俺まで隕石に巻き込まれてヤバイ
セリスが祈るように瞳を閉じた。
俺は短距離便高速移動を使って急遽駆けつけ、ディオニュソスめがけて振り下ろされたキングベヒモスの両手剣を盾防御術で弾く。
「お前! 生きてやがったのか!」
「待たせたな」
驚愕の表情を見せるレンヤ。そりゃそうだろう。確かにレオヴァイザーの脇腹は切り裂かれ、大きな穴が開く程だったのだ。手応のバッチリあったレンヤの前に、無傷のレオヴァイザーがいたのだから。
「白獅子ぃ! 誰が助けろと言ったぁ。ああん?」
「白獅子さんありがとう!ジンは素直じゃないから!」
「ご主人様は感謝してますワン」
「ッダーうるせえうるせぇ」
「礼はあいつを倒してから聞こう」
再び両手剣を構えるキングベヒモス。その姿は怒りに震えていた。
「倒す? 俺を倒すって言ったのか? ハッハッハッハッハ!」
「ああ。すまんがそうさせてもらう」
睨み合う三機の聖獣機。小降りだった雪が降り止んで視界が広がる。
「黒いの。邪魔だから下がれ」
「ああん? うるせーよ。やられたまま帰れるかっての」
「そうか。じゃあ俺の邪魔はするなよ」
「お前こそな! 疾風迅雷!」
ディオニュソスが高速で動き出す。どうやらスピードを上げるスキルのようだ。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。あまりの速度に俺も見失ったけど。
ディオニュソスは放っておいて、こちらもキングベヒモスへ向けてホバーで突撃する。
「吹き飛べッ! 王者の烈風!!!」
突進して来たレオヴァイザーに対して、例の技が来る。ボールにされたアレだ。
防御せず、高度跳躍で回避する。地上を見ると、俺が居た位置の後ろにキングベヒモスが両手剣を構えていた。そこにワタシはいません。泣かないでください。
「チッ! 二匹揃って消えやがって!」
「鈍臭い亀やろうに合わせてらんねぇんだよ。乱れ手裏剣! ダララララッ!」
闇のオーラを纏った手裏剣を放ちながら高速移動する黒豹。
キングベヒモスの聖障壁を削る。しかし、残念ながらその硬い装甲に弾かれていた。
「スピンスラッシュ!」
上空から加速し、キングベヒモスの背中めがけて回転斬りを放つ。
無常にもゴールドダークアダマンの装甲がヴァイザーソードを弾く。
「背面逆襲脚!」
俺が背中に攻撃した事により、キングベヒモスの強烈なカウンターが発動する。
狙い通り。盾防御術で巨体の飛び後ろ回し蹴りを弾きとばす。
たまらず地面に転がるキングベヒモス。
「ヤマト〜今だよ!」
「わかってる! 獅子、じゅーも・・・」
「ヘヘッ! 頂き! 雷光二刀流ッ!」
倒れたキングベヒモスにディオニュソスの雷光二刀流が直撃する。が、弾かれてしまった。
「邪魔するなと言っただろ」
「あぁん? お前がウスノロだからだろ!」
「ちょっと〜二人とも〜」
「喧嘩してる場合じゃないです」
猫耳妖精二人が俺達の喧嘩止める。
キングベヒモスはすでに立ち上がり、魔力を貯め始めていた。
大地が揺れ、周りの空気に緊張感が走る。
「どこまでもコケにしやがって。俺は選ばれた転生者なんだ! 俺が世界を救う! 邪魔するな!」
「だから救うって何からだよ。俺は世界を滅ぼそうなんてしてないぞ」
「カッー!これだから今時の若者はよー! 自分が救世主ってか? おめでてぇな」
「うるさい! お前らは知らなくていい。どうせ今すぐ死ぬんだからな」
キングベヒモスに莫大な魔力が集まる。尋常じゃない技が来るのは間違いない。
「超合成隕石落下!!! ハッハッハッハッハハーハッハッハッハッハ」
魔力により合成された隕石が、俺達めがけて降り注ぐ。どの隕石もレオヴァイザーと同じくらいの大きさだ。
ダークアダマンに捕らわれた仲間に遮りの盾をかけ、聖剛壁と城壁防御を使用する。
