俺まで頭に角が生えてヤバイ
ジョリジョリジョリと髭の音が車内に響く。ダダル国王がポポルに頬擦りしているからだ。
レオヴァイザーの車内はまたも大混雑となった。ポポル一家が無理やり乗り込んで来たのだ。
流石に兵士達数十人は、乗り切れないので歩きで山頂まで向かう予定だったが、タキア鍾乳洞の中でギバライ軍と交戦した事を伝えると、ダダル国王は警備の為に街へ戻らせた。
「いやいや、獣機とはすばらしい乗り物だな。ギバライに攻め入った時には痛い目に合ったが、やはり我が国に必要であるな。あぁぁポポル可愛いよポポルスリスリ」
「もぅパパキモイ!! あっち行って!」
「あらあらまぁまぁ」
「仲良し家族だね~」
家族団欒が行われる中、ギリコノ山の山頂が見えて来る。と、言っても山頂は円形にくり抜かれているので実際は、山頂だった場所だ。一体誰がこんなひどいことを・・・
「つい2ヶ月程前かな。突然白い光が走ったかと思ったらこの通りだ」
ダダル王がうなだれながら言った。
2ヶ月前か・・・丁度俺が異世界に来た頃だな。異変は同時期に重なると言うがまさにその通りだな。
山頂だった場所に到着し、周りを見渡す。復活したと言われる邪竜は見当たらない。
「何もないな」
「そうですな。・・・メメル。頼む」
「あらあら。ではやりましょうか」
「ヤマト殿とエイジ殿、申し訳ないがしばらく目をつぶっていただけますかな?」
「見たらだめなのか?」
「今から妻のメメルが全裸で踊りますので。死にたければ見ていても構いませんぞ」
ダダル国王の目が赤く染まる。本気だ。見たら俺は確実に殺される。
恐ろしい殺気を放ち、見るなよと何度もアピールしながら、ダダルとメメルはレオヴァイザーから降りた。二人は山頂だった場所の中心へ行く。追いかける様に俺達も獣機から降りて様子を見る。見るのは様子だけだ。
十代にしか見えない美しいメメルが、これから服を脱いで踊る。男なら死ぬ覚悟でも見るべきだ。思わずエイジの方を見る。
(おいおい、ヤマトよ。お前は見ないのか? 俺は見るぜ。もうどうなってもいい)
(くっ・・・こいつ直接脳内に・・・)
そう言ったのかはわからないが、エイジは小さく頷いた。
ダダル国王が腰にぶら下げていた太鼓を叩きはじめるとメメルが服を脱ぎ始めた。
おっといけない。これ以上見ていると死ぬ。俺は目をつぶった。
カサカサと服を脱いだ音がして、太鼓のリズムも早くなる。しばらくすると歌声が聞こえ始めた。
ダダル国王の渋い歌声だ。お前が歌うんかい。
「わぁ・・・メメル様綺麗です」
「踊り子の血が騒いじゃう。てかおっぱいでかくね」
「ママ可愛いよ!」
女性陣がそれぞれ感想を述べる。ああ、見たい。死んでもいい。もうこれで終わってもいい。
欲望に負けて目を薄目を開けそうになったその時。突然男の叫び声が響き渡る。
「ぐわああああああああああああああああああああああ」
はい、どうみてもエイジの声です。欲望に負けて目を開けた雑魚です。ヘッいい夢みれたかよ。
「エイジ血だらけマジウケるしハハハハ」
「ヤマト様! 目を開けたら危ないですよ!!ダダル様がこちらを見ています」
「エイジにも頭に角が生えたね!!」
あんな悲鳴を聞かされた後じゃ怖くて見れないわ。
ダダル国王の歌と太鼓が激しくなる。それに合わせてかすかにだが、メメルが声を上げ始める。
えっと・・・これ喘ぎ声だよね。女性のイヤラシイ時に上げる声だよね?
「うわぁぁぁぁ綺麗ですぅ」
「エッロ!」
「ママえっちぃい」
え?え?やっぱり?何々?何が起きているの?目を奪われた俺の前で何が起きているの?もう限界なんだけど・・・薄目ならばれないと思う人? はーい! 全員一致ですね。じゃあぁ薄目作戦で・・・
「あああああああああああああああ」
小さな男の子の叫び声。これはスマちゃんだな。薄目でばれないとでも思ったのか?雑魚め。
「スマちゃんまで血だらけマジウケる!ハハハハハハ」
「スマちゃんのえっち~」
2人目の犠牲者が出た事で俺は限界が来た。このままでは目を開けてしまうと思った。
そして俺は意を決して後ろを向く事にした。諦めよう。死にたくない。
後ろを向き。目を開ける。視界が開ける。俺は自由だ。
ダダル王の太鼓と歌はますます激しくなっていく、いよいよ佳境なのだろう。小さな声だったメメルの喘ぎ声は最早絶叫に近い。両手で耳を塞ぎ終わるのを待つ。
ふと、レオヴァイザーの方を見る。
ああ、奇跡だ・・・我慢した俺へのご褒美なのだろうか?
レオヴァイザーの足元の銀色の装甲部分が鏡の様にメメルの踊りを映し出していた。
ウッと思わず声がでた。あぶないあぶない。
再び俺は鏡の中のメメルを見る。美しい。確かにおっきなおっぱいだ。セリスやマイよりでかい!
それが踊りに合わせてたゆんたゆんと・・・踊りに合わせて俺の目線がずれて行き・・・
俺とダダル王の目が鏡の中であう。
鏡の中の王は、一瞬ニヤッと笑うと素早い動きで何かを投げる。勿論俺に向かってだ。
ザシュっという音と共に意識を失う。何かが俺の頭に刺さったのだけはわかった。
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気づくとマイホームのベットで寝ていた。頭を触ると女神のギフトのおかげで傷は既に治っていた。
「ヤマト様、大丈夫ですか?頭に刺さった角は抜きましたが・・・」
「ああ、大丈夫だ。終わったのか?」
「はい、実は・・・」
話を聞いて急いでポポルの居る部屋へ向かう。部屋に入るとダダル王とおっぱい、いや、メメル妃がベットに横たわるポポルを看病していた。
「ダダル王、ポポルは?」
「ヤマト殿、ご覧の有様で」
ポポルはベットに寝かされていた。
5歳の可愛らしかった姿ではなくなり、爆乳の大人の女性へ変化していた。
もどして。