表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/118

Chapter6卒業編♯24 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


登場人物


滅びかけた世界


ナツ 16歳女子

ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。


スズ 15歳女子

マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。

ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。


老人 男

ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・


中年期の明日香 女子

老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。


七海 女子

中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。


老人と同世代の男兵士1 男子

中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。


レキ 女子

老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。


老人と同世代の男兵士2 男子

中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。






滅んでいない世界


貴志 鳴海(なるみ) 18歳男子

波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。


早乙女 菜摘(なつみ) 18歳女子

波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。


白石 嶺二(れいじ) 18歳男子

波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。


天城 明日香(あすか) 18歳女子

波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。


南 汐莉(しおり)15歳女子

波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。


一条 雪音(ゆきね)18歳女子

波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・


柊木 千春(ちはる)女子

Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。


三枝 響紀(ひびき)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。


永山 詩穂(しほ)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。


奥野 真彩(まあや)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。


早乙女 すみれ45歳女子

菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。


早乙女 (じゅん)46歳男子

菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。


神谷 志郎(しろう)43歳男子

波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。


荻原 早季(さき)15歳女子

Chapter5に登場した正体不明の少女。


貴志 風夏(ふうか)24歳女子

鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。


一条 智秋(ちあき)24歳女子

雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。


双葉 篤志(あつし)18歳男子

波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。


有馬 (いさむ)64歳男子

波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。


細田 周平(しゅうへい)15歳男子

野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。


貴志 (ひろ)

鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。


貴志 由香里(ゆかり)

鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。


神谷 絵美(えみ)29歳女子

神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。


波音物語に関連する人物






白瀬 波音(なみね)23歳女子

波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。


佐田 奈緒衛(なおえ)17歳男子

波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。


(りん)21歳女子

波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。


明智 光秀(みつひで)55歳男子

織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。


織田 信長(のぶなが)48歳男子

天下を取るだろうと言われていた武将。


一世(いっせい) 年齢不明 男子

ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。

Chapter6卒業編♯24 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


◯1178貴志家リビング(日替わり/朝)

 外は快晴

 時刻は七時半過ぎ

 テーブルの上に置き手紙がある

 置き手紙には”朗読劇!!本番目指して頑張ろう!!”と書かれている

 制服姿で椅子に座ってニュースを見ている鳴海


ニュースキャスター1「三月頃ような暖かい気温が・・・」


 リモコンを手に取ってテレビを消す鳴海

 立ち上がる鳴海


鳴海「(声 モノローグ)菜摘は奇跡的な回復を見せ、入院生活を終えた」


◯1179波音総合病院外(朝)

 波音総合病院から菜摘、すみれ、潤、風夏が出て来る

 風夏はナース服を着ている

 一台のタクシーが病院の外に停まっている


鳴海「(声 モノローグ)菜摘が退院した日は春のように暖かく、全ての動植物が菜摘の回復を喜んでいるようだった」


 風夏に別れを告げてタクシーに乗る菜摘、すみれ、潤、風夏

 タクシーが発車する

 タクシーに手を振って見送っている風夏


鳴海「(声 モノローグ)気のせいかもしれないし、俺の考え過ぎかもしれない」


◯1180波音高校校門(朝)

 たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く

 校門の前で部員募集を行っている鳴海、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 鳴海、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている

 通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している鳴海たち

 鳴海たちはクリスマスパーティーで嶺二から貰ったマフラーと手袋を身につけている

 鳴海と嶺二は紺色の、明日香、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は白色のマフラーと手袋を身につけている

 マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている


鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)だが、文芸部と軽音部は以前よりも落ち着いた雰囲気になっていた」


◯1181波音高校特別教室の四/文芸部室(昼)

 昼休み

 文芸部の部室にいる鳴海、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 円の形に椅子を並べて座っている鳴海、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 昼食を食べている鳴海たち

 教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある

 鳴海、嶺二、雪音、詩穂はコンビニのパンを、明日香はコンビニのおにぎりを、汐莉、響紀は手作りの弁当を、真彩はコンビニの弁当をそれぞれ食べている

 鳴海たちは昼食を食べながら話をしている


鳴海「(話をしながら 声 モノローグ)今の文芸部と軽音部をまとまっていると言うのか俺には分からない」


 時間経過


 外は夕方になっており、夕日が沈みかけている

 文芸部の部室にいる鳴海、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 鳴海、明日香、汐莉、雪音は朗読劇用の波音物語を手に持って立っている

 嶺二、響紀、詩穂、真彩は椅子に座っており、朗読劇用の波音物語を持っている

 朗読の練習を行っている鳴海、明日香、汐莉、雪音

 嶺二たちは朗読の練習の様子を見ている

 校庭では運動部が活動している


鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら 声 モノローグ)こうなるまでにたくさんの遠回りをした。意味がないようなことを何度もしてしまった。お互いに裏切り合って、仲良くみんなで傷ついて、全員が面倒なことをした」


◯1182帰路(放課後/夜)

 日が沈み暗くなっている

 一人自宅に向かっている鳴海

 鳴海は紺色のマフラーと手袋を身につけている

 マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている

 部活帰りの学生がたくさんいる


鳴海「(声 モノローグ)たかが学校生活で、何百年分の経験を得たような気分だ」


◯1183波音高校一年六組の教室/軽音部一年の部室(放課後/夜)

 外は日が沈み暗くなっている

 軽音部の部室でライブの練習を行っている汐莉、響紀、詩穂、真彩

 汐莉はリードギター、響紀はサイドギター、詩穂はベース、真彩はドラムを演奏している


鳴海「(声 モノローグ)錆びつつある学園祭の時の記憶を呼び覚ましてみると、大なり小なり今と似たようなことをしていたのだと思う」


◯1184貴志家鳴海の自室(深夜)

 片付いている鳴海の部屋

 鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない

 机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、朗読劇用の波音物語が置いてある

 ベッドの上で横になっている鳴海

 カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる


鳴海「(声 モノローグ)あの時だって成功したんだから、今だって出来るはずだ。奇跡に頼らなくても、自分たちの力で、この一年間で積み重ねた幸せと地獄の味がする青春と引き換えに、朗読劇の成功を掴み取ろう」


