俺まで聖竜と邪竜を選ぶことになってヤバイ
戦場 守は女神の間3に召喚された転生者である。ラグビーの練習中に熱中症で死亡し、女神の間へと召喚された。3の女神の担当JOBは聖戦士である。戦士の強化JOBである聖戦士は、攻撃力だけではなく防御力にも特化したオールマイティなJOBだ。両手斧ですべてを破壊し、鍛えられた体で見方を守る。彼は脳筋である。
武田 典子18歳は女神の間4に召喚された転生者である。猫の写真を撮る為に屋根から落ちて死亡し、女神の間へと召喚された。4の女神の担当JOBは聖闘士である。闘士の強化JOBである聖闘士は近接攻撃の超特化JOBで、素早い攻撃と一撃必殺の格闘攻撃で相手を黙らせる。
猫好きな彼女は女神に猫になりたいと願った。願いは変な方向に叶い、猫獣人へと転生した。
世界樹の森に転生した二人は偶然出会い、森の中で聖獣機を見つけた。協力し合いながら長い道のりを終え、聖竜の神殿へと到着した。
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聖竜の神殿に到着した俺達。大理石で出来た神殿は、当然の様に人間用のサイズだった。
獣人機が入れる大きさの神殿なんてある訳ない。
「まいったな。冬服なんて持ってないぞ」
寒さに怖気ついていると、ドアを開けてポポルとアップゥが出て行った。
「ヤマト! ポポルのこの服あったかいよ!」
雪に寝転んだり雪合戦して遊ぶポポル。あのミニスカサンタコスにはそんな性能があったのか。
配達品の木箱の中を確認するとサンタコスが沢山あった。今何月だっけと不安になる位だ。
男用にはもちろんズボンのサンタコスがあった。
謎の赤服軍団の出来上がりだ。実はセリスも着て見たかったのかすごく喜んでいた。
マイとノリコもノリノリだった。二人はどうみてもクリスマスシーズンの夜のお店にいる人達です。
「異世界でサンタってウケルし」
「ミニスカなのに暖っかいにゃ」
「あのーすまんけど何で俺だけトナカイ?」
「すまん。サイズがなかったんだ」
「マモルはそれでがまんするにゃ」
「そんなひどいようおぉおおおおん」
体の大きなマモルに合うサイズはトナカイしかなかった。というか本当にでかいな。
俺が190cm位だと思うんだが、マモルは頭一つでかい。210cm位はあるんじゃないか?
横幅もあるのでトナカイじゃなくて、角の生えたクマに見える。
こんな訳の分からない赤服集団だが、男性陣の思いは一つだった。
(レオヴァイザーさんありがとう。すばらしいクリスマスプレゼントです)
クリスマスでもないのに感謝されるレオヴァイザー。心なしか顔が赤くなった気がした。
神殿の扉の前にポポルが立つ。観音開きの扉には、左右に竜が描かれていた。その扉にポポルが手を当て、何か呟くと一瞬白く光った。
「開いたよ」
「すごいな。魔法か?何か呟いていただろ」
「ひらけごま」
「え?」
「ひらけごまって言ったの。神殿を作った人の合言葉らしいよ」
開けゴマってことは。転生人がこの神殿を作ったのだろうか?
