Chapter7♯15 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
向日葵が教えてくれる、波には背かないで
Chapter7 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
登場人物
貴志 鳴海 19歳男子
Chapter7における主人公。昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の副部長として合同朗読劇や部誌の制作などを行っていた。波音高校卒業も無鉄砲な性格と菜摘を一番に想う気持ちは変わっておらず、時々叱られながらも菜摘のことを守ろうと必死に人生を歩んでいる。後に鳴海は滅びかけた世界で暮らす老人へと成り果てるが、今の鳴海はまだそのことを知る由もない。
早乙女 菜摘 19歳女子
Chapter7におけるもう一人の主人公でありメインヒロイン。鳴海と同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部の部長を務めていた。病弱だが性格は明るく優しい。鳴海と過ごす時間、そして鳴海自身の人生を大切にしている。鳴海や両親に心配をかけさせたくないと思っている割には、危なっかしい場面も少なくはない。輪廻転生によって奇跡の力を引き継いでいるものの、その力によってあらゆる代償を強いられている。
貴志 由夏理
鳴海、風夏の母親。現在は交通事故で亡くなっている。すみれ、潤、紘とは同級生で、高校時代は潤が部長を務める映画研究会に所属していた。どちらかと言うと不器用な性格な持ち主だが、手先は器用でマジックが得意。また、誰とでも打ち解ける性格をしている
貴志 紘
鳴海、風夏の父親。現在は交通事故で亡くなっている。由夏理、すみれ、潤と同級生。波音高校生時代は、潤が部長を務める映画研究会に所属していた。由夏理以上に不器用な性格で、鳴海と同様に暴力沙汰の喧嘩を起こすことも多い。
早乙女 すみれ 46歳女子
優しくて美しい菜摘の母親。波音高校生時代は、由夏理、紘と同じく潤が部長を務める映画研究会に所属しており、中でも由夏理とは親友だった。娘の恋人である鳴海のことを、実の子供のように気にかけている。
早乙女 潤 47歳男子
永遠の厨二病を患ってしまった菜摘の父親。歳はすみれより一つ上だが、学年は由夏理、すみれ、紘と同じ。波音高校生時代は、映画研究会の部長を務めており、”キツネ様の奇跡”という未完の大作を監督していた。
貴志/神北 風夏 25歳女子
看護師の仕事をしている6つ年上の鳴海の姉。一条智秋とは波音高校時代からの親友であり、彼女がヤクザの娘ということを知りながらも親しくしている。最近引越しを決意したものの、引越しの準備を鳴海と菜摘に押し付けている。引越しが終了次第、神北龍造と結婚する予定。
神北 龍造 25歳男子
風夏の恋人。緋空海鮮市場で魚介類を売る仕事をしている真面目な好青年で、鳴海や菜摘にも分け隔てなく接する。割と変人が集まりがちの鳴海の周囲の中では、とにかく普通に良い人とも言える。因みに風夏との出会いは合コンらしい。
南 汐莉 16歳女子
Chapter5の主人公でありメインヒロイン。鳴海と菜摘の後輩で、現在は波音高校の二年生。鳴海たちが波音高校を卒業しても、一人で文芸部と軽音部のガールズバンド”魔女っ子の少女団”を掛け持ちするが上手くいかず、叶わぬ響紀への恋や、同級生との距離感など、様々な問題で苦しむことになった。荻原早季が波音高校の屋上から飛び降りる瞬間を目撃して以降、”神谷の声”が頭から離れなくなり、Chapter5の終盤に命を落としてしまう。20Years Diaryという日記帳に日々の出来事を記録していたが、亡くなる直前に日記を明日香に譲っている。
一条 雪音 19歳女子
鳴海たちと同じく昨年度までは波音高校に在籍し、文芸部に所属していた。才色兼備で、在学中は優等生のふりをしていたが、その正体は波音町周辺を牛耳っている組織”一条会”の会長。本当の性格は自信過剰で、文芸部での活動中に鳴海や嶺二のことをよく振り回していた。完璧なものと奇跡の力に対する執着心が人一倍強い。また、鳴海たちに波音物語を勧めた張本人でもある。
伊桜 京也 32歳男子
緋空事務所で働いている生真面目な鳴海の先輩。中学生の娘がいるため、一児の父でもある。仕事に対して一切の文句を言わず、常にノルマをこなしながら働いている。緋空浜周囲にあるお店の経営者や同僚からの信頼も厚い。口下手なところもあるが、鳴海の面倒をしっかり見ており、彼の”メンター”となっている。
荻原 早季 15歳(?)女子
どこからやって来たのか、何を目的をしているのか、いつからこの世界にいたのか、何もかもが謎に包まれた存在。現在は波音高校の新一年生のふりをして、神谷が受け持つ一年六組の生徒の中に紛れ込んでいる。Chapter5で波音高校の屋上から自ら命を捨てるも、その後どうなったのかは不明。
瑠璃
鳴海よりも少し歳上で、極めて中性的な容姿をしている。鳴海のことを強く慕っている素振りをするが、鳴海には瑠璃が何者なのかよく分かっていない。伊桜同様に鳴海の”メンター”として重要な役割を果たす。
来栖 真 59歳男子
緋空事務所の社長。
神谷 志郎 44歳男子
Chapter5の主人公にして、汐莉と同様にChapter5の終盤で命を落としてしまう数学教師。普段は波音高校の一年六組の担任をしながら、授業を行っていた。昨年度までは鳴海たちの担任でもあり、文芸部の顧問も務めていたが、生徒たちからの評判は決して著しくなかった。幼い頃から鬱屈とした日々を過ごして来たからか、発言が支離滅裂だったり、感情の変化が激しかったりする部分がある。Chapter5で早季と出会い、地球や子供たちの未来について真剣に考えるようになった。
貴志 希海 女子
貴志の名字を持つ謎の人物。
三枝 琶子 女子
“The Three Branches”というバンドを三枝碧斗と組みながら、世界中を旅している。ギター、ベース、ピアノ、ボーカルなど、どこかの響紀のようにバンド内では様々なパートをそつなくこなしている。
三枝 碧斗 男子
“The Three Branches”というバンドを琶子と組みながら、世界中を旅している、が、バンドからベースとドラムメンバーが連続で14人も脱退しており、なかなか目立った活動が出来てない。どこかの響紀のようにやけに聞き分けが悪いところがある。
有馬 千早 女子
ゲームセンターギャラクシーフィールドで働いている、千春によく似た店員。
太田 美羽 30代後半女子
緋空事務所で働いている女性社員。
目黒 哲夫 30代後半男子
緋空事務所で働いている男性社員。
一条 佐助 男子
雪音と智秋の父親にして、”一条会”のかつての会長。物腰は柔らかいが、多くのヤクザを手玉にしていた。
一条 智秋 25歳女子
雪音の姉にして風夏の親友。一条佐助の死後、若き”一条会”の会長として活動をしていたが、体調を崩し、入院生活を強いられることとなる。智秋が病に伏してから、会長の座は妹の雪音に移行した。
神谷 絵美 30歳女子
神谷の妻、現在妊娠中。
神谷 七海 女子
神谷志郎と神谷絵美の娘。
天城 明日香 19歳女子
鳴海、菜摘、嶺二、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。お節介かつ真面目な性格の持ち主で、よく鳴海や嶺二のことを叱っていた存在でもある。波音高校在学時に響紀からの猛烈なアプローチを受け、付き合うこととなった。現在も、保育士になる資格を取るために専門学校に通いながら、響紀と交際している。Chapter5の終盤にて汐莉から20Years Diaryを譲り受けたが、最終的にその日記は滅びかけた世界のナツとスズの手に渡っている。
白石 嶺二 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、雪音の元クラスメートで、昨年度までは文芸部に所属していた。鳴海の悪友で、彼と共に数多の悪事を働かせてきたが、実は仲間想いな奴でもある。軽音部との合同朗読劇の成功を目指すために裏で奔走したり、雪音のわがままに付き合わされたりで、意外にも苦労は多い。その要因として千春への恋心があり、消えてしまった千春との再会を目的に、鳴海たちを様々なことに巻き込んでいた。現在は千春への想いを心の中にしまい、上京してゲーム関係の専門学校に通っている。
三枝 響紀 16歳女子
波音高校に通う二年生で、軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”のリーダー。愛する明日香関係のことを含めても、何かとエキセントリックな言動が目立っているが、音楽的センスや学力など、高い才能を秘めており、昨年度に行われた文芸部との合同朗読劇でも、あらゆる分野で多大な(?)を貢献している。
永山 詩穂 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はベース。メンタルが不安定なところがあり、Chapter5では色恋沙汰の問題もあって汐莉と喧嘩をしてしまう。
奥野 真彩 16歳女子
波音高校に通う二年生、汐莉、響紀、詩穂と同じく軽音部のガールズバンド”魔女っ子少女団”に所属している、担当はドラム。どちらかと言うと我が強い集まりの魔女っ子少女団の中では、比較的協調性のある方。だが食に関しては我が強くなる。
双葉 篤志 19歳男子
鳴海、菜摘、明日香、嶺二、雪音と元同級生で、波音高校在学中は天文学部に所属していた。雪音とは幼馴染であり、その縁で”一条会”のメンバーにもなっている。
井沢 由香
波音高校の新一年生で神谷の教え子。Chapter5では神谷に反抗し、彼のことを追い詰めていた。
伊桜 真緒 37歳女子
伊桜京也の妻。旦那とは違い、口下手ではなく愛想良い。
伊桜 陽芽乃 13歳女子
礼儀正しい伊桜京也の娘。海亜中学校という東京の学校に通っている。
水木 由美 52歳女子
鳴海の伯母で、由夏理の姉。幼い頃の鳴海と風夏の面倒をよく見ていた。
水木 優我 男子
鳴海の伯父で、由夏理の兄。若くして亡くなっているため、鳴海は面識がない。
鳴海とぶつかった観光客の男 男子
・・・?
少年S 17歳男子
・・・?
サン 女子
・・・?
ミツナ 19歳女子
・・・?
X 25歳女子
・・・?
Y 25歳男子
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ドクターS 19歳女子
・・・?
シュタイン 23歳男子
・・・?
伊桜の「滅ばずの少年の物語」に出て来る人物
リーヴェ 17歳?女子
奇跡の力を宿した少女。よくいちご味のアイスキャンディーを食べている。
メーア 19歳?男子
リーヴェの世界で暮らす名も無き少年。全身が真っ黒く、顔も見えなかったが、リーヴェとの交流によって本当の姿が現れるようになり、メーアという名前を手にした。
バウム 15歳?男子
お願いの交換こをしながら旅をしていたが、リーヴェと出会う。
盲目の少女 15歳?女子
バウムが旅の途中で出会う少女。両目が失明している。
トラオリア 12歳?少女
伊桜の話に登場する二卵性の双子の妹。
エルガラ 12歳?男子
伊桜の話に登場する二卵性の双子の兄。
滅びかけた世界
老人 男子
貴志鳴海の成れの果て。元兵士で、滅びかけた世界の緋空浜の掃除をしながら生きている。
ナツ 女子
母親が自殺してしまい、滅びかけた世界を1人で彷徨っていたところ、スズと出会い共に旅をするようになった。波音高校に訪れて以降は、掃除だけを繰り返し続けている老人のことを非難している。
スズ 女子
ナツの相棒。マイペースで、ナツとは違い学問や過去の歴史にそれほど興味がない。常に腹ペコなため、食べ物のことになると素早い動きを見せるが、それ以外の時はのんびりしている。
柊木 千春 15、6歳女子
元々はゲームセンターギャラクシーフィールドにあったオリジナルのゲーム、”ギャラクシーフィールドの新世界冒険”に登場するヒロインだったが、奇跡によって現実にやって来る。Chapter2までは波音高校の一年生のふりをして、文芸部の活動に参加していた。鳴海たちには学園祭の終了時に姿を消したと思われている。Chapter6の終盤で滅びかけた世界に行き、ナツ、スズ、老人と出会っている。
Chapter7♯15 √鳴海(菜摘−由夏理)×√菜摘(鳴海)×由夏理(鳴海+風夏−紘)=海の中へ沈んだ如く
◯2095鳴海の夢/ホテル/エントランス(約30年前/昼過ぎ)
外は晴れている
約30年前の高級なホテルのエントランスにいるスーツ姿の鳴海
高級なホテルのエントランスはクラシックでお洒落なデザインをしている
ホテルのエントランスには鳴海以外にも家族連れ、カップルなどの宿泊客や従業員がたくさんいる
ホテルのエントランスにはソファがたくさんあり、座って休んでいる人がいる
ホテルのエントランスにはエレベーターが3機ある
ホテルのエントランスにはフロントがあり、フロントにはたくさんの従業員がいる
ホテルのフロントではチェックインやチェックアウトをしているたくさんの宿泊客がいる
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
周囲を見ている鳴海
鳴海「(周囲を見ながら 声 モノローグ)5度目の夢だ・・・(少し間を開けて)きっと母さんと父さんがいる・・・どこだ・・・どこにいる・・・」
鳴海はホテルのフロントを見る
鳴海「(ホテルのフロントを見て)ここはホテルか・・・」
鳴海はホテルのフロントを見るのをやめる
自分の服装を見る鳴海
鳴海「(自分の服装を見て)なるほど・・・」
鳴海は自分の服装を見るのをやめる
ホテルのフロントに行く鳴海
鳴海「えっと・・・け、結婚式に来たんですけど・・・」
ホテルの従業員1「貴志紘様、貴志由夏理様のご結婚式ですか?」
鳴海「そ、そうです!!」
ホテルの従業員1「披露宴場は13階に・・・」
鳴海「(ホテルの従業員の話を遮って)ど、どうも!!」
鳴海は走って13階にある結婚式場に行くためのエレベーターに向かう
◯2096鳴海の夢/ホテル/披露宴場前廊下(約30年前/昼過ぎ)
約30年前のホテルの13階披露宴場前廊下にいるスーツ姿の鳴海
ホテルの13階廊下には披露宴場の大きな扉があり、扉の前にはブライダルスタッフ3とブライダルスタッフ4が立っている
ホテルの13階廊下にある大きな扉の前には披露宴場の案内板が立っており、筆字で”貴志家 水木家 卸両家様 結婚披露宴会場”と書かれてある
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
鳴海は隠れながらホテルの13階廊下にある大きな扉を見ている
鳴海「(隠れてホテルの13階廊下にある披露宴場の大きな扉を見ながら)こ、ここまで来たのは良いが・・・どうやって侵入するか・・・姉貴たちの結婚式と違って強引に押し通して入るのは無理があるよな・・・」
鳴海は隠れてホテルの13階廊下にある披露宴場の大きな扉を見ながら考え込む
少しの間隠れてホテルの13階廊下にある披露宴場の大きな扉を見ながら考え続ける鳴海
鳴海「(隠れてホテルの13階廊下にある披露宴場の大きな扉を見なが)よ、よし・・・」
鳴海は隠れながらホテルの13階廊下にある披露宴場の大きな扉を見るのをやめる
隠れるのをやめてブライダルスタッフ3とブライダルスタッフ4がいる披露宴場の大きな扉のところに行く鳴海
鳴海「す、すみません・・・む、向こうに・・・あ、悪霊を見たって人が・・・」
ブライダルスタッフ3とブライダルスタッフ4は顔を見合わせる
鳴海「ぎゃ、ギャラクシーフィールドの新世界冒険ってゲームに登場するキャラクターに悪霊ってのがいるんですけど・・・そ、それを見たって人が向こうで暴れてて・・・」
少しの沈黙が流れる
ブライダルスタッフ3、ブライダルスタッフ4は顔を見合わせるのをやめる
鳴海「い、いや、お、俺は悪霊なんて見てないっすよ、た、ただ向こうで暴れてる奴がいるから、そ、そいつを止めて欲しくて・・・」
再び沈黙が流れる
ブライダルスタッフ3「招待状をお忘れですか?」
鳴海「あー・・・な、何で招待状のことを・・・?」
ブライダルスタッフ4「先ほどもあなたのように、招待状を忘れたことを隠そうとして変な話をした方がいらっしゃったので」
少しの沈黙が流れる
鳴海「そ、そうです、わ、忘れました」
◯2097鳴海の夢/ホテル/披露宴場(約30年前/昼過ぎ)
約30年前のホテルの中にある披露宴場にいるスーツ姿の鳴海、水色のウェディングドレスを着た20歳の由夏理、タキシードを着た20歳の紘、ピンクのパーティードレスを着た20歳のすみれ、スーツを着た20歳の潤
ホテルの中にある披露宴場は広く、お洒落に飾り付けがされている
ホテルの中の披露宴場にはグランドピアノが置いてある
ホテルの中の披露宴場には大きなテーブルがあり、ビュッフェ形式でケーキ、ゼリー、パフェ、ドーナツ、アイスクリーム、フルーツ、チョコレートファウンテンなどのたくさんのスイーツと、ワインやシャンパンなどの酒類が並んでいる
ホテルの中の披露宴場にはたくさんのテーブルと椅子がある
ホテルの中の披露宴場には鳴海たちの他にもたくさんの着飾った人たちがいる
ホテルの中の披露宴場にいる人たちはテーブルに向かい椅子に座って近くの人と喋ったり、ビュッフェにあるスイーツやお酒を食べたり飲み歩いたりしている
ホテルの中の披露宴場には新郎新婦のためのテーブルと椅子が用意されており、由夏理と紘はテーブルに向かって椅子に座っている
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
潤は古い一眼レフカメラのファインダーを覗き、テーブルに向かって椅子に座っている由夏理と紘のことを撮ろうとしている
潤の横にはすみれがいる
潤の古い一眼レフカメラで撮られそうになっている由夏理のことをボーッと見ている鳴海
すみれ「はいはい!!二人とも撮るよ!!笑ってね!!」
