Chapter6卒業編♯19 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
登場人物
滅びかけた世界
ナツ 16歳女子
ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。
スズ 15歳女子
マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。
老人 男
ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・
中年期の明日香 女子
老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。
七海 女子
中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。
老人と同世代の男兵士1 男子
中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。
レキ 女子
老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。
老人と同世代の男兵士2 男子
中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。
滅んでいない世界
貴志 鳴海 18歳男子
波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。
早乙女 菜摘 18歳女子
波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。
白石 嶺二 18歳男子
波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。
天城 明日香 18歳女子
波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。
南 汐莉15歳女子
波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。
一条 雪音18歳女子
波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・
柊木 千春女子
Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。
三枝 響紀15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。
永山 詩穂15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。
奥野 真彩15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。
早乙女 すみれ45歳女子
菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。
早乙女 潤46歳男子
菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。
神谷 志郎43歳男子
波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。
荻原 早季15歳女子
Chapter5に登場した正体不明の少女。
貴志 風夏24歳女子
鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。
一条 智秋24歳女子
雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。
双葉 篤志18歳男子
波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。
有馬 勇64歳男子
波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。
細田 周平15歳男子
野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。
貴志 紘
鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。
貴志 由香里
鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。
神谷 絵美29歳女子
神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。
波音物語に関連する人物
白瀬 波音23歳女子
波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。
佐田 奈緒衛17歳男子
波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。
凛21歳女子
波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。
明智 光秀55歳男子
織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。
織田 信長48歳男子
天下を取るだろうと言われていた武将。
一世 年齢不明 男子
ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。
Chapter6卒業編♯19 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
◯1079貴志家リビング(日替わり/朝)
外は快晴
時刻は七時半過ぎ
テーブルの上に置き手紙がある
置き手紙には“そろそろクリスマスケーキが食べたいお年頃”と書かれている
リビングのテレビではニュースが流れている
制服姿で椅子に座ってニュースを見ている鳴海
ニュースキャスター1「昨晩行われた対談によると、メナス大統領は・・・」
テレビを消して立ち上がる鳴海
鳴海「(声 モノローグ)あっという間にと言うべきか、それともいつの間にかと言うべきか、気づいた時には期末試験が始まり、クリスマスパーティーを翌日に控えていた」
◯1080波音高校校門(朝)
快晴
たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く
校門の前で部員募集を行っている鳴海、明日香、嶺二、雪音
鳴海、明日香、嶺二、雪音は部員募集の紙の束を持っている
通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している鳴海たち
明日香は手袋をつけて部員募集の紙を差し出しているが、鳴海、嶺二、雪音は手袋をつけていない
鳴海、嶺二、雪音の指先が赤くなっている
雪音は右目に眼帯をつけている
鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)幸い、神谷のお陰で期末試験中も俺たちは部活の活動が許されていたが・・・」
鳴海たちの前を通りかかる生徒たちは、文芸部のことを気に留めず周りの生徒たちと楽しそうに話をしながら校舎内へ入って行く
鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)部員募集の結果は変わらず散々だった・・・」
嶺二「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)一年生!!!!二年生!!!!一緒に朗読劇の準備をしようぜ!!!!」
明日香「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)文芸部存続にご協力お願いしまーす!!!!自分のペースで自由にやれる部活でーす!!!!」
女子生徒1「(小さな声で)試験中に活動してるのに、自分のペースで出来るわけないよね」
女子生徒2「(小さな声で)シッ!聞こえたら怒られるよ」
女子生徒1と2が話をしながら校舎の中へ入って行く
雪音「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながらやる気がなさそうに)文芸部でーす、部員集めてまーす」
◯1081波音高校三年三組の教室(昼前)
数学の試験が行われている
試験監督の教師が生徒たちのことを見ている
問題を解き終えて退屈そうにしている鳴海と雪音
雪音は右目に眼帯をつけている
明日香はまだ問題を解いている
嶺二は問題を解き終えて机に突っ伏して眠っている
鳴海「(声 モノローグ)年度末を入れても、俺が波高で試験を受ける回数はあと4回だけか・・・」
◯1082波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/昼)
文芸部の部室にいる鳴海、明日香、嶺二、雪音
円の形に椅子を並べて座っている鳴海、明日香、嶺二、雪音
