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Chapter6生徒会選挙編♯1 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海

Chapter6 生徒会選挙編概要

迷走する文芸部と軽音部。汐莉の愛を知ってしまう鳴海、汐莉を鳴海に託す菜摘、叶わぬ恋に涙する汐莉、未だ千春のことを想う嶺二、鳴海との関係を終わらせる明日香、奇跡を策略する雪音、明日香への愛で突っ走る響紀、奇跡に取り残される千春、未来に運命を委ねる波音、全てを監視する早季、老人を拒絶するナツ、寂しさを覚えるスズ、過去を嘆く老人。

次第にそれぞれの欲望が現れ、強い意志がぶつかり、愛する者への行動が他者を蹴落し始める。彷徨う数多の魂は、時を越えて奇跡を起こせるのか。流れゆく大粒の涙は、拭われるのか。縁が導く果てに、希望はあるのか。

Chapter1、2、3、4、5で起きたことが今、繋がる。

向日葵が教えてくれる、波には背かないで


Chapter6生徒会選挙編 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


登場人物


滅びかけた世界


ナツ 16歳女子

ビビリな面も多く言葉遣い荒い。勤勉家。母親が自殺してしまい、その後は一人で旅を続けていたがスズと出会い行動を共にするようになった。


スズ 15歳女子

マイペース、ナツと違い勉強に興味なし。常に腹ペコ。食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。

ナツと共に奇跡の海を目指してやって来た。


老人 男

ナツの放送を聞いて現れた謎の人物。元兵士の男。緋空浜の掃除を一人でしている。Narumi Kishiと彫られたドッグタグを身に付けているがその正体は・・・






老人の回想に登場する人物


中年期の老人 男子

兵士時代の老人。


中年期の明日香 女子

老人ともう一人の兵士を見送りに来た、中年期頃の明日香。


七海 女子

中年期の明日香と同じく、老人ともう一人の兵士を見送りに来た少女。年齢は15、16歳。


老人と同世代の男兵士1 男子

中年期の明日香、七海に見送られていた兵士。中年機の老人、レキ、男兵士2と同じ隊に所属している。


レキ 女子

老人たちと同じグループの若い女兵士で、年齢は25歳前後。中年期の老人、男兵士1、男兵士2と同じ隊に所属している。


老人と同世代の男兵士2 男子

中年期の老人、男兵士1、レキと同じ隊に所属している兵士。


アイヴァン・ヴォリフスキー 男子

ロシア人。たくさんのロシア兵を率いている若き将校。容姿端麗で、流暢な日本語を喋ることが出来る。年齢は20代後半ほど。


両手足が潰れたロシア兵 男子

重傷を負っているロシア人の兵士。中年期の老人と出会う。






滅んでいない世界


貴志 鳴海(なるみ) 18歳男子

波音高校三年三組、運動は得意だが勉強は苦手。無鉄砲な性格。両親を交通事故で失っている。歳の離れた姉、風夏がいるが仕事で忙しいため実質一人暮らし状態である。文芸部副部長。 Chapter4の終盤に菜摘と付き合い始めた。


早乙女 菜摘(なつみ) 18歳女子

波音高校三年三組、病弱で体調を崩しやすい、明るく優しい性格。文芸部部長。鳴海と付き合っている。


白石 嶺二(れいじ) 18歳男子

波音高校三年三組、鳴海の悪友、不真面目なところもあるが良い奴。文芸部のいじられキャラである。高校卒業後は上京してゲームの専門学校に通うことを考えている。


天城 明日香(あすか) 18歳女子

波音高校三年三組。成績も良くスポーツ万能、中学生の時は女子ソフトボール部に所属していた。ダラダラばかりしている鳴海と嶺二を何かと気にかけては叱る。文芸部部員。夢は保育士になること。最近は響紀に好かれて困っており、かつ受験前のせいでストレスが溜まっている。


南 汐莉(しおり)15歳女子

波音高校に通っている一年生、文芸部と軽音楽部の掛け持ちをしている。明るく元気。バンド”魔女っ子少女団”のメインボーカルで歌とギターが得意。20Years Diaryという日記帳で日々の行動を記録している。Chapter5の終盤に死んでしまう。


一条 雪音(ゆきね)18歳女子

波音高校三年三組、才色兼備な女生徒。元天文学部部長で、今は文芸部に所属。真面目な性格のように見えるが・・・


柊木 千春(ちはる)女子

Chapter2の終盤で消えてしまった少女で、嶺二の思い人。


三枝 響紀(ひびき)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のリーダー兼リードギター担当。クールで男前キャラ、同性愛者、 Chapter3で明日香に一目惚れして以来、彼女に夢中になっている。


永山 詩穂(しほ)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のベース担当。おっとりとしている。


奥野 真彩(まあや)15歳女子

波音高校一年生、軽音楽部所属。バンド魔女っ子少女団のドラム担当。バンドの賑やかし要員。


早乙女 すみれ45歳女子

菜摘の母、45歳には見えない若さ美しさを保つ。優しい、とにかく優しい。愛車はトヨタのアクア。


早乙女 (じゅん)46歳男子

菜摘の父、菜摘とすみれを溺愛しており二人に手を出そうとすれば潤の拳が飛んでくること間違いなし。自動車修理を自営業でやっている。愛車のレクサスに“ふぁるこん”と名付けている。永遠の厨二病。


神谷 志郎(しろう)43歳男子

波音高校三年の教師。鳴海、菜摘、嶺二、明日香、雪音の担任。担当教科は数学。文芸部顧問。Chapter5の終盤に死んでしまう。


荻原 早季(さき)15歳女子

Chapter5に登場した正体不明の少女。


貴志 風夏(ふうか)24歳女子

鳴海の6つ年上の姉、忙しいらしく家にはほとんど帰ってこない。智秋と同級生で親友関係。仕事をしつつ医療の勉強をしている。


一条 智秋(ちあき)24歳女子

雪音の姉。妹と同じく美人。謎の病に苦しんでいたがChapter3の終盤にドナーが見つかり、一命を取り留めた。リハビリをしながら少しずつ元の生活に戻っている。


双葉 篤志(あつし)18歳男子

波音高校三年二組、天文学部副部長。


有馬 (いさむ)64歳男子

波音町にあるゲームセンター“ギャラクシーフィールド”の店主。千春が登場したゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”の開発者でもある。


細田 周平(しゅうへい)15歳男子

野球部に所属している一年生。Chapter5では詩穂に恋をしていた。


貴志 (ひろ)

鳴海の父親、事故で亡くなっている。菜摘の父、潤と高校時代クラスメートだった。


貴志 由夏理(ゆかり)

鳴海の母親、事故で亡くなっている。菜摘の母、すみれと高校時代クラスメートだった。


神谷 絵美(えみ)29歳女子

神谷の妻。Chapter5では妊娠していた。


波音物語に関連する人物






白瀬 波音(なみね)23歳女子

波音物語の主人公兼著者。妖術を使う家系『海人』の末裔、そして最後の生き残り。Chapter4の終盤、妖術を使い奈緒衛の魂を輪廻させ、自らの魂も輪廻出来るようにした。


佐田 奈緒衛(なおえ)17歳男子

波音の戦友であり恋仲。優れた剣術を持ち、波音とは数々の戦で戦果をあげた。Chapter4の終盤に死んでしまった人物。


(りん)21歳女子

波音、奈緒衛を慕う女中。緋空浜の力を持っており、遥か昔から輪廻を繰り返してきた。波音に輪廻を勧めた張本人。体が弱い。奈緒衛と同じくChapter4の終盤に死んでしまった人物。


明智 光秀(みつひで)55歳男子

織田信長と波音たちを追い込み凛を殺した。






Chapter6生徒会選挙編♯1 √文芸部(波音物語)×√軽音部(ライブ)-夏鈴ト老人ハ大掃除ニツキ=好きにしろ、決別する海


◯347汐莉の夢/波音高校一年生廊下(昼) 

 外は曇っている

 昼間なのに薄暗く静かな一年生の廊下

 廊下を歩いている汐莉

 汐莉以外は誰もいない廊下

 

汐莉「誰か・・・誰かいないの?」


 汐莉は一つ一つ教室を覗いて行くが、教室には誰もいない

 汐莉は廊下を歩きながら人を探す


汐莉「(立ち止まり辺りを見ながら 大きな声で)ねえ!!」


 汐莉の大きな声が廊下に響き渡る

 少しの沈黙が流れる

 外ではポツポツと雨が降り始める

 どこからかピアノの音が聞こえて来る

 汐莉はピアノの音の方へ向かう


◯348汐莉の夢/波音高校体育館前(昼)

 雨が強くなっている

 体育館前にやって来た汐莉

 体育館の中からピアノの音が聞こえてくる

 体育館の扉を開け、中に入る汐莉

 体育館のステージ前に、パイプ椅子が一つ開いて置いてある

 ステージの幕は閉じており、幕の後ろからピアノが鳴っている

 ピアノで弾かれている曲はドヴォルザークの”家路”

