俺に田舎の夫婦の秘密が理解出来てヤバイ
ギバライ国特務部隊幻象がタキア鍾乳洞に入ってから既に3日。隊長であるバラライは、洞窟ガエルの串焼きを頬張りながらため息をつく。
遅い。
後続の本体がいつになっても現れないのだ。何かあったに違いない。タニガイ峡谷は危険なモンスターが潜んでいる。だが、臆病な性格の彼らは地下深くに潜み、滅多に姿を現さない。その点から言って、モンスターにやられた可能性は低い。考えられるのは、多国からの不意打ちか身内の裏切りだ。 後続には転生者もいたはず。そいつが裏切った。バラライはそう結論付けた。
最新型の神獣人機ガネーシャ1機と、象の獣人機ファントス約30機が今の戦力だ。バラライは、一本道のタキア鍾乳洞をモリオア国へ向けて進むか、タニガイ峡谷へ戻るかを決めかねていた。
「嫌な予感しかしないな」
バラライは洞窟ガエルの串焼きの串を投げ捨て、再度ため息をついた。
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俺達4機はタキア鍾乳洞を突き進む。獣機4機ぐ横に並んでも余裕のある広さだ。天井までの高さも30mはあり、鍾乳石が氷柱の様にぶら下がっていた。中はもちろん真っ暗だ。獣機達のライトで照らしている。
「この先ずーっと一本道の様だ。鍾乳洞の中ではナビ水晶に敵が映らない。気をつけてくれ」
ナビ水晶はトンネルに入った様な表示になっている。敵の赤い点は上空からのGPSなのか? てっきり魔法かと思っていた。理屈はわからないが、今は周囲を気にしながら進むしかない。何しろこの鍾乳洞を通過するには10日以上かかりそうだからだ。
「ゲー。こんな真っ暗気が滅入るし。ゲンメツー」
「仕方ないだろう。ヤマトのマイホームが無かったらもっと地獄だぞ」
「だよねー。お風呂ベット食事。ビールまであるしサイコー」
「フェンリルにも欲しいぜ」
二人の恋人同士の会話を無視する。下手に突っ込めば、ずっトモ間違いなしだ。一晩で元サヤに戻ったお肌ツヤツヤの二人には悪いが、マイホームは俺のだ!
時計がないこの世界では、太陽の高さで時間を読むしかない。鍾乳洞には当然太陽が無いので時間がわからなくなる。お腹が空いたら休憩し、眠くなったら寝る。既に4回寝た。四日たったはずだ。
鍾乳洞の中はモンスターもいないので、本当にひたすら走って寝るだけだ。安全だといえばいい事だが、お子様のポポルには地獄だろう。マイホームにこもってセリスと遊んでいる。
ユニコーンの獣機はレオヴァイザーの上に乗せてある。上に乗せて置いても女神のギフトが発動する様で、傷が治っていた。
この女神のギフト体力自動回復は、夜の方にも効く様で、エイジとマイは毎日ツヤツヤだ。人の家をラブホの代わりにするんじゃない。ずっと真っ暗で暇だから、頻繁にレオヴァイザーに泊まりに来る二人を見て、田舎の夫婦が子沢山な理由もわかった。
眠くなって5回目。みんなで食事をとった。エイジとマイがそそくさと部屋に入ったのを見てセリスが聞く。
「ヤマト様。お二人は毎日何をしてるんでしょうか?」
「く、暗いから眠いんだろうな」
「ポポル知ってる! プロレスだよ!ママが言ってた! 」
「プロレスですか? それは何でしょうか?」
「わかんない! ママもパパも裸だったよ! ポポルは早く出て行きなさいって怒られたから、一緒にプロレス出来なかったの!」
机をバンバン叩きながら悔しがるポポル。お母さんお父さん。お察しします。
「は、裸で・・・」
顔が真っ赤になり思考停止したセリス。プシューッと音が聞こえてきそうだ。本当の事を言うのが怖い。
「プロレスとは・・・裸で・・・何を入れるのでしょうか?実は昨日部屋の前を通った時に、聞いてしまったのです。マイ様が早く入れてと叫んでいるのを・・・」
ヤバイ。純粋なセリスが真相に近づいてしまった。最早火サスの崖のシーン一歩手前まで来ているぞ。あの二人を早く追い出さなければ。
「ああ、喉が乾いてお茶を入れて欲しかったんじゃないかな。プロレスは真剣なスポーツだからな。あんまり部屋の前に行くと可哀想だから、近づかない方がいいな。うんうん」
「ですがヤマト様。隣の部屋なので・・・」
「じゃ、じゃあ俺の部屋で寝るか?」
「・・・はい」
あ、慌てて変な事を言ってしまった。しかも返事がイエスて・・・
ポポルが寝ぼけて毎日俺のベットで寝るのも、それを追いかけてセリスが俺のベットで寝るのも、寝ぼけているという理由があるから許されていただけで、最初から一緒に寝るのは・・・まぁいいか。
既に習慣になっているし。ポポルが居るから手も出せないのは同じだ。
ヤバイ。ポポルはモリオア国に着いたら居なくなるんだった。
後は、野となれ山となれか・・・
その日から、三人で寝る事になった。寝る寸前までセリスの綺麗な顔を見れるのは嬉しいが、健康な男子には地獄だ。いつもなら寝ぼけてセリス達が来る前に済ませておけたのに、それももう出来ない。ポポルがパパとママみたいだねと無邪気に喜んでいた横で、俺は処理方法について真剣に悩んでいた。
ポポルが寝たのを確認したセリスが口を開く。
「私。父が嫌いでして。呑んだくれで働かないし、母にも優しくありませんでした。でも、ヤマト様は全然違いますね。いいパパになりそうです。うふふ」
「セリスだっていいママになりそうだぞ」
「・・・いつかママにして下さいね」
キャッと小声を上げながら、額まで布団を被るセリス。その額はもちろん真紅だ。セリスは軽い冗談のつもりで言ったのだろうが、今の俺にそんな余裕はない。欲望の処理に困った狼なのだ。今すぐママにしてやろう。
・・・よかったな。
布団の真ん中で寝たふりしているポポルが居なかったら、今頃ママになっていたぞ。