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Chapter6卒業編♯18 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter6卒業編 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


登場人物


滅びかけた世界


ナツ 16歳女子

ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。


スズ 15歳女子

マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。

ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。


老人 男

ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・


中年期の明日香 女子

老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。


七海 女子

中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。


老人と同世代の男兵士1 男子

中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属していた。


レキ 女子

老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属していた。老人とは親しかった様子。


老人と同世代の男兵士2 男子

中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。






滅んでいない世界


貴志 鳴海(なるみ) 18歳男子

波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。


早乙女 菜摘(なつみ) 18歳女子

波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。生徒会選挙の直後に原因不明の病に襲われ、現在は入院中。


白石 嶺二(れいじ) 18歳男子

波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。


天城 明日香(あすか) 18歳女子

波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は受験前のせいでストレスが溜まっている。なんだかんだで響紀とは良い関係。


南 汐莉(しおり)15歳女子

波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。


一条 雪音(ゆきね)18歳女子

波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・


柊木 千春(ちはる)女子

Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の想い人。


三枝 響紀(ひびき)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。


永山 詩穂(しほ)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。基本はマイペースだが、キツい物言いをする時もある。


奥野 真彩(まあや)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。


早乙女 すみれ45歳女子

菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。


早乙女 (じゅん)46歳男子

菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくる。自動車修理を自営業でやっている。永遠の厨二病。


神谷 志郎(しろう)43歳男子

波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。


荻原 早季(さき)15歳女子

Chapter5に登場した正体不明の少女。


貴志 風夏(ふうか)24歳女子

鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。いつの間にか看護師の仕事を始めている。


一条 智秋(ちあき)24歳女子

雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり一命を取り留めたものの、再び体調を崩し現在は入院中。


双葉 篤志(あつし)18歳男子

波音高校三年二組、天文学部副部長。雪音とは幼馴染み。


有馬 (いさむ)64歳男子

波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。なお現在の”ギャラクシーフィールド”は儲かっている。


細田 周平(しゅうへい)15歳男子

野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。


貴志 (ひろ)

鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。


貴志 由香里(ゆかり)

鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。


神谷 絵美(えみ)29歳女子

神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。


波音物語に関連する人物






白瀬 波音(なみね)23歳女子

波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。


佐田 奈緒衛(なおえ)17歳男子

波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。


(りん)21歳女子

波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。


明智 光秀(みつひで)55歳男子

織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。


織田 信長(のぶなが)48歳男子

天下を取るだろうと言われていた武将。


一世(いっせい) 年齢不明 男子

ある時波音が出会った横暴で態度の悪い男。

Chapter6卒業編♯18 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


◯1067滅びかけた世界:緋空浜近くの道路(夕方)