 汐莉は体育館の中を見ながらゆっくり歩き、ステージ前にあったパイプ椅子に座る

 ステージの幕が上がる

 菜摘と雪音の姉、智秋がステージの上に立っている

 ステージの上にはグランドピアノがあり、無人でドヴォルザークの”家路”を繰り返し弾いている


汐莉「(不思議そうに)菜摘先輩と・・・雪音先輩の・・・お姉ちゃん・・・?何してるんですか・・・?」

菜摘「智秋さん、時間です」


 頷く智秋


智秋「ありがとう・・・それと、ごめん」

菜摘「これも・・・運命ですから、私たちの・・・」


 菜摘は右手で智秋の左手を握る

 横並びの菜摘と智秋

 菜摘と智秋は汐莉のことを見ている

 菜摘と智秋、汐莉は向かい合ってお互いを見ている

 

菜摘「さようなら・・・汐莉ちゃん・・・」


 汐莉は呆然としている

 菜摘は背中から小さなリボルバー型の銃を取り出す

 引き金を引き、こめかみに銃をあてる菜摘

 笑顔を見せる菜摘


汐莉「(大きな声で)待って!!!!菜摘せんぱ・・・」


 菜摘は自分自身を撃つ、その瞬間、ピアノの演奏が止まる

 弾丸は菜摘の頭を貫通し、隣にいた智秋の頭を撃ち抜く

 体育館内に銃声が響き渡っている

 菜摘と智秋の周囲にたくさんの血が飛び散っている

 汐莉の顔にも血がかかっている

 菜摘と智秋は、こめかみから血を垂れ流したままその場に倒れる


汐莉「そ、そんな・・・なんで・・・」


 汐莉はゆっくり立ち上がり、ステージの方へ向かう

 ステージに登る汐莉

 ステージの上で菜摘と智秋が死んでいる

 菜摘は笑顔のまま死んでいる

 その場に膝をつく汐莉

 泣いている汐莉


汐莉「(泣きながら)先輩・・・」


 汐莉はステージの上で泣き続ける


鳴海「(大きな声で)菜摘!!!!」


 少しすると後ろから鳴海の声が聞こえて来る

 振り返る汐莉

 鳴海が走ってステージに向かって来ている


汐莉「(泣きながら)な、鳴海先輩・・・」

 

 ステージに登る鳴海


汐莉「(泣きながら)菜摘先輩はもう・・・」


 鳴海は菜摘を抱きかかえ、泣きながら揺さぶる


鳴海「(泣きながら大きな声で 菜摘の体を揺さぶって)菜摘!!!目を覚ましてくれ!!!」


 鳴海が菜摘の体を揺さぶるたびに、菜摘のこめかみから血が垂れる


鳴海「(泣きながら大きな声で 菜摘の体を揺さぶって)お願いだ!!!頼むから・・・俺を置いて行くな!!!」


 菜摘は青白い顔をしている


鳴海「(泣きながら)菜摘・・・」


 体育館の入り口の側で、雪音が汐莉たちのことを見ている

 雪音がいることに気付く汐莉


汐莉「(泣きながら)雪音先輩・・・先輩のお姉ちゃんが・・・」


 雪音は何も言わず体育館から出て行く

 ゴトンと何かが落ちた音が響く

 音の方を見る汐莉

 菜摘が自殺に使った、小さなリボルバー型の銃がステージの上に落ちている

 泣きながら銃を拾う鳴海

 シリンダーを開き、弾丸がまだ入っているか確認する鳴海

 シリンダーを閉じる鳴海


汐莉「(泣きながら)せ、先輩・・・?」


 鳴海は泣きながら無言で、喉仏あたりに銃をあてる

 引き金を引く鳴海


汐莉「(泣きながら大きな声で)鳴海先輩!!!!やめてくだ・・・」


 鳴海は自分自身を撃ち抜く

 銃声が大きく響き渡る


◯349南家汐莉の自室(日替わり/朝)

 合宿から約十日後の朝

 快晴

 夢の中で鳴り響いた銃声の音で、勢いよく目を覚ます汐莉

 ベッドの横にある目覚まし時計が鳴っている

 時計は朝の6時半を指している

 汗だくで息切れをしている汐莉


汐莉「(息切れをしながら)ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」


 目覚ましを止め、ベッドから出る汐莉


◯350貴志家リビング(朝)

 快晴

 時刻は七時半過ぎ

 制服姿で椅子に座ってニュースを見ている鳴海


ニュースキャスター1「既にメナス議員が当選すると確信している支持者も多く・・・」


 テレビを消す鳴海

 立ち上がる鳴海


◯351波音高校三年三組の教室(朝)

 快晴

 教室に入る鳴海

 朝のHRの前の時間

 神谷はまだ来ていない

 どんどん教室に入ってくる生徒たち

 教室にいる生徒たちは周りにいる人と喋ったり、立ち歩いたり、スマホを見たりしている

 菜摘、明日香、嶺二、雪音が教室の窓際で話をしている 

 自分の席にカバンを置き、窓際に行く鳴海


鳴海「うーっす」

菜摘「おはよう鳴海くん」

明日香「聞いてよ鳴海、嶺二の馬鹿が・・・」

嶺二「うるせーな、んなこと鳴海に報告するんじゃねえ」

鳴海「何かあったのか?」

雪音「アメリカのことでちょっとね」

鳴海「アメリカ・・・?まさか、大統領選挙の話かよ?」

明日香「馬鹿な嶺二がそんなことについて話すわけないでしょ」

鳴海「確かに」

嶺二「朝から失礼な奴らだな、俺だって大統領のことくらい・・・」

鳴海「(嶺二の話を遮って)んで、本当は何の話をしてたんだ?」

菜摘「鳴海くん、アメリカと言えば海外旅行だよ!海外旅行!」

鳴海「(興味なさそうに)あー、まーたそれか・・・」

雪音「海外旅行と言っても、テキサスのことで少し議論しただけだけどね」

嶺二「俺のテキサスイチャモンつけて、お前から議論をおっ始めたんだろ」

菜摘「だって嶺二くんの知識、絶対間違えてるし・・・」

明日香「そうそう。知らないくせに語るからいけないの」

嶺二「旅行前にテキサスの魅力をこの俺が教えてやってんだよ!!ちょっとは感謝しやがれ!!」

鳴海「旅行前にってお前・・・テキサスに行く気満々だな・・・」

嶺二「そりゃそーだろ。文芸部の旅行先はテキサスってもう決まってるんだぜ?」

菜摘「き、決まってないよ!!!どこに旅行するかはみんなで話し合って・・・」

嶺二「菜摘ちゃん、俺たちに話し合いは無理だ。どーせ意見が割れて終わるし」

菜摘「だからと言って、嶺二くんの意見だけを通すのはダメ!!ここはみんなの行きたい国を聞いて、そこから話し合いを重ね・・・」

鳴海「(菜摘の話を遮って)お、おい菜摘・・・」

菜摘「ん?何?」

鳴海「海外は無しってなっただろ?行くなら沖縄か・・・それか北海道にでも・・・」

明日香「国内は嫌」

鳴海「はい?」

雪音「高校最後の旅行に沖縄って・・・地味だねえ・・・」

鳴海「いや、地味って言うけど、沖縄や北海道だってほぼ外国みたいな・・・」

菜摘「鳴海くん、その理論はおかしいよ」

嶺二「(首を縦に振り)うんうん、おかしいおかしい」

鳴海「どこもおかしくねえだろ」

菜摘「ほぼ外国とか言ってるけど、沖縄と北海道は立派な日本だからね?分かってる?」

鳴海「もちろん分かってるけどさ・・・」

嶺二「沖縄とか北海道より、テキサスの方が行ってみてーだろ、お前ら」

明日香「そうね。まだアメリカの方がいい」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「菜摘、マジで海外に行くつもりなのかよ・・・」

菜摘「鳴海くんは外国が嫌いなの?」

鳴海「いや嫌いっていうか・・・シンプルに行きたくねえ」

菜摘「なんで?」

鳴海「飛行機が怖い」


 再び沈黙が流れる

 顔を見合わせる菜摘と明日香

 吹き出して笑う菜摘、明日香、嶺二、雪音


菜摘「(笑いながら)こ、怖い?」

明日香「(笑いながら)飛行機が?」

鳴海「怖くて悪いかよ!!」

嶺二「(笑いながら)な、鳴海、海外どころか沖縄や北海道にだって行けねーじゃん!」

鳴海「船で行けるだろうが!!」

雪音「(笑いながら)ふ、船で海外とか・・・」

鳴海「船だって立派な移動手段なんだぞ!!!」

菜摘「(笑いを堪えながら)な、鳴海くん」

鳴海「何だよ?」

菜摘「(笑いながら)ふ、船も怖くない?ち、沈没しちゃうかもしれないし!!」

鳴海「沈没したって浮き輪がありゃ何とかなるだろ・・・(少し間を開けて)それに比べて飛行機は・・・」

明日香「落ちたら一巻の終わりってわけね」

鳴海「そういうことだ、だから海外に行きたくねえんだよ・・・」

嶺二「くっだらねえ理由だな」

鳴海「怖いんだからしゃあねえだろ!!!」

嶺二「ガキじゃあるまいし、飛行機くらい我慢して乗りやがれ」

鳴海「あぁん!?!?なんでテキサスのために俺が我慢しなきゃなんねえんだよ!!!」

嶺二「て、てめえテキサスを馬鹿にしやがったな!!!」

鳴海「テキサスを馬鹿にしてるんじゃねえ!!!お前のことを馬鹿にしてるんだ!!!」

嶺二「飛行機も乗れないようなチキンが何を言ってるんだか・・・」

鳴海「生まれついての防衛本能がお前より優れてんだよこっちは!!!」

嶺二「はいはい、鳴海はチキンってことで」

鳴海「チキンじゃねえ!!!!貴様より防衛本能が・・・」


 鳴海と嶺二の言い争いを見て、明日香が深くため息を吐く


菜摘「ま、まあまあ鳴海くん、嶺二くん。乗り物についても後でゆっくり話を・・・」


 鳴海と嶺二は菜摘を無視して言い争いを続けている


鳴海「(声 モノローグ)合宿が終わっても、文芸部は相変わらずだった」


 時間経過


 朝のHRの時間

 神谷がプリントを配っている

 生徒たちはプリントを後ろの席へ回して行く

 鳴海の元にプリントがやって来る

 プリントを見ている鳴海

 生徒会選挙のお知らせと書かれているプリント

 プリントには生徒会選挙のルールや注意事項などが書かれている


鳴海「(プリント見ながら 声 モノローグ)しかしその活動内容は、日に日におかしくなり始めている」


◯352回想/波音高校一年六組の教室/軽音部一年の部室(放課後/夕方)

