俺までイカ焼きにされそうになってヤバイ
翌朝、セリスはポポルを脇に抱えて俺の部屋から出て行く。
体が大きくなり、体重も増えたはずのポポルを軽々と抱えていくセリス。流石鍛えているだけはある。
セリスは伸長が低いので、抱えられていたポポルは足を地面に引きずっていた。
俺はあまり寝られなかった事もあり、寝たふりしたまま二人を見送った。
昨日の夜の事を夢だと勘違いしてくれていたらいいけど・・・
早くポポルを幼女に戻そう。
海底洞窟の前までついた俺達だが問題が発生した。入って50m程進んだ先から海水で満たされており、水の中に入らなくては進めなくなっていた。
「レオヴァイザーって水に入れると思うか?」
「ユニコーンは入れないと思います」
「ワタシのリヴァちゃんは余裕だし」
「フェンリルも無理そうだぜ」
確実に水の中にはいれるのはリヴァイアサンだけだ。一応ナビ水晶の設定を確認して、水中形態がないか探してみたが無いようだ。
俺も覚えられそうなスキルを探してみるが無い。『水泳』スキルとかあればよかったのに。
滅多に開かないメニューを開いたので、ついでにいくつかスキルを覚えておいた。
そういえば常にメニューを開く癖とか付けた方がいいのかな?
いつのまにか俺のレベルは52になっていて、結構強くなっていた。
ちなみにセリスのステータスの10分の1らしい。俺が弱いんじゃない、セリスが強いんだ・・・
マイとエイジは相談しながらスキルを覚えているようだ。スキル一覧みたいなモノがあれば俺だって優先的に必要なスキルを覚えるのに。
俺がスキルを中々覚えないのは勿体無い病もあるけれど、頭に浮かぶスキルの数が多すぎるからというのもある。
多分、各JOBのJOBスキルは20個位で、技スキルも20個の合計40個位だと思う。
それぞれ効果が高いほど覚えるためのSPが多い。
一方で俺の聖操者のJOBスキルは300個位ある。他のJOBスキルを何でも覚えられるようだ。
その代り二段斬りなどの技スキルは覚えられない。
300個も頭に浮かんで来たらもう訳わからん。
ゆっくり紙に書く時間でもあればいいのだろうが、次から次に面倒ごとが降って湧いて来るので、時間が無い。
俺、ポポルが元に戻ったら自分のスキルについて見直すんだ。
今回は思い付いたスキルを4個覚えた。無駄遣いはあんまりしたくない。
盾防御術、集中、城壁防御、遮りの盾
それぞれ、スキル名のまんまの性能だ。
スキルの話はこれくらいにして、まずは海に入る方法だ。
試した結果、やはりユニコーンとフェンリルは海に入れなかった。入っても死ぬことは無いが自由に動けない感じだ。
海に入ると自由に動けないのはレオヴァイザーも同じだったが、トラック形態なら水の中へ入ってもある程度自由に進めそうだ。
という訳で、海底洞窟から先はレオヴァイザーとリヴァイアサンで進む事となった。
海底洞窟の近くの森にユニコーンとフェンリルを隠し、エイジとセリスをレオヴァイザーに乗せて海底へ入る。ポポルが大きくなったこともあり、車内はまたも満員だ。
海底洞窟の中は珊瑚や色とりどりの魚で美しい!! なんてことはなく、ごつごつした岩肌の真っ暗な洞窟だった。そりゃそうか。海底洞窟なんだから。
タキア鍾乳洞より若干狭い。ウナギ形態となったリヴァイアサンがウネウネと前に進む。レオヴァイザーはトラック形態でまるで魚雷の様に進む。
暗闇の海底洞窟は今にも白鯨や巨大なイカや人魚が出てきそうだ。うむ。出て来た。
「きゃああああああああああああああああああああ」
響き渡るマイの悲鳴。リヴァイアサンを見ると沢山の黒い触手が絡みついていた。
触手の持ち主の姿は暗闇で見えないが、太い触手が青いウナギに巻き付いている。
まただよ。
ミニスカ魔導士形態じゃないリヴァイアサンを触手攻めしても誰も喜ばないぞ。
「マイ! 大丈夫か!」
「大丈夫じゃないし、早く助けて~」
エイジがマイに声をかける。なんとか無事のようだ。
触手の持ち主を探す。いた!
リヴァイアサンを触手攻めしている犯人は30mを超える大きさのアンモナイトだった。瑠璃色の平らな巻貝から黒いイカの顔が出ていた。
俺はレオヴァイザーで巻貝の部分に全力で体当たりする。体当たりというかひき逃げか。
アンモナイトはたまらずリヴァイアサンを離したが、一瞬イカの部分が膨らみ、どす黒い墨を吐いた。
たちまち水の中に墨が広がっていく。
「ヤマト様、あれはシーテンペストです」
「ごめん、墨がこくて何も見えない」
「やばい! 墨がもっとこくなってきやがる!」
ライトで照らすが一瞬先は闇。完全に何も見えなくなってしまった。ナビ水晶も洞窟内では敵の位置を教えてくれない。
「マイ、そっちはどうだ?」
「全然だめ! 何も見えないし」
暗闇の中、巨大なシーテンペストの触手がレオヴァイザーを捕らえる。
ものすごい力で触手に振り回されるレオヴァイザー。聖剛壁を全力で展開し、衝撃に備える。
海底洞窟の壁に何度も叩き付けられるレオヴァイザー。悔しいが手足の無いトラック形態では何も出来ない。
「お待たせだし! いっくよー! 大海嘯!」
マイの叫びと共に海底洞窟内の水流が激しくなる。視界をふさいでいた墨は流され、魔導士形態となったリヴァイアサンが姿を現す。
激しい水流にもみくちゃにされ、シーテンペストごと壁に叩き付けられる。
墨を吐き出すが水流にながされ曇る事は無い。が、水流のせいでこちらもまともに動けない。
「こんなにレオヴァイザーとリヴァイアサンで水適応に差があるとは思わなかった…!」
「マイ! 雷系の魔法だ」
「ほいほ~い。電撃の踊り」
「ちょ、待て!城壁防御! 聖剛壁全開!!」
水中でパラパラの様な切れの良いショートダンスの後、すさまじい電撃が海底洞窟内に拡がる。
ギリギリ間に合った城壁防御で電撃の威力を軽減し、聖剛壁を限界までブーストして防いだ。
電撃の踊りの直撃を受けたシーテンペストは、イカ焼きの様な姿になっていた。あぶなくイカ焼きの様な姿になるところだった。
「いやあ、シーテンペストは強敵でしたね」
「危なかったな。主に電撃が・・・」
シーテンペストを倒し、海底洞窟を進むこと数時間。洞窟の終わりが見え、外にでる。
洞窟を抜けると、そこは雪国だった。