Chapter6生徒会選挙編♯19 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter6生徒会選挙編 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
登場人物
滅びかけた世界
ナツ 16歳女子
ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。
スズ 15歳女子
マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。
老人 男
ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・
老人の回想に登場する人物
中年期の老人 男子
兵士時代の老人。
中年期の明日香 女子
老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。
七海 女子
中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。
老人と同世代の男兵士1 男子
中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。中年機の老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属している。
レキ 女子
老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。中年期の老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属している。
老人と同世代の男兵士2 男子
中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。
アイヴァン・ヴォリフスキー 男子
ロシア人。たくさんのロシア兵を率いている若き将校。容姿端麗で、流暢な日本語を喋ることが出来る。年齢は20代後半ほど。
両手足が潰れたロシア兵 男子
重傷を負っているロシア人の兵士。中年期の老人と出会う。
滅んでいない世界
貴志 鳴海 18歳男子
波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。
早乙女 菜摘 18歳女子
波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。
白石 嶺二 18歳男子
波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。
天城 明日香 18歳女子
波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は響紀に好かれて困っており、かつ受験前のせいでストレスが溜まっている。
南 汐莉15歳女子
波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。明るく元気。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。
一条 雪音18歳女子
波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・
柊木 千春女子
Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の思い人。
三枝 響紀15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。
永山 詩穂15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。おっとりとしている。
奥野 真彩15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。
早乙女 すみれ45歳女子
菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。愛車はトヨタのアクア。
早乙女 潤46歳男子
菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくること間違いなし。自動車修理を自営業でやっている。愛車のレクサスに“ふぁるこん”と名付けている。永遠の厨二病。
神谷 志郎43歳男子
波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。
荻原 早季15歳女子
Chapter5に登場した正体不明の少女。
貴志 風夏24歳女子
鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。仕事をしつつ医療の勉強をしている。
一条 智秋24歳女子
雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり、一命を取り留めた。リハビリをしながら少しずつ元の生活に戻っている。
双葉 篤志18歳男子
波音高校三年二組、天文学部副部長。
有馬 勇64歳男子
波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。
細田 周平15歳男子
野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。
貴志 紘
鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。
貴志 由夏理
鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。
神谷 絵美29歳女子
神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。
波音物語に関連する人物
白瀬 波音23歳女子
波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。
佐田 奈緒衛17歳男子
波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。
凛21歳女子
波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。
明智 光秀55歳男子
織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。
Chapter6生徒会選挙編♯19 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
◯711波音ショッピングモール内(昼前)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709と同日
◯709の続き
外は曇っている
ショッピングモールの中に入った鳴海と菜摘
鳴海と菜摘がいる場所は、ショッピングモールのエントランスで、◯710の滅びかけた世界のナツ、スズ、老人がいる場所と完全に同じ
ショッピングモールの中は小さな子供からお年寄りまで、たくさんの人で溢れている
エントランスで立ち止まって周囲を見ている鳴海と菜摘
ショッピングモールは六階建てて広く、たくさんのお店が賑わっている
エントランスの近くにはエスカレーターが何台もあり、多くの人が利用している
鳴海「(周囲を見ながら)こりゃ全部回るだけで相当時間がかかりそうだぞ・・・」
菜摘「(周囲を見ながら)とりあえず一つ一つ回って行こうか」
鳴海「(周囲を見たまま頷き)ああ。まずは上からだな・・・」
エスカレーターのある方へ歩き出す鳴海と菜摘
菜摘「鳴海くん、メロンパンは何としてでも食べようね」
鳴海「メロンパン・・・?美味いのがあるのか?」
菜摘「詩穂ちゃんが教えてくれたじゃん!!スイートメロンパンだよ!!鳴海くん!!」
鳴海「あー・・・メロンパンってスイートのことか・・・」
菜摘「そうそう!!」
エスカレーターに乗る鳴海と菜摘
◯712滅びかけた世界:波音ショッピングモール内(昼前)
外は曇っている
ショッピングモールの中にいるナツ、スズ、老人
ショッピングモールの中は薄暗く、荒れ果てている
ショッピングモールは六階建てて広く、たくさんの店が残っている
エントランスの近くには動かなくなったエスカレーターが何台もある
◯711の鳴海と菜摘のように、エスカーターの上にいるナツ、スズ、老人、
◯711のエスカレーターとは違い、ナツたちが歩いているエスカレーターは壊れて動いていない
スズは頭にサングラスをかけている
エスカレーターを登って2階にやってきたナツ、スズ、老人
2階で立ち止まるナツ、スズ、老人
老人「ここは広いし、物もまだかなり残っているんだ。君たちの生活に必要な物も見つかるだろう」
スズ「ほんと!?」
老人「ああ」
スズ「なっちゃん、探検しよ!!」
ナツ「え、良いけど・・・」
ナツとスズは2階を回り始める
ナツとスズについて行く老人
スズ「(お店を指差して)なっちゃん!!あれ!!」
スズが指差した店は服屋
老人「入るか?」
ナツ「う、うん・・・」
ナツ、スズ、老人は服屋の中へ入る
店の中はまだ様々な服が残っており、状態もそれほど悪くはない
ナツ「(店の中を見ながら)す、凄い・・・こんなに残ってるんだ・・・」
服屋の中を回って見るナツ、スズ、老人
ナツは商品棚の上にあったTシャツを手に取る
棚の上にはたくさんのレディースのTシャツが置いてある
スズはマネキンが被っていたベレー帽を手に取る
ベレー帽の埃を手で払い、頭に乗せていたサングラスどかしてベレー帽を被るスズ
