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Chapter6卒業編♯33 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


登場人物


滅びかけた世界


ナツ 16歳女子

ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。


スズ 15歳女子

マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。

ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。


老人 男

ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・


中年期の明日香 女子

老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。


七海 女子

中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。


老人と同世代の男兵士1 男子

中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。


レキ 女子

老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。


老人と同世代の男兵士2 男子

中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。






滅んでいない世界


貴志 鳴海(なるみ) 18歳男子

波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。


早乙女 菜摘(なつみ) 18歳女子

波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。


白石 嶺二(れいじ) 18歳男子

波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。


天城 明日香(あすか) 18歳女子

波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。


南 汐莉(しおり)15歳女子

波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。


一条 雪音(ゆきね)18歳女子

波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・


柊木 千春(ちはる)女子

Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。


三枝 響紀(ひびき)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。


永山 詩穂(しほ)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。


奥野 真彩(まあや)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。


早乙女 すみれ45歳女子

菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。


早乙女 (じゅん)46歳男子

菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。


神谷 志郎(しろう)43歳男子

波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。


荻原 早季(さき)15歳女子

Chapter5に登場した正体不明の少女。


貴志 風夏(ふうか)24歳女子

鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。


一条 智秋(ちあき)24歳女子

雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。


双葉 篤志(あつし)18歳男子

波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。


有馬 (いさむ)64歳男子

波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。


細田 周平(しゅうへい)15歳男子

野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。


貴志 (ひろ)

鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。


貴志 由香里(ゆかり)

鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。


神谷 絵美(えみ)29歳女子

神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。


波音物語に関連する人物






白瀬 波音(なみね)23歳女子

波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。


佐田 奈緒衛(なおえ)17歳男子

波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。


(りん)21歳女子

波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。


明智 光秀(みつひで)55歳男子

織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。


織田 信長(のぶなが)48歳男子

天下を取るだろうと言われていた武将。


一世(いっせい) 年齢不明 男子

ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。

Chapter6卒業編♯33 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


◯1347戦場(500年前/日替わり/昼)

 晴れている

 波音率いる織田軍と武田軍の残党による戦が行われている

 甲冑を身につけ武装し馬に乗った織田軍の武士たちと、同じく甲冑を身につけ武装し馬に乗った武田軍の武士たちが激しく戦っている

 織田軍の武士たちの中には奈緒衛もいる

 波音は兜を被り、馬に乗って薙刀で武田軍の武士を斬り殺している

 奈緒衛は馬に乗って槍で武田軍の武士を刺し殺している

 武田軍も負けじと応戦し、織田軍の武士を殺している

 武田軍の武士たちの後ろには弓矢隊がおり、いつでも矢が放てるように構えている

 武田軍と上杉軍が入り交じり、ごった返しになっている戦場

 怪我を負った馬の鳴き声と武器が甲冑に当たる音が響いている


武田軍武士1「(奈緒衛に向かって槍を構えながら大きな声で)殺してやる!!!!」


 馬に乗った武田軍の武士1が槍を構え奈緒衛に突撃してくる

 武田軍の武士1の槍を避ける奈緒衛

 攻撃を避けた際ににバランスを崩し落馬する奈緒衛


武田軍武士1「(奈緒衛に向かって槍を振りかざし大きな声で)死ね!!!!」


 波音が薙刀を武田軍の武士1に目掛けて投げる

 波音の薙刀は奈緒衛に向かって槍を振りかざしていた武田軍の武士1の腹を貫く

 武田軍武士1は落馬する

 

