Chapter6卒業編♯31 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
登場人物
滅びかけた世界
ナツ 16歳女子
ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。
スズ 15歳女子
マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。
老人 男
ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・
中年期の明日香 女子
老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。
七海 女子
中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。
老人と同世代の男兵士1 男子
中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。
レキ 女子
老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。
老人と同世代の男兵士2 男子
中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。
滅んでいない世界
貴志 鳴海 18歳男子
波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。
早乙女 菜摘 18歳女子
波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。
白石 嶺二 18歳男子
波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。
天城 明日香 18歳女子
波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。
南 汐莉15歳女子
波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。
一条 雪音18歳女子
波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・
柊木 千春女子
Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。
三枝 響紀15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。
永山 詩穂15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。
奥野 真彩15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。
早乙女 すみれ45歳女子
菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。
早乙女 潤46歳男子
菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。
神谷 志郎43歳男子
波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。
荻原 早季15歳女子
Chapter5に登場した正体不明の少女。
貴志 風夏24歳女子
鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。
一条 智秋24歳女子
雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。
双葉 篤志18歳男子
波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。
有馬 勇64歳男子
波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。
細田 周平15歳男子
野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。
貴志 紘
鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。
貴志 由香里
鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。
神谷 絵美29歳女子
神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。
波音物語に関連する人物
白瀬 波音23歳女子
波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。
佐田 奈緒衛17歳男子
波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。
凛21歳女子
波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。
明智 光秀55歳男子