昼食を食べている鳴海たち
教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある
雪音は右目に眼帯をつけている
校庭では運動部が活動している
鳴海は風夏の手作り弁当、明日香はコンビニのおにぎり、嶺二と雪音はコンビニのパンを食べている
明日香「鳴海のお弁当、自分で作ったの?」
鳴海「いや、姉貴が作ったんだ」
明日香「えっ、風夏さんが?」
鳴海「ああ」
嶺二「お前ら、別々に暮らしてるんじゃねーのか?」
鳴海「最近は違うんだよ・・・」
雪音「ブラコンのお姉さんと同棲出来て良かったじゃん、鳴海」
鳴海「むしろ最悪だ・・・姉貴は結婚の話をしてからずっと家にいるんだぞ・・・」
明日香・嶺二「(大きな声で)結婚!?!?」
鳴海「あいつ、プロポーズされたらしいんだよ・・・」
嶺二「ぷ、プロポーズか・・・鳴海の姉貴もつい女になったんだな・・・」
鳴海「おい、変な言い方はやめろ」
嶺二「悪い悪い」
明日香「い、いつ結婚するの?」
少しの沈黙が流れる
雪音「鳴海が風夏さんの結婚を止めたんでしょ」
深くため息を吐き出す鳴海
明日香「(ドン引きしながら)あんたって最低な弟ね・・・」
鳴海「誤解しないでくれ明日香。俺は決して結婚するな、とは言ってないんだ」
明日香「なら何て言ったのよ」
鳴海「け、結婚したきゃ勝手にしてろ・・・と言った・・・」
雪音「最低過ぎて笑える」
鳴海「笑うな・・・」
雪音「でも鳴海の気持ちも分かるよ、大好きなお姉ちゃんが自分の手から離れてどこかに行くのは嫌だよね。分かる分かる」
鳴海「(小声でボソッと)シスコンか俺は・・・」
明日香「鳴海、結婚させてあげなさいよ、風夏さんはあんたみたいな馬鹿でアホな弟のためにお金と時間を今まで使ってきたんだから」
嶺二「早まるんじゃねえ、鳴海。姉貴の彼氏がどんなゲス野郎か確認してから結婚のゴーサインを出すんだ」
明日香「嶺二も最低ね・・・」
嶺二「俺の何が最低なんだよ!?親族の結婚相手の性格とか貯金とか職業は細かくチェックしとかなきゃ後でやべ3ーことになるんだぞ!!」
明日香「あんた、絶対娘の彼氏にいちゃもんをつけるタイプの男でしょ」
嶺二「おう!!」
再び沈黙が流れる
明日香「鳴海は嶺二と同じような男になりたいわけ?」
鳴海「いや、それだけは勘弁だ」
嶺二「何でだよ!?」
鳴海「嶺二と同じになるくらいなら、姉貴には結婚してもらおう。致し方ない」
明日香「どうして弟のあんたがそんな上から目線なのよ・・・」
鳴海「弟だから上目線なんだろ」
少しの沈黙が流れる
明日香「良い?鳴海、結婚なんて人生に数えるほどしか機会がないんだから、相手がゴミ男じゃない限り止めちゃダメ。分かった?」
鳴海「ああ・・・そういえば菜摘も似たようなことを言ってたよ・・・」
明日香「でしょうね。女の結婚は男の結婚の一億倍大きな出来事なんだから」
鳴海「一億倍、か・・・」
雪音「甥っ子か姪っ子が出来て、鳴海ジジイになるかもね」
鳴海「何で叔父さんを通り越してジジイになるんだよ・・・」
嶺二「子供にとっちゃ大人はジジイとババアか、お兄さんとお姉さんしかねーからな・・・」
鳴海「だとしたらまだ俺はお兄さんに分類されるだろ・・・」
明日香「鳴海お兄さんね・・・何か気持ち悪いけど・・・」
鳴海「(小声でボソッと)キモくて悪かったな・・・」
雪音「大人になれて良かったね、鳴海、おめでと」
鳴海「全く嬉しくないんだが・・・」
嶺二「大人になれてで思い出したんだけどよ」
鳴海「ああ」
嶺二「俺、受かったぞ」
明日香「何に?」
嶺二「受験に」
少しの沈黙が流れる
嶺二「つーことで春からは一応専門学生だ」
明日香「は?」
嶺二「この間結果が来たんだよ。そんで封筒を開けたら合格通知書が入ってたって話だ」
鳴海「マジか・・・」
嶺二「おう」
明日香「え、待って。私の脳が追いつかないんだけど」
嶺二「落ち着けよ、明日香。俺の受験はお前の進路とは関係ねーだろ?」
明日香「受け入れないの・・・あの嶺二が一番に合格するなんて・・・」
嶺二「明日香・・・」
明日香「な、何?」
嶺二「こればっかりは俺もめちゃくちゃ驚いてるんだよ。まさかこの俺が一抜けするとはな・・・」
明日香「うざ・・・死ぬほどムカつく・・・」
嶺二はコンビニの焼きそばパンを口の中に詰め込める
嶺二「(コンビニの焼きそばパンを口に詰め込んだまま)おおおあっえ。おーうーおあ、いゆんあんあかあ、いうあおあえあうあういお、うるあうあえ」
再び沈黙が流れる
明日香「こんな猿に先を越されたことが信じられないんだけど」
