俺まで取り逃げ犯扱いされてヤバイ
金田 錬夜16歳は女神の間15に召喚された転生者である。トラックに撥ねられて死亡し、女神の間へと召喚された。15の女神の担当JOBは聖錬金術士である。
錬金術士は生産系のJOBで貴金属の整形や宝石の加工などが得意なJOBである。錬金術士の強化JOBである聖錬金術士は、魔力により金属そのものを生成し自由な形に生成出来る。
レンヤは錬金術で獣機を大量生産してギバライ国を裏から操り、ヴァチ国への侵略をそそのかしたのだ。
1万機もの獣機を使用した侵略自体は、レオヴァイザーの超次元破壊砲によって失敗に終わった。
だが、地球の神話に登場する神獣型の獣機『神獣機』を造り出し、改めて侵略を開始したのだ。
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ナビ水晶にマーキングしたポポルが、物凄い速さでこちらに向かってくる。
それも一機のみでだ。
「みんなすまん!もう1時間後には敵が来そうだ。準備してくれ」
「マッジー? 今からお風呂しようと思ってたのに」
「ああ、だが変なんだ」
「ヤマト様。何が変なのですか?」
「一機だけなんだ」
気配やマーキングを消すスキル。もしくは姿自体を隠すスキル。色々考えたがとりあえず慌てて獣機に乗り込み待機する。
待つ事30分。予想より早くその姿が見えた。白い鷹の獣機だ。
ナビ水晶に見慣れた幼児の顔が映る。
「ヤマト! ポポル帰って来たよー」
「ポポル!」
「ポポル様! ご無事でしたか!」
白い鷹の獣機は俺達の前へスッと着陸すると、人型へ変形した。
「イサムが助けてくれたよ! これはロックの神獣機! 取り逃げしてきたよ」
ポポルから詳しく説明を聞いてみると、聖竜じゃない事がバレて牢屋に入れられたんだけど、隣の牢屋にいたイサム達が助けてくれた。イサム達がなんで捕まっていたかは知らないけど、一緒に逃げたから大丈夫だそうだ。
「あとね、レンヤがめっちゃ怒ってた! 取り逃げは絶対に許さない!って」
「だろうな」
聖竜との交換を考えていた上に、国宝級の神獣機まで取り逃げされたんだから当たり前だな。それにしてもイサムGJ! さすが聖騎士。
「ポポルの事を途中まで追って来てたけど、ロックでぶっ飛ばしたらから振り切ったみたい!」
ポポルの言う通り、ナビ水晶にはベヒモス軍団と思われる赤い点がこちらに近づいて来ていた。
あと2時間くらいでここにポッサロ島へ着くだろう。
用意したポポル救出作戦は没となったが、ポポルが無事だから問題ない。
後は迎撃作戦でレンヤ達を倒せばいいだけだ。ポポルのロックも戦力として加わり成功率は上がった。
「よし、じゃあ獣機同士で手を繋げ」
俺の合図ともに手を繋ぎ円陣を組む獣機。
レオヴァイザー、ユニコーン、リヴァイアサン、フェンリル、白虎、玄武、ロックの7機だ。
「アップゥ。いいぞやってくれ」
「は~い。いっくよ~妖精の隠れんぼ」
7機の獣機の姿が消える。
「後はあいつらが来るまで待機だ」
「ほいほいーい」
「了解だ」
俺達7機は神殿の前の広場から少し離れた所で待機する。
レンヤ達は間違いなくあそこに着陸するだろう。
「いいか。俺がメイン盾だ。今回はタイマンじゃなくて1機づつ潰すぞ。順番はハーピー、ペガサス、グリフォン、ベヒモスだ。HPGBと覚えよう。俺が全部攻撃を受けてる間に、サブ盾の玄武が1機づつ引き抜いてくれ」
「HPGBだな。わかった」
「もし雑魚が沢山いる様だったらリヴァイアサンの範囲攻撃で頼む」
「オッケー! まかせろし」
「連携はユニコーン、フェンリル、白虎で行こう」
「ヤマト様。れ、連携ですか?」
「スキルを連続で使った方が追い詰めやすいだろう」
「そういう事か。任せろ!」
「ザシュザシュ、バシューン、ギュンギュンギュウンドーンの、私はギュンギュンギュウンドーンだにゃ」
「わ、わかりましたやってみます」
「ポポルは? ポポルは何したらいい? 時々2~3回攻撃出来るみたいなんだけど」
「ポポルは空から詳しい状況を教えてくれ。ずっと隠れたままでいい」
「うん! わかった!」
説明を終えたちょうどそのタイミングで、レンヤ達の姿が見えて来た。
