Chapter7♯28 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter7 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
登場人物
貴志 鳴海 19歳男子
Chapter7における主人公。昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の副部長として合同朗読劇や部誌の制作などを行っていた。波音高校卒業も無鉄砲な性格と菜摘を一番に想う気持ちは変わっておらず、時々叱られながらも菜摘のことを守ろうと必死に人生を歩んでいる。後に鳴海は滅びかけた世界で暮らす老人へと成り果てるが、今の鳴海はまだそのことを知る由もない。
早乙女 菜摘 19歳女子
Chapter7におけるもう一人の主人公でありメインヒロイン。鳴海と同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の部長を務めていた。病弱だが性格は明るく優しい。鳴海と過ごす時間、そして鳴海自身の人生を大切にしている。鳴海や両親に心配をかけさせたくないと思っている割には、危なっかしい場面も少なくはない。輪廻転生によって奇跡の力を引き継いでいるものの、その力によってあらゆる代償を強いられている。
貴志 由夏理
鳴海、風夏の母親。現在は交通事故で亡くなっている。すみれ、潤、紘とは同級生で、高校時代は潤が部長を務める映画研究会に所属していた。どちらかと言うと不器用な性格な持ち主だが、手先は器用でマジックが得意。また、誰とでも打ち解ける性格をしている
貴志 紘
鳴海、風夏の父親。現在は交通事故で亡くなっている。由夏理、すみれ、潤と同級生。波音高校生時代は、潤が部長を務める映画研究会に所属していた。由夏理以上に不器用な性格で、鳴海と同様に暴力沙汰の喧嘩を起こすことも多い。
早乙女 すみれ 46歳女子
優しくて美しい菜摘の母親。波音高校生時代は、由夏理、紘と同じく潤が部長を務める映画研究会に所属しており、中でも由夏理とは親友だった。娘の恋人である鳴海のことを、実の子供のように気にかけている。
早乙女 潤 47歳男子
永遠の厨二病を患ってしまった菜摘の父親。歳はすみれより一つ上だが、学年は由夏理、すみれ、紘と同じ。波音高校生時代は、映画研究会の部長を務めており、”キツネ様の奇跡”という未完の大作を監督していた。
貴志/神北 風夏 25歳女子
看護師の仕事をしている6つ年上の鳴海の姉。一条智秋とは波音高校時代からの親友であり、彼女がヤクザの娘ということを知りながらも親しくしている。最近引越しを決意したものの、引越しの準備を鳴海と菜摘に押し付けている。引越しが終了次第、神北龍造と結婚する予定。
神北 龍造 25歳男子
風夏の恋人。緋空海鮮市場で魚介類を売る仕事をしている真面目な好青年で、鳴海や菜摘にも分け隔てなく接する。割と変人が集まりがちの鳴海の周囲の中では、とにかく普通に良い人とも言える。因みに風夏との出会いは合コンらしい。
南 汐莉 16歳女子
Chapter5の主人公でありメインヒロイン。鳴海と菜摘の後輩で、現在は波音高校の二年生。鳴海たちが波音高校を卒業しても、一人で文芸部と軽音部のガールズバンド”魔女っ子の少女団”を掛け持ちするが上手くいかず、叶わぬ響紀への恋や、同級生との距離感など、様々な問題で苦しむことになった。荻原早季が波音高校の屋上から飛び降りる瞬間を目撃して以降、”神谷の声”が頭から離れなくなり、Chapter5の終盤に命を落としてしまう。20Years Diaryという日記帳に日々の出来事を記録していたが、亡くなる直前に日記を明日香に譲っている。
一条 雪音 19歳女子
鳴海たちと同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部に所属していた。才色兼備で、在学中は優等生のふりをしていたが、その正体は波音町周辺を牛耳っている組織”一条会”の会長。本当の性格は自信過剰で、文芸部での活動中に鳴海や嶺二のことをよく振り回していた。完璧なものと奇跡の力に対する執着心が人一倍強い。また、鳴海たちに波音物語を勧めた張本人でもある。
伊桜 京也 32歳男子
緋空事務所で働いている生真面目な鳴海の先輩。中学生の娘がいるため、一児の父でもある。仕事に対して一切の文句を言わず、常にノルマをこなしながら働いている。緋空浜周囲にあるお店の経営者や同僚からの信頼も厚い。口下手なところもあるが、鳴海の面倒をしっかり見ており、彼の”メンター”となっている。
荻原 早季 15歳(?)女子
どこからやって来たのか、何を目的をしているのか、いつからこの世界にいたのか、何もかもが謎に包まれた存在。現在は波音高校の新一年生のふりをして、神谷が受け持つ一年六組の生徒の中に紛れ込んでいる。Chapter5で波音高校の屋上から自ら命を捨てるも、その後どうなったのかは不明。
瑠璃
鳴海よりも少し歳上で、極めて中性的な容姿をしている。鳴海のことを強く慕っている素振りをするが、鳴海には瑠璃が何者なのかよく分かっていない。伊桜同様に鳴海の”メンター”として重要な役割を果たす。
来栖 真 59歳男子
緋空事務所の社長。
神谷 志郎 44歳男子
Chapter5の主人公にして、汐莉と同様にChapter5の終盤で命を落としてしまう数学教師。普段は波音高校の一年六組の担任をしながら、授業を行っていた。昨年度までは鳴海たちの担任でもあり、文芸部の顧問も務めていたが、生徒たちからの評判は決して著しくなかった。幼い頃から鬱屈とした日々を過ごして来たからか、発言が支離滅裂だったり、感情の変化が激しかったりする部分がある。Chapter5で早季と出会い、地球や子供たちの未来について真剣に考えるようになった。
貴志 希海 女子
貴志の名字を持つ謎の人物。
三枝 琶子 女子
“The Three Branches”というバンドを三枝碧斗と組みながら、世界中を旅している。ギター、ベース、ピアノ、ボーカルなど、どこかの響紀のようにバンド内では様々なパートをそつなくこなしている。
三枝 碧斗 男子
“The Three Branches”というバンドを琶子と組みながら、世界中を旅している、が、バンドからベースとドラムメンバーが連続で14人も脱退しており、なかなか目立った活動が出来てない。どこかの響紀のようにやけに聞き分けが悪いところがある。
有馬 千早 女子
ゲームセンターギャラクシーフィールドで働いている、千春によく似た店員。
太田 美羽 30代後半女子
緋空事務所で働いている女性社員。
目黒 哲夫 30代後半男子
緋空事務所で働いている男性社員。
一条 佐助 男子
雪音と智秋の父親にして、”一条会”のかつての会長。物腰は柔らかいが、多くのヤクザを手玉にしていた。
一条 智秋 25歳女子
雪音の姉にして風夏の親友。一条佐助の死後、若き”一条会”の会長として活動をしていたが、体調を崩し、入院生活を強いられることとなる。智秋が病に伏してから、会長の座は妹の雪音に移行した。
神谷 絵美 30歳女子
神谷の妻、現在妊娠中。
神谷 七海 女子
神谷志郎と神谷絵美の娘。
天城 明日香 19歳女子
鳴海、菜摘、嶺二、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。お節介かつ真面目な性格の持ち主で、よく鳴海や嶺二のことを叱っていた存在でもある。波音高校在学時に響紀からの猛烈なアプローチを受け、付き合うこととなった。現在も、保育士になる資格を取るために専門学校に通いながら、響紀と交際している。Chapter5の終盤にて汐莉から20Years Diaryを譲り受けたが、最終的にその日記は滅びかけた世界のナツとスズの手に渡っている。
白石 嶺二 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。鳴海の悪友で、彼と共に数多の悪事を働かせてきたが、実は仲間想いな奴でもある。軽音部との合同朗読劇の成功を目指すために裏で奔走したり、雪音のわがままに付き合わされたりで、意外にも苦労は多い。その要因として千春への恋心があり、消えてしまった千春との再会を目的に、鳴海たちを様々なことに巻き込んでいた。現在は千春への想いを心の中にしまい、上京してゲーム関係の専門学校に通っている。
三枝 響紀 16歳女子
波音高校に通う二年生で、軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”のリーダー。愛する明日香関係のことを含めても、何かとエキセントリックな言動が目立っているが、音楽的センスや学力など、高い才能を秘めており、昨年度に行われた文芸部との合同朗読劇でも、あらゆる分野で多大な(?)を貢献している。
永山 詩穂 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はベース。メンタルが不安定なところがあり、Chapter5では色恋沙汰の問題もあって汐莉と喧嘩をしてしまう。
奥野 真彩 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀、詩穂と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はドラム。どちらかと言うと我が強い集まりの魔女っ子少女団の中では、比較的協調性のある方。だが食に関しては我が強くなる。
双葉 篤志 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音と元同級生で、波音高校在学中は天文学部に所属していた。雪音とは幼馴染であり、その縁で”一条会”のメンバーにもなっている。
井沢 由香
波音高校の新一年生で神谷の教え子。Chapter5では神谷に反抗し、彼のことを追い詰めていた。
伊桜 真緒 37歳女子
伊桜京也の妻。旦那とは違い、口下手ではなく愛想良い。
伊桜 陽芽乃 13歳女子
礼儀正しい伊桜京也の娘。海亜中学校という東京の学校に通っている。
水木 由美 52歳女子
鳴海の伯母で、由夏理の姉。幼い頃の鳴海と風夏の面倒をよく見ていた。
水木 優我 男子
鳴海の伯父で、由夏理の兄。若くして亡くなっているため、鳴海は面識がない。
鳴海とぶつかった観光客の男 男子
・・・?
少年S 17歳男子
・・・?
サン 女子
・・・?
ミツナ 19歳女子
・・・?
X 25歳女子
・・・?
Y 25歳男子
・・・?
ドクターS 19歳女子
・・・?
シュタイン 23歳男子
・・・?
伊桜の「滅ばずの少年の物語」に出て来る人物
リーヴェ 17歳?女子
奇跡の力を宿した少女。よくいちご味のアイスキャンディーを食べている。
メーア 19歳?男子
リーヴェの世界で暮らす名も無き少年。全身が真っ黒く、顔も見えなかったが、リーヴェとの交流によって本当の姿が現れるようになり、メーアという名前を手にした。
バウム 15歳?男子
お願いの交換こをしながら旅をしていたが、リーヴェと出会う。
盲目の少女 15歳?女子
バウムが旅の途中で出会う少女。両目が失明している。
トラオリア 12歳?少女
伊桜の話に登場する二卵性の双子の妹。
エルガラ 12歳?男子
伊桜の話に登場する二卵性の双子の兄。
滅びかけた世界
老人 男子
貴志鳴海の成れの果て。元兵士で、滅びかけた世界の緋空浜の掃除をしながら生きている。
ナツ 女子
母親が自殺してしまい、滅びかけた世界を1人で彷徨っていたところ、スズと出会い共に旅をするようになった。波音高校に訪れて以降は、掃除だけを繰り返し続けている老人のことを非難している。
スズ 女子
ナツの相棒。マイペースで、ナツとは違い学問や過去の歴史にそれほど興味がない。常に腹ペコなため、食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
柊木 千春 15、6歳女子
元々はゲームセンターギャラクシーフィールドにあったオリジナルのゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”に登場するヒロインだったが、奇跡によって現実にやって来る。Chapter2までは波音高校の一年生のふりをして、文芸部の活動に参加していた。鳴海たちには学園祭の終了時に姿を消したと思われている。Chapter6の終盤で滅びかけた世界に行き、ナツ、スズ、老人と出会っている。
Chapter7♯28 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
◯2380鳴海の夢/空港の駐車場(約25年前/夕方)
夕日が沈みかけている
鳴海と由夏理が乗っている古いバスが約25年前の空港の広い駐車場に止まっている
鳴海と由夏理が乗っている古いバスには鳴海と由夏理しか乗っていない
鳴海と由夏理が乗っている古いバスが止まっている約25年前の空港の広い駐車場には、バスの他にもたくさんの様々な車が止まっている
約25年前の空港の広い駐車場に止まっている車やバイクは全てデザインが古い
降っていたはずの雪は止んでおり、雪が降っていた形跡も全くない
鳴海と由夏理は古いバスの一番後ろの二人掛けの椅子に座っている
鳴海と由夏理が乗っている古いバスの扉は開いている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
眠っている鳴海
由夏理「少年、少年ってば、早く起きないと私たちごと車庫に入れられるよ」
由夏理は眠っている鳴海の頬を引っ張る
由夏理「(眠っている鳴海の頬を引っ張って)ほら早くー」
鳴海は由夏理に頬を引っ張られながら目を覚ます
鳴海「(由夏理に頬を引っ張られながら目を覚まして眠そうに)もう朝になったのか・・・」
由夏理「(鳴海の頬を引っ張りながら)まだ夕方だし〜」
鳴海は由夏理に頬を引っ張られながら飛び起きる
鳴海「(由夏理に頬を引っ張られながら飛び起きて)こ、ここはどこだ!?お、俺は目を覚ましたのか!?」
由夏理「(鳴海の頬を引っ張りながら)ん、おはよう少年」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(由夏理に頬を引っ張られながら)な、何が起きているんだ」
由夏理「(鳴海の頬を引っ張りながら)君の頬が引っ張られてるんだよ」
鳴海「(由夏理に頬を引っ張られながら)と、とりあえず離してくれ」
由夏理は鳴海の頬を引っ張るのをやめる
由夏理「(鳴海の頬を引っ張るのをやめて)ほい」
再び沈黙が流れる
鳴海は周囲を見る
鳴海「(周囲を見て)ゆ、雪はどうなった」
由夏理「ん?もしかして少年もあの夢を見たのかい?」
鳴海は周囲を見るのをやめる
鳴海「(周囲を見るのをやめて)あ、あの夢ってなんだよ」
由夏理「ほら、雪の中無人のダイナーに行く夢」
鳴海「あ、あれが夢のわけないだろ」
由夏理「だって見てごらんよ少年、外はなんだったらちょっと暑いくらいだし、雪なんて全くないでしょ?」
鳴海「だ、だがあんなリアルな夢は・・・」
鳴海は話途中で口を閉じる
鳴海「(声 モノローグ)そ、そもそも今俺がいる世界が夢なんだ、だからあのダイナーは夢の中の夢ということになるんじゃないのか・・・?そうでもなきゃあんな意味不明な現象は説明がつかないぞ・・・(少し間を開けて)多分俺のひいひいひいひいひい婆さんあたりが夢の中の夢に現れたんだ。何故母さんとまでそれを共有してしまったのかは謎だが・・・」
由夏理「少年?」
鳴海「た、確かにあれは夢だな」
由夏理「そうでしょー?」
鳴海「あ、ああ」
由夏理「しかし君、大丈夫なのかね?」
鳴海「な、何の話だ」
由夏理「なんか凄くうなされてたからさ、心配になったんだよ」
鳴海「あ、悪夢でも見たんだろ」
由夏理「少年の夢もダイナーが舞台だったんでしょ?」
鳴海「ま、まあな、ただ少し後味が悪かったんだ」
由夏理「私が寝た後、少年は眠らなかったの?」
鳴海「いや、眠ったけどさ・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「そ、それよりここはどこだ」
由夏理「空港の駐車場」
鳴海「く、空港が目的地だったのか?」
由夏理「そういうことになるね〜」
鳴海「な、何でまたそんな無意味な場所に・・・ま、まさか俺を拉致して国外へ連れて行くつもりか!?」
由夏理「君、私がそこまで横暴な女に見えてるんだ?」
鳴海「あ、いや・・・ま、まあ時々・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「じょ、冗談だ」
由夏理「そういう冗談は女の子を泣かすぞ少年」
鳴海「き、気をつける・・・じゃなくて空港で何をするんだよ、こ、これから更にどこかに行くつもりか?」
由夏理「君は知らないんだろうけどさ、空港って楽しい場所なんだよ。一日いられるし、ご飯も食べられるし、日本中のお土産が置いてあるし、何より色んな人と出会えるんだから、どっかに行かなくても遊べる場所なわけさ」
鳴海「隠れんぼでもするんじゃないだろうな・・・」
由夏理「それは高二の時に紘たちとやったよ、もうちょー大盛り上がりだったね。君もやってみる?少年」
鳴海「え、遠慮しとく・・・というか迷惑だろ・・・」
由夏理「(少し笑って)夜中だったらそこまで迷惑はかけてないって」
鳴海「そ、そうか・・・」
由夏理「(少し笑いながら)すみれが朝の4時前まで見つからなかった時はさすがに焦ったけどさ、それ以外は楽しくやれたもんだよ」
鳴海「し、失踪してなくて良かったな・・・」
由夏理「必死に探したからね〜、君も迷子にならないように気をつけなよ〜」
鳴海「何でかくれんぼから迷子の話になるんだ・・・」
由夏理は立ち上がる
由夏理「(立ち上がって)少年はすぐにいなくなっちゃうからさ」
鳴海「きょ、今日は俺消えてないだろ」
由夏理「うん、偉いよ少年」
再び沈黙が流れる
鳴海は立ち上がる
鳴海「(立ち上がって)こ、こういう人の多い現場でいなくなるのは俺よりもあなただ」
由夏理「何でそんなことが分かるのさ」
鳴海「け、結婚式で逃亡しかけたじゃないか」
由夏理「あ、あれは仕方がないじゃん?私の望んでいる式とは違ったんだし」
鳴海「の、望みと違うだけで毎回いなくなるのはどうかと思うぞ」
由夏理「私がいなくなったのはあれ一回きりでしょ〜」
由夏理は古いバスから降りて空港の広い駐車場に出る
由夏理に続いて古いバスから降りて空港の広い駐車場に出る鳴海
空港の広い駐車場からは大きな空港が見える
鳴海と由夏理は大きな空港に向かって歩き始める
鳴海「い、一回でも大問題だろ」
由夏理「いつもいつもこれから盛り上がるって時に消える君に言われたくないんだけど〜」
鳴海「だ、だから今日は今までの反省を生かしてちゃんと残ってるだろ」
由夏理「それで私が褒めてあげたのに少年は何も言わなかったじゃん」
鳴海「こ、心の中ではありがとうと返したつもりだが」
由夏理「心の中でしょ〜、しかもつもりじゃダメだよね〜」
鳴海「じゃ、じゃあ何だ、ま、毎回ちょっと褒められるたびにありがとうと言わなきゃならないのか」
由夏理「感謝を出し惜しみするのは良くないんだよ少年」
鳴海「お、俺はここぞという時に言おうとしているだけで出し惜しみはしてないぞ」
由夏理「つまり恥ずかしくて言いたくないってわけね〜」
鳴海「そ、それは違う、あ、ありがとうを極限まで我慢することで解放した時の瞬間感謝風速をぶち上げて・・・」
鳴海と由夏理は話を続ける
◯2381鳴海の夢/空港/国際線ターミナル(約25年前/夕方)
夕日が沈みかけている
約25年前の空港の国際線ターミナルの中にいる鳴海と由夏理
空港の国際線ターミナルの中は広く、天井が高い
空港の国際線ターミナルの中には鳴海と由夏理の他にも、サラリーマン、OL、学生、カップル、家族連れ、海外からの旅行客、キャビンアテンダントなどたくさんの人がおり、スーツケースやカゴの入ったカートを押して移動をしている
空港の国際線ターミナルの中には出発ロビー、チェックインカウンター、インフォメーションカウンター、手荷物カウンター、たくさんの椅子、手荷物測り、コインロッカー、公衆電話、トイレ、喫煙所、お土産が売られている店、レストラン、喫茶店、和食の料理屋、コンビニなどがある
空港の国際線ターミナルの中にいる人たちは、出発ロビーに向かったり、チェックインカウンターでチェックインを行っていたり、手荷物カウンターで荷物を預けたり、椅子に横になったり、手荷物測りで荷物を測ったり、公衆電話で電話をしたり、お店を見て回ったり、食事を取ったりしている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
周囲を見ている鳴海
鳴海「(周囲を見ながら)さすが国際線なだけあって凄い人だな・・・」
由夏理「私何か買って来るからさ、少年は適当に座って待っててよ」
鳴海は周囲を見るのをやめる
鳴海「(周囲を見るのをやめて)お、俺がついて行っちゃダメなのか?」
由夏理「一緒に行動したら逸れた時が大変でしょ?」
鳴海「そ、それはそうだが、だからってあなただけで行くのもどうなんだ」
由夏理「大丈夫だって少年、私はフロアマップを頭の中に叩き込んであるからさ」
鳴海「ほ、本当に一人で平気なのか?」
由夏理「君こそ勝手にうろついちゃダメだからね?」
鳴海「あ、ああ」
由夏理「じゃあちゃんとお留守番をしているんだよ少年」
鳴海「お、俺はそこの椅子に座ってるからな!!」
由夏理「ほーい」
由夏理は戸川純の”隣の印度人”を鼻歌で歌い始める
戸川純の”隣の印度人”を鼻歌で歌いながらどこかに行く由夏理
少しの沈黙が流れる
鳴海は近くにあった椅子に座る
一人空港の国際線ターミナルの椅子に取り残される鳴海
少しすると鳴海の隣に一組のカップルが座って来る
鳴海の隣に座って来たカップルは三枝琶子と三枝碧斗
琶子と碧斗の年齢は20歳
琶子と碧斗はギターケース、スーツケースを持っている
琶子と碧斗が持っているギターケースには”The Three Branches”と書かれた大きなシールが貼られている
琶子と碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている
ギターケースを床に置く琶子と碧斗
再び沈黙が流れる
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、碧斗の太ももを3回強く叩く
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、碧斗の太ももを3回強く叩いて国際線ターミナルの中にある女子トイレを指差す
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、琶子が指差している国際線ターミナルの中の女子トイレを見る碧斗
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、琶子が指差している空港の国際線ターミナルの中の女子トイレを見て頷く
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、琶子が指差している空港の国際線ターミナルの中にある女子トイレを見るのをやめる
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、ポケットからガムの捨て紙を取り出す碧斗
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、ガムの捨て紙を琶子に差し出す
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、ガムの捨て紙を差し出して来た碧斗の太ももを3回強く叩く琶子
