Chapter6生徒会選挙編♯17 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter6生徒会選挙編 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
登場人物
滅びかけた世界
ナツ 16歳女子
ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。
スズ 15歳女子
マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。
老人 男
ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・
老人の回想に登場する人物
中年期の老人 男子
兵士時代の老人。
中年期の明日香 女子
老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。
七海 女子
中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。
老人と同世代の男兵士1 男子
中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。中年機の老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属している。
レキ 女子
老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。中年期の老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属している。
老人と同世代の男兵士2 男子
中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。
アイヴァン・ヴォリフスキー 男子
ロシア人。たくさんのロシア兵を率いている若き将校。容姿端麗で、流暢な日本語を喋ることが出来る。年齢は20代後半ほど。
両手足が潰れたロシア兵 男子
重傷を負っているロシア人の兵士。中年期の老人と出会う。
滅んでいない世界
貴志 鳴海 18歳男子
波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。
早乙女 菜摘 18歳女子
波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。
白石 嶺二 18歳男子
波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。
天城 明日香 18歳女子
波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は響紀に好かれて困っており、かつ受験前のせいでストレスが溜まっている。
南 汐莉15歳女子
波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。明るく元気。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。
一条 雪音18歳女子
波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・
柊木 千春女子
Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の思い人。
三枝 響紀15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。
永山 詩穂15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。おっとりとしている。
奥野 真彩15歳女子
波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。
早乙女 すみれ45歳女子
菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。愛車はトヨタのアクア。
早乙女 潤46歳男子
菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくること間違いなし。自動車修理を自営業でやっている。愛車のレクサスに“ふぁるこん”と名付けている。永遠の厨二病。
神谷 志郎43歳男子
波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。
荻原 早季15歳女子
Chapter5に登場した正体不明の少女。
貴志 風夏24歳女子
鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。仕事をしつつ医療の勉強をしている。
一条 智秋24歳女子
雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり、一命を取り留めた。リハビリをしながら少しずつ元の生活に戻っている。
双葉 篤志18歳男子
波音高校三年二組、天文学部副部長。
有馬 勇64歳男子
波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。
細田 周平15歳男子
野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。
貴志 紘
鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。
貴志 由夏理
鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。
神谷 絵美29歳女子
神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。
波音物語に関連する人物
白瀬 波音23歳女子
波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。
佐田 奈緒衛17歳男子
波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。
凛21歳女子
波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。
明智 光秀55歳男子
織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。
Chapter6生徒会選挙編♯17 √文芸部(波音物語)×√軽音部-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海
◯670波音高校三年三組の教室(昼過ぎ)
◯662と同日
外は晴れている
神谷が数学の授業を行っている
校庭では体育の授業が行われている
鳴海はボーッと菜摘のことを見ている
真面目に授業を聞き、ノートを取っている菜摘、明日香、雪音
頬杖をつきながらやる気がなさそうに神谷の話を聞いている嶺二
神谷「数学の面白さはここにある。小さな疑問から宇宙の秘密まで、無機質な数字と呼ばれる存在が鍵を握ってるんだ。先生の知る限り、数字を用いて解けなかった問題はこの世に存在していない。だから、君たちには自分の中にある数字を信頼し・・・」
◯671◯662の回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(昼)
◯662の続き
外は晴れている
昼休み
部室の隅にプリンター一台、部員募集の紙、作詞作曲に使う機材が置いてある
部室の中の椅子は円の形で並べられてある
鳴海は菜摘が落としたすみれの手作り弁当を拾いに行く
菜摘は椅子に座っている
菜摘に弁当を差し出す鳴海
菜摘「(鳴海からすみれの手作り弁当を受け取り)ありがとう・・・」
鳴海は椅子に座る
鳴海の座っている椅子の隣には、コンビニのパンが置いてある
鳴海「(心配そうに)菜摘、大丈夫か?」
菜摘「うん・・・」
鳴海「(心配そうに)体調は?」
菜摘「平気・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「菜摘、辛いなら・・・早退しても良いんだ」
首を横に振る菜摘
菜摘「みんなが頑張ってるのに、帰るわけには行かない」
◯672Chapter3◯288の回想/波音高校のベンチ(昼)
曇り空
昼休み
外のベンチに座っている鳴海と嶺二
コンビニで買ったパンを食べている鳴海と嶺二
ベンチはたくさんあり、友達同士やカップルがご飯を食べるのに使っている
嶺二は学校の外を見ている
鳴海「嶺二・・・?何見てんだよ?」
汐莉、響紀、詩穂、真彩が学校を出てすぐのところを歩いている
嶺二は汐莉たちのことを見ている
嶺二は食べかけたパンをベンチに置いて立ち上がる
嶺二「千春ちゃん!!待って!!」
嶺二は汐莉たちを追いかける
◯673回想戻り/波音高校三年三組の教室(昼過ぎ)
外は晴れている
神谷が数学の授業を行っている
校庭では体育の授業が行われている
鳴海はボーッと菜摘のことを見ている
真面目に授業を聞き、ノートを取っている菜摘、明日香、雪音
頬杖をつきながらやる気がなさそうに神谷の話を聞いている嶺二
神谷「数学は、高校を卒業してからも役に立つ科目だ。生きる手助けをしてくれるのは、数字という名の金で・・・」