◯1185東大波専門学校(日替わり/朝)

 快晴

 専門学校の前には”一般入試の会場”と書かれた大きな看板が立てられている

 たくさんの受験生が試験会場の校舎へ入って行く

 受験生の中には明日香がいる

 

◯1186音高校特別教室の四/文芸部室(昼過ぎ)

 文芸部の部室にいる鳴海、嶺二、雪音

 教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある

 鳴海、雪音は朗読劇用の波音物語を手に持って立っている

 嶺二は椅子に座っている

 朗読劇用の波音物語を手に持っている嶺二

 朗読の練習を行っている鳴海と雪音

 嶺二は明日香の代わりにナレーションをやっている


鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら)あれか・・・ここからでも綺麗だな・・・」

雪音「(朗読劇用の波音物語を読みながら)行こう奈緒衛!三人で目指した海がすぐそこにあるぞ!!」

嶺二「(朗読劇用の波音物語を読みながら)な、奈緒衛は最後の力を振り絞り、波音に支えられながら緋空浜へ向かった」


 深呼吸をする嶺二


鳴海「少し休憩するか」

嶺二「ああ。明日香がいねーと朗読の練習もやり辛えぜ」

鳴海「そうだな。入試でやらかしてないと良いが・・・」

雪音「あの明日香が失敗するわけないじゃん」

嶺二「それでもし不合格になったらどーすんだよ・・・」

雪音「さあ」

嶺二「明日香のわりーところは無駄にナーバスになるところだからな・・・」

雪音「でも本番には強いんでしょ?」

鳴海「俺たちの知ってる明日香はそうだ」


 少しの沈黙が流れる


雪音「菜摘は明日から来るの?」

鳴海「ああ」

嶺二「結局総合演出は菜摘ちゃんがするのか?」

鳴海「多分な」


 再び沈黙が流れる


嶺二「なんか緊張するぜ」

雪音「何が?」

嶺二「三年間一緒のクラスだった奴の受験だよ」

雪音「私は別に」

嶺二「雪音ちゃんは三年間一緒のクラスじゃねーだろ」

雪音「三年間一緒でも緊張しないって」

嶺二「そーだろーな。鳴海には俺の気持ちが分かるだろ?」

鳴海「まあ分からないことはないが・・・」

嶺二「つか最近時間の流れが早過ぎるって思わねーか?」

鳴海「冬だからな」

嶺二「関係ねーだろそれ」

雪音「嶺二が言ってるのって流れ終末タイム理論じゃないの」

嶺二「流れ終末タイム理論・・・?」

雪音「物事が終わりに向かう時に時間の流れが変わること、その理論だよ」

鳴海「そんな理論は聞いたことがないんだが・・・」

雪音「馬鹿だと知らないかもね」

嶺二「つまり卒業が近づいてるから時間の流れが変わったのか・・・?」

雪音「きっともうすぐ終わるの」

嶺二「終わるって何がだよ?」

雪音「何だろうね?楽しみにしながら終わりを待とうよ」


◯1187貴志家鳴海の自室(深夜)

 片付いている鳴海の部屋

 鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない

 机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、朗読劇用の波音物語が置いてある

 机に向かって椅子に座っている鳴海

 鳴海はパソコンを見ている

 パソコンでインターネットを開く鳴海

 鳴海はインターネットの検索欄に”流れ終末タイム理論”と打ち込み、検索する

 ”流れ終末タイム理論”はインターネットでも調べても全くヒットしない


鳴海「やっぱり一条の悪ふざけか・・・」


◯1188波音高校校門(日替わり/朝)

 快晴

 たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く

 校門の前で部員募集を行っている鳴海、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 鳴海、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている

 通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している鳴海たち

 鳴海たちはクリスマスパーティーで嶺二から貰ったマフラーと手袋を身につけている

 鳴海と嶺二は紺色の、明日香、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は白色のマフラーと手袋を身につけている

 マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている


鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)菜摘が数ヶ月ぶりに登校する日が来た。今日までに、朗読を完璧にして、ライブの練習を仕上げて、部誌を山のように書いて、新しい部員たちと一緒に菜摘を迎えてやりたかった。(少し間を開けて)俺は望みは、100%中の1%が叶った程度だった。菜摘に期待されてばかりでいる自分の無力さを知った」


 鳴海たちの前を通りかかる生徒たちは、文芸部のことを気に留めず周りの生徒たちと楽しそうに話をしながら校舎内へ入って行く


◯1189波音高校特別教室の四/文芸部室(昼)

 昼休み

 文芸部の部室にいる鳴海、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 円の形に椅子を並べて座っている鳴海、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある

 鳴海の隣には誰も座っていない一脚の椅子が置いてある

 鳴海たちは話をしながら菜摘が来るのを待っている

 貧乏揺すりをしている鳴海


鳴海「(貧乏揺すりをしながら)遅いな・・・クソッ・・・」

明日香「鳴海、昨日の私みたいになってるけど?」

鳴海「(貧乏揺すりをしながら)ここに来る途中で倒れたかもしれない・・・」

明日香「えっ、本気で言ってんの?」

鳴海「(貧乏揺すりをしながら)ああ・・・12時には来るって話してたんだ」


 ポケットからスマホを取り出す詩穂

 詩穂はスマホの時計を見る

 スマホの時計は12:07と表示されている


詩穂「(スマホの時計を見たまま)遅刻だ・・・」


 スマホをポケットにしまう詩穂


汐莉「鳴海先輩、菜摘先輩に連絡してないんですか?」

鳴海「さっき電話をかけたが繋がらなかった」


 汐莉はポケットからスマホを取り出し、菜摘に電話をかける

 鳴海はポケットからスマホを取り出し、汐莉に電話をかけ始める

 しばらくの間何回かコール音が鳴り、留守番電話に繋がる

 機械音のガイダンスがスマホから以下のように流れる、”おかけになった電話番号は、現在、電源が入っていない・・・”