鳴海と潤の古い一眼レフカメラで撮られそうになっている由夏理の目が合う
鳴海は潤の古い一眼レフカメラで撮られそうになっている由夏理と目が合ったまま、由夏理に向かって軽く手を振る
潤の古い一眼レフカメラで撮られそうになったまま、鳴海のことを無視して鳴海から顔を背ける由夏理
潤は古い一眼レフカメラのファインダーを覗いたまま由夏理が鳴海から顔を背けた瞬間、由夏理と紘のことを撮る
古い一眼レフカメラのファインダーを覗くのをやめる潤
潤「(古い一眼レフカメラのファインダーを覗くのをやめて)おい由夏理!!顔を逸らすな!!」
由夏理は鳴海から顔を背けるのをやめる
由夏理「(鳴海から顔を背けるのをやめて少し笑って)ご、ごめんごめん、ちょっとボーッとしちゃってさ」
鳴海は由夏理に向かって振っていた手をゆっくり下ろす
紘「考えごとか、由夏理」
由夏理「ん、別に何でもないよ」
少しの沈黙が流れる
由夏理「(少し笑って)どうしたの旦那さん、ムッとした顔をしちゃってさ」
紘「ムッとなんかしていない」
由夏理「(少し笑いながら)ほらほら笑ってよ、せっかくの記念写真なんだぞ」
紘「十分笑っているつもりだ」
由夏理は紘の口角を無理矢理両手で上げる
由夏理「(紘の口角を無理矢理両手で上げて少し笑いながら)この方が良い笑顔だよ紘」
紘「(由夏理に口角を無理矢理上げられて)そうか・・・?」
由夏理「(紘の口角を無理矢理両手で上げたまま少し笑って)うん、めちゃくちゃ完璧」
すみれ「潤くん、もう一枚撮りましょう?」
潤「だな」
潤は古い一眼レフカメラのファインダーを覗く
紘の口角を無理矢理両手で上げるのをやめる由夏理
由夏理「(紘の口角を無理矢理両手で上げるのをやめて)キープスマイリングね?紘」
紘「分かった」
鳴海は変わらず潤の古い一眼レフカメラで撮られそうになっている由夏理のことを見ている
古い一眼レフカメラのファインダーを覗いたまま紘と由夏理のことを撮る潤
潤が撮った写真は、◯2088、◯2094の鳴海の部屋にあったフレーム入りの由夏理と紘の写真と完全に同じ
すみれ「どう潤くん、上手く撮れた?」
潤を古い一眼レフカメラのファインダーを覗くのをやめる
潤「(古い一眼レフカメラのファインダーを覗くのをやめて)おう」
由夏理「プリントするの忘れないでよー」
潤「親友夫婦の写真を忘れるか」
由夏理「(少し笑って)それならよろしい」
潤「紘、俺たちケーキを食って来て良いよな」
紘「好きにしろ、いちいち許可を求めず適当に食べ尽くして来い」
潤「じゃあそうさせてもらうぜ。すみれ、気になるって言ってたやつを確保しに行くか」
すみれ「でも写真は?」
由夏理「私たちのことは良いからさ、楽しんでおいでよすみれ」
紘「うん・・・ありがとう二人とも、また後でね」
由夏理は頷く
由夏理と紘から離れて行くすみれと潤
少しの沈黙が流れる
紘「由夏理」
由夏理「ん・・・?」
紘「仕事関係の人に挨拶をしに行くから、お前も一緒に・・・」
由夏理「(紘の話を遮って少し笑って)私がいても邪魔になるだけでしょー?」
再び沈黙が流れる
由夏理「(少し笑いながら)行って良いよ紘」
紘「すまない・・・こんな時まで仕事を・・・」
由夏理「(少し笑いながら)しょうがないって、偉い人を待たせるわけにはいかないんだしさ」
少しの沈黙が流れる
紘「戻る時に美味そうな菓子を摘んで来るから、それを一緒に食べよう由夏理」
由夏理は紘の頭をポンと叩く
由夏理「(紘の頭をポンと叩いて少し笑いながら)菓子って紘はお爺ちゃんか」
紘「由夏理とは同い年だ」
由夏理「じゃあスイーツって言えるでしょー」
紘「スイーツか・・・覚えておくよ」
由夏理「うん」
紘は立ち上がる
紘「(立ち上がって)すぐ戻る」
由夏理「(少し笑って)ごゆっくり」
再び沈黙が流れる
紘は由夏理に何かを言おうとする
由夏理に何かを言おうとするがやめる紘
紘は由夏理から離れて行く
由夏理の周りには人がいなくなる
紘が由夏理から離れて行ったのを確認し、由夏理のところに行こうとする鳴海
すみれ「あれ・・・?キョドキョド・・・?」
鳴海「えっ?」
鳴海は振り返る
鳴海の後ろにはチョコレートケーキを持ったすみれと潤がいる
鳴海「す、すみれさん」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)なんだお前も来てたのか、いつかの紘の代理」
鳴海「ま、まあな」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)ずいぶん久しぶりだねキョドキョド、2年前にボウリングをして以来?」
鳴海「あー・・・そ、そうでしたっけ・・・?」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)覚えてねえのかよ、ジジイみたいな記憶力だな」
鳴海「じ、時間の経過に疎いんだ」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)私たちキョドキョドに会いたくて探していたんだよ」
鳴海「えっ・・・?俺を・・・?」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)うん」
潤「2年前、てめえが連絡先も言わず突然消えたりするからだぞ」
◯2098◯1973の回想/鳴海の夢/帰路(約30年前/夜)
空は曇っている
約30年前の道を歩いている鳴海
家に帰っている18歳のすみれと同じく18歳の潤
鳴海はすみれたちに付き合っている
すみれは波音高校の制服を着ており、潤は作業服を着ている
一軒家、アパート、車などのデザインが全て古い
鳴海は俯いている
話をしている鳴海たち
鳴海「(俯いたまま)お、俺の家はあっちなんで・・・」
すみれ「えっ・・・?それって来た方向ですよ」
鳴海「(俯いたまま)はい・・・」
潤「お前、紘たちと同じ方じゃねえか」
少しの沈黙が流れる
鳴海は顔を上げる
鳴海「(顔を上げて)す、すみませんもう帰らないと!!さ、さようなら!!」
鳴海はすみれと潤に背中を向けて歩いて来た方に走り出す
すみれ「きょ、キョドキョド!!」
鳴海はすみれの声を無視して走り続ける
◯2099回想戻り/鳴海の夢/ホテル/披露宴場(約30年前/昼過ぎ)
約30年前のホテルの中にある披露宴場にいるスーツ姿の鳴海、水色のウェディングドレスを着た20歳の由夏理、タキシードを着た20歳の紘、ピンクのパーティードレスを着た20歳のすみれ、スーツを着た20歳の潤
ホテルの中にある披露宴場は広く、お洒落に飾り付けがされている
ホテルの中の披露宴場にはグランドピアノが置いてある
ホテルの中の披露宴場には大きなテーブルがあり、ビュッフェ形式でケーキ、ゼリー、パフェ、ドーナツ、アイスクリーム、フルーツ、チョコレートファウンテンなどのたくさんのスイーツと、ワインやシャンパンなどの酒類が並んでいる
ホテルの中の披露宴場にはたくさんのテーブルと椅子がある
ホテルの中の披露宴場には鳴海たちの他にもたくさんの着飾った人たちがいる
ホテルの中の披露宴場にいる人たちはテーブルに向かい椅子に座って近くの人と喋ったり、ビュッフェにあるスイーツやお酒を食べたり飲み歩いたりしている
ホテルの中の披露宴場には新郎新婦のためのテーブルと椅子が用意されており、由夏理は一人テーブルに向かって椅子に座っている
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
紘は由夏理から離れたところで数人のスーツ姿の男たちと話をしている
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
すみれと潤はチョコレートケーキを持っている
すみれと潤と話をしている鳴海
鳴海「か、帰るって言っただろ?」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)あんなのはただの逃亡だ」
少しの沈黙が流れる
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)私たち、キョドキョドが来ていないかと思って、時々エカクラやゾラボに探しに行ったりしたんだけど・・・」
鳴海「す、すみません・・・い、忙しいことが多くてそっち側にはあんまり・・・」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)そっか・・・それなら仕方ないね」
再び沈黙が流れる
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)おい」
鳴海「な、何だ」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)てめえ、さっきからすみれの体をジロジロ見過ぎだぞ、通報されてえのか」
少しの沈黙が流れる
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)黙ってねえで何とか言え」
鳴海「あ、あんた・・・変わらないんだな・・・」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)2年越しにいきなり現れておいて変わらねえだと?」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)変わらないのは潤くんの良いところであり悪いところです」
鳴海「そ、そうっすね・・・」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)俺は変わらずにずっとすみれのことを愛してるぜ、だから早く結婚を・・・」
潤は話を続ける
一人テーブルに向かって椅子に座っている由夏理のことを見る鳴海
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)結婚はもう少ししてからね、潤くん」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)もうとっくに少ししただろ」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)じゃあもう少しだけ待ってみましょうか」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)俺は何を待ちゃあ良いんだよすみれ」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)タイミング・・・?」
鳴海は変わらず一人テーブルに向かって椅子に座っている由夏理のことを見ている
由夏理の元に紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子やって来る
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)てめえは俺たちのタイミングについてどう思うんだ、紘の代理」
鳴海はテーブルに向かって椅子に座っている由夏理のことを見るのやめる
鳴海「(テーブルに向かって椅子に座っている由夏理のことを見るのやめて)た、タイミング?」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)うん、結婚のタイミング」
鳴海「そ、そういうのはお二人が決めたら良いんじゃないっすかね・・・?」
再び沈黙が流れる
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)こいつ、何も考えてねえな」
鳴海「か、考えてるぞ!!」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)キョドキョド、前は彼女いるって言っていたよね、別れちゃったの?」
鳴海「わ、別れてないっすよ!!」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)なら今日は来てる?」
鳴海「き、来てないです・・・」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)結婚とか考えてねえのかよ」
鳴海「も、もちろん考えてるけどさ・・・た、タイミングとかあるだろ」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)お前もタイミングか」
鳴海「あ、ああ、た、タイミングは大事だからな」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)そういうことですよ、潤くん」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)いつがベストタイミングなのか全然分からねえ」
鳴海は再びテーブルに向かって椅子に座っている由夏理のことを見る
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子と話をしている由夏理
由夏理は立ち上がる
由夏理と紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子はどこかに向かい始める
変わらず話をしているすみれと潤
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)今だって時が結婚の時だから、逃さないようにね」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)今だって時は今じゃねえか」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)今ではないよ、今日は由夏理と紘くんの式だし」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)じゃあ明日だな」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)それも違うと思います」
潤「(チョコレートケーキを持ったまま)ならいつだ」
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま)本当の意味で、私たちが一緒にいるべき時になったら結婚出来るよ、キョドキョドもそう思うでしょう?」
鳴海はどこかに向かっている由夏理と紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子のことを見ている
由夏理と紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子は披露宴場から出て行く
すみれ「(チョコレートケーキを持ったまま不思議そうに)キョドキョド?」
鳴海「お、俺ちょっとトイレに!!」
鳴海は走って披露宴場の大きな扉に向かう
チョコレートケーキを持ったまま走って披露宴場の大きな扉に向かっている鳴海のことを見る潤
潤「(チョコレートケーキを持ったまま鳴海のことを見て)あいつ走ってばっかだな」
◯2100鳴海の夢/ホテル/13階階段(約30年前/昼過ぎ)
約30年前のホテルの13階階段にいるスーツ姿の鳴海、水色のウェディングドレスを着た由夏理、紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
階段の踊り場で話をしている由夏理と紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子
階段の踊り場には大きな窓があり、地上が見える
鳴海は階段の少し上の方にいる
隠れながら由夏理と紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子のことを見ている鳴海
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子「また得意の嘘ですか」
由夏理「嘘なんかついてないって。私じゃないよ、君を招待しようって言ったのは」
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子「紘先輩が私を呼んだと?由夏理先輩じゃなくて紘先輩が?」
由夏理「うん。私は別に式にはこだわってなかったし、やらなくても良かったんだけどさ、でも紘が・・・」
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子は話途中の由夏理の頬を思いっきり平手で殴る
少しの沈黙が流れる
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子に思いっきり平手で殴られた由夏理の頬が赤くなっている
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子「私が紘先輩のことを好きだと知っててわざと呼んだんでしょ」
由夏理「だから違うって・・・」
再び沈黙が流れる
由夏理「(小声でボソッと)そんなに紘のことが好きなら自分から想いを伝えに行けば良いじゃん・・・」
◯2101Chapter6◯1110の回想/波音高校体育館/クリスマスパーティー会場(夜)
波音高校の体育館にいる鳴海、汐莉、響紀、詩穂、真彩、神谷
体育館はクリスマスの装飾がされ、ステージにはピアノとクリスマスツリーが置いてある
ピアノにはマイクがつけられてある
体育館の壁沿いには大きなテーブルが並べられてあり、その上にはチキン、ピラフ、キッシュ、サラダ、ローストビーフ、クリスマスケーキ、クッキー、チョコレート、ポテトチップス、ジュース類などのたくさんの飲食物と取り皿、スプーン、フォークが置いてある
鳴海たちの他にもたくさんの着飾った生徒たちが体育館の中におり、双葉や一年生の細田周平の姿も確認出来る
鳴海と汐莉は飲食物が置いてあるテーブルの近くにいる
