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Chapter6生徒会選挙編♯14 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter6生徒会選挙編 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


登場人物


滅びかけた世界


ナツ 16歳女子

ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。


スズ 15歳女子

マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。

ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。


老人 男

ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・






老人の回想に登場する人物


中年期の老人 男子

兵士時代の老人。


中年期の明日香 女子

老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。


七海 女子

中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。


老人と同世代の男兵士1 男子

中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。中年機の老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属している。


レキ 女子

老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。中年期の老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属している。


老人と同世代の男兵士2 男子

中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。


アイヴァン・ヴォリフスキー 男子

ロシア人。たくさんのロシア兵を率いている若き将校。容姿端麗で、流暢な日本語を喋ることが出来る。年齢は20代後半ほど。


両手足が潰れたロシア兵 男子

重傷を負っているロシア人の兵士。中年期の老人と出会う。






滅んでいない世界


貴志 鳴海(なるみ) 18歳男子

波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。


早乙女 菜摘(なつみ) 18歳女子

波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。


白石 嶺二(れいじ) 18歳男子

波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。


天城 明日香(あすか) 18歳女子

波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は響紀に好かれて困っており、かつ受験前のせいでストレスが溜まっている。


南 汐莉(しおり)15歳女子

波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。明るく元気。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。


一条 雪音(ゆきね)18歳女子

波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・


柊木 千春(ちはる)女子

Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の思い人。


三枝 響紀(ひびき)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。


永山 詩穂(しほ)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。おっとりとしている。


奥野 真彩(まあや)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。


早乙女 すみれ45歳女子

菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。愛車はトヨタのアクア。


早乙女 (じゅん)46歳男子

菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくること間違いなし。自動車修理を自営業でやっている。愛車のレクサスに“ふぁるこん”と名付けている。永遠の厨二病。


神谷 志郎(しろう)43歳男子

波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。


荻原 早季(さき)15歳女子

Chapter5に登場した正体不明の少女。


貴志 風夏(ふうか)24歳女子

鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。仕事をしつつ医療の勉強をしている。


一条 智秋(ちあき)24歳女子

雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり、一命を取り留めた。リハビリをしながら少しずつ元の生活に戻っている。


双葉 篤志(あつし)18歳男子

波音高校三年二組、天文学部副部長。


有馬 (いさむ)64歳男子

波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。


細田 周平(しゅうへい)15歳男子

野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。


貴志 (ひろ)

鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。


貴志 由夏理(ゆかり)

鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。


神谷 絵美(えみ)29歳女子

神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。


波音物語に関連する人物






白瀬 波音(なみね)23歳女子

波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。


佐田 奈緒衛(なおえ)17歳男子

波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。


(りん)21歳女子

波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。


明智 光秀(みつひで)55歳男子

織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。

Chapter6生徒会選挙編♯14 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


◯631一条家に向かう道中(放課後/夕方)

