繰り返してばっかでおかしくなっちゃった」
嶺二「(小声でボソッと)元からおかしーんだよこいつは・・・」
再び沈黙が流れる
菜摘「でも確かに今の文芸部は新しいことを何もしてないよね」
鳴海「社会科見学は新しいことにならないのか?」
菜摘「社会科見学って波音博物館へ行ったこと?」
鳴海「ああ」
菜摘「もう終わった行事は新しい活動とは言えないよ、鳴海くん。もっと違うことじゃなきゃ」
嶺二「交換日記でもやろーぜ」
明日香「私たちはバカップルか・・・」
菜摘「明日香ちゃんがツッコミを入れるなんてレアだね」
明日香「頼むから私がツッコミせざるを得ない状況にしないで・・・」
嶺二「汐莉ちゃんが日記を書いてるから良いアイデアだと思ったんだけどな・・・」
明日香「日記を書くのは汐莉だけで十分でしょ」
菜摘「じゃあ雪合戦は?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「あー・・・な、何で雪合戦なんだ?菜摘」
菜摘「水泳部って冬は陸上競技をやったりするから、それと同じ感覚で私たちは冬に運動をしようかなぁって。しかも雪合戦だから楽しく運動が出来るよ」
鳴海「それは・・・(少し間を開けて)ぼ、ボケてるんだよな?」
菜摘「ううん」
鳴海「ボケてないのか・・・」
菜摘「鳴海くん、雪合戦って楽しいよ」
鳴海「た、楽しいだろうけどさ・・・」
明日香「18で雪合戦って・・・」
菜摘「えっ?明日香ちゃんは雪合戦しないの?」
明日香「(呆れて)するわけないでしょ・・・」
菜摘「そうなんだ・・・嶺二くんと雪音ちゃんは?」
雪音「寒いからしない」
嶺二「俺も雪合戦はしねーけど、人んちにある雪だるまを勝手に破壊してるぜ!」
鳴海「おい」
嶺二「何だよ?」
鳴海「最低最悪過ぎるだろお前」
嶺二「雪だるまの顔ってなんかうぜーじゃねーか!!僕!!雪だるまの妖精雪太郎!!よろしくね!!みてーなオーラが出てるから目にした瞬間蹴り飛ばしたくなるんだよ!!」
再び沈黙が流れる
菜摘「(残念そうに)嶺二くんが雪を持って暴走するかもしれないから雪合戦は無しだね・・・」
明日香「だいたい雪が降ってないのにどうやって雪合戦をするわけ?」
菜摘「えーっと・・・(少し間を開けて)雪合戦はやめて水合戦をやろうよ!!」
◯1371音羽川(500年前/日替わり/夕方)
夕日が沈みかけている
音羽川はとても長く自然が多い
音羽川の周囲は森になっている
音羽川の流れは穏やか
音羽川の近くには一軒の民家がある
二頭の馬の手綱が音羽川の近くの木に結ばれている
音羽川で水遊びをしている波音、奈緒衛、凛
波音、奈緒衛、凛がずぶ濡れになっている
奈緒衛が川の水を蹴り上げる
菜摘「(声)緋空浜でも良いんだけど・・・」
奈緒衛が蹴り上げた水は凛にかかる
凛は頭から水を被る
菜摘「(声)出来れば自然の多い川にみんなで集まって・・・」
両手で川の水をすくい奈緒衛にかける波音
顔が濡れないように手で守っている奈緒衛
顔を手で守りながらバシャバシャと水しぶきを上げる奈緒衛
菜摘「(声)水をかけ合ったりするのはどうかな・・・?」
凛が川の水をすくい、奈緒衛の方へ水を投げる
奈緒衛の顔面に水がかかる
夕日が沈んでいく中、波音、奈緒衛、凛は楽しそうに川で遊んでいる
◯1372波音高校特別教室の四/文芸部室(午前中)
文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある
教室の窓際で話をしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
嶺二「そ、それってよ・・・まるで・・・」
鳴海「波音たちじゃないか・・・」
菜摘「うん。私、ああいうふうに遊ぶのも楽しいと思うんだ」
菜摘「菜摘、水遊びなんかしてまた体調を崩したらどうするの?」
少しの沈黙が流れている
鳴海「真夏ならともかく、二月にやることじゃないだろ。菜摘」
菜摘「そう・・・だね・・・(少し間を開けて)じゃ、じゃあさ、旅行はどう?」