波音「(馬から降りて)奈緒衛!!大丈夫か!!」


 奈緒衛に駆け寄る波音

 馬に乗った武田軍武士2が波音の背中に槍を向ける

 奈緒衛は武田軍武士2が波音の背中を狙っていることに気づく


奈緒衛「(大きな声で)危ない!!!!」


 武田軍武士2が波音の背中を狙って槍を思いっきり振りかざす

 ギリギリのタイミングで武田軍武士2の槍を避ける波音

 武田軍武士2の槍は波音の右腕にかする

 右腕から出血する波音

 波音は痛みで反射的に右腕を押さえる

 武田軍武士2がその隙に波音の首を狙う

 落ちていた槍を拾い上げ武田軍武士2が乗っている馬を刺し殺す奈緒衛

 落馬する武田軍武士2

 奈緒衛は武田軍武士2の首を槍で刺す

 矢が放たれた音が空から聞こえる

 右腕を押さえて空を見る波音


波音「(大きな声で)矢だ!!!!矢が来るぞ!!!!死体か馬の下に隠れろ!!!!」


 武田軍の矢が宙に上がっている

 波音は近くにいた武田軍武士3の死体を動かす

 武田軍武士3の死体の下に隠れようとしている波音

 波音は右腕の怪我のせいで武田軍武士3の死体を動かすのに苦戦している

 槍を捨て武田軍武士3の死体を動かすのを手伝う奈緒衛


奈緒衛「(武田軍武士3の死体を動かしながら)俺がやる!!!そこに寝ろ!!!」


 仰向けになる波音

 奈緒衛は武田軍武士3の死体を波音の上に乗せる

 武田軍の矢が落下して来る


波音「(武田軍武士3の死体に隠れたまま大きな声で)そなたも急ぐのだ!!!!」


 奈緒衛は横になり、武田軍武士2の死体を動かす

 武田軍武士2の死体を自分の体の上に乗せる奈緒衛

 矢は隠れ遅れた武士を次々に刺し殺して行く

 織田軍、武田軍に関係なくたくさんの武士が矢で死んでいる

 隣同士で仰向けになり武田軍武士の死体に隠れている波音と奈緒衛

 波音と奈緒衛の目が合う

 矢が落下する音、矢が人や馬に刺さる音、人の叫び声、馬の鳴き声が周囲に響いている

 見つめ合っている波音と奈緒衛

 波音と奈緒衛の顔の距離は近い


奈緒衛「(武田軍武士2の死体に隠れたまま)時が許す限り・・・俺はお前の側にいたい」

波音「(武田軍武士3の死体に隠れたまま)な、何を言っておるのだ!戦中なのだぞ!!!」


 波音の顔が赤くなっている


奈緒衛「(武田軍武士2の死体に隠れたまま)すまん・・・今言いたくなったんだ・・・」

波音「(武田軍武士3の死体に隠れたまま)わ、私も!お、お主のことは嫌いではない!」

奈緒衛「「(武田軍武士2の死体に隠れたまま)惚れておらぬのか・・・?」


 少しの沈黙が流れる

 奈緒衛から目を逸らす波音

 武田軍の第二陣の矢が降って来る


奈緒衛「(武田軍武士2の死体に隠れたまま)波音は俺に惚れてるのかと思ってた・・・特別な存在って、そういうことなのかと・・・」


 波音は奈緒衛から目を逸らすのをやめる


波音「(武田軍武士3の死体に隠れたまま小さな声で)お主のことが好きだ・・・」


 武田軍の第二陣の矢が隠れ遅れた武士や馬を殺している


波音「(武田軍武士3の死体に隠れたまま)さ、されど今は・・・戦に集中しろ。良いな?」

奈緒衛「(武田軍武士2の死体に隠れたまま)あ、ああ。分かった」


◯1348社殿/女中の部屋(昼過ぎ)

 女中たちが眠る広い和室

 和室の中は薄暗く汚らしい

 ボロボロの布団の上で一人眠っている凛

 凛の布団以外は畳まれてある

 凛は呼吸が浅く、顔色が悪い

 苦しそうに寝言を呟いている凛


凛「ことわり・・・りん・・・ね・・・うみ・・・」


◯1349波音高校体育館(日替わり/放課後/夕方)

 夕日が沈みかけている

 体育館にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 体育館には鳴海たちの他にもたくさんの生徒がいる