スズは近くにあった鏡で自分を見る
スズ「(鏡で自分を見ながら)お〜、悪くない」
スズはサングラスを目にかけて老人のことを見る
老人「(スズのことを見て)気取った芸術家のようだな」
スズ「(老人のことを見ながら)かっこいーってこと?」
老人「(スズのことを見たまま)まあ・・・そういうことだ。髭があったら完璧だと思うぞ」
スズ「(老人のことを見たまま)ひ!!げ!!」
老人「(スズから顔を逸らし)ああ」
スズ「(ナツのことを見て)なっちゃん!!髭探そ!!」
ナツは棚の上にあるレディースのTシャツを見ている
ナツ「(Tシャツを見ながら)ないよ、そんなもの」
スズ「探してみないと分かんないじゃーん。なっちゃんー、探してみようよー、ひげー」
ナツ「(Tシャツを見たまま)服を見終わったらね」
スズ「分かった〜」
スズはベレー帽を被ったまま店内を回り始める
老人は近くにあったスカートを手に取りながら、チラッとナツの方に目を向ける
ナツは変わらず棚の上のレディースのTシャツを見ている
ナツ「(Tシャツを見たまま)それ、スカート」
老人「え、ああ・・・(スカートを元の位置に戻して)ズボンかと思ったんだ」
少しの沈黙が流れる
老人「良い服は見つかりそうか?」
ナツ「(Tシャツを見たまま)多分」
老人「そうか・・・良かったな」
再び沈黙が流れる
ナツ「(Tシャツを見たまま 声 モノローグ)遠い昔にいた人たちの存在を感じる・・・時間の障壁に阻まれてるけど・・・」
◯713波音ショッピングモール内/服屋(昼前)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711と同日
◯711の続き
外は曇っている
ショッピングモールの中の服屋にいる鳴海と菜摘
鳴海と菜摘がいる服屋は、◯712でナツ、スズ、老人が訪れている服屋と同じ店
服屋の中は若い客で溢れており、レジにはたくさんの人が並んでいる
◯712のナツが見ている商品棚と同じところで、鳴海と菜摘がレディースのTシャツを見ている
鳴海と菜摘は楽しそうに話をしている
ナツ「(声 モノローグ)打ち壊せない、乗り越えられない、突き破れない壁の向こうに、私の知りたい世界がある。私たちがもがき苦しむのは、絶対に進みたい一歩と、絶対に通さない壁が対立するように存在していて、人はその中間でしか存在出来ないからだ」
◯714カフェ(昼)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713と同日
曇っている
お洒落なカフェのテラスにいる明日香
テラスには明日香の他に若い女性客が何組かいる
明日香はスマホを見ながら響紀を待っている
明日香はスマホの内カメラで、身なりを整えている
ナツ「(声 モノローグ)捻じ曲げられない決まりのある世界で、生きることは簡単じゃなかったと思う。スズの言う通り、生きないと楽しみが得られないから、みんな生きていたのかもしれない」
◯715滅びかけた世界:波音高校特別教室の四/文芸部室(昼)
外は曇っている
教室の中に半壊している旧式のパソコン六台と同じく半壊している旧式のプリンターが一台ある
椅子や机、教室全体に小さなゴミが溜まっている
教室の窓際には白骨化した遺体が二体並んで壁にもたれている
ナツとスズが眠っていた場所には20Years Diary、スズが拾った手鏡、ビー玉が置いてある
ナツ「(声 モノローグ)じゃあどうして亡くなったんだろう。大義のため?それとも意味のある死を遂げるため?」
◯716カフェ(昼)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714と同日
◯714の続き
曇っている
お洒落なカフェのテラスにいる明日香
テラスには明日香の他に若い女性客が何組かいる
明日香はスマホを見ながら響紀を待っている
明日香はスマホの内カメラで、身なりを整えている
明日香がいるカフェのテラスにやって来る響紀
スマホをポケットにしまう明日香
椅子に座る響紀
響紀が明日香に対して何か言う
明日香の顔が真っ赤になる
俯く明日香
ナツ「(声 モノローグ)意味のある人生が、意味のある死で幕を閉じるのなら、後悔なんて言葉はこの世に無くていい」
◯717滅びかけた世界:波音高校放送室(昼)
外は曇っている
埃をかぶっている放送機材と備品
放送室からは校庭が見える
放送室の椅子には遺体が座っており、その上に子供の遺体が乗っている
大人の遺体は女性服を着ている
子供の遺体は少年っぽい服を着ている
ナツ「(声 モノローグ)後始末は頼んだと言わんばかりに、ゴミと一緒に燃やされ灰になる亡骸・・・私とスズに、膨大な時間と滅びかけた世界だけが残されてる」
◯718緋空浜堤防(昼)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714、◯716と同日
曇っている
浜辺には遊んでいる子供や、二十歳前後の若者がちらほらいる
緋空浜の近くにある堤防に座って、海を眺めている汐莉
汐莉はイヤホンをつけ、スマホで音楽を聞いている
汐莉が聞いているのはサイモン&ガーファンクルのコンドルは飛んで行く
遠くの方で汐莉の背中を、制服姿の荻原早季が見ている
ナツ「(声 モノローグ)時間なんか要らない、時間なんかあるだけ無駄だ」
◯719神谷家リビング(昼過ぎ)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714、◯716、◯718と同日
外は曇っている
リビングで缶ビールを飲みながら神谷がニュースを見ている
ニュースでは、若者の自殺にまつわる特集が組まれている
神谷の妻、絵美がキッチンで昼食を作っている
ナツ「(声 モノローグ)私たちは・・・滅びかけた世界と死ぬ運命なのか・・・学校にある遺体みたいに・・・死んだことにすら気付かず・・・」
絵美は神谷に話しかけているが、神谷は絵美の話をほとんど聞いていない
ニュースを見ながら缶ビールを一口飲む神谷
◯720緋空寺/波音の部屋(500年前/昼過ぎ)
◯702の続き
外は曇っている
波音が使っていた刀や装束が部屋の隅に置いてある
机の上には書きかけの波音の手記、後の波音物語となる和紙が置いてある
畳に敷かれた布団の上で横になっている波音
波音は激しく咳き込んでいる
波音「(咳き込みながら 声 モノローグ)我らを巡る運命が、どのような結末を迎えるかは私にも分からぬ。だが、如何なる時も奇跡は起こり得るのだ。必ずや私自らが、奈緒衛、凛と再会出来る日が訪れると信じておる」
◯721波音博物館(昼過ぎ)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714、◯716、◯718、◯719と同日
◯703の続き
外は曇っている
波音博物館の中にいる雪音と双葉
波音博物館には、波音が生きていた時代の生活用品や、戦いの道具、波音町にまつわる資料などが展示されている
雪音と双葉の他に、数人の客が展示物を見ている
波音が使用していた甲冑、刀、槍、薙刀を見ている雪音
展示ケースの前には、それぞれ甲冑、刀、槍、薙刀の説明が書かれたプレートが貼られている
波音が使用していた薙刀の隣には、波音の手記(巻物のような和紙)が展示されている
波音の手記(巻物のような和紙)が展示されているケースの前には、波音物語(波音の手記)と書かれたプレートが貼られている
プレートには波音物語の説明が書いてある
双葉は明智光秀が使用していた火縄銃を見ている
双葉が見ている火縄銃の前には、明智軍の専用の火縄銃と書かれたプレートが貼られている
火縄銃のプレートには、火縄銃の説明が書かれている
雪音は展示された波音の手記(巻物ような和紙)を見る
波音「(声 モノローグ)涙は歩むべき強い足となり、優しさは他者を救うための手となろう」
雪音は波音の手記(巻物のような和紙)が展示されているケースに手を置く
雪音は波音の手記(巻物のような和紙)をじっと見ている
◯722滅びかけた世界:波音ショッピングモール内/本屋(昼過ぎ)
外は曇っている
ショッピングモールの中の本屋にいるナツ、スズ、老人
本屋の中は埃っぽく、雲の隙間から太陽の光が差し込んで来ている
棚に残っている本もあれば、床に落ちて汚れている本もある
ナツはカゴを持っていて、カゴの中には本やら新品の服が入っている
スズはベレー帽を被り、その上にサングラスを乗せている
スズは絵本のコーナーからスイミーを取ってきて、ナツに見せる
ナツはスイミーに興味が無く、近くにあった文庫本を適当に手に取る
老人は床にあった一冊の文庫本を拾う
老人が拾った文庫本は汚れており、埃まみれ
文庫本の埃を手で落とす老人
文庫本の表紙には”波音物語”とタイトルが書かれている
波音物語の表紙を見ている老人
波音「(声 モノローグ)孤独は心を鍛え、時が知識を増やすのだ。怒りと悲しみが光の元であることを忘れてはならぬ。光さえ灯せれば、暗闇など怖くはあるまい。我らは緋空と共にあり、緋空は奇跡と共にある」
老人はしばらく波音物語の表紙を見続ける
少ししてから、老人は近くにあった本棚に波音物語を置く
◯723波音ショッピングモール内/本屋(昼過ぎ)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714、◯716、◯718、◯719、◯721と同日
◯713の続き
外は曇っている
本屋にいる鳴海と菜摘
鳴海と菜摘がいる本屋は、◯722でナツ、スズ、老人がいた本屋と同じ店
雲の隙間から太陽の光が本屋に差し込んで来ている
本屋にはたくさんの本が綺麗に陳列されている
本屋にはたくさんの客がいて、立ち読みをしたりしている
雑誌コーナーで雑誌を見ている鳴海と菜摘
鳴海と菜摘が見ている雑誌には、フランスの観光地が載っている