鳴海「(菜摘のことを見ながら 声 モノローグ)分かったぞ・・・千春・・・あの時、嶺二は千春と響紀を見間違えたんじゃない・・・あいつには千春が見えたんだ。(少し間を開けて)千春がまだ、俺たちの近くにいるんだとしたら・・・菜摘の力を使わずに会う方法を探さないと・・・」
◯674せせらぎ公園(放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
公園にいる鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
公園にあったピンクのゴムボールを蹴ってパスし合っている鳴海、嶺二、響紀、真彩
ベンチに座って鳴海たちのサッカーを見ている菜摘、汐莉、雪音、詩穂
公園には鳴海たち以外に人はいない
雪音「(鳴海たちのサッカーを見ながら)良いの?遊ばせてて」
菜摘「(鳴海たちのサッカーを見ながら)たまには楽しまなきゃ、高校生だもん」
響紀がピンクのゴムボールを蹴って真彩にパスするが、ボールは遠くの方へ転がって行く
慌ててボールを追いかける真彩
真彩「(ピンクのゴムボールを追いかけながら)下手くそ!!!」
響紀「ごめーん!!!」
公園の端で転がっていたピンクのゴムボールを止める真彩
真彩「(大きな声で)嶺二せんぱーい!!!いきますよー!!!!」
嶺二「(大きな声で)おー!!!!」
ピンクのゴムボールを思いっきり蹴る真彩
ボールは嶺二がいる方へ真っ直ぐ飛んで行く
嶺二「あんま勢いよく蹴ってっと・・・(ピンクのゴムボールを足で受け止め)パンツが・・・(ピンクのゴムボールを鳴海がいる方へ蹴って)見えちまうぞ!!」
ピンクのゴムボールを足で受け止める鳴海
菜摘、汐莉、雪音、詩穂は変わらず、ベンチで鳴海たちのサッカーを見ている
詩穂「(鳴海たちのサッカーを見ながら)響紀くん、こんなんで明日大丈夫かなぁ・・・」
菜摘「(鳴海たちのサッカーを見ながら)大丈夫だよ、今だって落ち着いてるじゃん」
汐莉「(鳴海たちのサッカーを見ながら)そうですかね?ちょっと力んでるように見えますけど」
雪音「(鳴海たちのサッカーを見ながら)さっきもパス失敗してたし、あれでも実は緊張してるんじゃない?」
鳴海はピンクのゴムボールを響紀がいる方へ蹴るが、ボールは逸れて全然違うところに飛んで行く
鳴海「あ、やべ・・・すまん響紀!!」
ピンクのゴムボールを追いかける響紀
汐莉「(鳴海のことを見ながら)緊張してるのは響紀だけじゃないようですね」
菜摘「(鳴海のことを見ながら心配そうに)鳴海くん・・・」
転がっていたピンクのゴムボールを足で止める響紀
響紀はピンクのゴムボールを蹴って真彩にパスする
ピンクのゴムボールを足で止める真彩
真彩はピンクボールを蹴って嶺二にパスする
詩穂「(鳴海たちのサッカーを見たまま)明日香先輩の推薦文、雪音先輩は読みました?」
雪音「(鳴海たちのサッカーを見たまま)読んでない。基本的にスピーチのことは口出ししてないし」
汐莉「(鳴海たちのサッカーを見たまま)え、じゃあ響紀任せなんですか?」
雪音「(鳴海たちのサッカーを見たまま)響紀と、明日香ね」
少しの沈黙が流れる
詩穂「(鳴海たちのサッカーを見たまま)確か五人でしたっけ?今回の生徒会の募集人数」
菜摘「(鳴海たちのサッカーを見たまま)そうだよ、書記一人、会計一人、庶務二人、行事担当一人の合わせて五人。私たちが朗読劇を行うには、響紀ちゃんが生徒会の行事担当にならなきゃ」
詩穂「(鳴海たちのサッカーを見たまま)なーるほど・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海がピンクのゴムボールを響紀がいる方へ蹴るが、ボールはさっきと同じように逸れて全然違うところに飛んで行く
舌打ちをする鳴海
響紀がピンクのゴムボールを追いかける
汐莉「(鳴海たちのサッカーを見たまま)鳴海先輩、また失敗しましたね」
菜摘「(鳴海たちのサッカーを見たまま)無理もないよ。(少し間を開けて)今の鳴海くんは気を取られてるから」
汐莉「(鳴海たちのサッカーを見たまま)何に気を取られてるんですか?」
菜摘「(鳴海たちのサッカーを見たまま小声でボソッと)私に・・・」
◯675貴志家リビング(日替わり/リビング)
曇り空
時刻は七時半過ぎ
制服姿で椅子に座ってニュースを見ている鳴海
ニュースでは米大統領選挙の特集を放送している
ニュースキャスター1「現在行われている米大統領選挙の結果は、日本時間の午前3時ごろに・・・」
リモコンを手に取ってテレビを消す鳴海
立ち上がる鳴海
◯676波音高校三年三組の教室(朝)
教室に入る鳴海
朝のHRの前の時間
神谷はまだ来ていない
どんどん教室に入ってくる生徒たち
教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている
菜摘、嶺二、雪音が教室の窓際で話をしている