◯1373和室/民家(500年前/夜)
◯1371と同日
民家の狭い和室に布団を敷き、横になっている波音、奈緒衛、凛
和室の隅には波音たちの荷物が小さくまとめてある
布団の上に横になりながら、話をしている波音、奈緒衛、凛
菜摘「(声)外国でも・・・国内でも良いから・・・」
目を瞑る波音と奈緒衛
菜摘「(声)みんなで泊まりの旅行をするの」
凛は子守唄を歌い始める
◯1374音羽川(500年前/日替わり/昼)
快晴
音羽川はとても長く自然が多い
音羽川の周囲は森になっている
音羽川の流れは穏やか
川沿いを歩いている波音、奈緒衛、凛
波音と奈緒衛がそれぞれ一頭ずつ馬を連れている
一頭の馬には荷物が乗せてある
楽しそうに話をしている波音たち
菜摘「(声)いっぱいお喋りをして・・・」
時間経過
河原に座っている波音、奈緒衛、凛
二頭の馬の手綱が音羽川の近くの木に結ばれている
一頭の馬には荷物が乗せてある
波音たちは楽しそうに喋りながら干し芋を食べている
菜摘「(声)いっぱい美味しいものを食べて・・・」
夜になっている
川の側の草原で眠っている奈緒衛
奈緒衛が眠っているところから少し離れた場所で雑草の稲を一本ちぎる波音と凛
波音と凛は雑草の稲を持って静かに奈緒衛に近付く
奈緒衛はいびきをかいている
波音は奈緒衛の左の鼻の穴にそーっと稲を入れる
波音と同じように奈緒衛の右の鼻の穴にそーっと稲を入れる凛
くしゃみをして飛び起きる奈緒衛
波音と凛は奈緒衛を見て笑っている
悪戯されたことに怒っている奈緒衛
菜摘「(声)いっぱい遊んで・・・」
◯1375音羽川(500年前/日替わり/夜)
音羽川はとても長く自然が多い
音羽川の周囲は森になっている
音羽川の流れは穏やか
夜風で草木がなびいている
月が音羽川に反射している
二頭の馬の手綱が音羽川の近くの木に結ばれている
一頭の馬には荷物が乗せてある
音羽川にたくさんの蛍が飛んでいる
凛が蛍を捕まえようとしている
凛のことを見ながら話をしている波音と奈緒衛
凛が蛍を捕まえ、波音、奈緒衛に見せに来る
川の水で濡れている凛
凛は両手を包んでいる
菜摘「(声)文芸部と軽音部でいっぱい思い出を作るんだ」
ゆっくり両手を開く凛
凛の両手を覗き込む波音、奈緒衛、凛
凛の手の中には一匹の小さな蛍がいる
凛の手の中にいる蛍は黄緑色に光っている
凛の手の中にいる蛍を見ている波音、奈緒衛、凛
波音たちは凛の手の中にいる蛍を見ながら話をしている
◯1376森(500年前/日替わり/昼)
快晴
山の道を進んでいる波音、奈緒衛、凛
地面には木漏れ日が出来ている
森の中にはたくさんの大きな木が育っている
山の道は険しく、太く大きな木の根が地面から盛り上がっている
波音たちは坂を登っている
凛のペースに合わせてゆっくり歩いている波音と奈緒衛
波音と奈緒衛がそれぞれ一頭ずつ馬を連れている
一頭の馬には荷物が乗せてある
二頭の馬は器用に山を登って行く
波音たちは楽しそうに話をしている
鳴海「(声)緋空浜を目指した波音たちのようにか・・・?」
菜摘「(声)波音さんたちは・・・」
◯1377波音高校特別教室の四/文芸部室(午前中)
文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある
教室の窓際で話をしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
菜摘「導かれたんだよ」
◯1378森(500年前/日替わり/夜)
森の中にいる波音、奈緒衛、凛
森の中にはたくさんの大きな木が育っている
太く大きな木の根が地面から盛り上がっている
波音たちはたくさんの大きな木に囲まれている
大木にもたれながら話をしている波音たち
二頭の馬の手綱が波音たちの近くの木に結ばれている
一頭の馬には荷物が乗せてある
波音「もしや、世のことわりとは、我らの死後に起きることなのではないか?」
凛「分かりませぬ波音様・・・」
奈緒衛「今後明智光秀の謀反を超えるような事件が起きるとは思えないが・・・」