二人は雑誌を見ながら楽しそうに話をしている
波音「(声 モノローグ)この世に壊せぬ壁などあらぬのだ。一人で壊せぬのなら二人で、二人でも無理ならば三人で、三人で足りぬというのなら、もっと大勢の仲間を引き連れて来よう。奈緒衛、凛よ・・・しばし待ってておくれ・・・波音物語がそなたらの魂を解き放つ時まで・・・(少し間を開けて)肉体が燃え、この世が滅亡しようとも、いつの日か輪廻転生を繰り返した先に・・・眠っていた我らの魂が目覚め、真の自由になれる・・・その時こそ、三人で共に暮らそうではないか・・・」
◯724滅びかけた世界: 波音ショッピングモール前(昼過ぎ)
曇っている
ショッピングモールの前にナツ、スズ、老人が乗っていた黒くて大きいピックアップトラック型の車が駐車されている
ショッピングモールは建物そのものが損壊している
ショッピングモールの周囲には放置された車が何台も置いてある
大きなエンジン音を鳴らした三台のバイクがショッピングモールにやって来る
バイクに乗ってるのは15歳、16歳くらいの青年三人
バイクのサイズは大きく、それぞれ外見と内装にアレンジが加えられてある
三台のバイクがショッピングモールの前に止まり、三人の青年がバイクから降りる
青年1「ここで良いな?」
青年2「中に誰かいたらどーすんだよ?」
青年3「誰もいねーって。人なんかほとんど死んでっから」
青年1はバイクのシートの下にあるメットインスペースを開けて、ハンドガンを取り出す
ハンドガンを取り出した後メットインを閉じる青年1
青年1「(ハンドガンを青年2、3に見せて)俺ら以外に人がいたらこれを使えば良い」
青年2「殺すのか?」
青年3「じゃなきゃこっちがやられるだろ」
青年1「(ハンドガンを腰にしまって)ああ」
青年1と同じようにバイクのシートの下にあるメットインスペースを開ける青年2、青年3
青年2は革のケースに入ったナイフを、青年3は青年1と同じハンドガンを取り出す
◯725滅びかけた世界:波音ショッピングモール内/化粧品の店(昼過ぎ)
外は曇っている
ショッピングモールの中の化粧品の店にいるナツ、スズ、老人
化粧品の店は広く、たくさんの化粧道具が陳列されたままの状態で置いてある
陳列された口紅を見ているナツ
スズは頭にベレー帽を被り、その上にサングラスを乗せたまま陳列されたチークを見ている
老人はカートを押しながら、化粧品の店の中を見て回っている
老人が押しているカートのカゴの中には、ナツとスズが手に入れた服やら本が入っている
ナツは近くにあった口紅を手に取り、試しに手の甲に塗ってみる
ナツの手の甲がピンク色になる
スズはベレー帽の上に乗せていたサングラスを目にかけ、チークを手の甲に塗りたくっている
スズの手の甲は真っ赤になっている
スズ「(チークを手に塗りたくなりながら)黒いような〜、赤いような〜」
ナツは近くにあった鏡を見る
ナツは口紅を塗った手の甲を唇の上に乗せ、鏡を見ている
スズ「(サングラスをかけたまま手の甲をナツに見せて)なっちゃーん、見てみてー」
ナツはピンク色になった手の甲を唇の上に乗せるのをやめて、鏡から目を逸らす
スズのことを見るナツ
スズ「(サングラスをかけたまま赤くなった手の甲をナツに見せ)なっちゃんは何色に見える〜?」
ナツ「(スズの赤い手の甲を見ながら)赤」
スズ「(サングラスをかけたまま赤くなった手の甲を老人に見せて)ジジイは〜?」
老人は立ち止まり赤いスズの手の甲を見る
老人「(スズの赤い手の甲を見ながら)血の色のようだ」
ナツ「最低な例え」
老人はスズの赤い手の甲を見るのをやめて、カートを押し始める
老人「(カートを押しながら)冗談で言ったのさ」
ナツ「笑えない」
老人「(カートを押したまま)それは悪かった。スズ、欲しい化粧品があったらカートに入れろ、ただし、炎症を起こしても自己責任で頼むぞ」
スズは老人が押しているカートのカゴを狙って、チークを放り投げる
スズが放り投げたチークはカゴの中に入る
ナツは再び、口紅を塗ってピンク色になった手の甲を唇の上に乗せて鏡を見る
ナツは手の甲に塗った口紅をポケットの中に入れる
◯726デパート内/化粧品売り場(昼過ぎ)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714、◯716、◯718、◯719、◯721、◯723と同日
外は曇っている
デパートの一階にある、広くて大きな化粧品売り場を見て回っている詩穂と真彩
デパートの一階全てが様々な化粧品のお店になっており、たくさんの若い女性客が化粧品を見ている
立ち止まる詩穂
詩穂「あ、待って真彩」
詩穂に合わせて立ち止まる真彩
真彩「なんかあったん〜?」
詩穂「うん、ちょっと」
詩穂は近くにあった口紅を手に取る
詩穂が手に取った口紅は、◯725でナツがポケットに入れた口紅と同じブランドで、完全に一緒の商品
詩穂は手の甲に、口紅を試し塗りをする
試し塗りをした詩穂の手の甲がピンク色になる
詩穂「(ピンク色の手の甲を真彩に見せて)どう思う?」
真彩「(詩穂のピンク色の手の甲を見て)いーんじゃなーい」
詩穂「(ピンク色になった手の甲を真彩に見せるのをやめて)適当な奴」
真彩「え、ちゃんと褒めたのに適当な奴はなくね」
詩穂は近くにあった鏡を見る
詩穂は◯725のナツと同じように、ピンク色になった手の甲を唇の上に乗せて鏡を見ている
詩穂「(ピンク色になった手の甲を唇の上に乗せて鏡を見ながら)食べることにしか興味がない真彩に感想を求めなきゃ良かった」
真彩「いや、食べること以外にも興味あるんすけど・・・」
詩穂「(ピンク色になった手の甲を唇の上に乗せて鏡を見たまま)コスメにも?」
真彩「ま、まーね・・・少しくらいは・・・」
真彩は近くにあったチークを手に取り、手の甲に試し塗りをする
真彩が手に取ったチークは、◯725でスズがカートのカゴに投げ入れたチークと同じブランドで、完全に一緒の商品
試し塗りをした真彩の手が赤くなる
真彩「(赤くなった手の甲を見ながら)血みたいだな、これ」
詩穂がチラッと真彩の赤くなった手の甲を見る
詩穂「(ピンク色になった手の甲を唇の上に乗せて鏡を見たまま)例え、最低過ぎ」
真彩「(赤くなった手の甲を詩穂に見せて)えー、じゃーこのチークは何色なわけ?」
詩穂はピンク色になった手の甲を唇の上に乗せるのをやめて、鏡から目を逸らす
赤くなった真彩の手の甲を見る詩穂
詩穂「(赤くなった真彩の手の甲を見ながら)赤」
◯727滅びかけた世界:波音ショッピングモール内/楽器屋(昼過ぎ)
外は曇っている
ショッピングモールの中の楽器屋にいるナツ、スズ、老人
楽器屋の中にはエレキギター、アコースティックギター、ベースギター、ドラム、ピアノ等の楽器や演奏に必要な機材など、様々な物が置かれている
店の中は荒らされておらず、ほとんどの物が陳列されたままの状態
ナツはベースギターを見ている
ギター類は壁にかけられており、たくさんの種類がある
スズはベレー帽を被りサングラスをかけたままドラムを見ている
ドラムはたくさんの種類がある
老人はカートを押しながら、店内を見て回っている
老人が押しているカートのカゴの中には、ナツとスズが手に入れた服、本、化粧品が入っている
サングラスをベレー帽の上に乗せるスズ
スズは近くにあったドラムのスティックを手に取り、ドラムを適当に叩く
ドラムの音に驚くナツ
ドラムの音がショッピングモール内に響き渡る
両手で耳を押さえるナツ
ナツ「(両手で耳を押さえながら)うるさいなもう・・・」
スズ「(ドラムを叩きながら大きな声で)これも欲しい!!!」
老人「(カートを押しながら)そんな物までいるのか」
スズ「(ドラムを叩いたまま大きな声で)えー!?なにー!?」
老人はカートを押して、スズのところへ行く
老人はカートから手を離し、スズの両手を掴む
ドラムを叩くのを止められるスズ
両耳を押さえるのやめるナツ
老人「(スズの両手を掴んだまま)欲しいのか?」
スズ「(老人に両手を掴まれながら)うん!!」
少しの沈黙が流れる
スズ「(老人に両手を掴まれたまま大きな声で)欲しい欲しい欲しい欲しい欲しいお願いお願いお願いジジイ欲しいから良いでしょ!!!」
再び沈黙が流れる
渋々スズの両手を離す老人
老人「仕方がないな・・・」
スズ「(嬉しそうに)やったーありがとうジジイ!!!」
老人「(ため息を吐き)ああ」
老人はチラッとナツのことを見る
ナツは変わらずベースギターを見ている
ナツが見ているベースギターは高い位置にあり、ナツの身長では届かないところにある
ナツのところへ行く老人
老人はナツが見ているベースギターを手に取り、ナツに差し出す
ナツは老人から顔を背ける
ナツ「(老人から顔を背けたまま)い、要らない!」
老人は少しの間、ナツにベースギターを差し出し続ける
老人「(ベースギターをナツに差し出したまま)欲しいんだろう?」
ナツ「(老人から顔を背けたまま大きな声で)よ、汚れた手をこっちに向けるな!!」
少しの沈黙が流れる
ナツのことを見るスズ
スズ「(ナツのことを見たまま)なっちゃん、せっかくジジイが取ってくれたんだから貰いなよ」
ナツ「(老人に顔を背けたまま大きな声で)い、要らない物は要らない!!!私に構わないで!!!」
老人はベースギターをナツに差し出すのをやめる
老人「悪かった・・・ナツ」
ベースギターを元あった場所に戻す老人
ナツは変わらず、老人から顔を背けている
◯728デパート内/楽器屋(昼過ぎ)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714、◯716、◯718、◯719、◯721、◯723、◯726と同日
◯726の続き
外は曇っている
デパートの中の楽器屋にいる詩穂と真彩
楽器屋の中にはエレキギター、アコースティックギター、ベースギター、ドラム、ピアノ等の楽器や演奏に必要な機材など、様々な物が置かれている