 教室の隅にはリードギター、ベース、ドラム、その他機材が置いてある

 軽音部の部室で話をしている文芸部員と軽音部員たち

 黒板の前に立っている響紀

 鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩は黒板に向かって座っている

 黒板には生徒会選挙へ向けてと書かれている

 響紀の長所、短所が黒板にまとめられている

 

響紀「他!!」

真彩「(手を上げて)はい!!」


 真彩を指差す響紀


真彩「長所!!しつこい!!」


 黒板の長所の欄に”しつこい”と書く響紀


汐莉「待ってまあやん、それって長所なの?」

真彩「えっ、長所じゃん?」

汐莉「そうかなぁ・・・」

詩穂「でも実際、しつこくて馬鹿な政治家っているよ」

明日香「あり得ないような意見を国会で通そうとする人のことね」

嶺二「ちょっと馬鹿でしつこい奴がいなきゃ、話が進まねーんだろ」

鳴海「しつこいのはともかく、馬鹿なのはアウトだと思うんだが」

菜摘「うん・・・賢くなきゃ務まらないよ」

響紀「賢そうに見えますか?私」

雪音「黙ってれば」


 少しの沈黙が流れる


明日香「生徒会に入ろうとする奴なんて、自己顕示欲の塊か偽善者しかいないんだから、響紀、上手くまとめて味方につけらんないの?」

響紀「他の立候補者を騙せってことですかね?」

明日香「平たく言えばそう」

菜摘「あ、明日香ちゃん!騙すとか・・・そういうのはちょっと・・・」

明日香「何言ってんの、こいつを生徒会に入れる時点で、生徒会っていう組織そのものを騙してるようなもんでしょ」

菜摘「そ、そうかもしれないけど・・・」

雪音「実際問題、他の立候補者が減れば生徒会に入れる確率は上がるんだし、先に消しておいた方が楽かもしれないよ?」

鳴海「(小声でボソッと)響紀以外の候補者たちが可哀想に思えてきたな・・・」

汐莉「邪魔者は先に排除しときましょってことですか」

明日香「そうそう」

真彩「やっぱしつこいのは長所ってことっすね〜、響紀みたいな奴があーだこーだ言ってきたら、脳がバグりそうだし〜」


 響紀は赤いチョークで”しつこい”を丸く囲む

 手を上げる詩穂

 詩穂を指差す響紀


詩穂「五組の難波くんが、生徒会に立候補するって聞いたよ」

嶺二「なら早速そいつを蹴落としちまおうぜ」


 黒板に青いチョークで”ナンバ”と書く響紀


菜摘「け、蹴落とすって・・・」

鳴海「嶺二、何か良い考えでもあるのか?」


 嶺二はニヤリと笑う


◯353回想/波音高校一年生廊下(昼)

 昼休み、たくさんの生徒が廊下で喋ったりしている

 痩せたメガネの男子生徒(難波)が教室を出て廊下にやって来る

 廊下を歩いている難波

 響紀が難波を追いかける

 響紀のことを後ろから隠れながら見ている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩


菜摘「(心配そうに)だ、大丈夫かな・・・響紀ちゃん・・・」


 響紀は難波に声をかける


響紀「おーい!難波くーん!」


 難波は立ち止まり、振り返る


響紀「あのさあのさ!(耳元で小さな声で)うちのクラスのある女子がね・・・難波くんのこと好きなんだって・・・」

難波「(驚いて)えっ!?!?本当!?!?」

響紀「(笑顔で頷き)うん!!!」


◯354回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 パソコンをいじってる嶺二

 プリンターの前で立っている響紀

 鳴海、菜摘、明日香、汐莉、雪音、詩穂、真彩は椅子に座っている

 椅子は円の形に並べてある

 プリンターから一枚の紙が印刷される


響紀「(紙を手に取り)これをやれって言うんですか」

嶺二「(頷き)ああ」


 少しの沈黙が流れる


嶺二「安心しろ響紀ちゃん、こいつは完璧な台本だ!!」


 時間経過


響紀「(プリントを見ながら 棒読みで)あ、あのさ、あのさ・・・うちのクラ・・・」

真彩「下手くそ!!!もっと可愛いアピールをしろ!!」

詩穂「響紀くん!!上目遣い!!!」

響紀「(台本を見ながら)あ、あのさ!うちのクラスのある女子が・・・」

嶺二「(大きな声で)もっと可愛く!!!!明日香を落とす気やるんだ!!!!」

明日香「ちょっ・・・やめてよ・・・」

鳴海「貴重な文芸部の時間を何に使ってるんだか・・・」


◯355回想/波音高校一年生廊下(昼)

 ◯353と同日

 昼休み、たくさんの生徒が廊下で喋ったりしている

 響紀が難波と話をしている

 響紀のことを後ろから隠れながら見ている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩


難波「な、名前!!その子の名前を教えてよ!!!」

響紀「え〜・・・言っちゃったら本人に悪いし〜」

難波「お願い!!!」

響紀「(悩んでるふりをしながら)どうしよっかな〜」


 響紀は制服の襟をパタパタと動かし、手で扇ぐ

 一瞬、難波が響紀の胸元を見て、顔を逸らす


◯356回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 ◯354と同日

 校庭では運動部が活動している

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 円の形に並べられた椅子に座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩

 響紀だけは椅子に座らず、円の中心でプリントを読んでいる

 プリントには難波を口説き落とすための、台本が書かれている

 響紀の演技練習に、ディレクションをしている嶺二、真彩、詩穂

 その様子を見ている鳴海、菜摘、明日香、汐莉、雪音


響紀「(プリントを見ながら)どうしよっかな〜」

嶺二「(大きな声で)はいそこで扇ぐ仕草!!!」


 左手で扇ぐ響紀


真彩「おっぱいを見せつけろ!!!」


 制服の襟の部分をパタパタと動かす響紀


汐莉「(鳴海のことを睨み)うちの響紀になんてことをやらせるんですか先輩」

鳴海「すいません・・・」

菜摘「(不安そうに)こんなことで上手くいくのかな・・・」

雪音「むしろ、16の男子には刺激が強過ぎるんじゃない?」

鳴海「そうかもな・・・」


 呆れながら腕を組む汐莉


響紀「(プリントを見ながら)私・・・なんだけど・・・」

嶺二「(大きな声で)もっとあざとく!!!」

詩穂「(大きな声で)上目遣い!!!!」


◯357回想/波音高校一年生廊下(昼)

 ◯353、◯355と同日

 昼休み、たくさんの生徒が廊下で喋ったりしている

 響紀が難波と話をしている

 響紀のことを後ろから隠れながら見ている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩

 

響紀「(上目遣いで)私・・・なんだけど・・・ダメ?」

難波「(驚いて)えっ!?さ、さ、さ、三枝さんが!?!?」

響紀「(俯き)難波くんに恋しちゃったみたい・・・」

難波「で、でも三枝さんって女性が好きなんじゃ・・・」

響紀「(顔を上げて)今は男の子に夢中なの・・・(難波のメガネのフレームを指でそっと撫でながら)特に・・・難波くんみたいなメガネ男子・・・」

難波「そ、そ、そ、そうなんだ・・・」


 難波の顔が真っ赤になっている

 鳴海たちは変わらず、隠れながら響紀と難波のことを見ている


明日香「(小声でボソッと)馬鹿な男子」


 響紀と難波は変わらず、話をしている


難波「ぼ、ぼ、僕でよければ、付き合おうよ!!!」

響紀「ほんと!?嬉しい!!!」

難波「よ、よろしくね三枝さん!!」

響紀「うん!!あっ・・・そういえば・・・」

難波「どうかしたの?」

響紀「難波くんに一つお願いがあって・・・」

難波「何?」

響紀「うーん・・・ちょっと・・・」

難波「い、言ってみてよ、三枝さん」

響紀「(悩んでるふりをしながら)でもいきなりお願いだなんて・・・難波くんに申し訳ないし・・・」

難波「そ、そんなことない!!!三枝さんのためなら、僕なんでもするよ!!」


 小さくガッツポーズをする嶺二

 響紀が右手につけていたヘアゴムを外し、口に咥える

 思わず響紀の口を見る難波


◯358回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 ◯354、◯356と同日

 校庭では運動部が活動している

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 円の形に並べられた椅子に座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩

 響紀だけは椅子に座らず、円の中心でプリントを読んでいる

 プリントには難波を口説き落とすための、台本が書かれている

 響紀の演技練習に、ディレクションをしている嶺二、真彩、詩穂

 その様子を見ている鳴海、菜摘、明日香、汐莉、雪音


嶺二「(大きな声で)響紀ちゃん!!次は髪を結ぶんだ!!」


 響紀はプリントを机の上に置く

 右手につけていたヘアゴムを取り、ポニーテールにする響紀


響紀「こうですか?」

嶺二「(大きな声で)ダメだよそれじゃあ!!!もう一回!!!やり直し!!!」


 ポニーテールを解き、ヘアゴムを右手につける響紀


鳴海「(感心しながら)嶺二って、こういうことはマジで天才的だよな」


 鳴海の隣に座っていた明日香が、鳴海の足を思いっきり踏みつける


鳴海「いってえな!!」

明日香「後輩が性的搾取の対象になってるのに感心してる場合じゃないでしょ!!!」

鳴海「響紀が望んでやってることじゃないか!!」

 

 立ち上がる汐莉

 汐莉は鳴海の目の前に行く

 不思議そうに汐莉のことを見る鳴海

 汐莉は鳴海の足を思いっきり踏みつける


鳴海「な、なんで南まで踏むんだよ!!」


 椅子に戻る汐莉


汐莉「鳴海先輩、響紀は文芸部のために、先輩たちのためにやっているということをお忘れなく」

鳴海「わ、分かってるってそんなこと・・・」


 汐莉の視線は響紀のポニーテールに向いている


詩穂「響紀くん!!もっとエロ多めで!!」

響紀「エロ多めで?」

真彩「ヘアゴムを口に咥えればいーんだよ!!!」

嶺二「ナイスアイデアだぜまあやん!!!」


 響紀は右手からヘアゴムを外し、口に咥える


響紀「(ヘアゴムを口に咥えたまま)こう?」

詩穂「パーフェクトっ!!!」

嶺二「(大きな声で)爆エロサンキューどすこい!!!」

鳴海「(ドン引きしながら)何を言ってるんだ嶺二は・・・」

明日香「ねえ鳴海、あんたの親友を蹴り殺しても良い?」

鳴海「お、落ち着けよ・・・こ、ここは文芸部のために怒りを鎮めて・・・」

雪音「(鳴海の話を遮って)鳴海もああいうのが好きなんじゃないの?」

鳴海「は?あ、いや・・・俺はべ・・・」


 立ち上がり、汐莉と同じように鳴海の目の前に行く菜摘

 

鳴海「な、菜摘・・・まさかお前まで・・・」


 明日香、汐莉に続いて菜摘が鳴海の足を思いっきり踏みつける

 鳴海から顔を逸らす菜摘


菜摘「(顔を逸らしたまま)変態、馬鹿」

鳴海「待ってくれ菜摘!!!俺は変態でも馬鹿でもないんだ!!!」


 菜摘は鳴海の話を最後まで聞かずに椅子に戻る

 菜摘が椅子に座ったと同時に、立ち上がる雪音

 怯えながら雪音のことを見る鳴海

 鳴海の目の前に行く雪音

 片足を上げる雪音

 怯えながら目を瞑る

 雪音は片足を上げたまま、鳴海の頬をビンタする

 目を開ける鳴海


鳴海「そこは足を踏めよ!!!」


 片足を下ろす雪音


雪音「面白くするにはサプライズと裏切りが必要でしょ?」

鳴海「言っとくけど踏まれたり殴られたりする側は何にも面白くねえからな」

雪音「少し我慢しなさい、男なんだから」


 椅子に戻る雪音

 響紀が髪をポニーテールにする


真彩「れーじ先輩、難波くんが響紀に恋しちゃったらどーするんすか?」

嶺二「選挙が終わったら、ごめん、やっぱ男とか無理って言って玉砕するだけさ」

真彩「うわー・・・先輩鬼畜過ぎるっす・・・」

詩穂「ごめん難波くん・・・」

嶺二「恋心に慈悲などない。そーだろ、響紀ちゃん」

響紀「はい。だいたい私、男に興味はありませんから・・・というか、明日香ちゃん以外の人間には興味ありませんから!!!」

明日香「(呆れて)はいはい・・・」


◯359回想/波音高校一年生廊下(昼)

 ◯353、◯355、◯357と同日

 昼休み、たくさんの生徒が廊下で喋ったりしている

 響紀が難波と話をしている

 響紀のことを後ろから隠れながら見ている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩

 響紀が髪をポニーテールにする


響紀「私、生徒会に立候補するの」

難波「えっ?三枝さんも?」

響紀「うん」


 少しの沈黙が流れる


難波「も、もしかして・・・お願いって・・・」

響紀「私を支持してくれない?」

難波「そ、そんな・・・僕は入学する前から生徒会に入るつもりで・・・」

響紀「(上目遣いで)お願い!!大好きな難波くんにしか頼めないの!!」

難波「で、でも・・・」


 困っている難波

 響紀が難波の手を取り、強く握る


響紀「(難波の手を強く握り上目遣いで)難波くんの夢は私が継ぐから!!」


 再び沈黙が流れる


難波「わ、分かったよ・・・(少し間を開けて)三枝さんを支持する」

響紀「(難波の手を握ったまま)ありがとう!!!」

難波「ど、どういたしまして・・・」


 顔を赤くしながら照れている難波

 鳴海たちは変わらず、隠れながら響紀と難波のことを見ている


汐莉「響紀ってさ・・・」

真彩「何?」

汐莉「素でああいうことしない?」

詩穂・真彩「する」

汐莉「というか今のほとんど素の響紀だよね」

詩穂「うん」

鳴海「い、今のが素なのか・・・通りで違和感がないわけだ・・・」


 響紀の手を見ている汐莉

 響紀の手は変わらず、難波の手を強く握りしめている


菜摘「違和感しかない気がするけどなぁ・・・」

鳴海「そうか?」

菜摘「(頷き)なんか色々とおかしいもん」

明日香「鳴海、昼休みの廊下でいきなり告白する女子なんていないからね、普通」

鳴海「い、言われてみればそうだな・・・」

汐莉「(響紀の手を見るのをやめて)響紀は普通じゃないことを普通にこなすんですよ、先輩」

鳴海「な、なるほど・・・だからあれが素に見えるのか・・・」

雪音「それに相手の男の子が馬鹿だから、嶺二の台本が成り立ってるんでしょ」


◯360回想/波音高校一年六組の教室/軽音部一年の部室(放課後/夕方)

 ◯352と同日

 教室の隅にはリードギター、ベース、ドラム、その他機材が置いてある

 軽音部の部室で話をしている文芸部員と軽音部員たち

 黒板の前に立っている響紀

 鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩は黒板に向かって座っている

 黒板には生徒会選挙へ向けてと書かれている

 響紀の長所、短所が黒板にまとめられている

 響紀は青いチョークで黒板に書かれていたナンバに、カを付け足しナンバカにする

 

◯361回想/波音高校一年生廊下(昼)

 ◯353、◯355、◯357、◯359と同日

 昼休み、たくさんの生徒が廊下で喋ったりしている

 響紀が難波と話をしている

 響紀のことを後ろから隠れながら見ている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩


響紀「あっ、もう一つお願いがあるんだけど・・・」

難波「ん?何?」

響紀「生徒会選挙が終わるまで、付き合うのは待って欲しいの」

難波「えっ、何で?」

響紀「選挙中は忙しくて、デートをする時間がないから・・・」

難波「ぼ、僕は気にしないよ!」

響紀「ううん・・・ダメ・・・恋にはしっかり向き合いたいし・・・」


◯362回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 ◯354、◯356、◯358と同日

 校庭では運動部が活動している

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 円の形に並べられた椅子に座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩

 響紀だけは椅子に座らず、円の中心でプリントを読んでいる

 プリントには難波を口説き落とすための、台本が書かれている

 響紀の演技練習に、ディレクションをしている嶺二、真彩、詩穂

 その様子を見ている鳴海、菜摘、明日香、汐莉、雪音


響紀「(プリントを見ながら)ううん・・・ダメ・・・恋にはしっかり向き合いたいし・・・」

嶺二「(大きな声で)そう!!!男の同情を誘え!!!」

響紀「(プリントを読みながら)わがままばっか言ってごめんね・・・」


◯363回想/波音高校一年生廊下(昼)

 ◯353、◯355、◯357、◯359、◯361と同日

 昼休み、たくさんの生徒が廊下で喋ったりしている

 響紀が難波と話をしている

 響紀のことを後ろから隠れながら見ている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩


響紀「わがままばっか言ってごめんね・・・」

難波「き、気にしないで!僕は三枝さんの気持ちを尊重する!」


◯364回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 ◯354、◯356、◯358、◯362と同日

 校庭では運動部が活動している

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩

 円の形に並べられた椅子に座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩

 響紀だけは椅子に座らず、円の中心でプリントを読んでいる

 プリントには難波を口説き落とすための、台本が書かれている

 響紀の演技練習に、ディレクションをしている嶺二、真彩、詩穂

 その様子を見ている鳴海、菜摘、明日香、汐莉、雪音


響紀「(プリントを見ながら)それと・・・このことはみんなに内緒にして・・・私たちの関係がバレたら・・・私学校を辞めちゃうかも・・・」


◯365回想/波音高校一年生廊下(昼)