コンビニの焼きそばパンを飲み込む嶺二
嶺二「今俺がなんて言ったか分かってんだろ、明日香」
明日香「猿の言葉なんて分かるわけないでしょうが・・・」
嶺二「めんどくせー奴だな・・・もう一度滑舌良く言ってやると・・・怒るなって。こーゆーのは、順番だから、いつかお前が受かる日も、来るはずだぜ。だ」
少しの沈黙が流れる
雪音「順番だよ、明日香。そのうちあなたも大人になれるから」
明日香「どうして私だけが子供なのよ」
雪音「だって」
明日香「だって、何?」
雪音「やっぱ言わない。真実は人から教えてもらうよりも、自分で知った方が心に残るから」
◯1083公園(放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
公園にいる雪音と嶺二
公園には嶺二と雪音以外に人はいない
嶺二と雪音はブランコに座っている
雪音は右目に眼帯をつけている
嶺二「んだよ真実って・・・」
雪音「明日香には知らないことがたっくさんあるじゃん?」
嶺二「お前、まさかそれを明日香に言うつもりじゃねーだろうな」
雪音「言わないよ。明日香は自分で自分の罪を知った方が良いし」
少しの沈黙が流れる
嶺二「罪って・・・汐莉ちゃんのことか?」
雪音「それもそう」
再び沈黙が流れる
雪音「この間大丈夫だった?ご両親や神谷に変なことは言われてない?」
嶺二「何とかな」
雪音「合格が取り消しにならなくてラッキーだね」
嶺二「と、取り消しになることもあり得たのか?」
雪音「うん。(少し間を開けて)今だって私が、嶺二に殴られ蹴られ続けてるって家の人たちに言ったら、あなたの将来は終わると思うよ」
嶺二「最初は事故で階段から落ちたって話だったのに、ずいぶんとエピソードを盛るんだな」
雪音「嘘も全力でやらなきゃいけないでしょ?」
少しの沈黙が流れる
嶺二「雪音ちゃん、俺を脅す気か?」
雪音「脅してないよ、嶺二のことは大好きだから」
嶺二「大好きだから、脅すってのも考えられるぜ」
雪音「嶺二はそんなに私が信じられないの?」
嶺二「信じられねーよ、つか前にも雪音ちゃんのことは信じてねーって言っただろ」
雪音「残念だね、好かれてるのにさ」
嶺二「嫌われてる方が生きやすい時だってあるんだぞ」
雪音「私のことを見てもそう思うの?」
再び沈黙が流れる
嶺二「雪音ちゃんが嫌われてるのは気の毒だと思うけどよ・・・でも嫌われる原因の半分はてめーの性格や言動にあるんじゃねーのか?」
雪音「それが何?」
嶺二「くろーが多そうだなってことだ」
雪音「実際私は苦労が多い家の生まれだしね」
嶺二「大変だな。辛くねーのかよ?」
雪音「辛いって言ったら、嶺二は助けてくれるの?」
嶺二「助ける努力はするかもな」
少しの沈黙が流れる
嶺二「つくづく・・・雪音ちゃんとは関わらなきゃ良かったって思ってるよ・・・(少し間を開けて)ズブズブの関係になって抜け出せやしねえ」
雪音「ズブズブの関係になってもあなたは・・・私の物にはなろうとしない・・・どうして?」
嶺二「俺にはな、千春ちゃんって好きな子がいるからだよ」
雪音「千春を助けるために、私と関わってるじゃん」
嶺二「そーだな・・・だから最近は千春ちゃんのことを諦めよーって気になってんだ」
雪音「やっと嶺二は千春のことが嫌になったんだね」
嶺二「なってねーよ。雪音ちゃんにはわりーが、俺はまだ千春ちゃんのことが好きだ」
雪音「好きなら千春のことを諦められるわけないじゃん」
嶺二「バーカ。(少し間を開けて)好きって想いはな、たとえ諦めたり、叶わねー恋だったとしても、心の中の真実の感情として残せるもんなんだぞ」
雪音「そういうのはさ、はっきり言って綺麗事だよね。(少し間を開けて)嶺二は私と付き合いたくない理由を、千春への想いで正当化してるんじゃないの?」
嶺二「ち、ちげーよ」
再び沈黙が流れる
雪音「ねえ。しりとりしない?」
嶺二「な、何でてめーとしりとり・・・」
雪音「(嶺二の話を遮って)遊ぼうよ」
嶺二「くだらねー遊びだな・・・」
雪音「嶺二はクソ馬鹿のかからね」
嶺二「クソはてめーも同じだろーが・・・」
雪音「怒ってないで早くかから始まる単語を言いなよ」
嶺二「しょうがねえな・・・じゃーカバだ」
雪音「馬鹿な嶺二」
少しの沈黙が流れる
雪音「もう降参?」
嶺二「こ、降参なんかするわけねーだろ!!」
雪音「そう・・・馬鹿な嶺二のじだよ」
嶺二「じ、磁石」
雪音「クリスマスパーティー」
嶺二「パーティーのいか?」
雪音「うん」
嶺二「犬」
雪音「ぬいぐるみ」
嶺二「ミサイル」
雪音「ルビー」
嶺二「またいか・・・インテリア」
雪音「あなたのことが好き」