 夕日が沈みかけている

 雪音の家に向かっている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音

 部活帰りの学生がたくさんいる

 先頭を歩いている雪音

 雪音の後ろを歩いている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉

 話をしている鳴海、菜摘、汐莉

 嶺二は雪音のことを見ている


菜摘「ちょっと肌寒くなって来たね」

汐莉「もう冬ですから」

菜摘「そろそろコートを出そうかなぁ」

汐莉「マフラーも要りますよ」

菜摘「そうだね!」

鳴海「二人とも季節感おかしいだろ・・・」

菜摘「え、そう?」

汐莉「鳴海先輩がバグってるのでは?」

鳴海「いや、どう考えてもバグってるのはお前たちだからな。冬の到来はおろか、この間秋になったばかりだぞ」

菜摘「鳴海くん、秋はもう終わったよ」

鳴海「いつの間に終わったんだ・・・」

汐莉「先輩、秋は9月までです」

鳴海「9月は真夏だろ」

汐莉「どうして男子ってむさ苦しい上に暑がりなんですかねー」

菜摘「うーん、汗っかきだからじゃない?」

鳴海「お前ら珍しく会話がめちゃくちゃだぞ・・・」

汐莉「でもですよ、男性がいなかったら地球温暖化が止まると思いませんか」

鳴海「あ、確かにそうだな・・・ってアホか。ボケるならもっとちゃんとやれ」

汐莉「先輩、今のはボケじゃないんですけど・・・」

鳴海「マジもんの発言かよ・・・おい嶺二、お前も黙ってないで菜摘たちになんか言ってやってくれ」


 少しの沈黙が流れる

 嶺二は変わらず雪音のことを見ている


菜摘「嶺二くん?」

嶺二「(雪音のことを見るのをやめて)ん?菜摘ちゃん、今俺を呼んだか?」


 顔を見合わせる鳴海、菜摘、汐莉


汐莉「ボケボケ魔人の鳴海先輩ならともかく、嶺二先輩までボケてるなんて珍しいですね」

鳴海「(小声でボソッと)悪かったなボケボケしてて・・・」

嶺二「いやー、汐莉ちゃんにそう言われると照れるぜ」

汐莉「照れるのは意味不明です・・・」

菜摘「嶺二くん、さっきから全然話に入って来ないし、どうかしたの?」


 嶺二はじっと菜摘の顔を見る


嶺二「(菜摘の顔をじっと見つめながら)菜摘ちゃん・・・」

菜摘「う、うん。な、何?」


 嶺二は何も言わず、菜摘の顔を見続ける

 鳴海は慌てて嶺二の視線を変える


嶺二「何だよいきなり」

鳴海「何だよじゃねえ!!菜摘の顔を見つめ過ぎだぞ!!」

嶺二「あ、わりぃ」

鳴海「(驚いて)す、素直に謝るのか・・・?」

嶺二「ふつー謝るだろ」


 再び沈黙が流れる


鳴海「嶺二、どうしたんだよ?」

嶺二「は?」

鳴海「お前、さっきから明らかに変だぞ」

嶺二「んなことねーって」

汐莉「先輩、風邪引いてるなら正直に言ってくださいね。移されたくないので」

嶺二「汐莉ちゃん、俺は別に健康だぜ?」

汐莉「だと良いですけど」

菜摘「嶺二くん!悩みがあるなら、私相談に乗るよ!!」


 嶺二は再びじっと菜摘の顔を見る 

 少ししてから嶺二は顔を逸らし、雪音のことを見る


嶺二「(雪音のことを見たまま小声でボソッと)ありがてーけど、菜摘ちゃんには言えねーよ・・・菜摘ちゃんには・・・」


◯632一条家前(放課後/夕方)

 夕日が沈みかけている

 大きな和風の一軒家の前で立ち止まっている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音

 表札に一条と書かれている

 雪音の家は高級住宅街にある


菜摘「(一条家を見ながら)ここが・・・雪音ちゃんのお家・・・?」

雪音「(頷き)そう」

鳴海「(一条家を見ながら)あ、あれだな・・・かなり立派っていうか・・・」

雪音「何?」

鳴海「(一条家を見たまま)えっとー・・・」

汐莉「(一条家を見ながら)雪音先輩の家・・・めちゃくちゃ大きいんですね」

雪音「入ってみるとそうでもないよ」


◯633一条家玄関(夕方)

 玄関に上がる鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音

 玄関は広く、巨大な収納棚がある

 

嶺二「(玄関を見ながら)入ってみると・・・そうでもないだと・・・?」

鳴海「(玄関を見ながら)広過ぎてもうスイートメロンパンだな・・・」

雪音「過剰な表現をどうもありがと」


 雪音の姉、智秋が鳴海たちを出迎えに玄関にやって来る


智秋「お帰り〜」

雪音「ただいま」

菜摘「(恥ずかしそうに小さな声で)た、ただいまです・・・」

鳴海「な、なんで菜摘まで言ってるんだ・・・」

智秋「(手招きしながら)さあ、みんな上がって上がって」


◯634一条家リビング(夕方)

 リビングを見ながら呆然としている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉

 リビングは和風で異様に広く、床の半分以上が畳で出来ている

 照明は旅館にあるような和紙が巻いてあるペンダントライトと、同じく和紙が巻いてあるフロアランプの二種類


汐莉「(リビングを見ながら)広過ぎませんか・・・この家・・・」

智秋「ありがとう」

雪音「どこでやる?」

菜摘「(リビングを見ながら)えっ・・・うーん・・・ど、どこでも・・・」

雪音「お姉ちゃん、私たち部屋でやるね」

智秋「はーい。晩ご飯は?」

雪音「出来たら部屋をノックして」

智秋「(頷き)うん」


◯635一条家雪音の自室(夕方)