 汐莉はガイダンスの途中で電話を切る

 再び菜摘に電話をかける汐莉

 しばらくの間何回かコール音が鳴り、またしても留守番電話に繋がる

 機械音のガイダンスがスマホから以下のように流れる、”おかけになった電話番号は、現在・・・”

 汐莉はガイダンスの途中で電話を切る


嶺二「やベーな・・・何もなきゃいーけど・・・」

雪音「鳴海たちってデートに遅れた女の子に本気でキレるでしょ?そういう男って一番嫌われるよね」

嶺二「俺らは本気で菜摘ちゃんのことを心配してんだぞ」


 少しの沈黙が流れる


響紀「菜摘さんを探しに行くべきでは」

真彩「そ、そうっすよ!!行きましょう!!」


 汐莉はスマホをポケットにしまう

 鳴海のことを見る汐莉

 鳴海と汐莉の目が合う

 貧乏を揺すりをやめて立ち上がる鳴海


鳴海「入れ違わないように奥野と永山はここに残って、後の連中は外に菜摘を探しに・・・」


 部室の扉が開く

 鳴海たちが扉を見る

 菜摘が部室に入って来る


汐莉「(驚いて大きな声で)な、菜摘先輩!!!!」

菜摘「み、みんな・・・ご心配をおかけ・・・ってあれ?どうしたの?鳴海くん」

鳴海「(大きな声で)な、何で電話に出なかったんだよ!?!?」

菜摘「も、もしかしてかけてくれた?」

鳴海「(大きな声で)当たり前だろ!!!!」

雪音「(小声でボソッと)やっぱキレたじゃん・・・」


 菜摘はポケットの中に手を入れてスマホを探す


菜摘「(ポケットの中に手を入れたまま)どこに行ったのかな・・・」

明日香「まさか菜摘・・・」


 菜摘は別のポケットの中に手を入れスマホを探すが、スマホは見つからない


菜摘「ごめん・・・忘れちゃったみたい・・・」


 再び沈黙が流れる

 鳴海は力が抜けたように椅子に座る


明日香「(呆れて)相変わらず抜けてる性格ね・・・」

菜摘「久しぶりの学校だから気合を入れて来たたつもりなんだけどなぁ・・・」


 菜摘は鳴海の隣の椅子に座る


菜摘「(頭を下げて)改めまして、ご心配をおかけました」

汐莉「体調はもう大丈夫なんですか・・・?」

菜摘「(頭を上げて)うん!!お陰様でバッチリだよ!!」


 少しの沈黙が流れる


菜摘「(不思議そうに)みんな・・・どうかしたの・・・?なんか様子がおかしいよ」

鳴海「気にするな菜摘・・・」

菜摘「う、うん・・・」

嶺二「この感じ・・・菜摘ちゃんらしいっつーか・・・懐かしいっつーか・・・(少し間を開けて)とにかくすげー久しぶりに味わったな・・・」

汐莉「そうですね・・・」


 再び沈黙が流れる


響紀「今の空気感って三年ぶりに従兄弟と再会した時と少し似てませんか?」

真彩「悔しいけどちょっと理解出来るよ響紀・・・」

菜摘「私は響紀ちゃんとまあやんの従兄弟ってことかな?」

真彩「そ、そんな感じっすね!!」

響紀「菜摘さん」

菜摘「ん?」

響紀「私のことは響紀ちゃんではなく響紀くんと・・・」

菜摘「分かってるよ!!響紀ちゃん!!」

響紀「ちゃんは要りません・・・」

菜摘「うん!!響紀ちゃん!!」


 少しの沈黙が流れる


詩穂「凄い・・・一気にこの空間が菜摘ワールドになってる」

嶺二「変人の響紀ちゃんよりも優位に立てるのは菜摘ちゃんと明日香だけだったか・・・」

明日香「菜摘やあんたも変わってるでしょ・・・」

菜摘「えっ?私変わってるかな?」

明日香「自覚がないところが特にね・・・」

菜摘「自分じゃ分からないよ・・・」

嶺二「無自覚なのが菜摘ちゃんの良さだと思うぜ」

汐莉「同感です」

菜摘「そ、そうかな?」

汐莉「はい」

雪音「ねえ部長」

菜摘「何?雪音ちゃん」

雪音「今から私たちはどうしたら良い?」

菜摘「えっと・・・まずはみんながどんな活動をしていたのか知りたくて・・・」

明日香「鳴海から聞いてないの?」

菜摘「聞いてることもあるけど・・・そこまで具体的じゃなかったから・・・」

雪音「具体的に言わなかったんだ?鳴海」

鳴海「オブラートに包んで説明はしたぞ」

明日香「オブラートにね・・・菜摘がいない間どんだけ大変だったか・・・」

菜摘「みんな、ごめんね・・・」

明日香「菜摘は謝んないで。主に悪いのは鳴海と嶺二とその他私たちだから」

菜摘「ううん。明日香ちゃん、休んだ私に責任はあるよ」

汐莉「菜摘先輩は責任なんて気にしないでください」

嶺二「汐莉ちゃんの言う通りだな」

鳴海「ああ。俺が菜摘の代わりを上手く務めていれば、みんなも苦労はしなかったんだ」

菜摘「でも私は鳴海くんに私の代わりを務めてほしいって頼んでないし・・・」

鳴海「だとしても副部長が部長の代わりをやるのは当然だろ」

菜摘「そ、それはそうだけど・・・」


 再び沈黙が流れる


鳴海「菜摘、とりあえず俺たちが今どんな活動をしているのか口頭で教えるぞ」

菜摘「うん、お願い」

鳴海「まずは朝、学校の門の前で部員募集をやるんだ。登校して来た生徒たちに声をかけて、チラシを配る」

菜摘「新入部員は最低4人必要なんだよね?」

鳴海「ああ」

