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俺に生と死の大切さを教えてくれてヤバイ

 ギバライ国特務部隊幻象(エレファントム)の隊長バラライ。操者でありながら類い稀なるステータスとスキルを持ったギバライ国初の獣機部隊の隊長である。操者は所持しているスキルがバラバラで決まっていない。セリスやバラライの様に戦闘に関するスキルを持つ者は稀である。万機将軍ギズモでさえ戦闘スキルを所持していなかった。

 もし操者の技術でランク付けするなら、間違いなくバラライがトップに立つだろう。ただしそれは、転生者を除いたランキングだ。今のタキア鍾乳洞での戦況がそれを物語っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「これだから転生者って奴は・・・何もかも無茶苦茶にしてくれやがる」


 目の前でギリカメラ隊を破壊されたバラライは怒り狂い、俺への攻撃の手を更に強めた。左右からの揺さぶった攻撃、フェイントを混ぜた強撃。俺はそれらを冷静に受け流し、切払う。

 俺の操者力が上がってきているのだろうか?レオヴァイザーが自分の体の様に動く。最初に何発か食らった以降はすべての攻撃を防いだ。「見える!」とか叫びたい気分だ。


「若造が・・・」


 バラライは手数を増やした軽い攻撃が無駄だと悟り、4本の腕に持った片手斧を合体させ、まがまがしい巨大な両手斧を作った。

 完成した両手斧を4本の腕で持ち構える。


「ガネーシャよ! 我に力を!!! 狂暴化(バーサク)!!」


 バラライがそう言い放つと、青かったガネーシャが深紅へ変化する。大きさもレオヴァイザーの2倍程度はありそうなくらいに肥大する。ナビ水晶に映るバラライの目は真っ赤だ。


「ヤマト~あの人危ないよ~」

「ああ、あの狂暴化(バーサク)とかいう技、己を忘れているぞ」

「パパが怒るといつもああなるよ!!」

「その君のお父様に会いに行くんだが、不安でしかたがないぞ」


 ガネーシャが力を込め、俺目がけて薙ぎ払う。聖剛壁ホーリープロテクションで強化したヴァイザーシールドで防ごうと受けるが、その威力を殺しきれず、地面から生えた鍾乳石を何十本も破壊しながら壁まで吹き飛ぶ。


「ウグハッ・・・なんて威力だ」

「グガアアアアアアアアアアア」


 バラライは、獣の様な声を上げ、追撃の一撃を俺に放つ。壁に挟まったままの俺は避ける事も出来ずにかろうじてヴァイザーシールドで防ぐ。


スゴガガガガガ!!


 巨大な両手斧がヴァイザーシールドを弾き飛ばす。しまった。次の一撃を貰ったらヤバイ。

 ガネーシャがシールドを無くした俺に向けて、止めを刺そうと最大の力を込め上段に構えた。


「ヤマト様!!」


 セリスの悲鳴が響く中、俺はヴァイザーソードを正面に構え、短距離高速移動(とんずら)を発動し、ガネーシャの胸元に飛び込む。

 

 振りを降ろされる両手斧。

 

 突っ込むレオヴァイザー。


「うおおおおおおおぉぉぉおおおおお」


 両手斧がレオヴァイザーに届くより、ほんの一瞬だけ速く聖剛壁ホーリープロテクションで最大に強化されたヴァイザーソードがガネーシャの胸を貫く。


 ナビ水晶には腹部を切り裂かれたバラライが映る。赤かった瞳は元に戻り、失血の為か朦朧としていた。

思えば自分で殺した死体なんて初めて見た気がする。とてつもなく嫌な気分だ。そうだ・・・俺は人と戦っていたのを忘れていた。否、無理やり忘れようとしていたのだ。これは殺人だ。


 両手斧を地面に落とし、4本の腕を万歳したままガネーシャは動かなくなった。ガネーシャにささったまま血を垂れ流すヴァイザーソードを引き抜く。


 ソードを抜いたことで、ほんの一瞬だけ意識を取り戻したのかバラライが口を開く。


「・・・白獅子よ。誇るがいい。このバラライを倒した事を・・・」


 間違いなく致命傷だ。死を間近にしながらも俺に誇れと言う。これがこの世界の男なのだ。転生者が持ちえない国への忠誠心。命の価値が軽いからこその覚悟・・・


「そして出来るなら・・・ヴァチ国のネールに伝えてくれ。ギズモとバラライは死んだと・・・」


 それだけ言うと、バラライは息を引き取った。



 残ったギバライ国の象部隊はガネーシャを背負って撤退していった。


「・・・ヤマト様。大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。先を進もう」

「はい」


 顔色がすぐれない俺を心配したのか、セリスが声をかけてくれた。ポポルも心配そうだ。

 人を殺した事への罪悪感と、人を守る為だと正当化する気持ちを整理出来なかった。いつまでも胸がムカムカしたままタキア鍾乳洞を進む。この永遠に続く真っ暗な鍾乳洞が、まさに今の俺の気持ちだ。


 丸半日休まず進む。もちろん会話はない。


「ヤマト。後で飲もうぜ!」

「ヤマトッち。元気出しなよ。後でパリピ(パーティピープル)だよ」

「プッはははは。お前ら同じタイミングで夫婦か」

 

 突然、全く同じタイミングで声をかけて来たエイジとマイ。思わず吹き出してしまった。本当に大したことない出来事だが、今の俺にはうれしかった。そう。今の俺には仲間がいる。セリスやポポルやエイジやマイ。出会ったばかりだが、俺の仲間だ。

 

 地球で配送業をしている時は、常に一人だった。

 

 一人になりたくて長距離運転のトラック運転手へ転職したのだから当たり前だが。

 

 バリバリのリーマンで出世街道を歩いていた俺だったが、ある日付き合っていた彼女が死んだ。

 

 「男なら責任取りなさいよ」と言った彼女だ。責任とはもちろん結婚するという事で、式の日取りも決まっていた。

 

 どんなに出世街道を歩いていようが、どんなに残業しようが人の命は救えない。

 彼女は病気であっと言う間に死んだ。なんとか癌とかいう知らない病気だ。

 

 突然失った心の欠片の大きさに俺は戸惑い、ずっと一人でいようと思ったのだ。


 たった一人で10年も走らせたトラック。

 

 異世界に来たのは偶然か奇跡かもしれない。

 その異世界に来たことで、ずっと一人でいる決意が無くなろうとしていた。


 俺にも人と幸せを歩く時間が来たのかもしれないと感じた。皮肉だが、人を殺した事で人の大切さを知った気がする。


 俺がなんとなく心の整理が出来そうなタイミングで、長く続いたタキア鍾乳洞も終わりを告げ、眩しい光が目に入り込んで来る。鍾乳洞の中ではわからなかったが、丁度朝だったようだ。


 一面の澄み渡る青空。前には山頂を破壊された巨大な山が見えていた。


「あれ!ポポルのお城だよ」


 ポポルが指した山のふもとの方角には、石で出来た美しい城が建ち、城を中心に大きな街が広がっていた。




 ついにモリオア国へ着いたのだ。

4本斧合体=攻撃力2倍

4本持ち=攻撃力4倍

バーサク=攻撃力2倍

全部合わせたガネーシャの攻撃力は2x4x2の16倍パワーだぁぁああああああああああ!!!


という訳で、五章終わります。


お楽しみいただけている様でしたらブクマや評価いただけると嬉しいです。


今後ともよろしくお願いします。

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