鳴海はスーツ姿で袖をまくっており、スーツの下に着ているワイシャツの裾をズボンから出している
響紀は鳴海たちから離れたところに一人でいる
響紀とは別のところで詩穂と真彩が細田を含む数人の男子生徒たちと楽しそうに話をしている
汐莉は紺色の、詩穂は水色の、真彩はベージュ色のパーティー用ドレスをそれぞれ着ている
響紀はタキシードを着ている
双葉は一、二年生の女子生徒たちと話をしている
双葉と細田はスーツを着ている
生徒たちは友人同士で喋ったり、食事を取ったりしていて、体育館の中が騒がしくなっている
神谷や教師たちが体育館の隅で生徒たちのことを監視している
体育館の中のスピーカーからはクリスマスソングが流れている
鳴海は汐莉の腕を掴んでいる
鳴海の手を無理矢理引き離し、鳴海から離れる汐莉
鳴海「好きって想いは自分から伝えに行かなきゃ拾って貰えな・・・」
汐莉「(鳴海の話を遮って大きな声で)私の気持ちを弄ばないで!!!!」
騒がしかった体育館の中が一瞬、静かになる
響紀、詩穂、真彩、双葉、細田、神谷などを含む大勢の人が鳴海と汐莉のことを見る
汐莉は泣いている
◯2102回想戻り/鳴海の夢/ホテル/13階階段(約30年前/昼過ぎ)
約30年前のホテルの13階階段にいるスーツ姿の鳴海、水色のウェディングドレスを着た由夏理、紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
階段の踊り場で話をしている由夏理と紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子
階段の踊り場には大きな窓があり、地上が見える
鳴海は階段の少し上の方にいる
隠れながら由夏理と紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子のことを見ている鳴海
階段の踊り場にある大きな窓には、隠れながら由夏理と紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子のことを見ている鳴海の姿が反射して映っている
由夏理「(小声でボソッと)私に当たったって紘はさ・・・」
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子は涙を流す
由夏理「紘は涙を嫌うよ、君もそれくらい知ってるでしょ」
少しの沈黙が流れる
由夏理は階段の踊り場にある大きな窓に鳴海の姿が反射していることに気付く
階段の踊り場にある大きな窓越しに鳴海と由夏理の目が合う
再び沈黙が流れる
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子は涙を流しながら、階段の踊り場にある大きな窓に鳴海の姿が反射していることに気付く
涙を流しながら鳴海がいる方を見る紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子
鳴海は慌ててしゃがんで紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子に見られないように顔を隠す
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子は手で涙を拭う
手で涙を拭い、階段を登ってしゃがんでいる鳴海のところに行く紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子はしゃがんでいる鳴海の前で立ち止まる
鳴海はしゃがんだまま紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子から顔を背ける
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子「(顔を背けてしゃがんでいる鳴海の前で立ち止まったまま)死ね」
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子は顔を背けてしゃがんでいる鳴海から離れ階段を降りて行く
階段を降りて行く途中で踊り場にいる由夏理とすれ違う紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子
紺色のパーティードレスを着た高校生くらいの女子はすれ違い様に由夏理を睨みつけて、階段を降りて行く
少しの沈黙が流れる
階段でしゃがんでいる鳴海のところにやって来る由夏理
由夏理「(階段でしゃがんでいる鳴海のところにやって来て)君、こんなところで何してるの」
鳴海「(しゃがんだまま)い、いや・・・まあ・・・色々・・・」
由夏理「色々、ね」
鳴海「あ、ああ」
由夏理はしゃがんでいる鳴海に手を差し伸ばす
差し伸ばして来ている由夏理の手を立ち上がりながら取ろうとする鳴海
由夏理は鳴海が差し伸ばしている手を取ろうとした瞬間、手を引っ込める
由夏理の手を取り損ねてバランスを崩し階段から落ちそうになる鳴海
鳴海は階段から落ちる寸前で慌てて手すりに掴まる
鳴海「(階段から落ちる寸前で慌てて手すりに掴まって)な、何するんだよ!!危ないだろ!!」
由夏理「君は盗み聞きっていう褒められない行為をしたし、おまけに嘘もついたよね?」
鳴海は手すりを離す
鳴海「(手すりを離して)う、嘘ってなんだよ」
由夏理「近々会えるって言ってたじゃん」
鳴海「い、忙しかったんだ」
由夏理「忙しいって何がさ」
鳴海「そ、それは・・・い、いろ・・・」
由夏理「(鳴海の話を遮って)色々はもう無しだよ少年」
少しの沈黙が流れる
鳴海「し、仕事とか・・・」
由夏理「君、どこで仕事してるの?」
鳴海「な、波音町全土だ」
再び沈黙が流れる
鳴海「ち、近々って約束は破ったけど、ちゃ、ちゃんと会いに来たから良いじゃないか」
少しの沈黙が流れる
由夏理「しょうがないからそういうことにしといてあげる」
鳴海「う、上からだな・・・」
由夏理「ん?何か言った?」
鳴海「い、いや・・・」
由夏理は水色のウェディングドレスのスカートをまくり始める
水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背ける鳴海
鳴海「(慌てて水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背けて)お、おい・・・な、何してるんだよ・・・」
由夏理「(水色のウェディングドレスのスカートをまくりながら)タバコ」
鳴海「(水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背けたまま)は・・・?」
由夏理「(水色のウェディングドレスのスカートをまくりながら)ドレスって暑いし動き辛し不便なんだよね〜・・・」
鳴海「(水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背けたまま)そ、そうなのか・・・」
由夏理「(水色のウェディングドレスのスカートをまくりながら)こっち向いても大丈夫だよ少年、見えても良いやつ履いてるんだし」
鳴海「(水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背けたまま)そ、そういう問題じゃないだろ・・・」
由夏理は水色のウェディングドレスのスカートをまくり、靴下の中からタバコの箱と使い捨てライターを取り出す
水色のウェディングドレスのスカートをまくるのをやめる由夏理
由夏理「(水色のウェディングドレスのスカートをまくるのをやめて)はい、少年もう良いよ」
鳴海は由夏理から顔を背けるのをやめる
由夏理「君さ、ライター持ってる?」
鳴海「も、持ってねえよ・・・」
由夏理はタバコの箱からタバコを一本取り出す
タバコを口に咥える由夏理
鳴海「け、結婚式だぞ」
由夏理「(タバコを咥えたまま)だからこんなところで吸おうとしてるんじゃん」
鳴海「す、吸わないって手はないのか」
由夏理「(タバコを咥えたまま)んー、ない」
由夏理はタバコを咥えたまま使い捨てライターを使ってタバコに火を付けようとする
由夏理「(タバコを咥えたまま使い捨てライターを使って火を付けようとして)このライター、なんか使いにくいんだよねー、紘は一発で付けてくれるんだけどさ」
由夏理はタバコを咥えたまま何度も使い捨てライターの着火レバーを押しているが、なかなかライターの火が付かない
鳴海「貸してくれ」
由夏理はタバコを咥えたまま使い捨てライターの火を付けようとするのをやめる
由夏理「(タバコを咥えたまま使い捨てライターの火を付けようとするのをやめて)お、君がやってくれるのかい?」
鳴海「で、出来ることをな」
由夏理はタバコを咥えたまま使い捨てライターを鳴海に差し出す
使い捨てライターをタバコを咥えている由夏理から受け取る鳴海
鳴海は使い捨てライターの着火レバーを何度か押す
鳴海が使い捨てライターの着火レバーを何度か押すと、使い捨てライターの火が付く
鳴海「(使い捨てライターの火を付けたまま)ほら、付いたぞ」
由夏理「(タバコを咥えたまま)ありがと少年」
由夏理は鳴海が持っている使い捨てライターに顔を近付け、咥えているタバコに火を付ける
咥えているタバコに火を付けて、鳴海が持っている使い捨てライターから顔を離す由夏理
鳴海は使い捨てライターの着火レバーを押すのをやめる
タバコの煙を吐き出す由夏理
由夏理「(タバコの煙を吐き出して)器用なんだね、君」
鳴海「ま、まあな」
鳴海は使い捨てライターをタバコを咥えている由夏理に差し出す
由夏理「(タバコを咥えたまま使い捨てライターを鳴海に差し出されて)2年ぶりだけど、元気してた?」
鳴海「(使い捨てライターをタバコを咥えている由夏理に差し出したまま)あ、ああ」
由夏理はタバコを咥えたまま使い捨てライターを鳴海から受け取る
鳴海「あ、あなたはどうだったんだ?」
由夏理「(タバコを咥えたまま)別にまあまあだよ、少年」
鳴海「げ、元気だったのか?」
由夏理「(タバコを咥えたまま)それなりにはね」
再び沈黙が流れる
鳴海「さ、さっきの奴は・・・」
由夏理「(タバコを咥えたまま)後輩ちゃん。高校の頃、時々撮影とか機材のレンタルを手伝ってくれた子でさ、良い子なんだよ」
鳴海「どこが良い子なんだ・・・」
由夏理「(タバコを咥えたまま少し笑って)私はずっと彼女のことを友達だと思ってたんだって。(少し間を開けて)残念ながら・・・一方的だったわけだけどさ」
◯2103Chapter6◯1135の回想/波音高校休憩所(朝)
波音高校の休憩所にいる鳴海と汐莉
波音高校の休憩所には自販機、丸いテーブル、椅子が置いてあり、小さな広場になっている
丸いテーブルを挟んで向かい合って椅子に座っている鳴海と汐莉
汐莉の目の前にはぶどうジュースが置いてある
波音高校の休憩所には鳴海と汐莉以外生徒はいない
話をしている鳴海と汐莉
鳴海「俺はお前の先輩だが・・・友達でもあるはずだ」
汐莉「友達にしては私のことを泣かせ過ぎじゃないですか」
◯2104回想戻り/鳴海の夢/ホテル/13階階段(約30年前/昼過ぎ)
約30年前のホテルの13階階段にいるスーツ姿の鳴海と水色のウェディングドレスを着た由夏理
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
階段の踊り場には大きな窓があり、地上が見える
由夏理の頬は赤くなっている
タバコを吸っている由夏理
由夏理は使い捨てライターとタバコの箱を持っている
深くため息を吐き出す鳴海
由夏理「(タバコを咥えたまま)なんか嫌なことでも思い出したの?少年」
鳴海「い、一緒に部活をやった後輩のことを考えてたんだ」
由夏理「(タバコを咥えたまま)少年の後輩か・・・可愛くて生意気ってところ?」
鳴海「そうだな・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「そ、それにしてもいつまでここにいるつもりだ?」
由夏理「(タバコを咥えたまま)さあ、特に考えてないよ」
鳴海「そ、そんなんで良いのか・・・?」
由夏理「(タバコを咥えたまま)少年、私を誰だと思ってるの?」
鳴海「き、貴志由夏理だと思ってるが・・・」
由夏理「(タバコを咥えたまま少し笑って)それ以前に私は花嫁なんだよ」
鳴海「だ、だから何だ」
由夏理「(タバコを咥えたまま少し笑って)花嫁っていうのはどんなことをしても許される存在じゃん?つまりさ、私は好きなようにタバコを吸って、お酒を飲んで、歌って、踊って過ごして良いわけだよ」
再び沈黙が流れる
由夏理はタバコの煙を吐き出す
由夏理「(タバコの煙を吐き出して)冗談だって少年」
鳴海「ほ、本気っぽかったぞ」
由夏理「(タバコを咥えたまま)君は相変わらずすぐ騙されるタイプだよね。気をつけないと、いつか痛い目に遭うぞ」
鳴海「よ、余計なお世話だ」
由夏理「(タバコを咥えたまま少し笑って)少年は危なっかしいからさ、つい余計なお小言を言いたくなるんだよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「色々・・・大丈夫だよな・・・?」
由夏理「(タバコを咥えたまま)あ、今の言い方、紘に似てた」
鳴海「だ、大丈夫かそうじゃないかで答えてくれ」
由夏理「(タバコを咥えたまま)どうして少年がそんなことを聞くのさ」
鳴海「あ、あなたのことが心配なんだ」
由夏理「(タバコを咥えたまま)君だって丸々2年間姿をくらまして、心配をかけさせたくせに」
鳴海「い、言っとくけど俺はめちゃくちゃ元気だぞ」
由夏理「(タバコを咥えたまま)じゃあ私もめちゃくちゃ元気だしー」
鳴海「ひ、人が本気で心配してるのにその態度は何だ」
再び沈黙が流れる
由夏理「(タバコを咥えたまま)分かったよ少年、心に留めておくからさ、君が私のことを気にかけてくれてるって」
由夏理はタバコの煙を吐き出す
由夏理「(タバコの煙を吐き出して)さあ、そろそろ戻ろっか」
鳴海「お、おい」
由夏理「(タバコを咥えたまま)ん・・・?」
鳴海「お、俺、いつでもあなたの話を聞くからな、な、何か困ってることがあればすぐに言ってくれ」
由夏理「(タバコを咥えたまま少し笑って)いつでも?」
鳴海「あ、いや・・・き、聞ける時に・・・」
由夏理「(タバコを咥えたまま少し笑って)君、どんな時に会っても本当に優しいよね。でもその優しさはさ、お姉さんが少年の立場だったら別の人のために取っておくよ」
少しの沈黙が流れる
由夏理はタバコを口に咥えるのをやめる
タバコの火を階段の壁で消す由夏理
由夏理は吸い殻を適当に捨てる
水色のウェディングドレスのスカートをまくり始める由夏理
鳴海は慌てて水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背ける
鳴海「(慌てて水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背けて)な、何でポケットのあるドレスを選ばなかったんだ」
由夏理「(水色のウェディングドレスのスカートをまくりながら少し笑って)ポケット付きのは良いデザインじゃなかったんだよねー」
鳴海「(水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背けたまま)わ、わがままを言うなよ」
由夏理「(水色のウェディングドレスのスカートをまくりながら少し笑って)だって私花嫁だし?」
鳴海「(水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背けたまま)だ、だからって何でも好きなようにして良いわけじゃないだろ」
由夏理「(水色のウェディングドレスのスカートをまくりながら)その辺は大人としてしっかり判断するから許してよ少年」
鳴海「(水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背けたまま)大人って感じはしないけどな・・・」
由夏理「(水色のウェディングドレスのスカートをまくりながら)今はまだでも、いずれ大人になるって」
鳴海「(水色のウェディングドレスのスカートをまくっている由夏理から顔を背けたまま)立派な大人にか・・・?」
由夏理「(水色のウェディングドレスのスカートをまくりながら)立派ってのはちょっと難しいかなー」
由夏理は水色のウェディングドレスのスカートをまくりながら、靴下の中にタバコの箱と使い捨てのライターをしまう
水色のウェディングドレスのスカートをまくるのをやめる由夏理
由夏理「(水色のウェディングドレスのスカートをまくるのをやめて)よし、とりあえず立派な花嫁は完成だ」
鳴海は由夏理から顔を背けるのをやめる
鳴海「(由夏理から顔を背けるのをやめて)は、花嫁は立派で当然だろ」
由夏理「ウェディングドレスに包まれた人間を目の前にして、少年の言葉はたったのそれだけか・・・」
鳴海「あ、ああ」
由夏理「(残念そうに)お姉さんは悲しいよ・・・君はもっと気の利いたことを言えるのかと思ってたのにさ・・・」
鳴海「ふ、二日連続で花嫁を見てるからな・・・残念ながら気の利いたセリフはもう使い切ったんだ」
由夏理「少年、昨日も誰かの結婚式に参加してたの?」
鳴海「ま、まあな、と言っても特に何も出来ずに終わったが・・・」
由夏理は歩き出す
由夏理について行く鳴海
由夏理「昨日のリベンジも兼ねて今から余興でもするかい?歓迎するよ少年」
鳴海「か、勘弁してくれ・・・(少し間を開けて)だ、大体出来なかったってのは、それこそ気の利いたことを全く言えなかったとかそっち系だ」
由夏理「花嫁に気を使えなかったわけか・・・君は頭が不器用そうだし、素直に思ったことを口にした方が良いよ」
鳴海「あ、頭が不器用って・・・しかも素直に言って成功したことは一度もないんだが・・・」
由夏理「成功とか失敗を気にするんじゃなくてさ、正直に心の内側にある言葉をぶちまける方が少年には合ってるんじゃない?」
鳴海「そういう考えが大事故の元であり南を怒らせる原因なんだよ・・・」
由夏理「南って、少年の後輩ちゃん?」