織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。
織田 信長48歳男子
天下を取るだろうと言われていた武将。
一世 年齢不明 男子
ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。
Chapter6卒業編♯31 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
◯1332社殿/波音の寝室(500年前/日替わり/昼過ぎ)
それほど広くない畳の部屋
波音の部屋にいる波音、奈緒衛、凛
部屋の隅に布団が丁寧に畳まれてある
部屋には小さな机があり、その上には数冊の書物が置いてある
部屋からは縁側が見える
畳に座って話をしている波音、奈緒衛、凛
凛「日々の記録を書物に残せば、とても美しい物語が出来上がりますね!!」
奈緒衛「社殿で駄弁って戦に参るだけの話だぞ?これが果たして美しいのか?」
凛「私にとってそれらは全て美しい経験なのです。そんな経験を書物にして頂ければ、私めはお二人と離れても寂しい思いをしません」
奈緒衛「それでは離れるのが前提のようだな」
凛「戦が終われば、お二人がこの社殿を訪れる事も無くなるでしょう」
波音「幾ら書物に残っても、会えないとなれば寂しくなるのう・・・」
奈緒衛「会いに来れば良いではないか凛、歓迎するぞ」
凛「私は一介の女中ですゆえ、武士様や大将様に会える身ではありませぬ」
奈緒衛「では俺たちがこの社殿に訪れる機会を設けよう」
波音「奈緒衛、そなたは信長殿の家臣なのだぞ?彼の元を離れてはならぬだろう?」
凛「波音様の仰る通りです」
奈緒衛「そう・・・だな・・・じきに俺たちも別れの時か・・・」
波音「うむ。奈緒衛、凛、そなたらには感謝しているぞ。楽しいという感情が戦以外にもあったことを忘れておったわ」
◯1333貴志家リビング(日替わり/朝)
外は快晴
時刻は七時半過ぎ
テーブルの上に置き手紙と小さなプレゼント箱がある
置き手紙には“Happy Valentine’s Day!!”と書かれている
リビングのテレビではニュースが流れている
制服姿で椅子に座って置き手紙と小さなプレゼント箱を見ている鳴海
鳴海「(置き手紙と小さなプレゼント箱を見ながら)弟の話を聞かない姉貴だ・・・」
◯1334波音高校校門(朝)
たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く
校門の前で部員募集を行っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている
鳴海たちは通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、響紀、詩穂、真彩はマフラーと手袋を身につけている
鳴海と嶺二は紺色の、菜摘、汐莉、響紀、詩穂、真彩は白色のマフラーと手袋を身につけている
マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている
雪音だけ嶺二から貰ったマフラーと手袋をしていない
雪音の指先が赤くなっている
鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)文芸部副部長の貴志鳴海です!!!!部員を募集してるので興味がある人はチラシを貰って行ってください!!!!」
二年生女子生徒の三人組が話をしている
二年生女子生徒1「双葉先輩にチョコ渡すの?」
二年生女子生徒2「あの人は倍率高過ぎて無理。みんな狙ってるし」
二年生女子生徒3「顔が良いもんね〜」
二年生女子生徒2「でも結構やばいらしいよ」
二年生女子生徒3「やばいって何が?」
二年生女子生徒2「性格とか、あとバイトでやってること。危ないって先輩から聞いたよ」
二年生女子生徒1「マジ?」
二年生女子生徒2「うん、関わらない方が良いって」
二年生女子生徒1、2、3は文芸部のことを気に留めず話をしながら校舎内へ入って行く
嶺二は通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出したままチラッと雪音のことを見る
雪音は変わらず通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している
◯1335波音高校特別教室の四/文芸部室(午前中)
文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
教室の隅にパソコン一台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある
椅子に座りパソコンと向かい合ってタイピングをしている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音
鳴海たちは部誌制作を行っている
校庭では二年生男子生徒たちが体育の授業を受けている
鳴海たちは部誌制作に集中している
少しすると部室の扉が開き、神谷が部室の中へ入って来る
神谷「やあやあ、みんなお疲れ様」
タイピングをやめる菜摘と明日香
鳴海、嶺二、雪音は変わらずタイピングを続けている
神谷「体育館の件で話があってね」