 ステージの上でパイプ椅子に座っている鳴海、明日香、汐莉、雪音

 鳴海、明日香、汐莉、雪音は朗読劇用の波音物語を持っている

 鳴海たちの前にはマイクスタンドが置いてある

 菜摘はパイプ椅子に座ってステージを見ている 

 菜摘は朗読劇用の波音物語を持っている

 嶺二、響紀、詩穂、真彩は朗読劇用の波音物語を持って上手側のステージの袖に立っている

 鳴海、明日香、汐莉、雪音の後ろにはリードギター、サイドギター、ベース、ドラム、その他機材が置いてある 

 マイクを持った生徒会の二年生男子生徒がステージの近くにいる

 鳴海、明日香、汐莉、雪音がステージの上で朗読の練習を行っている


鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら)皆死んでおるようだな」

雪音「(朗読劇用の波音物語を読みながら)こんなところに長居をしても仕方があるまい。社殿に戻ろう、凛の体が心配だ」

明日香「(朗読劇用の波音物語を読みながら)波音と奈緒衛が武田軍の残党との決着をつけ、社殿へ戻ろうとしていた頃、明智光秀がおよそ一万を超える武士たちを集めていた。(少し間を開けて)我は天下!!天下は我なり!!そなたらは我と共に天下になるのだ!!奴の家臣が戦にいる今、我らは本能寺に行かねばならぬ!!この期は逃せない!!敵は本能寺にあり!!(少し間を開けて)後に本能寺の変と呼ばれるこの事件は、戦乱の時代と波音たちの運命を大きく狂わすことになる」

汐莉「(朗読劇用の波音物語を読みながら)信長様・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・波音様!!波音様!!いらっしゃいますか!!(少し間を開けて)信長様の危機を・・・波音様にお伝えせねば!!」

明日香「(朗読劇用の波音物語を読みながら)その特別な力によっていち早く信長の危険を察知した凛は、弱り切った体に鞭を打ち、馬に乗って夜道を走り抜けた」


 拍手をする菜摘

 

菜摘「(拍手をしながら)みんな凄く良かったよ!!」

汐莉「本番までこの調子でやれば良いですかね?」

菜摘「(拍手をするのをやめて)うん!!」

明日香「鳴海、やっぱ私のセリフが多過ぎると思うんだけど・・・」

鳴海「兼ね役なんだからセリフが多いのは我慢してくれ」

雪音「多いと言っても波音役ほどではないしね」

明日香「主人公に比べたらそりゃ少ないでしょうよ・・・」

汐莉「鳴海先輩、そろそろ軽音部もライブの練習をして良いですか」

鳴海「ああ」


 上手側のステージの袖から嶺二、響紀、詩穂、真彩が出て来る 


真彩「あのー・・・」

鳴海「何だ?」

真彩「椅子はどーするんすか?」


 少しの沈黙が流れる


詩穂「椅子の後ろでライブをしろとは言わないよね・・・?」

鳴海「椅子か・・・全く考えてなかったな・・・」

嶺二「鳴海たちが袖に隠れる時に椅子は持って行くしかねーだろ」

詩穂「ライブが終わったらまたステージに運び出すってことですか?」

嶺二「おう」

明日香「非効率ね・・・」

響紀「毎回椅子を持って行き来するのは見栄えもスイートメロンパンなんですが」

嶺二「じゃー椅子の後ろに隠れて演奏するか?」

真彩「それは格好悪いのでちょっと・・・」

詩穂「絶対嫌だよね」

真彩「うん」

雪音「立って朗読しちゃいけないの?」

鳴海「い、いけなくはないが・・・」

明日香「疲れるでしょ・・・」

雪音「疲れる方を取るか、見栄えがクソな方を取るか、総合演出さんの好きにすれば?私たちはいつだって鳴海の好き勝手に振り回される立場なんだし」


 再び沈黙が流れる


嶺二「鳴海が正しいと思った方を選べよ。俺らは文句を言わねーから」


 考え込む鳴海


汐莉「先輩、どっちにします?」

鳴海「立って・・・やろう・・・明日から椅子は無しだ」

汐莉「了解です」

明日香「そんなことになるんじゃないかと思ってた・・・」

鳴海「すまん明日香」

明日香「私たちが疲れることで素晴らしい朗読劇になれば良いけど・・・」

汐莉「見栄えは改善されますよ、明日香先輩」

明日香「そうね」


 時間経過


 ステージの上に立ってライブの練習を行っている汐莉、響紀、詩穂、真彩

 パイプ椅子に座って軽音部の演奏を聴いている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音

 汐莉はリードギター、響紀はサイドギター、詩穂はベース、真彩はドラムを演奏している 

 ボーカルは汐莉が担当している

 汐莉、響紀、詩穂、真彩の前にはマイクスタンドが置いてある


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら)この世は戦乱 馬の目は狂乱 町はがらんどう」


◯1350社殿の外(500年前/深夜)