チラッと明日香のことを見て、自分の席にカバンを置き窓際に行く鳴海
明日香は自分の席でスマホを見ている
鳴海「おはよう」
菜摘「(驚いて)お、おはよう」
雪音「珍しい、鳴海がおはようなんて言うの」
鳴海「今日はXデーだからな。いつもより1%だけ余分に気合いが入ってるんだ」
嶺二「気合いはいーけど、空回りさせんなよ」
鳴海「おう。(菜摘のことを見て)菜摘」
菜摘「何?」
鳴海「約束したの、覚えてるか」
菜摘「生徒会選挙が終わったらってやつ?」
鳴海「ああ」
菜摘「覚えてるよ、明日だよね?」
鳴海「そうだ。忘れてなかったか」
菜摘「鳴海くんとの約束を忘れるわけないじゃん」
鳴海「よし・・・(少し間を開けて)ちょっと明日香と話をしてくる」
菜摘「え、今日は生徒会選挙があるから、いつもみたいに明日香ちゃんに交渉するのは・・・」
鳴海「(菜摘の話を遮って)菜摘、ただ話をしに行くだけだよ。交渉とかそういうのじゃねえんだ」
菜摘「そ、そっか・・・鳴海くん一人で話しに行くの?」
鳴海「ああ。じゃあ、行ってくる」
菜摘「う、うん・・・行ってらっしゃい」
鳴海は明日香のところに行く
鳴海のことを見ている菜摘、嶺二、雪音
嶺二「(鳴海のことを見ながら)あいつ、たまに張り切っておかしくなるよな」
菜摘「(鳴海のことを見ながら)そ、そうだね」
雪音「(鳴海のことを見ながら)責任感じてるんじゃないの、明日香のことで」
嶺二「(鳴海のことを見たまま)あの鳴海に限ってそれはねーだろ・・・」
明日香は変わらずスマホを見ている
鳴海「おはよう」
明日香「(スマホを見ながら)おはよ」
明日香は鳴海のことを一切見ない
明日香「(スマホを見たまま)今日は静かね」
鳴海「え?」
明日香「(スマホを見たまま)毎朝、私のところに大名行列をよこして騒ぎ立てるでしょ。あれやめてくれる?迷惑だから」
鳴海「明日香が文芸部に戻るならやめるよ」
明日香「(スマホを見たまま)自分から私を追い出したくせに」
少しの沈黙が流れる
鳴海「明日香、今日は喧嘩をしに来たんじゃない・・・お前と話がしたいんだ」
明日香「(スマホを見たまま)それならどうぞご自由に」
明日香は変わらずスマホを見続け、鳴海のことを視界に入れようとすらしない
鳴海「響紀から聞いたよ、明日香が推薦文を書いてくれたんだろ」
明日香「(スマホを見たまま)だから?」
鳴海「別に・・・ただありがたいなと思って」
菜摘、嶺二、雪音は鳴海と明日香のことを見ている
明日香「(スマホを見たまま)言っとくけど、私は響紀のために書いたの。文芸部は関係ない」
鳴海「そうか・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「明日香・・・今の文芸部は、みんなのたくさんの想いがグチャグチャになって乗っかってるんだ。その中には・・・千春や・・・軽音部の想いもある・・・・(少し間を開けて)だから・・・俺が明日香に言いたいのは・・・今日の生徒会選挙をよろしく頼むってのと・・・俺の不手際で・・・お前の想いや他の人の想いが・・・いっぱい犠牲になってしまったってことだ・・・」
スマホをポケットにしまう明日香
初めて鳴海のことを見る明日香
明日香「で、それが何?」
鳴海「ただの・・・事実だよ。お前に伝えなきゃいけないことを、ただ喋っただけだ」
少し沈黙が流れる
明日香「鳴海、そろそろ決めなさいよ。大切な物の優先順位を」
鳴海「それが決まれば、明日香は文芸部に戻って来てくれるのか?」
再び沈黙が流れる
明日香「戻ってあげても良いけど。(少し間を開けて)もう昔みたいに優しくはしない。鳴海が困り果てても、私は助けないからね」
菜摘、嶺二、雪音は変わらず、鳴海と明日香のことを見ている
菜摘「(鳴海と明日香のことを見ながら)鳴海くんと明日香ちゃん、今日はちゃんと話が出来てるんだ」
雪音「(鳴海と明日香のことを見ながら)意外にも冷静にね」
嶺二「(鳴海と明日香のことを見ながら)とかなんとか言って、突然殴り合いになったりしねーよな?」
菜摘「(鳴海と明日香のことを見たまま)多分、大丈夫・・・二人とも、今までのことに折り合いをつける気なんだと思う」
鳴海と明日香は変わらず話をしている
明日香「一番は菜摘、か・・・」
鳴海「ああ」
明日香「汐莉はどうなの?」
鳴海は目を瞑る
◯677◯587の回想/公園(放課後/夕方)
月が出ている
公園の時計は7時過ぎを指している
ブランコに座って話をしている鳴海と汐莉
鳴海の隣にはエナジードリンクの入ったコンビニのビニール袋が置いてある
公園には鳴海と汐莉以外に人はいない
汐莉「明日香先輩が卒業するまでの辛抱ですから・・・」
鳴海「明日香が卒業すれば、俺も、菜摘も、嶺二も、一条もいなくなっちまうんだぞ」
汐莉「それもまた寂しいですね」
鳴海「南が寂しいって言うと、なんか嘘臭いよな・・・」