菜摘「現時点で文芸部に興味を持ってくれてる子はいるの?」

嶺二「不思議なことにいねーんだよこれが」

菜摘「そうなんだ・・・」

鳴海「敢えて言葉を濁さすに言うが、このままだと文芸部は廃部になるかもしれない」

菜摘「それなら廃部にならないように頑張ろう!!・・・ってみんなは前から頑張ってるよね・・・」

鳴海「部員募集は響紀たちにも協力してもらって、頑張ってる最中だよ」

菜摘「ありがとう響紀ちゃん、詩穂ちゃん、まあやん、汐莉ちゃん」

真彩「そ、そんなそんな・・・うちら大して役に立ってないんで・・・」

菜摘「手伝ってもらってるだけで凄く嬉しいよ、まあやん」

真彩「こ、こちらこそそー言われたら嬉しいっす・・・」

菜摘「部員募集は朝だけやってるの?」

鳴海「いや、昼休みに一年生と二年生の廊下で同じことをしてるんだ」

明日香「だけど今のところ成果はなし・・・」

菜摘「放課後は?」

嶺二「朗読の練習ばっかだな」

菜摘「波音物語は読み辛くない?修正して欲しい部分とか、おかしな部分があったら今のうちに手直しするよ」

鳴海「俺は特にないけど・・・」

汐莉「私も平気です」

明日香「同じく私も」

菜摘「雪音ちゃんは?」

雪音「読みやすいよ」

菜摘「良かった・・・読み辛いんじゃないかって心配だったんだけど・・・」

鳴海「その心配はないと思うぞ、菜摘。意外と俺たちも朗読自体はスムーズにやれてるしな」

菜摘「そっか!!それなら軽音部とも合わせられそう?」

響紀「まだ試してませんが、こちらから合わせられるようにやります」

菜摘「まだ試してないって・・・どういうこと・・・?」

詩穂「ライブの練習が終わってなくて・・・朗読とライブを合わせられてないんです」


 少しの沈黙が流れる


響紀「ご心配なく、すぐに完璧にしますから」

菜摘「えっとー・・・(少し間を開けて心配そうに)本当に大丈夫・・・?」

響紀「はい」

鳴海「軽音部はいつも俺たちの期待に応えてくれていた。だから今回も応えてくれるはずだ」

汐莉「菜摘先輩」

菜摘「な、何?汐莉ちゃん」

汐莉「私たちは決して、菜摘先輩のことを裏切りません」

菜摘「う、うん・・・じゃあ軽音部は放課後にライブの練習をしてるの?」

真彩「放課後とゆーか・・・放課後の放課後みたいな・・・」

菜摘「放課後の・・・放課後・・・?」

汐莉「私が朗読の練習に参加しなきゃいけないので、軽音部の活動は文芸部が解散してからやってるんです」

雪音「夜遅くまで居残りしてるって言ったら伝わるかな」

菜摘「えっ!?夜遅くまで!?」

真彩「きょ、許可は貰ってるっす!!」

菜摘「で、でも夜遅くまでっていうのはちょっと・・・」

詩穂「居残ってやらないと本番に間に合わなくなるので・・・」


 再び沈黙が流れる


嶺二「菜摘ちゃん、帰るのが遅くなるのは仕方ねーよ。準備には時間がかかるし、今練習しなきゃ成功が消えちまうんだ」

菜摘「鳴海くんたちが帰った後に汐莉ちゃんたちは練習してるんだよね?」

汐莉「はい」

菜摘「だったら鳴海くんたちも残ろう!!」

明日香「え・・・」

嶺二「マジかよ・・・」

菜摘「だって後輩たちを残して帰るなんて良くないもん!!」

明日香「ま、まあね・・・確かにそうなんだけど・・・」

鳴海「急用がない奴は残ることにするか?」

菜摘「うん!!そうしよう!!」

汐莉「でも・・・菜摘先輩は大丈夫なんですか・・・?体のこととか・・・」

菜摘「大丈夫!!」

雪音「菜摘は先に帰るべきじゃないの?」

菜摘「えー!!」

鳴海「菜摘、こういうことはすみれさんと潤さんと話をしてから決めた方が良い」

菜摘「絶対に反対されるよ・・・」

鳴海「だったら尚更話した方が良いじゃないか」

菜摘「うん・・・」

響紀「私たちの練習も近々終わりますから、菜摘さんは無理せずに過ごすのが良いかと」

鳴海「ああ」


 少しの沈黙が流れる


嶺二「つか俺らは軽音部の練習を見てればいーのか?」

響紀「邪魔になるので困ります」

嶺二「ならどーすりゃいーんだよ?」

菜摘「部誌を書いてれば良いんじゃないかな」

明日香「名案ね、時間を潰せるし」

鳴海「そうだな。菜摘と南以外の文芸部員は部誌を書いて軽音部が解散するを待とう」

菜摘「私も書くよ!!」

鳴海「すみれさんたちが許可を出したら書いても良いが・・・」

菜摘「許可が出なかったから家で書くもん!!」

鳴海「そ、そうか・・・(少し間を開けて)とにかくこれで部活の説明は終わったな・・・」

菜摘「鳴海くん、波音博物館っていつ行くんだっけ?」

鳴海「今週の土曜日だ」

菜摘「オッケー、覚えとかなきゃ」

鳴海「菜摘、すみれさんたちの許可を・・・」

菜摘「(鳴海くんの話を遮って)大丈夫だよ、鳴海くん。この前部活で行くって伝えといたから」

鳴海「も、もう話を済ませておいたのか・・・」

菜摘「遅れるわけにはいかないからね」

鳴海「お、おう・・・」

菜摘「これで一通り私が知っておくべき情報は聞いたかな?」

嶺二「いや、もう一つあるぜ?菜摘ちゃん」

菜摘「あっ、バナナならおやつには入らないよ」

 