 ◯1347、◯1348と同日

 馬を連れている凛

 凛は馬を連れて社殿の外に出る

 凛は行灯を持っている

 月の光と凛の持っている行灯の明かりが夜道を照らしている

 行灯を持ちながら慎重に馬にまたがる凛

 凛は馬の手綱を持つ

 馬に話しかける凛


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)今晩の彼女は鬼心にならん 月夜を背に真心を殺しに変えん」


 馬は凛を乗せて夜道を走り始める


◯1351本能寺に向かっている道中(500年前/深夜)

 ◯1347、◯1348、◯1350と同日

 明智光秀率いる馬に乗って武装したたくさんの明智軍の武士たちが本能寺を目指している

 光秀たちは目立たないように走らず本能寺に向かっている

 明智軍の武士たちの何人かが松明を持っている

 月の光と松明の火が夜道を照らしている


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)殺めよ 赦せよ 護れよ」


◯1352波音の元に向かっている道中(500年前/深夜)

 ◯1347、◯1348、◯1350、◯1351と同日

 行灯を持ち馬に乗って波音の元へ向かっている凛

 凛を乗せた馬は夜道を走っている

 凛は時々咳き込んでいるが、馬は速度を落とさない

 月の光と凛の持っている行灯の明かりが夜道を照らしている


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)星光に桜が 太陽にスズメが 泣き叫ばない」


◯1353本能寺の信長の寝室(500年前/深夜)

 ◯1347、◯1348、◯1350、◯1351、◯1352と同日

 畳の部屋にいる織田信長

 信長は布団を敷いている

 部屋の隅には信長の日本刀が一本置いてある

 部屋の明かりは行灯しかない

 行灯の火が揺れている

 布団を敷き終え横になる信長

 信長は行灯の火を消さずに寝始める


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)名はあれど知られぬ恋 他者を想えば破滅路上」


◯1354社殿に戻る道中(500年前/深夜)

 ◯1347、◯1348、◯1350、◯1351、◯1352、◯1353と同日

 馬に乗って社殿に戻っている波音、奈緒衛、そして織田軍の武士たち

 波音たちは武装している

 織田軍の武士たちの何人かが松明を持っている

 月の光と松明の火が夜道を照らしている

 波音が止まるように家臣たちに指示を出す

 波音の指示に従い馬を止まらせる織田軍の武士たち

 一匹の馬と行灯を持った女が波音たちの方へ走って来る

 行灯を持っている女の正体は凛


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)謀反が忘却させた3つ魂 巡り会うか」


 馬から降りて波音たちのところにやって来る凛

 波音、奈緒衛、凛が話をしている


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)彼女は戦に好かれ 彼をさよなら 私は彼女と彼を想い 病と出会う」


 凛の話を聞いた奈緒衛は馬の向きを変え、一人で本能寺に向かう

 波音は奈緒衛を止めようとするが、波音の声は奈緒衛に届かない

 奈緒衛を乗せた馬は夜道を走っている

 馬に乗っている奈緒衛の姿がどんどん小さくなる


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)未来は試練 過ぎ去る思い出は愛憐 過去は未練」


 波音は凛に後ろに乗るように指示を出す

 凛は波音の馬に乗る

 波音は家臣たちに指示を出す

 波音の家臣たちは戸惑っている


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)今晩の彼女は傷心にならん 大波を背に復讐心を捨て去れん」

 

 波音は再び家臣たちに指示を出す

 波音と凛を乗せた馬の向きが変わり、本能寺を目指して走り出す

 波音の家臣たちは戸惑ったまま、馬の向きを変え本能寺に向かい始める

 

汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)救えよ 変えろよ 今を生き抜けよ」


 夜道を走っているたくさん織田軍の馬たち


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)枯れた木が 腐敗した現実が 泣き叫ぼう」

 

 波音の体に掴まっている凛

 波音と凛を乗せた馬は本能寺を目指して走り続けている


◯1355本能寺に向かっている道中(500年前/深夜)

 ◯1347、◯1348、◯1350、◯1351、◯1352、◯1353、◯1354と同日

 馬に乗って本能寺へ向かっている奈緒衛

 奈緒衛を乗せた馬は夜道を走っている

 月の光が夜道を照らしている

 

汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)名はあれど知られぬ物語 他者の恨みが破滅路上」


◯1356本能寺周囲(500年前/深夜)

 ◯1347、◯1348、◯1350、◯1351、◯1352、◯1353、◯1354、◯1355と同日

 明智軍の本能寺本殿、客殿、奥書院の全てを囲んでいる光秀率いる武装したたくさん明智軍の武士たち

 鉄砲隊と弓矢隊が戦の準備をしている


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)謀反が壊した三人の日々 取り返せるか」


◯1357本能寺に向かっている道中(500年前/深夜)

 ◯1347、◯1348、◯1350、◯1351、◯1352、◯1353、◯1354、◯1355、◯1356と同日

 波音率いる織田軍の武士たちが馬に乗って本能寺へ向かっている

 波音率いる織田軍の武士たちを乗せた馬は夜道を走っている

 凛が波音の馬に乗り、波音の体に掴まっている

 織田軍の武士たちの何人かが松明を持っている

 月の光と松明の火が夜道を照らしている

 馬の体を叩きもっと早く走るように煽る波音


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)彼女は人々に愛され 愛をさよなら 私は私を情けのうと憎み 病でさよなら」


◯1358本能寺/信長の寝室(500年前/早朝)

 ◯1347、◯1348、◯1350、◯1351、◯1352、◯1353、◯1354、◯1355、◯1356、◯1357と同日

 日が登っている

 信長のいる寝室に向かって明智軍の鉄砲隊が発砲している

 信長の部屋は弾丸のせいで穴だらけになっている

 信長は着替え、切腹の準備をしている

 部屋の隅には信長の日本刀が一本置いてある

 部屋にある行灯の火が揺れている

 行灯の火を消す信長

 

汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)海の子よ進めよ 海の子よ未来へ歩めよ 海の子よ渡れよ」


◯1359本能寺/二階通路(500年前/朝)

 ◯1347、◯1348、◯1350、◯1351、◯1352、◯1353、◯1354、◯1355、◯1356、◯1357、◯1358と同日

 本能寺の二階の通路で信長を探している奈緒衛

 二階の通路に黒い煙が上がって来ている


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)星光に桜が 太陽にスズメが 泣き叫ばない」


◯1360本能寺/台所口(500年前/朝)

 ◯1347、◯1348、◯1350、◯1351、◯1352、◯1353、◯1354、◯1355、◯1356、◯1357、◯1358、◯1359と同日

 火の海になっている台所

 天井、壁、床、全てが燃えている

 奈緒衛と信長を探している波音

 波音は煙を吸い込まないように口を装束の袖で覆っている

 波音が歩こうとすると天井の一部が崩れて来る落ちる

 

汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)名はあれど知られぬ恋 他者を想えば破滅路上」


◯1361本能寺/信長の寝室(500年前/朝)

 ◯1347、◯1348、◯1350、◯1351、◯1352、◯1353、◯1354、◯1355、◯1356、◯1357、◯1358、◯1359、◯1360と同日

 信長の部屋にいる奈緒衛と信長

 信長のいる寝室に向かって明智軍の鉄砲隊が発砲している

 信長の部屋は弾丸のせいで穴だらけになっている

 信長は日本刀で切腹をしている

 部屋中に信長の血が飛び散っている

 信長の真っ白で綺麗な装束は、血で赤く染まっている

 信長の腹は斬り進めるごとに血がどんどん出て来る

 奈緒衛は信長の切腹を呆然と見ている


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)謀反が忘却させた3つ魂 巡り会うか」


 痛みで顔が歪みきっている信長

 ふすまを開けて信長の部屋に波音が入って来る


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)彼女は戦に好かれ 彼をさよなら 私は彼女と彼を想い 病と出会う」


 信長と奈緒衛の姿を見て唖然とする波音

 奈緒衛のことを睨んでいる信長

 奈緒衛のことを見る波音

 奈緒衛は震えている

 信長は切腹をしながら奈緒衛に向かって叫んでいる


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)名はあれど知られぬ恋 他者を想えば破滅路上」


 波音は日本刀を素早く抜刀し、切腹途中の信長の首を斬り落とす 

 日本刀を鞘に収める波音

 斬り落とされた信長の首が転がり波音の足にぶつかる

 首のなくなった信長が倒れる

 斬り落とされた信長の首からは大量の血が出てくる


汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら 声)謀反が忘却させた3つ魂 巡り会うか」


◯1362波音高校体育館(放課後/夕方)

