俺みたいなお父さんから許可は出さないと誓ってヤバイ
メテオによって溶けた雪が再び積もり始めた。回収し脱出ポット3個はダークアダマンで出来ており、レンヤガールズを大事にしていた事がわかった。だが、レンヤは自分が負けるとは思っていなかったようで、その脱出ポットからの脱出方法がなかった。何しろ丸い球体なのだ。ボタンもなければ溝も無い。中身が生きているのかもわからないのだ。
中の娘達がいきなり攻撃しても大丈夫なように、マモルとノリコに付き添ってもらいながら『分解』で脱出ポットを壊す。
レンヤガールズ達は爆睡していた。爆睡というかコールドスリープか。中の安全を保つ最善の努力をした結果なのだろう。
ひとまず起きるまでは縛って神殿のベッドに寝かせておくことにした。
聖竜の神殿はレオヴァイザーが何度も吹き飛ばされて激突したせいで、ボロボロの穴だらけになってしまった。価値のある美術品も多数あったようだが今や原型をとどめていない。
「あんなもん人間が勝手に持ってきたゴミだ。それよりも神殿が穴だらけなのが困る。寒くてねれないじゃないか」
「あら、お姉さま。新しい神殿ならもうあるではないですか。ほらそこに」
邪竜がレオヴァイザーを指さしながら答えた。
「そうだったな。あれはいい神殿だ。ウヒヒヒヒヒ」
「お前ら俺のレオヴァイザーを勝手に神殿にするんじゃない」
「いいではないですかヤマト~」
「こんな穴だらけの場所に住めというのか! 鬼! 悪魔! この魔王!」
「ささ、お姉さま早く神殿に戻りましょう」
「うんうん。そうだな帰ろう。私達の新しい神殿に」
お前ら俺の話を聞け。レオヴァイザーを勝手に神殿にするんじゃない。こそこそとレオヴァイザーに乗り込むんじゃない。
「ヤマト様。どこの誰かがわからない者が勇者や魔王になるより、信頼できる方が現れるまでお預かりした方がいいのでは?」
「セリス。それはそうだが、これじゃまるでお父さんじゃないか。どこの馬の骨かわからん奴にうちの娘はやらん! って感じだぞ」
「すでにレオヴァイザーは大所帯になっていますね」
俺、セリス、アップウ、ポポル、マイ、エイジ、ノリコ、マモル。
聖竜と邪竜まで住むようになったら10人だ。最早マイホームじゃなくてシェアリングホームではないか。ディメンションマンションを希望したい。
そんな事を考えていたら、ノリコがこっちに歩いて来た。
「ヤマト。一人起きたにゃん。確かグリフォンに乗っていた奴だにゃん」
「そうか。まともに話せそうな奴が一番に起きて良かった」
グリフォンに乗っていたのは確かジョゼというメイドっぽい話し方の女だったはずだ。他の無口な女とツンデレぽい女より幾分か話しやすそうだ。
セリスを連れて起きたジョゼと話をしにいく。
ジョゼは縛られたままベッドに座っていた。その横にはユニコーンのサリアとハーピーのセイラが眠っていた。
話しかけようと俺が前に出ると、ジョゼのほうから話しかけて来た。
「貴方が白獅子の操者ですか?」
「俺が白獅子……レオヴァイザーの操者だ」
「……ご主人様はお亡くなりになったのですね」
「ああ」
一瞬口元を噛みしめるような表情をしたが、ジョゼは涙も見せずに話を続けた。
「出来ればご主人様の最後を教えて頂けますか?」
俺は事細かにレンヤとの戦いについて説明した。キングベヒーモスに変化した事や、メテオの事。最後は『遠隔操作』で殺したことも隠さずに話した。
「レンヤぁぁぁぁぁああああああああ」
「……レンヤ」
いつから起きていたのか、残りの二人も俺の話を聞いていたようだ。大声で泣き始めるサリア。無表情だが、薄っすら涙を見せるセイラ。その眼には明確な殺意が読み取れた。
「言い訳するわけじゃないが。攻撃してきたのはレンヤの方だ。俺達から襲い掛かった訳じゃない」
「だからって殺さなくてもいいじゃない! レンヤは世界を救おうと頑張っていたんだよ!」
「サリア!」
興奮して泣き叫んだサリアをジョゼが怒鳴りつけて黙らせる。ハッとした表情で黙るサリア。セイラもサリアを睨んでいた。
「俺が聞きたかったのはそれだ。世界を救うっていうのはなんだ? ギバライ王を騙してヴァチ国に戦争を仕掛けた理由はなんなんだ?」
黙る三人。
「ヤマトッち。ワタシのダンスで吐かせちゃう?」
軽くステップを踏むマイ。
「口を割らせるのなら得意だにゃん」
猫じゃらしのようなモフモフの棒を揺らしながらニヤニヤするノリコ。
「いや、やめとこう。無理やり吐かせて話を聞いても、メンドクサイ事に巻き込まれるだけだ。世界を救うとかそういうのは勇者様がやればいい」
もっともその勇者になるには俺というお父さんの許可がいる訳だが。
「ヤマト様。ではこの三人はどうしましょうか? 生かしておくと危険では?」
鞘からミスリルの剣を出し、殺気を放つセリス。流石生粋の異世界人、転生者とは命の考え方が違う。俺とマモルとエイジは思わず身震いしてしまった。
「ヤマトも大変だな」
「うむ」
震えながら小声で話すとエイジとマモル。
「うーむ。ここに置いて行くか。流石に女の子を目の前で殺すのを見るのは出来ない」
「そうですか。ヤマト様がそう言うのならそうしましょう。ただし、再びこちらに襲い掛かって来た時には許しませんからね」
チャキッという音を立てながら鞘に剣をしまうセリス。恐ろしい殺気が消えた。
「お待ちください。私達をギバライ国まで連れて行って貰えないでしょうか?」
「ジョゼ!!」
突然の配達依頼を口にするジョゼとそれを止めるサリア。俺は運送業でタクシーやバスじゃないっていうの。
「無理を承知で言います。どうしても見て頂きたいの物があるのです。事情があって話は出来ませんが、ご主人様を討たれた貴方方なら……」
「……セイラもそう思う」
「ジョゼ! セイラまで! レンヤを殺した相手だよ! 」
「黙りなさいサリア。ご主人様が亡くなった今、誰が継ぐのですか?」
「……」
ジョゼとサリアとセイラが深々と頭を下げた。
「お願いします。ヤマト様。ギバライ国で見て頂きたい物があるのです。3人の内一人でも変な行動を取ったら全員殺して貰っても構いません。」
「……まったく殺す殺さないとか異世界は物騒だな。わかった。ギバライまで行こう。ただし、その後どうするかは見てから決める。それでいいか?」
「はい。それで構いません」
みんなの顔を見わたしながら聞く。
「みんなもそれでいいか? 嫌なら付いてこなくてもいい」
「ヤマト様がそういうなら」
「勿論オッケー」
「女の願いを聞かない男なんていないさ」
「しょうがないにゃぁ」
「うむ」
「ポポルもギバライ行くー」
「ポポルはモリオアに置いて行く!」
「えええええええええええええええええ」