第3話『戦場と化して』
自惚れこそ原動力。
僕が再び、目線を右へ左へ向けると太陽と月が同時に出ている白と黒の世界だった。
何度見ても、異様な景色に変化はなかった。
もう半分が暑くて半分が寒いこの状況に身体は慣れ始めているんだから、人間は今日この時まで生き残ってきたのだろう。
人類よ、アッパレ。
「……まずは、探索……よりも……よりもなんだろう。」
そう言って首を左へちょっと傾ける。
その瞬間、均等に保たれていた暑さと寒さのバランスが崩れ、暑さを少し大きく感じた。
言うまでもなく元の位置に、均等なバランスがある位置に、首を戻した。
「まずい……動けない。……て、喋れるんじゃないか。」
人類の適応力に驚いた。動けないという絶望的な状況、加えて寝たままの状態であることを差し置いてまで、喋れることに感動した。
少しの変化を求めて、状況打破を試み四肢に力を込める。
ピクリと動いた。これはいけると四肢を開いてみる。つまり開脚をする。
「何事もやってみないとわからない……か。僕のためにある言葉だな」
僕は今、白黒境界線の上で大の字になっている。歴史的快挙であると宣言しようじゃないか。
「……空しいという言葉も僕のためにあるようだ……ん、ん?」
ゴウゴウと白い砂と黒い石が唸る轟音を四肢が感じとった。
ビリビリと空気がうねる。
まるでなにかが行進してくるような地響きに僕の体がバイブレーションする。
「……えぇ……本当にやばいな……」
ただでさえ危機的状況でありながら、左側から白く輝く鎧を纏った大軍が進行してくる。
白い砂を巻き上げ進行するその軍は雪崩を彷彿させる。
ちなみに雪崩を見たことはない。
右側からは、黒く輝く鎧を纏った大軍が進行してくる。
黒い石はガラスのようにその軍を反射し、逆さ富士ならぬ逆さ軍といえる神秘的な光景がそこにはあった。
逆さ富士ももちろん見たことない。
白と黒の様子を交互に見ていたため目が痛く。幻覚が見える。
豊満な乳をバインバインと揺らしながら姉さん達が手を振ってる。
「石の上にも三年。動くべからず。」
目を閉じ、大の字のまま、僕はその場でやりすごすことにした。