本物の隕石ではない。あくまで擬似的な隕石だが、その破壊力は凄まじかった。
熱風が辺りを支配する。爆炎と煙で周りは見えない。
遮りの盾が上手く効果を発揮していればいいが・・・
仲間じゃないディオニュソスは爆風で吹き飛んでいた。おさらばでごんす。
爆煙がおさまり、辺りが明らかになる。
雪原は熱で溶け、中心には魔力を使い果たしたキングベヒモスが立ち尽くしていた。
無論、レオヴァイザーも無傷ではない。仲間七人分のダメージを肩代わりしたのだ。
ヴァイザーシールドは吹き飛ばされ、盾を持っていた左手はもげた。
各種装甲は溶け、中のミスリルが見えていた。
だが。
ギリギリ動けた。
ホバーでベヒモスの前に進む。
「ハァハァ・・・お前なんで動けるんだハァハァ」
目は血走り鼻血を流しながら息も絶え絶えのレンヤ。
レオヴァイザーの残った右手でキングベヒモスに触る。
「無駄だ。どんな攻撃もハァハァ、ダークアダマンを、錬金術士の、装甲は、ハァハァ、無敵だ」
俺はレオヴァイザーの右手を通じて念じる。
「悪いなレンヤ。俺も錬成術使えるんだ」
「なん・・・だと」
「分解!」
対ベヒモス用に覚えた一つ目のスキル。錬金術士のスキル『分解』。もともとは錬成に失敗した時に使用するスキルで、錬成した金属を再利用する為のスキルだそうだ。
分解が発動し、キングベヒモスの装甲が溶ける。
「なっ、馬鹿な・・・」
胴体の装甲が溶け、剥き出しとなったところへヴァイザーソードを当てる。
ギシギシと音を立てるレオヴァイザー。こちらも限界のようだ。ソードで貫きたいところだが、押しこめばレオヴァイザーの右手が折れる。
「ヤマト〜大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
対ベヒモス用に覚えた二つ目のスキルを、ヴァイザーソードの先から発動する。
「遠隔操作!」
キングベヒモスに内蔵されたHQミスリルが反応する。
「何をする気だっ! やめろっ!ぐわああああああああああああ」
取り乱すレンヤ。何をする気か聞いてきたが、本人は気づいているのだろう。この先どうなるのか。
HQミスリルが操作力によって動き出す。キングベヒモスに内蔵されたミスリルが、蛇のようにレンヤに巻きつき締め付ける。次第にミスリルの量が増えて行き、ナビ水晶に映るキングベヒモスの操縦席は、銀色に埋め尽くされた。
レンヤは死んだ。
レオヴァイザーね回復を待ち、捕らわれた仲間のダークアダマンを分解していく。
金属として生成されたダークアダマンはレンヤが死んでも消えないようだ。
ユニコーンのダークアダマンを分解する。すぐさまユニコーンはレオヴァイザーに抱きついてきた。
「ヤマト様! 良くご無事で」
「ああ、無事じゃないけどな。ほらレオヴァイザーの左手がないだろ」
「すぐくっつきますよ」
「すぐくっつくのはセリスだろー。まじメテオ卍だったね」
「ヤマトはすごいな」
「憧れちゃうにゃん」
「うむ」
君らもすごい戦いしてたけどね。正直レンヤガールズと互角かと思ってたよ。終わってみれば楽勝だったな。いやー敵じゃなくて良かった。
「ねぇねぇ〜ヤマト〜念話とか言うのが着てるよ〜」
「念話? 誰からだ?」
そう言えばスマホ猫耳妖精にそんな特技あったな。同族にあった事がないから使った事ないが。
「えっとねぇ〜ドロシーちゃん」
「ああ、忍者野郎のスマホ妖精か・・・」
「うんとね〜『勝ったと思うなよ』だって〜」
返す言葉は決まっている。
「『もぅ勝負ついてるから』と伝えてくれ」
第六章終了です。
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では、引き継ぎ第七章をお楽しみ下さい。