鳴海「(タイピングをしながら)借りられるんですか?」
神谷「ミスターグイド、そういう話の聞き方はよろしくないよ。嶺二と雪音もだ、三人ともタイピングをやめなさい」
鳴海、嶺二、雪音はタイピングをやめる
神谷「バドミントン部顧問の相良先生や校長に体育館を借りられるか掛け合ってみたんだ」
少しの沈黙が流れる
菜摘「ど、どうだったんですか・・・?」
神谷「相良先生と校長は理解のある大人だよ・・・先生が頭を下げたら、君たち三年生のために体育館を貸してくれることになった」
嶺二「(驚いて)ま、マジっすか!!」
神谷「ああ。ただ他の部も体育館を使いたいと言ってるから、放課後に生徒会が仕切って合同で三年生を送る会の練習をすることに決まったんだ」
鳴海「ご、合同って・・・」
神谷「子供たちは体育館で確認したいことがあるんだろうね」
再び沈黙が流れる
菜摘「ありがとうございます!!神谷先生!!」
神谷「菜摘しか感謝を知らないのか?」
明日香「ありがとうございます」
嶺二「あ、あざっした・・・」
雪音「ありがとうございます」
鳴海「(小声でボソッと)あ、ありがとうございます・・・」
神谷「声が小さいけどまあ良いとしよう」
時間経過
昼休み
円の形に椅子を並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
汐莉、響紀、詩穂、真彩の隣にはビニール袋が置いてある
神谷はいない
昼食を食べ終えた鳴海たち
真彩はビニール袋からラッピング袋に入ったチョコレートを手に取り、立ち上がる
ラッピング袋に入ったチョコレートを嶺二に差し出す真彩
嶺二「(ラッピング袋に入ったチョコレートを真彩から受け取り)サンキューまあやん!!」
真彩「味はぼちぼちですけど・・・」
嶺二「やっぱ味より気持ちだぜ!!」
明日香「あんたが言うとその気持ちが気持ち悪く聞こえるから不思議ね・・・」
嶺二「まあやん、鳴海にも気持ちで渡してやってくれよ」
真彩「えっ・・・?」
少しの沈黙が流れる
真彩「すんません鳴海くん・・・鳴海くんは菜摘さんから貰えると思って作らなかったっす・・・」
鳴海「き、気にしないでくれ」
真彩「ほんとすんません・・・」
椅子に戻り座る真彩
汐莉がビニール袋から小さなプレゼント箱を二つ手に取り、鳴海と嶺二に投げる
鳴海と嶺二は小さなプレゼント箱をキャッチする
汐莉「鳴海先輩と嶺二先輩へのお情けです」
鳴海「お、おう・・・」
嶺二「頼んでねーのにくれるなんて汐莉ちゃんは気が利くな・・・」
汐莉「先輩たちがあまりにも哀れだったんですよ」
鳴海「そ、そうか・・・哀れだったのか俺たち・・・」
汐莉「はい、哀れでした」
ビニール袋からメロンパンを二つ取り出し、立ち上がる響紀
メロンパンの一つを鳴海に差し出す響紀
響紀「(メロンパンの一つを鳴海に差し出して)どうぞ」
鳴海「(メロンパンを響紀から受け取り)わ、悪いな・・・」
響紀「(メロンパンを一つ持ったまま)悪いです」
再び沈黙が流れる
響紀はもう一つのメロンパンを嶺二に差し出す
嶺二「(メロンパンを響紀から受け取り)な、何で俺もメロンパンなんだよ・・・?」
響紀「深い訳はありません、何となく野良猫にタマって名付けるのと同じです」
椅子に戻り座る響紀
詩穂がビニール袋からメロンパンを二つ取り出し、立ち上がる
鳴海「(詩穂が持っている二つのメロンパンを見て)お、おいおい・・・まさか永山も・・・」
メロンパンの一つを鳴海に差し出す詩穂
詩穂「(メロンパンの一つを鳴海に差し出して)バレンタインメロンパン」
鳴海「(メロンパンを詩穂から受け取り)あ、ああ・・・ありがとな・・・」
詩穂はもう一つのメロンパンを嶺二に差し出す
嶺二「(メロンパンを詩穂から受け取り)お、俺がメロンパンなのはおかしーだろ・・・しかもこれコンビニのメロンパンじゃねーか・・・」
椅子に戻り座る詩穂
菜摘「放課後は体育館で朗読劇の練習が出来る上に、鳴海くんと嶺二くんはたくさんお菓子を貰って今日は良いこと尽くしだね!!」
鳴海「体育館とお菓子は関係ないよな・・・というか菜摘・・・」
菜摘のことを見る鳴海
菜摘「ん?」
菜摘は明日香、汐莉、響紀、詩穂、真彩から貰ったたくさんのチョコレートを両手に抱えている
鳴海は菜摘が両手に抱えたたくさんのチョコレートを見ている
鳴海「(菜摘が両手に抱えているたくさんのチョコレートを見たまま)貰い過ぎだろ・・・もはや女子がチョコを貰うイベントになってるじゃないか・・・」
汐莉「バレンタインは名刺交換と同じですよ、鳴海先輩。いっぱい貰っていっぱい渡すのが基本です」
鳴海「(菜摘が両手に抱えているたくさんチョコレートを見たまま)そ、そうなのか・・・それにしても貰い過ぎな気もするが・・・」
◯1336波音高校体育館(放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
体育館にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
体育館には鳴海たちの他にもたくさんの生徒がいる
ステージの上で吹奏楽部が演奏をしている
体育館にはパイプ椅子が並べてあり、鳴海たちや吹奏楽部以外の生徒はパイプ椅子に座っている
鳴海たちは朗読劇用の波音物語を持っている
生徒会の二年生男子生徒がマイクを持ってステージの近くで吹奏楽部の演奏を聴いている