再び沈黙が流れる
嶺二「汽車・・・」
雪音「ヤカンの中のお湯」
嶺二「や、ヤカンの中のお湯はなし・・・」
雪音「(嶺二の話を遮って)早く嶺二、次はゆだよ」
嶺二「ゆ、夕暮れ」
雪音「嶺二のことが好き」
嶺二「牙・・・」
雪音「馬鹿な嶺二のことが好き」
嶺二「曲・・・」
雪音「クソ馬鹿な嶺二のことが好き」
少しの沈黙が流れる
雪音「私が勝っても良いの?」
嶺二「きょ、今日のところはな・・・」
◯1084波音総合病院/菜摘の個室(放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
菜摘の病室にいる鳴海と菜摘
菜摘はベッドに横になっている
鳴海はベッドの横の椅子に座っている
菜摘は痩せている
ベッドの隣には棚があり、小さなテレビ、朗読劇用の波音物語、原作の波音物語、パソコン、鳴海がアイリッシュイベントで購入したステンレス製の小さな三つ葉のキーホルダー、筆記用具、ノート、数冊の本などが置いてある
ステンレス製の小さな三つ葉のキーホルダーの葉の部分には、グリーンのストーンがついている
窓際には花瓶が置いてあり、花が飾られてある
話をしている鳴海と菜摘
菜摘「鳴海くん、試験はどうだった?」
鳴海「出来たり、出来なかったりだ」
菜摘「冬休み、補習になったら大変だよ・・・」
鳴海「心配するな菜摘、多分赤点は免れてるはず」
菜摘「本当?」
鳴海「ああ。ここ最近はたまに先生の話も聞いてるしな」
菜摘「たまにじゃダメだよ・・・」
鳴海「菜摘、授業中はボーッとさせてくれ」
菜摘「授業中以外でボーッとする時間はないの?」
考え込む鳴海
鳴海「ないな」
菜摘「えー・・・鳴海くん、色んなことを背負い込み過ぎだよ」
鳴海「背負ってるものは、明日のクリスマスパーティーが終わる頃に軽くなるさ」
菜摘「そっか。明日はイブだし楽しまないとね」
鳴海「ああ」
菜摘「プレゼントは全員に買った?鳴海くん」
鳴海「いや・・・買ってないが・・・」
菜摘「またまた〜、鳴海くん、ボケるのが下手になってるよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「菜摘、今のはボケじゃない」
菜摘「ボケじゃないってところまでがボケなんだよね?」
鳴海「ち、違うんだ菜摘。本当にプレゼントは買ってないんだよ」
再び沈黙が流れる
菜摘「何で!?クリスマスパーティーと言ったらプレゼント交換なのに!!」
鳴海「そ、そうなのか?」
菜摘「そうだよ!!クリスマスパーティーに必須なのはチキンとケーキとプレゼント交換!!」
鳴海「す、すまん・・・か、完全に忘れてた・・・」
菜摘「鳴海くんの馬鹿!!」
鳴海「マジですまん・・・菜摘にはプレゼントを買ったんだが・・・」
菜摘「風夏さんには!?汐莉ちゃんには!?明日香ちゃんには!?嶺二くんと雪音ちゃんと響紀ちゃんと詩穂ちゃんまあやんには!?」
鳴海「か、買ってないな・・というかどんだけプレゼントを用意しなきゃならねえんだ・・・」
菜摘「プレゼントは8個だよ鳴海くん!!」
鳴海「8個・・・?えっと・・・菜摘の分と・・・姉貴の分と・・・明日香の分と・・・嶺二の分と・・・南の分と・・・一条の分と・・・響紀の分と・・・永山の分と・・・奥野の分で・・・9個じゃねえか!!」
菜摘「私の分は無くて大丈夫!!」
鳴海「待て待て!!こっちはもう買ってるのに無くて大丈夫はやめてくれよ!!」
菜摘「ご、ごめんね・・・でも鳴海くん、プレゼントは最低8個じゃないかな・・・」
鳴海「多過ぎるだろ・・・しかも何を買えば良いのか分からない奴らが大半を占めてるんだぞ・・・」
菜摘「鳴海くん、プレゼントは気持ちだよ」
鳴海「気持ちって・・・気持ちでゴキブリを貰って嬉しいか?」
菜摘「ゴキブリはプレゼントにならないもん」
鳴海「だろうな・・・」
菜摘「今から頑張ってプレゼントを探そ?鳴海くん」
鳴海「む、無理だろ・・・」
菜摘「鳴海くんならいけるよ!!」
鳴海「俺に期待し過ぎだぞ、菜摘」
菜摘「だって鳴海くんだもん」
少しの沈黙が流れる
鳴海「100歩譲って・・・嶺二と明日香のプレゼントは用意出来るとしよう・・・だが他の連中は無理だ。なんせ好みも趣味も分からないからな」
菜摘「鳴海くん・・・風夏さんのことも分からないんだね・・・」
鳴海「当たり前だ。あいつは同級生でも友達でもないんだぞ」
菜摘「そ、それはそうだけど・・・」
鳴海「大体、こういうのは買ったら買ったでお返しとかいうかったるいシステムが発生して、一生プレゼントを贈り合う羽目になるだろ・・・」
