不死身の少年
外は雨。鍵の空いた玄関、掃除のされた綺麗な廊下。
シンと静まり返ったその家に 少年がただ一人、玄関から入ってすぐの1つ目の部屋のドアの前に立っていた。
彼の胸の心臓あたりに刺さっているモノを抜かず、触ることもなく、ただただ呆然としながら立っていた。
少年はただ一人、その部屋のドアの前で立っていた。
「なんで…」
毎日公園で笑って、元気に駆け回っていそうな小学生くらいの少年。その顔から笑顔は消えていて、絶望に満ちていた。
「そうだ、これは夢だ。」
そう思うようにしても何故だかわかってしまう。これが現実だと。
「僕だけ?」
周りを見渡しても息をしているのはただ一人、少年だけだった。刺さるモノからの違和感があっても痛みはない。
ただ1人、少年は立っていた。
どうして心臓を貫かれているというのに。
「なんで僕だけ生きてるの?」
その小さな問いに、誰も答えるはずがなかった。
ー数年後
『山川』
そう書いてある表札の前に、一人。
自分はは立っていた。暫くここで勇気が無さすぎて立っていたがそろそろ押さないと完全に不審者だ。
「今度は失敗しないようにしないと。」
深い深い深呼吸をしてインターホンを押そうとしたが、自分はその手を止めた。
どけy、俺hあiつw殺すnだあいtをこr
右方向数メートル程先、訳のわからない言葉を発しながら男が近づいて来る。 ヒゲは伸ばしっぱなしで少し小汚く、灰色のスウェットを着て、右手には包丁を持っていた。
呂律の回らない声はよくよく耳を澄まして聞いてみると、
『どけよ、俺はあいつを殺すんだ。』そう言っている。
言葉の翻訳を終わらせると、その男に向かって歩き始めた。包丁を持っている人間が目の前にいるというのにもかかわらず、自分が笑っているのがわかる。
この緊張をほぐす為にも軽い運動相手になって貰おうとしているのだ。
sおこをdけ
あなたの憎んでる相手はここにはいないよ、と話してみる。このやり取りはいつも宇宙人との交信をしているような気分になるのだが、特に必要でもないがもしかしたらと期待してしまうのだ。
男は虚ろな目で、自分に近づいてくる。
dおkえ
その男は「どけ」と言った。
だが一歩も動かない。
「もう、目先の事しか考えれないんだな。」
自分は躊躇なくその男の包丁を持った手首を、ギリキリと掴んだ。
いtあi
『いたい。』
yあmえrお
『やめろ』といっても彼は手を離さない。
「ごめん手加減できないんだ。」
itあiyめrお
『痛い、やめろ。』
ボソリと呟く。
「オレ、痛いとかわからないから。」
一気にその男を押し倒し、動けないようにして言った。その際刃物が当たって、幾つかの切り傷ができたが、一切気にしていない。
「あなたが憎んでるやつはここにはいないよ。それに刺しても何もいい事なんてない。」
iyあdあさsうkおrおす
やはり無理なのか。
しょうがない、と掴んでいた両手を離した。
オレのことなら、
『刺してもいいよ。』
ぶすりと、身体を貫く音がした。