波音「我らは・・・何かに導かれておるのかもしれぬな・・・」
◯1379波音高校特別教室の四/文芸部室(午前中)
文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある
教室の窓際で話をしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
鳴海「何が波音たちを緋空浜に導いたんだ?」
菜摘「きっと・・・奇跡じゃないかな・・・」
◯1380森(500年前/夜)
森の中にいる波音、奈緒衛、凛
森の中にはたくさんの大きな木が育っている
太く大きな木の根が地面から盛り上がっている
波音たちはたくさんの大きな木に囲まれている
大木にもたれながら話をしている波音たち
二頭の馬の手綱が波音たちの近くの木に結ばれている
一頭の馬には荷物が乗せてある
凛「導き・・・でございますか・・・?」
波音「ああ」
奈緒衛「ま、待ってくれ。お、俺たちは奇跡にでもみちび・・・」
凛「(奈緒衛の話を遮って)き、貴志鳴海でございます!!奈緒衛様!!波音様!!あの貴志鳴海という若者が世のことわりと結ばれておるはずです!!(少し間を開けて)波音様が祈ったように、貴志鳴海は奇跡に導かれたのでしょう!!」
◯1381波音高校特別教室の四/文芸部室(午前中)
文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある
教室の窓際で話をしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
嶺二「なら俺らが波音物語を朗読するのも、奇跡に導かれたってわけだな」
明日香「確かに縁は感じるけど・・・でもそれを奇跡って呼んで良いの?」
嶺二「間違いねーぜ明日香。きっと強い奇跡がついてやがるんだ」
鳴海「そうだとしたら今までの出来事も偶然じゃなかったのかもな」
菜摘「偶然なんかじゃないよ、鳴海くん」
雪音「そう、私たちの人生はなるべくしてなってる。歴史を増やして・・・勝利者と負け犬を分けて・・・奇跡が不平等に微笑んで・・・」
嶺二はチラッと雪音のことを見る
◯1382森(500年前/夜)
森の中にいる波音、奈緒衛、凛
森の中にはたくさんの大きな木が育っている
太く大きな木の根が地面から盛り上がっている
波音たちはたくさんの大きな木に囲まれている
大木にもたれながら話をしている波音たち
二頭の馬の手綱が波音たちの近くの木に結ばれている
一頭の馬には荷物が乗せてある
奈緒衛「本当に何者なんだ・・・貴志鳴海は・・・」
少しの沈黙が流れる
凛「やはり彼には奇跡がついているのかと・・・」
波音「それはまことに面白そうな男だな・・・」
奈緒衛「俺たちの行動と・・・凛の予知と・・・世のことわりと・・・貴志鳴海は・・・偶然ではなく結ばれているのか?」
波音「偶然などあるまい。そうであろう?凛よ」
凛「波音様・・・奈緒衛様・・・私たちの行く末が偶然であっても・・・意図的であっても・・・この運命の流れは変わらないと思います。(少し間を開けて)ただ・・・如何せんこのような現象は初めてなので・・・これまでと違って断片的で曖昧なのです」
波音「お主でもはっきりとした予知が出来ないほどの情報量なのか・・・」
◯1383波音高校特別教室の四/文芸部室(午前中)
文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある
教室の窓際で話をしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
鳴海「お、俺たちは文芸部の活動ついて喋ってたんじゃなかったのか・・・?」
菜摘「あっ、そうだったね。ごめん、脱線しちゃった」
明日香「菜摘は文芸部と軽音部で旅行がしたいって言ってるんでしょ?」
菜摘「そうそう!!」
嶺二「テキサスかー・・・」
明日香「(呆れて)パリだけどね・・・」