菜摘「私は一生プレゼントを贈り合うのも素敵な関係だと思うよ、鳴海くん」
鳴海「俺と嶺二がジジイになってもクリスマスにプレゼントを渡してたら気持ち悪くないか・・・?」
菜摘「うーん・・・二人の友情が素敵なのは変わりないけどなぁ・・・」
再び沈黙が流れる
菜摘「鳴海くん」
鳴海「何だ?」
菜摘「クリスマスパーティーまで、あと18時間以上あるよ」
鳴海「じゅ、18時間で8個のプレゼントを用意するなんて・・・む、無理にも・・・等しいが・・・」
菜摘「等しいが?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「分かったよ今からどうにかして用意すれば良いんだろ!!」
菜摘「うん!!」
◯1085デパート内/雑貨屋(夜)
デパートの中の雑貨屋にいる鳴海
雑貨屋では文房具、食器、小物入れ、ハンカチ、腕時計、インテリアなどの様々な物が置いてある
雑貨屋には鳴海の他にOLや女子高生の客がいる
鳴海「(雑貨屋の中を見て回りながら 声 モノローグ)クソッ・・・何故毎回俺は菜摘の頼み事を聞いてしまうんだ!!」
鳴海は紺色のマグカップを手に取る
鳴海「(声 モノローグ)一人暮らしデビューの嶺二はコップにしとくか・・・(少し間を開けて)明日香のプレゼントは適当に本屋で探すとして
・・・問題は他の奴らだ・・・」
ボールペンを手に取る鳴海
鳴海「(ボールペンを見ながら 声 モノローグ)ぼ、ボールペンがプレゼントじゃ・・・ダメだよな・・・」
鳴海は元あった場所にボールペンを戻す
鳴海「(声 モノローグ)いや・・・でも南はペンで良いんじゃないか?あいつはよく日記を書いてるし・・・学校でも使えるはずだ・・・」
◯1086デパート内/本屋(夜)
デパートの中の本屋にいる鳴海
本屋には鳴海の他にサラリーマンや学生など様々な客がいる
鳴海は本屋を見て回っている
鳴海は雑貨屋の袋と、”秘技 優秀な保育士になるための101の方法”というタイトルの本を持っている
鳴海「(本屋を見て回りながら 声 モノローグ)いつか永山は図書券が欲しいって言ってたな。良し、あいつには図書券を買おう」
◯1087デパート内/楽器屋(夜)
デパートの中の楽器屋にいる鳴海
楽器屋には鳴海の他に客がいない
鳴海は楽器屋を見て回っている
鳴海は雑貨屋の袋と、本屋の袋を持っている
鳴海「(楽器屋を見て回りながら 声 モノローグ)響紀と奥野のプレゼントはこの辺りで買っておくべきだ・・・(少し間を開けて)にしても・・・素人の俺が楽器に手を出して良いのだろうか・・・」
ハーモニカが売られていることに気づく鳴海
鳴海「(ハーモニカを見ながら 声 モノローグ)響紀はハーモニカで良いかもしれない。た、多分あいつはちょっと変わった物の方が喜ぶだろ・・・(少し間を開けて)この勢いで奥野にもハーモニカをプレゼントしようかと真剣に思ったが、すんでのところで理性が止めた」
◯1088デパート内/地下(夜)
デパートの地下にいる鳴海
デパートの地下には鳴海の他にサラリーマン、OL、主婦などたくさんの客がいる
鳴海はデパートの地下を見て回っている
鳴海は雑貨屋の袋、本屋の袋、楽器屋の袋を持っている
デパートの地下ではお惣菜、お弁当、ケーキやチョコレートなどのスイーツが売られている
鳴海「(デパートの地下を見て回りながら 声 モノローグ)こ、こうなったら奥野には食べ物だ!!」
◯1089デパート内/通路(夜)
デパートの通路を歩いている鳴海
デパートの中にはOL、主婦、女子高生などの客がいる
デパートには服屋、靴屋、化粧品の店、アクセサリーショップなど様々な店がある
鳴海は雑貨屋の袋、本屋の袋、楽器屋の袋、スイーツショップの袋を持っている
鳴海「(デパートを見て回りながら 声 モノローグ)一条のプレゼントは何にする・・・?やばいな・・・あいつだけ何も情報がないぞ・・・(少し間を開けて)夏に備えてビーチサンダルとかどうだ・・・?ダメに決まってるか・・・そもそもあいつがビーサンを履いてる姿が想像出来ないしな・・・」
傘が売られている店の前を通りかかる鳴海
鳴海は立ち止まって傘を見る
店では折り畳みの傘から普通の物まで、たくさんが傘が展示されている
鳴海「(傘を見ながら 声 モノローグ)傘か・・・悪くないかもしれないぞ・・・」
◯1090帰路(夜)
一人自宅に向かっている鳴海
鳴海は雑貨屋の袋、本屋の袋、楽器屋の袋、スイーツショップの袋、傘屋の袋を持っている
鳴海「(声 モノローグ)無駄に出費がかさんだが・・・気にしないでおこう・・・これも合同朗読劇の成功へ向けた戦略的な投資だと思えば、痛くはないな・・・」