 夕日が沈みかけている

 夕日の光が緋空浜の波に反射し、キラキラと光っている

 緋空浜近くの一般道にいるナツ、スズ、老人 

 道には至る所に雑草が生えており、緋空浜近くにあった店たちは廃墟になっている

 タバコを咥えたままボルトアクションライフルを構えている老人

 老人から30mほど離れたところにはロシア兵の軍服を着せられたマネキンが立っている

 ナツとスズは老人のことを見ている

 緋空浜にはナツたちが乗っていたピックアップトラック型の車が駐車されている

 車の荷台にはショッピングモールから盗んだ楽器、スポーツ用品、様々な電化製品、映画のDVD、海で遊ぶ道具、スケートボードなど、色々な物が山のように積まれている

 老人はタバコを咥えたままライフルのボルトを上げ後ろに引く、そしてボルトを戻す

 タバコの煙を吐き出す老人

 ロシア兵の軍服を着せられたマネキンを狙って発砲する老人

 大きな銃声が周囲に響き渡る

 弾丸がロシア兵の軍服を着せられたマネキンの心臓付近に当たり、マネキンは倒れる

 地面に落ちた薬莢がカランカランと音を立てている


スズ「上手い!!」

老人「(タバコを咥えたままライフルを構えるのをやめて)いや・・・狙いより少し右にズレてる」


 老人はタバコを咥えたままロシア兵の軍服を着せられたマネキンの方へ歩き出す


ナツ「人形に向かって撃つなんて悪趣味な奴だ・・・」

スズ「でも戦いの練習になるよ〜」

ナツ「スズ、私たちは戦わない」

スズ「え〜、戦いは私たちの意志とは関係なく起きるかもしれないのに〜」


 タバコを咥えたままロシア兵の軍服を着せられたマネキンを立たせる老人

 ロシア兵の軍服を着せられたマネキンの心臓付近には5cmほどの穴が出来ている

 老人はタバコを咥えたままナツとスズのところへ戻る


老人「(タバコを咥えたままライフルをナツとスズに差し出して)君たちも撃ってみるか?」

ナツ「撃つわけないだろ」

スズ「(手を挙げて)なっちゃんがやらないなら私がやっちゃる!!」

老人「(タバコを咥えたままライフルをスズに差し出して)スズは積極的な生徒だな」

スズ「(老人からライフルを受け取り)うん!!」


 スズはロシア兵の軍服を着せられたマネキンに向かってライフルを構え、スコープを覗く


スズ「(スコープを覗いたまま)どこら辺を狙えば良いのかな〜?」

老人「(タバコを咥えたまま)どこでも良い、まずは命中させることだけを意識しろ」

スズ「(スコープを覗いたまま)へーい」

 

 リロードをするスズ

 老人はタバコを咥えるのをやめ、タバコを指先で叩いて灰を地面に落とす

 スズはロシア兵の軍服を着せられたマネキンを狙って発砲する

 大きな銃声が響き渡る

 弾丸がロシア兵の軍服を着せられたマネキンの右手に当たり、右手が粉々に砕け破片が周囲に飛び散る

 地面に落ちた薬莢がカランカランと音を立てている

 スコープを覗くのをやめるスズ

 老人は再びタバコを咥える


スズ「手か〜・・・」

老人「(タバコを咥えたまま)初心者にしては十分だぞ、スズ」

スズ「ほんとに〜?」

老人「(タバコを咥えたまま)ああ」

ナツ「手に傷を負わせても私たちが殺されるよ・・・」

老人「(タバコを咥えたまま)ナツは何故そう考えるんだ?」

ナツ「大人と私じゃ力が違う」

老人「(タバコを咥えたまま)確かにな。だが向こうは撃たれているんだぞ」

ナツ「手じゃ意味ない」

スズ「足なら動けなく出来るのにね〜」

ナツ「うん」


 少しの沈黙が流れる

 タバコの煙を吐き出す老人

 老人はポケットから携帯用灰皿を取り出し、タバコの火を消す

 携帯用灰皿にタバコを捨て、ポケットに携帯用灰皿をしま老人


老人「(ロシア兵の軍服を着せられたマネキンを指差して)あいつの手を見ろ」


 ナツとスズはロシア兵の軍服を着せられたマネキンのことを見る

 ロシア兵の軍服を着せられたマネキンの右手首から下が完全になくなっている

 ロシア兵の軍服を着せられたマネキンの周囲には、粉々に砕けた右手の破片が落ちている


ナツ「(ロシア兵の軍服を着せられたマネキンを見るのをやめて)手が何なの?」

老人「(ロシア兵の軍服を着せられたマネキンを指差すのをやめて)爆弾や地雷といった類の武器じゃなくても、人の体というのは・・・案外簡単に壊れるんだ」


 少しの沈黙が流れる


老人「利き手が右手だった場合、本来の力は発揮されない上に、手首からの出血多量で体の熱が上がるだろう。右手が粉々になれば、痛みも凄まじいはずだ。(少し間を開けて)文字通りの手負いの状態の兵士に、銃を持っている君たちが殺されると思うのか?」

ナツ「あ、相手が怪我をしていても私たちの殺される可能性はある!!」


 再び沈黙が流れる


スズ「(ロシア兵の軍服を着せられたマネキンを見たまま)ジジイ・・・撃たれて右手が無くなったら・・・その人はどうなっちゃうの?」

老人「死ぬかもしれないし・・・生き残るかもしれない。全ては運だ」

スズ「(ロシア兵の軍服を着せられたマネキンを見たまま)助けよーと思ったら・・・助けられる?」

老人「それは分からん」

スズ「(ロシア兵の軍服を着せられたマネキンを見るのをやめて)どーして?弾が当たったのは右手だけなのに」

老人「右手だけ、か・・・」


 少しの沈黙が流れる


ナツ「きっと血を失い過ぎて命を落とすんだ・・・」

老人「或いは傷口が腐って死ぬかもな。(少し間を開けて)昨日まで笑っていたり、自分よりも有能な奴が簡単に消えるのが戦争だ。そしてその戦争で最も一般的に使用されている武器が・・・(スズが持っているライフルを指差して)銃なんだよ、スズ」