 玄関、リビング同様に広い雪音の部屋

 雪音の部屋には勉強机とパソコンがあり、それ以外に物はない

 パソコンは机に置いてある

 雪音の部屋にやって来た鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音

 その場にカバンを置く雪音


嶺二「子供部屋じゃねーだろ、ここ」

雪音「よく分かったね。この部屋は、元々パパが使ってたんだ」


 その場にカバンを置く嶺二


鳴海「(雪音の部屋を見ながら)広い割には、ベッドすら置いてねえんだな・・・」

雪音「あー。寝室は別にあるの」

鳴海「(驚いて)べ、別にあるって・・・どんだけ家でかいんだよ・・・」

汐莉「雪音先輩のご両親は、今日はまだお仕事ですか?」

雪音「ううん」


 床に座り、カバンから筆記用具と学校の教材を取り出し始める雪音


雪音「(カバンから筆記用具と教材を取り出しながら)私、お姉ちゃんと二人暮らしだから」

汐莉「鳴海先輩と同じじゃないですか・・・」

雪音「(カバンから筆記用具と教材を取り出しながら)そう」

菜摘「鳴海くんのお姉ちゃんと雪音ちゃんのお姉ちゃんって、仲良いんだよね?」

鳴海「あ、ああ。高校時代からの友達らしい」

雪音「(筆記用具と教材を持ったまま立ち上がり)姉同士、色々共通点があるから親しくなったんでしょ」


 取り出した筆記用具と教材を机の上に置く雪音


雪音「そういえば私の親も死んでるし」

鳴海「そ、そういえばってお前・・・」


 雪音は机の隣にあったパソコンを立ち上げる

 少しの沈黙が流れる

 菜摘は机を見ている

 雪音の机には筆記用具と学校の教材の他に、雪音と智秋が笑顔で写っている写真が飾られてある

 机の棚には、学校の教材と共に波音町にまつわる資料や歴史の本がたくさん置いてある 

 菜摘は勉強机の棚を見ている


汐莉「きょ、今日は・・・エナジードリンクがありませんけど・・・か、買いに行きましょうかね」

雪音「(パソコンを立ち上げながら)買いたい人がいるならその人たちだけで買いに行ったら?私は要らない」


 再び沈黙が流れる

 その場にカバンを置く鳴海


 時間経過


 夜になっている

 パソコンと向かい合ってタイピングをしながら、部誌制作を行っている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音

 順調に部誌制作を行っている菜摘、汐莉、雪音

 鳴海と嶺二は執筆作業の進みが遅い

 タイピングをやめ、深く息を吐き出す嶺二

 嶺二は雪音のことを見る

 雪音は変わらず順調にタイピングをしている

 嶺二は続いて、菜摘のことを見る

 鳴海がタイピングをやめ、嶺二のことを見る

 鳴海に見られていることに気がつき、嶺二は慌ててタイピングを再開する

 鳴海もタイピングを再開する

 菜摘はタイピングをしながら、雪音の勉強机の棚を見る


◯636Chapter3◯299の回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 部室にいる鳴海、菜摘、神谷

 扉の方を見ている鳴海と菜摘

 雪音が部室に入って来る

 雪音を見て驚く鳴海と菜摘


雪音「えーっと・・・文芸部に入ることになりました!一条雪音です、よろしく」

菜摘「(声 モノローグ)雪音ちゃんへ・・・私は前から、雪音ちゃんとは出会うべきして出会ったんだと思ってる」


◯637回想戻り/一条家雪音の自室(夜)

 それぞれ部誌制作をしている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音

 タイピングをしていた菜摘の手が止まる

 菜摘以外はタイピングをしている

 菜摘は雪音の勉強机の棚を見ている

 机の棚には、学校の教材と共に波音町にまつわる資料や歴史の本がたくさん置いてある 


菜摘「(勉強机の棚を見ながら 声 モノローグ)三年生になった日のこと、覚えてるかな。私と鳴海くんが天文学部の見学に行ったよね」


◯638Chapter1◯17の回想/波音高校屋上(放課後/夕方)