鳴海「あ、ああ」
由夏理「私とさっきの子みたいにならないようにね少年、後輩ちゃんだって、友達になれるに越したことはないからさ」
◯2105鳴海の夢/ホテル/披露宴場(約30年前/昼過ぎ)
約30年前のホテルの中にある披露宴場に戻って来たスーツ姿の鳴海と水色のウェディングドレスを着た由夏理
ホテルの中にある披露宴場にはタキシードを着た紘、ピンクのパーティードレスを着たすみれ、スーツを着た潤がいる
ホテルの中にある披露宴場は広く、お洒落に飾り付けがされている
ホテルの中の披露宴場にはグランドピアノが置いてある
ホテルの中の披露宴場には大きなテーブルがあり、ビュッフェ形式でケーキ、ゼリー、パフェ、ドーナツ、アイスクリーム、フルーツ、チョコレートファウンテンなどのたくさんのスイーツと、ワインやシャンパンなどの酒類が並んでいる
ホテルの中の披露宴場にはたくさんのテーブルと椅子がある
ホテルの中の披露宴場には鳴海たちの他にもたくさんの着飾った人たちがいる
ホテルの中の披露宴場にいる人たちはテーブルに向かい椅子に座って近くの人と喋ったり、ビュッフェにあるスイーツやお酒を食べたり飲み歩いたりしている
ホテルの中の披露宴場には新郎新婦のためのテーブルと椅子が用意されている
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
紘は数人のスーツを着た男たちと話をしている
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
すみれと潤はビュッフェの近くで話をしている
紘が話をしている数人のスーツ姿の男たちの中の一人を見ている鳴海
鳴海「(紘が話をしている数人のスーツ姿の男たちの中の一人を見たまま)あいつ・・・どこかで・・・」
由夏理「少年、すみれと潤には会ったの?良かったら連れて来るよ」
鳴海「(紘が話をしている数人のスーツ姿の男たちの中の一人を見たまま)ああ」
由夏理はビュッフェの近くで話をしているすみれと潤のところに行く
紘が話をしている数人のスーツ姿の男たちの中の一人を見るのをやめる鳴海
鳴海「(紘が話をしている数人のスーツ姿の男たちの中の一人を見るのをやめて)あ、いや、会ってはいたんだ・・・ってもう遅いか・・・」
由夏理はビュッフェの近くでビュッフェの近くですみれと潤に声をかけている
少しの沈黙が流れる
すみれと潤を連れて鳴海のところに戻って来る由夏理
由夏理「(鳴海のところに戻って来て)さあさあ感動の再会だよ!!」
潤「何だまたこいつか」
すみれ「20分ぶりの再会だね、キョドキョド」
鳴海「は、はい」
由夏理「えっ、会ってなかったんじゃないの?」
鳴海「じ、実はさっき話をだな・・・」
由夏理「少年、また私を騙したんだ?」
鳴海「ひ、人聞きの悪いことを言わないでくれよ」
潤「確かにこいつは如何にも人を騙すって顔面をしてるよな由夏理、だが俺はこうも思うぞ、こんな奴に騙されるのがいけねえってな」
鳴海・由夏理「おい」
すみれ「由夏理とキョドキョド、2年ぶりの再会とは思えないほど良いコンビネーションだね」
由夏理「少年とは謎に馬が合うんだよー、謎に」
鳴海「謎を強調するな・・・」
潤「それよりもお前、旦那のことは良いのかよ」
由夏理「お前って誰のことさ」
潤「そこに突っ立ってる花嫁のことだ、(小声で)おめえの男はあんな連中と仲良くしてるんだぞ」
由夏理「し、仕事の話をしてるだけだろうし、別に良いよ」
少しの沈黙が流れる
鳴海はチラッと紘のことを見る
変わらず数人のスーツ姿の男たちと話をしている紘
潤「俺が連れ戻してや・・・」
由夏理「(潤の話を遮って)い、良いって言ったじゃん」
再び沈黙が流れる
由夏理「わ、私たちのことは私たちでやるからさ、潤」
潤「しょうがねえ奴らだな・・・」
由夏理「ご、ごめんごめん」
すみれ「それでも・・・助けが必要な時はいつでも言って由夏理、私も少し心配だから・・・」
由夏理「うん、人という字は何ちゃらかんちゃらだし、やばそうな時は遠慮なく声をかけるよ」
鳴海「遠慮なく、か・・・」
由夏理「いつもすぐいなくなっちゃうけどさ、少年のことも結構頼りにしてるぞ」
鳴海「お、おう」
少しの沈黙が流れる
由夏理「さーて、今のうちに泣く準備をしとこうっと・・・」
鳴海「な、何で泣く予定なんだよ」
由夏理「やっぱ友人代表のスピーチは激しく落涙する場面でしょー」
すみれ「頑張ってね、潤くん」
潤「おうよ!!紘と由夏理の式は俺たちの結婚式のリハーサルも兼ねてるしな!!」
由夏理「ちょっとー、本人を目の前にしてそういうことは言わないで欲しいんだけどー」
すみれ「そうですよ潤くん、私たちの結婚式はまたいつかなんだから」
潤「いつかっていつだよ」
すみれ「また今度のことです」
由夏理「(少し笑って)潤はすみれに100年待たされるかもしれないねー」
潤「そんなに待たされちまったら俺とすみれは120歳になってるぞ」
由夏理「(少し笑いながら)100年も続く恋なんて素敵じゃん」
潤「俺たちは100年以上続くんだよ、そうだろ、すみれ」
すみれ「はい。終わりは求めず、潤くんといつまでも一緒に」
潤「ほら見たことか、結婚だってすぐに・・・」
潤は話を続ける
再び紘が話をしている数人のスーツ姿の男たちの中の一人を見る鳴海
鳴海「(紘が話をしている数人のスーツ姿の男たちの中の一人を見て 声 モノローグ)思い出せない・・・誰なんだ・・・」
時間経過
鳴海、すみれ、潤は同じテーブルに向かって椅子に座っている
新郎新婦のためのテーブルに向かって椅子に座っている由夏理と紘
潤はスピーチを行っている
潤の前にはマイクスタンドが置いてある
ホテルの中にある披露宴場にいる人たちは全員テーブルに向かって椅子に座っている
ホテルの中にある披露宴場の白の照明が二箇所ついており、由夏理と紘、そしてスピーチを行っている潤のことを照らしている
鳴海、由夏理、紘、すみれを含むホテルの中にある披露宴場にいる人たちは、潤のスピーチを聞いている
潤「紘と由夏理と出会った時、二人は既に一円玉や十円玉よりも器のでかい人間に・・・」
時間経過
潤は鳴海と同じテーブルに向かって椅子に座っている
グランドピアノに向かって椅子に座っているすみれ
すみれはグランドピアノで戸川純の”好き好き大好き”を弾いているすみれ
鳴海、由夏理、紘、潤を含むホテルの中にある披露宴場にいる人たちは、すみれがグランドピアノで弾いている”好き好き大好き”を聴いている
鳴海「凄いなすみれさんは・・・ピアノも弾けるのか・・・」
潤「選曲はすみれじゃねえからな」
鳴海「じゃあ誰が選んだんだ?」
潤「由夏理だろ」
時間経過
約30年前のホテルの中の披露宴場の照明が全てついている
すみれは鳴海と潤と同じテーブルに向かって椅子に座っている
披露宴はお色直しの時間になっており、由夏理と紘が披露宴場からいなくなっている
約30年前のホテルの中にある披露宴場にいる人たちは近くの人と喋ったりしている
話をしている鳴海、すみれ、潤
すみれ「キョドキョド、由夏理は大丈夫だった?」
鳴海「えっ?」
すみれ「さっき二人で話をしたんでしょう?」
鳴海「は、はい。(少し間を開けて)す、すみれさんにはあの人が大丈夫じゃないように見えたんですか?」
すみれ「大丈夫じゃないというか・・・何か悩んでいそうだったから・・・」
再び沈黙が流れる
潤「思ってた式じゃなかったのかもしれねえな」
鳴海「ど、どういうことだ?」
潤「由夏理には期待外れだったんだろうよ」
すみれ「そこまでやりたいってわけでもなさそうだったしね・・・」
鳴海「じゃ、じゃあ何で結婚式を開いたんですか?」
すみれ「メンツを気にしていたのかも・・・」
鳴海「め、メンツって一体何のために?」
潤「世間体ってのを紘は大事にするからな。由夏理は旦那のプライドに付き合ってやったんじゃねえか」
鳴海「そ、そんなプライドは・・・無意味だろ・・・」
潤「無意味と感じるかは人それぞれだ」
少しの沈黙が流れる
すみれ「とにかく・・・二人が幸せだったら良いんだけど・・・」
再び沈黙が流れる
ホテルの中にある披露宴場にいる人たちは由夏理と紘が戻って来る遅さに違和感を覚え始めてる
披露宴場にいる男1「いつまで待たせるんだ・・・」
披露宴場にいる男2「もう1時間以上経つぞ・・・」
披露宴場にいる女1「プラグラムのミスなの・・・?」
披露宴場にいる女2「どうなってるのかしら・・・」
ホテルの中にある披露宴場はざわついている
鳴海「と、トラブルの予感がするんだが・・・」
潤「親友の結婚式で不吉なことを言うんじゃねえ」
鳴海「わ、分かるんだよ俺には。だ、大体こういう時は問題が起きるんだ」
すみれ「問題ってどんな問題・・・?」
鳴海「そ、それは・・・予想出来ないですけど・・・け、経験則上、ろくでもないことが起きるのは確かなんですよ」
少しの沈黙が流れる
紘が披露宴場の中に戻って来る
紘はタキシードを着ている
鳴海たちのところにやって来る紘
潤「花嫁はどこにいる?」
紘は首を横に振る
潤「首を横に振って伝わると思ってんのか」
再び沈黙が流れる
すみれ「お色直しに時間がかかっているの?」
再び紘は首を横に振る
鳴海「は、はっきり言ってくれよ」
紘「お前・・・2年前の・・・」
潤「(紘の話を遮って)再会は後にしろ紘」
少しの沈黙が流れる
紘「ことを荒立てずに聞いて欲しい」
潤「ああ」
紘「由夏理は・・・消えた」
再び沈黙が流れる
すみれ「(小声で)消えたって・・・?」
紘「分からない・・・」
鳴海「き、気付いたら花嫁が消えてたって言うのか?」
紘「そういうことになる」
鳴海「そ、そういうことになる、じゃないだろ!!」
紘「声を荒げるな」
鳴海「ど、どうするんだよ!!」
すみれ「(小声で)落ち着きましょうキョドキョド、ドレス姿なら多分まだ遠くには行けていないはず」
鳴海「ド、ドレスのままいなくなったのか?」
紘「おそらくはだが。少なくとも着替えた形跡はなかった」
潤「由夏理のことだからホテルの中でかくれんぼでもしてるつもりかもな」
紘「ああ、きっとそんなところだろう」
すみれ「(小声で)騒ぎにならないように私たち4人で探しに行く?」
紘「すまないすみれ、潤・・・とんだ迷惑を・・・」
すみれ「(小声で)大丈夫、気にしないで」
鳴海は立ち上がる
鳴海「(立ち上がって)お、俺は階段を見て回って来るよ!!」
紘「頼む」
◯2106鳴海の夢/ホテル/13階階段(約30年前/夕方)
夕日が沈みかけている
約30年前のホテルの13階階段にいるスーツ姿の鳴海
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
鳴海はホテルの階段を見て回って由夏理がいないか探しているが、由夏理の姿はどこにもない
階段の踊り場には大きな窓があり、地上が見える
鳴海「(階段を見て回りながら由夏理のことを探して)クソッタレ・・・結婚式で消えるなんて・・・めちゃくちゃな人じゃないか・・・」
◯2107◯2104の回想/鳴海の夢/ホテル/13階階段(約30年前/昼過ぎ)
約30年前のホテルの13階階段にいるスーツ姿の鳴海と水色のウェディングドレスを着た由夏理
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
階段の踊り場には大きな窓があり、地上が見える
由夏理の頬は赤くなっている
タバコを吸っている由夏理
由夏理は使い捨てライターとタバコの箱を持っている
話をしている鳴海と由夏理
由夏理「(タバコを咥えたまま少し笑って)花嫁っていうのはどんなことをしても許される存在じゃん?つまりさ、私は好きなようにタバコを吸って、お酒を飲んで、歌って、踊って過ごして良いわけだよ」
◯2108回想戻り/鳴海の夢/ホテル/13階階段(約30年前/夕方)
夕日が沈みかけている
約30年前のホテルの13階階段にいるスーツ姿の鳴海
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
鳴海はホテルの階段を見て回って由夏理がいないか探しているが、由夏理の姿はどこにもない
階段の踊り場には大きな窓があり、地上が見える
鳴海「(階段を見て回りながら由夏理のことを探して)小言を言いたくのはこっちの方だぞ・・・」
鳴海は由夏理のことを探しながら階段を駆け降りる
◯2109鳴海の夢/ホテル/エントランス(約30年前/夕方)
夕日が沈みかけている
約30年前の高級なホテルのエントランスにいるスーツ姿の鳴海
高級なホテルのエントランスはクラシックでお洒落なデザインをしている
ホテルのエントランスには鳴海以外にも家族連れ、カップルなどの宿泊客や従業員がたくさんいる
ホテルのエントランスにはソファがたくさんあり、座って休んでいる人がいる
ホテルのエントランスにはエレベーターが3機ある
ホテルのエントランスにはフロントがあり、フロントにはたくさんの従業員がいる
ホテルのフロントではチェックインやチェックアウトをしている宿泊客がたくさんいる
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
鳴海はホテルのエントランスを見て回って由夏理がいないか探しているが、由夏理の姿はどこにもない
鳴海「(エントランスを見て回りながら由夏理のことを探して)ここにもいないのかよ!!」
鳴海はホテルのエントランスを見て回るのをやめる
立ち止まって周囲を見る鳴海
鳴海「(立ち止まり周囲を見て 声 モノローグ)頭を使うんだ・・・母親の行動くらい考えたら分かるはず・・・(少し間を開けて)すれ違った可能性を外せば、少なくともホテルの一階と階段にはいない・・・どこか部屋に隠れてるんだとしたら・・・親父たちが見つけれる・・・」
鳴海は周囲を見るのをやめる
鳴海「(周囲を見るのをやめて 声 モノローグ)となると残されてるのは・・・」
鳴海は小走りでホテルのフロントに行く
鳴海「(小走りでホテルのフロントに行って)す、すみません!!た、タバコ好きの花嫁が出て行くのを見ませんでしたか!!」
ホテルの従業員2「はい・・・?」
鳴海「は、花嫁です!!お、俺の母親・・・・じゃ、じゃなくて・・・お、俺の・・・(少し間を開けて)と、とにかくそういう人なんです!!み、見かけませんでしたか!?」
ホテルの従業員2「えっと・・・迷子のご案内なら・・・」
鳴海「(ホテルの従業員2の話を遮って大きな声で)水色のドレスを着たタバコ好きの花嫁です!!!!」
宿泊客やホテルの従業員たちが鳴海のことを見ている
少しの沈黙が流れる
鳴海「(大きな声で)み、見たか見てないかはっきりしてください!!!!」
ホテルの従業員2「申し訳ございません・・・そのような方は・・・」
鳴海「(大きな声で)クソッ!!!!スイートメロンパンが!!!!」
ホテルの従業員2「め、メロンパンならホテルのラウンジにて・・・」
鳴海「(ホテルの従業員2の話を遮って大きな声で)俺が探してるのは花嫁の母親だ!!!!」
再び沈黙が流れる
鳴海の後ろにはチェックインを待っている家族連れの宿泊客がいる
鳴海「そ、外に行ったんじゃないのか・・・?まだホテルの中に・・・」
ホテルの従業員2「(鳴海の話を遮って)あの、お客様、係の者を呼びますから、後ろでお待ちに・・・」
鳴海「(ホテルの従業員2の話を遮って)こ、ことを荒立てるなと親父に言われてるんだ、だから人を増やすわけにはいかない」
ホテルの従業員2「で、ですがお客様、まだお待ちになってる方が・・・」
鳴海「(ホテルの従業員2の話を遮って)そうか!!非常口だ!!」
ホテルの従業員2「非常口でしたら・・・」
鳴海「(ホテルの従業員2の話を遮って大きな声で)分かりましたもう大丈夫です!!!!」
鳴海はホテルのエントランスの玄関に向かって走り出す
エントランスにあるエレベーターの1機からピンクのパーティードレスを着たすみれが降りて来る
すみれ「(エレベーターから降りて)キョドキョド、見つかっ・・・」
鳴海「(立ち止まりすみれの話を遮って)非常口ですよすみれさん!!」
すみれ「えっ?」
鳴海「非常口から出て行ったんです!!」
すみれ「そ、そうなの?」
鳴海「間違いありません!!すみれさんたちは非常口の外を探してみてください!!」
すみれ「りょ、了解。でもまずは話を聞いてみるね」
鳴海「頼みます!!」
すみれはホテルのフロントに行く
走ってエントランスの玄関の扉を通り外に行く鳴海
◯2110鳴海の夢/一般道(約30年前/夕方)
夕日が沈みかけている
約30年前の一般道を歩いているスーツ姿の鳴海
鳴海が歩いている一般道の周囲にはたくさんの大きなホテルがある
建っているホテルや、走っている車やバイクのデザインが全て古い
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
鳴海は周囲を見ながら由夏理がいないか探している
鳴海「(周囲を見ながら由夏理のことを探して)もうすぐ夜か・・・急がないとな・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海は周囲を見るのをやめる
鳴海「(周囲を見るのをやめて 声 モノローグ)急ぐ・・・?何のために・・・?」
再び沈黙が流れる
鳴海「(声 モノローグ)俺は・・・違う時代に・・・」
菜摘「(声)鳴海くん」
鳴海の後ろから菜摘の声が聞こえる
鳴海は立ち止まって振り返る
鳴海「(立ち止まって振り返り)菜摘・・・?」
菜摘の声が鳴海の後ろから聞こえたのにも関わらず、鳴海の後ろには誰もいない
少しの沈黙が流れる
鳴海「へ、変になってないよな・・・俺・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海は前を向き歩き始める
鳴海「(声 モノローグ)き、きっと・・・理解を超えた出来事が起きてるんだ・・・(少し間を開けて)これは・・・奇跡なのか・・・?」
鳴海は少し歩いてから再び立ち止まる
横を見る鳴海
鳴海の横には大きなホテルがある
鳴海は大きなホテルの1階のエントランスを見ている
鳴海が見ている大きなホテルのエントランスには、ソファとテーブルがたくさんある
