雅志
二回目の投稿です。ご指摘を受け、まともな文章になったかと思います。…多分。そんな『雅志』をどうぞ!
雅志。これが俺の名前だ。
俺は今、4限目の授業を終え、飯も食ってぼーっとしている。多分他の人から、目を虚にし、口も半開きな変な人、と言われてもしょうがない……かも。
話を戻すが、親に自分の名前の由来的なものをきいたら、『雅な志をもつ人になれ』とあまりにも短絡的な由来に呆気に取られた記憶がある。まだ俺が7歳と、自分の物心がついてからの年月が、自分自身の年齢の半分よりも少なかったケツの青い少年であった。
そんなことはどうでもよくて、俺は相変わらず死んだ魚のような顔をしてぴくりとも動いていない。今の俺のような石像が街中に建っていたら、しばらくその石像のある町には行きたくなくなるだろう。そんな顔をしている俺が、魔がさしてSTAND UP!
なんで英語かって? 苦手な英語を克服すべく、日常で英語を使えば少しは偏差値上がるんじゃね? という安易な野望を抱いているからである。
そんな屁理屈はさておき、俺は教室の戸を開け、ジュースを買いに行こうとしたところ……
「きゃあ!」
黄色い声と同時に、日々の倦怠感をぶった切るようなフローラルな香がした。そしてそのまま俺の懐にぶつかってきた。その主は、同じクラスの特待生―折笠結衣さん。運動は人並みだが、勉強に関していえば駅すぱあと……いや、エキスパートである。おまけに美人。
「勉強できるからって調子こいてんじゃねぇぞ」
学ランをだらし無く着た不良が、教室前で殺気立ちながら折笠さんにからむ。
「す、すみません……」
「すいませんじゃすまねぇんだよ! スラックス汚れたじゃねぇかよ」
……ごめん。俺、状況がいまひとつ読めてないんだけど……?
「なぁ」
「何だよ! てめぇにゃ用はねぇんだよ」
魔がさしたので不良に話をきいてみた。
「一体この子がどうしたってんでィ」
「コイツが俺のスラックス踏んだんだよ! 転びそうになったんだよ」
「なるほど……で、それ以外はなんかしたの?」
「え……いや……それだけだ」
不良のペースが何となく崩れた気がする。
「……んで、君はこの子を許してねぇんだな?」
「そうだよ」
「謝ってるから……よくね?」
「スラックス汚れたんだよ」
「拭けばよくね?」
「うるせぇよ。メンド臭ェんだよ」
「じゃあいっそ気にしなくてよくね?」
「うるせぇんだよ! ウゼェんだよお前! 怒ってる俺が馬鹿馬鹿しく思えてきただろ!」
「……まあ相手はレディだし、見逃せば?」
不良は黙りこくり、去る間際に、
「お前……覚えとけy」
「あっ、そうだ。名前きいてなかったな」
「あぁ? ……檜山啓介」
「俺ァ……矢内雅志。よろしくな」
何だか本末転倒な展開になってしまったやりとり。でも、こんなのも悪くない筈。
数分後。俺は、折笠さんと一緒に廊下を歩いていた。流石の俺でもちょっぴり緊張していた。
「あの……さっきはありがとうございまタージマハル」
「……えっ?」
こんなに可愛い子がこんなギャグを……おもしろすぎるだろう。
「同じクラスの矢内君よネオアームストロング砲」
「うん、そうだヨークシャーテリヤ」
しまった! 完全にこの子のペースに乗っかっちまった!
「……うふ、貴方とは気が合いそ鵜の真似をする烏!」
……もういい加減よくね? あっ、そうか。折笠さんが美人の割にモテてない理由は本人がめちゃくちゃ個性的だから、と聞いたことがある。ひょっとしてこれか?
「さっきの人……悪い人じゃないのに、どうして……?」
ん、さっきとは違うシリアスな表情だ。うん、清楚だ。……なんて言っているバヤイではない。
「……ああゆう奴らは、素直に感情表現できねぇんだよ」
「そうなのですカールマルテルぅ?」
『ルぅ?』が不覚にも可愛い……。
「そんなもんサハラ砂漠」
もう諦めたわ。俺。
そんな話をしているうちに、始業のチャイムが鳴った。
「あ、やべえじゃん」
「マズイでスリリンゴぉ〜」
いやもうスリリンゴはいいから! 走ってるときによくそんなギャグが言えるな。
「あなた……選択は、物理……ですのね……」
折笠さんは、淋しげに言った。
「……なぁに、一生のわかれってわけじゃないさ。また帰りのHRでな」
「……はい!」
俺と折笠さんは分岐点に差し掛かり、バイバイした。
5限目が終了した。俺は相変わらず頬ずえをつき、学校の外の景色を眺める。だが、その俺の顔に、今までの倦怠感に溢れた表情はない……筈。何でかって? さぁ、なんでだろな。
いかがでしたでしょうか?しばらくは短編を書こうかと思います。これからもよろしくお願いします!