詩穂と真彩の他に数人の客が楽器を見ている
詩穂はベースギター、真彩はドラムを見ている
ギター、ドラム、どちらもたくさんの種類が揃っている
ギター類は壁にかけられており、詩穂が見ているベースギターは、◯728で老人が手に取ったベースと同じブランドで、完全に一緒の商品
詩穂が見ているベースは、◯728の店と同じように高い位置にあり、◯728のナツと同じく詩穂の身長では届かないところにある
真彩が見ているドラムは、◯728でスズが試奏したドラムと同じブランドで、完全に一緒の商品
一人の店員が詩穂のところにやって来る
楽器屋の店員「良かったら、試奏してみますか?」
詩穂「あ、いえ・・・ちょっと見てるだけなので・・・」
楽器屋の店員「試奏したくなったら声をかけてくださいね」
頷く詩穂
楽器屋の店員は詩穂の元を離れ、今度は真彩のいるところに行く
楽器屋の店員「良かったら、試奏してみますか?」
真彩「い、いーんですか!?」
◯729波音ショッピングモール内/パン屋(昼過ぎ)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714、◯716、◯718、◯719、◯721、◯723、◯726、◯728と同日
◯723の続き
ショッピングモールの中のパン屋にいる鳴海と菜摘
パン屋ではたくさんパンが売られている
パン屋の中にはイートインスペースもある
イートインスペースではパンを食べているたくさんの人がいる
パン屋のレジには行列が出来ており、鳴海と菜摘は列の最後尾にいる
子供からお年寄りまで、たくさんの人がパンを買っている
鳴海と菜摘はトレーを持っており、その上にはメロンパンが置いてある
鳴海「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま)にしてもパン屋まで混んでるとはな・・・」
菜摘「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま)出来立てだもん」
鳴海「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま感心して)出来立てのメロンパンと、出来立てのショッピングモールをかけ合わせたギャグか・・・やるな菜摘」
菜摘「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま)鳴海くん・・・今のは別にギャグのつもりで言ったんじゃないよ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま)俺と嶺二に鍛えられてるってさっき言ってたから・・・てっきり狙ったギャグかと・・・」
菜摘「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま)私・・・そんな寒いギャグは狙わない・・・」
鳴海「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま)そ、そうか・・・?お、俺的には熱いギャグだと思うぞ・・・」
菜摘「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま)熱いギャグって、例えばどんなの?」
考え込む鳴海
鳴海「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま)菜摘、怪盗ルパンが盗んだ大切な物って何か知ってるか」
菜摘「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま)心?」
鳴海「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま)違うな。怪盗ルパンが盗んだ物はパンだ」
再び沈黙が流れる
鳴海と菜摘は黙ったまま、会計の列を並び続ける
菜摘「(メロンパンが乗ったトレーを持ったまま小声でボソッと)鳴海くん・・・このままだと私の心を盗み損ねるよ・・・」
時間経過
イートインスペースの椅子に座ってメロンパンを食べている鳴海と菜摘
鳴海「(メロンパンを食べながら)思ってた以上に・・・」
菜摘「(メロンパンを食べながら)普通だね」
少しの沈黙が流れる
メロンパンを食べるのをやめる鳴海と菜摘
鳴海「少し期待し過ぎたか」
菜摘「うん・・・そうかも・・・」
鳴海「これじゃあスイートメロンパンの称号はあげられないな」
菜摘「その称号、悪口じゃないの?」
鳴海「あー・・・言われてみれば確かに。ってことは逆にスイートメロンパンに相応しいメロンパンだったのか・・・」
菜摘「うーん・・・スイートメロンパンってほど酷くはないと思うけど・・」
鳴海はレジの上にある看板を見る
看板には大きな字でメロンパン食堂と書かれている
◯730滅びかけた世界:波音ショッピングモール内/2階通路(昼過ぎ)
外は曇っている
ショッピングモールの通路を歩いているナツ、スズ、老人
ショッピングモールの中は薄暗く、荒れ果てている
ショッピングモールは六階建てて広く、たくさんの店が残っている
ナツ、スズ、老人はそれぞれをカートを押しており、カートのカゴの中にはショッピングモールの中で盗んだ服、本、化粧品、楽器などが入っている
スズはベレー帽を被っており、その上にサングラスを乗せている
突然立ち止まる老人
老人が立ち止まった場所は、◯729で鳴海と菜摘が訪れたメロンパン食堂の前
メロンパン食堂の中は荒らされており、レジの上にあった看板は外れかかっている
一瞬、メロンパン食堂を見る老人
老人はすぐにメロンパン食堂から目を逸らし、周囲を見る
老人に合わせて立ち止まるナツとスズ
ナツ「止まる時は止まるって言ってからとま・・・」
老人「(周囲を見ながらナツの話を遮って小声で)静かにしろ」
ナツ「な、何?どうかしたの?」
老人「(周囲を見たまま小声で)人がいる」
スズ「え、人?」
老人「(周囲を見たまま小声で)ああ」
老人は肩にかけていたボルトアクションライフルを手に持ち、安全装置を外す
怖がりながら老人のことを見ているナツとスズ
ナツ「(怖がりながら)じゅ、銃をどうするんだ」
老人「(ライフルのボルトを上げ後ろに引きながら)さあな・・・」
スズ「(怖がりながら)じ、ジジイ、人がいるんでしょ?」
老人「(ライフルのボルトを元に戻して)人がいなきゃ銃なんか使わないさ」
突然大きな銃声がショッピングモール内に響き渡る
振り返る老人
メロンパン食堂の看板が床に落ちる
メロンパン食堂の看板から煙が出ており、弾丸の痕が残っている
老人「(床に落ちたメロンパン食堂の看板を見て小声でボソッと)スイートメロンパンのクソッタレが・・・」
青年1「(大きな声で)武器を捨てて下に降りて来い!!!!」
どこからか青年1の大きな声が聞こえてくる
青年1「(大きな声で)早くしろ!!!!」
老人「(大きな声で)こっちは二十人以上いるぞ!!!!本当に降りても良いのか!!!!」
青年1「(大きな声で)ふざけるな!!!!年寄り一人と女子二人しかいないだろ!!!!」
深くため息を吐き出す老人
ナツ「(怖がりながら)ど、どうするんだよ!?」
老人「ナツ、落ち着くんだ」
ナツ「(怖がり怒りながら)お、落ち着けるわけないじゃん!!!相手に全部筒抜けなのに!!!」
スズ「(怖がりながら)わ、私たち・・・ここで撃たれて死んじゃうのかな・・・」
少しの沈黙が流れる
青年1「(大きな声で)早く銃を捨てて降りて来い!!!!じゃなきゃ今度は頭にぶち当てるぞ!!!!」
再びどこからか青年1の大きな声が聞こえてくる
老人「ナツ・・・スズ・・・今だけで良い・・・今だけで良いから、俺のことを信じてくれ」
スズ「う、うん・・・分かった・・・」
驚いてスズのことを見るナツ
ナツ「(スズのことを見ながら怒って)スズ!!!こんな奴の言うことを信じたらダメだ!!!」
スズ「(首を横に振り)ううん・・・大丈夫」
ナツ「(怒りながら)だ、大丈夫なもんか!!!死んじゃうかもしれないんだぞ!!!」
スズ「なっちゃん、ジジイが私たちのことを守ってくれるから、へーきだよ」
ナツ「(怒りながら)そ、そんなの信じられない!!!」
スズ「なっちゃん・・・」
老人「頼むよ・・・ナツ・・・今だけで良いんだ・・・」
少しの沈黙が流れる
スズ「なっちゃん、私はジジイのことを信じるから・・・なっちゃんは、私のことを信じてみて。ジジイのことが信じられなくても、私のことは信じられるよね?なっちゃん」
ナツ「す、スズのことは信じられるけど・・・」
青年1「(大きな声で)いつまで待たせる気だ!!!!話し合いをして良いなんて言ってないぞ!!!!」
再びどこからか青年1の大きな声が聞こえてくる
老人「ナツ、時間がない」
ナツ「わ、分かってるよ。(少し間を開けて老人のことを見て)ぜ、絶対に・・・絶対に守ってくれるの・・・?」
老人「(頷き)ああ」
再び沈黙が流れる
ナツ「(小さな声で)じゃあ・・・スズのことを・・・信じてみる・・・」
スズ「なっちゃん、3人で信じ合ってれば大丈夫だよ」
ナツ「う、うん・・・」
老人「ありがとう、ナツ。(少し間を開けて大きな声で)良いだろう!!!!今から下に降りるぞ!!!!」
青年1「(大きな声で)その前に武器を投げろ!!!!」
老人「(大きな声で)頭に当たって脳震盪を起こしても良いのか!!!!」
青年1「(大きな声で怒りながら)良いから早く投げるんだ!!!!」
舌打ちをする老人
一階めがけてライフルを放り投げる老人
ライフルが落ちた音がショッピングモール内に響く
青年1「(大きな声で)良し!!!!ゆっくり両手を上げたまま降りて来い!!!!」
老人「(大きな声で)分かった!!!!」
老人は両手を上げゆっくり歩く
老人「(両手を上げたまま小声で)君らは両手を上げずに、黙って俺に着いてきなさい」