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、ガムの捨て紙を差し出して来た碧斗の太ももを3回強く叩いて大きな声で)3回叩いた時WCだって言ってんじゃん!!!!これじゃ漏れちゃうよ!!!!」
鳴海は琶子の大きな声に驚きチラッと碧斗と琶子のことを見る
ガムの捨て紙を琶子に差し出したまま古いヘッドホンを耳から外す碧斗
碧斗「(ガムの捨て紙を琶子に差し出したまま古いヘッドホンを耳から外して)何だって?」
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞き、ガムの捨て紙を碧斗に差し出されたまま大きな声で)WC!!!!」
碧斗「(ガムの捨て紙を琶子に差し出したまま)分かった」
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞き、ガムの捨て紙を碧斗に差し出されたまま)3回叩いたらそれは他でもなくWCの水を流す時だって碧斗が言ったのに約束を破るなんて酷い!!!!」
琶子と碧斗の周囲にいる人たちは琶子と碧斗のことを見ている
ガムの捨て紙を琶子に差し出すのをやめる碧斗
碧斗は再び古いヘッドホンを耳に付けて音楽を聞き始める
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、指を3本立てて琶子に見せる碧斗
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、指を3本立てて琶子に見せて頷く
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)次は絶対に間違えないでよね!!!!」
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、指を3本立てるのをやめて再び頷く
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、立ち上がる琶子
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、碧斗にキスをする
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、キスをしている琶子と碧斗のことを二度見する鳴海
鳴海は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、キスをしている琶子と碧斗から逃げるように座席を一つずらして椅子に座る
鳴海と琶子、碧斗の椅子の間に空席が一つ出来る
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、キスをするのをやめる琶子と碧斗
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、国際線ターミナルの中の女子トイレに向かい始める
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、国際線ターミナルの中の女子トイレに向かっている琶子のことを見る鳴海
国際線ターミナルの中ではスペイン人のおばさん団体旅行客が移動している
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、スペイン人のおばさん団体旅行客が移動していることに気付き立ち止まる
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、スペイン人のおばさん団体旅行客に向かって大きな声で)はろー!!!!うえるかむとぅじゃぱん!!!!」
スペイン人のおばさん団体旅行客の一人「(スペイン語で)日本って湿気が酷いわね」
少しの沈黙が流れる
琶子はスペイン語が分かっておらず、スペイン人のおばさん団体旅行客の一人がなんて言ったのか伝わっていない
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、スペイン人のおばさん団体旅行客に向かって大きな声で)てんきゅー!!!!」
スペイン人のおばさん団体旅行客たちは琶子のことを見ながら不思議そうに話をしている
再び沈黙が流れる
鳴海はスペイン人のおばさん団体旅行客の一人と全く会話が成り立っていない琶子のことを見たまま、再び座席を一つ横にずらして椅子に座る
鳴海と碧斗の椅子の間に空席が二つ出来る
琶子はスペイン人のおばさん団体旅行客のスペイン語が全く理解出来ていないことを気にせず、国際線ターミナルの中の女子トイレに向かう
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、国際線ターミナルにある女子トイレの中に入って行く琶子
少しの沈黙が流れる
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、座席を一つ横にずらして椅子に座りに鳴海に近付く
鳴海と碧斗の椅子の間の空席が一つになる
再び沈黙が流れる
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、再び座席を一つ横にずらして鳴海の隣の椅子に座る
鳴海と碧斗の椅子の間の空席は一つもない
鳴海はチラッとヘッドホンを付けて音楽を聞いている碧斗のことを見る
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、鳴海の肩に右手を置く碧斗
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞き鳴海の肩に右手を置いたまま、右手の親指で何かを押すような動作を鳴海に見せる
鳴海「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている碧斗に肩に右手を置かれ、右手の親指を押すような動作を見せられながら)な、何だ?」
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞き鳴海の肩に右手を置いたまま、右手の親指で何かを押すような動作を鳴海に見せ続ける
鳴海「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている碧斗に肩に右手を置かれ、右手の親指を押すような動作を見せられながら)な、何が言いたいのか全く分からないんだが・・・」
少しの沈黙が流れる
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞き鳴海の肩に右手を置いたまま、右手の親指で何かを押すような動作をするのをやめる
碧斗「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞き鳴海の肩に右手を置いたまま、右手の親指で何かを押すような動作をするのをやめて大きな声で)らいたーぷりーず!!!!」
鳴海「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている碧斗に肩に右手を置かれたまま)も、持ってない」
碧斗「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞き鳴海の肩に右手を置いたまま大きな声で)ワッツ!?!?」
鳴海「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている碧斗に肩に右手を置かれたまま)も、持ってないと言ったんだ!!」
再び沈黙が流れる
鳴海は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている碧斗の右手を自分の肩から下ろす
碧斗が付けている古いヘッドホンを耳から外して碧斗の首にかける鳴海
鳴海「(碧斗が付けている古いヘッドホンを耳から外し碧斗の首にかけて)わ、悪いがライターは持ってない」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)あんたジャパニーズだったのか。通りでコミュニケーションスキルがあれなわけだ」
少しの沈黙が流れる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)マッチでも良いぜ」
鳴海「ま、マッチもないんだ」
再び沈黙が流れる
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたままポケットからタバコの箱を取り出す
古いヘッドホンを首にかけたままタバコの箱からタバコを一本取り出す碧斗
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたままタバコを口に咥える碧斗
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたままタバコを口に咥えて)小銭を貸してくれ」
鳴海「こ、今度は金か・・・」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、タバコの箱をポケットにしまう
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、タバコの箱をポケットにしまって)誰だって金は持ってるだろ」
鳴海「そう思うなら小銭くらい自分で出せよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)色々あって今は金欠なんだ」
鳴海「それは奇遇だな、俺も金がないんだよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)数百円を出すだけなのにそんなに渋るのか」
鳴海「し、渋ってるんじゃなくて実際に持ち合わせがないんだ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)あんたみたいなのを、けち臭い嫌な奴って言うんだぜ日本人」
鳴海「け、喧嘩を売ってるのか」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)俺は喧嘩を好まない、しかも何も持ってない男なんかと争えば嫁が泣く、だから俺はあんたとは喧嘩をしない、ノーファイトだ」
鳴海「な、何も持ってないって俺のことを言ってるんじゃないだろうな」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)いや、あんたのことを指してる」
鳴海「か、金がないのはお互い様じゃないか!!」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)俺はほとばしるパッションを持ってるぜ、あんたにはないパッションをな」
鳴海「お、俺だってパッションくらい持ってるぞ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)じゃあ金を貸してくれ、ライターを買いに行く」
鳴海「だからは金はねえって言ってるだろ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)金も持ってないのか、まるで俺だな」
少しの沈黙が流れる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)俺が作った曲を聞いて行くか?」
鳴海「きょ、曲?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)The Three Branchesのニューデモシングルだぜ」
鳴海「や、やめてとく」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)最高にイカした曲だ」
鳴海「そ、そうか」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)聞いてみたいだろ?」
鳴海「いや別に・・・」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)日本人は変なところで遠慮するからいけない、少しは大胆になった方が良いぜ」
鳴海「え、遠慮なんて1ミリもしていないんだが・・・」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)待ってろ、今カセットを準備する」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを口に咥えたまま、ギターケースを開ける
碧斗のギターケースの中にはアコースティックギター、カセットプレーヤー、たくさんのカセットテープが入っている
古いヘッドホンを首にかけてタバコを口に咥えたまま、ギターケースの中からカセットテープを探し始める碧斗
鳴海「き、聞きたくないと言ってるだろ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、ギターケースの中からカセットテープを探して)あんたの気持ちは分かるぜ。誰だって天才アーティストの前にいると緊張するよな。俺もチビの頃にダイナマイトローラーバレルズのカリスマボーカリスト、ジムスミスの美声を聞いた時には思わず覚醒するかと・・・」
鳴海はタバコを咥えたまま古いヘッドホンを首にかけてギターケースの中からカセットテープを探している碧斗の話を無視し、座席を横に一つずらして椅子に座る
鳴海と碧斗の椅子の間に再び空席が一つ出来る
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、ギターケースの中からカセットテープを探すのをやめる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、ギターケースの中からカセットテープを探すのをやめて)今逃げたか?」
鳴海「に、逃げてはない、きょ、距離を取っただけだ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)何で距離を取った?俺を避けてるのか?俺は怪しいもんじゃないんだぜ?」
鳴海「ふぁ、ファーストとセカンドが近過ぎてもお互いの守備に悪影響が出るだろ?だ、だから俺たちも少し距離があった方が良いんだ」
再び沈黙が流れる
鳴海は頭を抱える
鳴海「(頭を抱えて)何で野球で例えたんだよ俺・・・」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)つまりショートが琶子だな」
鳴海「(頭を抱えたまま)だ、誰だそいつ・・・」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)結婚って文化があるのを知ってるか日本人」
少しの沈黙が流れる
鳴海は頭を抱えるのをやめる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)結婚っていうのは、愛を誓った男女が籍を入れて子作り・・・」
鳴海「(碧斗の話を遮って)そ、そんなこと説明しなくて良い」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)琶子は俺の嫁だ」
鳴海「そうかよ・・・」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、座席を一つ横にずらして鳴海の隣の椅子に座る
再び鳴海と碧斗の椅子の間の空席がなくなる
鳴海「な、何で近くに来るんだ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)同じジャパニーズだろ、仲良くやろうぜ、それから金を貸してくれ」
鳴海「は、はっきり言うが迷惑なんだよ」
再び沈黙が流れる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)同じジャパニーズだろ、仲良くやろうぜ、それから金を貸してくれ」
鳴海「繰り返すなよ・・・」
少しの沈黙が流れる
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを口に咥えたまま、ギターケースを閉じる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、ギターケースを閉じて)あんた、どっかで見たことあるな」
鳴海「絶対にないから安心しろ」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを口に咥えたまま、鳴海のことを見る
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、鳴海のことを見て)いや、ある」
鳴海「ねえよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、鳴海のことを見て)あると言ったらあるんだ」
鳴海「俺はこのじだ・・・じゃ、じゃなくてこの辺りの人間じゃない」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを口に咥えたまま、鳴海のことを見て考え込む
鳴海「な、何だよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、鳴海のことを見て)思い出した、九龍城砦だな」
鳴海「きゅ、九龍城砦?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、鳴海のことを見て)映画の撮影をしてる時に香港で会っただろ?」
鳴海「人違いだ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、鳴海のことを見て)いや、あれは絶対にあんただったぜ、もっと汚い金髪だったけどな」
鳴海「映画の撮影ってキツネ様の奇跡のことか?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、鳴海のことを見て)それは知らない映画だ」
鳴海「お、俺が参加したことある映画の撮影はキツネ様の奇跡だけなんだよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、鳴海のことを見て)他は?」
鳴海「ない、しかも香港にも行ったことないぞ」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、鳴海のことを見るのをやめる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、鳴海のことを見るのをやめて)どういう記憶違いが起きてるのか分からないが、俺とあんたがミートしたのは香港の九龍城砦で・・・」
ハンバーガーとポテトを2人前乗せたトレイを運んでいる由夏理が、鳴海と話途中だった古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗の元にやって来る
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを運びながら)お待たせ少年」
鳴海「あ、ああ」
由夏理はハンバーガーとポテトを2人前乗せたトレイを運びながら、碧斗とは反対の鳴海の隣の椅子に座る
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)女連れだったのか、見かけによらずやるな日本人」
鳴海「見かけっておい、しかもこの人とはそういう関係じゃないんだよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)男と女の関係っていうのは守って守られる、単調だけど確実な絆のある関係が芽生えてるんだぜ日本人」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを2人前乗せたトレイを持ったまま)ん、つまり少年は私のことを守りに来てくれてるの?」
鳴海「は、話をややこしくしないでくれ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを2人前乗せたトレイを持ったまま)少年が一人でややこしくしているだけじゃないのかね」
鳴海「そ、そうだとしても俺の頭は既に限界になりつつあるんだ」
由夏理は持っていたトレイの上にあるハンバーガー1つとポテト1個を鳴海に差し出す
由夏理「(持っていたトレイの上にあるハンバーガー1つとポテト1個を鳴海に差し出して)そんな君にはハンバーガーとポテトを進呈しよう」
鳴海はハンバーガー1つとポテト1個を由夏理から受け取る
鳴海「(ハンバーガー1つとポテト1個を由夏理から受け取って)どうも・・・」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)少年、そこのお友達にもシェアしてあげたら?」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)友達って誰だ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)少年のお隣さんのことだよ」
由夏理はハンバーガーとポテトを乗せたトレイをも持ったまま、古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗のことを見る
由夏理に続いてハンバーガーとポテトを持ったまま、古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗のことを見る鳴海
鳴海に続いて碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、自分の隣を見る
碧斗の隣には誰も座っていない
再び沈黙が流れる
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま、古いヘッドホンを首にかけタバコを咥えて隣を見ている碧斗のことを見て)俺の隣はあんただろ・・・」
碧斗はヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、自分の隣を見るのをやめる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま自分の隣を見るのをやめて)そうだった」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗のことを見るのをやめて少し笑い)良かったね少年」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま、古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗のことを見るのをやめて)な、何が良いんだ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま少し笑って)そりゃ君に新しい友達が出来たことだよ」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)こ、こいつは友達でも何でもない」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)君、そんな態度をするんだったらもう構ってあげないぞ」
少しの沈黙が流れる