 再び沈黙が流れる


菜摘「だ、誰か・・・小学生の遠足じゃないんだぞ!!ってツッコミを・・・」

鳴海「す、すまん・・・シンプルに聞き逃してた・・・」

菜摘「おやつは300円までだからね?」

鳴海「しょ、小学生の遠足じゃないんだぞ!!」


 少しの沈黙が流れる


響紀「大滑りをかましてますよ、鳴海くん」

鳴海「い、今のは滑るところまでがギャグなんだ!!」

響紀「言い訳が痛々しいですね」

鳴海「お前だって滑りまくってる時があるだろ・・・」

響紀「私のは滑ってません」


 再び沈黙が流れる


菜摘「鳴海くん、嶺二くん、明日香ちゃん、前にもこのボケはやってたじゃないかー!!ってツッコんでくれても良かったんだよ」

明日香「な、菜摘・・・私・・・そういうのしないから・・・」

菜摘「えー・・・」

嶺二「俺ら前にもこんなボケをしてたのか・・・?」

菜摘「うん、確かしてたと思う」

鳴海「いちいち自分たちがどんなボケとツッコミをしたかなんて覚えてないな・・・」

明日香「そもそもあんたたちはくだらない話が多いしね・・・」

嶺二「くだらねーから大盛り上がりするんだろ」

鳴海「その通りだ。いつもいつも真剣な話をしてたら疲れ・・・」

汐莉「(鳴海の話を遮って)どうでも良いです!!」

嶺二「おおー!!これぞまさしくくだらねー話をぶった斬る完璧なツッコミだ!!」

明日香「(小声でボソッと)私まで汐莉のツッコミのために無駄な会話をさせられた気がするんだけど・・・」

嶺二「明日香、三年間同じクラス同士だった俺たちの絆を今の会話で再確認したんだよ」

明日香「とんだ確認方法ね・・・」

菜摘「結局嶺二くんは何を言いかけてたんだっけ?」

嶺二「俺たちはまだ菜摘ちゃんに聞いてねーことがあるんだ」

菜摘「えっ、私が嶺二くんたちに聞くんじゃなくて、私に嶺二くんたちが聞くの?」

嶺二「そーだよ菜摘ちゃん、菜摘ちゃんが俺らに聞くんじゃなくて菜摘ちゃんに俺らが聞くんだ」

鳴海「またややこしい会話が始まったな・・・」

菜摘「私に聞きたいことって何?」

嶺二「鳴海、出番だぜ」

鳴海「俺をお前のボケに巻き込まないでくれ」

嶺二「ボケじゃねーよ!!鳴海が菜摘ちゃんに聞くんだろ!!」

鳴海「俺が?」

嶺二「そーだ!!」

菜摘「私が嶺二くんたちに聞くんじゃなくて、私に嶺二くんたちが聞くのかと思ってたんだけど、本当は鳴海くんが私に聞くの?」

鳴海「らしいな・・・」


 少しの沈黙が流れる


明日香「何で聞かないのよ鳴海!!」

鳴海「ま、まず俺は何を聞けば良いのか分からないんだ」

明日香「はぁ!?」

真彩「まるで迷路みたいな会話っすね・・・」

鳴海「嶺二が適当なことを抜かしてボケるからこんなことになるんだろ」

嶺二「俺のせいにすんなよ!!つかてめーが菜摘ちゃんに聞けばこんなうぜー話は一発で終わるんだぞ!!」

鳴海「だから何を聞けば良いのか分からないんだよ」

雪音「スイートメロンパン馬鹿だもんね、鳴海」

鳴海「おい、馬鹿は余計だろ馬鹿は」

汐莉「普通スイートメロンパンが余計だって言うと思うんですが」

鳴海「南と同じで俺に普通は通じないんだ」

汐莉「こういう時に謎の自信を持っちゃてるのが鳴海先輩ですよね」

鳴海「自信があるのは良いことだろうが」


 再び沈黙が流れる


菜摘「それで鳴海くんは私に何を聞こうとしてたのかな?」

鳴海「バナナはおやつに入るかどうか?」

嶺二「(大きな声で)またそれかよ!?!?」

明日香「(大きな声で)またそれなの!?!?」

汐莉「(大きな声で)またそれですか!?!?」


 嶺二の”またそれかよ!?!?”と、明日香の”またそれなの!?!?”と、汐莉の”またそれですか!?!?”が綺麗に重なる


鳴海「見事にハモってたな・・・お前ら合唱部みたいだったぞ」

汐莉「鳴海先輩、このノリこそが文芸部ですから」

鳴海「そうだな。程良く息も合ってきたしそろそろ今日は帰るか」

菜摘「鳴海くん」

鳴海「冗談だ」

菜摘「早く私に聞いてよ鳴海くん!!」

鳴海「嶺二、悪いが俺の代わりに聞いてやってくれ」

嶺二「マジで忘れやがったのかよ・・・(少し間を開けて)仕方ねーな・・・鳴海の代わりに俺が聞くぞ、菜摘ちゃん」

菜摘「う、うん!!ドンと来い!!」


 少しの沈黙が流れる


嶺二「総合演出は菜摘ちゃんがやるのか?」

菜摘「え、総合演出?」

鳴海「あー思い出したぞ。菜摘、総合演出はお前がやるよな?」

菜摘「同じことを二回も続けて聞かなくて大丈夫だよ鳴海くん」

鳴海「そ、そうか・・・」

菜摘「総合演出って朗読劇全体に指示を出す人だよね?」

鳴海「あ、ああ。ライブのリーダーを響紀が、音と照明のリーダーを嶺二が、朗読のリーダーを俺がやるって決めたんだが、それを束ねて朗読劇の全てをコントロールする奴が総合演出になるんだ」