頷き、カートを置いて老人について行くナツとスズ
ナツ、スズ、老人は壊れて動かなくなったエスカレーターをゆっくり降りる
一階にはハンドガンを構えた青年1と、老人の落としたライフルを構えた青年2がいる
青年1は片手にトランシーバーを持っている
老人「(両手を上げたまま周囲を見て)もう一人いるんだろう?」
青年1「(ハンドガンを構えたままトランシバーバーを使って)降りて来ていい」
青年3「(トランシーバーの声)了解」
老人「(両手を上げたまま)なんだ、三人か」
青年1「(ハンドガンを構えたままイライラしながら)黙ってろ」
少しするとハンドガンとトランシーバーを持った青年3が、ナツたちが使ったエスカレーターとは別のエスカレーターから駆け足で降りて来る
青年1、2がいるところへ向かう青年3
青年3「やったな、これでここは俺たちのものだ」
青年1「(ハンドガンを構えたまま)ああ」
老人「(両手を上げたまま)待て待て、独り占めは良くないぞ。これだけの物があるんだ、少しは分け合おう」
青年1「(ハンドガンを構えたまま)お前たちと分け合う余裕なんかねーんだよ。この世界は生きるか死ぬかの2択なんだ」
老人「(両手を上げたまま)その2択以外の考えはないのか?」
青年3「そんなのあるわけねーだろ」
青年2「(老人のライフルを構えたまま)人助けをしてたら俺たちが生き残れないんだよ」
老人「(両手を上げたまま)君らの言い分はよーく分かった。それで?年寄りとか弱い女の子をどうするるつもりだ?」
青年1「(ハンドガンを構えたまま)今から10数えてやる、数え終わる前にお前たちが消えなきゃ、撃ち殺すぞ」
少しの沈黙が流れる
ナツ「(焦りながら)ま、待ってよ!!話し合いを・・・」
青年1「(ナツにハンドガンを向けてゆっくり数を数えながら)1・・・2・・・3・・・4・・・」
老人は両手を上げるのをやめ、素早く青年1からハンドガンを奪い取り、ハンドガンで青年1の顔面を思いっきり殴る
鼻血が飛び散り、よろめく青年1
青年1「(よろめきながら)クソ!!!こいつ!!!」
青年2が叫びながら走って来る
青年2はライフルの銃床で老人を殴ろうとする
青年2「(老人に向かってライフルを振りかざしながら叫び声で)死ねぇえええええええええええええええええええええええ!!!!」
老人は振り下ろされたライフルを、軽々とハンドガンを持っていない手で止める
ライフルを掴んだまま青年2の膝を思いっきり蹴る老人
老人が蹴った勢いで青年2の膝は折れ曲がる
泣き叫ぶ青年2
老人はライフルを離し、青年2の顔面をめがけて持っていたハンドガンを思いっきり投げる
老人が投げたハンドガンは、泣き叫んでいた青年2の顔面に直撃する
青年3は持っていたハンドガンで老人を撃ち殺そうとするが、老人の動きが速過ぎて狙いが定まらない
青年3の銃を持っている方の腕を掴んで捻る老人
腕を捻られ青年3はハンドガンを落とす
呆然としながら老人と青年たちの戦いを見ているナツとスズ
老人は青年3が左手に持っていたトランシーバーを奪い取り、青年3の頭に思いっきりぶつける
頭を殴った拍子にトランシーバーは粉々に割れ、破片が周囲に飛び散る
倒れる青年3
青年1がトランシーバーのかけら拾い、叫びながらトランシーバーのかけらを老人に振りかざす
青年1「(トランシーバーのかけらを老人に振りかざしながら叫び声で)クソッタレがぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
老人はとっさに左腕を顔の前に出し、顔を守る
老人の左腕にトランシーバーのかけらが突き刺さる
老人の左腕にトランシーバーのかけらをめり込む青年1
老人は腰に隠し持っていたナイフを右手で抜き、青年1を腕を切り落とそうとする
青年2「(大きな声で)やめろ!!!!」
老人の動きが止まる
青年2の方を見る老人
青年2はナツの体を押さえ、ナツの首元にナイフを当てている
怖がり震えているナツ
青年2の膝は完全に折れ曲がっている
青年2の顔面は血まみれになっている
青年2「(ナツの体を押さえナツの首元にナイフを当てながら)下手に動けばこの子を殺すぞ」
スズ「(大きな声で)な、なっちゃんを返せ!!!」
青年2「(ナツの体を押さえナツの首元にナイフを当てながら怒鳴り声で)黙れ!!!!」
青年1「(老人の左腕にトランシーバーのかけらをめり込みがら)ナイフを捨てろ!死に損ないの兵士が!!」
青年1の鼻は折れており、鼻血が出ている
ナイフを落とす老人
老人が床に落としたナイフを倒れている青年3の方へ蹴る青年1
青年3は頭からダラダラと血を流している
青年3は老人のナイフを拾い、ゆっくり立ち上がる
ゆっくり歩いて、青年2のところへ行く青年3
青年1は老人の左腕にトランシーバーをめり込むのをやめる
老人の左腕には10cm以上のトランシーバーのかけらが突き刺さっている
老人の左腕は出血している
青年1「(老人の左腕に突き刺さっているトランシーバーのかけらを掴んだまま)こいつを抜いて後ろへゆっくり下がれ。良いか、ゆっくりだぞ。少しでも動きを早めたら女を殺すからな」
頷く老人
老人はゆっくり後ろへ下がる
後ろへ下がるごとに老人の左腕の出血が酷くなる
やがて老人の左腕からトランシーバーのかけらが完全に抜ける
トランシーバーのかけらが老人の左腕から抜けた瞬間、血が勢いよく噴き出る
右手で左腕を押さえながらゆっくり後ろへ下がり続ける老人
老人はスズの真横に行くまで後ろへ下がる
スズの真横で足を止める老人
チラッと老人の左腕を見るスズ
老人「(右手で左腕を押さえながら)平和にいかないか?お互い、これ以上余計な怪我は負いたくないだろう?」
青年1「今更騙されないぞ」
青年1の鼻からポタポタと血が垂れている
老人「(右手で左腕を押さえたまま)そうか・・・それは残念だ・・・ナツ、今助けてやるから、絶対に動くんじゃないぞ」
ナツは変わらず、怖がり震えている
スズ「(小声で)ジジイ・・・どうやってなっちゃんを救うの・・・?」
老人「(左腕を押さえるのをやめて)まあ見ててくれ、スズ」
老人の左腕は酷く出血をしている
ポケットからクシャクシャになったタバコの箱と、汚れたZIPPOライターを取り出す老人
タバコの箱が老人の血で赤くなる
クシャクシャになったタバコの箱からタバコを一本取り出し、タバコの箱をポケットにしまう老人
老人「(タバコを咥えて)悪いが、ちょっと一服させてもらうぞ。集中力を切らすわけにはいかないからな」
タバコに火をつける老人
汚れたZIPPOライターをポケットにしまう老人
タバコの煙を吐き出し、タバコを手に取る老人
老人「(タバコを手に持ったまま)さてと・・・(少し間を開けて)こういう西部劇みたいな状況は・・・残念ながらこの場に西部劇を見たことある奴がいるとは思えないが・・・昔の男なら一度は憧れるものだ」
老人は再びタバコを咥える
老人は素早くスズが腰に隠していた小さなハンドガンを手に取り、安全装置を外す
ハンドガンを青年2に向ける老人
青年1「しょ、正気かお前!?こっちはガキを人質に取ってんだぞ!!!」
老人「(タバコを咥えたままハンドガンを青年2に向けて)あんまり騒がないでくれ、俺の目も昔ほどは良くないんだ」
スズ「じ、ジジイ!!その銃は狙い通りに飛ばないやつだよ!!」
老人「(タバコの煙を吐き出しハンドガンを青年2に向けたまま)スズ、だから言っただろう?こういう短期決戦は集中力が大事なんだよ」
老人が構えている小さなハンドガンは、かつてロシア兵が使っていた物で標準が壊れている
老人が構えている小さなハンドガンは、◯389でナツ、スズ、老人の3人が空き缶を狙って試し撃ちしたのと同じ銃
痰とともに咥えていたタバコを吐き出す老人
老人「(青年2にハンドガンを向けたまま)スズ、弾はあるな?」
スズ「は、入ってるけど・・・」
老人「(青年2にハンドガンを向けたまま)そうか・・・ナツ、目を瞑っていろ」
震えながら目を瞑るナツ
ハンドガンのスライドを後ろに引く老人
老人「(青年2にハンドガンを向けたまま)俺は君らと違って、わざわざ数は数えないし、ライフル一挺を奪っても気を抜いたりはしない。今言っても遅いが、敵の武器がたった一つなんてことは、よっぽどの馬鹿じゃない限りあり得ないからな。(少し間を開けて)そんなお得な情報は置いといてだ・・・その子を解放する気はあるか?」
顔を見合わせる青年たち
青年3「こ、壊れた銃で狙ったらガキに当たるぞ」
少しの沈黙が流れる
老人「(青年2にハンドガンを向けたまま)もう一度だけ聞いてやる。ナツを解放する気はあるのか?」
再び沈黙が流れる
老人「(青年2にハンドガンを向けたまま)なるほど・・・では交渉は失敗だ・・・」
青年2がチラッと青年1のことを見る
片目を瞑り狙いを定める老人
青年1「(大きな声で)は、早くガキを殺れ!!!」
ナツの首をナイフで切ろうとする青年2
青年2を狙って発砲する老人
老人が撃った弾は青年2の折れ曲がった膝に当たる
弾丸は青年2の膝を貫通する
青年2の膝から血が飛び散る
悲鳴を上げながらナイフを落とし、ナツを離す青年2
その場に倒れ込む青年2
青年3が急いで落としたナイフを拾おうとする
青年3を狙って発砲する老人
老人が撃った弾は青年3の伸ばしていた右手の指先に当たる
青年3の人差し指が吹き飛び、辺りに血が飛び散る
青年3の人差し指がコロコロと転がる
スズは青年2から離れたナツを抱きしめる
地面に落ちた二本の薬莢がカランカランと音を立ている
青年2と青年3が泣き叫んでいる
青年3「(泣き叫びながら)指がぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
青年3の右手から噴水のように血が噴き出ている
老人「(青年3にハンドガンを向けて)静かにしろ、騒いだって消えた物は元に戻らないんだ」
