誰のせい
名津陽は自分の部屋に戻った後、ある人物とパソコンのテレビ電話で会話をしていた。
「やぁ名津陽、久しぶり。あの子は元気にしているかい?」
赤い髪の少年が画面を介して元気に話しかけてくる。
「あの子って誰。」
「あの子はあの子だよ。千咲都だよ。染谷の大好きな千咲都だよ。」
赤い髪の少年にとっては大事なことなので2回言ったらしい。
「染谷、千咲都のこと写真でしかみたことないだろ。」
「あるよ。」
名津陽が染谷と呼んだ少年の返答に少し驚いた。
染谷と千咲都が会っていたなんて記憶に全くなかったからだ。
「何回か。」
「そうだっけ」
うん、と彼は大真面目な顔で言った。ただしどこで会ったか彼は一言も述べてはいない。
名津陽は言及しなかったが、彼のいうみたというのは夢の中でのことである。
「染谷がどれだけ千咲都を愛してるか知りたいかもしれないけれど」
別にそんなどうでもいいこと知りたくもない。
ところでお前黒髪じゃなかったっけ、いいのか?染めても。あ、駄洒落じゃないぞ。
「染谷は一度も染めてないぞ?紅いのはただの返り血だ。さっき敵から襲撃を売られたから襲撃を買ってきたんだ。」
喧嘩じゃなくて襲撃で、血染めかよ。
名津陽の言葉を無視してにっこりと上機嫌な顔で染谷は話す。
「こっちの仕事がもうすぐ終わるんだ。だから、名津陽をころ…デリートして千咲都を自分の手で護るんだ。」
物騒なセリフが彼の口からでたが、名津陽は椅子の背もたれの上に頭を預けてダラダラしている。
「ちゃんときいてるのか?名津陽。」
「きいてない」
「きけよ!!大事なことなんだから!!!」
名津陽のパソコンのイヤホンからキンと染谷の声が漏れでる。
「きーきーうるさいな。だっていつも同じことしか言わねーだろ。」
染谷はコホンと咳払いをしてから、睨みながらこう言った。
「染谷は近々そっちに戻る!!そんでもって名津陽をデリートして、千咲都を
「やだね。」
遮るように名津陽が反論し、先ほどまで崩していた姿勢を正した。
「僕は最低の人間だけどそれでも兄の僕がいなくなったら千咲都が悲しむ」
「それは困る」
名津陽デリート案が一瞬で消失した。
「そうだ、それは困る。染谷は千咲都を泣かせたくはない。精神的にも守らないとな。」
染谷は勝手に自分で言って勝手に実行しようとする。
誰かがストップをかけなければそのまま実行しようとする。
染谷自信と千咲都のためならなんでも。
(千咲都を守る為には丁度いい奴だけど、思考回路がなぁ…)
まだ悩んでいる染谷に名津陽はこう質問した。
「そんなに僕を殺したい?」
「千咲都をあんな体質にしたのは誰だ?」
画面越しだというのに、冷たい空気が染谷のほうから流れ出てくるような気がした。
「染谷は昔は名津陽のことを信用していた。でもそれは間違いだった。咲夜ねぇが死んだのも「死んでねぇよ…」
名津陽は少し枯れた声で言うとデスクトップから視界を外し、横目で机の上にいつもある写真を見た。
赤いもので少し隠れているが、咲夜という少女が満面の笑みで写っている。
彼が問いかける。
「彼女が生きていたとしても、今ここにいないのは、」
誰の所為だ?