汐莉「酷いじゃないですか先輩、私の顔、ちゃんと見てくださいよ」
鳴海は汐莉の顔を見る
汐莉は泣いている
◯678◯376の回想/波音高校休憩所(放課後/夕方)
自販機、丸いテーブル、椅子が置いてある小さな広場
自販機の前にいる鳴海
椅子に座っている汐莉
鳴海と汐莉以外に生徒はいない
ポケットから小銭を取り出す鳴海
自販機に小銭を入れ、ぶどうジュースを買う鳴海
ぶどうジュースを自販機から取り出し、汐莉の元へ行く鳴海
鳴海「(ぶどうジュースをテーブルに置き)ほれ、ボジョレーヌーボー」
椅子に座る鳴海
汐莉「(少し笑って)ただのぶどうジュースじゃないですか」
◯679Chapter1◯2の回想/通学路(朝)
満開の桜
緋空祭りに合わせて提灯が吊るされている
ゆっくり歩いている鳴海
遅刻を恐れてたくさんの生徒たちが波音高校に向かって走って行く
鳴海の後ろから汐莉が全力で走って来る
汐莉の持っているカバンが、鳴海の脇腹に直撃する
鳴海「(舌打ちをする)チッ・・・いってえな・・・」
少し先の位置で立ち止まって鳴海の方を振り返る汐莉
両手を合わせて頭をペコペコする汐莉
鳴海がボーッと見ていると、すぐに正面を向いて全力ダッシュを再開する汐莉
◯680回想戻り/波音高校三年三組の教室(朝)
朝のHRの前の時間
神谷はまだ来ていない
どんどん教室に入ってくる生徒たち
教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている
目を開け、唇を噛み締める鳴海
菜摘、嶺二、雪音が教室の窓際で鳴海と明日香のことを見ている
明日香「この質問に答えられなきゃあんたは一生中途半端だし、私が文芸部に戻ることもないでしょうね」
◯681◯479の回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)
校庭では運動部が活動している
教室の隅にはプリンターが一台置いてある
小声で話をしている鳴海と明日香
パソコンと向かい合って部誌制作を行っている嶺二、汐莉、雪音
明日香「(小声で)フォローするならちゃんとフォローしなさい。じゃなきゃ汐莉が可哀想でしょ」
◯682回想戻り/波音高校三年三組の教室(朝)
朝のHRの前の時間
神谷はまだ来ていない
どんどん教室に入ってくる生徒たち
教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている
唇を噛むのをやめる鳴海
菜摘、嶺二、雪音が教室の窓際で鳴海と明日香のことを見ている
鳴海「汐莉のことは好きだ・・・(かなり間を開けて)だけど・・・俺にとって本当に大切なのは・・・あいつ以上に・・・」
◯683波音高校体育館(昼)
全校生徒と教師たちが体育館に集まっている
鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩、双葉、細田周平などを含む生徒会役員に立候補していない生徒たちはパイプ椅子に座っている
神谷を含む教師たちはステージの近くで話をしている
明日香、響紀を含む生徒会役員の立候補者と推薦する十数人の生徒たちがステージの上のパイプ椅子に座っている
立候補している生徒は女子しかいない
立候補者と推薦する生徒たちの前にマイク付きの教壇が置いてある
鳴海の隣には嶺二が座っている
菜摘、雪音、双葉、そして一年生の汐莉、詩穂、真彩、細田は鳴海と嶺二からかなり離れたところにいる
ざわざわと話をしている生徒たち
鳴海「明日香、文芸部に戻って来るってさ」
嶺二「(驚いて)嘘だろ?」
鳴海「(呆れながら)こんなことで嘘なんかついてどうするんだよ・・・」
嶺二はステージの上の明日香を見る
明日香は響紀と話をしている
嶺二「嘘だったらぶん殴ってもいーか?」
鳴海「だから嘘じゃねえって。ちょっとは俺の話を信じてくれ」
嶺二は再びステージの上の明日香を見る
明日香は変わらず響紀と話をしている
嶺二「だったらどうやって明日香を説得したのか教えろよ」
鳴海「話をしただけで、別に大したことはやってねえけど・・・」
嶺二「話って今朝のことか?」
鳴海「ああ」
嶺二「一体何を喋ったら、あの明日香の気持ちが一瞬で変わるんだよ?」
鳴海「さあな・・・そういうことは明日香本人に聞いてくれ」
嶺二「あいつ、そんな余計なことを聞いたらキレるだろ」
鳴海「余計なことだって分かってるなら、俺にも聞くなよ」
嶺二「馬鹿たれ、相手が鳴海だから聞けるんだろうが」
鳴海「それもそうか」
少しの沈黙が流れる
嶺二「そんで、どうやって明日香の機嫌を直したんだよ?」
鳴海「まあ・・・強いて言うなら・・・」
嶺二「強いて言うなら・・・?」
鳴海「白黒つけたって感じだ」
再び沈黙が流れる
嶺二「あのなぁ鳴海」
鳴海「何だよ」
嶺二「こういう時はもっとかっけーセリフを言うもんだろ」