 ◯353、◯355、◯357、◯359、◯361、◯363と同日

 昼休み、たくさんの生徒が廊下で喋ったりしている

 響紀が難波と話をしている

 響紀のことを後ろから隠れながら見ている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、詩穂、真彩


響紀「それと・・・このことはみんなに内緒にして」

難波「わ、分かった」

響紀「私たちの関係がバレたら・・・私学校を辞めちゃうかも・・・」

難波「(驚いて)えっ!?!?辞める!?!?」


 嶺二が笑いを堪えながら響紀と難波のことを見ている


嶺二「(笑いを堪えながら)く、クソ面白え・・・」

汐莉「(呆れながら)最低ですね先輩・・・」

嶺二「(笑いを堪えながら)だ、だってよ、めちゃくちゃ面白くね?」

汐莉「(呆れながら)クズと変態と馬鹿が多くて私は悲しいです・・・」

嶺二「これぞ変態だから為せる力技。汐莉ちゃん、響紀ちゃんを見てみろ。全て上手くいってんじゃねーか」


 響紀と難波のことを見る汐莉


響紀「だから、私たちのことは秘密。いい?」


 頷く難波


響紀「じゃあお願いね、選挙のこと。必ず私に投票してよ」

難波「う、うん」

響紀「ありがと難波くん、私お昼ご飯食べてくるから、またね」


 響紀は難波に手を振って、走って隠れていた鳴海たちのところにやって来る

 難波は呆然としたまま、その場に立っている


響紀「どうでした?」

明日香「完璧ね」

響紀「(嬉しそうに)ほんとですか!!!」

嶺二「ああ、ノーミスだったぞ、響紀ちゃん」

響紀「明日香ちゃんのためだったら、どんなことでも完璧にやりますよ私」

嶺二「うむ、これからもどんどん働いてもらおう」


 俯く汐莉


詩穂「(小声で)響紀くんも難波くんと同じだね」

汐莉「(俯いたまま)うん・・・」


 俯いた汐莉のことを見ている菜摘


鳴海「(声 モノローグ)この戦法を使い回し、響紀は立候補を予定していた男子生徒を次から次へと手玉に取っていった」


◯366回想/早乙女家菜摘の自室(放課後/夜)

 綺麗な菜摘の部屋

 菜摘の部屋にはベッド、低いテーブル、勉強机、パソコン、プリンターなどが置いてある

 菜摘の部屋にいる制服姿の鳴海と菜摘、二人は朗読劇用の波音物語を制作している

 テーブルの上には波音物語、パソコン、筆記用具、菜摘が創作で使っているネタノートが置いてある

 床に座ってパソコンを見ている鳴海と菜摘


鳴海「(声 モノローグ)部活が終わっても作業は続く。朗読劇の下準備がまだまだあるからだ」

菜摘「(パソコンを見ながら)過激過ぎない?」

鳴海「(パソコンを見ながら)いや、むしろもっとバイオレンスでも良いと思うぞ」

菜摘「(パソコンを見たまま)えー・・・」

鳴海「(パソコンを見たまま)アクションが多いと観客も盛り上がるだろ」

菜摘「(パソコンを見たまま)そうかもしれないけど・・・悪趣味だよ」

鳴海「(パソコンを見たまま)歴史小説に悪趣味もクソもねえと思うんだが・・・」


 少しの沈黙が流れる

 パソコンを見るのをやめる鳴海と菜摘


菜摘「実際にいた人たちの話を・・・変にバイオレンスにするのはやっぱり良くない」

鳴海「そうかぁ?」

菜摘「鳴海くん、何事も過激は良くないよ。穏やかに行こう?」

菜摘「菜摘がそう言うなら・・・過度なバイオレンスは無しにするか・・・」

菜摘「うん」


 菜摘は波音物語を見ながらタイピングを始める

 鳴海はテーブルの上にあった菜摘の創作ノートを手に取り、開いて眺める


鳴海「(創作ノートを眺めながら 声 モノローグ)菜摘には菜摘なりの拘りがあるらしい」


 創作ノートを閉じテーブルの上に戻す鳴海


菜摘「(タイピングをしながら)あとは修正するだけだから、鳴海くんはもう帰っても良いよ」


 再び沈黙が流れる

 キーボードを叩く音だけが鳴り続けている


鳴海「あー・・・それは・・・その・・・(少し間を開けて)帰れって言ってるのか?」

菜摘「(タイピングをしながら)ううん、別にそういうつもりで言ったんじゃないけど、明日も学校があるし・・・授業に影響したら悪いと思って・・・」


 鳴海は慌てて机の上にあった創作ノートを再び手に取り、開く


鳴海「(創作ノートを見ながら)ば、馬鹿をいんじゃない!!この程度じゃ俺はダメージを受けん!!」


 タイピングをやめる菜摘


菜摘「(心配そうに)ほんとに?遅刻しない?」

鳴海「(創作ノートを見ながら)ち、遅刻なんかするわけねえだろ!!そ、それに俺は今どうやったら朗読劇が面白くなるのか一心不乱に考えてるところなんだよ!!だ、だからまだ帰るわけには行かない!!」

菜摘「鳴海くん」

鳴海「(創作ノートを見ながら)な、何だよ」

菜摘「ありがとう」

鳴海「(創作ノートを見ながら)お、おう・・・」


 菜摘はタイピングを再開する


鳴海「(創作ノートを見ながら)そ、そうだ菜摘」

菜摘「(タイピングをしながら)何?」

鳴海「(創作ノートを見ながら)は、配役とか・・・決めてるのか・・・?」

菜摘「(タイピングをしながら)うん」

鳴海「(創作ノートを見ながら)なら教えてくれよ、誰が誰をやるんだ?」

菜摘「(タイピングをしながら)今度みんなが集まった時に発表するよ」

鳴海「(創作ノートを見ながら)そ、そうか・・・」


◯367回想戻り/波音高校三年三組の教室(昼前)

 外はよく晴れている

 数学の授業が行われている

 教師は神谷

 鳴海、菜摘、明日香を含め大半の生徒が真面目に授業を聞き、ノートを取っている

 大きなあくびをしながらノートを取っている嶺二

 頬杖をついてノートを取っている雪音

 

鳴海「(ノートを取りながら 声 モノローグ)つまらない授業だ・・・文芸部が活動的過ぎて、ここのところ授業の苦痛度が増した気がするな・・・」


 ノートを取るのをやめて、振り返って嶺二のことを鳴海

 嶺二はボーッとしながら神谷の話を聞いている

 続いて雪音のことを見る鳴海

 雪音は変わらず頬杖をついたままノートを取っている

 再び黒板を見る鳴海

 神谷が黒板に数式を書いている


鳴海「(声 モノローグ)この時間を部活に回せたらどれだけ良いか・・・」


 鳴海はため息を吐き、黒板に書いてあった数式をノートに書き写す

 ノートに数式を書いた後、外を見る鳴海

 窓から校庭が見える

 校庭では授業が行われておらず、グラウンドが綺麗に整備されている

 校庭の真ん中に一人の女子生徒と一羽のスズメがいる

 女子生徒はしゃがんで、スズメに喋りかけている


鳴海「(声 モノローグ 校庭にいる女子生徒を見ながら不思議そうに)変だな・・・体育じゃないのに、なんで校庭にいるんだ・・・?」


 鳴海はボーッと女子生徒のことを見ている

 校庭にいる女子生徒が立ち上がる

 女子生徒は振り返り、鳴海がいる教室の方を見る

 女子生徒の顔を見た瞬間、鳴海は驚いて持っていたシャーペンを机に落とす

 女子生徒の正体は柊木千春

 

鳴海「(校庭にいる千春を見ながら 驚いたまま半信半疑で)嘘だろ・・・千春じゃないか・・・」


 千春と目が合っている鳴海

 呆然と千春のことを見ている鳴海

 千春は鳴海に向かって何か言っているが、鳴海には聞こえない

 鳴海は大きな音を立てて勢いよく立ち上がる

 驚いて生徒たちが一斉に鳴海を見る

 鳴海が立ち上がる音で、眠そうにしていた嶺二の目が覚める

 黒板に数式を書くのをやめて、不思議そうに鳴海のことを見る


神谷「(不思議そうに)どうしたんだ鳴海、UFOでも見たのか?」

鳴海「あー・・・えっと・・・」


 神谷と同じように不思議そうに鳴海のことを見ている菜摘と明日香

 嶺二は鳴海のことを見たまままぶたを擦る

 雪音は頬杖をついたまま鳴海のことを見ている


鳴海「と、トイレ!!トイレ行ってきます!!」


 鳴海は慌てて教室を出る

 鳴海のことを目で追いかける菜摘、明日香、嶺二、雪音、そして他の生徒たち


神谷「鳴海!!廊下は走るんじゃ・・・」

鳴海「(声)急いでるんで!!!」


 廊下から鳴海の返事が聞こえてくる

 顔を見合わせる菜摘と明日香


◯368波音高校階段(昼前)

