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俺におっさんが寝そべってる前を通る勇気はなくてヤバイ

 約1000年前に滅びたキウトウ国。天まで届くスカイツリーの高さからもわかるように、魔導科学力は絶大な力を持ち他国を支配していた。滅んだ理由は不明だが、スカイツリーは世界樹となり、周りの街はすべて森の中へ飲み込まれた。スカイツリーを中心に祀られた聖獣人機12機の保管庫も、その中へ飲み込まれたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 朝になり、ユニコーンの聖獣人機に乗り込もうとしたが、俺は乗れなかった。不思議な力で扉の中へ入ろうとすると弾き出される。


ポポルとアップゥは通す。ヤマトは通さない。


 多分だが、ユニコーンは男を乗せない。もっと条件がキツイとしたら()()しか載せない。今もセリスが乗っている事からお分かりいただけると思うが、手は出していない。


キスだけだ。


 ポポルとアップゥがじーっと見つめていたあの場で、キスしただけでもすごい事だろう。

キスだけにも関わらず、子供が出来たらどうしようと悩むセリスを見て、この先いろいろ不安になった。


 中に入る事は出来ないが、ユニコーンの操縦席を見せて貰うとトラックの運転席ではなかった。

座席は一つだけで、どちらかというとアレイオンとかに似ている感じだ。

よくわからないボタンやレバーがあるのであまり触らない様にとだけ伝えた。無いとは思うが、自爆ボタンがあったら困る。ユニコーンもやはりGPで強化する様だ。流石にディメンション関係は無いようだった。


「ユニコーンに乗っていくのか?」

「はい。夜はそちらに行きますから安心してください」 

「・・・安心か。戦闘面でも安心だな。俺がタンクでセリスがアタッカーで」

「タンクですか?何を溜めるのでしょうか?」

「ああ、俺が守ってセリスが攻撃って事だ」


 攻め手に欠ける俺に攻撃手段が一個増えたような感じだが、守らないといけない物も増えた。レオヴァイザーはより防御方面へに強化していこう。


 一応、遺跡の中も捜索したが、他にめぼしい物はなかった。ユニコーンを祀る建物だったのだろう。

今まで、なぜ見つからなかったかは知らないが、周辺にケルベロスやオルトロスなどの凶悪なモンスターがいるからかもしれない。


 ディオニュソスがモンスターを連れて行ったおかげか残りの森は順調に進むことが出来た。

俺やセリスがまだ光を纏っている事から、奴もまだ眩しいミラーボール状態なんだろう。

さぞ、寝不足だろう・・・・ざまぁ。


 進むこと約半日、森を抜けるとそこには湿地帯が広がっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 マグン湿地帯。世界樹の森の北に拡がる大陸最大級の湿地帯である。又、大型モンスターを超える、超大型モンスターが数多く生息する地として有名である。冒険者は湿地に足を取られ自由に行動出来ない事から、危険なモンスター達は野放しとなっていた。ヤマト達の次の目的地はそんな危険な湿地帯の中に唯一ある、ツクサ村だった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  

 出鼻を挫かれるとは、こういう事だろうか?湿地帯を通れない。

レオヴァイザーはホバー状態の為、水面を歩いても沈まなかった。だが、ユニコーンにホバー機能はない。

片足を水に入れたらズブズブと膝まで沈んでしまった。水の中は濁っているのでどこが深くなっているのかわからない。浅い場所も深い場所も同じ様な水の色をしていた。


「ん~これは危険だな」

「はい。ユニコーンは置いていきますか?」 

「ポポル!ユニコーンは泳げばいいと思う!!」

「泳ぐですか・・・試してみます」

「どこが深いかもわからないから泳げないだろう。そうだな・・・」


 結局、レオヴァイザーを獅子型にし騎乗してもらう事にした。見た目は白獅子に乗った女騎士だ。全高が上がった事でかなりのインパクトがある。今度、ユニコーンに乗った白騎士も試してみよう。ユニコーンが乗せてくれればだが。