青年2「(泣き叫びながら)ちくしょう痛えよお!!!!この足じゃあもう歩けねぇ!!!!」
老人は再び青年2を狙って発砲する
弾丸は青年2の顔の数センチ横を通って行く
地面に落ちた一本の薬莢がカランカランと音を立てる
老人「(青年2にハンドガンを向けたまま)静かにしろと言っただろう?」
青年2と青年3は静かになる
今度は青年1にハンドガンを向ける老人
青年1は怯え震えている
泣いている青年1、2、3
老人「(青年1にハンドガンを向けたまま)運が良ければ二人とも助かるはずだ。こいつらを連れてとっとと消えろ」
青年2を無理矢理立たせる青年1
吹き飛んだ人差し指を拾って立ち上がる青年3
青年2を支える青年1と青年3
青年2の膝は折れ曲がり、酷く出血をしている
青年2を支えながら歩く青年1と青年3
三人にハンドガンを向け続けている老人
三人は血と涙を流しながらその場を立ち去る
三人の姿が見えなくなってから、老人はハンドガンを下ろす
ナツとスズのことを見る老人
ナツは泣いている
スズは変わらずナツを抱きしめている
その場に座り込み、俯く老人
老人「(俯いたまま)君たちを危険な目に遭わせてしまった・・・すまない・・・」
老人の左腕から血が垂れ続けている
ナツを抱きしめたまま、老人の左腕を見るスズ
スズ「(ナツを抱きしめたまま老人の左腕を見て)なっちゃんとジジイが生きてて良かった良かった」
ハンドガンをその場に落とす老人
俯いたまま右手で左腕を強く押さえる老人
老人「(俯いたまま右手で左腕を強く押さえながら)ナツの言ってた通りだ・・・俺はイカれてる。(少し間を開けて)皮肉なことだが・・・この滅びかけた世界と俺は・・・同じなのかもしれないな」
少しの沈黙が流れる
スズ「(ナツを抱きしめたまま)ジジイは命の恩人だよ。ね?なっちゃん」
老人「(俯いたまま右手で左腕を強く押さえ続け)兵士は人の命を守るのが仕事なんだ・・・だから・・・俺は恩人でも何でもない・・・ただの臆病者さ・・・」
スズから離れるナツ
ナツは顔を真っ赤にして泣いている
泣きながら老人のことを見るナツ
老人は変わらず、出血した左腕を強く押さえたまま俯いている
少しの間老人のことを見続けるナツ
ナツ「(泣きながら老人のことを見て小声でボソッと)クソジジイのくせに・・・」
少ししてからナツは涙を拭い一人でどこかに行く
スズ「(ナツに向かって)なっちゃーん?どこに行くのー?」
スズの言葉を無視するナツ
ナツは近くにあった服屋に入る
服屋は荒れており、ほとんどの物が残っていない
不思議そうにナツのことを見ているスズ
ナツは服屋の中にあるマフラーを手に取って見ている
マフラーの多くは汚れているか、破れている
しばらく店内にあるマフラーを見て回った後、マネキンがつけている一番綺麗なチェックのマフラーを手に取るナツ
マフラーの埃を手で払うナツ
マフラーを持って、老人の元へ行くナツ
俯いたまま左腕を強く押さえている老人に、チェックのマフラーを差し出すナツ
顔を上げてナツのこと見る老人
老人「(右手で左腕を強く押さえたまま)これは・・・」
少しイライラしながら老人の隣に座るナツ
左腕を強く押さえていた老人の右手を無理矢理引き離すナツ
老人の左腕の出血しているところに、チェックのマフラーを縛るナツ
驚いてナツのことを見ている老人
何重にもして老人の左腕にチェックのマフラーを巻き、きつく縛るナツ
チェックのマフラーに老人の血が染み渡る
涙を流す老人
老人「(泣きながらナツにマフラーを縛ってもらって)ありがとう・・・本当に・・・ありがとう・・・」
何度も何度も老人の左腕にマフラーを巻いた後、最後に蝶々結びをするナツ
ナツ「(老人のことを見て)泣くほど痛かったの?」
老人「(泣きながら)ああ・・・」
ナツ「(老人のことを見たまま)大人なのに?」
老人「(泣きながら頷き)ああ・・・歳を取ると・・・痛みに弱くなるんだ・・・」
老人のところにやって来て、老人の隣に座るスズ
老人はナツとスズに挟まれながら泣いている
スズ「(老人の顔を覗き込んで)ジジイ?」
老人「(泣きながら)ん・・・?」
スズ「良かったね〜」
老人「(泣きながら)ああ・・・」
老人の頭をポンポンと叩くスズ
老人はその後も両隣にナツとスズがいる中、涙を流し続ける
◯731滅びかけた世界: 波音ショッピングモール前(夕方)
曇の間から夕日が出ている
黒くて大きなピックアップトラック型の車の荷台に、ショッピングモールから盗んだ物を順番に乗せているナツ、スズ、老人
三人の近くにはショッピングモールから盗んだ三台のカートが置いてあり、カートのカゴの中には服、本、化粧品、楽器、ボールやバットなどのスポーツ用品、様々な電化製品、映画のDVD、CD、海で遊ぶ道具、大きなぬぐるみ、スケートボードなど、色々な物が山のように入っている
スズはベレー帽を被っており、その上にサングラスを乗せている
チェックのマフラーが蝶々結びになって老人の左腕に縛られてある
チェックのマフラーには老人の血が染み渡っている
車の荷台にベースギターを乗せようとしているナツ
ナツがいる方へ左手を伸ばす老人
ナツは渋々老人にベースギターを渡す
老人はベースギターを荷台に乗せる
老人から顔を逸らすナツ
スズ「欲しい物なんだから盗んで正解だよ、なっちゃん」
ナツ「(老人から顔を逸らしたまま)う、うるさい!!」
スズ「お〜、照れ照れなっちゃんだ〜」
ナツ「て、照れてないし!!」
ナツの顔は少し赤くなっている
老人は一人黙々とカートから物を移動させ、車の荷台に乗せている
◯732滅びかけた世界:波音高校へ戻る道中(夕方)
雲の間にある夕日が沈みかけている
ナツ、スズ、老人が乗っている車が波音高校を目指している
道路はガタガタで、時々車が大きく揺れる
建物の多くは損壊していて、草木が生い茂っている
ナツとスズは荷台ではなく、後部座席に乗っている
お互いもたれながら眠っているナツとスズ
ナツの隣には老人から貰った双眼鏡が置いてある
スズはベレー帽を被り、目にはサングラスをかけている
老人は運転をしている
チェックのマフラーが蝶々結びになって老人の左腕に縛られてある
チェックのマフラーには老人の血が染み渡っている
車のルームミラーで眠っているナツとスズのことを見る老人
老人は二人を見て、少し微笑む
老人の隣の助手席には老人のライフルが置いてある
車の荷台にはショッピングモールから盗んだ服、本、化粧品、楽器、ボールやバットなどのスポーツ用品、様々な電化製品、映画のDVD、CD、海で遊ぶ道具、大きなぬぐるみ、スケートボードなど、色々な物が山のように積まれている
◯733カフェ(昼過ぎ)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714、◯716、◯718、◯719、◯721、◯723、◯726、◯728、◯729と同日
◯716の続き
曇っている
お洒落なカフェのテラスにいる明日香と響紀
テーブルの上には空になった皿と、アイスティーが二つ置いてある
テラスには明日香と響紀の他に若い女性客が何組かいる
話をしている明日香と響紀
明日香「(大きな声で)はっきり言ってあいつらはクソよ!!!人のことを考えてるように見えて実は全然違うんだから!!!」
明日香と響紀の周りにいる客たちが明日香の大きな声に驚き、明日香と響紀のことを見る
響紀「そうなの?」
明日香「(大きな声で)そう!!!人のことばっかり考えてるのかと思ったら実際は何も考えてないし!!!てか仮に考えていたとしても行動に移さなきゃ意味ないでしょ!?」
響紀「明日香ちゃん、先輩たちもまあまあ頑張ってると思いますよ」
明日香「何、響紀は鳴海たちの肩を持つわけ?」
響紀「いえ、私はどんな時でも明日香ちゃんの味方です」
少しの沈黙が流れる
明日香「ほんと、よくそんなセリフが恥ずかしげもなく言えるよね。最初は引いてたけどここまで来ると少しだけ感心しちゃう」
響紀「明日香ちゃんの気を引くためになら、どんな言葉でも口にするよ」
明日香「(呆れながら)はいはい」
響紀「明日香ちゃん・・・私に言って欲しい言葉はある?」
明日香「え・・・そんなのないけど・・・」
再び沈黙が流れる
響紀「明日香ちゃん」
明日香「だからないって言ってるでしょ。全く・・・・ほんとにしつこい子なんだから・・・」
響紀「そうじゃなくて、鼻血」
明日香「え・・・?」
鼻の下を触ってみる明日香
鼻の下を触った手を見る明日香
明日香の手には大量の鼻血がついている
明日香「(立ち上がり)やば・・・ご、ごめん!!」
鼻の周りを手で隠しながら明日香は走ってトイレに向かう
◯734カフェ内の女子トイレ(昼過ぎ)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714、◯716、◯718、◯719、◯721、◯723、◯726、◯728、◯729、◯733と同日
カフェの中の女子トイレにいる明日香
トイレには個室が三つあり、誰も使用していない
洗面台の水道で口の周りについた鼻血を洗い落としている明日香
鼻血を洗い落とした後、上を見上げる明日香
明日香「(上を向いたまま)もう最悪・・・」
女子トイレの扉が開く
驚いて扉の方を見る明日香
女子トイレに入って来たのは響紀
明日香「(上を向いたまま)驚かさないでよ・・・」
響紀「明日香ちゃんが心配で様子を見に来たんです」
明日香の隣に行く響紀
明日香「(上を向いたまま)心配するほどのことじゃないんだから、あんたは戻ってて」
響紀「明日香ちゃん、鼻血が出てる時は上じゃなくて下を向いた方がいいんですよ」
明日香「(上を向いたまま)えっ、そうなの?」
響紀「はい」
明日香「(下を向いて)へぇ・・・そうなんだ」
洗面台に鼻血がぽたぽたと垂れる
響紀「明日香ちゃんって勉強は出来るのに、保健体育は苦手?」
明日香「(下を向いたまま)変な言い方はしないでよ」