 屋上にいる鳴海、菜摘、雪音、双葉、そしてその他大勢の天文学部員たち

 天文学部員の多くが、天体望遠鏡を覗いている

 菜摘は天体望遠鏡を覗いて、星を見ている

 雪音は菜摘に星の説明をしている

 鳴海はその様子を見ている


雪音「おおぐま座の上の方にある星雲で、M81って言うの。もう少し上の方にはM82っていう星雲もあるよ」

菜摘「(天対望遠鏡を覗きながら驚いて)ほんとだ!!星雲が見えるなんて思わなかった!」

雪音「色々動かしてみて、他にもたくさんの星があるから」


 菜摘は天体望遠鏡を動かして他の星も観察する


菜摘「(声 モノローグ)あの日、雪音ちゃんが星について教えてくれて、その後智秋さんのお見舞いをするために走って早退したことが、私の中では凄く印象に残ってるんだ。だから、雪音ちゃんが初めて文芸部にやって来た時は、かなりびっくりしたよ。(少し間を開けて)でもよく考えてみたら、私は魂の汚れを取るために、波音さんに代わって人助けをしなきゃいけないし、雪音ちゃんはずっと波音さんの魂を持つ人を探していたから、出会うのも当然だよね。お互いの利益を踏まえれば、関係が近くなるのは自然の流れだったし、私は智秋さんを助ける運命にあったんだと思う」


◯639Chapter2◯269の回想/波音総合病院/一条智秋の個室(夜)

 薄暗い病院の個室にいる鳴海、菜摘、雪音、智秋

 鳴海と菜摘は日本刀を持っている

 ベッドで横になっている智秋

 話をしている鳴海、菜摘、雪音、智秋


菜摘「(声 モノローグ)学園祭が終わってから雪音ちゃんが文芸部に入部したのも、学園祭が終わって千春ちゃんがいなくなっちゃったのも、ただの偶然なんかじゃない。みんなを助けて、全ての願いを叶えたいけど、私の起こせる奇跡には限界がある・・・学園祭の後の病院で雪音ちゃんと智秋さんに出会ったのは、私が雪音ちゃんの願いを叶え、一時的に智秋さんの病気を治すための前振りだったのかもしれないね。学園祭の日にあった出来事は、単に千春ちゃんとの交代を意味してるだけじゃないって後から気づいたよ。(少し間を開けて)お互い、10代の内から他人の人生を左右するような人間になってしまったんだね。ねえ雪音ちゃん、私に言われたくはないだろうけど、奇跡に伴う責任を忘れてはいけないよ。私たちの行動が、みんなの人生に影響するんだから・・・」


◯640回想戻り/一条家雪音の自室(夜)

 玄関、リビング同様に広い雪音の部屋

 パソコンと向かい合ってタイピングをしている鳴海、嶺二、汐莉、雪音

 順調に部誌制作を行っている汐莉、雪音

 鳴海と嶺二は執筆作業の進みが遅い

 菜摘はタイピングせず、雪音の勉強机の棚を見ている

 机の棚には、学校の教材と共に波音町にまつわる資料や歴史の本がたくさん置いてある 

 

菜摘「(机の棚を見ながら 声 モノローグ)雪音ちゃんは、波音さんがどうして村人を助け続けたのか知ってる?(少し間を開けて)波音さんは輪廻転生をするために、転生した先で1日でも長生きして、奈緒衛さんや凛ちゃんの魂を持つ人と交流するために、妖術を使って村人を助けたんだよ。(少し間を開けて)波音さんは人を殺し過ぎてしまったから、彼女の魂はまだ汚れてる・・・汚れは、奇跡の力と共に私に引き継がれてるんだ。もう分かってると思うけど、私が病弱なのは魂の汚れと、奇跡を起こす負荷に体が耐えられないから・・・誰かのために奇跡を起こせば、魂の汚れが少しずつ消えて、同時に私の命も削られるの」


 机の棚を見るのをやめ、タイピングを再開する菜摘


菜摘「(タイピングをしながら 声 モノローグ)だから、どうか智秋さんに残された時間を大切にしてほしい」


◯641一条家リビング(夜)

 テーブルの上には、パスタ、ローストビーフ、ピザ、サラダ、刺身の盛り合わせなど、豪華な食事が並んでいる

 椅子に座って夕飯を食べている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、智秋

 鳴海は菜摘、雪音、智秋と、嶺二は汐莉と会話をしながら、それぞれ食事を取っている


菜摘「(鳴海たちと話をしながら 声 モノローグ)智秋さんの命は私の命だし、私の命は智秋さんの命だから」


◯642早乙女家菜摘の自室(深夜)