神殿の中へ一歩足を踏み入れる。
空気が変わったのがわかる。荘厳なピンと張り詰めた空気だ。
神殿の中央には一つの豪華なベッドがあり、誰かが寝ていた。
「・・・お姉ちゃん」
ポポルの目の色が灰色に変わりベッドへ駆け寄る。
ベッドに飛び込み、寝ている人物に抱き着いた。
「お姉ちゃんお姉ちゃん!会いたかったよ~!」
「んあ?妹か?もう100年経ったのか早いなぁ」
お姉ちゃんと言われた女の子が起き上がる。
全裸だったので男性陣は慌てて目をつぶったが、しっかり記憶した。
寝ていた女の子は女性陣が慌ててシーツを被せた。
女の子は中学生くらいの見た目で、足元まで伸びたフワモコの金髪がとても可愛らしかった。
うん。どうみても普通の女の子だけど、確実にこの子が聖竜だ。
「ところで妹よ。ずいぶん大きくなったな」
「あ、そうだった」
ポポルの全身が黒く光輝く。黒いオーラが全身を包み込み、何かが体から飛び出るとポポルは倒れた。
飛び出て来た黒いモノは聖竜と同じ顔の女の子だった。足元まで伸びたフワモコの黒髪が色っぽい。
言うまでもなく勿論全裸だ。女性陣が慌てて二人をシーツで包んだ。
倒れたポポルは元の5歳児に戻っていた。もどして・・・いやもう戻った。
セリスに抱きかかえられて、すやすや眠っているので大丈夫だろう。
「さて、ここに転生者が来たということはどちらを選ぶか決まったということだな?」
金髪少女の聖竜が俺達を指さしながら言った。
「えっと、どういう事なんだ?」
「聖竜と邪竜。どちらを封印する?」
「ちょっと言ってる意味がわからないです」
「だから、私と妹どっちをとるのかって言ってるの」
・・・
「ヤマト様、邪竜を封印すると勇者に、聖竜を封印すると魔王になると聞いたことがありますが・・・」
「そういうことなのか?」
「そういうことだ。誰がどっちを封印する?」
俺達は顔を見合わす。
先生誰にも言わないから、この中で勇者か魔王になりたい人は手を挙げなさい。
「勇者も魔王もマジダルいしお断りっしょ」
「だな。大体こんな子供を封印なんて可哀想じゃねぇか・・・」
マイとエイジは首を横に振った。
「私もお断りだにゃ。そんな事より地球に戻る方法がしりたいにゃ」
「俺も勇者とか魔王に興味ない」
ノリコとマモルも断る。
残る転生者は俺か・・・
「俺も興味ないが。封印しないとどうなるんだ?」
「・・・力が欲しくないのか? 全く最近の若者は・・・封印しなくても何も起こらない。二人で仲良くお寝んねするだけさ」
「そうか。じゃあどちらも封印しない。ポポルも治ったし帰らせてもらうよ」
「珍しい転生者達だな。他の転生者達は、いつの時代も血眼で私達を狙ってきたぞ」
「・・・お姉さま。それは魔王になりたい人達がお姉さまに集まるからでは? 私には優しかったですよ」
「この~~~~だから貴様は~~~~」
聖竜が邪竜の口元を両手でつねって引き延ばす。
「ともかく俺達はどちらも封印するつもりはない。それよりも地球に帰る方法を知っているか?」
「知らない。妹よ、お前は知っているか?」
「お姉さまが知らない事を、私が知っているはずがありません」
「そうか残念にゃ・・・」
後で聞いた話だが、ノリコが地球に帰りたい理由は、飼猫に餌をあげたいからだそうだ。突然死ぬとそういうの大変だよなぁ。俺のPCのHDDも誰かが破壊してくれているといいが。
「ポポルを連れて帰るとするか」
「・・・そうですね」
少し考えがありそうなセリス。表情が思わしくない。
「どうしたセリス? 何かあるのか?」
「いえ・・・他の転生者が魔王になるくらいでしたら、ヤマト様に勇者になっていただいた方がよかったかと・・・」
「ああ、俺は勇者なんてなりたくないぞ、それに案外転生者に悪い奴なんていないんじゃないか? 今まで逢った奴らはみんな普通だったぞ。ああ・・・イサムなら勇者にむいているかもな」
「そうですね。もしもの時はイサム様にお任せしましょう。私も一番向いていると思います」
後ろではマイとエイジがイサムについて話をしていた。
「ヤマトがべた褒めするイサムって奴はどんなやつなんだ?マイ知っているのか?」
「知らないけど、マジイケメンなんじゃない?」
イサムについて本当の事を教えたかったが黙っておいた。
「じゃあ聖竜と邪竜またな」
「ヤマト達も達者でな。困ったことが会ったらいつでも来るがいい」
「おう。ありがとう」
シーツに包まれた二人の竜達に手を振り、帰ろうとしたその時だった。
バリバリバリバリバリバリバリバリ
突然響き渡る轟音。プロペラを回転させるような・・・そうだこれはヘリに似ている。
慌てて神殿の外へ出る俺達。
そこには激しい爆音をあげながら、獣機の大軍が神殿の上を飛び回っていた。