 階段を凄い勢いで駆け下りて行く鳴海

 鳴海は一階まで駆け下り、走って昇降口へ向かう

 鳴海は上履きのまま昇降口の扉を開け校庭へ出る


鳴海「(息切れをしながら大きな声で)ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・千春!!!!」


 立ち止まって校庭を見渡す鳴海


鳴海「(息切れをしながら 校庭を見て)ハァ・・・ハァ・・・千春・・・どこにいるんだ・・・」


 校庭には鳴海以外に誰もいない


鳴海「(息切れをしながら 校庭を見て)ハァ・・・ハァ・・・いないのか・・・?」


 鳴海は呼吸を整えながらゆっくり歩いて、千春がいたはずの校庭の真ん中へ向かう

 校庭の真ん中には一羽のスズメがいる

 千春がいたであろう場所で立ち止まる鳴海

 鳴海は再び周囲を見るが、校庭にいるのは鳴海とスズメだけ

 頭を掻き毟る鳴海


鳴海「(頭を掻きながら)クソッ・・・あり得ねえ・・・見間違えたのかよ・・・」


 鳴海は教室へ戻ろうとする

 突然強い風が吹き、校庭の砂が風で舞う

 立ち止まり、振り返る鳴海

 スズメが飛び去る

 風は止んでいない


千春「(囁くような声)・・・さん・・・私は・・・・ここ・・・・いま・・・」

 

 風の音に混じって、千春の囁くような声が聞こえてくる

 千春の声は聞き取り辛く、一言一句把握することは出来ない

 周囲を見る鳴海

 千春はいない


鳴海「(周囲を見ながら大きな声で)千春!!!どこにいるんだ!!!!」

千春「(囁くような声)ここに・・・」


 再び風の音に混じって、千春の囁くような声が聞こえてくる


鳴海「(周囲を見ながら大きな声で)姿が見えない!!!」

千春「(囁くような声)なる・・・さん・・・代償を・・・時が・・・ます・・・奇跡の・・・を・・・」

鳴海「(周囲を見ながら大きな声で)だ、代償!?代償ってなんだよ!?!?」

千春「(囁くような声)さんが・・・使った力と・・・過去の行い・・・共に代償を・・・ない・・・菜摘・・・体・・・命で・・・」


 千春の声は更に聞こえ辛くなり、風はますます強くなる


千春「(囁くような声)汐莉と・・・話をして・・・」


 風が止み、千春の声が完全に聞こえなくなる

 

鳴海「(周囲を見ながら)ち、千春!?!?」


 校庭には鳴海以外誰もいない

 呆然と立っている鳴海


鳴海「(周囲を見ながら)どこにいるんだよ!?答えてくれ!!」


 スズメが飛び去る


◯369波音高校食堂(昼)

 昼休み

 食堂にいる鳴海、菜摘、嶺二

 込んでいる食堂

 注文に並ぶ生徒がたくさんいる

 昼食を食べ終えた鳴海たち

 食堂のテーブルはほとんど埋まっている

 菜摘と嶺二が話をしている

 ボーッとしている鳴海

 鳴海は菜摘と嶺二の話を聞いていない


嶺二「作戦は極めて順調に進んでるよな、響紀ちゃんも才能があるみたいだし」

菜摘「女子生徒の立候補者はどうするの?」

嶺二「俺たちで上手くやるよ、な?鳴海」


 少しの沈黙が流れる

 心配そうに鳴海のことを見る菜摘


菜摘「(心配そうに)鳴海くん?大丈夫?」

鳴海「えっ・・・あ、ああ・・・」

嶺二「大事な話をしてるっつーのに、おめえは何ぼんやりしてるんだよ?」

鳴海「わ、悪い・・・」

嶺二「もしや鳴海、今更計画をやめるって言うんじゃねーだろうな?」

鳴海「そ、そんなこと言うわけねえだろ!!」

嶺二「なら何を隠してんだよ?」

鳴海「何も隠してねえって・・・」

嶺二「こーゆー時の鳴海は100%何か隠してるんだろ


 再び沈黙が流れる


菜摘「鳴海くん・・・どうしたの?悩みがあるなら私が・・・」

鳴海「(菜摘の話を遮って)じ、実はUFOを見たんだ!!!」

嶺二「は・・・?」

菜摘「U、UFO・・・?」

鳴海「あ、ああ!!!U、UFOが飛んでたんだよ!!!」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「か、神谷の授業で、俺一回抜けただろ!?あ、あれはUFOを見たからなんだ!!!」

菜摘「えっとー・・・授業中に、U、UFOを見に行ってたってことかな・・・?」

鳴海「そ、そうだ!!!お、俺はUFOを見に行ってたんだ!!!」

嶺二「UFOってあれか?空飛ぶ円盤の?」

鳴海「あ、ああ・・・」

菜摘「存在してるんだね、UFOって」

鳴海「そ、そのようだな・・・」


 顔を見合わせる菜摘と嶺二

 鳴海は慌てて立ち上がり、空になった皿が乗っているお盆を手に持つ


鳴海「(お盆を持ったまま)そ、そろそろ戻るぞ。ち、遅刻するわけにはいかねえからな・・・」


 鳴海は一人でお盆の返却口へ向かう


嶺二「(不思議そうに)UFOを見るために授業を抜け出した奴が・・・」

菜摘「(不思議そうに)遅刻するわけにはいかない・・・?」


◯370波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音

 円の形を作って座っている文芸部員たち

 菜摘が完成した朗読劇用の波音物語を読み聞かせている


菜摘「(朗読劇用の波音物語を読みながら)時を越え、試練を打破し、天運に身を任せ、いつの日か・・・きっと我らは再会出来よう」


◯371緋空浜(500年前/夕日)

 ◯234の続き

 ゴミがない綺麗な緋空浜

 沈みかけている夕日を、浜辺で一人見ている白瀬波音

 夕日の光が海に反射し、キラキラと光っている


菜摘「(声 朗読劇用の波音物語を読みながら)困難は耐えねばならない。混沌を恐れてはならぬ、友と光を信じるのだ」


◯372滅びかけた世界:緋空浜(昼過ぎ)

 晴れている

 ゴミ掃除をしているナツ、スズ、老人

 浜辺にゴミの山がある

 ゴミの山は、空っぽの缶詰、ペットボトル、重火器、武器類、骨になった遺体などが積まれて出来ている

 ゴミの山の隣には大きなシャベルが砂浜に突き刺さってる

 ゴミの山から数百メートル先の浜辺は綺麗になっている

 浜辺には水たまりが出来ており、水たまりの中にもゴミがある 

 三人は軍手をしている

 三人それぞれに一台ずつスーパーのカートがある

 三台のカートのカゴにはビニール袋が敷いてあり、その中にゴミを入れていくナツ、スズ、老人

 立ち止まって、一息つく老人

 老人は海を見る

 太陽の光が海に反射し、キラキラと光っている

 

菜摘「(声 朗読劇用の波音物語を読みながら)さすれば道は必ず開かれるであろう・・・」


◯373波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音

 円の形を作って座っている文芸部員たち

 菜摘が朗読劇用の波音物語を閉じる

 拍手する鳴海、明日香、嶺二、雪音


菜摘「ど、どうかな・・・?」

明日香「(拍手しながら)いいと思う!」

嶺二「(拍手しながら)すげえ面白かったよ菜摘ちゃん!!」

菜摘「あ、ありがとう二人とも」

鳴海「朗読劇用の本が完成したわけだし、ここからは配役の話を・・・(汐莉を見て驚いて)って・・・お、おい南・・・」


 汐莉のことを見る菜摘、明日香、嶺二、雪音

 汐莉は涙を流している


菜摘「汐莉ちゃん・・・?」


 涙を拭い勢いよく立ち上がる汐莉


汐莉「ご、ごめんなさい!」


 汐莉は走って部室を出て行く


菜摘「(立ち上がり)汐莉ちゃん!!」


 汐莉を追いかけようとする菜摘


鳴海「ま、待ってくれ菜摘!」

菜摘「(立ち止まり)鳴海くん、早く汐莉ちゃんを追いかけないと!!」


 立ち上がる鳴海


鳴海「あいつは俺が何とかする。だから・・・菜摘は朗読劇のことをやっててくれ」


 少しの沈黙が流れる


菜摘「わ、分かった・・・汐莉ちゃんのこと、お願い・・・」

鳴海「ああ・・・」


 鳴海は走って部室を出て行く

 椅子に座る菜摘

 再び沈黙が流れる


明日香「何があったのか知らないけど、菜摘が追っかけるべきだったんじゃない・・・?鳴海じゃ役に立つかどうか分からないんだし・・・」

菜摘「鳴海くんが何とかするって言ったんだから、ここは鳴海くんを信じるよ」

明日香「なら良いけど、心配ね・・・」

雪音「(小声でボソッと)これで三人から二人か・・・」


◯374波音高校廊下(放課後/夕方)

 涙目で廊下を走っている汐莉

 正面から神谷が歩いて来る

 神谷とぶつかる汐莉


神谷「汐莉、廊下は走るなとあれほど言って・・・」


 涙目の汐莉が神谷のことを見る

 汐莉の目を見た途端、黙る神谷

 汐莉と神谷の目と目が合っている

 少しの沈黙が流れる

 汐莉は再び走り出す


神谷「し、汐莉!!走ると危ないぞ!!」


 汐莉は神谷の言葉を無視して走り続ける

 神谷の汐莉の走る姿を見ている

 少ししてから歩き出す神谷

 神谷が歩いていると、今度は神谷の正面から鳴海が走って来る

 立ち止まる神谷


神谷「またあいつか・・・どうしてどいつもこいつも言うことを聞かないんだ・・・(大きな声で)廊下は走るな!!!」

鳴海「(走りながら)さーせん!!!」


 鳴海はそのまま走り続けて、汐莉を追いかける

 神谷は立ち止まったまま、走っている鳴海の後ろ姿を見ている


神谷「(鳴海のことを見ながら小声でボソッと)酷い態度の生徒だ・・・俺は担任なのに・・・早く卒業してしまえ・・・」


◯375波音高校階段(放課後/夕方)