菜摘「朗読のリーダーが鳴海くんなら、鳴海くんが総合演出をやれば良いと思うんだけど・・・それじゃダメなの・・・?」

鳴海「だ、ダメだろ」

菜摘「何で・・・?私がいない間、みんな鳴海くんの指示を聞いてたんでしょ?」

明日香「一応はね」

菜摘「だったら今更私が出しゃばるより、鳴海くんが最後までやり通した方が良いと思うよ」

鳴海「な、菜摘、俺は絶対平部員の方が合ってるんだ」

菜摘「そうかな・・・」


 再び沈黙が流れる


鳴海「よ、よく考えてみてくれ!!お、俺が総合演出になったら権力を振りかざして朗読劇をめちゃくちゃにしちゃうかもしれないだろ!!」

菜摘「うーん・・・鳴海くんはそんなことしないと思うけど・・・」

鳴海「あ、明日香!!お前は反対だよな!?」

明日香「まあ・・・総合演出は・・・今のあんたならやってみても良いんじゃないの」

鳴海「う、裏切りやがって!!嶺二、総合演出は菜摘の方が良いと思うだろ!?」

嶺二「いや、俺は鳴海でいくべきだと思ってるぞ」


 少しの沈黙が流れる


汐莉「鳴海先輩」

鳴海「な、何だよ・・・」

鳴海「これだけの人たちの言葉を聞いてまだ逃げようとするなんて、格好悪いです。(少し間を開けて)私が文芸部に入った頃の、勢いしかなかった鳴海先輩の姿をもう一度見せてくださいよ」


 再び沈黙が流れる


鳴海「は、反対する奴はいないのか・・・」


 少しの沈黙が流れる


雪音「私、気になるな。鳴海に何が出来るのか、そして何が出来ないのか。みんながヘタレなあなたに期待する訳を、私にも教えてくれない?鳴海」

鳴海「ひ、響紀たちは・・・?」

響紀「鳴海くんで構いませんが」

真彩「お、おーえんしてます!!」

鳴海「な、永山・・・残すはお前だけだ・・・」

詩穂「今の鳴海くんは嫌いだけど・・・最後に総合演出をやって合同朗読劇を成功させたら・・・その評価も変わるかもしれないです・・・」


 再び沈黙が流れる


菜摘「鳴海くん」

鳴海「分かってる・・・分かってるよ菜摘・・・」

菜摘「うん」

鳴海「俺が・・・総合演出を・・・やる・・・」

嶺二「よっしゃ!!やっと決まったな!!」

鳴海「めちゃくちゃ不本意なんだが・・・」

明日香「決まったことに文句は言わないの」

鳴海「すまん・・・」


◯1190帰路(放課後/夜)

 日が沈み暗くなっている

 一緒に帰っている鳴海と菜摘

 部活帰りの学生がたくさんいる

 鳴海と菜摘はマフラーと手袋を身につけている

 鳴海は紺色の、菜摘は白色のマフラーと手袋を身につけている

 マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている

 鳴海と菜摘は話をしている


菜摘「久しぶりの学校だったけど、みんな全然変わってなくて安心しちゃった」

鳴海「そうか?」

菜摘「うん!!生徒会選挙や合宿をしてた頃と同じだったよ!!」

鳴海「きっと菜摘が戻って来たからだ」

菜摘「私が入院してた時は今日みたいな感じじゃなかったの?」

鳴海「ああ・・・どんよりした雰囲気で、もっと険悪だったよ」

菜摘「えっ・・・仲が悪くなってたってこと・・・?」

鳴海「良くはなかったと思うな・・・(少し間を開けて)でもそれも今日で終わりだ。菜摘が帰って来てみんなの顔は明るくなっていたし、ふざける余裕も出てきた」

菜摘「そっか、きっと良い方向に行ってるんだね」

鳴海「そうだな。問題は俺があいつらに指示を出すってことだが・・・」

菜摘「心配なの?鳴海くん」

鳴海「心配しかないくらいだぞ。だいたい俺は、他人に命令をするのが得意じゃないってこの数ヶ月で散々学んだんだ」

菜摘「私も得意じゃないけど、今までみんな私の言うことを聞いてくれてたよ」

鳴海「俺と菜摘の人望の差だな・・・今日の菜摘を見てても思ったが、菜摘は明日香たちから絶大な信頼を得てるんだろ。だからこそあいつらは菜摘の言うことを素直に聞くんだ」

菜摘「明日香ちゃんたちが私のことを信頼しているのは、鳴海くんと違って私がしっかりものを言うからじゃないかな?鳴海くんは、明日香ちゃんたちに指示を出す時や、部活の活動を決める時も、少し自信なさそうに言うから心配になるんだと思うよ」


 少しの沈黙が流れる


菜摘「誰かの上に立つ人は、自信を持たなきゃ」


◯1191貴志家鳴海の自室(深夜)

 片付いている鳴海の部屋

 鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない

 机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、朗読劇用の波音物語が置いてある

 ベッドの上で横になっている鳴海

 カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる


鳴海「(声 モノローグ)そうか・・・俺はフラフラしていたんだ・・・だからみんなは俺について来ようとしなかった・・・自信も持たずに、その場しのぎの中途半端な指示が不信感を抱かせていたんだ。(少し間を開けて)俺はやっと、変わり者の響紀に何故明日香や南が惚れたのか分かった。そしてあいつが四人の女子を如何にして束ねているのかも分かった。響紀は才能があって、勉強が出来て、面白くて、しかも周囲の人間を引っ張る力と自信を持っている。俺もあいつのように、みんなの手を引っ張らなくはてならない」


◯1192貴志家リビング(日替わり/朝)

 外は晴れている

 時刻は七時半過ぎ

 制服姿で椅子に座ってニュースを見ている鳴海

 キッチンで風夏が弁当を作っている


鳴海「(声 モノローグ)総合演出という役職をゲットした俺は、更に忙しい生活を送ることとなった」


◯1193波音高校校門(朝)

 晴れている

 たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く

 校門の前で部員募集を行っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている

 通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している鳴海たち

 鳴海たちはクリスマスパーティーで嶺二から貰ったマフラーと手袋を身につけている

 鳴海と嶺二は紺色の、菜摘、明日香、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は白色のマフラーと手袋を身につけている

 マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている


鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)菜摘は学校に戻って来たが、俺の頭の中には常に恐怖心が潜んでいた。また菜摘が倒れたら?次倒れた時、奇跡が起きなかったら?そんな嫌な考えを消し去るべく、俺はのめり込むように部活に没頭していった」

菜摘「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)来年度から文芸部に入りたい人はいませんかー!!!!」

鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)興味があれば特別教室の四に来てください!!!!いつでも待ってます!!!!」

