第5話『白と黒?』
「またその話か。何度も言っている、返せも何も私は知らないと。」
物事には限度があるべきだ。
ついてはいけない嘘だってあるのだ、いくら不思議な世界だからといって、太陽が貸し借りできる物でない事は万人の共通、頭おかしいんじゃないか。
「あなたが太陽を白いから気に入らないと言った日から、水が抜ける様にあの白き太陽は萎んでいってしまったのよ。あなたが盗んだのよ。」
……この世界の太陽は恒星では無いのか?
太陽系の全天体に重力の影響を与える太陽はそんな水風船みたいに萎むのか!? 。
「私ではない。お主こそあの麗しく丸い月を、半分にしたのであろう。今や月は食べかけのクッキーだ……お主に食べられてな。」
「お生憎様、月なんて食べても美味しくなさそうだもの。興味ないわ。」
……。
「食べる食べないの問題じゃないッ! 頭おかしくなるわ!」
思わず叫んでしまった。思いがけない言葉の連続に脳の機能は停止し、熱さや冷気を感じる神経までストップした。
だから起き上がって言った。
「だっ誰だ貴様! 」
「いつからそこに! 」
「気づかなかったの!? 僕はきっと気づいてはいるけど、あえて放置されていると思ってたから、その虚しさに耐えきれなくなって起き上がったってのも実はあったりする! 」
「てっきり死体かと……」
「それはあたしのセリフよリアリー……」
「確かに死にそうになった……ってそこじゃない! もう訳が分からない! 起きたら変な世界だし可愛い少女二人に会えるし、そこは嬉しいけど。誰か説明してくれぇ~!」
少女達がどこか天然で、姉さんに共通する一面を感じた為、頭を掻きむしる。
「……こやつ。何を嘆いておるのか知らんが面白いやつだ……見よメアリー、私の黒に白を持ち込んでいる。」
「あら。それもあたしのセリフねリアリー……あたしの白に黒を持ち込んでいるのよ」
「はぁ?」と言いかけ、ハッとして自分の服と今立っている位置に目をやる。
僕が着ていた服は白と黒のボーダーTシャツだった。