 俯くスズ


スズ「(俯いたまま)何でジジイは銃を捨てないの・・・?」


 再び沈黙が流れる


老人「何故だろうな・・・」

ナツ「あんた、銃に依存してるんだよ。それがなきゃ生きていけないから、ずっと手放せずにいるんだ」

老人「君たちは俺に銃を捨てろと言うのか?」

スズ「(俯いたまま)うん・・・だって掃除をしてる人に銃は要らないと思うもん・・・」

老人「それはそうだが・・・君たちの命を守る時に銃は必要になるだろう?」

ナツ「そんなのはいつまでも続かない。(少し間を開けて)私たちはいつかジジイから卒業して、自分たちの身は自分たちで守れるようになってみせる」

スズ「(顔を上げて)そーだそーだ!!私となっちゃんは強くなるんだ!!」

老人「若者らしいな・・・」


 沈みかけている夕日を見る老人


老人「(沈みかけている夕日を見ながら)俺も昔はそうだった・・・自分の命も・・・大切な人の命も・・・今の君たちのように守ろうとしていたんだ」

ナツ「わ、私たちはあんたみたいな負け犬には絶対にならない!!」

老人「(沈みかけている夕日を見たまま)ああ・・・俺も君たちの人生がこうならないことを祈っているよ・・・」


◯1068貴志家リビング(日替わり/朝)

 外は快晴

 リビングで朝食を食べているパジャマ姿の鳴海と風夏

 鳴海と風夏はテーブルを挟んで向かい合って座っている

 テーブルの上には焼いた食パン、ベーコン、目玉焼き、バターが置いてある

 鳴海と風夏は食パンにバターを塗っている


風夏「(食パンにバターを塗りながら)もうすぐクリスマスイブとクリスマス当日と大晦日と元旦だね〜」

鳴海「(食パンにバターを塗りながら)年末年始って言えよ・・・」

風夏「(食パンにバターを塗りながら)楽しいイベントラッシュを年末年始の四文字で片付けちゃうのは勿体無いって〜」


◯1069波音高校校門(朝)

 快晴

 たくさんの生徒たちが門を潜って学校の中へ入って行く

 校門の前で部員募集を行っている鳴海、明日香、嶺二、雪音

 鳴海、明日香、嶺二、雪音は部員募集の紙の束を持っている

 通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出している鳴海たち

 明日香は手袋をつけて部員募集の紙を差し出しているが、鳴海、嶺二、雪音は手袋をつけていない

 鳴海、嶺二、雪音の指先が赤くなっている 

 雪音は右目に眼帯をつけている


鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)一年生と二年生の話題に文芸部はなかったが、その代わりに生徒会が行うクリスマパーティーの様々な情報が飛び交っていた」

男子生徒1「緋空女子校から水着姿のサンタが来るらしいぜ!!」

男子生徒2「(大きな声で)マジで!?!?」


 男子生徒1と2が話をしながら学校の中へ入って行く


◯1070波音高校三年三組の教室(朝)