嶺二「そーいや旅行先はフランスになっちまったのか・・・」
雪音「テキサスよりは楽しそうじゃん」
嶺二「テキサスには男のロマンがたっくさん・・・」
鳴海「(嶺二の話を遮って)ロマンがあったのは開拓時代だろ」
嶺二「いつだよそれ、未来の話か?」
明日香「アホなのあんた」
嶺二「大昔って一周回って未来っぽいよな」
鳴海「ああ。特に石器時代の道具は未来感が・・・ってそんなわけあるか」
明日香「アホでしょ二人とも」
鳴海「俺は違うぞ」
嶺二「俺だってちげーよ」
少しの沈黙が流れる
雪音「嶺二と鳴海は波高と一緒にアホからも卒業出来ると良いね」
鳴海「し、辛辣なコメントだな・・・」
雪音「だってアホって周りに迷惑をかけるじゃん」
明日香「そうね、フランスに行く前にアホと馬鹿は治した方が良いかも」
菜摘「旅行はちょっくらいお馬鹿さんと行く方が楽しいよ」
鳴海「な、菜摘・・・い、今のはフォローしたつもりなのか・・・」
菜摘「うん」
再び沈黙が流れている
嶺二「文芸部と軽音部のガールズは今やほぼ全員が俺と鳴海に対して手厳しーよな」
鳴海「全くだ・・・」
菜摘「私は手厳しくなんかしてないと思うけどなぁ・・・」
明日香「むしろ甘々でしょ菜摘は」
菜摘「そ、そう・・・?」
明日香「あんたがアホを甘やかしてるんだからね」
鳴海「お、俺は別に甘やかされてないぞ」
明日香「どうだか」
雪音「甘やかされてる男って自覚がないよね」
嶺二「おっ、まさに鳴海のことじゃねーか」
明日香「嶺二もでしょうが・・・」
鳴海「そ、そうだ。俺が甘やかされてるなら嶺二も同罪だ!!」
嶺二「お、俺はちげーって!!」
菜摘「私、鳴海くんのことも嶺二くんのことも甘やかしてないよ・・・」
明日香「菜摘、あんたがそんなんだからダメなの」
菜摘「あ、明日香ちゃんだって響紀ちゃんのことを甘やかしてるじゃん!!」
鳴海「(驚いて)な、菜摘が・・・明日香に言い返しやがった・・・」
明日香「(大きな声で)あ、甘やかしてなんかないし!!!」
鳴海「(小声でボソッと)明日香も俺と同じくらい嘘が下手だよな・・・」
明日香「(大きな声で)だ、だいたい何なのよあの子は!!!い、いつも私にくっついて来て!!!ちょ、ちょっとかっこ可愛いからって調子に乗らないでよ!!!」
菜摘「明日香ちゃん、デレデレだね」
明日香「(大きな声で)で、デレてませんし!!!」
嶺二「分かるぜ明日香。響紀ちゃんは格好良くて、可愛くて、スポーツも、勉強も、音楽も出来るのに、馬鹿でアホだもんな。そりゃあんな子が側にいたらデレるよな。(少し間を開けて)明日香が素直になってくれて俺はうれしーぜ・・・」
明日香「(大きな声で)で、デレてないって言ってるでしょうが!!!というか何で嶺二が嬉しがってるのよ!?!?」
嶺二「そりゃー・・・(少し間を開けて)明日香は俺のダチだからな・・・」
少しの沈黙が流れる
嶺二「学園ドラマの最終回みてーなセリフだったろ!!」
鳴海「そ、そうだな・・・」
菜摘「青春だね青春!!」
嶺二「おう!!」
明日香「どうして私があんたらの青春ごっこに巻き込まれなきゃいけないわけ・・・」
菜摘「だって・・・(少し間を開けて)明日香ちゃんは私の友達だもん・・・」
再び沈黙が流れる
菜摘「ど、どうかな!?今の感じで正解かな!?」
嶺二「さいこーだったぜ!!菜摘ちゃん!!これでこそ王道の青春だ!!」
菜摘「うん!!次は鳴海くんの番だね!!」
鳴海「お、俺までやるのか・・・」
嶺二「あったりめーだろ!!」
鳴海「わ、分かったよ・・・(少し間を開けて)あ、明日香・・・お前は俺のとも・・・」
雪音「(鳴海の話を遮って)友情も良いけど、実際のところ恋愛感情はどうなってるの?」
鳴海「(小声でボソッと)このタイミングで別の話題をぶっ込むなよ・・・」
明日香「れ、恋愛感情って?」
雪音「響紀のことが好きなのか、嫌いなのか、教えてよ」
明日香「き、嫌いではないけど・・・」
雪音「じゃあ好きなんだ?」
明日香「ゆ、雪音はどうなのよ!!」
雪音「私が何?」
明日香「す、好きな人とか・・・いないの・・・?」