鳴海「うっせえな。格好良いセリフを吐いたって下がりきった俺の株はもう上がらねえんだよ」
嶺二「拗ねゼリフだけは一丁前に飛び出るんだよな、鳴海って」
鳴海「嶺二にだけは言われたくねえんだが」
嶺二「お互い様か」
鳴海「そうだ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「とにかく、明日香は戻って来る。とりあえず今はそれで良いだろ」
嶺二「まーな・・・鳴海が白黒つけて、それで文芸部のバランスが取れるんだったら、今は無理なオセロをしなくても良いってことか・・・」
鳴海「ああ」
体を伸ばす嶺二
嶺二「(体を伸ばしながら)鳴海が明日香に何を言ったのか予想もつかねーけどさー・・・俺たちの友情も、ここらで終わりかもしれねーなー・・・」
鳴海「そもそも男二人女一人って関係に無理があったんだろ」
嶺二「(体を伸ばすのをやめて)俺たちの友情ってのは、俺と鳴海のことを言ってんだよ」
嶺二のことを見る鳴海
嶺二「俺も・・・色んなことを知っちまったからな・・・早く大人になんねーと」
嶺二はチラッと雪音のことを見る
鳴海は嶺二の視線の先にいた雪音のことを見る
雪音は誰とも喋らずにいる
ステージの上の明日香と響紀は変わらず喋っている
楽しそうな明日香と響紀
マイクを持った一人の女子生徒がステージに上がる
マイクを持った女子生徒は、ステージの方へ行く
マイクを持った女子生徒「只今より、第98回、波音高校生徒会選挙を開催します。起立」
ざわついていた生徒たちが静かになり立ち上がる中、鳴海だけは椅子に座ったまま嶺二と雪音のことを見ている
マイクを持った女子生徒「気をつけ、礼」
鳴海以外の生徒たちが礼をする
マイクを持った女子生徒「着席」
着席する鳴海以外の生徒たち
時間経過
マイクを持った女子生徒「続いて、三年三組の天城明日香さん、お願いします」
立ち上がる明日香
明日香は推薦文の紙を持っている
推薦文の紙を持ったまま教壇の前に行く明日香
推薦文の紙を読み始める明日香
明日香「(推薦文の紙を読みながら)皆さん、こんにちは。三年三組の天城明日香です。私が、一年六組の三枝響紀くんを生徒会役員に推薦する理由は、響紀くんの強い意思と、底知れぬ行動力に心を動かれ・・・」
明日香のスピーチを聞いている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩、双葉、細田を含む生徒たち
響紀はステージの上で明日香のスピーチを聞きながら泣いている
汐莉、詩穂、真彩が小声で話をしている
真彩「(小声で)泣くなよあの馬鹿・・・」
詩穂「(小声で)もしかして緊張してるんじゃない・・・?」
汐莉「(小声で)いや、多分あれは嬉し泣きだと思う」
真彩「(小声で)情緒がバグってるんじゃなくて?」
汐莉「(小声で)うん」
詩穂「(小声で)でもなんで嬉し泣きなの?」
汐莉「(小声で)明日香先輩に響紀くんって呼ばれて感動したのかも・・・」
詩穂「(小声で)私だっていつも響紀くんって呼んでるのになぁ・・・」
汐莉「(小声で)私たちは・・・あの人の視界にすら入ってないから・・・」
真彩「(小声で)響紀の視界に入ったって良いことないじゃん」
ステージの上の響紀は明日香のスピーチを聞きながら泣き続けている
響紀はポケットからティッシュを取り出し、鼻をかむ
隣にいた生徒会役員立候補者の女子生徒が、響紀の鼻をかむ音に驚く
鼻をかんでいる響紀のことを、ドン引きしながら見ている生徒会役員立候補者の女子生徒
時間経過
ステージの壇上の前で響紀が演説を行っている
響紀の演説を聞いている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩、双葉、細田を含む生徒たち
響紀「私が生徒会役員行事担当に立候補した理由は主に・・・」
◯684波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)
校庭では運動部が活動している
教室の隅にパソコン六台とプリンター一台が置いてある
部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩
円の形に椅子を並べて座っている文芸部員と、響紀以外の軽音部員たち
それぞれの席の隣にカバンが置いてある
嶺二「(小声でボソッと)暇だな」
嶺二のことを睨む明日香
嶺二「睨むなよ、実際暇なんだから」
明日香は嶺二のことを睨み続ける
少しの沈黙が流れる
菜摘「あ、明日香ちゃん、文芸部に戻って来てくれるんだよね?」
明日香「そのつもりだけど・・・ありがとうは、別に要らないから」
菜摘「そ、そっか・・・(少し間を開けて俯き小さな声で)でも・・・ありがとう・・・」
再び沈黙が流れる
立ち上がる鳴海
