俺まで雪原で戦う事になってヤバイ
ポッサロ島。モリオア国の更に北にある絶壁の孤島である。激しく荒れる海峡の先にあるため、島へ渡るには海底洞窟を通るしかない。海底洞窟は一年に一回おきる大干潮の日のみ潮が引き、通行が可能になる。島全体は寒流によって冷やされた冷気により、常に雪に覆われていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「雪だ!! マジ卍!」
先行していたリヴァイアサンのマイが驚きの声を上げる。俺達が海底洞窟を抜けると、雪が降り積もっていた。
砂漠で大雪を降らせた大馬鹿猫耳妖精もいたなと思いだし、アップゥを見ると「雪だ~初めて見るね~」と喜んでいる。記憶力が無いのか、魔法の雪と本物の雪は違うのか、よくわからないがすっとぼけている。
ポポルはミニスカサンタコスなので雪がよく似合う。セリスにも後で着て貰うか。
レオヴァイザーを騎士形態にしホバーで進む。リヴァイアサンはウナギのまま進む。ホバー機能のない魔導士形態では積雪の中歩くのが難しいらしい。
目指すは島の中心にある聖竜の神殿だ。
洞窟を抜けた為、水晶ナビのMAPに敵の位置が映るようになった。
聖竜の神殿の近くに赤い点が二つ。間違いなく戦闘になる事がわかる。
問題は相手が気付いているかどうかだが・・・
赤い点が二手に分かれてこちらをに向かっている事から、気付かれているのは間違いないようだ。
赤い点の大きさと、挟み撃ちを狙っている動きから、人の乗る獣機だと思う。
「ヤマト様どうしますか?」
「相手が分かれてくるなら、こっちは片方に集中しよう。マイ、レオヴァイザーに乗ってくれ」
「ほいほ~い」
リヴァイアサンを魔導士形態にし、獅子型のレオヴァイザーの背中にのせた。
こちらに向かってくる右側の奴に狙いをつけ、短距離高速移動で接近する。
右側のほうが平地で、もし戦闘になった場合に戦いやすそうだったからだ。
身を隠せそうな巨大な岩があったので、リヴァイアサンを降ろし、レオヴァイザーを騎士型に変形させて待機する。
「ヤマト、見えたぞ」
「ヤマト様、あれは白虎の獣機です」
雪原の中、姿を現したのは白い虎の獣機だった。たてがみの無くなった縞模様のレオヴァイザーといった感じか。
白虎はこちらに気づいていないようで、ゆっくり進んでいる。攻めるならチャンスだが・・・
「先手必勝っしょ。激流の嵐!!」
「マイちょっとま・・・」
俺が止める間もなくマイの放った水系魔法アクアテンペスト。水流が竜巻の様にうねり白虎を飲み込む。 だが、白虎は水流を爪で切り裂き飛び出て来る。
「突然にゃにするにゃ!! 白虎空斬爪!」
ナビ水晶に黒髪の猫耳の少女が映り技名を叫んだ。この猫女が白虎の操者のようだ。
白虎空斬爪は轟音と共に俺達の居る岩を破壊し、俺達の姿は丸見えとなってしまった。
「聖獣人機・・・そんなばかにゃ・・・しかも2機・・・」
「ほれほれ~どんどんいくよ~雷電の槍」
「ちょ、ちょっと待つにゃ!」
リヴァイアサンから放たれた雷の槍をひょいひょい避けながら、白虎の少女が慌てている。
「向こうの奴がなんか言ってるぞ」
「どうする? やめとく?」
「ああ、話が出来そうな相手だ」
マイが攻撃の手を止めると、白虎の獣機は人型に変形した。虎型だった時はレオヴァイザーそっくりだったが、人型になると格闘家タイプの様だ。
女の格闘家形態となった白虎。両手には鋭い爪型のナックルを装備し、脚装備は脚を守っていなかった。
俺達が白虎の変形に見とれていると、突然足元の雪が割れ、緑色のフルアーマーの戦士型獣人機が飛び出て来て、両手で持った恐ろしいほど巨大な斧を振り回す。
遮りの盾を発動し、リヴァイアサンをかばいながら盾防御術で斧を弾き返す。聖剛壁を展開しているはずのヴァイザーシールドに傷が付いた。
「うおおおおおおおおおおおおおん!!ノリコォォォォォ!!」
ナビ水晶には泣き叫ぶムキムキの大男が映っている。
「ノリコによくも! 貴様らぁああああああ!!玄武大地斬!」
巨大な斧を地面に叩き付けると、凄まじい衝撃波が襲い掛かって来る。
「うおおおおおおおおおおお」
「きゃああああああああああ」
城壁防御と聖剛壁で衝撃波を耐える。俺の後ろにはリヴァイアサンとなぜか白虎も隠れていた。
ギリギリ衝撃波防ぎ切り、雪煙がおさまると、両手斧を振り下ろしたままの緑の戦士が立ち尽くしていた。
本当にギリギリだった。レオヴァイザーは聖剛壁を突き破られ、至る所に傷が出来ていた。
「ノリコ、ノリコオォオオオオオ! 俺が悪かった。許してくれぇええええ」
「マモル! 私は無事にゃ!」
「その声はノリコ! よかったよぉぉぉぉおおおん!」
緑の戦士型獣機は白虎の獣機を抱きしめる。激しすぎる抱擁にギチギチと壊れそうな音を立てる白虎。
「ぐえええ苦しいにゃ。つぶれるにゃ。」
「うぉおおおおんうおぉおおおおおん」
「・・・お取込み中のところすまないが説明してくれないか?」
激しく泣き叫ぶ大男が泣き止むのをしばらく待ち、二人と話す。
泣き叫ぶマモルと言われた大男と、猫耳の少女ノリコは転生者だった。猫耳というか猫の獣人だが。
それぞれが聖戦士と聖闘士だそうだ。
うん。
いつか現れるだろうと思っていたけどほぼアウト。読み方に注意したい。
乗っていた獣機は白虎と玄武で、それぞれが聖獣人機だ。
二人で旅している時に森で拾ったらしい。
聖竜に聞けば、地球への帰り方がわかるんじゃないかとここまで来たそうだ。
神殿についたが扉が開かず、つい喧嘩してしまい、分かれて帰るところで俺達と出会い、戦闘になってしまった。
なんだ、二手に分かれて攻撃しに来た訳じゃなかったのか。
「それにしても神殿の扉は開かないのか。これはまいったな」
「ポポルは開けられるよ! 神殿の扉!」
「本当かにゃん!」
「うれしいいうぉおおおおおおおん」
「マモルマジうるさいし・・・」
俺達は新しく2人の転生者を連れて神殿へ向かう事となった。