 朝のHRの前の時間

 神谷はまだ来ていない

 どんどん教室に入ってくる生徒たち

 教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている

 鳴海、明日香、嶺二、雪音が教室の窓際で話をしている

 雪音は右目に眼帯をつけている


嶺二「(大きな声で)どーゆーことなんだよ!?!?明日香!!!!」

明日香「だから知らないって言ってるでしょ・・・」

嶺二「(大きな声で)隠すんじゃねえ!!!!ほんとに女子校から水着のサンタが来んのか!?!?」

明日香「(呆れて)隠してないってば・・・」

鳴海「というか女子校の水着姿のサンタって何だよ・・・」

雪音「水着を着た男の人じゃないと良いね」

鳴海「そういう問題じゃないだろ・・・」

嶺二「何言ってんだ鳴海!!女子校で働いているおっさんが水着姿にサンタの帽子を被って波高にやって来たらどーすんだよ!?」

鳴海「いや・・・どうするって・・・」

雪音「嶺二って人の肌を見ると興奮するんじゃなかった?だからおっさんでもいける口だよね?」

嶺二「いけるか!!」

雪音「あらそう。それは残念」

明日香「というか他校からの参加はあり得ないと思うけど・・・」

嶺二「んだよつまんねーな・・・」

雪音「嶺二がパーティーで水着姿になってよ」

嶺二「うるさいぞクズ女」

雪音「クズ女って明日香のこと?」

明日香「な、何で私!?」

雪音「だって明日香も女じゃん」

明日香「ゆ、雪音、意味が分からないんだけど・・・」

雪音「文芸部の中で誰が一番クズかって・・・」

嶺二「(雪音の話を遮って)あーもううるせえ!!人間ってのは生まれた時からクズなんだよ!!」

雪音「あー、嶺二もクズだったね。柊木千春がいるのに、色んな女の子に手を出しちゃって」

明日香「あ、あんた!!今度は一体何をしたの!!」

嶺二「(慌てて大きな声で)な、何もしてねーって!!!!」

雪音「ふーん、明日香には嘘をつくんだ」

嶺二「お、俺は嘘なんか・・・」

  

 明日香、嶺二、雪音が話を続ける


鳴海「(声 モノローグ)体がボロボロになったことで少しくらい一条も反省するかと思ったが、特に様子は変わらなかった」


◯1071波音高校二年生廊下(昼)

 昼休み

 二年生廊下にいる鳴海、明日香、嶺二、雪音

 鳴海たちは部員募集を行っている

 鳴海、明日香、嶺二、雪音は部員募集の紙の束を持っている

 廊下では喋っている二年生や、昼食を取りに移動している二年生がたくさんいる

 鳴海たちは通りかかる二年生たちに部員募集の紙を差し出している

 雪音は右目に眼帯をつけている


鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)文芸部です!!!!部員を募集してます!!!!興味がある人は放課後特別教室の四を覗きに来てください!!!!」

明日香「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)よろしくお願いしまーす!!!!」

嶺二「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら大きな声で)今入部したら来年は部長になれるかもしれないよー!!!!」

雪音「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながらやる気がなさそうに)良かったらどうぞー」

鳴海「(通りかかる生徒たちに部員募集の紙を差し出しながら 声 モノローグ)もはや教師でさえ俺たち文芸部に関心を向ける者はいなかった」


◯1072波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 夕日が沈みかけている

 文芸部の部室にいる鳴海、明日香、嶺二、雪音

 教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある

 鳴海、明日香、雪音は朗読劇用の波音物語を手に持って立っている

 嶺二は椅子に座っている

 朗読の練習を行っている鳴海、明日香、雪音

 嶺二は朗読の練習の様子を見ている

 雪音は右目に眼帯をつけている

 校庭では運動部が活動している


明日香「(朗読劇用の波音物語を読みながら)波音は信長の首を切り落とした。(少し間を開けて)信長の首が、ゴロンゴロンと和室の中を転がっている」

雪音「(朗読劇用の波音物語を読みながら)行くぞ」

鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら)やめろ!!引っ張るな!!」

明日香「(朗読劇用の波音物語を読みながら)波音は悟っていた、この動乱の時代に信長の居場所がないことを」

鳴海「(朗読劇用の波音物語を読みながら)切腹の途中だったのだぞ!!」

波音「(朗読劇用の波音物語を読みながら)私は・・・(少し間を開けて)奈緒衛の心を守りたかっただけだ」

明日香「(朗読劇用の波音物語を読みながら)何者であれ、奈緒衛を傷つける者は許せない。波音は自らの意志に従い、血で手を染めていた。その汚れた手は、奈緒衛に差し出されている」

