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棺はインテリアに入りますか?

こんにちは!

はじまりました。

作者の趣味と妄想を詰め込んだだけのお話です。

よろしければお付き合いください!

よろしくお願いいたします。


俺の名前は黒江 静。

父親は冒険者、母親はパートタイマー、姉はゴリラのどこにでもいる普通の男子高校生である。


今春で高校3年生、つまり最高学年となったわけだが未来は未だ見えない。やりたいこともないし彼女もいない。


そんな俺はクラス替え直後のあまり慣れない微妙な空気の学園生活から帰宅して、直後自室前で茫然と立ち尽くしている。


なぜ、俺が自分の部屋を目前に呆然と突っ立つはめになったのかというと、部屋の前に立ちふさがるように鎮座するその箱状の物体のせいにほかならない。


身長171センチの俺の肩ほどまでも背丈のあるそれはぎらぎらと黒光りしていて妙に古臭い。

所々に嵌め込まれた赤色の宝石っぽい何かが廊下の蛍光灯の光を安っぽく反射する。


ああ、ああ、はい、はい、なるほど。

今度はこれか、これ……というかなんだこれ棺?………棺………棺!?



瞬間すべてを把握した俺は踵を返して隣の部屋の扉を痛烈に叩きまくった。ダメージを受けるのは勿論俺の拳だけだし、正直そんなに連打する意味もないけど、それはまあ置いておこう。



「おい!こらァ!こんっのくそお姉!!」


先にいっておくが俺はこんな乱暴でキレやすい人間ではない…と思う。

だけどわかって欲しい。俺が内弁慶であることと、この姉の今回ばかりは許容しかねる仕打ちのことを。


「ぐはぁっ」



「まったく、うるさいわ〜そんな乱暴に叩いたら壊れちゃうじゃない」


ガチャっとかではなくビターーン!とすごい勢いで開いた外開きの扉に俺はあえなく吹き飛ばされた。



ねぇ、シズ?とにたりと微笑んだお姉にひいぃと漏れそうになる声を飲み込みきった俺は偉いと思う。


この茶髪の巻き毛(お姉に言わせるとゆるふわモテ髪)こそが、俺の姉、黒江 悠“くろえ はるか”である。通称、ゴリラ、又はマウンテンゴリラ、もしくはゴリラ・ゴリラ・ゴリラ。



「お姉!!あれ、なんだよ!棺って、さすがにふざけんなよ」


「ああ、サイズをミスったのよ。仕方がないじゃない」


サイズをミスった!?そもそも棺はミスってないの?棺を買うことは正しかったの?仕方がないじゃない??仕方ないわけないじゃない!


「お姉、棺って分かる!?死体入れるやつだぞ?分かってる?ひ、つ、ぎっおぶふぇ」


ビンタされた。

なんだこのゴリラ、もしかして知能がないのだろうか。

知能のないゴリラなんてただの凶悪な筋肉だ。

それからこのゴリラはおまけにセンスもない。

庶民のくせに成金趣味っぽいのが非常に寒い。にしても棺は無いけど。

センスの欠片もない理解不能なものをすぐにポチって家をカオスにするとんでもない筋肉である。


「知ってるわよ。うるさいわね。通販でぽちったんだけどサイズが大きすぎるからいらないわ。シズにあげる。

あと、お姉さまって呼べって言ってんでしょ。殴るわよ」


シズ、いらない!棺を安易にポチるな。

それからもう既に殴られましたから。…あ、ちょっと待って、そういうこと?グーでも行くよってこと?ごめんなさい、それは勘弁。頭が消し飛ぶ。



誰がこんなゴリラをさま付けなんぞで呼ぶものか。

お姉って言ってると思ってるだろうけどね、違うから、オネエって呼んでるから心の中で。



「とにかく、こんなん怖いし、使い道ないし!絶対これ中古だし!怖いから!いらないから、どうにかして」


「知らないわよ、いらないならシズがなんとかしたらいいじゃない。あ、ベッドにでもしたら?」



「ひいぃ、毎日悪夢見そうだわ!ていうかなんとかできねえよ、こんなん運べるの怪力のお姉くらいし…ぐふぅ」


グーで殴られた。そして棺にもたれかかってしまった。ぞわぞわと全身の毛が逆だった。

だって、中古の、棺…!

自慢じゃないけど俺はかなりのビビりである。

ポーカーフェイスを気取ったりすることもあるが正真正銘のビビりである。

幽霊の類と対峙するくらいならまだ飢えた野良犬の方がマシだ。

ビビりまくった結果、足元で小粋なステップをふみ、おろしたての靴下が床を捉え損ねた。

傾く視界の中でふんっと鼻を鳴らすお姉が映る。

ちょっと待て、見てないで、助けなさいよ、あなた!

………え?ちょっと待って……いま………。


俺と共に傾いていく黒光りするそれはその重量のせいかまたたくまに傾きを増加させてビッターーーン!と大変な騒音をたてて横だおれになった。


俺はと言うと、拍子に棺の平らなところで顎を強打して蹲ったが、痛みになど構っている暇はない、瞬時に立ち上がって涙目でお姉を見つめた。


「なによ?」


「お、お姉……」


「だからお姉って言うなって言ってるでしょ…ちょっと顔青すぎない?シズそんなに痛かった」


「違うんだ…お姉、いま………あの中、ドンって言った。」



「………は?」


痛かったに決まってるだろ。走馬灯も駆け巡りかけたよ。知らないけど。

そんなことより、共倒れする時、顔が触れるか触れないかの時、確かに聞こえた。

そこそこの重量があるものが中で体重移動をする音を。


「…………お姉、あの棺…中、入ってるんじゃ……」



わなわなと震える俺が指を指す瞬間と棺がギギギと言う不可解な音を出すのはほぼほぼ同じだった。










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