ベヒモス、ペガサス、ハーピー、グリフォン。それと100機を超えるプロペラを付けた獣機達。
ベヒモスは背中にジェット機のような羽がついており、自分で飛行できるようになっていた。
お仲間ガールズの機体は黒い色に変化していた。多分あの硬い黒い金属を鎧として見に纏っているのだろう。
黒い獣機軍団が神殿の前へ着陸する。ギバライ国の兵士が神殿の中へ入り、誰もいないことを確認して首を横に振る。
「ヤマト。よくもロックを取り逃げしてくれたな・・・死にたくなかったら聖竜を渡せ」
「知らんな。又お仲間をボコボコにされたくなかったら帰れ」
「ハッハッハッハッハッハ。同じ性能のまま来ると思っていたのか? 今や我がレンヤガールズは俺の手によって最強に強化された。貴様らなど虫けらのように殺してやる!」
「レ、レンヤガールズだってうぷぷぷ。マジウケるし」
「自分の名前を付けるなんて最低だにゃ」
「ほう。そのレンヤガールズのスカートにいつまで隠れるんだい?」
「貴様!!! 馬鹿にしやがって!」
俺はベヒモス達の目の前に出現して『挑発』のスキルを使用し、ベヒモス軍団の怒りを集める。一気に襲い掛かって来るベヒモスとレンヤガールズ。背後に控える獣機100機も俺目がけて動きだすが、ベヒモス達に阻まれて俺に攻撃出来ないようだ。
ベヒモスの両手剣をヴァイザーシルードで受け流し、ソードでペガサスの剣を切払う。ハーピーの弓を聖剛壁で防ぎ。グリフォンの爪を回避した。
「H!」
「・・・亀野郎・・・破壊する」
玄武のマモルがハーピーに『挑発』を使用し引き寄せる。怒りに任せたハーピーが玄武を射抜くが、両手斧で防がれた。
「おい! セイラ! 一人で攻めるんじゃない」
「大丈夫・・・私一人で亀くらい余裕」
必死に引き留めるレンヤだったが、時すでに時間切れ。
「本物の狩人っての見せてやるぜぇ!」
フェンリルの放ったルナティックアローが唯一強化されていないハーピーの翼を射抜く。翼まで黒い金属で強化すると飛べなくなるからだろうか? 結果的にそれが仇となり、翼を射抜かれたハーピーは地面に落ちた。
「待っていました! レインボースラッシュ!」
落ちたハーピーにセリスのユニコーンが虹色の剣線をお見舞いする。ガチンガチンと装甲に弾かれる。
「無駄・・・レンヤの鎧・・・最強だから」
「それはどうかな。続けていくぜ!! 乱れ撃ち」
エイジの放った乱れ撃ちが左右に分かれ、ハーピーの翼の付け根を横から正確に撃ち抜いた。エイジには女神のギフト「全弾命中」がついており、狙った場所に必ず命中するのだ。
鎧の無い部分に翼の付け根に集中攻撃されたハーピー。すでに翼はもげてしまった。動けなくなったハーピーに白虎猫撃がさく裂する。
「白虎猫撃だにゃ! ギュンギュンギュウンドカーン」
「ごめん・・・レンヤ・・・脱出する」
ハーピーが爆発する寸前に脱出装置のような丸い玉が打ち出された。
とりあえず1機撃破できたようだ。
横目でみながらベヒモスとペガサスとグリフォンの攻撃を防ぐ。ベヒモスが振り回す力任せの両手剣をはじく。10段階改造したおかげで防御力がかなり上がったようだ。油断はままならないのでリキャスト毎に『集中』を使用しつつ相手を引き付ける。
「ちょっと暇だから雑魚減らしとくね。雷の雲」
リヴァイアサンの放った雷の雲が雑魚獣機の周りに渦巻き、触れた獣機達を破壊していく。
「P!」
「何なのよあんた達! よくもセイラを!! 絶対殺してやるんだから!!」
再び玄武のマモルがサリアのペガサスに『挑発』を使用し引き寄せる。怒りに任せたペガサスの両手斧が玄武に斬りかかるが、玄武の厚い装甲で弾かれた。
「サリアまで! そんな挑発に引っかかるんじゃない! 戻れ!!」
「レンヤ! サリアの仇は私が!!」
レンヤがセイラの時と同じくサリアを止めようとするが、怒りに身を任せた彼女の耳には届かない。
「同じ馬同士ですが。すみません斬らせていただきます。レインボーソニックブレード!」
セリスのユニコーンが放った虹色の斬撃が、ハーピーと同じように強化されていないペガサスの両翼を切り裂く。
「お前らの弱点は見切ったぜ! 月面宙返り撃ち」
フェンリルが伸身の空中二回転捻りを描きながら光の矢を放つ、伸身の新月面が描く放物線の矢は、栄光への架け橋だ!