少しの沈黙が流れる
菜摘「しゅ、修学旅行の夜に行われる女子会みたい会話だね!!」
鳴海「女子会に俺と嶺二が参加してて良いのか」
菜摘「よ、良くはないけど・・・恋バナは大人数の方が盛り上がる思うし・・・」
明日香「そもそも菜摘は基本大人数が好きなんでしょ」
菜摘「うん!」
明日香「で、雪音の好きな人は?」
雪音「私、フラれたの」
明日香「えっ・・・」
再び沈黙が流れる
菜摘「ゆ、雪音ちゃん!!次があるよ!!」
雪音「もう諦めたから。次とか、そういうのは私に要らない」
明日香「だ、誰に告白したの雪音」
雪音「さあ・・・私・・・誰に告白したんだろ」
少しの沈黙が流れる
鳴海チラッと嶺二のことを見る
嶺二の表情は特に変わっていない
菜摘「フランス旅行で心を癒そう!!」
鳴海「慰安旅行か」
菜摘「そうだね!!」
明日香「い、慰安旅行って部活は会社じゃないんだから・・・」
菜摘「雪音ちゃん、フランスに行って・・・」
雪音「(菜摘の話を遮って)遠くを夢見るのがそんなに楽しいの?どうせ行けないのに、フランスフランスって騒いで・・・(少し間を開けて)夢を見過ぎたり、遠くへ憧れたりするのって、凄くくだらないと思うんだけど?」
菜摘「行けるよ、雪音ちゃん」
雪音「いつ?」
嶺二「大人になったら・・・じゃねーか」
雪音「あなたたちはいつ大人になるの?」
嶺二「いつだろーな」
再び沈黙が流れる
菜摘「歳を重ねた私たちがまた集まれたらそれで良いんだよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「いつかさ・・・同窓会を開かないか?」
明日香「良いけど・・・同窓会って何をするの?」
鳴海「内容はその時決めれば良い。今の俺たちには旅行も、雪合戦も、水遊びも出来そうにないんだ。だから・・・未来で決めたら良い。(少し間を開けて)友達同士でな」
嶺二「な、鳴海・・・」
鳴海「な、何だよ」
嶺二「お前なら学園ドラマらしいセリフを言ってくれると信じてたぜ・・・」
鳴海「お、俺はさっき言い損ねた分を取り返しただけだ」
菜摘「でも最高だったよ、鳴海くん」
鳴海「あ、ありがとう・・・って同窓会はスルーか・・・?」
菜摘「ううん!!やってみたい!!」
明日香「じゃあ開きましょうよ」
鳴海「そうだな」
嶺二「ジジイババアになってから招集しよーぜ!」
鳴海「さすがにジジイになってからは嫌なんだが・・・」
明日香「私もそれは同意」
嶺二「じゃー中年になってから・・・」
明日香「中年って・・・」
鳴海「おっさんとおばはんのボンジュールフランスツアーか・・・」
菜摘「タイトルにあんまり魅力を感じない同窓会だね・・・」
鳴海「あ、ああ・・・」
雪音「同窓会なんて・・・過去に戻りたい大人がする惨めな行動でしょ」
鳴海「そ、そんなふうに言うなよ、一条」
雪音「私に同窓会は・・・」
菜摘「(雪音の話を遮って)要らなくない。雪音ちゃん、要らなくなんかないよ。一度出会ったんだから、離れてもまた再会しなきゃ」
雪音「菜摘たちが私を同窓会に誘うの?」
菜摘「そうだよ。友達だもん」
再び沈黙が流れる
雪音「菜摘・・・この世界は学園ドラマみたいに作られてないって気づいてるよね」
菜摘「うん。ドラマみたいじゃないから、この世界で生きるのは楽しいんだ。お祭りと同じだよ、雪音ちゃん」
◯1384早乙女家に向かう道中(放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
菜摘を家に送っている鳴海
部活帰りの学生がたくさんいる
鳴海と菜摘はマフラーと手袋をしている
鳴海は紺色の、菜摘は白色のマフラーと手袋をしている
マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている
鳴海と菜摘は話をしている
鳴海「同窓会がある限り文芸部の活動もまだまだ続きそうだな、菜摘」
菜摘「そうだね!!」
鳴海「大人になってからみんなで波音博物館にも行きたいんだろ?」
菜摘「うん!!」
