俺に温泉を覗く趣味はないのに誤解でヤバイ
温泉回です(2回目)
ギバライ国ウトナ・ネ・バール国王は激怒した。勝利を確信して送り出した獣機達が、ことごとく敗走して帰ってくるのだ。
100年毎の転生者がどこに現れるかは、誰も知らない。転生者の生まれた国は、その転生者の個性的な能力や知識で、技術や生活が向上する。勿論、戦争に参加させれば多大な戦果を上げるだろう。だが、無理に参加させた国は必ず滅ぶ。ろくな事にはならないのだ。
今回の転生周期でギバライ国には二人の転生者が現れた。聖狩人と聖錬金術師だ。放っておいても国が豊かになるのは間違いなかった。
だが、そもそも戦争をする予定の無かったウトナ国王を、転生者である聖錬金術師自らがそそのかした。獣機で脅せばどの国も白旗を上げると騙されたのだ。俺の能力なら必ず勝てると。
結果は、万機将軍の戦死、一万機近くの獣機の損失。モリオア国から突然の侵略。報復の為にモリオア国へ送り込んだ最新型獣機部隊の壊滅。その他にも、新型神獣機などを損失してしまった。
聖錬金術師は、今も工房で獣機を作り続けている。既に暴走を始めた彼の行動は、国王でも止められない。
最早止められる人物はギバライ国に居ない。
・・・居なかった。
そう。笑顔の似合う男がギバライ国に来るまでは。
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「全くどーなってんだ?このレオヴァイザーの中は」
ディメンションマイホームのリビングを見て驚くエイジ。トイレや温泉もある事を教えたら、歓喜の声を上げた。早速三人の男同士で温泉に入る事にした。俺とエイジとスマちゃんだ。
「ヤマト! すげぇ綺麗な星空だな! 」
「ああ。流石異世界だよな」
「僕も感動です」
あれ?この流れ前にもしたような。とりあえず男同士で星空見上げてお話とか勘弁なんだが。
「なあ、ヤマト。俺達死んだんだよな」
「ああ、女神がそう言うにはな」
「ヤマトは死んで後悔してるか?」
「わからん。仕事に追われる毎日だったしな。両親に挨拶くらいしたかったかな。墓参りも行けなくなっちまたし」
「そうか。俺は後悔してない。どうせ無職のサーファーだったからな。死ぬ時に、マイに謝りたいって思ったら、マイに会えた」
「謝る?」
「・・・まだ謝ってないけどな」
三人で湯船に浸かり、星空を見上げる。エイジはイサムと同じく、異世界に来て後悔していないらしい。俺は未だによくわからない。自ら道を探さず、人から言われたままの行動をしているからだろうか。異世界でやりたい事が見つかれば踏ん切りも付くのだろうか?
何かを成し遂げたら異世界に満足し、死んだ事に後悔しなくなるのだろうか?
焦る事なんてない。と、毎度言い聞かせてきた。思えば転生前からそうだったのかも知れない。
「女の一人でも抱けば、この世界に愛着が湧くかもしれないぜ。セリスさんはどうだ?ヤマトに気がありそうな素振りだったぜ」
「ははは、エイジもイサムと同じ事を言うんだな。お前こそ、早く謝ってマイを抱けよ」
「ば、馬鹿野朗。別れたのは10年も前だぞ。いまさら・・・」
何かの気配を感じ、人差し指を口に当てるエイジ。どうやら男湯に誰か来るらしい。
「やっぱ温泉サイコー。星綺麗すぎてウケるし」
「今日はこっちが女湯なんですね」
「ポポルこっち始めて! お湯出るところがレオヴァイザーだ! 向こうは豹だったのに! 」
「アップゥが変えたの〜たまにはいいかな〜って」
突如男湯に入って来る女性陣。俺とエイジとスマちゃんはなんとか岩陰に隠れた。なんで男湯に女が! 犯人は既に自白していました。
(おいヤマト。何処かに出口はないのか?)
(ない。これは想定外だ。あいつらが出るまで耐えるしかない)
(そんな。僕の防水がダメに・・・あ、もうスマートフォンじゃないんだった)
「いやー今日はチカレタねー」
「疲れましたね。特にあのウネウネニョロニョロが・・・」
「うん。ホントキライ」
「でも、よかったですね」
「え?何が?」
「エイジ様が来て下さって」
「あーウケる!ワタシがサー。女神にエイジも連れて行きたいって言ったからかなー?ウケる!」
(・・・なんだと? まさか晴天だったのに雷が落ちて来たのは・・・)
ワナワナと震えだすエイジ。確かに本当にそうだとしたら、マイさんこれは殺人ですよ。
「だってさ、謝りたかったし。しょうがないよね」
「謝る?」
「好きなのに意地はって別れちゃったから。あ、セリスッちも意地はったらノンノンよ」
「意地ははっていないのですが、私はお子様だそうで。あははは」
「そうだよ。早く抱かれて大人になりなよ」
「抱かれると大人になるのですか?今度頼んでみます」
(・・・なんだと。マイめ。余計な事を言いやがって)
(なんかすまんな)
(ご主人様がすみません)
「それにしてもセリスっちはいい体だネ!モミモミー」
「ちょ。やめて下さいマイ様。あっ・・・んっ」
「ポポルも触る!モミモミ〜」
「ちょ!くすぐったいからやめろし。あ、あんダメっ」
「なんだと!?」」
思わず三人揃って声を上げる。
「きゃあああああ」
「あー!! ヤマト達いたのかー!? 」
「ずっといたよね〜」
セリスとマイが悲鳴をあげながら桶を投げる。 男なので避けない。こういう時に避けたらマナー違反である。理解しているエイジもちゃんと顔面に受けていた。
俺とエイジが誤解を解くのに1時間かかった。犯人は既に自白していたが、見た罰は償わなくてはならない。明日の夕飯は俺とエイジが担当する事になった。
さて、いつもの寝る部屋問題だが、あっさりマイとエイジが同じ部屋という事になった。元恋人同士だし積もる話もあるのだろう。夜更かしするなよとだけ伝えておいた。
興味深々な面持ちのセリスが、俺のパジャマをつまみながら聞く。
「あ、あの・・・ヤマト様。夜更かしして二人は何を?」
「む、昔話だろ?」
「ポポル知ってる!!プロレスだ! 見たことある!」
おーい。竜人族の王様ー?見られてますよー?気をつけて下さーい。