 夕日が沈みかけている

 体育館にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 体育館には鳴海たちの他にもたくさんの生徒がいる

 ステージの上に立ってライブの練習を行っている汐莉、響紀、詩穂、真彩

 パイプ椅子に座って軽音部の演奏を聴いている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音

 汐莉はリードギター、響紀はサイドギター、詩穂はベース、真彩はドラムを演奏している

 ボーカルは汐莉が担当している

 汐莉、響紀、詩穂、真彩の前にはマイクスタンドが置いてある 

 マイクを持った生徒会の二年生男子生徒がステージの近くにいる

 

汐莉「(朗読劇用のオリジナルソング1を歌いながら)彼女は戦に好かれ 彼をさよなら 私は彼女と彼を想い 病と出会う」


 汐莉たちは演奏を終える

 拍手をする鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音


鳴海「(拍手をしながら大きな声で)観客を過去へ誘う最高のライブだね!!!!」

汐莉「ありがとうございます、菜摘先輩」


◯1363早乙女家に向かう道中(放課後/夕方)

 夕日が沈みかけている

 菜摘を家に送っている鳴海

 部活帰りの学生がたくさんいる

 鳴海と菜摘はマフラーと手袋をしている

 鳴海は紺色の、菜摘は白色のマフラーと手袋をしている

 マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている

 鳴海と菜摘は話をしている


鳴海「南の歌を聞いていると歴史の中に閉じ込まれそうになるな・・・」

菜摘「それが汐莉ちゃんの魅力だよ。汐莉ちゃんの歌声と波音物語が過去に興味を抱かせてるんだ」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「菜摘・・・俺たちさ・・・」

菜摘「うん」

鳴海「な、波音物語に近付き過ぎてないか・・・?」

菜摘「近付き過ぎるって・・・?」

鳴海「分からない・・・俺が疲れて変な考えになってるだけかもな・・・」

菜摘「鳴海くん、いつから近付いているって思うようになったの?」

鳴海「波音博物館に行った時からか・・・もしくはそれよりも前か・・・」


 再び沈黙が流れる


鳴海「多分朗読劇のことを考え過ぎてるんだな・・・今は授業がないし、学校に行っても部活をやってるだけだからさ」


 少しの沈黙が流れる


菜摘「今回は朗読劇は・・・ううん、学園祭の朗読劇もそうだったけど・・・ただの行事じゃないんだよ。私たちの人生において、合同朗読劇はとても大きな出来事になると思う・・・」

鳴海「大きな出来事なんて勘弁してくれ・・・俺は朗読劇が成功すればそれで満足なんだ」

菜摘「鳴海くんは少し緊張してるんじゃないの?」

鳴海「そりゃ緊張するだろ。準備に何ヶ月もかけて、遠回りしまくった朗読劇だぞ。緊張しなきゃ逆におかしいじゃないか」

菜摘「私も緊張してるよ、鳴海くん」

鳴海「菜摘が?」

菜摘「うん」

鳴海「とてもそうは見えないぞ」

菜摘「えー・・・」

鳴海「というか菜摘が緊張するのは、俺や明日香のせいじゃないか」

菜摘「えっ?どうして?」

鳴海「俺たちが本番でやらかすかもしれないから、緊張するんだろ?」

菜摘「そうじゃないよ、鳴海くん」

鳴海「じゃあ緊張の原因は何なんだ?」

菜摘「うーん」


 再び沈黙が流れる


菜摘「説明出来ない!!」

鳴海「そ、そうか・・・」

菜摘「とにかく頑張って頑張ってもう少し頑張ろう!!」

鳴海「ま、まだまだ頑張れってことだな」

菜摘「うん!!」


◯1364貴志家鳴海の自室(深夜)

 片付いている鳴海の部屋

 鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない

 机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラが置いてある

 ベッドの上で横になっている鳴海

 カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる

 

鳴海「大きな出来事、か・・・(少し間を開けて)今回は・・・誰も消えるなよ・・・千春の二の舞は御免だからな・・・」

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