鳴海が見ている大きなホテルのエントランスのソファには、水色のウェディングドレスを着た由夏理が座っている
鳴海は大きなホテルのエントランスのソファに座っている由夏理のことを見ている
大きなホテルのエントランスのソファに座っている由夏理は、鳴海に見られていることに気付く
大きなホテルのエントランスのソファに座っている由夏理のことを見たまま、由夏理に向かって軽く手を振る鳴海
由夏理は大きなホテルのエントランスのソファに座ったまま、鳴海に軽く手を振り返す
大きなホテルのエントランスのソファに座ったまま、手を軽く振り返している由夏理のこと見て少し笑う鳴海
由夏理は大きなホテルのエントランスのソファに座ったまま、鳴海に手を振り返すのをやめて鳴海に手招きをする
大きなホテルのエントランスのソファに座って手招きをしている由夏理のことを見たまま、由夏理に向かって手を振るのをやめる鳴海
鳴海は大きなホテルのエントランスのソファに座って手招きをしている由夏理のことを見るのをやめる
由夏理がいる大きなホテルのエントランスの扉を開けて、ホテルの中に入る鳴海
大きなホテルのエントランスは洋風でお洒落なデザインをしている
大きなホテルのエントランスには鳴海と由夏理以外にも家族連れ、カップルなどの宿泊客や従業員がたくさんいる
大きなホテルのエントランスにはフロントがあり、フロントにはたくさんの従業員がいる
大きなホテルのエントランスには由夏理以外にもテーブルに向かってソファに座り休んでいる人がたくさんいる
大きなホテルのフロントではチェックインやチェックアウトをしている宿泊客がたくさんいる
鳴海はソファに座っている由夏理のところに行く
鳴海に向かって手招きをするのをやめる由夏理
由夏理「(鳴海に向かって手招きをするのをやめて少し笑って)少年、来てくれたんだね」
鳴海「2年間、すみれさんたちと一緒に俺を探してくれたんだろ?(少し間を開けて)あなたは俺のことを見つけられなかったんだろうけど、俺はあなたのことを簡単に探し出せるみたいだな」
由夏理「(少し笑いながら)君に探し出してもらえたのは嬉しいよ、でもさ、本当は少年じゃなくて紘に見つけて欲しかったんだ」
鳴海「あ、あの人もそのうち見つけてくれるだろ」
由夏理「女心はそのうちよりも今なんだって」
鳴海「い、今じゃないって言ってたすみれさんとは大違いだな」
由夏理「(少し笑って)その通り、私とすみれは全然違うからさ、逆に仲良くなれたんだ」
鳴海「(小声でボソッと)俺と菜摘みたいなもんか・・・」
由夏理「ん?」
鳴海「こ、こっちのことだから気にするな」
少しの沈黙が流れる
由夏理「それで、君はこんなところに何をしに来たの?」
鳴海「ひ、非常口をぶち破って失踪した花嫁を連れ戻しに来たんだ」
由夏理「私非常口なんて使ってないよ少年」
鳴海「う、嘘つけ、正面玄関から出て行ってないんだから非常口しかないだろ」
由夏理「君、窓って知ってる?扉とか非常口みたいに開けたら外に出られるもんなんだけど」
再び沈黙が流れる
鳴海「ひ、非常口を使って出て来たんじゃなかったのか・・・?」
由夏理「(少し笑って)だからそう言ってるじゃん?私だって非常口は非常時にしか使っちゃいけないって分かってるんだからさ」
鳴海「(呆れて)そういうことが分かってるなら結婚式中も大人しくして欲しいもんだ・・・」
由夏理「大人しくしろって言うのは簡単だよねー」
鳴海「そ、そもそも何で結婚式を開いたんだよ」
由夏理「そりゃあ・・・一度は体験してみたいじゃん・・・?女なんだしさ・・・」
鳴海「途中で抜け出してもか?」
由夏理「少年・・・意外と説教臭いんだね」
少しの沈黙が流れる
鳴海「お、俺は短気なだけだ」
由夏理「そんなところまで紘と一緒か・・・」
鳴海「よ、世の中には怒った奴よりも怒らせた奴が悪いって考えもあるんだぞ」
由夏理「どっちもどっちだよ、少年」
再び沈黙が流れる
由夏理は戸川純の”ヘリクツBOY”を鼻歌で歌い始める
鳴海「(小声でボソッと)自由な人だな・・・」
由夏理は戸川純の”ヘリクツBOY”を鼻歌で歌い続けている
鳴海「式場に戻る気はあるのか?」
少しの沈黙が流れる
戸川純の”ヘリクツBOY”を鼻歌で歌うのをやめる
由夏理「(戸川純の”ヘリクツBOY”を鼻歌で歌うのをやめて)あ、そうだ少年、私の天才的な提案を聞いてくれない?」
鳴海「あ、ああ」
由夏理「(少し笑って)この後、私たちと一緒に旅行しようよ」
再び沈黙が流れる
鳴海「(呆れて)俺に言われたくないだろうけどさ・・・あなたも相当後先考えずに突っ走るタイプだろ・・・」
由夏理「(少し笑いながら)だって考えても無駄じゃん?」
鳴海「(呆れて)無駄ではないけどな・・・」
由夏理「それよりも来るか来ないかはっきりして欲しいね、少年」
鳴海「(呆れて)来るってどこにだよ・・・」
由夏理「だからこの後の旅行、私と紘とすみれと潤と一緒に」
鳴海「こ、この後って式が終わってから行くつもりなのか」
由夏理「もちもち」
鳴海「(呆れて)もちもちじゃねえだろ・・・」
由夏理「こんな派手さだけが取り柄で中身が空っぽのホテルとは全然違う、古き良き旅館に泊まるんだからさ、君もおいでよ」
鳴海「さらっと無料で休憩してるホテルの悪口を言うんじゃねえ・・・」
由夏理「まさかだけど、そんなつまらないことを並べて来ないつもりじゃないよね?少年」
鳴海「お、俺が行ったらおかしいだろ・・・」
由夏理「お姉さんたちは君のことを歓迎するよ」
鳴海「つ、つまりお兄さんたちは歓迎しないってわけだ」
由夏理「良いから少年もおいでって」
鳴海「あ、あなたが結婚式に戻るなら旅行も考えるよ」
由夏理「どうせ考えるだけで終わりでしょー」
鳴海「よ、よく分かったな、その通りだ」
由夏理「(不機嫌そうに)どうして君は私たちと親しくなるのを避けるのさ。2年前も少年が逃げるように帰ったって内通者から聞いてるんだぞ」
鳴海「べ、別に避けてるわけじゃ・・・」
由夏理「なら何でなのか、頑固な私が納得出来るような理由を説明してよ」
鳴海「し、親しくなったら・・・わ、別れるのが寂しくなるだろ」
少しの沈黙が流れる
由夏理「君ってさ、彼女と駅のホームで別れる時に敢えて冷たいふりをして、一人帰路についた途端嗚咽を漏らしながら号泣するタイプだよね?」
鳴海「いや・・・全くそんなタイプじゃないですけど・・・」
由夏理「も〜、少年ったら照れ屋さんなんだから〜」
鳴海「結婚式を逃げ出して来たあなたが何を言ってるんだ・・・」
由夏理「式については触れないの、分かった?少年」
再び沈黙が流れる
由夏理「せっかく久しぶりに会ったんだからさ、楽しく遊ぼうよ」
鳴海「あ、遊びたい気持ちがあっても旅行は無理だ、着替えも何も持ってないんだぞ」
由夏理「道中で買えば良いじゃん」
鳴海「そ、そういうやり方もあるかもしれないが・・・(少し間を開けて)で、でもどうしてそこまでして俺を誘うんだ」
由夏理「(少し笑って)私さ、少年とは絶対何か縁があると思うんだよね。だから君との繋がりをここで終わらせたくないんだよ」
鳴海「お、俺はあなたが期待してるほどの人間じゃないぞ」
由夏理「(少し笑いながら)別に嘘つきの少年には何も期待してないって」
鳴海「そ、それはそれで酷いな・・・」
由夏理「(少し笑いながら)やっぱ君、2年前から変わらない面白さだね」
鳴海「ど、どうも・・・」
少しの沈黙が流れる
由夏理「無理矢理は誘わないけど、まあ考えといてよ。私も今から結婚式に戻るからさ」
鳴海「き、気が変わったのか?」
由夏理「(少し笑って)ん、元々ちょっと騒ぎになったら戻るつもりだったんだよ」
由夏理は立ち上がる
鳴海「ど、旦那やすみれさんたちにはどう言い訳をするんだ?」
由夏理「(少し笑いながら)君、もしかして心配してくれてる?」
鳴海「あ、当たり前じゃないか」
由夏理「(少し笑いながら)これでもお姉さんは言い訳を考える天才なんだぞ、少年」
鳴海「そ、そういうところが心配なんだ」
由夏理「大丈夫大丈夫、何とかなる・・・じゃなくて何とかするからさ」
◯2111鳴海の夢/ホテル/エントランス(約30年前/夕方)
夕日が沈みかけている
約30年前の高級なホテルのエントランスにいるスーツ姿の鳴海、水色のウェディングドレスを着た由夏理、ピンクのパーティードレスを着たすみれ、スーツを着た紘
高級なホテルのエントランスはクラシックでお洒落なデザインをしている
ホテルのエントランスには鳴海たち以外にも家族連れ、カップルなどの宿泊客や従業員がたくさんいる
ホテルのエントランスにはソファがたくさんあり、座って休んでいる人がいる
ホテルのエントランスにはエレベーターが3機ある
ホテルのエントランスにはフロントがあり、フロントにはたくさんの従業員がいる
ホテルのフロントではチェックインやチェックアウトをしている宿泊客がたくさんいる
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
話をしている鳴海たち
紘「こんな日に心配をかけさせて、どこに行っていたんだ」
由夏理「ごめん・・・ちょっと外の空気を吸いにさ・・・」
紘「俺たちの結婚式なんだぞ、少しは我慢しろ由夏理」
由夏理「う、うん」
鳴海「(小声でボソッと)言い訳を考える天才じゃねえだろ・・・」
紘「何だ?何か言いたいことでもあるのか?」
鳴海「あ、いや・・・べ、別に・・・」
少しの沈黙が流れる
紘「全く大事な時に限ってお前は・・・」
由夏理「ご、ごめんって紘・・・」
紘「ガキでもないのに謝ったら許されると思うのはやめるんだ」
すみれ「ふ、二人とも、ここはキョドキョドの顔を立てて会場に戻ろうよ」
鳴海「な、何で俺なんすか」
潤「お前が見つけて連れ戻したからだろ」
鳴海「ぐ、偶然だけどな」
潤「凄い偶然じゃねえか」
鳴海「あ、ああ」
紘は鳴海のことを見る
再び沈黙が流れる
鳴海「そ、外を適当に歩いてたらばったり会ったんだ、み、見つけた以上は連れて帰って来て当然だろ」
紘「(鳴海のことを見たまま)適当にか」
鳴海「そ、そうだ」
紘「(鳴海のことを見たまま)お前には聞きたいことが・・・」
すみれ「(紘の話を遮って)由夏理、紘くん、戻らないの?」
少しの沈黙が流れる
すみれ「みんなこの後のブーケトスを待っているよ」
紘「(鳴海のことを見たまま)ああ・・・」
紘は鳴海のことを見るのをやめる
紘「(鳴海のことを見るのをやめて)分かった」
紘は歩き始める
紘に続いて歩き始める由夏理、すみれ、潤
その場に取り残される鳴海
鳴海は歩いている紘の後ろ姿を見ている
振り返る由夏理
由夏理「(振り返って)早くおいで少年、置いて行っちゃうよ」
鳴海は紘の後ろ姿を見たまま歩き始める
◯2112鳴海の夢/ホテル/披露宴場(約30年前/夕方)
夕日が沈みかけている
約30年前のホテルの中にある披露宴場にいるスーツ姿の鳴海、水色のウェディングドレスを着た由夏理、タキシードを着た紘、ピンクのパーティードレスを着たすみれ、スーツを着た潤
ホテルの中にある披露宴場は広く、お洒落に飾り付けがされている
ホテルの中の披露宴場にはグランドピアノが置いてある
ホテルの中の披露宴場には鳴海たちの他にもたくさんの着飾った人たちがいる
由夏理は新郎新婦のためのテーブルの前に立ってブーケを持っている
由夏理の隣に立っている紘
由夏理の周りには潤を含むたくさんの未婚男性、女性が集まっている
鳴海は由夏理たちから少し離れたところで一人テーブルに向かって椅子に座っている
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
ブーケに興味がない人たちは鳴海同様に少し離れたところでテーブルに向かって椅子に座っている
テーブルに向かって椅子に座っている人の中には、紘と話をしていた数人のスーツ姿の男たちがいる
鳴海は紘と話をしていた数人のスーツ姿の男たちのことを見ている
鳴海のところにやって来るすみれ
すみれ「(鳴海のところにやって来て)キョドキョドは欲しくないの?」
鳴海は紘と話をしていた数人のスーツを着た男たちのことを見るのをやめる
鳴海「(紘と話をしていた数人のスーツ姿の男たちのことを見るのをやめて)ブーケっすか?」
すみれ「うん」
鳴海「俺よりもすみれさんたちが取るべきですよ」
すみれ「そう思っているならキョドキョドにも参加して欲しいんだけど・・・」
鳴海「どうしてです?」
すみれ「たくさんの人が参加している方がブーケの価値も上がるんだって」
鳴海「はあ・・・」
少しの沈黙が流れる
すみれ「私、さっきわざと話を逸らしたの」
鳴海「な、何のことですか?」
すみれ「紘くんがキョドキョドの秘密を聞き出そうとしたから、話を逸らしたんです」
再び沈黙が流れる
鳴海「お、俺もブーケトスに参加しろと・・・?」
すみれ「うん」
少しの沈黙が流れる
鳴海「わ、分かりました・・・」
鳴海は立ち上がる
鳴海「(立ち上がって)で、でも俺、秘密なんてないですから」
鳴海とすみれは由夏理の周りでブーケを待っている人たちのところに行く
すみれ「キョドキョドが秘密を抱えているって、分からない人はもういないと思う」
鳴海「い、いや、だから俺秘密とか・・・」
すみれ「(鳴海の話を遮って)私は潤くんと一緒にライトを守りに行くね、だからフューチャーボーイはセンターかレフトだよ」
鳴海「あ、はい」
すみれは潤がいるところに行く
鳴海「ん・・・?ま、待てよ・・・?い、今フューチャーボーイって言ってたか・・・?」
由夏理は後ろを向く
由夏理「(後ろを向いて)ブーケ!!投げるからみんな仲良く手を伸ばしてねー!!」
鳴海、すみれ、潤を含むブーケトスに参加しているたくさんの人たちが宙に向かって手を伸ばす
鳴海「(宙に向かって手を伸ばして)き、気のせいだよな・・・う、うん・・・た、多分気のせいだ・・・(少し間を開けて)ば、バレるわけがない・・・」
由夏理は後ろを向いたままブーケを放り投げる
由夏理が後ろを向いたまま放り投げたブーケは高く上がる
鳴海「(宙に向かって手を伸ばしたまま)というか別にバレても良いのか・・・?そ、そもそも隠さないで、お、俺は未来から来たあなたたちの子供ですって言っちまった方が絶対楽だよな・・・?」
由夏理が後ろを向いたまま放り投げたブーケは高くまで上がり、真っ直ぐ落下してぶつぶつ独り言を言っている鳴海の手に収まる
再び沈黙が流れる
鳴海はブーケを持っている自分の手をゆっくり見る
鳴海「(ブーケを持っている自分の手をゆっくり見て)ま、マジか・・・取っちまった・・・」
由夏理は後ろを向くのをやめて前を見る
由夏理「(前を見て驚いて)う、嘘!?少年が取ったの!?」
鳴海「(ブーケを持っている自分の手を見たまま)あ、ああ」
すみれ「センターの守備はバッチリだったねキョドキョド!!」
鳴海はブーケを持っている自分の手を見るのをやめる
鳴海「(ブーケを持っている自分の手を見るのをやめて)お、俺・・・考えごとをしてただけなんですけど・・・」
潤「クソッ!!何でこんなボーッとした奴がブーケを!!」
由夏理「(少し笑って)少年は運の強い男だね、君なら結婚も秒読みだと思うよ」
鳴海「また秒読み、か・・・」
潤「根性無しの紘の代理に結婚なんか出来るわけねえだろ!!」
鳴海「う、うるせえ!!お、俺はすぐにでも結婚してやるからな!!」
◯2113鳴海の夢/ホテル/エントランス(約30年前/夕方)
夕日が沈みかけている
約30年前の高級なホテルのエントランスにいるスーツ姿の鳴海
高級なホテルのエントランスはクラシックでお洒落なデザインをしている
ホテルのエントランスには鳴海以外にも家族連れ、カップルなどの宿泊客や従業員がたくさんいる
ホテルのエントランスにはソファがたくさんあり、座って休んでいる人がいる
ホテルのエントランスにはエレベーターが3機ある
ホテルのエントランスにはフロントがあり、フロントにはたくさんの従業員がいる
ホテルのフロントではチェックインやチェックアウトをしている宿泊客がたくさんいる
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
ソファに一人座っている鳴海
鳴海はブーケを持っている
鳴海「(声 モノローグ)姉貴が結婚式を開いた晩、夢で両親の結婚式に出席する・・・菜摘はブーケを・・・俺も過去でブーケを取った・・・(少し間を開けて)何か意味があるはずだ、俺がここにいる意味が・・・若かりし両親と出会う意味が・・・何か・・・」
少しの沈黙が流れる
エントランスにあるエレベーターの1機からすみれが降りて来る
すみれはピンクのパーティードレスから私服に着替えている
ソファに座っている鳴海のところにやって来るすみれ
すみれ「(ソファに座っている鳴海のところにやって来て)隣に座って良い?キョドキョド」
鳴海「ど、どうぞ」
すみれは鳴海の隣のソファに座る
再び沈黙が流れる
鳴海「じ、実は一緒に旅行に来ないかって誘われて・・・」
すみれ「えっ?誰に?」
鳴海「は、花嫁にです」
すみれ「そうなんだ。潤くんたちももうすぐ降りて来ると思うよ」
鳴海「え、えっと・・・し、新郎新婦は今何を・・・」
すみれ「由夏理は着替えたりしていて、潤くんと紘くんは話があるとか何とか・・・」
鳴海「そ、そうですか・・・」
少しの沈黙が流れる
鳴海「す、すみれさん、さ、さっき俺のことをフューチャーボーイって言いましたよね」
すみれ「うん」
鳴海「ど、どういう意味で言ったんですか?」
すみれ「深い意味は・・・ないけれど・・・(少し間を開けて)キョドキョドが未来人だったら面白いかなと思って」
鳴海「お、面白いと思っただけで言ったと・・・?」
すみれ「そうですね」
鳴海「い、意味もないと・・・?」
すみれ「うん。だってキョドキョドが未来人なんてことはあり得ないでしょう?」
鳴海「あ、有り得ませんよ!!お、俺は今を自由に生きてるだけですし」
再び沈黙が流れる
すみれ「実は・・・私・・・」
鳴海「な、何ですか・・・?」
鳴海「少しだけ期待してるんです」
鳴海「き、期待?」
すみれ「キョドキョドが・・・キツネ様のような奇跡を起こせる人で、いろんな人を救いに来てくれたんじゃないかって」