 ◯616、◯621、◯624、◯629と同日

 時刻は午前2時ごろ

 菜摘は机に向かって手紙を書いている

 机の上にはたくさんのレターセットが置いてある

 菜摘は”雪音ちゃんが本当に自分の欲を満たしたいんだったら、仲間に心を打ち明けなきゃいけないよ”と手紙に書き、便箋を封筒に入れる

 封筒に”雪音ちゃんへ”と書く菜摘

 菜摘は新しくレターセットを手に取り、手紙を書き始める

 机の上にはレターセットの他に、鳴海、波音、汐莉、嶺二に宛てて書いた手紙が置いてある


◯643通学路(日替わり/朝)

 快晴

 波音高校に向かっている明日香

 たくさんの生徒が波音高校に向かっている

 

菜摘「(声 モノローグ)明日香ちゃんへ・・・明日香ちゃんはいつも真面目だったけど、私を含めたみんなが、明日香ちゃんに真面目であることを強要していたのであれば、とても後ろめたい気持ちです。(少し間を開けて)文芸部はしっかり者の明日香ちゃんに甘え過ぎていたのかも・・・」


 数人の女子生徒に声をかけられる明日香

 数人の女子生徒に挨拶を返す明日香

 明日香は女子生徒たちと楽しそうに話をしながら、学校を目指している


菜摘「(声 モノローグ)明日香ちゃんはみんなの進路や、文芸部のあり方を気にしてくれていたよね。ありがとう。そしてそんな明日香ちゃんの気持ちを踏みにじってごめんなさい。私も、鳴海くんも、嶺二くんも、頑固で、明日香ちゃんに正しいことを言われても、素直に受け取れてなかった。明日香ちゃんが正しいことを言ってるって分かっていたのに」


◯644波音高校三年生廊下(日替わり/朝)

 朝のHRの前の時間

 三年三組の教室を覗いている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 教室にいる生徒たちは周りにいる生徒と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている

 教室には明日香もいる

 明日香は自分の席でスマホを見ている

 神谷はまだ来ていない

 明日香のことを見ながらコソコソと話をしている鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩


菜摘「(教室を覗いて鳴海たちと話をしながら 声 モノローグ)違う・・・そうじゃない・・・明日香ちゃんが正しいことを言ってたから、自分たちの方が間違えてるって分かってたから、明日香ちゃんの言葉に耳を傾けられなかったんだ・・・これは言い訳だけどさ・・・正しいことよりも、間違えてることを選ぶ方が、良い時ってあるよね・・・?ごめん、いつも屁理屈ばかりで。(少し間を開けて)正しいことを言えるのって、明日香ちゃんの長所だし、その明日香ちゃんの長所のお陰で、文芸部は越えてはいけないラインを守れたんだと思う」


◯645波音高校ベンチ(昼)

 昼休み

 外のベンチに座っている明日香と響紀

 明日香はコンビニの弁当を食べている

 響紀は自分で作った弁当を食べている

 ベンチはたくさんあり、友達同士やカップルがご飯を食べるのに使っている 


菜摘「(声 モノローグ)明日香ちゃんの強くて、重くて、心のこもった言葉は、今は響紀ちゃんにしか届かなくても、いつか必ずみんなにも刺さる時が来る・・・悩んでる人の背中を押してあげたり、泣いてる人の涙を拭くことだって出来るから、みんなが困ってる時は、明日香ちゃんからすれば迷惑な話かもしれないけど、手を差し伸べてあげて欲しいんだ。もちろん、相手が響紀ちゃんでもね。(少し間を開けて)波音高校を卒業すれば、明日香ちゃんの環境は変わると思うけど、変わらない人たちがいることも忘れないであげて」


◯646早乙女家菜摘の自室(深夜)

 ◯616、◯621、◯624、◯629、◯642と同日

 時刻は午前2時ごろ

 菜摘は机に向かって手紙を書いている

 机の上にはたくさんのレターセットが置いてある

 菜摘は”それじゃあ、また会おうね、あすか先生。”と手紙に書き、便箋を封筒に入れる

 封筒に”明日香ちゃんへ”と書く菜摘

 菜摘は新しくレターセットを手に取り、手紙を書き始める

 机の上にはレターセットの他に、鳴海、波音、汐莉、嶺二、雪音に宛てて書いた手紙が置いてある

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