明日香「私たち・・・吹奏楽部の後にやるんだっけ・・・」
菜摘「みたいだね」
明日香「やばいでしょこの後とか・・・」
菜摘「失敗しなきゃ大丈夫だよ!!明日香ちゃん!!」
明日香「失敗しなきゃね・・・」
少しすると吹奏楽部の演奏が終わる
吹奏楽部員たちは喋りながら楽器と譜面台を片付け始める
吹奏楽部員たちはゆっくり片付けをしている
鳴海「(話をしながらゆっくり片付けをしている吹奏楽員たちのことを見て)もっと早く動けよ・・・」
嶺二「鳴海、一発注意してやったら良いんじゃねーか」
鳴海「そうだな・・・」
響紀「私がブチギレて来ましょう」
菜摘「だ、ダメダメ!!文芸部の評判が悪くなっちゃうよ!!」
雪音「ブチギレずにどいてもらうのは良いよね」
嶺二「てめーが関わると大変なことになるからやめとけ」
立ち上がる雪音
菜摘「ゆ、雪音ちゃん!!怒ったら文芸部の評判が・・・」
雪音「(菜摘の話を遮って)分かってる」
雪音はステージの方へ向かう
ステージに上がり、吹奏楽部の生徒に声をかける雪音
詩穂「(ステージの上の雪音のことを見て)何してるんだろ、あの人」
嶺二「さーな・・・」
雪音はステージの上で吹奏楽部の生徒と話をしている
汐莉「菜摘先輩、止めなくて良いんですか?」
菜摘「うーん・・・悪いことはしてなさそうだし・・・」
雪音は吹奏楽部の生徒と話を終えてステージから降りて来る
パイプ椅子に戻り座る雪音
吹奏楽部の生徒たちの楽器と譜面台を片付けるペースが明らかに早くなっている
雪音「急いで片付けるって」
真彩「な、何をしたんすか?」
雪音「彼らの懐に入り込んだだけ」
少しの沈黙が流れる
菜摘「お、脅したんじゃないよね?」
雪音「うん」
時間経過
ステージを見ている鳴海と菜摘
鳴海と菜摘は朗読劇用の波音物語を持っている
鳴海は立ってステージを見ており、菜摘はパイプ椅子に座っている
ステージの上でパイプ椅子に座っている明日香、汐莉、雪音
明日香、汐莉、雪音は朗読劇用の波音物語を持っている
明日香たちの前にはマイクスタンドが置いてある
嶺二は朗読劇用の波音物語を持って上手側のステージの袖に立っている
明日香、汐莉、雪音の後ろでは響紀、詩穂、真彩が楽器を運んで来ている
マイクを持った生徒会の二年生男子生徒がステージの近くにいる
鳴海「(大きな声で)一条!!!!何でも良いからセリフを読んでくれ!!!!」
雪音「(朗読劇用の波音物語を読みながら)我らがその戦に行けば良いのだな」
鳴海「(大きな声で)嶺二!!!!音をもう少し上げろ!!!!」
嶺二「(大きな声で)りょーかいだ!!!!」
嶺二は上手側のステージの袖から二階の調整室に走って向かう
鳴海と菜摘の位置からはちょうど体育館二階の調節室の窓ガラスが見える
嶺二が体育館二階の調整室で音のフェーダーを上げているのが鳴海と菜摘から見えている
嶺二は調整室の窓ガラス越しに鳴海と菜摘に向けて右手の親指を上げてグッドサインを見せる
嶺二のグッドサインを確認する鳴海
鳴海「(大きな声で)一条!!!!もう一回をセリフを頼む!!!!」
雪音「(朗読劇用の波音物語を読みながら)しかし、なぜ信長殿はその役目を私に回したのだ?本来は明智殿の務めであったのだろう?」
雪音の声はさっきよりも大きくなっている
鳴海「声の大きさはこれで大丈夫だよな?菜摘」
菜摘「うん、良いと思うよ」
鳴海は体育館二階の調整室にいる嶺二に向けて右手の親指を上げてグッドサインを見せる
嶺二は鳴海のグッドサインを確認し頷く
嶺二は体育館二階の調整室を出る
響紀「鳴海くん、私たちはどうすれば?」
考え込む鳴海
鳴海「菜摘、楽器はいちいち片付けるべきだと思うか?」
菜摘「ライブ中以外はない方が見栄えは良いかも・・・」
鳴海「(大きな声で)おい!!!!生徒会!!!!どこにいるんだ!!!!」
響紀「ここにいますが・・・」
鳴海「(大きな声で)お前じゃねえ!!!!」
ステージの近くにいたマイクを持った生徒会の二年生男子生徒が鳴海のところへ走ってやって来る
生徒会の二年生男子生徒「何ですか?」
鳴海「軽音楽部が三曲ライブをやるんだが、毎回幕を下げて楽器を片付けても良いか」
生徒会の二年生男子生徒「む、無理ですよそんなの!!」
鳴海「無理とは言わせないぞ、無理なら無理で理由を聞かせろ」
生徒会の二年生男子生徒「ま、幕の上げ下げには時間がかり過ぎます!!文芸部と軽音部が押せば他の部活は披露出来なくなるんです!!」
鳴海「(舌打ちをして)チッ・・・(大きな声で)仕方ない響紀!!!!楽器は朗読劇中も置いとくぞ!!!!」
響紀「分かりました」
詩穂「私たちはライブが終わるごとに袖に戻れば良いですか?」
鳴海「(大きな声で)そうだ!!!!嶺二に頼んでステージに出入りする時は照明を消してもらおう!!!!」
嶺二「(上手側のステージの袖から顔を出して)お、俺が何だって!?」
鳴海「(大きな声で)照明だ!!!!響紀たちの動きを見えなくするためにライブ前とライブ後は照明を落とせ!!!!」
嶺二「(大きな声で)お、おう!!!!」
三年生男子生徒が鳴海に声をかけて来る
三年生男子生徒「あ、あのさ・・・」
鳴海「誰だお前」
三年生男子生徒「サッカー部の有本だけど・・・」
鳴海「自己紹介に来たのか?」
三年生男子生徒「ぶ、文芸部の後にサッカー部が控えてるってことを・・・」