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)少年は私やすみれたちしか友達がいないんだからさ、もっと色んな人と仲良くした方が良いって」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)と、友達が少ないことの何がいけないんだ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)そういう子供みたいなことは言わないの〜」
再び沈黙が流れる
琶子が古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、ハンバーガーとポテトを持っている鳴海、ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持っている由夏理、古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗の元にやって来る
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、鳴海たちの前で立ち止まる
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、大きな声で)にーはお!!!!うえるかむとぅじゃぱん!!!!」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子に向かって手を振り)ニーハオ」
少しの沈黙が流れる
由夏理はハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子に向かって手を振るのをやめる
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子に向かって手を振るのをやめて)ほら、少年も挨拶しなよ」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)あー・・・に、ニーハオ・・・っておかしいだろ、こ、ここは日本で俺も日本人だぞ」
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)何ですか!!!!」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)いやだから日本人だと・・・」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま鳴海の話を遮り大きな声で)彼らは日本人だよ!!!!」
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)えっ!!!!」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま大きな声で)ブラザーだ!!!!」
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)ああブラザーね!!!!こんにちは!!!!」
由夏理はハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、再び古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子に向かって手を振る
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、由夏理に向かって手を振り返す琶子
由夏理と琶子は手を振り合い続ける
再び沈黙が流れる
由夏理はハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子に向かって手を振るのをやめる
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま由夏理に向かって手を振るのをやめて、古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗の隣の椅子に座る琶子
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子の肩を叩く
古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子の肩を叩くのをやめる碧斗
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、ハンバーガーとポテトを持っている鳴海のことを指差す
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗が指差した鳴海のことを見る琶子
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)な、何だよ」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、ハンバーガーとポテトを持っている鳴海のことを指差すのをやめる
少しの沈黙が流れる
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、ハンバーガーとポテトを持っている鳴海のことを見て大きな声で)あー!!!!前に香港で会った幸せじゃなさそう人ですね!!!!どうもお久しぶりです!!!!」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)いや会ってねえから・・・」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)君、香港に行ったことあるんだ?」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)な、ないんだよ、そ、そもそも俺は日本から出たいなんて思ったこともないんだぞ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)その割にはそこのお二人さんは少年のことを知っているようじゃないか」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)ひ、人違いだろ」
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、ハンバーガーとポテトを持っている鳴海のことを見て大きな声で)今日は前に会った時よりも幸せそうですね!!!!」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)し、幸せって・・・そんな疲れてる奴と俺は見間違われてるのかよ・・・」
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、ハンバーガーとポテトを持っている鳴海のことを見るのをやめる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)日本人」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)な、何だ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)あんたじゃない、女の方の日本人だ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)ん?私のことかい?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)ライターを貸して欲しい」
由夏理はハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、ポケットから使い捨てライターを取り出す
ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、使い捨てライターを古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗に差し出す
由夏理が古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗に差し出した使い捨てライターは、◯2102、◯2122の鳴海の夢で鳴海と由夏理が使用した使い捨てライターと完全に同じ物
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、使い捨てライターを古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗に差し出して)ほい」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、使い捨てライターを由夏理から受け取る
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、使い捨てライターを由夏理から受け取って)グラッチェ」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、使い捨てライターを使ってタバコに火を付けようとする
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)ま、まだあのライターを使っていたのか?」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま少し笑って)まあね、この子は新婚旅行の時から更に使い辛くなったよ」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、何度も使い捨てライターの着火レバーを押しているがなかなかライターの火が付かない
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)どうして新しいのを買わないんだ?」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)だって物持ちが良いしさ〜、それに私あのライターが結構好きなんだよね〜」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)つ、使い捨てライターに好きも嫌いもないだろ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)それがあるんだよ少年。私が火を付けられなくて困っていると、いつも君みたいな親切な人が助けてくれるからね、だからあのライターは人を呼ぶ時に色々と便利なわけだよ」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、使い捨てライターの着火レバーを押すのをやめて火をつけるのを諦める
古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、使い捨てライターをハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持っている由夏理に差し出す
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、使い捨てライターを古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗に差し出されて)火が欲しいんじゃないのかい」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、使い捨てライターをハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持っている由夏理に差し出して)これは使えない」
由夏理はハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、使い捨てライターを古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗から受け取る
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、使い捨てライターを古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗から受け取って)そりゃ残念・・・」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子の肩を2回叩く
古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗に肩を2回叩かれ、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたままポケットからマッチケースを取り出す琶子
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、マッチケースを古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗に差し出す
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、マッチケースを古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えている碧斗に差し出して大きな声で)ラスト一本だから!!!!」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子からマッチケースを受け取る
古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、マッチケースの中からマッチ棒を取り出そうとする碧斗
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)ま、待て」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、マッチケースからマッチ棒を取り出そうとするのをやめる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま、マッチケースからマッチ棒を取り出そうとするのをやめて)ニューデモシングルが聞きたくなったのか」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)そ、そうじゃなくてタバコなら喫煙所で吸って来いよ」
再び沈黙が流れる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)ジョディでか」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)じょ、ジョディ?」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)少年、ひょっとしてハリウッドに友達がいるんじゃないよね?」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)い、いるわけないだろ」
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)どうして吸わないの!!!!」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)この日本人がジョディで吸えと言うんだ!!!!」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)誰なんだよジョディって・・・」
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)じゃあジョディに行くしかないじゃん!!!!」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてタバコを咥えたまま)そうらしいな!!!!」
碧斗はタバコを咥えたまま古いヘッドホンを耳に付けて音楽を聞き始める
古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、立ち上がる碧斗
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま立ち上る
立ち上がった琶子と碧斗のことを見ている鳴海と由夏理
古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、ギターケースとスーツケースを手に持つ碧斗
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、スーツケースを持ってギターケースを背負う
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、ギターケースとスーツケースを手に持つ琶子
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、スーツケースを持ってギターケースを背負う
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、スーツケースを持ってギターケースを背負い国際線ターミナルの中の喫煙所を指差す琶子
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、琶子が指差している国際線ターミナルの中の喫煙所を見る
古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、琶子が指差している国際線ターミナルの中の喫煙所を見て頷く碧斗
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、国際線ターミナルの中の喫煙所を指差すのをやめる
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、鳴海と由夏理のことを見る琶子
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ち、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子のことを見たまま)な、何だ」
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、鳴海と由夏理に向かって深くお辞儀をする
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ち、古いヘッドホンを付けて音楽を聞きながら鳴海と由夏理に向かって深くお辞儀をしている琶子のことを見て)これはご丁寧に・・・」
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、頭を上げる
古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、スーツケースを押して国際線ターミナルの中の喫煙所に向かって歩き出す碧斗
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、スーツケースを押して碧斗について行く
国際線ターミナルの中の喫煙所に向かっている琶子と碧斗のことを見ている鳴海と由夏理
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持って、国際線ターミナルの中の喫煙所に向かっている琶子と碧斗のことを見ながら)少年のせいで行っちゃったじゃん」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持って、国際線ターミナルの中の喫煙所に向かっている琶子と碧斗のことを見ながら)お、俺が悪いのか」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持って、国際線ターミナルの中の喫煙所に向かっている琶子と碧斗のことを見ながら)君があの二人に喫煙所に行けって言ったからだよ」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持って、国際線ターミナルの中の喫煙所に向かっている琶子と碧斗のことを見ながら)に、妊婦の前で喫煙しないのは当たり前のことだろ」
少しの沈黙が流れる
琶子と碧斗は国際線ターミナルの中にある喫煙所に辿り着く
国際線ターミナルの中の喫煙所には琶子と碧斗の他にも、タバコを吸っている数人の喫煙者たちがいる
国際線ターミナルの中の喫煙所には灰皿スタンドがある
変わらず喫煙所にいる琶子と碧斗のことを見ている鳴海と由夏理
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、ポケットからタバコの箱を取り出す
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、タバコの箱からタバコを一本取り出す琶子
琶子は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、タバコを口に咥える
古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、タバコの箱をポケットにしまう琶子
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、マッチケースの中からマッチ棒を一本取り出す
古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、マッチケースを使ってマッチ棒に火を付ける碧斗
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、タバコにマッチ棒の火を付ける
古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、同じく古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えている琶子の顔に近付く碧斗
琶子と碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、お互いのタバコの先を当てる
碧斗が咥えているタバコの火が琶子のタバコに移る
鳴海と由夏理は国際線ターミナルの中の喫煙所で、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたままタバコを使いキスをしている琶子と碧斗のことを見ている
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持って、国際線ターミナルの中の喫煙所で、古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたままタバコを使いキスをしている琶子と碧斗のことを見て小声でボソッと)男とタバコでチュウ、か・・・」
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、同じく古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えている琶子の顔から少し離れる
