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白黒リータ!  作者: ヒラ系
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第15話『浴場までの大冒険?』

「デザートはまだか~?」


「はい、ただいまお持ち致します。」


 満面の笑みを傍で控えていたメイドに向け、そう告げたリアリー。

僕がやっと半分食べきったところでリアリーはすでに食べ終わりデザートを持ってこさせたのだ。


「食べるの遅いのが悪い」


「いや別にデザートを待ち望んでたわけじゃないけれど。」


スッと僕とリアリーの前に、見慣れた細くて長い黄色の”デザート”が運ばれてきた。


「わぁ~い! バカナ~!」


「いやバナナやないかい」


やはりバナナだった。

言葉が微妙に違うらしい、会話する分には何支障ないが、あまりに予想しやすくイラっとしてしまう。


「……ちなみにどうやって食べるの……?」


「うむ、こうだ。」


 そう言ってリアリーはバナナの皮をむき始めた。

中から白い実がでてきたというか、皮の裏に存在していたというか、何と言うかバナナだった。


「もういいや……」


「ん、お腹いっぱいか? じゃあバカナは私が頂くがいいか?」


「うん、あげる。色んな意味でもういっぱいだよ。」


「ふんっ。一度手放せばもう私のものだ。いくら欲しいと言ったって返却はせん。」


「ごちそうさまでした~」


誰かと食事することが随分と久しぶりなわけで、色々な意味でお腹はいっぱいになったのだ。


「公よ! 」


席を立ち上がり客室へ戻ろうとする僕をリアリーが呼び止めた。


「疲れたであろう。浴場にでも行くといい。」


「い、いいの?……ありがとう。じゃあ遠慮なく。」


「うむ! 三十分あれば十分か?」


「うん?うん、それだけあれば疲れも取れそうだよ、ありがと~」


 普段三十分も湯舟につからないし。

なんて考えていた僕はこの後とんでもない状況に行き合う。


 ちなみにこの時はロリとバナナの組み合わせに全神経を集中させていた。

本当に手遅れである。


「……やばい、ここどこだ。」


城内。それはわかってる。でもそれだけしかわからん……案内してもらえば良かった。


 延々と続く赤絨毯に目をやられたせいか全て同じ道に見える。

こんな時に限って誰とも会わない。とことんついてないな、僕は。


 それから城内を歩き回り、風呂を探す最中、妹はどこからどこまでが妹なのか、妹とロリータの違いはどこなのか。

そんな事を考えていた。


 外は変わらず、煌々とした月明かりと、街から漏れるオレンジ色が美しい。


「やばいな本当に……リアリーが言ってた三十分て、やけに長い時間だなと思ったら城内が広すぎるからだったんだ……」


 今になって真意に気が付くという有様。普段からまともな思考してないもんな……。


『お兄ちゃん自分の事よくわかってるじゃん♡』

と、脳内妹ピンクちゃん。


「……勘のいい妹は嫌いだよ。」


『ふふふっ♡わたしを創ったのもお兄ちゃんなんだよ?♡』


「妹に嫌の事言われても、うざいのは変わらないんだな。姉にだって悪口言われた事無いのに!」


『そもそもわたしの存在は空想なの♡ 一人で自問自答していて楽しいの?♡』


「だ~ま~れ~!!!!」



「……なにしてるんですか、公殿……」


 廊下で一人騒いでいると、後ろから声をかけられた。

恥ずかしさよりも、実在する人間の声が聞こえた嬉しさに僕は跳ね上がりその声の主に飛びつく。


「うわぁ~ん!! ジジさ~ん!! 」


 その声の主はリアリーに蹴り飛ばされ、星屑になったはずのジジだった。


「うおぉっ。痛いです公殿、いきなり飛びついてくるなんて。ジジにそんな趣味はありませんよ。」


「同意です。ありませんよ俺にだって、ただこれは抱き着いた方がいい流れでしたので。」


「流れも何もないでしょう。察するに迷子の様ですが……公殿。」


「あ、そうでした。風呂を探しているんですが見当もつかなくて……」


「……お一人で喋り出してしまう程に衰弱しているのですね。」


「はて。何のことでしょう。」


 なんとも運命的で暴力的な再会であろうか。

もうジジさんには頭があがらない。僕の真実を見られてしまった。


 情緒不安定、これは僕の為にある言葉であろう。

それにしたって、なんて優しいんだジジさん。僕は最初からわかってましたけどね。


「ここから何分くらいかかるんですか?」


 案内をしてくれるジジさんと肩を並べ歩きだす僕。

肩を並べるというのは、一緒に歩いてるって意味であり、別に僕が身長大きく見せる為に表現で背伸びしたわけじゃない。


「大広間から直進して右に曲がれば浴場です。二分くらいかと。」


探索していた時間は間違いなく無駄であった。

 リアリーが言っていた三十分は何の数字だったのか、一般的に考えて僕は数分しかお湯に浸かれないのだ。


「ジジさんの名前って面白いですよね、リアリーが付けてくれた愛称って感じですか?」


「……名前に関しては二度と聞かないで下さい。」


ジジさんの顔は急に強張ってしまった。

聞かれたくないことだってある。僕は咄嗟に「すみません」と頭を下げた。

僕は聞かれたくない事を自然に聞かれたけれどね。


「まあいずれ話す機会もありましょう。さあ公殿、浴場に着きましたぞ。」


 僕が浴場を探すのに挫折した場所から本当にすぐだった。

何はともあれ、ジジさんと少し仲良くなれた気がするし?これはこれで良しとしよう。


 浴場も食事する場所と同じく、鉄製の扉が出迎えてくれた。


「お疲れのところすみませんでした。ありがとうございます助かりました!」


「いえいえ、ごゆっくりとおくつろぎください。」



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