曲線を描きながら光の矢が右の翼の付け根に入り、左の翼の付け根まで貫通した。
「ほいほいまってたにゃん! 白虎猫鳴破ギュンギュンギュウウンドカーーン!」
白虎が全力で正拳突きを放つ。拳から放たれたオーラが白虎の姿となりペガサスを破壊する。
「レンヤごめん! また後で!」
ペガサスが爆発する寸前に脱出装置のような丸い玉が打ち出された。脱出装置か、考えていなかったがレオヴァイザーやほかの機体にも付けておきたい。
これで二機撃破だ。作戦通りうまくいっている。
ペガサスと仲間が戦っている間も、俺はベヒモスとグリフォンの攻撃を受け続けていた。
流石にダメージが少しづつ溜まって来たので、城壁防御も混ぜつつ防ぎ続ける。
ベヒモスが放つ青い雷の玉やダストストームを防ぎつつ、グリフォンの爪をソードで受ける。
「ヤマトっち! 変なのが私の雑魚を倒してるんですけど! この経験値ドロボー!」
「なんだと!?」
「ヤマト! 大変なのだ! 黒い豹みたいのが暴れてる!」
作戦外の事が起きた。空のポポルが言うには雑魚達の後ろの方に黒いアイツが現れたらしい。
「ディオニュソスか・・・」
「ドロシーいるかな~」
「くっそめんどくさい奴だ。こんな時に!」
っと危ない。レオヴァイザーの頭スレスレをベヒモスの両手剣が薙ぎ払う。
今はこいつらに集中するしかない。
「マイ! そいつに手を出すな。雑魚の殲滅を続けてくれ」
「りょ! 黒いのとどっちが多く倒せるか勝負ねマジ卍だわ」
「次はお前だ! G!!」
「ご主人様に逆らいやがって! お前たち絶対許さないよ!!」
三度玄武のマモルがジョゼのグリフォンに『挑発』を使用し引き寄せる。怒りに任せたグリフォンの爪を両手斧で弾き飛ばす。
「お前とは二度目だな。強化されたようだがまだまだ拳が軽い。出直せ。玄武大地斬!」
轟音と共に襲い掛かる両手斧。グリフォンは以前折られた両腕に黒い金属で強化されていたが、その金属ごとへし折る。
「申し訳ありません。続けていきます。ユニコーンホーン!」
謝りながらも容赦ないセリス。虹色に輝く一本角がグリフォンをの胸部を貫く。
「ヒュー。セリスさんもやるじゃないか。負けてらんないね。フェンリルファング!」
フェンリルの放つ矢が銀色の狼の形となってグリフォンに襲い掛かる。両翼はフェンリルの牙によって破壊された。
「お待たせにゃん。崩撃猫身白虎掌」
白虎の技によってグリフォンは完全に破壊された。
「・・・ご主人様。すいません」
グリフォンが爆発する寸前に脱出装置のような丸い玉が打ち出された。
「ヘヘッ。最後の一匹貰ったよー雷の矢」
リヴァイアサンが残った最後のサイ獣機に雷の魔法を放つ。
だが、それより早くディオニュソスがサイ獣機を仕留めた。
残るはレンヤのベヒモス一機となった。
「貴様ら4対8とは汚いぞ!」
「雑魚の数100を忘れてるぞ。104対7だ。黒い奴は知らん」
わなわなと怒りに震えるレンヤ。大量の獣機と強化の限りを尽くしたレンヤガールズが、あっという間に倒されてしまったのだ。
「俺が!! この俺が魔王になって世界を救うんだ!!! 貴様ら如きが邪魔するな!!」
「救う? 何がだ!」
「何も知らないくせに邪魔ばっかりしやがって!! 死ね死ね死ね死ね!!! 万物錬成!!!」
レンヤが万物錬成のスキルを使用する。
「きゃああああああああああああああああ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお」
俺を除いた聖獣機の足元から黒い金属が伸び、雁字搦めにする。レオヴァイザーと飛んでいたロックと上手く回避したディオニュソス以外は黒い金属の絡めとられて動けなくなった。
「ヤマト。これで1対1だな。正々堂々と勝負しようじゃないか。」
仲間を人質同然に捕まえておいて正々堂々とのたまうレンヤ。俺は遠くで赤い目を光らせるディオニュソスを指さす。
「あいつはいいのか?」
「貴様の仲間じゃないんだろう?」
「どちらかと言えば敵だ」
「フン。手を出す気は無さそうだから放っておくさ」
手を出す気がない訳じゃない。俺の予想だと止めだけ狙ってくるはずだ。汚いな流石忍者きたない。
それをレンヤも分かっているようだ。どちらが勝ってもディオニュソスともう一回戦う事になる。
「万物創生、万物錬成、ハァハァハァハァ万物合成!!!」
ベヒモスの足元から、金色の光る金属が出現し、ベヒモスの全身にまとわりつく。金色の金属は黒い金属とまじりあい金色の鎧となった。
金の鎧を纏って2倍くらいの大きさに変化したベヒモスの聖獣人機が、怒りの雄たけびを上げ大地を震動させた。
「さぁひれ伏せ!! 命乞いをしろ! これが俺の最高傑作!! キングベヒモスだ!!!!」