琶子と碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、タバコの煙を吐き出す
古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、マッチ棒を振ってマッチ棒の火を消す碧斗
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、灰皿スタンドにマッチ棒を捨てる
ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持って、国際線ターミナルの中の喫煙所で古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えている琶子と碧斗のことを見るのをやめる由夏理
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持って、国際線ターミナルの中の喫煙所で古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えている琶子と碧斗のことを見るのをやめて)あーあ」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持って、国際線ターミナルの中の喫煙所で古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えている琶子と碧斗のことを見るのをやめて)な、何だよ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)別に〜」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)あ、あなたが来たがっていた場所だろ」
再び沈黙が流れる
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)私も吸えたら良かったんだけどね〜」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)た、タバコなんかやめとけよ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)何で君にそんなことを言われなきゃいけないのさ」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)か、体に毒だろ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)私の心には毒が必要なんだよ少年」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)そ、そういう物言いはやめるんだ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)君、私がタバコを吸っていて何か気に食わないことでもあるの?」
少しの沈黙が流れる
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)ハンバーガー、置いといたら冷めちゃうけど良いのかね」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)い、良いわけないだろ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)じゃあ食べなよ、せっかく買ってきたんだからさ」
再び沈黙が流れる
鳴海はポテトを持ったままハンバーガーを一口食べる
鳴海「(ポテトを持ったままハンバーガーを一口食べて)あ、あなたも食べたらどうだ」
少しの沈黙が流れる
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)仲良くやろ?ね?少年」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)い、いきなり何だよ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま少し笑って)楽しく過ごしたいじゃん?」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)あ、ああ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)だから仲良くやろうよ」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)べ、別に仲良くやってるじゃないか」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)ん、そうかね、君は気に食わないって顔をしているような気がするけど」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)お、俺はあなたのことが心配なだけだ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)少年が心配しなくてもさ、これでも赤ちゃんのためにタバコは控えてるんだからね?」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)こ、子供だけではなくあなたのためにも控えてくれ」
再び沈黙が流れる
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)じゃあ・・・私は赤ちゃんと君のためにタバコをやめるよ、それで良いでしょ?少年」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)ほ、本当にやめるのか」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)本当だって、私は嘘をつかないんだからさ」
◯2382回想/貴志家リビング(約十数年前/夕方)
夕日が沈みかけている
リビングにいる8歳頃の鳴海、30代前半頃の由夏理、15歳頃の風夏
リビングには小さな笹の木がある
テーブルに向かって椅子に座っている8歳頃の鳴海、由夏理、15歳頃の風夏
8歳頃の鳴海と由夏理は赤のボールペンで短冊に願い事を書いている
赤のボールペンで短冊に願い事を書きながらタバコを吸っている由夏理
風夏「お願いなんてないよママ」
由夏理「(タバコを咥えたまま赤のボールペンで短冊に願い事を書いて)一つくらいはあるでしょ〜?これが欲しいとか、あれが食べたいとかさ〜、何か書いたらママが叶えてあげるから〜」
風夏「欲しい物があったとしてもママには頼まない」
由夏理「(タバコを咥えたまま赤のボールペンで短冊に願い事を書いて)そういうことは言わないの〜」
少しの沈黙が流れる
由夏理は赤のボールペンで短冊に願い事を書きながらタバコの煙を吐き出す
赤のボールペンで短冊に願い事を書き終える8歳頃の鳴海
鳴海「(赤のボールペンで短冊に願い事を書き終えて)書けたよ」
由夏理はタバコを咥えたまま赤のボールペンで短冊に願い事を書くのをやめる
由夏理「(タバコを咥えたまま赤のボールペンで短冊に願い事を書くのをやめて)おっ、どれどれ、ユカリーニに見せてごらん」
由夏理はタバコを咥えたまま8歳頃の鳴海が書いた短冊を見る
8歳頃の鳴海の短冊には”水とんのじゅつが使えますように”と汚い赤い字で書かれている
再び沈黙が流れる
風夏「なんて書いたの?鳴海」
鳴海「水遁の術」
少しの沈黙が流れる
由夏理はタバコを咥えたまま8歳頃の鳴海が書いた短冊を見るのをやめる
風夏「ママが変なことを教えるから・・・」
由夏理「(タバコを咥えたまま)別に変なことなんて教えてないし?」
風夏「鳴海は私やママよりも純粋なのに・・・」
由夏理「(タバコを咥えたまま)風夏だって純粋でしょ〜」
風夏「私は水遁の術を覚えたいなんて思わないよ」
由夏理「(タバコを咥えたまま)弟のことは良いから、風夏も願い事を書いて、ね?」
風夏「書いたことは絶対に叶えてくれるの?ママ」
由夏理「(タバコを咥えたまま)もちろん、水遁の場合はシュノーケルを買えば良いしさ」
再び沈黙が流れる
15歳頃の風夏は赤のボールペンで短冊に願い事を書き始める
時間経過
リビングにいた由夏理はいつの間にかいなくなっている
小さな笹の木を見ている8歳頃の鳴海と15歳頃の風夏
小さな笹の木には8歳頃の鳴海、由夏理、15歳頃の風夏が赤のボールペンで書いた短冊が吊るされてある
8歳頃の鳴海の短冊には”水とんのじゅつが使えますように”と汚い赤い字で、由夏理の短冊には”子供たちと仲良く、楽しく、幸せに過ごせますように”と綺麗な赤い字で、風夏の短冊には表に”パパが家にいる日が増えますように”、裏には”ママがタバコをやめて、健康で、普通のお母さんになれますように”と綺麗な赤い字で書いてある
鳴海「(小さな笹の木を見ながら)何でお姉ちゃんの願いを書かなかったの?」
風夏「(小さな笹の木を見ながら)書いたんだよ鳴海」
鳴海「(小さな笹の木を見ながら)でも欲しい物とかは・・・?」
風夏「(小さな笹の木を見ながら)そういうお願いは・・・お姉ちゃんはもう要らないの、だから鳴海が代わりに叶えてもらってね」
鳴海「(小さな笹の木を見ながら)本当にそれで良いの・・・?」
15歳頃の風夏は小さな笹の木を見るのをやめる
風夏「(小さな笹の木を見るのをやめて)良いんだよ、私はお姉ちゃんなんだから」
◯2383回想戻り/鳴海の夢/空港/国際線ターミナル(約25年前/夕方)
夕日が沈みかけている
約25年前の空港の国際線ターミナルの中にいる鳴海、由夏理、三枝琶子、三枝碧斗
空港の国際線ターミナルの中は広く、天井が高い
空港の国際線ターミナルの中には鳴海と由夏理の他にも、サラリーマン、OL、学生、カップル、家族連れ、海外からの旅行客、キャビンアテンダントなどたくさんの人がおり、スーツケースやカゴの入ったカートを押して移動をしている
空港の国際線ターミナルの中には出発ロビー、チェックインカウンター、インフォメーションカウンター、手荷物カウンター、たくさんの椅子、手荷物測り、コインロッカー、公衆電話、トイレ、喫煙所、お土産が売られている店、レストラン、喫茶店、和食の料理屋、コンビニなどがある
空港の国際線ターミナルの中にいる人たちは、出発ロビーに向かったり、チェックインカウンターでチェックインを行っていたり、手荷物カウンターで荷物を預けたり、椅子に横になったり、手荷物測りで荷物を測ったり、公衆電話で電話をしたり、お店を見て回ったり、食事を取ったりしている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
椅子に座っている鳴海と由夏理
琶子と碧斗は空港の国際線ターミナルの中にある喫煙所でタバコを吸っている
古いヘッドホンを付けて音楽を聞きタバコを咥えたまま、スーツケースを持ってギターケースを背負っている琶子と碧斗
国際線ターミナルの中の喫煙所には灰皿スタンドがある
鳴海はハンバーガーとポテトを持っている
ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持っている由夏理
由夏理はハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、ポテトを一本食べる
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま、ポテトを一本食べて)そうだ、食べ終わったら外に出てみようよ少年」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)そ、外で何をするんだ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)飛行機とか景色を見たりさ、色々楽しめそうじゃん?」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)そ、そうか・・・」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)君が嫌がるなら・・・無理矢理連れて行くってことはしないよ」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)べ、別に嫌がってないぞ」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま)じゃあ・・・ついて来てくれるんだね・・・?」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)あ、当たり前だ、あ、あなたのために俺はここにいるんだからな」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま少し笑って)ありがと少年」
鳴海「(ハンバーガーとポテトを持ったまま)れ、礼を言われるようなことじゃない・・・」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま少し笑って)君と会ってなきゃさ、私は今も泣いてるよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海はポテトを持ったままハンバーガーを一口食べる
鳴海「(ポテトを持ったままハンバーガーを一口食べて)ひ、飛行機、墜落とかしないよな」
由夏理「(ハンバーガーとポテトを乗せたトレイを持ったまま少し笑って)そんなこと起きるわけないじゃん、事故なんて滅多にないんだからさ」
◯2384鳴海の夢/空港/展望デッキ(約25年前/夕方)
夕日が沈みかけている
空港の展望デッキにいる鳴海と由夏理
空港の展望デッキにはたくさんのベンチと双眼望遠鏡が設置されてある
空港の展望デッキには転落防止のためのフェンスがある
空港の展望デッキからは大きくて広い滑走路とたくさんの飛行機が見える
空港の展望デッキには鳴海と由夏理の他にも、サラリーマン、OL、学生、カップル、家族連れ、海外からの旅行客などたくさんの人がいる
空港の展望デッキにいる人たちは、滑走路のたくさんの飛行機を見たり、ベンチに座ったり、双眼望遠鏡を覗いたり、カメラで写真を撮ったりしている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
鳴海と由夏理は滑走路にいるたくさんの飛行機を見ている
由夏理「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら)夜になるとさ〜、綺麗なんだよね〜」
鳴海「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら)星なんか見えるのか?」
由夏理「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら)星じゃなくて夜景だよ少年、工場の明かりとか、滑走路の光が綺麗なわけさ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら)こ、ここには昔よく来てたんだろ?」
由夏理「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら)よくってほどでもないんだけど、時々、紘たちと一緒にね」
鳴海「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら)楽しそうだな」
由夏理「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら)そりゃ楽しかったよ。高校生の頃は何でも出来るって感じがしたし、ずっと4人で行動してたからね〜。毎日冒険してる・・・みたいな・・・多分、そんなふうに思ってたのは私だけなんだろうけどさ、でも本当に楽しかったんだ」
鳴海「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら)そうか・・・」
由夏理「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら少し笑って)ああいう経験とか時間って、もう一生戻ってこない来ないものじゃん?だからあの時、紘とすみれと潤を振り回しておいて正解だったって思うんだよね」
鳴海は滑走路にいるたくさんの飛行機を見るのをやめる
鳴海「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見るのをやめて)ま、まだこれからがあるだろ」
由夏理「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら少し笑って)これからって?」
鳴海「す、すみれさんたちを呼んでまた遊べば良いじゃないか」
再び沈黙が流れる
飛行機が大きな音を立てて飛び去って行く
由夏理は飛び去った飛行機を見ている
由夏理「(飛び去った飛行機を見ながら少し寂しそうに笑って)すみれは女優になるために努力してる、潤も映画監督になって今度こそキツネ様の奇跡を完成させようと頑張ってる、紘は生まれて来る子供のために、私のためにお金を稼いでる。(少し間を開けて)そういうことなんだよ少年、みんな私とは全然違う、だからね、私がいつまでも高校生の気分でいたら、みんなに迷惑をかけるわけだ」
鳴海「そ、そんなこと・・・気にしなきゃ良いだろ」
由夏理「(飛び去った飛行機を見ながら)君、私にとってすみれや潤が大切な友達だって分かってる?」
鳴海「わ、分かってるよ」
由夏理「(飛び去った飛行機を見ながら)じゃあ私が二人の夢を壊したくないって思うのも分かるでしょ?」
少しの沈黙が流れる
由夏理「(飛び去った飛行機を見ながら)確かに、あの時のように人生を謳歌出来ないっていうのは少し寂しいよ、当時とは環境が違うって分かっていても、やっぱり主婦として過ごすのは退屈だしさ。(飛び去った飛行機を見るのをやめて少し間を開けて)だけどね少年、私は今もこうして少年のことを振り回して、行きたいところに行って、好きなことをして、一日君と遊んでるんだよ」
鳴海「そ、それが何だ」
由夏理「(少し笑って)もー、少年は鈍い子なんだからー」
鳴海「あ、あなたの話からじゃ何を伝えたいのかが分からないんだよ」
由夏理「(少し笑いながら)つまりさ・・・結局私は今も幸せだってこと、分かった?少年」
鳴海「そ、そういうことか・・・」
由夏理「ん、そういうことだよ」
再び沈黙が流れる
鳴海は再び滑走路にいるたくさんの飛行機を見る
由夏理「少年はどうなの?」
鳴海「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら)お、俺が何だ?」
由夏理「君はちゃんと幸せ?」
鳴海「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見ながら)そ、そりゃそうだろ」
少しの沈黙が流れる
由夏理「困った時はいつでも私のところへおいで、少年」
再び沈黙が流れる
鳴海は滑走路にいるたくさんの飛行機を見るのをやめる
鳴海「(滑走路にいるたくさんの飛行機を見るのをやめて)そ、そこの望遠鏡を見てみないか?」
由夏理「ん、良いよ」
鳴海と由夏理は空港の展望デッキに設置されている双眼望遠鏡があるところに行く
双眼望遠鏡を覗く鳴海
鳴海が覗いている双眼望遠鏡では何も見えない
鳴海「(双眼望遠鏡を覗いたまま)な、何も見えないぞこれ、ぶっ壊れてるのか?」
由夏理「少年は世の中お金がないと何も出来ないってことを少しは学んだ方が良いかもね」
鳴海は双眼望遠鏡を覗くのをやめる
双眼望遠鏡をよく見てみる鳴海
双眼望遠鏡には100円玉を入れる投入口がある
鳴海は双眼望遠鏡を見るのをやめる
ポケットから100円玉を取り出す
100円玉を鳴海に差し出す由夏理
由夏理「(100円玉を鳴海に差し出して)ほら、お小遣い少年」
鳴海は100円玉を由夏理から受け取る
鳴海「(100円玉を由夏理から受け取って)す、すまん・・・」
鳴海は双眼望遠鏡の投入口に100円玉を入れる
双眼望遠鏡を覗く鳴海
鳴海が覗いている双眼望遠鏡からは滑走路を進んでいる大きな飛行機がアップで見える
由夏理「どうだい、見えるようになったかね?」
鳴海「(双眼望遠鏡を覗き滑走路を進んでいる大きな飛行機をアップで見ながら)お、おう、巨大な飛行機が見えるぞ」
由夏理「あ、分かった少年、飛行機に乗ってみたいんでしょ?」
鳴海「(双眼望遠鏡を覗き滑走路を進んでいる大きな飛行機をアップで見ながら)い、いや、見てるだけで十分だ」
由夏理「(少し笑って)君って怖がりだよね〜」
鳴海「(双眼望遠鏡を覗き滑走路を進んでいる大きな飛行機をアップで見ながら)あ、安全性を重視してると言ってくれ」
由夏理「(少し笑いながら)つまり怖がりなわけじゃん」
少しの沈黙が流れる
琶子「(大きな声)全然見えない!!!!」
碧斗「(大きな声)小銭を入れてないからな!!!!」
近くから琶子と碧斗の大きな声が聞こえて来る
鳴海は双眼望遠鏡を覗くのをやめる
双眼望遠鏡を覗くのをやめて隣を見る鳴海
鳴海と由夏理の隣では、古いヘッドホンを付けて音楽を聞きギターケースを背負っている琶子と碧斗が双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗いている
琶子と碧斗が背負っているギターケースには”The Three Branches”と書かれた大きなシールが貼られている
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、碧斗と一緒に双眼望遠鏡を片穴ずつ覗いて大きな声で)壊れてるんじゃないの!!!!」
由夏理「少年と同じことを言ってるね」
鳴海は隣で古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗いている琶子と碧斗のことを見て深くため息を吐き出す
鳴海「(隣で古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗いている琶子と碧斗のことを見て深くため息を吐き出して)俺・・・こいつらと同じなのか・・・」
由夏理は隣で古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗いている琶子と碧斗の肩を軽く叩く
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗くのをやめる琶子と碧斗
由夏理はポケットから100円玉を取り出す
100円玉を古いヘッドホンを付けて音楽を聞いている琶子と碧斗に差し出す由夏理
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、100円玉を由夏理から受け取る碧斗
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)どうもありがとう!!!!」
由夏理は首を横に振る
琶子の大きな声に驚き琶子の周囲にいる人たちは琶子と碧斗のことを見る
碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡の投入口に100円玉を入れる
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗く琶子と碧斗
鳴海「(隣で古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗いている琶子と碧斗のことを見て)何で交代で見ないんだ・・・」
由夏理「(少し笑って)これがこの二人の愛の形なんだよ少年」