鳴海「ちょっと飲み物を買ってくる」
嶺二「奢ってくれんのか、ここにいる全員に」
鳴海「何でだよ」
嶺二「ジュースでもなきゃやってられねーだろ」
鳴海「仕方ねえな、ボジョレーを期待してやがれ」
鳴海は近くにあったカバンから財布を取り出し、教室を出る
深くため息を吐く嶺二
嶺二「あーあ・・・男一人かよ・・・」
雪音「ハーレムじゃん、良かったね嶺二」
嶺二「嬉しくねーハーレムだ」
汐莉「鳴海先輩、この場の空気に耐えられなくなって逃げ出しましたよね」
嶺二「そーだなー・・・」
菜摘「な、鳴海くんは、みんなのためにジュースを買いに行ったんだよ!!」
チラッと菜摘のことを見て、再びため息を吐く嶺二
嶺二「菜摘ちゃんに全肯定して貰える鳴海のことが羨ましいぜ・・・」
菜摘「ぜ、全肯定じゃないもん!!私だってちゃんと鳴海くんのことを叱るんだから!!」
雪音「本当に叱ったことなんかあるの?」
菜摘「た、たくさんはない・・・けど・・・」
少しの沈黙が流れる
真彩「いーなぁー・・・私も菜摘先輩みたいな全肯定してくれる恋人が欲しいよー・・・」
詩穂「白馬の王子様だ・・・そんな男子がいたら・・・」
真彩「王子とか、興味ねー。私に必要なのはご飯を奢ってくれる優しい男の人だわー」
明日香「(小声でボソッと)その男はきっとクソね」
◯685波音高校休憩所(放課後/夕方)
自販機、丸いテーブル、椅子が置いてある小さな広場
自販機の前にいる鳴海
自販機の近くの丸いテーブルには鳴海が購入したたくさんのジュースが置いてある
ジュースは果物系、炭酸飲料系、ココア、スポーツ飲料水など様々な味がある
ジュースは合わせて8本ある
ジュースを数える鳴海
鳴海「(ジュースを数えながら)あと一本か・・・」
鳴海は自販機でエナジードリンクを買う
◯686波音高校廊下(放課後/夕方)
廊下を歩いている鳴海
廊下にはほとんど生徒がいない
鳴海は両手に購入したジュースを抱えている
文芸部の部室を目指している鳴海
鳴海「(両手にジュースを抱えながら 声 モノローグ)響紀が生徒会に入れば、いよいよ朗読劇も現実的になってくる。やっと朗読劇の影が見え始めて、明日香も戻って来たのに、変だ。おかしい。嬉しいことに間違いはないが・・・今のまま朗読劇をやって、菜摘の喜ぶ顔が見られるのだろうか?みんなが満足して、卒業式を迎えられるのだろうか?(少し間を開けて)分かってる、今更みんなを満足させるのは無理だ。でも、せめて少しくらいは楽しい気持ちでいたいよな・・・」
◯687◯608の回想/早乙女家に向かう道中(夜)
月が出ている
街灯の下で話をしている鳴海と菜摘
菜摘「観光地、調べておいてね」
鳴海「ん・・・?観光地?」
菜摘「フランスの観光地!!」
鳴海「あー・・・気が向いたらな・・・」
菜摘「気が向かなくても調べなきゃダメだよ!!厳選なる話し合いの結果フランス旅行が確定したんだから!!」
◯688回想戻り/波音高校廊下(放課後/夕方)
廊下を歩いている鳴海
廊下にはほとんど生徒がいない
鳴海は両手に購入したジュースを抱えている
文芸部の部室を目指している鳴海
鳴海「(両手にジュースを抱えながら 声 モノローグ)そうか、そのための海外旅行だったのか・・・みんなが嫌な気持ちのまま終わらないために、菜摘は文芸部と軽音部の両方が楽しめるイベントを最後に用意したんだ・・・(少し間を開けて)もしかして菜摘は、南が明日香のことを嫌っていることを知って・・・いや・・・それはないな・・・あいつは単純に、卒業後の楽しみを俺たちに作っただけだだろう・・・海外旅行は、みんなの気持ちをまとめる一つの手段であり、同時に最後の手段でもあったんだな・・・」
◯689波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)
校庭では運動部が活動している
教室の隅にパソコン六台とプリンター一台が置いてある
両手にジュースを抱えたまま部室に入る鳴海
鳴海が部室に入った瞬間、鳴海に抱きつく菜摘
菜摘が抱きついた勢いで、鳴海は抱えていた9本のジュースを落とす
驚く鳴海
真彩「わ、私の炭酸が!!!」
真彩が慌ててジュースを拾いに行く
鳴海「(照れながら)ひ、人前で抱きつくなよ。は、恥ずかしいだろ・・・」
鳴海から少し離れる菜摘
菜摘「(嬉しそうに)響紀ちゃん、選挙当選したって!!!」
鳴海「え・・・じゃあ生徒会役員に・・・」
菜摘「(嬉しそうに)うん!!!」
鳴海は菜摘の奥にいる明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩のことを見る
真彩は拾ったジュース9本を机の上に並べている
響紀は明日香に抱きついてる
明日香は響紀を引き離そうとしている
汐莉が明日香と響紀のことを見ている
響紀「(明日香に抱きついたまま)約束のデート、明日だからね。明日香ちゃん」