鳴海「お、俺は・・・(少し間を開けて)す、すみません・・・俺はすみれさんの期待に応えられるような奴じゃないと思います・・・」
すみれ「謝らないで、キョドキョドは何も悪くないんです。私が一人で、夢を見ているだけだから」
少しの沈黙が流れる
鳴海「すみれさんは・・・何か救われたいことがあるんですか・・・?」
すみれ「私たち・・・まだ親に関係を認めてもらってないんです・・・」
鳴海「えっ・・・?」
すみれ「だから・・・どうしても結婚が難しくて・・・」
鳴海「な、何で認めてもらえないんですか?」
すみれ「私も潤くんも夢を追いかけていてお金がないし・・・とてもじゃないけど・・・お互いに生活が安定しているとは言えない状態で・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海は持っていたブーケをすみれに差し出す
鳴海「(ブーケをすみれに差し出して)すみれさん、これ、俺の代わりに貰ってください」
すみれ「(ブーケを鳴海から差し出されたまま)えっ、う、受け取れないよ、そのブーケはキョドキョドが掴んだ・・・」
鳴海「(ブーケをすみれに差し出したまますみれの話を遮って)良いんです、そもそもこういう物は欲しいと思ってる人が手にするべきなんですよすみれさん」
すみれ「(ブーケを鳴海から差し出されたまま)でも・・・」
鳴海「(ブーケをすみれに差し出したまま少し笑って)でもは無しです」
少しの沈黙が流れる
すみれ「(ブーケを鳴海から差し出されたまま)キョドキョドの結婚が遠のいちゃうかもしれないのに・・・」
鳴海「(ブーケをすみれに差し出したまま少し笑って)そんなことないですよ、俺は運が良いみたいだし、俺の彼女も強運の持ち主ですから。(少し間を開けて)すみれさんが貰ってくれなきゃこいつはドブに捨てるか焼き払いますけど」
再び沈黙が流れる
すみれはブーケを鳴海から受け取る
すみれ「(ブーケを鳴海から受け取って)ありがとう、キョドキョド」
鳴海「気にしないでください、すみれさんにはいつもお世話になってますから」
すみれ「(不思議そうに)いつも・・・?」
鳴海「と、時々ですかね・・・」
すみれ「どちらかと言うと私たちの方がキョドキョドにお世話になっていない・・・?」
鳴海「お、お互い様ってことですよ!!」
少しの沈黙が流れる
すみれ「全貌が分からないからこそ・・・魅力的だって・・・」
鳴海「そ、それがどうかしたんすか?」
すみれ「その考えをキョドキョドに教えてくれた人は、きっとキョドキョドのことをよく理解しているんだね。(少し間を開けて)キョドキョドが私に伝えて、私がみんなに広めていくっていうのも分かっていたのかも」
鳴海「も、もしそうだとしたら・・・そ、そいつは・・・俺とすみれさんが出会うって・・・」
すみれ「知っていた・・・?」
再び沈黙が流れる
すみれは立ち上がる
すみれ「(立ち上がって)これ以上キョドキョドを待たせるのは申し訳ないし、由夏理たちを呼んで来ますね」
鳴海「は、はい」
すみれはエントランスにあるエレベーターに向かう
鳴海「(声 モノローグ)菜摘が・・・?そんなはずは・・・(少し間を開けて)やっぱり何か意味があるんだ・・・それさえ分かれば・・・」
時間経過
ホテルのエントラスで話をしている鳴海、由夏理、すみれ、潤
鳴海はソファに座っておらず、立っている
由夏理、紘、潤は私服に着替えている
由夏理、紘、すみれ、潤はスーツケースを持っている
ブーケを持っているすみれ
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
由夏理「良いでしょ別に、少年とは友達なんだからさ」
紘「四人で予定していた旅行なんだぞ」
鳴海「お、俺は無理について行くつもり・・・」
由夏理「(鳴海の話を遮って)来るって言ったじゃん少年!!」
鳴海「か、考えるって言っただけだ、そ、それにいきなり宿泊客が増えたら旅館側も迷惑だろ」
少しの沈黙が流れる
紘「来たくない奴を連れて行く必要はない、由夏理」
由夏理「わ、私少年の口から来たくないなんて一言も聞いてないし?」
紘「だが来たいとも耳にしていないだろう」
由夏理は鳴海のことを見る
由夏理「(鳴海のことを見て)しょ、少年、本当に私たちと遊びたくないの?」
鳴海「そ、そういうわけじゃないけどさ・・・」
潤「はっきりしろよお前」
再び沈黙が流れる
由夏理「(鳴海のことを見たまま)君さ、さっき私が素直に思ってることを口にした方が良いって言ったのを覚えてるよね?」
鳴海「あ、ああ・・・」
由夏理「(鳴海のことを見たまま少し笑って)じゃあ・・・今こそ素直にならきゃダメじゃん?」
鳴海「だ、だがそれでもし失敗したら・・・」
由夏理「(鳴海のことを見たまま少し笑って鳴海の話を遮り)大丈夫だって、君は失敗なんかしないからさ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「い、一緒に・・・(少し間を開けて)つ、連れて行ってください・・・」
由夏理「(鳴海のことを見たまま少し笑って)よく言った少年」
すみれ「そうこなくっちゃだね」
由夏理は鳴海のことを見るのをやめる
由夏理「(鳴海のことを見るのをやめて)5人で行こうよ、紘」
再び沈黙が流れる
由夏理「今日は私たちの結婚式、私が花嫁、だから今日だけは私のわがままを聞いてくれたって良いでしょ?紘」
紘「君のわがままはいつも聞いているじゃないか・・・」
由夏理「だったら今日も・・・」
紘「(由夏理の話を遮って)そうやってすぐに調子に乗るから嫌なんだ」
由夏理「は、花嫁になんてことを言うのさ」
紘「俺と出会った時から由夏理は毎日が花嫁だろう」
少しの沈黙が流れる
鳴海「お、俺が行かなければ万事解決だな・・・」
由夏理「少年はその言葉の意味を分かってないらしいね。(少し間を開けて)何年も前から紘は私を旅行に連れて行くって言ってたけど、全然叶えてくれなかったじゃん?ずっと後回しにされ続けて来たんだから、私は好きなことをするしわがままも言うよ。それでも紘がついて来てくれるって信じてるしさ」
再び沈黙が流れる
紘「良いだろう、好き勝手する花嫁の後ろを俺が追ってやる」
由夏理「ん、ありがとう紘。そんでもって見たかい少年、これこそが時計の針が重なるような万事解決策だよ」
鳴海「時計の針は永遠に重なってるわけじゃないと思うが・・・」
◯2114鳴海の夢/ホテル/地下駐車場(約30年前/夕方)
約30年前のホテルの地下駐車場にいるスーツ姿の鳴海、由夏理、紘、すみれ、潤
ホテルの地下駐車場は広くたくさんの車が止まってる
ホテルの地下駐車場に止まっているたくさんの車のデザインが全て古い
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
すみれはブーケを持っている
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
由夏理、紘、すみれ、潤はスーツケースを押している
少しすると潤は一台の古いピックアップトラック型の車の前で立ち止まる
潤に合わせて一台の古いピックアップトラック型の車の前で立ち止まる鳴海、由夏理、紘、すみれ
鳴海「(一台の古いピックアップトラック型の車の前で立ち止まって)こ、これがあんたの車か?」
潤「文句があるなら言ってみろ」
鳴海「いや・・・ねえけど・・・」
潤「じゃあ黙って乗るんだな」
鳴海「に、荷台でも良いか?」
すみれ「あ、じゃあ私も・・・」
紘「(すみれの話を遮って)捕まるぞ」
鳴海「は・・・?」
紘「許可がない場合走行中の車の荷台に人が乗るのは禁止されているんだ」
少しの沈黙が流れる
紘は古いピックアップトラック型の車の荷台にスーツケースを乗せる
すみれ「詳しいね、紘くん」
紘「この間車の仮免に落ちたところだからな」
すみれ「落ちたんだ・・・」
由夏理「バイクの方がぶっ飛ばして行けるし、3人以上の家族にでもならない限り私たちに車なんていらないよね。それに何かあった時は潤に乗せてもらえば良いじゃん」
潤は古いピックアップトラック型の車の荷台の上にスーツケースを乗せる
潤「(古いピックアップトラック型の車の荷台の上にスーツケースを乗せて)人のことをタクシードライバーだと思いやがって・・・」
◯2115回想/道路(約8年前/昼)
道路の真ん中に激しく損壊している二台の車がある
頭から血を流しながらふらふらと車の一台から出て来る10歳の鳴海
二台の車の周りには人だかりが出来ている
頭から血を流しながら車の中を覗く10歳の鳴海
車の前の座席には血だらけで大怪我を負った由夏理と紘がいる
後部座席には頭から血を流して気絶している16歳の風夏がいる
10歳の鳴海は頭から血を流しながらその場に座り込む
鳴海「(声 モノローグ)この人たちはまだ何も分かってない・・・」
◯2116回想戻り/鳴海の夢/ホテル/地下駐車場(約30年前/夕方)
約30年前のホテルの地下駐車場にいるスーツ姿の鳴海、由夏理、紘、すみれ、潤
ホテルの地下駐車場は広くたくさんの車が止まってる
ホテルの地下駐車場に止まっているたくさんの車のデザインが全て古い
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
すみれはブーケを持っている
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
由夏理とすみれはスーツケースを持っている
一台の古いピックアップトラック型の車の前で話をしている鳴海たち
古いピックアップトラック型の車の荷台の上には潤のスーツケースが乗っている
鳴海「で、電車にしないか?」
潤「でんしゃあ?」
鳴海「あ、ああ」
すみれ「どうして電車?」
鳴海「で、電車の方が確実性があって安全じゃないですか」
潤「俺の愛車だって安全だぞ」
由夏理「見るからにポンコツだけどねー」
潤「見た目で判断するんじゃねえ」
由夏理「事故らないでよ潤、私結婚式当日に事故死とか嫌だからね?」
紘「血塗られた花嫁か、ありそうな話だな」
鳴海「お、おい」
紘「何だ」
鳴海「不謹慎なことを言うなよ」
少しの沈黙が流れる
潤はポケットから古いピックアップトラック型の車の鍵を取り出す
古いピックアップトラック型の車の扉に鍵を挿し、扉を開ける潤
潤「(古いピックアップトラック型の車の扉を開けて)とっとと乗れ」
紘「ああ。由夏理、すみれ、スーツケースを」
由夏理「うん」
すみれ「ありがとう」
紘は古いピックアップトラック型の車の荷台の上に由夏理とすみれのスーツケースを乗せる
古いピックアップトラック型の車の助手席に乗り込むすみれ
紘は古いピックアップトラック型の車の後部座席に乗り込む
古いピックアップトラック型の車の後部座席に乗り込む由夏理
再び沈黙が眺める
潤「お前も早く乗りやがれ、紘の代理」
鳴海「(小声でボソッと)乗る前から居心地の悪い車だな」
鳴海は渋々古いピックアップトラック型の車の後部座席に乗り込む
古いピックアップトラック型の車の扉から鍵を抜く潤
潤は古いピックアップトラック型の車の運転席に乗り込む
◯2117鳴海の夢/旅館に向かう道中/高速道路(約30年前/夜)
スーツ姿の鳴海、由夏理、紘、すみれ、潤が乗っている古いピックアップトラック型の車が旅館に向かっている
鳴海、由夏理、紘、すみれ、潤が乗っている古いピックアップトラック型の車は、約30年前の高速道路を走っている
鳴海、由夏理、紘は古いピックアップトラック型の車の後部座席に乗っている
すみれは古いピックアップトラック型の車の助手席に座っている
潤は古いピックアップトラック型の車の運転席に座り、運転をしている
高速道路を走っている車やバイクは全てデザインが古い
鳴海たちが乗っている古いピックアップトラック型の車の中では、泰葉の”フライディ・チャイナタウン”が流れている
鳴海たちが乗っている古いピックアップトラック型の車のコンソールボックスには、タバコの箱とZIPPOライターが置いてある
鳴海たちが乗っている古いピックアップトラック型の車の荷台の上には、由夏理、紘、すみれ、潤のスーツケースが乗っている
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
すみれはブーケを持っている
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
青いボールペンでスケッチブックに絵を描いている紘
鳴海は外を眺めている
由夏理「ねー何を描いてるのか教えてよー」
紘「(青いボールペンでスケッチブックに絵を描きながら)完成したらな」
由夏理「私は変化していく紘の絵を見るのが好きなのにー・・・」
紘は青いボールペンでスケッチブックに絵を描き続ける
話をしているすみれと潤
潤「(運転をしながら)すみれのとこの親父さんに頭を下げるしかねえ」
すみれ「下げても話を聞いてくれるか・・・」
潤「(運転をしながら)俺は何度も下げに行くぞすみれ、結婚のためだからな、こんなことで負けられねえ」
すみれ「勝負じゃありませんよ、潤くん」
潤「(運転をしながら)いや、これは結婚を賭けた男と男の戦いだ」
少しの沈黙が流れる
すみれ「私たちが諦めなければ必ず・・・その日が・・・」
潤「(運転をしながら)そうだぜ、こういう時は引いたら負けだ」
鳴海は変わらず外を眺めている
鳴海「(外を眺めながら 声 モノローグ)この人たちは未来を知らない。(少し間を開けて)4人のうち2人が事故で死に、残りの2人は夢を捨ててしまう・・・それがこの先に待っている現実だ・・・」
紘は青いボールペンでスケッチブックに絵を描き終える
紘「(青いボールペンでスケッチブックに絵を描き終えて)描けたぞ、由夏理」
由夏理「ん、見せて見せて」
紘はスケッチブックを由夏理に見せる
スケッチブックには青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶が描かれている
由夏理はスケッチブックに描かれた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶の絵を見ている
由夏理「(スケッチブックに描かれた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶の絵を見たまま)これってさ・・・私だよね・・・?」
紘「(スケッチブックに描いた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶の絵を由夏理に見せながら)ああ」
由夏理「(スケッチブックに描かれた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶を見たまま)何で後ろ姿なの?」
紘「(スケッチブックに描いた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶の絵を由夏理に見せながら)実物より綺麗な顔を描く自信がないんだ」
由夏理「(スケッチブックに描かれた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶を見たまま不機嫌そうに)何それー、背中は絵の方が良いってことじゃーん」
紘「(スケッチブックに描いた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶の絵を由夏理に見せながら)そうじゃない、俺が由夏理の後ろ姿が好きだから描いたんだ」
由夏理「(スケッチブックに描かれた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶を見たまま不機嫌そうに)褒められても納得がいかないなー・・・」
紘「(スケッチブックに描いた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶の絵を由夏理に見せながら)由夏理はうなじが綺麗だから、俺の描いた絵によく映える」
由夏理はスケッチブックに描かれた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶を見るのをやめる
由夏理「(スケッチブックに描かれた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶を見るのをやめて)そのボールペン貸して紘」
紘はスケッチブックに描いた青いウェディングドレスを着た女性の後ろ姿と、女性の周りを飛んでいる数匹の蝶の絵を由夏理に見せるのをやめる
青いボールペンを由夏理に差し出す紘
由夏理は青いボールペンを紘から受け取る
青いボールペンを使って髪をまとめ始める由夏理
由夏理は青いボールペンで髪をまとめ終える
うなじを紘に見せる由夏理
由夏理「(うなじを紘に見せて)どう?」
紘は由夏理のうなじを見る
紘「(由夏理のうなじを見て)絵より全然綺麗だ」
由夏理「(うなじを紘に見せながら少し笑って)そりゃそうだよー、こちとらモノホンの女だし、しかも結婚式に合わせて肌の調子も整えておいたんだからさ。(少し間を開けて小声で)後で二人だけで抜け駆けする?そしたらもっと見せてあげられるよ」
紘は由夏理のうなじを見るのをやめる
紘「(由夏理のうなじを見るのをやめて)ペンで止めていると髪が痛むぞ」
由夏理はうなじを紘に見せるのをやめる
由夏理「(うなじを紘に見せるのをやめて不機嫌そうに)チェッ・・・」
由夏理は青いボールペンでまとめた髪をほどき始める
紘「後でかんざしを買おう由夏理、そっちの方がペンなんかより良い」
由夏理「(青いボールペンでまとめた髪をほどきながら)あ、じゃあ後ろにヨーヨーがついてるやつを買ってよ」
紘「祭りで売られているような水風船のヨーヨーのことか?」
由夏理「(青いボールペンでまとめた髪をほどきながら)ん、そうそう」
紘「縁起が悪いな・・・」
由夏理「(青いボールペンでまとめた髪をほどきながら)えっ?ヨーヨーが?」
紘「ああ」
由夏理は青いボールペンでまとめた髪をほどき終える