鳴海「(隣で古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗いている琶子と碧斗のことを見て)形が独特過ぎるんだよな・・・」
琶子と碧斗は変わらず古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗いている
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、碧斗と一緒に双眼望遠鏡を片穴ずつ覗いて大きな声で)壊れてない!!!!」
碧斗「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、琶子と一緒に双眼望遠鏡を片穴ずつ覗いて大きな声で)金に感謝だぜ!!!!」
鳴海「(隣で古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗いている琶子と碧斗のことを見て呆れて)いや、金じゃなくて金をくれた人に感謝しろよ・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海は隣で古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を二人で片穴ずつ覗いている琶子と碧斗のことを見るのをやめる
古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、琶子と碧斗が二人で片穴ずつ覗いている双眼望遠鏡のレンズを手で隠す鳴海
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、碧斗と一緒に双眼望遠鏡を片穴ずつ覗いて大きな声で)壊れたんだけど碧!!!!」
碧斗「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、琶子と一緒に双眼望遠鏡を片穴ずつ覗いて大きな声で)壊れたな琶子!!!!」
琶子と碧斗は古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま、双眼望遠鏡を覗くのをやめる
慌てて双眼望遠鏡のレンズを手で隠すのをやめる鳴海
少しの沈黙が流れる
由夏理は鳴海のことを指差す
由夏理「(鳴海のことを指差して大きな声で)この子がやったの!!!!ごめんね!!!!」
鳴海「(由夏理に指差されたまま)お、おい!!な、何で言っちゃうんだよ!!」
由夏理「(鳴海のことを指差したまま大きな声で)だって君がやったことでしょ!!!!」
再び沈黙が流れる
由夏理は鳴海のことを指差すのをやめる
碧斗「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)俺はあんたにキレないぜ日本人!!!!あんたがいたから見ることが出来た景色だ!!!!何だったら俺はちょっと感謝してやらないこともないぞ!!!!」
鳴海「(大きな声で)キレようが感謝しようが好きにしろ!!!!俺がお前たちバカップルに言ってやりたいことはこれだけだ!!!!もっと静かに喋りやがれ!!!!」
飛行機が大きな音を立てて飛び去って行く
少しの沈黙が流れる
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)うるさくしてごめんなさい!!!!もう少し静かに喋るから許して!!!!」
鳴海は頭を抱える
鳴海「(頭を抱えて)な、何なんだこいつら・・・コントでもやっているつもりなのか・・・」
由夏理「少年、まずは落ち着きなよ」
鳴海は頭を抱えるのをやめる
鳴海「(頭を抱えるのやめて)そ、そうだな・・・常識のある大人としてアホ二人に立ち向かおうじゃないか」
由夏理「常識のある大人だったら人が覗いている望遠鏡のレンズを隠したりしないと思うけどね〜・・・」
再び沈黙が流れる
碧斗は古いヘッドホンを耳から外して首にかける
碧斗「(古いヘッドホンを耳から外して首にかけて)ありがとう、100円の日本人」
由夏理「お安い御用だとも」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)100円だけにお安い御用なんだな笑えるぜ日本人の女」
少しの沈黙が流れる
由夏理「よ、よく分からないけどさ、もう100円貸そうか?」
鳴海「(小声で)や、やめとけよ、こ、こいつらに関わると絶対面倒なことになるぞ」
由夏理「(小声で)良いから良いから、少年は見ててよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)金は要らない、だけど頼みがある」
由夏理「ん?何?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)俺たちのニューデモシングルを聞いてくれないか」
鳴海「(小声でボソッと)ほら見ろまた始まった・・・」
由夏理「君たちってミュージシャンなの?」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま頷く
由夏理「そっかそっか、じゃあ是非聞かせてよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ああ」
由夏理「(楽しそうに)また面白いことが起きそうだね少年」
鳴海「どこが面白そ・・・」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま鳴海の話を遮り大きな声で)俺たちの曲を聞いてくれるらしいぜ!!!!」
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)うるさくて怒ってるんじゃないの!!!!」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま大きな声で)そうじゃない!!!!曲が気になってるんだ!!!!」
琶子「(古いヘッドホンを付けて音楽を聞いたまま大きな声で)えっ!!!!宣伝してくれるって!?!?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま大きな声で)そうかもしれない!!!!俺たちの音楽がハマるか次第だが!!!!」
鳴海「(小声でボソッと)お、俺は何があっても絶対に宣伝しないからな・・・」
◯2385鳴海の夢/空港/国際線ターミナル(約25年前/夜)
約25年前の空港の国際線ターミナルの中にいる鳴海、由夏理、三枝琶子、三枝碧斗
空港の国際線ターミナルの中は広く、天井が高い
空港の国際線ターミナルの中には鳴海たちの他にも、サラリーマン、OL、学生、カップル、家族連れ、海外からの旅行客、キャビンアテンダントなどたくさんの人がおり、スーツケースやカゴの入ったカートを押して移動をしている
空港の国際線ターミナルの中には出発ロビー、チェックインカウンター、インフォメーションカウンター、手荷物カウンター、たくさんの椅子、手荷物測り、コインロッカー、公衆電話、トイレ、喫煙所、お土産が売られている店、レストラン、喫茶店、和食の料理屋、コンビニなどがある
空港の国際線ターミナルの中にいる人たちは、出発ロビーに向かったり、チェックインカウンターでチェックインを行っていたり、手荷物カウンターで荷物を預けたり、椅子に横になったり、手荷物測りで荷物を測ったり、公衆電話で電話をしたり、お店を見て回ったり、食事を取ったりしている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
椅子に座っている鳴海、由夏理、琶子、碧斗
琶子と碧斗の前にはギターケースが置いてある
琶子と碧斗のギターケースには”The Three Branches”と書かれた大きなシールが貼られている
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけている
話をしている鳴海たち
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)俺たちはThe Three Branchesっていうバンドを二人で組んでる」
鳴海「ふ、二人でか?」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ドラムとベースが脱退したから二人なの」
鳴海「な、なるほど」
由夏理「それで曲って言うのは?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)デモ版だからまだ音が軽いんだけど・・・」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたままギターケースを開ける
碧斗のギターケースの中にはアコースティックギター、カセットプレーヤー、たくさんのカセットテープが入っている
古いヘッドホンを首にかけたままギターケースの中からカセットテープを探し始める
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたままギターケースの中からカセットテープを探して)出来はかなり良い」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたままギターケースの中からカセットテープを取り出す
碧斗が古いヘッドホンを首にかけたままギターケースの中から取り出したカセットテープには、”Sound”と書かれてある
古いヘッドホンを首にかけたままカセットテープを由夏理に差し出す碧斗
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)碧、プレーヤーがないとこの人たち聞けないよ」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけてカセットテープを由夏理に差し出したまま、ギターケースの中からカセットプレーヤーを取り出す
古いヘッドホンを首にかけたままカセットテープと共にカセットプレーヤーを由夏理に差し出す碧斗
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたままカセットテープとカセットプレーヤーを由夏理に差し出して)はい」
由夏理はカセットテープとカセットプレーヤーを古いヘッドホンを首にかけている碧斗から受け取る
由夏理「(カセットテープとカセットプレーヤーを古いヘッドホンを首にかけている碧斗から受け取って)ありがとう」
由夏理はカセットプレーヤーにカセットテープをセットする
由夏理「(カセットプレーヤーにカセットテープをセットして)少年も聞く?」
鳴海「お、俺はパスだ」
由夏理「せっかくの機会じゃん」
鳴海「じ、実は前にバンドのライブに意見を出さなきゃいけない時があってさ、その時に嫌と言うほどバンドマンたちとは関わったんだよ」
少しの沈黙が流れる
由夏理「ごめんね〜、この子恥ずかしがり屋さんでさ〜」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)平均的な日本人なんだな」
鳴海「ど、どういう意味だ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)平均的な日本人はみんなはシャイなんだぜ」
再び沈黙が流れる
由夏理は古いヘッドホンを耳に付ける
古いヘッドホンを耳に付けてカセットプレーヤーの再生ボタンを押す由夏理
由夏理は古いヘッドホンを耳に付けたままThe Three Branchesのデモ曲を聞き始める
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)あんた、奴と友人なのか」
鳴海「や、奴って誰だよ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)九龍城砦で一緒だったあの人ですよ」
鳴海「だ、誰のことを言ってるのか知らないがあんたたちは人違いをしてるぞ」
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま顔を見合わせる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま碧斗と顔を見合わせて)ねえ碧斗、確かにこの人じゃなかった?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま琶子と顔を見合わせて)確かにこの男だ、琶子」
鳴海「ひ、人違いだと言ってるだろ」
少しの沈黙が流れる
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま顔を見合わせるのをやめる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま碧斗と顔を見合わせるのをやめて)幸せじゃない時は、掃除をすると良いんですって」
鳴海「お、俺は別に幸せだ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)人生、いつまで幸福が続くか分からない。だからそうじゃなくなった時の心構えをするのも大事だって、あいつは言ってたよ」
鳴海「何の話なのか全く分からないんだが・・・」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)どうして私たちの言ってることが通じないんだろう」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ひょっとしたら・・・こいつは馬鹿なのかもしれないな」
鳴海「おい」
再び沈黙が流れる
突然、古いヘッドホンを首にかけたまま琶子が大きなくしゃみをする
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま大きなくしゃみをして)ぶぇっくしょいどっこいしょ!!」
琶子の大きなくしゃみによって周囲にいた人たちが一斉に琶子のことを見る
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)誰かが俺たちのことを噂してる・・・」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)なんて噂してるの?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)The Three Branchesは天才バンドマンだってね」
少しの沈黙が流れる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)私たちいつまでここにいるのかしら」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)もう後数時間ってところだ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ベッツィーが待ってるのにね」
鳴海「だ、誰かと約束してるのか?」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)うん、ベッツィーと」
鳴海「そのベッツィーとやらは誰なんだ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)日本人はベッツィーも知らないんだな」
鳴海「あ、あんたも日本人だろ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ベッツィーはイタリアの都市の名前だ、水の都だよ、日本人」
再び沈黙が流れる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)碧の発音があまりにも良いから伝わってないみたい」
鳴海「ま、まさかヴェネチアのことを言ってるのか・・・?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)初めからそう説明してるだろ日本人、ベッツィーだと」
鳴海「いやだからあんたも日本人だけどな・・・というかベッツィーとヴェネチアじゃ全然違うだろ・・・」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)私たちこれからベッツィーに行くの」
鳴海「か、観光か?」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)碧斗、何で私たちイタリアに行くんだろうね?」
鳴海「は・・・?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)これと言った大きな目的はない、琶子」
鳴海「じゃ、じゃあ何しに行くんだよ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)私たち10代の時から世界中を旅してるの、だからベッツィーも旅の一環よ」
鳴海「いや旅の一環って・・・あ、あんたらバンドマンなんだろ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)そうだな、俺たちThe Three Branchesは世界をまたにかけて音楽活動をしてる」
鳴海「か、金がない上にバンドメンバーも欠落してるのにどうやって活動してるんだよ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)お金は旅先でCDを売ったり、ストリートライブをして稼いだり」
鳴海「そ、そんなんで食っていけるのか?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)音楽の力は国境を越えるんだぜ、日本人」
少しの沈黙が流れる
鳴海、古いヘッドホンを付けてThe Three Branchesのデモ曲を聞いている由夏理、古いヘッドホンを首にかけている琶子と碧斗の前を一人の若いOLがスーツケースを押しながら歩いて行く
若いOLはたくさんの書類、パスポート、飛行機のチケットを持っている
スーツケースを押して持っているたくさんの書類を確認しながら歩いている若いOL
若いOLはスーツケースを押してたくさんの書類を見ながら、書類を一枚めくろうとする
若いOLがスーツケースを押してたくさんの書類を見ながら、書類を一枚めくろうとして持っていたたくさんの書類、パスポート、飛行機のチケットを一気に落とす
若いOL「(スーツケースを押しながら、書類を一枚めくろうとしてたくさんの書類、パスポート、飛行機のチケットを一気に落として)ああもう・・・」
若いOLが持っていたたくさんの書類、パスポート、飛行機のチケットが地面に散らばっている
若いOLはスーツケースを押すのをやめて立ち止まる
地面に散らばっているたくさんの書類を拾い始める若いOL
鳴海の近くには若いOLのパスポートが落ちている
鳴海の近くに落ちている若いOLのパスポートは顔写真のページが開いてある
鳴海は近くに落ちていた若いOLのパスポートを拾う
若いOLのパスポートの顔写真のページには”天城 明穂”と名前が書いてある
拾った若いOLのパスポートの顔写真のページに書いてある”天城 明穂”という名前をボーッと見ている鳴海
若いOL「(地面に散らばっているたくさんの書類を拾いながら鳴海に向かって)それ、返してくれる?」
鳴海は慌てて若いOLのパスポートを見るのをやめる
鳴海「(慌てて若いOLのパスポートを見るのをやめて)す、すみません」
鳴海はパスポートを地面に散らばったたくさんの書類を拾っている若いOLに差し出す
地面に散らばっているたくさんの書類を拾いながらパスポートを鳴海から受け取る若いOL
琶子は古いヘッドホンを首にかけたまま地面に落ちている若いOLの飛行機のチケットを拾う
若いOLの飛行機のチケットにはパスポートと同じように、”天城 明穂”と若いOLの名前が書いてある
琶子は古いヘッドホンを首にかけたまま、若いOLの飛行機のチケットを地面に散らばったたくさんの書類を拾っている若いOLに差し出す
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま、若いOLの飛行機のチケットを地面に散らばったたくさんの書類を拾っている若いOLに差し出して)これも落としたよ、天城さん」
若いOLは地面に散らばっているたくさんの書類を拾いながら、飛行機のチケットを古いヘッドホンを首にかけている琶子から受け取る
若いOL「(地面に散らばっているたくさんの書類を拾いながら、飛行機のチケットを古いヘッドホンを首にかけている琶子から受け取って)あ、ありがとう」
少しすると若いOLは地面に散らばったたくさんの書類を拾い終える
スーツケースを押して再び歩き始める若いOL
鳴海はスーツケースを押して歩いている若いOLのことを見ている
鳴海「(スーツケースを押して歩いている若いOLのことを見ながら)あ、天城って・・・(少し間を開けて)た、ただの偶然・・・だよな・・・・」
再び沈黙が流れる
由夏理は古いヘッドホンを耳から外す
由夏理「(古いヘッドホンを耳から外して)やるね、君たち。思ってたよりも全然良い曲だったからびっくりしたよ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)売れると思いますか?」
由夏理「もちろん、きっと売れるって。一曲でもヒットすれば声だってかかりやすくなると思うしさ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ついに・・・三枝家に安定した収入が入るのね・・・」
鳴海はスーツケースを押して歩いている若いOLのことを見るのをやめる
鳴海「(スーツケースを押して歩いている若いOLのことを見るのをやめて)な、今なんて言った?」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ついに・・・三枝家に安定した収入が入るのね・・・」
鳴海「さ、三枝って・・・」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)俺は三枝碧斗、こっちは嫁の琶子だ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)どうぞよろしく!!」
由夏理「じゃああおあおとわこわこだね〜。私は貴志由夏理で、この子は連れの・・・(鳴海のことを見て)どう説明すれば良いの?少年」
鳴海「お、俺のことは何でも良い」
由夏理「(鳴海のことを見るのをやめて)何でもじゃいけないでしょー、自己紹介なんだからさー」
鳴海「そ、そんなことよりもあんたたちは本当に三枝なのか・・・?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)三枝だな」
鳴海「と、ということは・・・」
◯2386Chapter6◯493の回想/波音高校一年六組の教室/軽音部一年の部室(放課後/夕方)
夕日が沈みかけている
波音高校の軽音部部室にいる鳴海、菜摘、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
教室の隅にはリードギター、ベース、ドラム、その他機材が置いてある
椅子に座っている鳴海、菜摘、嶺二、雪音
鳴海、菜摘、嶺二、雪音に向かい合って汐莉、響紀、詩穂、真彩が椅子に座っている
話をしている鳴海たち
響紀「文芸部で海外旅行ということは、愛しの明日香ちゃんも海外に?」
鳴海「あ、ああ・・・あいつが文芸部を辞めなければの話だが・・・」