明日香「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)ご協力お願いしまーす!!!!」

嶺二「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)文芸部はどんな時でも誰が来ても歓迎するよー!!!!」

雪音「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながらやる気がなさそうに)お願いしまーす」

響紀「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)文芸部を波高に残させてくださーい!!!!」

汐莉「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)来年度私と一緒に文芸部で活動してくれる方を募集していまーす!!!!」

詩穂「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)チラシだけでも貰って行ってくれませんかー!!!!」

真彩「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)文芸部でーす!!!!よろしくお願いしまーす!!!!」


 鳴海たちの前を通りかかる生徒たちは、文芸部のことを気に留めず周りの生徒たちと楽しそうに話をしながら校舎内へ入って行く


◯1194波音高校一年生廊下(昼)

 昼休み

 一年生廊下にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 鳴海たちは部員募集を行っている

 鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている

 廊下では喋っている一年生や、昼食を取りに移動している一年生がたくさんいる

 鳴海たちは通りかかる一年生たちに部員募集の紙を差し出している


鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)菜摘は誰からも関心を寄せられない文芸部の状況を嘆かずに、ひたむきに部員募集を行っている。小さな菜摘の体が、通り過ぎる生徒とぶつかりながらも部員募集の紙を差し出していて、俺の心は締め付けられた」


◯1195波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 夕日が沈みかけている

 文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある

 鳴海、明日香、汐莉、雪音は朗読劇用の波音物語を手に持って立っている

 菜摘たちは椅子に座っており、朗読劇用の波音物語を持っている

 朗読の練習を行っている鳴海、明日香、汐莉、雪音

 菜摘たちは朗読の練習の様子を見ている


鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら 声 モノローグ)俺と明日香と南と一条が行う朗読を菜摘が聞く。この不思議なメンバーで行われる朗読劇に、菜摘は大変満足しているようだった」


 朗読劇用の波音物語を読み終える鳴海たち

 拍手をする菜摘、嶺二、響紀、詩穂、真彩


菜摘「(拍手をしながら)凄い良かったよ!!」

鳴海「そ、そうか・・・」

明日香「ここを直した方が良いってところはある?」

菜摘「(拍手をするのをやめて)ううん!!このまま完成度を高めるのが一番だと思う!!」

汐莉「どうも前から朗読について明確な意見が飛んで来てないような気がするんですけど、ひょっとして遠慮してますか?」

嶺二「いや、別に遠慮なんかしてねーよ。つーか練習を始めた頃は俺がボロクソに意見を言ってるし」

明日香「なら私たちの朗読はどんどん上達してるの・・・?」

嶺二「そーだと思うぜ」

響紀「噛む回数が減ってるし、以前に比べると声もずっと聞き取りやすくなってます」

詩穂「ストーリーも頭に入って来たよね」

響紀「うん」

鳴海「練習すれば伸びるもんなんだな」

雪音「というか四人が揃ったのが大きいんじゃない」

真彩「確かにそれはあるかもっす。前は凛無しでやってましたしねー」

菜摘「凛無しって?」

汐莉「私が曲を作ってる期間は、朗読の練習に参加出来なかったんです」

菜摘「そっか・・・汐莉ちゃん、私がいない間曲を作ってくれてたんだよね。ありがとう」

汐莉「いえ・・・私は先輩の役に立ちたいだけで・・・」

菜摘「汐莉ちゃんはいっぱい役に立ってるよ」

汐莉「そんなこと・・・ないです・・・」


◯1196波音高校一年六組の教室/軽音部一年の部室(放課後/夜)

 外は日が沈み暗くなっている

 軽音部の部室にいる鳴海、汐莉、響紀、詩穂、真彩

 軽音部の部室でライブの練習を行っている汐莉、響紀、詩穂、真彩

 汐莉はリードギター、響紀はサイドギター、詩穂はベース、真彩はドラムを演奏している 

 ボーカルは汐莉が担当している

 椅子に座って軽音部の演奏を聴いている鳴海

 少しすると汐莉たちは演奏を終える


鳴海「格好良いじゃないか、今のが織田信長を救出しに行く場面で流す曲だろ?」

汐莉「はい」

響紀「何かご命令があれば聞きますが?」

鳴海「命令って言われてもな・・・」

汐莉「先輩は総合演出なんですよ。ガツンと言ってください」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「響紀たちが朗読の練習を聞いて具体的な意見を言わない理由が分かったよ・・・言いたくても素人だから何て言ったら良いのか分からないんだ」

真彩「そうなんすよねー!!」

詩穂「言いたいことはあるの?」

鳴海「もう少し・・・南の声を聞こえるようにしてほしいんだが・・・」


 再び沈黙が流れる


鳴海「(声 モノローグ)自信を持て・・・はっきり口に出して朗読劇を良いものにするんだ・・・」

詩穂「シャウトですか・・・?」

鳴海「そ、それは絶対に違う」

汐莉「もしかして、楽器の音がうるさいって思ってます?」

鳴海「あー・・・そうだ。楽器の音がうるさいんだ」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「(声 モノローグ)よし!!はっきり口に出したぞ!!」

真彩「ちょっと・・・傷ついたっす今のは・・・」

鳴海「き、傷ついた!?」

真彩「うちら合唱団じゃなくてバンドなんで・・・演奏がうるさいって言われたらもう終わりっすよ・・・」

鳴海「(声 モノローグ)く、クソッ!!はっきり口に出し過ぎたのか!?!?」


 再び沈黙が流れる


鳴海「お、奥野たちの演奏は素晴らしいが、サビの部分でもっと南の歌声が聞こえるようにしてほしいんだ」

真彩「すんませんね・・・うるさい演奏で・・・」

鳴海「(声 モノローグ)お、俺が自信を持ったら奥野の自信がなくなったぞ!!どうなってるんだ!!」

響紀「何の音がうるさいのか分かりますか?」

鳴海「ぜ、全体的にうるさいからな・・・」

真彩「あー・・・小四からやってたドラムがうるさいのかー・・・もうダメかもなー・・・」

汐莉「しっかりしてまあやん」

真彩「無理だよー・・・もう心がボロボロだー・・・」

鳴海「(大きな声で)お、お前たちは天才的に素晴らしいバンドだが音がやかましいからもう少し小さくして南の声を聞こえやすくしてくれ!!!!分かったか!!!!」

響紀「分かりました・・・」

鳴海「(声 モノローグ)俺は総合演出として響紀たちに指示を出し、菜摘は居残って部誌を書いた」


◯1197波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夜)