紘「祭りで売られているヨーヨーは人の命を吸い取るんだ、だからあの風船の中身は死者の魂と変わらない。かんざしを買うなら別のデザインの物にするぞ」
由夏理「(少し笑って)誰からそんなおとぎ話を聞いたのさ」
紘「昔、親父がそう言っていたんだ」
由夏理「(少し笑いながら)分かったよ紘、君は怖い話を聞かされたから今でもお祭りが苦手なんだね?」
紘「馬鹿を言うな、俺が怖がるわけないだろう」
由夏理「(少し笑いながら)もっと自分に正直に・・・」
由夏理と紘は話を続ける
泰葉の"フライディ・チャイナタウン”が流れ終わる
泰葉の"フライディ・チャイナタウン”に続けて、沢田研二の”勝手にしやがれ”が鳴海たちが乗っている古いピックアップトラック型の車の中で流れ始める
コンソールボックスに置いてあったタバコの箱とZIPPOライターを手に取るすみれ
すみれ「(コンソールボックスに置いてあったタバコの箱とZIPPOライターを手に取って)潤くん、吸って良い?」
潤「(運転をしながら)構わねえが、親父さんは嫌がってるんだろ」
すみれはタバコの箱からタバコを一本取り出す
タバコを口に咥えるすみれ
すみれ「(タバコを口に咥えて少し笑って)嫌がっているから余計に吸いたくなるのかも」
潤「(運転をしながら)分からなくもねえ話だな・・・(少し間を開けて)俺にも一本くれないか、すみれ」
すみれ「(タバコを咥えたまま)うん」
すみれはタバコの箱からもう一本タバコを取り出す
二本目のタバコを口に咥えるすみれ
すみれはZIPPOライターで二本のタバコに火を付ける
すみれは二本のタバコを煙を深く吐き出す
外を眺めながらチラッと二本のタバコを吸っているすみれのことを見る鳴海
すみれは咥えていた一本のタバコを運転している潤に差し出す
運転をしながらすみれが差し出して来たタバコを口に咥える潤
潤は運転をしながらタバコの煙を吐き出す
紘「すみれ、俺にもタバコをくれ」
すみれ「(タバコを咥えたまま)はーい」
すみれはタバコを咥えたままタバコの箱とZIPPOライターを後部座席に座っている紘に差し出す
タバコを咥えて助手席に座っているすみれからタバコの箱とZIPPOライターを受け取る紘
紘「(タバコを咥えて助手席に座っているすみれからタバコの箱とZIPPOライターを受け取り)悪いな」
すみれ「(タバコを咥えたまま)ううん」
潤「(タバコを咥えて運転をしながら)悪いと思ってるなら俺に言え」
紘「ああ」
潤「(タバコを咥えて運転をしながら)ああじゃねえんだよああじゃ」
由夏理「私にも一本ちょうだいすみれ」
すみれ「(タバコを咥えたまま)良いよ」
潤「(タバコを咥えて運転をしながら)後ろのアホな新郎新婦に言わせてもらうがな、そのタバコは俺が自販機で買った・・・」
すみれ「(タバコを咥えたまま潤の話を遮って)潤くん、由夏理と紘くんにタバコをあげても大丈夫だよね?」
潤「(タバコを咥えて運転をしながら)はい・・・」
紘はタバコの箱からタバコを二本取り出す
タバコを一本口に咥える紘
紘は咥えている方のタバコにZIPPOライターで火を付ける
咥えているタバコの先と持っていたタバコの先を当て、火を移す紘
紘は火の付いたタバコを由夏理に差し出す
火の付いたタバコを紘から受け取る由夏理
紘はタバコの煙を吐き出す
外を眺めるのをやめる鳴海
鳴海「(外を眺めるのをやめて)お、おい・・・」
由夏理は火の付いたタバコを口に咥える
タバコの煙を深く吐き出す由夏理
古いピックアップトラック型の車内が由夏理、紘、すみれ、潤の吸っているタバコのせいで煙たくなっている
由夏理「(タバコを咥えたまま)ん?どうかしたの少年」
鳴海「あ、あんたらのせいで車内が煙たくなってるじゃねえか!!」
由夏理「(タバコを咥えたまま)ああ・・・君が気になるなら窓を開けても良いけどさ」
鳴海はハンドルを回して後部座席の窓を開け始める
鳴海「(ハンドルを回して後部座席の窓を開けながら)ったく・・・スーツがタバコ臭くなったらどうしてくれるんだ・・・」
潤「(タバコを咥えて運転をしながら)世の中タバコ臭くないスーツなんてないだろ」
鳴海「(ハンドルを回して後部座席の窓を開けながら)俺の中ではあるんだよ!!」
鳴海がハンドルを回して開けている古いピックアップトラック型の車の後部座席の窓から、由夏理、紘、すみれ、潤のタバコの煙が一気に外に流れ始める
すみれ「タバコを咥えたまま)潤くん、どこかサービスエリアで休憩して行かない?」
潤「(タバコを咥えて運転をしながら)旅館前に飯を食ったら腹がいっぱいになっちまうぞすみれ」
すみれ「(タバコを咥えたまま)ご飯じゃなくて、喫煙目的で」
潤「(タバコを咥えて運転をしながら)そんな休憩要らねえだろ」
すみれ「(タバコを咥えたまま)でも吸わないキョドキョドが一緒だと可哀想だし・・・」
潤「(タバコを咥えたまま運転をしながら)可哀想も何も少数派の自業自得じゃねえか」
すみれ「(タバコを咥えたまま)潤くん、そんなことを言ってはいけません」
再び沈黙が流れる
鳴海はハンドルを回して扉の窓を完全に開ける
由夏理「(タバコを咥えたまま)あ、というか少年服」
鳴海「よ、幼児服がどうかしたのか?」
由夏理「(タバコを咥えたまま呆れて)私が言ってるのは君の着替えのことだって」
少しの沈黙が流れる
すみれ「(タバコを咥えたまま)そっか・・・キョドキョドは飛び入り参加だから何も持って来てないんだ」
潤「(タバコを咥えて運転をしながら)こいつのブリーフだかトランクスのために高速から降りろってことかよ?」
由夏理「(タバコを咥えたまま)むしろ少年本体を温泉で洗濯するためねー」
鳴海「お、温泉で洗濯って・・・そもそも俺・・・か、金・・・」
由夏理「(タバコを咥えたまま鳴海の話を遮って)ここまで来ても逃げようとするのかね君は」
鳴海「べ、別に逃げようとは・・・」
由夏理「(タバコを咥えたまま)だったらお姉さんたちの言うことを聞いてさ、黙ってついて来なよ少年」
鳴海「あ、ああ・・・」
◯2118鳴海の夢/サービスエリア/お土産屋(約30年前/夜)
約30年前のサービスエリアの中にあるお土産屋にいるスーツ姿の鳴海と潤
サービスエリアの中にあるお土産屋はとても広い
サービスエリアの中にあるお土産屋はお菓子、酒類、つまみ、キーホルダーなどのお土産や、文房具、衣服類、子供のおもちゃなど、様々な物が売られている
サービスエリアのお土産屋の中には鳴海と潤以外にも家族連れ、カップル、団体客などたくさんの人がいる
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
お土産屋の中を見て回っている鳴海と潤
鳴海と潤はお土産屋の中を見て回りながら話をしている
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)すみれさんと一緒じゃなくて良かったのか?」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)向こうには紘と由夏理がいる、あいつらがついてりゃ問題ないだろ」
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)ふ、二人のことを・・・信用してるんだな」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)当然だ、じゃなきゃすみれを放っておいたりしねえよ」
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)そ、それもそうか・・・」
少しの沈黙が流れる
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)ブーケ、悪いな」
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)き、気にしないでくれ」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)あれはてめえが掴んだ物だったんだぞ」
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)た、確かに手に取ったのは俺だけどさ・・・俺が取ったんだから、俺の好きなようにしたって良いだろ?」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)由夏理みたいなことを言ってんじゃねえ」
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)べ、別に言ってないだろ」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)お前、由夏理にそそのかされてあいつに似て来たんじゃねえのか」
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)そ、そんなことはないと思うが・・・」
再び沈黙が流れる
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)す、すみれさんから聞いたぞ、け、結婚するのに苦労してるって」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)今はな。でもいつか苦労を終わらせてやる、俺はすみれと生きるって決めてるんだ」
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)あんたとすみれさんなら良い夫婦になれると思うぞ」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)てめえは意外と物事ってのを分かってるじゃねえか」
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)そ、そうだ、俺はちゃんと分かってるんだよ」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)威張ってねえで彼女を幸せにしてやれ」
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)か、簡単に言わないで欲しいんだが・・・(少し間を開けて)あんたには分からないだろうけど俺だって色々大変なんだぞ」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)大変だっつって苦労してる分男に磨きがかかるだろ」
鳴海「(お土産屋の中を見て回りながら)そ、そういう考えもあるのか・・・」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)おうよ」
少しの沈黙が流れる
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)早く下着を選んですみれたちのところに戻るぞ」
鳴海はお土産屋の中を見て回るのをやめて立ち止まる
鳴海「(お土産屋の中を見て回るのをやめて立ち止まり)そ、そのことなんだか・・・」
潤「(お土産屋の中を見て回りながら)何だよ」
鳴海「お、俺さ・・・さ、財布を持ってないんだ」
潤はお土産屋の中を見て回るのをやめて立ち止まる
潤「(お土産屋の中を見て回るのをやめて立ち止まり)財布を持ってねえ?」
鳴海「あ、ああ・・・だ、だから出来れば少し貸してくれないか」
潤「金もねえのにお前どうやって生きてるんだよ」
鳴海「い、いつもは持ってるんだ」
潤「人から金を借りる奴はみんなそう言うけどな、今日は持ってねえって」
鳴海「確かに・・・」
再び沈黙が流れる
潤「文無しで結婚式に来たってか?ご祝儀はどうしたんだ?」
鳴海「そ、そもそも俺・・・よ、呼ばれてないっていうか・・・」
潤「呼ばれてねえ奴がどうやって式場に入ったんだよ?」
鳴海「しょ、招待状を忘れた人がいたらしくてさ・・・お、俺も忘れたふりをしたら入れたんだ」
潤「てことは俺たちは招待状忘れ仲間か」
鳴海「わ、忘れたんじゃなくて招待されてないんだよ」
潤「じゃあ何だ、勝手に忍び込んで勝手に参加したのか」
鳴海「あ、ああ」
少しの沈黙が流れる
鳴海「そ、それで・・・か、金は貸してくれるのか・・・?」
潤「てめえは変人だ」
鳴海「きょ、今日の行動を考えると自分でもそう思うよ」
再び沈黙が流れる
潤「ブーケを金で買うのは解せねえ」
鳴海「ぶ、ブーケは親切心で譲ったんだ、だ、だから金を引き合いに出すのはやめてくれ」
潤「てめえの中では親切心だったのかもしれねえが、結果的には俺が金でブーケを買ったことになるんだよ」
鳴海「け、結果論は無しだろ」
潤「なら俺はどうすりゃ良いんだ」
鳴海「だ、だから少しだけ金を貸してくれよ」
潤「断る」
少しの沈黙が流れる
潤「くっだらねえ金の貸し借りでブーケの美談を壊しちまったらすみれが不憫でならないだろ」
鳴海「そ、それはそうかもしれないが・・・」
潤「すみれのためを思って着替えるのはやめるんだな」
鳴海「な、何でそうなるんだよ!!」
潤「すみれが不憫だって言っただろ」
鳴海「だ、だからってこれじゃあ俺が可哀想だろ!!」
潤「俺は、お前のことを、可哀想だとは、1ミリも、思っていねえ」
再び沈黙が流れる
鳴海「最悪だ・・・」
潤「一日くらい着替えなくたって誰も気付きやしねえよ」
鳴海「いや気付くだろ!!スーツだぞ!!」
潤「てめえが全く同じスーツを二着持って来てるかもしれねえじゃねえか」
鳴海「そんなふうに考えるのはあんただけだ!!」
潤「(呆れて)一日分の着替えでよく騒ぐ奴だな・・・」
鳴海「せ、せめて下着は替えさせろ!!」
潤「分かった、好きなようにノーパンで過ごして良いぞ紘の代理」
鳴海「どっからノーパンの話が出て来たんだよ!!」
潤「着替えがねえって大騒ぎしやがるからこの俺がノーパンの許可を出してやったんじゃねえか、つか生まれたままの姿じゃないだけ感謝しやがれ」
鳴海「ノーパンも生まれたままの姿もほとんど一緒だろうが!!」
潤「俺は全然違うと思うけどな、まあ好みってのは人それぞれか」
鳴海「好みで選んでるからどっちも嫌なんだよ!!」
少しの沈黙が流れる
潤「どうしてもってなら紘か由夏理に金を借りろ」
鳴海「あ、あの二人は・・・」
潤「二人が何だ?」
鳴海「い、いや・・・」
再び沈黙が流れる
少しすると由夏理、紘、すみれがサービスエリアの中に入って来る
由夏理、紘、すみれがサービスエリアの中に入って来たことに気付く潤
潤「(由夏理、紘、すみれがサービスエリアの中に入って来たことに気付いて)救世主が現れたぞ」
由夏理、紘、すみれはサービスエリアの中にあるお土産屋に行く
鳴海たちのところにやって来る由夏理、紘、すみれ
すみれ「(鳴海たちのところのやって来て)潤くん、キョドキョド、あっちに美味しそうな牛串が売っていたから、お買い物が終わったらみんなで食べてみない?」
潤「俺は大賛成だが、紘の代理には無理かもな」
すみれ「えっ?キョドキョドもしかしてお肉が苦手なの?」
鳴海「に、苦手ではないっす・・・」
少しの沈黙が流れる
由夏理「少年、今度はどうしたのさ」
鳴海「い、言ってなかったんだが・・・じ、実は・・・(少し間を開けて)金を持ってないんだ・・・」
紘「2年前も持ってないと言っていたな、確かボウリング代も俺たちが奢ったはずだ」
鳴海「あ、ああ・・・も、申し訳ない・・・」
再び沈黙が流れる
由夏理「なーんだ、そんなことか」
鳴海「そ、そんなことって・・・」
由夏理「(少し笑って)君が深刻な顔をしてるからさ、もっとやばいことを想像しちゃったじゃん」
鳴海「じゅ、十分やばいことだろ・・・」
由夏理「(少し笑って)少年にはすみれと潤から貰ったご祝儀で素敵な服を買ってあげる」
すみれ「ご祝儀を使っちゃうんだ・・・」
由夏理「(少し笑いながら)冗談だってすみれ、ちゃんと私のポケットマネーで払うからさ」
潤「俺たちが渡した金は取っておけよ」
由夏理「ん、万が一の時のために残しておくね」
由夏理はポケットから財布を取り出す
財布から五千円札を取り出し、鳴海に差し出す由夏理
由夏理「(五千円札を鳴海に差し出して)これで好きな物を買っておいでよ」
◯2119回想/服屋(約10年前/昼)
服屋の中にいる10歳頃の鳴海、30代後半頃の由夏理、16歳頃の風夏
服屋は広く、メンズ服、レディース服、子供服を含めて様々な服が売られている
服屋には鳴海たち以外にもたくさんの客がいる
服屋の中を見て回っている10歳頃の鳴海、由夏理、16歳頃の風夏
由夏理「(服屋の中を見て回りながら)二人とも好きな物を選ぶんだよ、進級祝いなんだしさ」
風夏「(服屋の中を見て回りながら)自分で買うってママ・・・」
由夏理「(服屋の中を見て回りながら)それはダメだって言っているでしょー、今日はママが好きなようにお金を使う日なんだからー」
風夏「(服屋の中を見て回りながら)じゃあママが欲しい物を買ったら良いじゃん・・・」
由夏理「(服屋の中を見て回りながら少し笑って)ママはもう欲しい物を全部持ってるの、だから鳴海と風夏に与えさせてよ」
風夏「(服屋の中を見て回りながら)そんなこと言われても何も欲しくないし・・・」
少しの沈黙が流れる
由夏理「(服屋の中を見て回りながら)な、鳴海は?何かあるよね?ゲームとかおもちゃとかさ」
鳴海「(服屋の中を見て回りながら)服は要らないと思う」
由夏理「(服屋の中を見て回りながら)鳴海、今の時代男の子もお洒落しなきゃダメなんだぞ。ママの友達の子だって・・・」
鳴海「(服屋の中を見て回りながら)ママの友達?」
由夏理「(服屋の中を見て回りながら)そ、そうそう。(少し間を開けて)と、とにかく服も大事なんだよ鳴海」
鳴海「(服屋の中を見て回りながら)ハンバーガー1億個欲しい」
由夏理「(服屋の中を見て回りながら)そ、そんなに食べられないでしょー?」
鳴海「(服屋の中を見て回りながら)でも欲しい」
風夏「(服屋の中を見て回りながら)1億個もあっても残すだけだよ、鳴海」
鳴海「(服屋の中を見て回りながら)色んな人に配るから大丈夫」
再び沈黙が流れる
由夏理は服屋の中を見て回るのをやめて立ち止まる、