明日香「(響紀を引き離さそうとしながら)わ、分かってるって・・・そんなことよりも早く離れてよ・・・」
響紀は明日香から離れる
明日香の顔は赤くなっている
響紀「(頭を下げて)ありがとうございます!明日香ちゃん!!」
明日香「う、うん・・・」
明日香は汐莉が見ていることに気づき、恥ずかしそうに顔を逸らす
汐莉は俯く
嶺二「んじゃー当選を祝ってパーティーでもしよーぜ!!」
明日香「ぱ、パーティー?」
嶺二「お祝いが必要だろ?」
明日香「別に祝うようなことじゃ・・・」
嶺二「(明日香の話を遮って)何言ってんだよ明日香、めでてーことなんだぞ」
菜摘「そうだよ!!みんなでお祝いをしなきゃ!!」
真彩「(ジュースを机に並べるのをやめて)自分、コンソメポテチダブルパンチ味が食べたいっす!!」
嶺二「おー!!」
詩穂「私はビンゴ大会がしたいです」
鳴海「老人ホームかここは」
雪音「祝勝会の余興は鳴海に決定ね」
鳴海「忘年会じゃねえんだし余興とか要らねえだろ・・・」
雪音「じゃあ何するの?」
少しの沈黙が流れる
汐莉「(俯いたまま)トランプとか・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「とりあえず・・・」
菜摘「近くのコンビニに・・・」
嶺二「買い出しに行くか・・・」
◯690コンビニに向かう道中(放課後/夕方)
コンビニに向かっている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
夕日が沈みかけている
先頭で菜摘と嶺二が話をしている
菜摘「嶺二くん、実際のところ選挙で勝てると思ってたの?」
嶺二「あったりめえよ。勝ち戦って分かってたから、俺らにはよゆーがあったんだぜ?」
菜摘「勝ち戦だって確信してたんだ」
嶺二「おう」
菜摘と嶺二の後ろで、明日香、響紀、詩穂、真彩が話をしている
明日香「人のスピーチ中に鼻かまないでよ」
響紀「泣いてることを明日香ちゃんにアピールしたくて」
明日香「そのアピールする必要ないんだけど・・・」
真彩「響紀を見て隣の子がビビってたよ」
響紀「なんで?」
真彩「ふつー横の立候補者が泣いてたらびっくりするっしょ」
響紀「ただ泣いてるだけなのに変なの」
詩穂「変なのは響紀くんだよ、明日香先輩に響紀くんって呼ばれたくらいで泣くなんてさー」
響紀「そんなことが理由で泣いてたの?」
響紀「はい」
明日香、響紀、詩穂、真彩の後ろを歩いている鳴海、汐莉、雪音
汐莉は変わらず俯いている
鳴海、汐莉、雪音は会話をしていない
鳴海「み、南・・・」
汐莉「(俯いたまま)何ですか」
鳴海「ふ、フランスの観光地・・・どっか良い場所を教えてくれないか?」
汐莉「(俯いたまま)私が先輩に教えたら、行きたいところが被っちゃいますよ」
鳴海「そ、それはそうだが・・・(少し間を開けて)お、俺も色々調べたんだけど、よく分からなくてさ・・・」
汐莉「(俯いたまま)そもそも鳴海先輩、外国には興味ないんでしょ?」
鳴海「ま、まあな・・・いやでも、最近は海外も悪くねえって思うようになったぞ」
汐莉「(俯いたまま)先輩も、少しは変わったってことですかね」
鳴海「お、おう。だからさ・・・フランスのおすすめスポットがあったら教えてくれよ」
汐莉「(俯いたまま)エッフェル塔とか?」
鳴海「さすがにそれは・・・メジャー過ぎるだろ」
汐莉「(俯いたまま)じゃあ・・・パリで」
鳴海「パリのどこがおすすめなんだ?」
汐莉「(俯いたまま)そのくらいは自分で調べてくださいよ、人に聞くのはずるいです」
鳴海「そ、そうだな・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「み、南は・・・」
雪音が前足を出し、鳴海を引っ掛ける
喋りかけていた鳴海がつまずき、転びそうになる
雪音のことを見る鳴海
雪音「(小声で)また明日香に出て行ってもらいたいの?」
再び沈黙が流れる
黙る鳴海
汐莉は変わらず俯いたまま歩いている
菜摘は変わらず、嶺二と話をしている
明日香は変わらず、響紀、詩穂、真彩と話をしている
鳴海「(声 モノローグ)アメリカの大統領選挙の結果が出たこの日、南は俯き続け、ついに俺は南に声をかけるのをやめた。ここでまた俺が声をかければ、白黒つけた意味が無くなる。ここでまた俺が声をかければ、今度こそ明日香は文芸部を辞めてしまう。ここでまた俺が声をかければ、文芸部と軽音部の輪を掻き乱すことになる。ここでまた俺が声をかければ、俺は再度南の涙を見ることになる。ここでまた俺が声をかければ、今ある菜摘の笑顔は消えてしまう。ここでまた俺が声をかければ・・・大切な物の優先順位は壊れ・・・俺は明日香に嘘をついたことになる・・・(少し間を開けて)俯いている南が・・・文芸部と軽音部の中にある人間関係を守っていた」