 階段を駆け下りている汐莉

 鳴海が汐莉を追いかけている


鳴海「(階段を駆け下りながら)南!!おい!!!待ってくれ!!!」


 立ち止まって振り返る汐莉


汐莉「(息切れをしながら 振り返ったまま)ハァ・・・ハァ・・・な、鳴海先輩・・・」


 汐莉に追いつく鳴海


鳴海「(息切れをしながら)ハァ・・・ハァ・・・全く・・・今日は走ってばっかだな・・・お前ら一年生は本当に・・・大変だ・・・」

汐莉「(息切れをしながら)ハァ・・・ご、ごめんなさい・・・でも文句言うくらいなら、追いかけないでくださいよ・・・」

鳴海「(息切れをしながら)ハァ・・・ハァ・・・贅沢を言うんじゃねえ・・・」


 呼吸を整える鳴海と汐莉


◯376波音高校休憩所(放課後/夕方)

 自販機、丸いテーブル、椅子が置いてある小さな広場

 自販機の前にいる鳴海

 椅子に座っている汐莉 

 鳴海と汐莉以外に生徒はいない

 ポケットから小銭を取り出す鳴海

 自販機に小銭を入れ、ぶどうジュースを買う鳴海

 ぶどうジュースを自販機から取り出し、汐莉の元へ行く鳴海


鳴海「(ぶどうジュースをテーブルに置き)ほれ、ボジョレーヌーボー」


 椅子に座る鳴海


汐莉「(少し笑って)ただのぶどうジュースじゃないですか」

鳴海「当たり前だ。未成年に酒を飲ましたら、捕まっちまうだろ」

汐莉「先輩も未成年のくせに」

鳴海「フランスだと俺、もう成人扱いなんだぞ」

汐莉「へぇー・・・詳しいですね」

鳴海「この間ちょっと調べたんだよ、お前らが行きたいって言ってた国をな」

汐莉「えっ、じゃあ海外に行くのは決定ですか?」

鳴海「いや、俺はただ調べただけだ」

汐莉「調べる労力があるなら、飛行機とホテルと現地のコーディネーターくらいは抑えておいて欲しいです」

鳴海「英語力がない俺に無茶な要求をするんじゃねえ・・・(少し間を開けて)今の俺に出来るのはな、せいぜいジュース一本を奢ってやることくらいなんだよ」

汐莉「よくもまあそんなノープランで追っかけてきましたね・・・」

鳴海「誰も来ねえよりは良いだろ」

汐莉「それはそうですけど・・・」


 ぶどうジュースを開け、一口飲む汐莉


鳴海「南、聞いてもいいか」

汐莉「何です?」

鳴海「どうして・・・その・・・泣いてたんだ・・・?」


 少しの沈黙が流れる


汐莉「泣きたくなる時ってあるじゃないですか・・・」

鳴海「まあな・・・(少し間を開けて)でもよ南、お前、波音物語の内容は知ってただろ?それなのに・・・泣きたくなったのか?」

汐莉「話は知らなかったんです、私・・・」

鳴海「えっ?原作を買って読んだんじゃ・・・」

汐莉「(俯き)ごめんなさい・・・」

鳴海「買ってなかったのか・・・」

汐莉「(俯いたまま)はい・・・」

鳴海「まあ、わざわざ全員が買う必要はないけどさ・・・」


 再び沈黙が流れる

 ぶどうジュースを一口飲む汐莉


汐莉「鳴海先輩・・・」

鳴海「どうした?」

汐莉「私・・・最近、変なものを見るんです・・・」

鳴海「変なもの?」

汐莉「はい・・・」


◯377波音高校特別教室の四/文芸部室(放課後/夕方)

 校庭では運動部が活動している

 教室の隅にパソコン六台とプリンターが一台ある

 部室にいる菜摘、明日香、嶺二、雪音、神谷

 円の形に椅子を並べて座っている菜摘、明日香、嶺二、雪音

 神谷と話をしている文芸部員たち


神谷「うーん・・・鳴海と汐莉がいないけど・・・しょうがないな・・・(少し間を開けて)嶺二」

嶺二「何すか?」

神谷「推薦が取れたぞ」

明日香「(驚いて)は!?!?」

嶺二「マジっすか先生!?!?」

神谷「最近は部活も頑張ってるし、授業態度も前に比べると良くなってきたからな」

嶺二「(大きな声で)あざっす!!!!」

菜摘「おめでとう、嶺二くん」

嶺二「サンキュー菜摘ちゃん、これで部活のことに集中出来るぜ!!」


 うなだれている明日香


明日香「(うなだれながら)マジかぁ・・・嶺二が推薦かぁ・・・やばいなぁ・・・」

雪音「明日香も専門でしょ?」

明日香「うん・・・」

菜摘「先生、専門学校って入るの難しいんですか?」

神谷「医療系は難しいね。だけど、それ以外の分野なら大学より比較的入学しやすいと思うよ」

明日香「(小声でボソッと)とか言って不合格になったら・・・」

嶺二「(呆れながら)明日香が落ちるわけねーだろ・・・」

明日香「やめてよ・・・そうやってプレッシャーかけるの・・・」

菜摘「自信持って明日香ちゃん」

神谷「明日香の成績なら、先生も大丈夫だと思うよ」

明日香「えー・・・そうですかー・・・?」

神谷「万が一ってことがあるから、断言は出来ないけどね。それより部長、明日の放課後、空いてるか?」

菜摘「部活がありますけど・・・」

神谷「なら部活は一旦抜けてくれ、面談を行いたいんだ」

菜摘「面談?何の面談ですか?」

神谷「進路のだよ、菜摘だけじゃなくて、雪音と鳴海もだ」

明日香「えっ、雪音も?」

雪音「私、進路決めてないから」

明日香「(驚いて)嘘!?大学に行くんじゃないの!?」

雪音「分からない。まだ何も決めてないし」


◯378波音高校休憩所(放課後/夕方)

 椅子に座って話をしている鳴海と汐莉

 テーブルの上には鳴海が購入したぶどうジュースが置いてある

 

鳴海「ただの・・・悪夢じゃないか」

汐莉「でも・・・凄くリアルだったんです・・・菜摘先輩と・・・雪音先輩のお姉さんが・・・頭を撃ち抜いて・・・」


 汐莉の両手が震えている

 震える手でぶどうジュースを持つ汐莉

 汐莉は震える手でぶどうジュースのキャップを取り外そうとしている

 震えているせいで、汐莉は上手くキャップを取り外すことが出来ない


鳴海「(手を差し出して)貸せよ、開けてやるから」


 震えた手でペットボトルを差し出す汐莉

 ペットボトルを受け取る鳴海

 鳴海は汐莉の代わりにキャップを取り、ペットボトルを汐莉の目の前に置く


汐莉「あ、ありがとうございます・・・」


 震えた手でペットボトルを持って、ぶどうジュースを一口飲む汐莉

 震えた手でペットボトルのキャップをゆっくり閉める汐莉

 汐莉の震える両手を見ている鳴海


鳴海「馬鹿だな南は、俺たちが死ぬわけないだろ」

汐莉「で、でも・・・夢の中の鳴海先輩は・・・自分で・・・」

鳴海「夢の中の俺は、現実の俺じゃねえよ」


 少しの沈黙が流れる


汐莉「物凄くリアルなヴィジョンを・・・どうして現実じゃないって言い切れるんですか・・・?」


 再び沈黙が流れる


鳴海「俺は南じゃないから、お前の苦しみを完全に理解してやることは多分出来ない・・・だけど、俺もそれに近い夢なら見たことがある。10歳ちょっとの頃にな」

汐莉「どんな夢です?」

鳴海「物凄くリアルで不快な夢だ・・・(少し間を開けて)俺の両親は交通事故で死んだんだが・・・昔は事故のことをよく夢で見た」


◯379回想/鳴海が見た夢:道路(昼)

 激しく損壊している二台の車

 血を流しながらふらふらと車から出てくる10歳の鳴海

 二台の車の周りには人だかりが出来ている

 車の中を覗く鳴海

 車の前の座席には損傷の激しい二体の遺体(鳴海の親の紘と由香里)がある

 後部座席には血塗れで気絶している姉の風夏がいる

 鳴海はその場に座り込む

 周りにいた人たちが鳴海の方へ駆け寄ったり、電話をして救急車を呼んだり、車の中にいる鳴海の家族を救出しようとしている

 鳴海は声をかけられても返事をしない


鳴海「(声)夢なのに血の匂いまでするんだ・・・現実で起きた事故と同じ生々しさがある・・・いや・・・何だったら夢の方がもっとリアルで、悲惨かもしれない・・・」


◯380回想戻り/波音高校休憩所(放課後/夕方)