響紀「ごめん。明日香ちゃん可愛いから、ついついからかいたくなっちゃうの」
明日香「(下を向いたまま小声でボソッと)あんたは好きな女子にちょっかいをかける小学生男子か・・・」
響紀「もうちょっと顔を上げて明日香ちゃん、そんなに下を向いてたら綺麗なお洋服が汚れちゃいますよ」
顔を少し上げる明日香
響紀「(手で顔を上げるジェスチャーをして)もっともっと」
明日香「(また更に顔を上げて)これ以上顔を上げたら、正面向いてるのと変わらなくない?」
響紀「(手で顔を上げるジェスチャーをしたまま)いいからいいから」
再び顔を上げる明日香
明日香はほとんど正面を向いている
ジェスチャーをやめる響紀
響紀「明日香ちゃん、こっち向いて」
明日香「え、何でよ」
響紀「どのくらい出血してるのか確認します」
明日香「は、恥ずかしいから嫌なんだけど・・・てかそんなこと自分でも確認出来るし・・・」
響紀「明日香ちゃん、体のことは人が見ないと分からないことだってあるでしょ?」
明日香「う、うん・・・」
明日香は恥ずかしそうに横にいる響紀の方を見る
響紀はすかさず、自分の方を向いたタイミングで明日香にキスをする
明日香は驚き、響紀から離れようとするが響紀は明日香を離さない
嫌がっている明日香
キスをし続ける響紀
明日香の鼻血が垂れ、二人の口の周りは赤くなる
5、6歳の少女を連れた女性(少女の母親)がいきなり女子トイレに入ってくる
女性(少女の母親)は明日香と響紀のことを見て驚き、慌てて少女の手を引っ張り女子トイレから出て行く
トイレの外から女性(少女の母親)と少女の会話が聞こえてくる
少女「(声)ねーママ、今おねーさん同士でチューしてたよ」
女性(少女の母親)「(声)シッ!!そういうことは言わないの!!」
少女「(声)でも私見たもん、おねーさん同士でチューしてたもん!!」
女性(少女の母親)「(声)だ、黙ってなさい!!」
嫌がる明日香にキスをし続けている響紀
明日香は両手で響紀のことを突き飛ばす
響紀は突き飛ばされ倒れる
明日香、響紀の鼻下から顎にかけて鼻血がついている
息切れをしている明日香
明日香「(息切れをしながら)ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
響紀は鼻下についた鼻血を手で拭う
立ち上がる響紀
再びキスをしようと明日香に迫る響紀
明日香は反射的に響紀の頬の思いっきりビンタする
ビンタされた響紀の頬が赤くなる
少しの沈黙が流れる
明日香は洗面台の水道で口の周りについた鼻血を洗う
明日香「(口の周りを洗いながら)血・・・洗いなさいよ・・・」
響紀「どうして?」
明日香「(口の周りを洗いながら)固まったら面倒でしょ。乾燥しちゃったら簡単には取れないんだから」
明日香の隣に行く響紀
響紀は明日香の隣の水道で口の周りについた鼻血を洗う
再び沈黙が流れる
響紀「(口の周りを洗いながら)キス・・・嫌だった・・・?」
明日香「(口の周りを洗いながら)逆に聞くけど、響紀は強引にキスされて嫌じゃないの?」
響紀「(口の周りを洗いながら)相手にもよります」
水道を止める明日香
明日香「(下を向いて)私は嫌だから」
洗面台に鼻血がぽたぽたと垂れる
水道を止める響紀
響紀「(残念そうに)そうですか・・・」
少しの沈黙が流れる
響紀「明日香ちゃん」
明日香「(下を向いたまま)何」
響紀「もう一回・・・キスしていいですか?」
明日香「(下を向いたまま)馬鹿なの?」
響紀「はい」
明日香「(下を向いたまま)ダメに決まってるでしょ」
響紀「どうして?」
明日香「(下を向いたまま)どうしても」
響紀「なら明日香ちゃんが私にキスしてください」
明日香「(下を向いたまま)何でよ」
響紀「明日香ちゃんのことが好きだからです」
明日香「(下を向いたまま)好きならキスしても良いわけ?」
響紀「明日香ちゃん」
明日香「(下を向いたまま)今度は何よ?」
響紀「私の気持ちに応えてくれませんか」
顔を上げる明日香
明日香「嫌だって言ったらどうすんの」
響紀「家のベッドで大泣きします」
再び沈黙が流れる
明日香「分かってるよね?恋を焦っても良いことはないってことくらい・・・」
響紀「焦ってません、明日香ちゃんが焦らしてるんです」
少しの沈黙が流れる
明日香「(小さな声で)血・・・ついても知らないから・・・」
頷き、目を瞑る響紀
明日香も目を瞑る
響紀の唇にキスをする明日香
少しの間二人はキスをする
目を開けて響紀からゆっくり離れる明日香
明日香、響紀の顔が赤くなっている
明日香「どう・・・?満足した・・・?」
目を開ける響紀
明日香と響紀の鼻の下には鼻血がついている
首を横に振る響紀
響紀「明日香ちゃんは満足したの?」
明日香「ほ、ほどほどにね」
響紀「明日香ちゃん、キスする時は、これが最後だと思ってください」
明日香「なんでよ?」
響紀「毎回最後だと思うから、美しいキスが出来るようになるんです」
明日香「詩人じゃあるまいし、いちいちそんなこと思うわけないでしょ」
響紀「ならもう一回して。今度は最後の・・・お別れのキスだと思って・・・」
明日香は鼻血を手で拭い、響紀に近づく
明日香は響紀の体を押さえてキスをする
明日香「人に要求するんだったら、ちょっとはあんたも気持ちを込めなさいよ」
響紀が明日香にキスをする
響紀「明日香ちゃんのお望み通りに・・・」
響紀は何度も明日香にキスをする
響紀「明日香ちゃん・・・」
明日香「何・・・?」
明日香と響紀は見つめ合っている
響紀「(明日香を見つめながら)エッチなことを考えてたから鼻血が出たんでしょ?」
明日香「(響きを見つめながら)違う・・・あんたに恋してるからよ、愛がなきゃ血は流せないもの」
明日香は再び響紀にキスをする
◯735早乙女家前(夜)
◯692、◯694、◯696、◯698、◯703、◯705、◯707、◯709、◯711、◯713、◯714、◯716、◯718、◯719、◯721、◯723、◯726、◯728、◯729、◯733、◯734と同日
◯729の続き
月が出ている
菜摘を家まで送りに来た鳴海
鳴海と菜摘の手にはショッピングモールのビニール袋がある
菜摘の家は電気がついており、明るい
菜摘「本当に良いの?お母さんとお父さんも歓迎するのに」
鳴海「(頷き)ああ。今日は帰ったら部誌を書かなきゃならねえし、その後はフランスについて調べなきゃいけないからな」
菜摘「そっか、多忙だね、鳴海くん」
鳴海「多忙ってほどじゃないが、今夜は徹夜確定だ」
菜摘「ちゃんと調べるんだよ、フランスの中で行きたいところ」
鳴海「おう、任せとけ。まずはロンドン橋とロンドン塔について頭に叩き込んでおくよ」
菜摘「鳴海くん・・・ロンドンはフランスじゃなくて・・・」
鳴海「(菜摘の話を遮って)分かってる。今のは冗談で言ったんだ」
少しの沈黙が流れる
菜摘「鳴海くんは冗談で言ってるのか素で言ってるのか分かりづらいよ」
鳴海「菜摘だってそうだろ。さっきの出来たてギャグとか」
菜摘「あれは素だもん」
鳴海「分かりづらいな・・・」
菜摘「鳴海くんのお馬鹿なジョークより全然分かりやすいよ」
鳴海「菜摘、馬鹿なジョークだから誰も傷つかないんだぞ」
菜摘「確かにそうだね。笑いにはなってないけど・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「俺のギャグセンスについては来週の月曜に議論するとして・・・(少し間を開けて)菜摘、そろそろ家に入ってくれ、疲れてるだろ」
菜摘「(寂しそうに)うん・・・」
鳴海「また二日後、学校でな」
頷く菜摘
菜摘は家の扉の前で立ち止まる
振り返って鳴海のことを見る菜摘
菜摘「(振り返ったまま手を振って)バイバイ、鳴海くん」
鳴海「おう、じゃあな」
菜摘の唇が小さく動き、何かを言う
鳴海には菜摘が何と言ったのか分からない
菜摘はポケットから鍵を取り出し、家に入る
鳴海「あいつ・・・今何を言ったんだ・・・?」
◯736貴志家リビング(日替わり/朝)
強い雨が降っている
時刻は七時半過ぎ
制服姿で椅子に座ってニュースを見ている鳴海
ニュースキャスター2「メナス新大統領は、日本との関係を見直す必要があると・・・」
リモコンを手に取ってテレビを消す鳴海
立ち上がる鳴海
◯737波音高校三年三組の教室(朝)
外では強い雨が降っている
朝のHRの前の時間
神谷はまだ来ていない
どんどん教室に入ってくる生徒たち
教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている
鳴海、嶺二、雪音が教室の窓際で話をしている
菜摘、明日香はまだ登校していない
校庭では水溜りが出来ている
嶺二「今日寒くね?」
鳴海「ああ。やっと秋になったのかもな」
雪音「冬じゃなくて?」
鳴海「まだ10月なのに冬なわけあるか」
嶺二「そーだそーだ」
雪音「でもニュースだと、今日は12月並みの気温だって言ってたけど?」
嶺二「雪音ちゃん、12月はほぼ秋だぞ」
雪音「季節はさておき、10月に12月並みの気温なんてことある?」
鳴海「異常気象ってやつだろ。よく知らねえけど」
少しの沈黙が流れる
嶺二「にしても、珍しく菜摘ちゃんと明日香が遅えな・・・」
鳴海「雨のせいじゃないか?豪雨の日は遅刻する奴も増えるだろ」
嶺二「ああ・・・雨で遅れるってパターンもあったのか・・・」
雪音「嶺二、もしかしたらあの二人に何かあったのかもね?」
嶺二「んなこと俺に言うなよ」
再び沈黙が流れる
嶺二「菜摘ちゃんと明日香なら大丈夫だ・・・きっと・・・」
鳴海「きっと?なんだよその言い方」
嶺二「特に意味はない」
鳴海「なら変な言い方はしないでくれ」
嶺二「すまん」
鳴海「嶺二、気持ち悪いぞ」
嶺二「謝ってんだから許せよ」
鳴海「許すも何も、お前が素直に謝ってるから気持ち悪いんだけどな」
嶺二「謝ってる俺、偉いだろ」