ポケットから財布を取り出す由夏理
10歳頃の鳴海と16歳頃の風夏は立ち止まる
財布から一万円札を取り出し、10歳頃の鳴海に差し出す由夏理
由夏理「(一万円札を10歳頃の鳴海に差し出して)ま、ママトイレに行って来るからさ、こ、これでお姉ちゃんと一緒に好きな物を買っておいで」
10歳頃の鳴海は一万円札を由夏理から受け取る
由夏理「な、鳴海に危ない物は買わせないでねお嬢さん」
風夏「うん・・・」
由夏理はトイレに向かい始める
少しの沈黙が流れる
鳴海「お姉ちゃん」
風夏「欲しい物思いついた?」
鳴海「多分」
風夏「何?」
鳴海「木刀」
風夏「ダメ」
鳴海「何で・・・?」
風夏「私がママに怒られるし、ママが怒るとめっちゃいめんどくさいから」
再び沈黙が流れる
鳴海「ギャラクシーフィールドのキャラクターが剣を・・・」
風夏「(10歳頃の鳴海の話を遮って)それでもダメ、鳴海に怪我させられないし」
少しの沈黙が流れる
鳴海「じゃあハンバーガーが良い」
◯2120回想戻り/鳴海の夢/サービスエリア/お土産屋(約30年前/夜)
約30年前のサービスエリアの中にあるお土産屋にいるスーツ姿の鳴海、由夏理、紘、すみれ、潤
サービスエリアの中にあるお土産屋はとても広い
サービスエリアの中にあるお土産屋はお菓子、酒類、つまみ、キーホルダーなどのお土産や、文房具、衣服類、子供のおもちゃなど、様々な物が売られている
サービスエリアのお土産屋の中には鳴海たち以外にも家族連れ、カップル、団体客などたくさんの人がいる
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
五千円札を鳴海に差し出している由夏理
鳴海は首を横に振る
鳴海「(五千円札を由夏理に差し出されたまま)受け取れない」
由夏理「(五千円札を鳴海に差し出したまま少し笑って)別に遠慮しなくてもじゃん少年、ご祝儀でもないんだし」
鳴海「(五千円札を由夏理に差し出されたまま)あなたから金を受け取る気にはなれないんだ」
由夏理「(五千円札を鳴海に差し出したまま少し笑って)じゃあいつか五千円を返してくれれば良いって、私待つのは得意だからさ」
少しの沈黙が流れる
由夏理は無理矢理鳴海の手に五千円札を握らせる
由夏理「(無理矢理鳴海の手に五千円札を握らせて少し笑いながら)よし、後は君の手から戻って来るのを待つだけだね」
◯2121鳴海の夢/サービスエリア屋外/牛串屋台前(約30年前/夜)
約30年前のサービスエリア屋外にある牛串屋台前にいるスーツ姿の鳴海、由夏理、紘、すみれ、潤
サービスエリアはとても広く、駐車場にはたくさんの車やバイクが止まっている
サービスエリアの駐車場に止まっている車やバイクは全てデザインが古い
サービスエリアにはたくさんのお土産屋と、牛串屋台を含む焼き鳥、串カツなどの屋台がある
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
鳴海はお土産屋で購入した物が入っているビニール袋を持っている
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
牛串屋台で牛串を買っている由夏理とすみれ
鳴海、紘、潤は牛串屋台から少し離れたところにいる
話をしている鳴海、紘、潤
潤「結局てめえのせいですみれまで金を払うことになってるんだぞ」
鳴海「め、面目ない・・・」
紘「すみれを止めようとしなかった潤も悪いだろう」
潤「止める前にそそくさと買いに行っちまったんだよ!!」
紘「如何にもすみれらしいな」
潤「優しさが故の金の消費なんて色んな意味で泣けて来るじゃねえか・・・」
鳴海「すまん・・・」
少しの沈黙が流れる
由夏理が牛串を2本、すみれが牛串を3本持って鳴海たちのところにやって来る
すみれ「(鳴海たちのところにやって来て)買って来たよ」
潤「おう、ありがとなすみれ、思わず泣けちまうぜ・・・」
すみれ「(不思議そうに)泣ける・・・?」
鳴海「こ、こっちの話です」
すみれは牛串の1本を鳴海に差し出す
すみれ「(牛串の1本を鳴海に差し出して)はい、これキョドキョドの分」
鳴海は牛串をすみれから受け取る
鳴海「(牛串をすみれから受け取って)す、すみません俺の分まで・・・」
すみれは牛串の1本を潤に差し出す
すみれ「(牛串の1本を潤に差し出して)旅行なんだから美味しい物は分け合わないとね」
鳴海「は、はい・・・」
潤は牛串をすみれから受け取る
牛串の1本を紘に差し出す由夏理
由夏理「(牛串の1本を紘に差し出して少し笑って)喜べ少年、旅館のご飯も分けてあげるからさ」
鳴海「あ、ああ」
紘は牛串を由夏理から受け取る
牛串を由夏理から受け取って鳴海のことを見る紘
由夏理は牛串を一口食べる
由夏理「(牛串を一口食べて)なかなかいける味じゃん、胡椒も効いてるし」
すみれ「愛の味だね」
由夏理「ん、そうそう、愛愛肉味」
由夏理、すみれ、潤は牛串を一口食べる
鳴海「あ、新しい四字熟語になってるじゃないか」
由夏理「それだけ美味しいんだって少年、君も食べてみたら分かるよ」
鳴海は牛串を一口食べる
由夏理「どうどう?」
鳴海「た、確かに美味いな・・・」
由夏理「でしょー?後でおじさんにレシピを聞くかー・・・」
潤は牛串を一口食べる
潤「(牛串を一口食べて)紘、食わねえなら俺が貰うぞ」
紘は鳴海のことを見るのをやめる
紘「(鳴海のことを見るのをやめて)ああ」
紘は牛串を潤に差し出す
潤「(牛串を紘から差し出されて)本当に食わねえのかよ?」
再び沈黙が流れる
潤は牛串を紘から受け取る
紘「鍵を貸せ潤、先に車に戻る」
潤はポケットから古いピックアップトラック型の車の鍵を取り出す
古いピックアップトラック型の車の鍵を紘に差し出す潤
潤「(古いピックアップトラック型の車の鍵を紘に差し出して)白けさせる奴だ・・・」
紘は古いピックアップトラック型の車の鍵を潤から受け取る
古いピックアップトラック型の車が止まっているところに一人向かう紘
鳴海は古いピックアップトラック型の車の元に一人向かっている紘のことを見る
鳴海「(古いピックアップトラック型の車が止まっているところに一人向かっている紘のことを見て)ど、どうしたんだ?」
潤「俺が知るかよあんな馬鹿男」
潤は再び牛串を一口食べる
すみれ「由夏理・・・」
由夏理「(少し笑って)あいつ、結婚式を逃げ出した私よりも酷いよね?」
少しの沈黙が流れる
由夏理「ご、ごめん、い、今のは少しふざけただけだから忘れて」
再び沈黙が流れる
潤「追っかけてやるのか」
由夏理「うん・・・(少し間を開けて)私はいつも紘を追いかけているから・・・まあ・・・それでも私は・・・置いて行かれちゃうんだけどさ・・・」
潤「俺は逆だと思ってるけどな」
由夏理「(少し寂しそうに笑って)そんなことないって・・・」
由夏理は古いピックアップトラック型の車が止まっているところに向かってゆっくり歩き始める
古いピックアップトラック型の車の元に一人向かっている紘のことを見るのをやめる鳴海
鳴海「(古いピックアップトラック型の車がの元に一人向かっている紘のことを見るのをやめて)お、俺もあなたと一緒に・・・」
由夏理は立ち止まる
由夏理「(立ち止まって)あなたって私?」
鳴海「あ、ああ」
由夏理「別に良いよ、少年は来なくて」
鳴海「ち、力になれるかもしれないだろ」
由夏理「残念だけどそれは無理だと思うよ少年、君には関係ないことだからさ」
少しの沈黙が流れる
由夏理「すみれたちはゆっくり食べてて、私は紘と話をして来る」
由夏理は再び古いピックアップトラック型の車が止まっているところに向かってゆっくり歩き始める
古いピックアップトラック型の車の元にゆっくり向かっている由夏理のことを見ている鳴海
再び沈黙が流れる
潤「あの二人はああいう奴らだ、だから気にしないことだな」
鳴海「(古いピックアップトラック型の車の元にゆっくり向かっている由夏理のことを見ながら)ああいう奴らだと・・・?」
潤「そうだ、あれが紘と由夏理のやり方なんだよ」
鳴海は古いピックアップトラック型の車の元にゆっくり向かっている由夏理のことを見ながら、拳を強く握り締める
鳴海が拳を強く握り締めていることに気付くすみれ
◯2122鳴海の夢/旅館に向かう道中/高速道路(約30年前/夜)
スーツ姿の鳴海、由夏理、紘、すみれ、潤が乗っている古いピックアップトラック型の車が旅館に向かっている
鳴海、由夏理、紘、すみれ、潤が乗っている古いピックアップトラック型の車は約30年前の高速道路を走っている
鳴海、由夏理、紘は古いピックアップトラック型の車の後部座席に乗っている
すみれは古いピックアップトラック型の車の助手席に乗っている
潤は古いピックアップトラック型の車の運転席に座り、運転をしている
高速道路を走っている車やバイクは全てデザインが古い
鳴海たちが乗っている古いピックアップトラック型の車のコンソールボックスには、タバコの箱とZIPPOライターが置いてある
鳴海たちが乗っている古いピックアップトラック型の車の荷台の上には、由夏理、紘、すみれ、潤のスーツケースが乗っている
鳴海が着ているスーツは、◯2089、◯2090、◯2091、◯2092、◯2093で鳴海が風夏と龍造の結婚式で着ていたスーツと完全に同じ物
古いピックアップトラック型の車の後部座席には、鳴海がお土産屋で購入した物が入っているビニール袋、紘のスケッチブック、青いボールペンが置いてある
すみれはブーケを持っている
潤は一眼レフカメラを首から下げている
潤が首から下げている一眼レフカメラは古い物
外を眺めている鳴海
鳴海「(外を眺めながら 声 モノローグ)二人には二人のやり方が・・・」
鳴海は外を眺めるのをやめる
鳴海「(外を眺めるのをやめて)ライターを貸してくれ」
由夏理「私のは使い辛いからダメだって、潤のを借りなよ」
鳴海「あなたのが良いんだ」
少しの沈黙が流れる
由夏理はポケットから使い捨てライターを取り出す
使い捨てライターを鳴海に差し出す由夏理
鳴海は使い捨てライターを由夏理から受け取る
使い捨てライターの着火レバーを何度か押す鳴海
少しすると使い捨てライターの火が付く
由夏理「君、一体何をしてるの?」
鳴海「(使い捨てライターの火を付けたまま)火を付けてるんだ」
由夏理「(少し笑って)何のためにさ」
鳴海は使い捨てライターの着火レバーを押すのをやめる
再び使い捨てライターの着火レバーを何度か押す鳴海
鳴海「(使い捨てライターの着火レバーを何度か押しながら少し笑って)あなたに証明してる」
由夏理「証明って何を?」
少しすると使い捨てライターの火が付く
鳴海「(使い捨てライターの火を付けて)無理じゃないことを・・・(少し間を開けて)俺が火を付けられることをだ」
由夏理「君が器用なのは分かったけどさ、そんなことを私に示す意味が分からないよ」
鳴海は使い捨てライターの着火レバーを押すのをやめる
使い捨てライターの着火レバーを何度か押す鳴海
鳴海「(使い捨てライターの着火レバーを何度か押しながら)火は・・・あった方が良いだろ」
由夏理「少年がいたら困らないとでも言いたいのかい」
少しすると使い捨てライターの火が付く
鳴海「(使い捨てライターの火を付けて)昔・・・俺の知り合いが教えてくれたんだ・・・暗闇で大丈夫なように、明かりを見つけろって・・・(少し間を開けて)俺が火を付ければさ・・・あなただって・・・迷わずに済むかもしれないだろ」
再び沈黙が流れる
由夏理「少年、ライターを貸してごらん」
鳴海は使い捨てライターに息を吹きかけて火を消す
使い捨てライターの着火レバーを押すのをやめる鳴海
鳴海は使い捨てライターを由夏理に差し出す
使い捨てライターを鳴海から受け取る由夏理
由夏理は使い捨てライターを持ってない方の手で口を押さえる
右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを軽く振る由夏理
由夏理が右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを軽く振るとライターの中のオイルが混ざる音が聞こえて来る
右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを振るのをやめる由夏理
由夏理は右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを耳に近付ける
右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを耳に近付けてライターの音を聞いている由夏理
由夏理は右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターの音を聞くのをやめる
右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを耳から少し離す由夏理
由夏理は右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを一回振る
由夏理が右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを一回振ると、ライターを振ったのと同時にどこからか小鳥の鳴く声が聞こえ来る
右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを軽く振る由夏理
由夏理が右手で口を押さえたまま、使い捨てライターを軽く振ったのと同時に、またしてもどこからか小鳥の鳴く声が聞こえて来る
右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを軽く振り続ける由夏理
由夏理が使い捨てライターを振り続けている間、ずっとどこからか小鳥の鳴く声が聞こえて来る
右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを振るのをやめる由夏理
由夏理が右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを振るのをやめると、どこからか聞こえていた小鳥の鳴く声が止まる
右手で口を押さえたまま、再び左手で使い捨てライターを耳に近付ける由夏理
由夏理は右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを耳に近付けてライターの音を聞いている
由夏理が持っている使い捨てライターからは何も聞こえて来ない
少しの沈黙が流れる
由夏理は右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターの音を聞くのをやめる
右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターを耳から少し離す由夏理
由夏理は右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターの着火レバーを一度押す
由夏理が右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターの着火レバーを一度押すと、ライターの着火レバーを押したのと同時にどこからか犬の鳴き声が聞こえて来る
右手で口を押さえたまま、再び左手で使い捨てライターの着火レバーを一度押す由夏理
由夏理が右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターの着火レバーを押したのと同時に、またしてもどこからか犬の鳴き声が聞こえて来る
右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターの着火レバーを連続して何度も押す由夏理
由夏理が右手で口を押さえたまま、左手で使い捨てライターの着火レバーを連続して何度も押すと、同じようにどこからか犬の鳴き声で連続して聞こえて来る
少しすると使い捨てライターの火が付く
使い捨てライター火が付いたのと同時に、犬の鳴き声が消えてどこからか猫の鳴き声が聞こえて来る
潤「(運転をしながら)どこの誰だ俺の愛車で一人動物園をやってる奴は」
由夏理は左手で使い捨てライターの火を付けたまま、右手で口を押さえるのをやめる
由夏理「(左手で使い捨てライターの火を付けたまま右手で口を押さえるのをやめて)ごめん、賑やかな方が楽しいかと思って」
潤「(運転をしながら)ここは動物園じゃねえんだぞ」
由夏理「(左手で使い捨てライターの火を付けたまま)犬と猫と鳥しかいない動物園なんてあり得ないでしょー」
すみれ「でも由夏理は魚以外の物真似だったら何でも出来るんじゃない?」
由夏理「(左手で使い捨てライターの火を付けたまま少し笑って)魚も真似出来るってすみれ、目を見開いて口をパクパクすれば良いだけなんだからさ」
鳴海「す、凄いな・・・そんなに色々持ちネタがあったのか・・・」
由夏理「(左手で使い捨てライターの火を付けたまま少し笑って)嫌がられるからあんまりしないんだけどねー」
鳴海「お、面白いけどしつこくやったら反感を買いそうだな」
由夏理「(左手で使い捨てライターの火を付けたまま少し笑って)そうなんだよー」
再び沈黙が流れる
由夏理「(左手で使い捨てライターの火を付けたまま)少年」
鳴海「な、何だ?」
由夏理「(左手で使い捨てライターの火を付けたまま)夜道を歩くのにも、獣を追い払うのにも、重なった時計の針を止めておくのにも、必要なのは少しのファンタジー性と優しい火なのかもしれないって、私は思うんだよ。だって波音町は奇跡が起きる町とか言われちゃってるんだからさ、ちょっとくらい私たちの人生も、刺激的なおとぎ話みたいになってくれたって良いよね?」
再び沈黙が流れる
鳴海「あなたは・・・奇跡を信じてるのか・・・?」
由夏理「(左手で使い捨てライターの火を付けたまま少し笑って)そりゃ生まれた時から信じてるよ、私生粋の波音っ子だしさ、それにロマンのない人生なんてつまらないでしょ?やっぱり生きている限り冒険がなきゃね?」