 椅子に座って話をしている鳴海と汐莉

 テーブルの上には鳴海が購入したぶどうジュースが置いてある


鳴海「けど所詮はただの夢だ。現実で起きた事故から構築された記憶の世界でしかない。もちろん、見てて楽しいわけじゃないが・・・(少し間を開けて)俺が思うに、夢は記憶が更新されたら変わるんだ。つまり、良い思い出が上から積み重なって、古い記憶は徐々に夢の対象外になるんだよ」

汐莉「夢ってそんなものなんでしょうか・・・?」

鳴海「多分な」

汐莉「私が見た夢は・・・記憶から作られてないと思います・・・だって・・・本物の銃なんか見たことないし・・・自殺する人も・・・」

鳴海「映画か・・・本か・・・あるいはニュースか・・・何かしらから影響を受けたんだろ」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「南、頼むから元気を出してくれよ」

汐莉「はい・・・」

鳴海「元気のない南なんて、麺のないラーメンと同じじゃないか」

汐莉「意味分かりません・・・」

鳴海「麺のないラーメンって、つまりラーだからな。それじゃあただの太陽神じゃねえかよ!!!」


 再び沈黙が流れる


鳴海「なんだか気まずい空気になってしまったが・・・今のは南を励まそうとして繰り出した渾身のギャグであることを忘れないでほしい」

汐莉「鳴海先輩・・・」

鳴海「何だ?」

汐莉「つまんなかったです・・・今の・・・」

鳴海「そうだな・・・俺もそう思う・・・」


 ぶどうジュースを一口飲む汐莉


汐莉「雪音先輩のお姉さんって・・・どんな人ですか」

鳴海「どんな人って言われてもな・・・」

汐莉「気になるんです」

鳴海「俺もよくは知らねえけど・・・姉貴の親友で・・・勉強がよく出来て・・・」

汐莉「菜摘先輩との関係は?」

鳴海「関係って・・・特に何もねえだろ」

汐莉「そうですか・・・」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「南と言い、菜摘と言い、色々と心配だよ・・・本当に」

汐莉「心配しないでください、先輩」

鳴海「アホか。そういうスタンスが一番に心配になるんだぞ」

汐莉「なるほど。ならいっぱい心配してくれても良いですよ」


 ため息を吐く鳴海


鳴海「(小声でボソッと)既にいっぱい心配してるんだけどな・・・」

汐莉「何か言いました?」

鳴海「何でもねえよ・・・」


 再び沈黙が流れる


鳴海「海外旅行は・・・検討しておこう」

汐莉「本当ですか?検討とか言って、やっぱりやめーたってなるのがオチな気がするんですけど」

鳴海「副部長として、出来る限りの検討はする」

汐莉「そういう時だけ副部長の立場を利用するの、卑怯ですよ」

鳴海「職権濫用だと思うか?」

汐莉「はい」

鳴海「でもフランスに行きたいんだろ?」

汐莉「はい」

鳴海「今朝も菜摘たちは海外旅行の話で盛り上がってたからなぁ・・・」

汐莉「フランスを推しといてくれました?」

鳴海「いーや、俺は国内しか推さない」

汐莉「本当に頭が硬いですね先輩は」

鳴海「うるせえ。(立ち上がり)さっさと部室に戻るぞ」


 ぶどうジュースを持って立ち上がる汐莉

 二人は部室を目指して歩き始める


汐莉「時に鳴海先輩、オクトパスボールを奢ってくれるって約束、忘れてませんよね?」

鳴海「オクトパスボールってなんだよ?」

汐莉「たこ焼きのことです。部誌のデータを復活させたお礼に、何でも好きな物を奢るって先輩言ってましたよ」

鳴海「あー・・・金だけ渡すから、今度適当に買ってきたらどうだ?」

汐莉「それじゃあ先輩のパシリみたいじゃないですか私」

鳴海「南が食うんだから、パシリではないだろ」

汐莉「でも嫌です、先輩が買いに行って来てください」

鳴海「分かったよ・・・たこ焼きな・・・」

汐莉「はい」

鳴海「(声 モノローグ)千春に南と話すように言われたから南を追いかけ、菜摘の心配事を増やしたくないから菜摘に代わって階段を駆け抜け、菜摘に他の人のことも心配してあげてと言われたから、俺は南を呼び止めた。(少し間を開けて)この日を境に、文芸部は壊れ始める」


◯381帰路(放課後/夕方)

 夕日が沈みかけている

 帰り道、一緒に帰っている鳴海と菜摘

 部活帰りの学生がたくさんいる


鳴海「南は・・・色々抱え込んでるみたいだった」

菜摘「色々って・・・?」


 少しの沈黙が流れる


鳴海「どう説明したら良いのか・・・」


 深くため息を吐く鳴海


菜摘「鳴海くんまで何か抱え込んでない?」

鳴海「いや・・・俺は別に・・・」


 再び沈黙が流れる


鳴海「多分・・・南はねぶ・・・」

菜摘「痛っ!!」


 立ち止まって頭を押さえる菜摘

 菜摘に合わせて立ち止まる鳴海


鳴海「(心配そうに)菜摘?大丈夫か?」

菜摘「(頭を押さえるのやめて)う、うん・・・軽い頭痛だと思う・・・」


 菜摘はゆっくり歩き出す

 菜摘のペースに合わせて鳴海も歩き出す


菜摘「最近たまにあるんだ、大したことじゃないと思うんだけど」

鳴海「病院に行った方がいい、菜摘」


 首を横に振る菜摘


菜摘「頭痛で病院なんて、大袈裟だなぁ鳴海くんは」

鳴海「血管が圧迫してるかもしれないだろ。すみれさんや親父さんに頭が痛くなるって言ったか?」

菜摘「ううん」

鳴海「どうして言わないんだよ?」

菜摘「心配をかけたくないし・・・」


 拳を握りしめる鳴海


◯382Chapter6◯198の回想/スーパー(夕方)

 スーパーで買い物をしている鳴海と菜摘の父親の潤

 カートを押している鳴海

 カートのカゴの中には食材が入っている

 大根の売り場にいる鳴海と潤


鳴海「菜摘が何か話をしてないか」

潤「(大根を手に取り)18の娘が何でもかんでも親に話すとは限らないって分かるだろ」


◯383回想戻り/帰路(放課後/夕方)

 夕日が沈みかけている

 帰り道、一緒に帰っている鳴海と菜摘

 部活帰りの学生がたくさんいる

 鳴海は拳を握りしめたままの状態


鳴海「(声 モノローグ 拳を握りしめたまま)菜摘も・・・南も・・・何一つ分かっちゃいない。心配かけたくないだと・・・?そういうことを言う奴に限って、危なっかしく見えるんだよ・・・」


 菜摘が鳴海の握りしめていた手を取り、広げる

 鳴海の手を握る菜摘


菜摘「(鳴海の手を握ったまま)鳴海くん、私は大丈夫だよ」


 鳴海は何か言おうとするが、口を閉じる

 少しの沈黙が流れる


菜摘「(鳴海の手を握ったまま)大丈夫、大丈夫だから」

鳴海「(声 モノローグ)菜摘の言葉とは裏腹に、俺の不安は煽られていた」


◯384貴志家鳴海の自室(夜)

 部屋にやってきた鳴海

 部屋の電気をつける鳴海

 鳴海は机に向かって椅子に座る

 鳴海は机の引き出しからシャーペンとノートを取り出す

 ノートを開く鳴海

 ノートに柊木千春、代償、使った力、過去の行い、菜摘の体、南と話と走り書きをする鳴海


鳴海「(声 モノローグ ノートに走り書きをしながら)ドナーが見つかると予知した菜摘・・・命を断つ菜摘と一条の姉貴・・・死を恐れる南・・・警告をする千春・・・頭痛を引き起こす菜摘・・・波音物語・・・代償・・・500年前・・・海人・・・妖術・・・輪廻転生・・・奇跡・・・魂の汚れ・・・三人・・・」


 ノートを見ている鳴海


◯385Chapter2◯243の回想/波音高校屋上(夕方)

 学園祭当日、朗読劇を行った後

 夕日が沈みかけている

 屋上にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、千春

 千春の話を聞いている鳴海たち


千春「鳴海さん、菜摘さん、私には分かります。お二人はこれからとても過酷な運命を背負うことになるでしょう。決して屈してはいけません、諦めないでください」


◯386回想戻り/貴志家鳴海の自室(夜)

 ノートを見ている鳴海


鳴海「(声 モノローグ)千春・・・お前・・・何か知ってるんだろ・・・教えてくれよ・・・俺はどうしたら良い・・・」


 頭を抱える鳴海


◯387Chapter4◯501の回想/河原(昼)

 川の近くで話をしている奈緒衛と凛


凛「これからは波音様をお守りになるのです!!」


◯388回想戻り/貴志家鳴海の自室(夜)

 ノートを見ている鳴海

 再び拳を握りしめる鳴海


鳴海「(拳を握りしめたまま)そんなことは分かってる・・・俺だって・・・あいつを守りたいんだ・・・」

ご無沙汰してます、ななです。

「向日葵が教えてくれる、波には背かないで」のChapter6の第二部分にあたる生徒会選挙編のお話が書き終わりつつあるので、また少しずつアップしていきます。シリアスだったり、ギャグ多めだったり、様々なトーンが混在している、ある意味では、一つのまとめのような物語になっていますが、今まで通り楽しんで頂けたら幸いです。

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