鳴海「いや、普通にキモい。最近の嶺二、今まで以上にキモい瞬間が増えたぞ」
嶺二「うっせえ。何で謝ったらキモい扱いを受けなきゃならねー・・・」
廊下から明日香の声が聞こえて来る
黙る嶺二
明日香「(声)菜摘、本当に大丈夫なの?」
廊下から菜摘の咳き込む音が聞こえて来る
鳴海「な、菜摘!!」
鳴海は急いで教室を出る
慌てて鳴海について行く嶺二と雪音
廊下に来た鳴海、嶺二、雪音
廊下では喋っている三年生や、教室に入ろうとしている三年生がたくさんいる
廊下には明日香と菜摘がおり、明日香が菜摘の体を支えている
菜摘の制服は雨で濡れている
菜摘の顔は赤い
フラフラとした足取りで、明日香に支えられながら廊下を歩いている菜摘
菜摘「(明日香に体を支えてもらいながら小さな声で)あ・・・おはよう・・・鳴海くん・・・」
鳴海は菜摘に駆け寄り、菜摘の体を支える
鳴海と明日香の二人に体を支えてもらっている菜摘
鳴海「(菜摘の体を支えながら)菜摘!!大丈夫か!?」
明日香「(菜摘の体を支えながら)大丈夫なわけないでしょ!?何で菜摘を助けてあげなかったの!?」
鳴海「(菜摘の体を支えたまま大きな声で)知らなかったんだからしょうがないだろ!!!」
明日香「(菜摘の体を支えたまま)鳴海、無知は罪なんだからね?あんたの大切なものは、あんたが守らないと・・・」
唇を噛み締める鳴海
少しの沈黙が流れる
菜摘「(鳴海と明日香に支えられながら小さな声で)ごめんね・・・みんな・・・ごめん・・・(激しく咳き込み)ゲホッ・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・」
嶺二「まずは菜摘ちゃんを保健室に連れて行くぞ!!話はその後だ!!」
菜摘「(鳴海と明日香に支えられたまま小さな声で)だ、大丈夫・・・私は平気だから・・・雪音ちゃん・・・」
激しく咳き込み続ける菜摘
廊下にいた三年生たちが鳴海たちのことを見ている
菜摘「(鳴海と明日香に支えられたまま激しく咳き込み小さな声で)ゲホッ・・・ゲホッ・・・早く・・・行ってあげて・・・ゲホッ・・・」
菜摘のことを見ていた雪音が突然どこかへ走り出す
嶺二「お、おい!!待てよ雪音ちゃん!!!」
嶺二の言葉を無視して、雪音は階段を駆け降りる
嶺二「クソッ!!!」
菜摘が大量の血を吐き出す
気を失う菜摘
鳴海「(菜摘の体を支えたまま揺さぶり大きな声で)菜摘!?菜摘!!!しっかりしろ!!!」
明日香「(菜摘の体を支えたまま)れ、嶺二!!!救急車を!!!」
廊下にいた三年生たちは、徐々に鳴海たちの周りに集まってくる
呆然と菜摘のことを見ている嶺二
明日香「(菜摘の体を支えたまま大きな声で)早く!!!!」
嶺二は菜摘と、雪音が走っていった方を交互に見る
鳴海は菜摘の名前を呼び続けている
明日香「(菜摘の体を支えたまま大きな声で)嶺二!!!!」
嶺二は菜摘と、雪音が走っていった方を交互に見るのをやめる
嶺二はゆっくり後ろへ下がり、鳴海たちから離れて行く
菜摘の体を支えたまま嶺二のことを見ている明日香
明日香「(菜摘の体を支えたまま嶺二のことを見て)嘘でしょ・・・?嶺二・・・私たちを置いて行くの・・・?」
嶺二「(小声で)わりぃ・・・明日香・・・」
嶺二は鳴海たちに背を向け、走って雪音を追いかける
鳴海は変わらず、菜摘の名前を呼び続けている
鳴海は嶺二がいなくなったことに気づいていない
鳴海たちの周りにはたくさんの生徒が集まって来ている
その中には双葉もいる
鳴海「(菜摘の体を支えたまま揺さぶり大きな声で)菜摘!!!!菜摘!!!!」
明日香「(菜摘の体を支えたまま周囲の生徒に向かって大きな声で)だ、誰でも良いから!!!!救急車を!!!!早く!!!!」
鳴海たちの周りにいた生徒たちがスマホを取り出して、119番に電話をかけ始める
鳴海「(菜摘の体を支えたまま揺さぶり大きな声で)菜摘!!!!おい!!!!返事をしろ!!!!」
男子生徒1「(119番に電話をかけながら)おかしい・・・繋がらない・・・」
女子生徒1「(119番に電話をかけながら)私も・・・」
鳴海たちの周りにいる生徒は、119番に電話をかけるが繋がらない
明日香は菜摘の体を支えるのをやめて、ポケットからスマホを取り出す
明日香は119番に電話をかける
他の生徒たちと同じように、明日香の電話は119番に繋がらない
明日香「(イライラしながら119番に電話をかけて)な、何でよ!!!何で繋がんないの!!!!」
明日香は何度も119番に電話をかけるが、繋がらない
人だかりの中にいる双葉が鳴海たちのことを見ている
双葉の姿が一瞬、明智光秀になる
明智光秀(双葉)は嘲笑しながら鳴海と菜摘のことを見ている
双葉の姿が明智光秀になったことは、双葉自身も、周りいる生徒たちも、鳴海も気づかない
双葉の姿が明智光秀になったのはほんの一瞬の出来事
双葉は人だかりを抜け出し、嶺二、雪音が向かっていた方向へ歩き出す
鳴海は涙を流す
鳴海「(菜摘の体を支えたまま揺さぶり泣きながら大きな声で)頼むから目を覚ましてくれ!!!!菜摘!!!!」
鳴海は泣きながら菜摘に声をかけ続けるが、菜摘の意識は戻らない
明日香、鳴海の周りの生徒たちは、何度も119番に電話をかけているが繋がらない
廊下にいた三年生たちが泣き叫ぶ鳴海のことを見ている
鳴海「(菜摘の体を支えたまま揺さぶり泣きながら大きな声で)しっかしりしろよ!!!!」
◯738一条家リビング(朝)
外では強い雨が降っている
リビングは和風で広く、床の半分以上が畳で出来ている
照明は旅館にあるような和紙が巻いてあるペンダントライトと、同じく和紙が巻いてあるフロアランプの二種類
智秋がリビングで倒れている
鳴海「(泣き叫ぶ声)生徒会選挙だって上手くいったのに!!!!ここでお前が倒れたら意味ないだろ!!!!」
◯739緋空寺/波音の部屋(500年前/日替わり/朝)
◯720の翌日
外では強い雨が降っている
波音が使っていた刀や装束が部屋の隅に置いてある
机の上には書きかけの波音の手記、後の波音物語となる和紙が置いてある
波音は机に向かい座っている
机の上の手記に手をかざす波音
目を瞑り、妖術を使う波音
鳴海「(泣き叫ぶ声)みんなで一緒にフランスに行くって言ってたじゃないか!!!!朗読劇が終わった後の俺たちの楽しみを菜摘が潰すのかよ!!!!」
波音が妖術を使うと、波音のたくさんの手記(何十枚もの和紙)が宙にふわふわと浮かび始める
宙に浮かんだ手記(何十枚もの和紙)は光り輝いている
少しの間、波音の手記はふわふわと浮かんだまま、光り輝き続ける
鳴海「(泣き叫ぶ声)菜摘がいなきゃ文芸部は一生まとまらないぞ!!!!部長のいない部活なんてクソだからな!!!!」
突然、宙に浮かんでいた波音の手記(何十枚もの和紙)が机の上に落ちる
それと同時に意識を失い、波音が倒れる
机の上に落ちた波音の手記(何十枚もの和紙)は弱々しく光っているが、徐々に光は消え、元の状態に戻る
◯740波音高校三年生廊下(朝)
外では強い雨が降っている
鳴海たちの周りにたくさんの人だかりが出来ている
泣きながら菜摘の体を揺さぶり、声をかけ続けている鳴海
菜摘の意識はない
廊下には菜摘の吐いた大量の血がある
明日香と鳴海の周りにいる生徒たちはスマホで119番に電話をか続けているが、繋がらない
菜摘の体は雨で濡れており、顔は赤くなっている
泣きながら菜摘を強く抱きしめる鳴海
鳴海「(菜摘を抱きしめて泣きながら小さな声で)菜摘・・・頼むよ・・・俺の側にいてくれ・・・お前がいなきゃ嫌なんだ・・・」
少しの沈黙が流れる
菜摘「(鳴海に抱きしめられたまま小さな声で)なる・・・み・・・くん・・・?」
鳴海「(泣きながら菜摘の顔を見て)な、菜摘!?意識が戻ったのか!?」
菜摘「(鳴海に抱きしめらたまま小さな声で)うん・・・」
再び菜摘のことを強く抱きしめる鳴海
鳴海「(泣きながら菜摘のことを強く抱きしめて)良かった・・・本当に良かった・・・」
菜摘が意識を取り戻し、少し安心した表情をする明日香
鳴海は菜摘の体を少し離し、自分の右手の指先を菜摘の唇の上に置く
鳴海「(泣きながら菜摘の唇の上に右手の指先を置いて)赤くても良いんだ・・・菜摘・・・お前さえいてくれれば・・・俺はそれで良い・・・」
菜摘の唇の上に乗せていた右手の指先を、今度は自分の唇の上に置く鳴海
少ししてから、唇から右手の指先を離す鳴海
鳴海の唇と、右手の指先が菜摘の吐いた血で少し赤くなっている
鳴海は菜摘のことを強く抱きしめる
菜摘「(鳴海に抱きしめられたまま小さな声で)私も・・・鳴海くんの側にいたいよ・・・」
鳴海「(菜摘を強く抱きしめ泣きながら)ああ・・・分かってる・・・二人で一緒にいよう・・・」
菜摘は鳴海のことを抱きしめる
涙を流す菜摘
菜摘「(鳴海と抱き合いながら涙を流して)うん・・・ずっと・・・鳴海くんと一緒にいる・・・」
鳴海と菜摘はその場で泣きながら抱き合い続ける
♯5から♯19まで続いた生徒会選挙編も、今回の投稿で終わりになります。とにかく長い回でしたが、ようやくChapter6の半分が終わりました。合宿編、生徒会選挙編ときて、残すは卒業編のみです。Chapter6が終われば、今後「向日葵が教えてくれる、波には背かないで」で鳴海たちの学生生活を描くこともなくなります。なんだか少し寂しいですが、物語は確実に進んでいるので、これからも「向日葵を教えてくれる、波には背かないで」を応援して頂けると幸いです。
卒業編は生徒会選挙編と同じか、それ以上の文量になると思います。Chapter6の締めはとてつもなくでっかいです。
まだまだ時間はかかりますが、過去のChapterを読み返したりしてのんびりお待ちください!!
もう少しだけ頑張ろう、、、ナツ、スズ、鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春、雪音、響紀、詩穂、真彩、波音、奈緒衛、凛、神谷、早季、、、