嶺二「だんだん良くなってきたな。まだ50点くらいのクオリティーだけど」

鳴海「100点にするには何を改善すれば良い?」

嶺二「まずは凛ちゃんこと汐莉ちゃんがいるだろ」

明日香「嶺二、今の私たちに出来る範囲で、気になったことを言ってよ」

嶺二「そうだなー・・・」


 考え込む嶺二


嶺二「もっと感情移入出来るよーに読んだら良いと思うぞ」

鳴海「これでも精一杯やってるつもりだ」

嶺二「言い訳すんなよ・・・肝になるのは鳴海と雪音ちゃんの掛け合いなんだぜ?」


 少しの沈黙が流れる


雪音「悪いのは私なの?鳴海なの?」

嶺二「そりゃー・・・両方が悪いんだろ」

鳴海「二人とも下手ってことか・・・」

嶺二「そーゆーことだ」


 再び沈黙が流れる


鳴海「一条、上手くなるまで練習するぞ」

雪音「分かった・・・」

鳴海「明日香、さっきと同じ場面から頼む」

明日香「了解。(朗読劇用の波音物語を読みながら)波音は信長の首を切り落とした。(少し間を開けて)信長の首が・・・」


◯1073帰路(放課後/夜)

 日が沈み暗くなっている

 一人自宅に向かっている鳴海

 部活帰りの学生がたくさんいる

 鳴海はケーキ屋の前を通る

 ケーキ屋ではレジの下のガラスケースの中にたくさんのクリスマス用ケーキが置いてある


鳴海「(声 モノローグ)波高に在学している8、9割の生徒は期末試験の勉強やら受験の対策に勤しんでいたが、それでも世間のクリスマスムードには抗えず、どこか浮かれているような気がした」


◯1074波児商店街/ゲームセンターギャラクシーフィールドの近く(放課後/夜)

 人の多い商店街

 千春が商店街の中を歩いている

 刃の欠けた剣を持っている千春

 商店街には新しいお店がたくさんあり、クリスマスの飾り付けがされている

 主婦や学生など、たくさんの人が商店街の中を通っている

 千春はゲームセンターギャラクシーフィールドの近くを通りかかり、立ち止まる

 ギャラクシーフィールドは大きくて派手な看板が出ている

 ギャラクシーフィールドの中は賑わっており、レトロなゲーム機をプレイしている子供がたくさんいる

 ギャラクシーフィールドに故障中のゲームはなく全て起動している

 ギャラクシーフィールドの店主、有馬勇が小さい子供にゲームのプレイ方法を教えている

 ギャラクシーフィールドの壁には、かつて千春が配っていたビラが一枚貼られている

 ギャラクシーフィールドの中には小さなクリスマスツリーが飾られている

 背伸びをしてギャラクシーフィールドの中を覗いている千春

 千春の姿は有馬勇、ギャラクシーフィールドにいる子供、通りかかる主婦や学生に見えていない


鳴海「(声 モノローグ)24日の試験が終われば、パーティーで軽音部とも久しぶりに顔を合わせられる。その時にみんなの気持ちを高めて、まとめるしかない・・・」


◯1075帰路/アクセサリーショップの前(放課後/夜)

 帰路の途中にあるアクセサリーショップの前で立ち止まっている鳴海

 部活帰りの学生がたくさんいる

 鳴海は外に見えるように展示されたアクセサリーショップのショーウィンドウを見ている

 ショーウィンドウにはネックレス、指輪、ピアス、イヤリング、ブレスレットなどのシルバーアクセサリーが展示されている


鳴海「(アクセサリーショップのショーウィンドウを見ながら)あいつ・・・確かアクセサリーは禁止されてるから要らないって言ってたよな・・・」


◯1076Chapter6◯343の回想/赤レンガ倉庫/アイリッシュイベント会場(夜)

 アイリッシュイベントの中のシルバーアクセサリーの出店を見ている鳴海と菜摘

 人で溢れているアイリッシュイベント会場、イベント会場の横には赤レンガ倉庫が立っている

 牛肉のシチュー、ラム肉のグリル、パイ料理、フィッシュアンドチップス、酒類、食器、紅茶、お菓子、羊毛の織物、アクセサリーなどを売っている出店がたくさんある

 会場にはたくさんの丸テーブルと椅子があり、飲み食いをしている人が利用している

 会場の奥には大きなステージがあり、ステージの上ではアイリッシュ音楽のライブが行われている

 会場全体にアイルランドの国旗である緑、白、オレンジが飾り付けされている

 鳴海と菜摘が見ている出店では、ケルト模様のブレスレット、十字架のネックレス、王冠型の指輪、クローバーのデザインがされたキーホルダーなど、様々なシルバーアクセサリーが売られている