鳴海「(三年生男子生徒の話を遮って)分かった分かった今忙しいから話しかけないでくれ」
少しの沈黙が流れる
サッカー部の有本は鳴海から離れて行く
鳴海「(大きな声で)次は朗読を一通り確認するぞ!!!!」
◯1337早乙女家に向かう道中(放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
菜摘を家に送っている鳴海
部活帰りの学生がたくさんいる
鳴海と菜摘はマフラーと手袋をしている
鳴海は紺色の、菜摘は白色のマフラーと手袋をしている
マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている
鳴海と菜摘は話をしている
菜摘「今日の鳴海くん、しっかりみんなに演出出来てたよ」
鳴海「そうか?」
菜摘「うん、ちょっと怒り過ぎだったけど・・・でも似合ってた」
鳴海「俺・・・前回朗読劇をやった時はあんなに大声を出してなかったよな・・・」
菜摘「そうだね・・・学園祭の時は私が総合演出だったし・・・」
少しすると菜摘の家に辿り着く
菜摘は家の前で立ち止まる
鳴海も菜摘に合わせて立ち止まる
菜摘はカバンの中からラッピングされたチョコレートを取り出す
菜摘はラッピングされたチョコレートを鳴海に差し出す
菜摘「(ラッピングされたチョコレートを鳴海に差し出したまま)はい、鳴海くん」
鳴海「(驚いて)も、貰って良いのか・・・?」
菜摘「(ラッピングされたチョコレートを鳴海に差し出したまま)うん!!」
鳴海「(ラッピングされたチョコレートを菜摘から受け取り)あ、ありがとう!!菜摘!!」
菜摘「ど、どういたしまして・・・」
少しの沈黙が流れる
菜摘「な、鳴海くん・・・もしかして貰えないかと思ってた・・・?」
鳴海「あ、ああ・・・他の奴らには渡してたから、俺のだけないのかと思ってたぞ」
菜摘「そ、そんな酷いことはしないよ私!!」
鳴海「じゃ、じゃあ・・・どうして部活中にはくれなかったんだ・・・?」
菜摘「み、みんなと一緒に渡すのが恥ずかしくて・・・」
鳴海「そ、そうだったのか・・・た、確かに嶺二や明日香に見られるのはちょっと恥ずいな・・・」
菜摘「だ、だよねだよね!!やっぱり恥ずかしいよね!!」
鳴海「お、おう」
菜摘「つ、次は鳴海くんに勘違いされないように、最初に鳴海くんにチョコを渡すよ!!」
鳴海「さ、最初か」
菜摘「うん!!」
鳴海「わ、分かった。お、俺もホワイトデーの時は最初に菜摘に渡そう」
首を横に振る菜摘
鳴海「お、お返しは要らないのか・・・?」
菜摘「ううん。そうじゃなくて、私は放課後が良い」
鳴海「な、何で放課後なんだ?」
菜摘「た、楽しみは取っておきたいもん!!」
◯1338貴志家鳴海の自室(夜)
片付いている鳴海の部屋
鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない
机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラとラッピングされたチョコレートが置いてある
机に向かって椅子に座っている鳴海
カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる
鳴海は慎重にチョコレートのラッピングを外す
箱の中にハード型のチョコレートが6個入っている
鳴海「(ハート型のチョコレートを見て)こ、こんな・・・こんな可愛いものを・・・食べても良いのか・・・」
唾を飲み込む鳴海
鳴海「(ハート型のチョコレートを見ながら)た、食べなきゃ失礼だよな・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海はハート型のチョコレートを一個手に取る
寸でのところでハート型のチョコレートを食べるのをやめる鳴海
鳴海「(ハート型のチョコレートを持ったまま大きな声で)も、勿体なさ過ぎて食えねえ!!!!ちくしょう!!!!飾っておきてえ!!!!こんな可愛いチョコレートを食わせようとするなんて酷いぞ菜摘!!!!食いたくても可愛過ぎて食え・・・」
いきなり鳴海の部屋の扉が開き風夏が部屋に入って来る
風夏がいきなり部屋に入って来たことに驚き、鳴海はハート型のチョコレートを落としそうになる
風夏「ちょっと〜、うるさいんだけど〜」
鳴海「(ハート型のチョコレートを持ったまま怒りながら大きな声で)の、ノックしてから部屋に入れよ!!!!」
風夏は鳴海がハート型のチョコレートを持っていることに気づく
風夏「ん〜?鳴海何手に持ってんの〜?」
鳴海は慌てて口の中にハート型のチョコレートを入れ、机の上にあった菜摘から貰ったチョコレートを体で覆って隠す
鳴海「(机の上にあった菜摘から貰ったチョコレートを体で覆って隠しながら大きな声で)な、何も持ってねえから早く出て行ってくれ!!!!」
風夏「(ニコニコしながら)青春だね〜」
鳴海「(机の上にあった菜摘から貰ったチョコレートを体で覆って隠しながら大きな声で)早く出てけって言ってるだろ!!!!」
風夏「(ニコニコしながら)はーい」
風夏はニコニコしながら鳴海の部屋から出て行く
少ししてから机の上にあった菜摘から貰ったチョコレートを体で覆って隠すのをやめる鳴海
鳴海は深呼吸をする
鳴海「クソッ・・・もう一個食っちまった・・・勿体ねえ・・・」