 椅子に座りパソコンと向かい合ってタイピングをしている菜摘、明日香、嶺二、雪音

 菜摘たちは部誌制作を行っている

 校庭では運動部が活動している


鳴海「(声 モノローグ)下手に菜摘を一人で帰宅させるより、俺が家に届ける方が安全だとすみれさんが考えたからだ」


◯1198早乙女家に向かう道中(放課後/夜)

 菜摘を家に送っている鳴海

 鳴海と菜摘はマフラーと手袋を身につけている

 鳴海と紺色の、菜摘は白色のマフラーと手袋を身につけている

 マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている

 話をしている鳴海と菜摘


菜摘「忙しいのにごめんね」

鳴海「気にするな、お前を家に届けるのも総合演習の立派な仕事だ」

菜摘「鳴海くん」

鳴海「ん?」

菜摘「総合演出家らしくなってきたよ」

鳴海「まだ総合演出の職務についてから一日しか経ってないのに、もうそれらしくなってきたのか」

菜摘「うん、多分」

鳴海「多分かいな・・・」

菜摘「響紀ちゃんたちには指示を出せた?」

鳴海「もちろんだ。自信を持って楽器の音がやかましいって言ったからな」

菜摘「そ、それは・・・どういうことなの鳴海くん・・・」

鳴海「楽器の音がうるさ過ぎて南の歌声が聞こえ辛かったんだ」

菜摘「響紀ちゃんたち・・・ショックを受けてなかった・・・?」

鳴海「奥野が凹んでいたが・・・」

菜摘「やっぱり・・・鳴海くん、明日響紀ちゃんたちに謝らなきゃダメだよ・・・」

鳴海「だよな・・・」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「今後は言い方も気をつけないと・・・」

菜摘「うん。頑張ってね、鳴海くん」


◯1199貴志家リビング(夜)

 片付いている鳴海の部屋

 鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない

 机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、朗読劇用の波音物語が置いてある

 机に向かって椅子に座っている鳴海

 鳴海は朗読劇用の波音物語を読んでいる

 カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる


鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら)ありがとうとごめんねを反復して、その前か後に怪我をしたり、怪我をさせたりで、作品は初めて1よりも大きな形になるのか・・・」


◯1200波音高校校門(日替わり/朝)

 晴れている

 たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く

 校門の前で部員募集を行っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている

 通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している鳴海たち

 鳴海たちはクリスマスパーティーで嶺二から貰ったマフラーと手袋を身につけている

 鳴海と嶺二は紺色の、菜摘、明日香、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は白色のマフラーと手袋を身につけている

 マフラーと手袋には小さくペンと音符が刺繍されている


鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)菜摘の復帰は確実に文芸部と軽音部を変えた」


◯1201波音高校特別教室の四/文芸部室(昼)

 昼休み

 文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 円の形に椅子を並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 昼食を食べている鳴海たち

 教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある

 鳴海、嶺二、雪音、詩穂はコンビニのパンを、明日香はコンビニのおにぎりを、菜摘、汐莉、響紀は手作りの弁当を、真彩はコンビニの弁当をそれぞれ食べている

 鳴海たちは昼食を食べながら話をしている


鳴海「(話をしながら 声 モノローグ)夏休みが明けた頃や、まだ千春が文芸部に在籍していた頃の空気に菜摘は戻したのだ」


◯1202波音高校二年生廊下(昼)

 昼休み

 二年生廊下にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 鳴海たちは部員募集を行っている

 鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩は部員募集の紙の束を持っている

 廊下では喋っている二年生や、昼食を取りに移動してい二年生がたくさんいる

 鳴海たちは通りかかる二年生たちに部員募集の紙を差し出している


鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)馬鹿げた発想だが・・・菜摘が魔法を使って俺たちの離れた気持ちや想いを繋ぎ合わせているみたいだった」


◯1203波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 夕日が沈みかけている

 文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある

 鳴海、明日香、汐莉、雪音は朗読劇用の波音物語を手に持って立っている

 菜摘たちは椅子に座っており、朗読劇用の波音物語を持っている

 朗読の練習を行っている鳴海、明日香、汐莉、雪音

 菜摘たちは朗読の練習の様子を見ている


鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら 声 モノローグ)お陰で今の文芸部に嫌な空気は流れていない」


◯1204波音高校一年六組の教室/軽音部一年の部室(放課後/夜)

 外は日が沈み暗くなっている

 軽音部の部室にいる鳴海、汐莉、響紀、詩穂、真彩

 軽音部の部室でライブの練習を行っている汐莉、響紀、詩穂、真彩

 汐莉はリードギター、響紀はサイドギター、詩穂はベース、真彩はドラムを演奏している 

 ボーカルは汐莉が担当している

 椅子に座って軽音部の演奏を聴いている鳴海

 

鳴海「(軽音部の演奏を聞きながら 声 モノローグ)いつぶりかに喜び、楽しさ、幸せがスズメのように俺たちの側を飛び回っている」


◯1205早乙女家に向かう道中(放課後/夜)

 菜摘を家に送っている鳴海

 楽しそうに話をしている鳴海と菜摘


鳴海「(楽しそうに菜摘と話をしながら 声 モノローグ)多数決やクリスマスパーティーをしていた文芸部はすっかり消えようだ」


◯1206貴志家鳴海の自室(深夜)

 片付いている鳴海の部屋

 鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない

 机の上にはパソコン、菜摘とのツーショット写真、菜摘から貰った一眼レフカメラ、朗読劇用の波音物語が置いてある

 ベッドの上で横になっている鳴海

 カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる


鳴海「週末が楽しみだな・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