鳴海「菜摘にはしたいことがたくさんあるんだな」
菜摘「確かにたくさんあるけど・・・実際に全部出来るかは分からないよ」
鳴海「二人で時間をかけてやっていけば良いじゃないか。必要なら嶺二たちも道連れにしてさ」
少しの沈黙が流れる
菜摘「鳴海くんにはないの・・・?したいこと・・・」
鳴海「俺は・・・菜摘と一緒にいられたら良いんだ」
菜摘「私もだよ。鳴海くんと一緒にいたい」
鳴海は立ち止まる
鳴海に合わせて菜摘も立ち止まる
鳴海「ずっと・・・一緒にいられるだろ・・・?」
再び沈黙が流れる
菜摘「分からないよ・・・鳴海くん・・・私・・・鳴海くんの側にいたいけど・・・」
鳴海「菜摘、約束・・・してくれ。お前は消えないって・・・千春や・・・(少し間を開けて)俺の親のようにはならないって・・・」
少しの沈黙が流れる
菜摘「うん・・・約束するね・・・」
◯1385貴志家鳴海の自室(深夜)
片付いている鳴海の部屋
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラが置いてある
ベッドの上で横になっている鳴海
カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる
鳴海「(声 モノローグ)菜摘が楽しいと言ったこの世界は・・・菜摘に対して冷酷だ」
◯1386森/廃寺(500年前/日替わり/昼)
雨が降っている
森の中の廃寺の縁側で休んでいる波音、奈緒衛、凛
森の中にはたくさんの大きな木が育っている
廃寺は古く、至る所が痛み切っている
二頭の馬の手綱が廃寺の近くの木に結ばれている
一頭の馬には荷物が乗せてある
話をしている波音、奈緒衛、凛
鳴海「(声 モノローグ)この世界は菜摘を不安にさせ、未来に作った楽しみを取り上げようとする」
咳き込む凛
凛は手で口を押さえる
激しく咳き込んでいる凛
鳴海「(声 モノローグ)どうして世界は菜摘を苦しめるんだ・・・」
凛の手には血がついている
凛の手に血がついていることに気づく波音と奈緒衛
慌てて血が手を隠す凛
◯1387森/小川(500年前/日替わり/昼)
快晴
森の中に小さな小川がある
森の中にはたくさんの大きな木が育っている
二頭の馬に小川の水を飲ませている波音と奈緒衛
凛は竹水筒に小川の水を入れている
竹水筒に水を入れ終える凛
凛は立ち上がる
手で口を押さえながら咳をする凛
二頭の馬が顔を上げ、水を飲むのをやめる
鳴海「(声 モノローグ)菜摘の何がいけない?人一倍優しくて、純粋な心を持つあいつを苦しめて一体何になる?」
小川にとても小さな波が立っている
波を見る波音
小川の中に赤い液体が混ざって来る
赤い液体がやってきた方を目で辿る波音
鳴海「(声 モノローグ)この世界は菜摘と真逆だ・・・優しくない・・・」
凛が血を吐いている
小川に流れる赤い液体の正体は凛の血
鳴海「(声 モノローグ)それでも菜摘は・・・」
その場に膝をつく凛
凛の元へ駆け寄る波音と奈緒衛
咳き込みたくさんの血を吐き出す凛
鳴海「(声 モノローグ)一生懸命今を生きてるじゃないか・・・」
凛の体を担ぎ馬に乗せる波音
凛の後ろに乗る波音
再び血を吐く凛
馬の手綱を持つ波音
鳴海「(声 モノローグ)過去を背負って・・・未来に楽しみを作って・・・あいつは頑張ってるのに・・・」
奈緒衛も馬に乗ろうとするが、波音に止められる
波音と凛が乗っている馬は険しい山道を器用に駆けて下って行く
鳴海「(声 モノローグ)何でなんだ・・・」
◯1388貴志家鳴海の自室(深夜)
片付いている鳴海の部屋
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラが置いてある
ベッドの上で横になっている鳴海
カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる
鳴海「菜摘を苦しめて良い理由なんてどこにもないだろ・・・だからこれ以上・・・あいつのことを苦しめないでやってくれよ・・・」