響紀「(大きな声で)私も行きます行きます明日香ちゃんとヴェネチアに行きたいんです連れて行ってくださいお願いします!!!!」
鳴海「ひ、響紀、まずは落ち着くんだ・・・」
響紀「落ち着いてますヴェネチアとても楽しみですグラッチェ」
◯2387回想戻り/鳴海の夢/空港/国際線ターミナル(約25年前/夜)
約25年前の空港の国際線ターミナルの中にいる鳴海、由夏理、琶子、碧斗
空港の国際線ターミナルの中は広く、天井が高い
空港の国際線ターミナルの中には鳴海たちの他にも、サラリーマン、OL、学生、カップル、家族連れ、海外からの旅行客、キャビンアテンダントなどたくさんの人がおり、スーツケースやカゴの入ったカートを押して移動をしている
空港の国際線ターミナルの中には出発ロビー、チェックインカウンター、インフォメーションカウンター、手荷物カウンター、たくさんの椅子、手荷物測り、コインロッカー、公衆電話、トイレ、喫煙所、お土産が売られている店、レストラン、喫茶店、和食の料理屋、コンビニなどがある
空港の国際線ターミナルの中にいる人たちは、出発ロビーに向かったり、チェックインカウンターでチェックインを行っていたり、手荷物カウンターで荷物を預けたり、椅子に横になったり、手荷物測りで荷物を測ったり、公衆電話で電話をしたり、お店を見て回ったり、食事を取ったりしている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
椅子に座っている鳴海、由夏理、琶子、碧斗
由夏理はカセットプレーヤーを持っている
琶子と碧斗の前にはギターケースが置いてある
琶子と碧斗のギターケースには”The Three Branches”と書かれた大きなシールが貼られている
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけている
鳴海「(小声で)あ、あんたたちは・・・あんたたちはあいつの・・・(少し間を開けて)ぜ、絶対にそうだ、そ、そうとしか思えない。き、聞き分けの悪さと言い、音楽をやっているところと言い、か、完全にそういうことなんだな・・・」
由夏理「君、何ぶつぶつ言ってるの?」
鳴海「こ、こちらの話だから気にしないでくれ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「じゃ、じゃあやっぱりさっきの天城って人も・・・」
◯2388Chapter6◯506の回想/波音高校三年生廊下(朝)
外は雨が降っている
朝のHRの前の時間
波音高校三年生廊下にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
波音高校三年生廊下では喋っている三年生や、教室に入ろうとしている三年生がたくさんいる
鳴海、菜摘、嶺二は明日香に頭を下げている
イライラしている明日香
鳴海「(頭を下げたまま)頼む!!新しく部員が入るまで残ってくれ!!」
菜摘「(頭を下げたまま)明日香ちゃん!!お願い」
嶺二「(頭を下げたまま)部室にいてくれるだけで良いからよ!!」
明日香「(イライラしながら)私の退部届け・・・どこに隠したの」
嶺二「(頭を下げたまま)隠してねえ!!ちょっくら借りただけだ!!」
明日香「(イライラしながら)ちょっくら借りた・・・ですって?」
◯2389回想戻り/鳴海の夢/空港/国際線ターミナル(約25年前/夜)
約25年前の空港の国際線ターミナルの中にいる鳴海、由夏理、琶子、碧斗
空港の国際線ターミナルの中は広く、天井が高い
空港の国際線ターミナルの中には鳴海たちの他にも、サラリーマン、OL、学生、カップル、家族連れ、海外からの旅行客、キャビンアテンダントなどたくさんの人がおり、スーツケースやカゴの入ったカートを押して移動をしている
空港の国際線ターミナルの中には出発ロビー、チェックインカウンター、インフォメーションカウンター、手荷物カウンター、たくさんの椅子、手荷物測り、コインロッカー、公衆電話、トイレ、喫煙所、お土産が売られている店、レストラン、喫茶店、和食の料理屋、コンビニなどがある
空港の国際線ターミナルの中にいる人たちは、出発ロビーに向かったり、チェックインカウンターでチェックインを行っていたり、手荷物カウンターで荷物を預けたり、椅子に横になったり、手荷物測りで荷物を測ったり、公衆電話で電話をしたり、お店を見て回ったり、食事を取ったりしている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
椅子に座っている鳴海、由夏理、琶子、碧斗
由夏理はカセットプレーヤーを持っている
琶子と碧斗の前にはギターケースが置いてある
琶子と碧斗のギターケースには”The Three Branches”と書かれた大きなシールが貼られている
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけている
鳴海「ま、間違いない・・・い、イライラしてる感じがそっくりだった・・・」
由夏理「少年」
鳴海「な、何だ」
由夏理「ドッペルゲンガーでも見たって顔をしているよ」
鳴海「し、知り合いに似た奴を見ただけだぞ」
由夏理「その知り合い似た奴っていうのが所謂ドッペルゲンガーなんじゃないのかね」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(引き攣った笑顔を見せて)と、とにかくよろしく二人とも」
時間経過
鳴海、由夏理、古いヘッドホンを首にかけている琶子と碧斗は、地面に世界地図を広げて見ている
空港の国際線ターミナルの中は人が少なくなっている
琶子「(古いヘッドホンを首にかけて地面に広げた世界地図を見ながら)行ったことあるのは、イギリス、香港、フランス、タイ、アメリカの5つ」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)凄いねー、私なんて日本から出たことないよー」
鳴海「(地面に広げた世界地図を見ながら)に、日本にいれば良いじゃないか」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)ずっと波音町にいるのはつまらないんだぞ、少年」
鳴海「(地面に広げた世界地図を見ながら)あ、あなたにはそうなんだろうな・・・」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)今まで行った国の中でオススメは?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけて地面に広げた世界地図を見ながら)香港かな」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)だってさ少年」
鳴海「(地面に広げた世界地図を見ながら)な、何で俺に言うんだよ」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)2人が君のそっくりさんを見た場所も香港なんでしょ?」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけて地面に広げた世界地図を見ながら)そっくりなんじゃなくて本人です」
鳴海「(地面に広げた世界地図を見ながら)人違いだ」
再び沈黙が流れる
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)香港は一度行ってみたいんだよね〜」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけて地面に広げた世界地図を見ながら)日本からはかなり近いよ、5時間くらいだから」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)へぇ〜」
鳴海「(地面に広げた世界地図を見ながら)すぐに着くんだな」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけて地面に広げた世界地図を見ながら)ああ」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら少し笑って)少年、今度香港に連れて行ってよ」
鳴海「(地面に広げた世界地図を見ながら)む、無理を言わないでくれ」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)香港が嫌ならどこが良いのさ」
鳴海「(地面に広げた世界地図を見ながら)ど、どこって・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(地面に広げた世界地図を見ながら)え、エジプトとか・・・」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)エジプト?」
鳴海「(地面に広げた世界地図を見ながら)す、スフィクスにピラミッドにツタンカーメンだぞ、お、面白そうだと思わないか?」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら少し笑って)そりゃあ面白そうだし行けるものなら行ってみたいけどさ」
再び沈黙が流れる
鳴海は地面に広げた世界地図を見るのをやめる
鳴海「(地面に広げた世界地図を見るのをやめて)な、波音町から出て行きたいとは思わないのか」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら少し笑って)もちろん思ったことはあるよ。でも思うだけじゃね、何も変わらないからさ」
再び沈黙が流れる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけて地面に広げた世界地図を見ながら)あの人が言ってた、生まれた町とか育った町からどんなに遠くに行っても、永遠に離れられないんですって」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけて地面に広げた世界地図を見ながら)町が変わっても、人が変わっても、記憶は変わらないから、故郷はずっと心に残り続けるらしいぜ」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)まあそういうもんだよねー・・・」
鳴海「な、何がそういうもんなんだ」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)人ってさ、日々忘れながら生きているようで、これだけはどうしてもってことは、ちゃんと残ってるんだよ」
鳴海「わ、忘れることだってあるだろ」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)それは忘れてるんじゃなくてさ、どこかで眠っているだけなんだって」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけて地面に広げた世界地図を見ながら)きっかけ待ち、だな」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけて地面に広げた世界地図を見ながら)何かの拍子で目が覚めるのを待っているのよね」
由夏理「(地面に広げた世界地図を見ながら)ん、そうそう、だからいつか誰かが優しく、君のことを起こしてあげる時が来るよ少年」
鳴海「(小声でボソッと)待たされるのは嫌いだ」
時間経過
鳴海、由夏理、古いヘッドホンを首にかけている琶子と碧斗は、国際線ターミナルの中の手荷物カウンターに向かっている
古いヘッドホンを首にかけたままギターケースを背負っている琶子と碧斗
国際線ターミナルの中の手荷物カウンターには荷物の重さを測るための荷台が5つある
国際線ターミナルの中の手荷物カウンターの前には列が出来ており、荷物の重さを測るためにサラリーマン、OL、海外からの旅行客など数人の人が並んでいる
国際線ターミナルの中の手荷物カウンターに向かいながら話をしている鳴海たち
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)時間がないから急ごう」
鳴海「(呆れて)何で先にスーツケースと一緒にギターも預けなかったんだ・・・」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ギターは俺の相棒、言わばパートナーであり、ミュージシャンの相棒なんだぜ日本人、だから手放すのには覚悟がいるんだ」
鳴海「気付いてないのかもしれないが今あんた2回相棒って言ったぞ、というか相棒とパートナーの意味は一緒だからな、あんたら海外に行き過ぎて一番大事な母国語の能力が完全に失われ始めてるだろ」
由夏理「少年ってツッコミを入れてる時だけはすらすら喋るよね〜」
鳴海「ば、馬鹿が多過ぎて饒舌にならなきゃやってられないんだよ」
由夏理「それじゃあ私も馬鹿の一人みたいじゃん」
鳴海「あ、あなたは・・・と、時々とんでもないことをやらかすだろ」
由夏理「ん〜?私ってそんなトラブルメーカーだっけ〜?」
鳴海「そ、そうだ、と、トラブルメーカー・・・い、いや、台風の目と言った方が正しい表現かもしれないな・・・」
由夏理「君、私に喧嘩売ってるでしょ」
鳴海「そ、そんなことはないぞ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ウェイト!!」
鳴海「ウエイト?トレーニングでもしたくなったのか?」
少しの沈黙が流れる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)待ってって言ったのよ何でそんな簡単な英単語さえも通じないの香港にいたくせに!!」
鳴海「お、落ち着け」
由夏理「今のわこわこはツッコミを入れてる少年にも負けない勢いがあったね」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)琶子は饒舌であり、The Three Branchesの歌唱担当、言わばボーカルなんだぜ日本人」
鳴海「饒舌なのとボーカルは関係ないだろ・・・しかも歌唱担当とボーカルってまた意味が被ってるじゃねえか・・・」
由夏理「少年の賢いツッコミは置いとくとして、わこわこは何を待たせようとしたのさ」
鳴海「置いとくなよ・・・」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ちょっと二人の関係が気になって」
鳴海「そ、そんなことでウェイトと言ったのか」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)うん」
鳴海「そういう時は普通ウェイトじゃなくてストップの方が使われるんだけどな・・・」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)普通って何なの?犬で例えるなら柴犬ってこと?」
鳴海「犬で例えられても困るんだが・・・」
由夏理「お姉さんはわこわこの気持ちが分かるよ〜、まず普通って何だし、そもそも何であんたの普通を私が押し付けられなきゃならないのさ、って話だからね〜」
鳴海「せ、正論を言うのはやめてくれ」
由夏理「正論なら君だって少しは理解出来るでしょ〜?」
再び沈黙が流れる
鳴海、由夏理、古いヘッドホンを首にかけている琶子と碧斗は、国際線ターミナルの中の手荷物カウンターの前に出来た列に並ぶ
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)由夏理さんと名無しさんは姉弟なの?」
由夏理「(少し笑って)姉弟だってさ少年、私たち似た者同士なのかね?」
鳴海「さ、さあな」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)あんたたち、よく似てるよ、ソウルと言う名の魂がコネクトしてるんだな」
鳴海「い、意味不明なことを言う前に黙った方が良いぞ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ところでバンドに興味はないか?我がThe Three Branchesの欠落したベースとドラムに加入して世界中を旅・・・」
鳴海「(碧斗の話を遮って)興味ないから安心しろ」
由夏理「何で勝手に答えちゃうのさ少年」
鳴海「あなたもバンドには興味ないはずだ」
由夏理「世界旅行付きなら話は別だって」
鳴海「りょ、旅行は旦那に頼めば良いだろ」
由夏理「それが出来たら苦労はしないんだよ少年」
少しの沈黙が流れる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)私たちのバンドはベースとドラムが連続で14人も脱退していて、人手不足だから、サポートだけでも入ってくれたら助かる・・・そうだよね、碧斗」
鳴海「14人連続って・・・何があったんだよ・・・」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)みんな俺たちの音楽センスについて来れなくなるらしい」
鳴海「多分音楽センスじゃなくてあんたたちの性格について来れなくなるんだと思うぞ・・・」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)バンドの初期メンにそこまで言えるんだから、名無しさんはドラマーになれるんじゃないの?」
鳴海「俺の発言内容とドラムは全くの無関係だろ・・・そもそも俺はバンドをやる気はないんだ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)由夏理さんはベースやらない?」
由夏理「わこわことあおあおと一緒に世界中を旅したい気持ちもあるんだけど、私には旦那さんがいるしこれからママにもならなきゃいけないからさ、音楽をやる余裕はないんだ」
鳴海はチラッと由夏理のことを見る
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)The Three Branchesはいつでもサポートを歓迎する、気が変わったらイタリアのベッツィーに来てレコーディングに参加して欲しい」
鳴海「わ、わざわざにイタリアに来いって言うのかよ・・・」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま頷く
再び沈黙が流れる
琶子は古いヘッドホンを首にかけたまま碧斗の肩を叩く
古いヘッドホンを首にかけている碧斗の肩を叩くのをやめて、古いヘッドホンを首にかけまま何かを指差す琶子
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま琶子が指差している方を見る
古いヘッドホンを首にかけたまま琶子が指差している方には、台車に乗せて運搬されている壊れかけのグランドピアノがある
壊れかけのグランドピアノは数人の業者たちが台車に乗せて運搬している
数人の業者たちが台車に乗せて運搬している壊れかけのグラウンドピアノは古く、鍵盤が何箇所か外れ、脚は折れており、屋根や側板の所々に穴が空いている
鳴海は古いヘッドホンを首にかけたまま琶子が指差している壊れかけのグランドピアノを見る
鳴海「(古いヘッドホンを首にかけたまま琶子が指差している壊れかけのグランドピアノを見て)ピアノか」
由夏理は古いヘッドホンを首にかけたまま琶子が指差している壊れかけのグランドピアノを見る
由夏理「(古いヘッドホンを首にかけたまま琶子が指差している壊れかけのグランドピアノを見て)どこから来たんだろうねー?」
鳴海「(古いヘッドホンを首にかけたまま琶子が指差している壊れかけのグランドピアノを見て)さあ・・・」
琶子は古いヘッドホンを首にかけたまま、台車に乗せて数人の業者たちに運搬されている壊れかけのグランドピアノを指差すのをやめる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま、台車に乗せて数人の業者たちに運搬されている壊れかけのグランドピアノを指差すのをやめて)碧、あのピアノ・・・」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたままれかけのグランドピアノを見るのをやめる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま壊れかけのグランドピアノを見るのをやめて)ああ」
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま、台車に乗せて数人の業者たちに運搬されている壊れかけのグランドピアノのところに向かう
壊れかけのグランドピアノを見るのをやめる鳴海と由夏理
鳴海「(壊れかけのグランドピアノを見るのをやめて)ど、どこに行くんだよ」
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま鳴海の声を無視し、台車に乗せて壊れかけのグランドピアノを運搬している業者たちのところに行く
由夏理「少年、私たちも」
鳴海「あ、ああ」
鳴海と由夏理は台車に乗せて壊れかけのグランドピアノを運搬している業者たちのところに行く
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)そのピアノ、どうするんですか?」
業者1「(数人の業者たちと共に壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬しながら)処分すんだよ、このピアノは音もちゃんと出ねーし、調律も馬鹿になってるんだ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)捨てるんだな」
業者1「(数人の業者たちと共に壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬しながら)ああ。(少し間を開けて)元々は有名なピアノだったそうだが、今じゃ見ての通り半壊でな」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)修理は?」
業者1「(数人の業者たちと共に壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬しながら)可哀想だが直しようがねーよ。前の持ち主も諦めて手放したんだ」
鳴海と由夏理が古いヘッドホンを首にかけている琶子、碧斗、数人の業者たちと共に壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬している業者の元にやって来る
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)弾かせてください」
業者1「(数人の業者たちと共に壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬しながら)こんなぶっ壊れた状態じゃまず演奏にならねえよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)環境は気にしない、俺たちが出来る形でピアノを送り出してやりたいんだ」
業者1「(数人の業者たちと共に壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬しながら)んなことを言ったってなぁ・・・」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)一曲だけ、お願い」