菜摘「(クローバーのキーホルダーを手に取り、鳴海に見せて)これが良い!」


 菜摘が鳴海に見せたのはステレンス性で出来た三つ葉の小さなキーホルダー、葉の部分はグリーンのストーンが付いている


鳴海「(驚いて)おいおい・・・キーホルダーよりネックレスとかブレスレットの方が良いだろ」

菜摘「鳴海くん、学校でアクセサリーをつけるのは禁止されてるんだよ」

鳴海「一応禁止されてるだけな。先生も没収しないし、もはや幻の校則だぞ」

菜摘「校則は校則だもん」

鳴海「でもキーホルダーよりは他の物を買った方が・・・」

菜摘「これが良いの。(少し間を開けて)小さくて可愛いし、色も綺麗だから」


◯1077回想戻り/帰路/アクセサリーショップの前(放課後/夜)

 帰路の途中にあるアクセサリーショップの前で立ち止まっている鳴海

 部活帰りの学生がたくさんいる

 鳴海は外に見えるように展示されたアクセサリーショップのショーウィンドウを覗いている

 ショーウィンドウにはネックレス、指輪、ピアス、イヤリング、ブレスレットなどのシルバーアクセサリーが展示されている


鳴海「(アクセサリーショップのショーウィンドウを見ながら)もうすぐ校則とは無縁の生活が始まるし・・・でかいプレゼントを買いたいところだな・・・(少し間を開けて)ただ派手過ぎるのは・・・」


 アクセサリーショップのショーウィンドウを覗きながらぶつぶつ独り言を言っている鳴海のことを通りかかる主婦や学生たちが不思議そうに見ている


鳴海「(アクセサリーショップのショーウィンドウを見ながら)ネックレスにするか・・・ブレスレットにするか・・・イヤリングは・・・落として無くすかもしれないな・・・(少し間を開けて)ん、これなんか菜摘に合うんじゃ・・・」


 鳴海の隣にアクセサリーショップの店員が立っている

 アクセサリーショップのショーウィンドウを覗きながらぶつぶつ独り言を言っている鳴海のことを見ているアクセサリーショップの店員


店員「あのー、よろしければ中でご覧になってください」

鳴海「(驚いて)えっ」

店員「よろしければ店内でご覧になってください」

鳴海「じゃ、じゃあ・・・そ、そうさせてもらいます・・・」


 アクセサリーショップの中に入る鳴海と店員

 アクセサリーショップの中では、たくさんのシルバーアクセサリーが展示されている


店員「何か気になる物がありましたら・・・」

鳴海「(店員の話を遮って外に見えるように展示されたショーウィンドウを指差して)そ、そこに展示されてる青のクリスタルみたいなやつがついたネックレスをお願いします」

店員「かしこまりました」


 店員はポケットから鍵を取り出し、ショーウィンドウを開ける

 慎重に鳴海が見ていたネックレスを手に取り、鳴海のところへ持って来る店員

 店員が持って来たネックレスには青いクリスタルがついている


店員「(青いクリスタルがついたネックレスを鳴海に見せて)こちらでよろしいでしょうか?」

鳴海「(店員が持っている青いクリスタルがついたネックレスを見ながら)は、はい!!あ、ありがとうございます!!」

鳴海「(店員が持っている青いクリスタルがついたネックレスを見ながら 声 モノローグ)やっぱりこのネックレスなら菜摘に合いそうだ・・・」


◯1078貴志家鳴海の自室(深夜)

 片付いている鳴海の部屋

 鳴海の部屋は物が少なく、ベッドと勉強机くらいしか目立つ物はない

 机の上には菜摘とのツーショット写真と、小さなプレゼント箱が置いてある

 カーテンの隙間から月の光が差し込んでいる

 小さなプレゼント箱を手に取る鳴海


鳴海「(小さなプレゼント箱を見ながら)喜んでくれると良いが・・・」

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