少しの沈黙が流れる
業者1「(数人の業者たちと共に壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬しながら)しょうがねー奴らだ・・・一旦止まるぞ、お前ら」
業者2「(数人の業者たちと共に壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬しながら)はい」
業者たちは壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押すのをやめて立ち止まる
業者1「(数人の業者たちと共に壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押すのをやめて立ち止まって)良い音は出ねーからな」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)俺たちThe Three Branchesは気持ち勝負で演奏する」
業者1「アマチュアってことかよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)それは聞けば分かるぜ、そうだろ?琶子」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)うん、この空港中に私たちの曲をかましてやろう」
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけたままギターケースを地面に置く
古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノを乗せている台車の上に乗る琶子
業者たちは古いヘッドホンを首にかけている琶子と、壊れかけのグランドピアノが乗っている台車から少し離れる
由夏理「(少し笑って)こんなところでライブを聞くことが出来るなんて、少年の運が良いおかげだね」
鳴海「水族館でショーを見損ねたのに運が良いわけないだろ」
由夏理「(少し笑いながら)君、そんなにイルカさんが好きなの?」
鳴海「べ、別にそこまでではないが・・・と、というかあんたら、時間は大丈なのか?」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけままギターケースを開ける
碧斗のギターケースの中にはアコースティックギター、カセットプレーヤー、たくさんのカセットテープが入っている
古いヘッドホンを首にかけままギターケースの中からアコースティックギターを手に取る碧斗
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたままアコースティックギターを手に取り、ギターケースを閉じる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたままギターケースを閉じて)セッションの一回だけなら飛行機も間に合う」
鳴海「の、乗り遅れても知らないぞ」
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま)私たちの人生は順調」
鳴海「は・・・?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)名無しの男は順調の意味も知らないのか」
鳴海「いや知っているが・・・」
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま)順調だから、飛行機には遅れないの」
鳴海「な、何で人生が順調かどうか分かるんだよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)俺と琶子は毎日が順調だと思って生きてる、だからどんなことが起きてもそれは順調の枠からはみ出ない」
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま)私たちが時間を合わせてるのよね」
◯2390Chapter6◯1189の回想/波音高校特別教室の四/文芸部室(昼)
昼休み
波音高校の文芸部の部室にいる鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
円の形に椅子を並べて座っている鳴海、菜摘、明日香、嶺二、汐莉、雪音、響紀、詩穂、真彩
教室の隅にパソコン六台、プリンター一台、部員募集の紙が置いてある
話をしている鳴海たち
響紀「まだ試してませんが、こちらから合わせられるようにやります」
菜摘「まだ試してないって・・・どういうこと・・・?」
詩穂「ライブの練習が終わってなくて・・・朗読とライブを合わせられてないんです」
少しの沈黙が流れる
響紀「ご心配なく、すぐに完璧にしますから」
菜摘「えっとー・・・(少し間を開けて心配そうに)本当に大丈夫・・・?」
響紀「はい」
◯2391回想戻り/鳴海の夢/空港/国際線ターミナル(約25年前/夜)
約25年前の空港の国際線ターミナルの中にいる鳴海、由夏理、琶子、碧斗
空港の国際線ターミナルの中は広く、天井が高い
空港の国際線ターミナルの中には鳴海たちの他にも、サラリーマン、OL、海外からの旅行客、キャビンアテンダントなどがおり、スーツケースやカゴの入ったカートを押して移動をしている
空港の国際線ターミナルの中には出発ロビー、チェックインカウンター、インフォメーションカウンター、手荷物カウンター、たくさんの椅子、手荷物測り、コインロッカー、公衆電話、トイレ、喫煙所、お土産が売られている店、レストラン、喫茶店、和食の料理屋、コンビニなどがある
空港の国際線ターミナルの中にいる人たちは、出発ロビーに向かったり、チェックインカウンターでチェックインを行っていたり、手荷物カウンターで荷物を預けたり、椅子に横になったり、手荷物測りで荷物を測ったり、公衆電話で電話をしたり、お店を見て回ったり、食事を取ったりしている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
空港の国際線ターミナルの中には台車に乗せた壊れかけのグランドピアノがある
空港の国際線ターミナルの中ある台車に乗せた壊れかけのグラウンドピアノは古く、鍵盤が何箇所か外れ、脚は折れており、屋根や側板の所々に穴が空いている
鳴海、由夏理、碧斗は台車に乗せた壊れかけのグランドピアノの近くにいる
鳴海、由夏理、碧斗の他にも台車に乗せた壊れかけのグランドピアノの近くには数人の業者がいる
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけている
琶子は壊れかけのグランドピアノが乗っている台車の上にいる
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたままアコースティックギターを手に持っている
古いヘッドホンを首にかけている碧斗の前には、琶子と碧斗のギターケースが置いてある
琶子と碧斗のギターケースには”The Three Branches”と書かれた大きなシールが貼られている
鳴海「(声 モノローグ)このどこからともなく湧き上がって来る過剰な自信・・・響紀と同じだ・・・(少し間を開けて)やっぱりこの二人は・・・響紀の両親なんだ・・・」
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま)碧斗、曲は何にする?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)愛の出会いと別れを歌ったあの曲が良い」
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま)ピアノの気持ちを私たちが代わりに伝えるのね?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ああ、音の薄い箇所のカバーなら任せてくれよ琶子」
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま)了解!!(少し間を開けて)ワン、ツー、スリー・・・」
琶子は台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノでABBAの”The Winner Takes It All”を弾き始める
琶子が台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノで弾いている”The Winner Takes It All”は、グランドピアノが壊れているため所々音が外れたり、鳴らなかったりしている
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノで”The Winner Takes It All”を弾いている琶子に合わせて、アコースティックギターで”The Winner Takes It All”を弾き始める
台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノで”The Winner Takes It All”を弾き語りする琶子
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノで”The Winner Takes It All”を弾き語りして)I don’t wanna talk About things we’ve gone through Through it’s hurting me Now it's history」
鳴海、由夏理、数人の業者たちは琶子と碧斗のライブを聞いている
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノで”The Winner Takes It All”を弾き語りして)I’ve played all my cards And that’s what you’ve done, too Nothing more to say No more ace to play」
由夏理は琶子と碧斗のライブを聞きながら涙を流す
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノで”The Winner Takes It All”を弾き語りして)The winner takes it all The loser’s standing small」
鳴海は琶子と碧斗のライブを聞きながら由夏理が涙を流していることに気付く
鳴海「だ、大丈夫か?」
由夏理「(涙を流しながら)大丈夫だよ、少年」
鳴海「だ、だったらどうして泣いてるんだ?」
由夏理「(涙を流しながら)そりゃあ・・・二人の演奏と歌声に感動したからさ・・・」
鳴海「た、ただの素人のライブだぞ」
由夏理「(涙を流しながら)涙はね少年・・・人が出来る感情表現の中で最も尊くて綺麗なんだ、だから出し惜しみするべきじゃないんだよ」
鳴海「(小さな声で)そうか・・・(少し間を開けて)それであなたは・・・昔からよく泣いていたのか・・・」
琶子と碧斗は変わらずライブを続けている
少しずつ空港の国際線ターミナルの中にいた人たちがライブを行っている琶子と碧斗の周りに集まって来る
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノで”The Winner Takes It All”を弾き語りして)I figured it made sense Building me a fence Building me a home Thinking I’d be strong there But I was a fool Playing by the rules」
鳴海は琶子と碧斗のライブを聞きながら涙を流している由夏理のことを見る
鳴海「(琶子と碧斗のライブを聞きながら涙を流している由夏理のことを見て 声 モノローグ)親父は母さんの涙を嫌った、特に人前では泣くなと何度も何度も注意していた。母さんの泣き癖は・・・収まるどころか年々酷くなっていたと思う。(少し間を開けて)母さんは俺と姉貴の親でありながら、涙を流すごとに母さん自身が子供に戻っているようだった」
由夏理は琶子と碧斗のライブを聞きながら手で涙を拭う
琶子と碧斗のライブを聞いている由夏理のことを見るのをやめる鳴海
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノで”The Winner Takes It All”を弾き語りして)The winner takes it all Takes it all The loser has to fall Has to fall」
ライブを行っている琶子と碧斗の周りにはいつの間にかサラリーマン、OL、海外からの旅行客などたくさんの人が集まっている
琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊り始める由夏理
由夏理は琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊りながら鳴海の手を取る
由夏理「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊りながら鳴海の手を取って)踊ろ少年!!」
鳴海「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊っている由夏理に手を取られたまま)お、踊るような曲じゃないだろ!!」
由夏理「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊り鳴海の手を取ったまま少し笑って)良いから良いから!!せっかく二人が素晴らしい演奏をしてくれてるんだしさ!!君も今だけは退屈な日常を忘れて最高に楽しもうよ!!」
鳴海「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊っている由夏理に手を取られたまま)お、俺の日常は別に退屈なんかじゃないぞ!!」
由夏理「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊り鳴海の手を取ったまま少し笑って)喋る前に踊って少年!!ほら!!皆さんも!!レッツダンスだよ!!」
琶子と碧斗のライブを聞いていた海外からの旅行客たちが、琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊り始める
サラリーマン1「し、仕事前にこんなことをしてたら・・・」
由夏理「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊り鳴海の手を取ったまま、サラリーマン1の話を遮り少し笑って)大丈夫だって!!ここにいる人たちは誰もあなたを叱ったりしないんだから!!ネクタイとワイシャツのボタンを外して楽しまなきゃ勿体無いよ!!」
サラリーマン1「そ、そっか・・・(少し間を開けて)た、たまには良いよな・・・」
サラリーマン1はワイシャツの第二ボタンを外してネクタイを緩める
ネクタイを緩めて琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊り始めるサラリーマン1
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま壊れかけのグランドピアノで”The Winner Takes It All”を弾き語りして)Somewhere deep inside You must know I miss you But what can I say? Rules must be obeyed The judges will decide」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけてアコースティックギターで”The Winner Takes It All”を弾き語りしながら)They decide」
数人の業者たちは琶子と碧斗のライブを聞いている
業者2「(琶子と碧斗のライブを聞きながら)白石さん!!俺たちも一曲くらい良いんじゃないっすかね!!」
業者1「(琶子と碧斗のライブを聞きながら)おうよ!!」
鳴海は琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊っている由夏理に手を取られたまま、周囲を見る
いつの間にか鳴海たちの周りにはライブを行っている琶子と碧斗を囲うようにたくさんの人が集まって来ている
ライブを行っている琶子と碧斗を囲うように集まっているたくさんの人たちは、琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊っている
琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊っている由夏理に手を取られたまま、周囲を見るのをやめる鳴海
鳴海は琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊っている由夏理に手を取られたまま、楽しそうに笑い出す
由夏理「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊り鳴海の手を取ったまま少し笑って)何一人で楽しそうに笑ってるのさ少年!!」
鳴海「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊っている由夏理に手を取られ、楽しそうに笑いながら)そりゃ楽しくなって来たら笑うだろ!!」
由夏理「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊り鳴海の手を取ったまま嬉しそうに)そっか!!君が楽しんでくれてるなら何よりだね!!」
鳴海「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊っている由夏理に手を取られ、楽しそうに笑いながら)そうだな!!」
鳴海は由夏理と手を繋いだまま、琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて楽しそうに踊り始める
鳴海「(由夏理と手を繋ぎ、琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて楽しそうに踊りながら業者1に向かって)あんた白石って言うのか!!」
業者1「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊りながら)ああ!!」
鳴海「(由夏理と手を繋ぎ、琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて楽しそうに踊りながら業者1に向かって)今度嶺二によろしくと伝えておいてくれ!!」
業者1「(琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊りながら)そんな奴知らねーよ!!」
鳴海「(由夏理と手を繋ぎ、琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて楽しそうに踊りながら業者1に向かって)確かに今のあんたは知らないだろうな!!」
由夏理は鳴海と手を繋ぎ、琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊りながらチラッと楽しそうに踊っている鳴海のことを見る
琶子「(台車の上に乗り古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノで”The Winner Takes It All”を弾き語りして)So the winner Takes it all And the loser Has to fall」
琶子と碧斗はライブを続ける
ライブを行っている琶子と碧斗を囲うように集まっているたくさんの人たちは、琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊り続けている
鳴海、由夏理、数人の業者たちはライブを行っている琶子と碧斗を囲うように集まっているたくさんの人たちの中心で、琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”に合わせて踊っている
時間経過
琶子と碧斗のライブは終わっている
琶子は古いヘッドホンを首にかけてたまま壊れかけのグランドピアノを乗せている台車の上にいる
碧斗は手にアコースティックギターを持っている
琶子と碧斗の”The Winner Takes It All”を聞きながら踊っていたサラリーマン、OL、海外からの旅行客たちはそれぞれ出発ロビー、チェックインカウンター、手荷物カウンター、椅子、手荷物測り、公衆電話、お店に向かったりしている
業者1「んじゃーお前たちもそろそろピアノを返してくれ」
琶子「はーい・・・」
琶子は古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノを乗せている台車の上から降りる
由夏理「(少し寂しそうに)あんなに楽しかったのにさ、なーんか終わると呆気ないって言うか、冷たいって言うか・・・」
業者1「最初から一曲だけって約束だったろ」
由夏理「(少し寂しそうに)まあそれはそうなんだけどさ・・・」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま床に置いていたギターケースを開ける
碧斗のギターケースの中にはカセットプレーヤーとたくさんのカセットテープが入っている
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたままアコースティックギターをギターケースの中にしまう
古いヘッドホンを首にかけたままアコースティックギターをギターケースの中にしまい、ギターケースを閉じる碧斗
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけたままギターケースを背負う
業者1「夢を追う若者たちよ、今後も精進するんだぞ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ご心配なく、若者は知られていないだけで陰でいつも努力をしていますから」
業者1「(少し笑って)その努力をやめずにな」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)The Three Branchesがドリームをキャッチした暁には、あんたをベッツィーの元に招待してやるぜ」
業者1「誰だベッツィーって」
鳴海「(呆れて)ベッツィーは人じゃなくてイタリアの地名だぞ・・・」
業者1「んな場所は聞いたことねえ・・・ってそれよりも俺たちは早く仕事に戻らなきゃなんねえんだ、お前ら、ピアノを運搬するぞ」
業者2「は、はい」
数人の業者たちは壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬し始める
壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬している数人の業者たちのことを見ている鳴海、由夏理、古いヘッドホンを首にかけている琶子と碧斗
鳴海「(壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬している数人の業者たちのことを見ながら小声でボソッと)白石、か・・・」
由夏理「(壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬している数人の業者たちのことを見ながら)少年、あの人と知り合いだったの?」
鳴海「(壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬している数人の業者たちのことを見ながら)いや・・・高校の部活仲間に似ていただけだ」
由夏理「(壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬している数人の業者たちのことを見ながら)ん、そっか・・・」
少しの沈黙が流れる
琶子は古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬している数人の業者たちのことを見るのをやめる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬している数人の業者たちのことを見るのをやめて)碧斗、私たちっていつまでここにいて良いの?」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま、壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押して運搬している数人の業者たちのことを見るのをやめて)そろそろアウトだと思うぜ」
鳴海は壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押し運搬している数人の業者たちのことを見るのをやめる
鳴海「(壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押し運搬している数人の業者たちのことを見るのをやめて)あ、アウトって何だよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)野球の打者か走者がプレイから外れることをアウトって・・・」
鳴海「(碧斗の話を遮って)ど、どっからどう考えても今野球の話はしてなかっただろだろ!!」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)あんたもさっき野球をしていないのに野球で例えていたぜ」
再び沈黙が流れる
由夏理は壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押し運搬している数人の業者たちのことを見るのをやめる
由夏理「(壊れかけのグランドピアノを乗せた台車を押し運搬している数人の業者たちのことを見るのをやめて)わこわことあおあお、もうすぐ飛行機の時間がアウトになるんじゃないのかい?」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)そうですね」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)急ぐか、琶子」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)うん、急ご」
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま、空港の国際線ターミナルの中にある手荷物カウンターに向かって歩き始める
鳴海「(小声でボソッと)三枝家には危機感という概念が存在していないらしいな・・・」
時間経過
出発ロビーの前にいる鳴海、由夏理、古いヘッドホンを首にかけている琶子と碧斗
空港の国際線ターミナルの中はほとんど人がいなくなっている
話をしている鳴海、由夏理、琶子、碧斗
由夏理「(少し寂しそうに笑って)二人ともお別れか〜・・・仲良くなったばかりなのに寂しいよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)The Three Branchesに加入してベッツィーに来るか?」
鳴海「(少し笑って)俺たちが入らなくても、あんたらはすぐに才能のある奴と巡り会うさ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)ドラムとベースが出来る人と?」
鳴海「た、多分な」
少しの沈黙が流れる
由夏理「わこわことあおあおなら、すぐに仲間を見つけられるって、二人とも才能があるんだし、壊れているピアノであそこまで出来るんだからさ」
鳴海「そ、その通りだ、自信を持って突っ走ればなるようになると思うぞ」
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま顔を見合わせる
鳴海「ど、どうかしたのか?」
再び沈黙が流れる
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま顔を見合わせるのをやめる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま琶子と顔を見合わせるのをやめて)やっぱりあんたとは香港で会ってる、今じゃあんたは名無しの男だけど、前に会った時は名前で呼ばれていたぜ・・・(少し間を開けて)確か・・・くるみ・・・?とか言う名前だ」
少しの沈黙が流れる
由夏理は鳴海のことを見る
由夏理「(鳴海のことを見て)君、ずいぶん可愛い名前なんだね」
鳴海「あ、アホか、そ、そんな名前のわけないだろ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)アルミだったかも」
由夏理「(鳴海のことを見たまま)少年はあれか、私が飲んだ缶ジュースの擬人化か」
鳴海「ほ、本気で言ってるんじゃないだろうな」
由夏理「(鳴海のことを見たまま)40%くらいは本気だけど何かね?」
再び沈黙が流れる
鳴海「お、俺はアルミでもくるみでもない、そ、それからあんたたちと会ったことも、香港に行ったこともないんだよ」
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま)俺たちが香港で聞いたのはあんたのあだ名だったか」
鳴海「ひ、人違いしたきゃ勝手にすれば良いが変なことを言うのはやめてくれ」
少しの沈黙が流れる
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)壊れていても、物は大事にって香港で教わったの」
鳴海「そ、それが何だ?だ、大事にするだけじゃ直らないんだぞ」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)だけど修復が不可能な物を大事にしないのは罰当たりよ」
◯2392◯2049の回想/貴志家風夏の自室(約10年前/昼前)
外は曇っている
風夏の部屋にいる10歳頃の鳴海、30代後半頃の由夏理、同じく30代後半頃の紘、16歳頃の風夏
風夏の部屋には組み立て途中のベッド、ゴミになった段ボールやプチプチ、ベッドを組み立てるための取り扱い説明書、たくさんのねじ、様々な種類のドライバーが置いてある
紘「修復するのも男の仕事だ。お前たちは飯でも食べていろ」
◯2393回想戻り/鳴海の夢/空港/国際線ターミナル(約25年前/夜)
約25年前の空港の国際線ターミナルの中にいる鳴海、由夏理、琶子、碧斗
空港の国際線ターミナルの中は広く、天井が高い
空港の国際線ターミナルの中には鳴海たちの他にほとんど人がいなくなっている
空港の国際線ターミナルの中には出発ロビー、チェックインカウンター、インフォメーションカウンター、手荷物カウンター、たくさんの椅子、手荷物測り、コインロッカー、公衆電話、トイレ、喫煙所、お土産が売られている店、レストラン、喫茶店、和食の料理屋、コンビニなどがある
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
琶子と碧斗は古いヘッドホンを首にかけている
鳴海、由夏理、琶子、碧斗
話をしている鳴海たち
鳴海「ふ、不可能なんかじゃない、お、俺は壊れているものを直すし、壊れそうなものは守ってみせる」
少しの沈黙が流れる
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま鳴海の肩に手を置く
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま鳴海の肩に手を置いて)不幸には気をつけて過ごすように」
鳴海「(古いヘッドホンを首にかけている碧斗に肩に手を置かれたまま)な、何だよそれ・・・」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま鳴海の肩に手を置くのをやめる
碧斗「(古いヘッドホンを首にかけたまま鳴海の肩に手を置くのをやめて)行こう、琶子」
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま)うん」
碧斗は古いヘッドホンを首にかけたまま出発ロビーに向かって歩いて行く
古いヘッドホンを首にかけたまま鳴海と由夏理に向かって深くお辞儀をする琶子
琶子「(古いヘッドホンを首にかけたまま鳴海と由夏理に向かって深くお辞儀をして)さようなら、貴志由夏理さん、名無しさん」
鳴海「あ、ああ・・・
由夏理「さようなら、The Three Branches」
琶子は古いヘッドホンを首にかけたまま頭を上げる
古いヘッドホンを首にかけたまま、同じく古いヘッドホンを首にかけている碧斗のことを走って追いかける琶子
鳴海と由夏理は古いヘッドホンを首にかけたまま出発ロビーに向かっている琶子と碧斗の後ろ姿を見ている
◯2394鳴海の夢/空港/展望デッキ(約25年前/夜)
空は曇っている
空港の展望デッキにいる鳴海と由夏理
空港の展望デッキにはたくさんのベンチと双眼望遠鏡が設置されてある
空港の展望デッキには転落防止のためのフェンスがある
空港の展望デッキからは大きくて広い滑走路とたくさんの飛行機が見える
空港の展望デッキには鳴海と由夏理の他にも数人のサラリーマンやOLがいる
空港の展望デッキにいる人たちは、滑走路のたくさんの飛行機を見たり、ベンチに座ったりしている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
由夏理はベンチに座っている
鳴海「そ、それで・・・この後はどうする?お、俺たちも飛行機に乗ってカイロを背中に貼りに行くか?」
少しの沈黙が流れる
鳴海「い、今のは使い捨てカイロとエジプトの首都のカイロを掛け合わせた新しいギャグだ」
飛行機が大きな音を立てて飛び去って行く
由夏理は飛び去った飛行機を見る
由夏理「(飛び去った飛行機を見て)あの二人、今頃は空の上にいるのかね」
鳴海「そ、そうじゃないか?」
再び沈黙が流れる
鳴海「ま、まさかついて行けば良かったとか思ってるんじゃないよな」
由夏理「(飛び去った飛行機を見ながら)そんなことは思ってないよ、私パスポートも持ってないんだからさ」
鳴海「ぱ、パスポートがあったらイタリアに行くつもりだったのか?」
由夏理「(飛び去った飛行機を見ながら)さあ・・・そういう可能性の話をされても分からないって」
少しの沈黙が流れる
鳴海「ど、どうしたんだ」
由夏理「(飛び去った飛行機を見ながら)ん、何が?」
鳴海「さ、さっきから様子が変だぞ」
由夏理「(飛び去った飛行機を見ながら)紘だったらさ、変なのはいつものことだって言うと思うよ」
鳴海「お、俺はあの人とは違う、あ、あなただって俺のことを旦那じゃないって言ってたじゃないか」
再び沈黙が流れる
鳴海は由夏理の隣に座る
鳴海「(由夏理の隣に座って)い、一体どうしたんだよ」
由夏理「(飛び去った飛行機を見ながら)この世界には・・・無理にでも結果が伴う行動を取るべきだと思ってる人がいるけど、私はそういう考えが好きじゃなくてさ」
鳴海「な、何の話だ」
由夏理は飛び去った飛行機を見るのをやめる
由夏理「(飛び去った飛行機を見るのをやめて)私は君の優しいところが大好きだよ、今日はお姉さんにたくさん付き合ってくれてありがとね、少年」
由夏理は鳴海の頭を優しく撫でる
由夏理「(鳴海の頭を優しく撫でて)君は気張らない方が良いよ、絶対に」
鳴海「(由夏理に優しく頭を撫でられながら)そ、そうか・・・?」
由夏理「(鳴海の頭を優しく撫でながら)うん、ああしなきゃこうしなきゃって思っているとさ・・・悪くなっちゃうこともあるから・・・」
少しの沈黙が流れる
由夏理は鳴海の頭を撫でるのをやめる
立ち上がる由夏理
由夏理「(立ち上がって少し寂しそうに笑って)さあ少年、今日のところは帰ろうか」
鳴海「えっ・・・?」
由夏理「そろそろ帰らなきゃさ、お家の人が心配するでしょ?」
鳴海「も、もう帰るのか?」
由夏理「君、もうって言ったけど今が何時か知らないよね?」
鳴海「お、俺は時間なんて気にしないぞ」
由夏理「気にしなきゃダメでしょ〜?お家の人が心配してるんだから〜」
鳴海「そ、そんな奴俺にはいない!!」
由夏理「少年にはガールフレンドがいるじゃん」
再び沈黙が流れる
鳴海「きょ、今日はあなたに付き合うと約束したはずだ」
由夏理「(少し笑って)君は一日かけてその約束を果たしてくれたよ、いつもみたいに消えることもなくさ」
鳴海「い、今まではもっと色々振り回そうとしていたじゃないか」
由夏理「(少し笑いながら)今日もたくさん振り回してあげたって」
飛行機が大きな音を立てて飛び去って行く
少しの沈黙が流れる
由夏理「行きはバスだったから帰りはタクシーにしよっか」
鳴海「ほ、本当にこれで満足なのかよ・・・」
由夏理「もちろんちゃんと満たされてるからね?元々最後に少年とは空港に来るつもりだったしさ」
鳴海「で、でも高校の頃はもっと遅い時間まで遊んでいたんだろ?」
由夏理「君、私は妊婦なんだよ」
鳴海「だ、だったら前みたいに旅館に行くとか・・・(少し間を開けて)い、今から泊まれる場所を探せば・・・」
由夏理「(鳴海の話を遮って)少年」
鳴海「な、何だ」
由夏理「今日はもう帰ろうって」
再び沈黙が流れる
鳴海「分かった・・・」
◯2395鳴海の夢/空港外/タクシー乗り場(約25年前/夜)
空は曇っている
約25年前の空港の外にあるタクシー乗り場にいる鳴海と由夏理
空港の外にあるタクシー乗り場にはたくさんの乗り場がある
空港の外にあるタクシー乗り場には鳴海と由夏理しかいない
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
空港の外にあるタクシー乗り場でタクシーが来るのを待っている鳴海と由夏理
鳴海「な、何でタクシーなんだ」
由夏理「ん、嫌だった?」
鳴海「い、嫌ってことはないが・・・」
由夏理「行きと違う方が楽しいでしょ?」
鳴海「そ、そうだな・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海は俯く
時間経過
鳴海と由夏理が待っているタクシー乗り場に一台の古いタクシーが止まる
由夏理は古いタクシーの後部座席のドアを開ける
古いタクシーの後部座席に乗り込む由夏理
由夏理に続いて古いタクシーの後部座席に乗り込む鳴海
鳴海は古いタクシーの後部座席のドアを閉める
古いタクシーの運転手「どちらまで?」
由夏理「まずは波音町の方に行って欲しくて・・・少年、お金を渡してあげるからさ、君も家まで送ってもらいなよ」
鳴海「いや・・・俺はあなたと同じところで降りる・・・」
由夏理「君がそれで良いなら構わないけど・・・でもちゃんと家に帰れるんだよね?」
鳴海「ああ・・・」
再び沈黙が流れる
由夏理「運転手さん、波音町の方に行ってもらえますか?」
古いタクシーの運転手「はいはい、波音町のどの辺りで・・・」
由夏理と古いタクシーの運転手は話を続ける
◯2396鳴海の夢/貴志家に向かう道中(約25年前/夜)
空は曇っている
鳴海と由夏理が乗っている古いタクシーが貴志家に向かっている
古いタクシーの運転手は黙って運転をしている
鳴海と由夏理が乗っている古いタクシーは約25年前の一般道を走っている
一般道を走っている車やバイクは全てデザインが古い
鳴海と由夏理は古いタクシーの後部座席に座っている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
鳴海と由夏理が乗っている古いタクシーではラジオがかかっており、ラジオの音声だけが車内に響いている
由夏理は外を眺めている
ラジオパーソナリティー「(古いタクシーのラジオの声)1999年に世界が滅びると予言しているノストラダムスだけど、彼の予言は今までにも幾つか的中していて・・・」
鳴海「(小声でボソッと)くだらない話題だ・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「(声 モノローグ)タクシーの中では、余計な会話をせずに済む」
鳴海はチラッと外を眺めている由夏理のことを見る
鳴海「(チラッと外を眺めている由夏理のことを見て)だから母さんはバスではなくタクシーを選んだのかもしれない」
ラジオパーソナリティー「(古いタクシーのラジオの声)もしも本当に1999年に世界が滅びるなら、私は何もかも捨てて旅に出るかも。(少し間を開けて)それじゃあつまらないか・・・一世一代の恋をする、とか良いですよね?愛する人と、愛する地球と共に死ぬっていう・・・まあ今のところそんな相手はいませんけどね、ハハハ」
外はポツポツと雨が降り始める
由夏理は外を眺めるのをやめる
由夏理「(外を眺めるのをやめて)少年は信じないんでしょ・・・?」
鳴海「予言のことか?」
由夏理「うん」
古いタクシーの運転手は運転をしながらタクシーのワイパーを起動する
古いタクシーの中ではラジオの音声と、フロントガラスの雫を拭くワイパーの音が響いている
鳴海「あ、あなたは信じてそうだ、ある時一瞬で世界が滅びてしまうと」
由夏理「そりゃあ怖いからさ・・・怖いものは信じちゃうんだよ」
少しの沈黙が流れる
由夏理「少年」
鳴海「ん・・・?」
由夏理「世界が滅びる時・・・君は私を助けに来てくれる?」
鳴海「ああ」
由夏理「じゃあお姉さん・・・待っているからね・・・滅びかけた世界で・・・少年のことを・・・」
◯2397鳴海の夢/貴志家前(約25年前/深夜)
弱い雨が降っている
約25年前の鳴海の家の前に一台の古いタクシーがやって来る
鳴海の家の周りに建っている一軒家やアパート、止まっている車などのデザインが全て古い
古いタクシーは鳴海の家の前で止まる
古いタクシーから降りて来る
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
古いタクシーはどこかに走って行く
由夏理「傘かカッパでも貸そうか?少年」
鳴海「大丈夫だ」
由夏理「またそんなことを言って、風邪を引いて彼女に怒られても知らないぞ」
鳴海「安心しろ、俺は風邪を引かないし彼女にも怒られない」
少しの沈黙が流れる
鳴海「だ、旦那はもう帰って来ているのか?」
由夏理「多分まだ、遅くなるって言ってたし、こういう時は朝帰りが多いからさ」
鳴海「い、一緒に待つことも出来るんだぞ」
由夏理「(少し笑って)君が家にいてくれるの?」
鳴海「あ、ああ、な、何があるか分からないしな」
由夏理「(少し笑いながら)そうだね〜・・・じゃあ少年には私が眠っている間、私と私の可愛いお嬢さんを見守っててもらおうかな〜・・・」
鳴海「ま、任せてくれ」
由夏理「(少し笑いながら)冗談だよ、少年」
鳴海「(少し寂しそうに)そ、そうか・・・」
再び沈黙が流れる
由夏理「君が守らなきゃいけないのは私なんかじゃなくて彼女でしょ?」
鳴海「ああ・・・」
由夏理「(少し笑って)よし、それが分かっていれば君はもう大丈夫だよ」
少しの沈黙が流れる
由夏理「じゃあ・・・少年・・・また会う時まで元気でね」
鳴海「あ、あなたも、体には気を付けるんだぞ」
由夏理「うん」
由夏理はポケットから家の鍵を取り出す
家の玄関の鍵穴に挿す由夏理
由夏理は家の玄関の鍵を開ける
家の玄関の鍵穴から鍵を抜く由夏理
由夏理は鳴海の家の扉を開ける
由夏理「(鳴海の家の扉を開けて)チャオ、少年」
鳴海「チャオ・・・」
由夏理は鳴海の家の中に入る
鳴海の家の扉がゆっくり閉まる
再び沈黙が流れる
鳴海は深呼吸をする
深呼吸をして両目を瞑る鳴海
少しの沈黙が流れる
鳴海は両目を開ける
周囲を見る鳴海
鳴海「(周囲を見て)か、母さんと別れても目が覚めないのか・・・?」
◯2398鳴海の夢/住宅街(約25年前/深夜)
弱い雨が降っている
約25年前の住宅街を一人歩いている鳴海
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
建っている一軒家やアパート、止まっている車などのデザインが全て古い
鳴海の体は雨で濡れている
鳴海「何故だ・・・現在に引き戻される気配が全くがない・・・まだここで・・・この時代でやり残したことがあるのか・・・?(少し間を開けて)母さんの冗談を押し切って家に上がることも出来たが・・・」
◯2399◯2394の回想/鳴海の夢/空港/展望デッキ(約25年前/夜)
空は曇っている
空港の展望デッキにいる鳴海と由夏理
空港の展望デッキにはたくさんのベンチと双眼望遠鏡が設置されてある
空港の展望デッキには転落防止のためのフェンスがある
空港の展望デッキからは大きくて広い滑走路とたくさんの飛行機が見える
空港の展望デッキには鳴海と由夏理の他にも数人のサラリーマンやOLがいる
空港の展望デッキにいる人たちは、滑走路のたくさんの飛行機を見たり、ベンチに座ったりしている
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
鳴海と由夏理はベンチに座っている
話をしている鳴海と由夏理
由夏理は飛び去った飛行機を見ている
由夏理「(飛び去った飛行機を見ながら)この世界には・・・無理にでも結果が伴う行動を取るべきだと思ってる人がいるけど、私はそういう考えが好きじゃなくてさ」
鳴海「な、何の話だ」
由夏理は飛び去った飛行機を見るのをやめる
由夏理「(飛び去った飛行機を見るのをやめて)私は君の優しいところが大好きだよ、今日はお姉さんにたくさん付き合ってくれてありがとね、少年」
◯2400鳴海の夢/住宅街(約25年前/深夜)
弱い雨が降っている
約25年前の住宅街を一人歩いている鳴海
鳴海の髪の毛は綺麗な金髪になっている
建っている一軒家やアパート、止まっている車などのデザインが全て古い
鳴海の体は雨で濡れている
鳴海「(声 モノローグ)君の優しいところが好き・・・あれは無理強いされたくないという母さんなりの宣言だ・・・父さんが人生の結果や周囲の目ばかりを気にしているから・・・母さんは他人にあれこれ言われるのが嫌になっているに違いない・・・(少し間を開けて)母さんのこと以外で、何か夢から覚める条件のようなものを満たせていないんじゃないのか・・・?響紀の両親・・・明日香の母親・・・嶺二の父親・・・そして先祖の貴志希海・・・今回の旅は現代の俺と関係している出来事が多かった・・・しかもかなり長い時間を過ごしている・・・15時間くらいか・・・おそらく今までで最長の滞在時間だ」
雨の勢いが少しずつ強くなる
鳴海「(舌打ちをして)チッ・・・傘は借りた方が良かったっていうオチじゃないよな・・・」
少しすると鳴海が歩いているところから波音高校が見えて来る
鳴海は波音高校を見る
鳴海「(波音高校を見て)とりあえず・・・久しぶりに波高に行ってみるか・・・」