 湿地をゆっくり進んでみるが問題ないようだ。段々速度を上げていく。


「ヤマト様。前方にアスピケドロンです」

「アスピポドロン?」

「亀だ!おいしそう!!」 

「おっきいね~お城はどこかな~」


 遥か先に巨大な亀が見える。高さは100m程だろうか。ゆっくり動いて湿地に首を突っ込んでいる。しかし亀を見ておいしそうだなんて、竜人族は何を食べて生活しているのだろうか? アップゥはワラサで見た、城の乗った亀を思い出したのだろう。見つからないうちに通り抜ける事にした。


「このスピードで二日程走れば、ツクサ村に着くみたいだ」

本当はツクサ村にツクサと言いたかったが・・・・やめておいた。


「二日もですか。出会わなければよいですが」

「何にだ?」 

「ヒポカンポスです。下半身が魚の馬でマグン湿地帯の主と言われています。気性が荒いと聞いていますので出会えば戦闘になるでしょう」


 そんな心配はする必要もなかった。湿地帯はヒポカンポスで埋め尽くされていたのだから。それは海岸で昼寝する沢山のトドやアザラシの様に寝そべっていた。気持ち悪いことに、禿げたおっさんの様な顔をしている。ヒポカンポスの大きさは獅子型のレオヴァイザーと同じ位ある。それが何千匹も昼寝しているので湿地が肌色に見える。


「みんな寝ているようだが」

「これだけ多いと隙間をぬって通るというのは出来ないですね」

「お昼寝してるね~」

「おいしそう!!!」


 おいしそう・・・ではない。モリオア国に行くのが怖くなってきたぞ。竜人族はいったい何を食べてるんだ。


 ナビ水晶を確認すると、この先ずっとこいつらが寝ている様だ。いないのは深い水の上だけだな。遠回りになるが避けて行こう。なるべく水草の生えていない深そうな場所を進む。あいつらが昼寝している内になんとか先へ進みたいものだが。


「大波だね~」

「え?波?セリス見えるか?」

「見えました!東の方から大きな波・・・いえヒポカンポスの大軍が迫って来てます。何かに追われている様です」

「いっぱい! おいしそう!!!!!」

「おいしそうじゃない!」


 ポポルにとってはステーキかお寿司が流れてきている様に見えるのだろうか?俺には禿げたおっさんの雪崩に見えるんだが。


「グランドデスホエールが来ます!」


 セリスがグランドデスホエールといったモンスターが見えて来る。硬そうな鱗を纏った巨大な緑色のシャチだ。一匹のヒポカンポスを口で捕まえると、尻尾でバレーボールの様にして遊んで、最後には口にパクッと放り込んだ。ヒポカンポスのおっさんをバレーボールにする位大きいところを見ると、全高は50m。全長は100mはある。湿地の水で体を濡らすとそのまま陸地を滑って来る。ものすごい速さだ。


 ズサーっと滑って来るグランドデスホイールに、ボーリングのピンのごとく吹き飛ばされるおっさん達。悪いが自然の摂理を邪魔する気はない。道が開けた今の内に先に行かせてもらおう。


「ヤマト様!!あそこにヒポカンポスの子供が!!」


 グランドデスホエールの滑り込む先に小さな禿げたおっさんがいた。止める間も無くユニコーンが白獅子から飛び降り、グランドデスホエールの前に立ちふさがる。


 すかさず、レオヴァイザー騎士へ変形させてユニコーンの前へ移動し、盾を構えグランドデスホエールの衝突へ備える。鈍い衝突音と共にレオヴァイザーが押されていくが全力で押し返す。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉおおお!!」

「ヤマト様!!!」


 レオヴァイザーの背中をユニコーンが押す。角が刺さってますよとは言いにくい。やがてグランドデスホエールは動きを止めた。自分がなぜ動きが止まったのか理解出来ないグランドデスホエールは、目をパチクリしている。正面にいる俺達のせいだと気づくと目を真っ赤にして怒り出した。


 グランドデスホエールにとってヒポカンポスを吹き飛ばすのはただの遊びだ。食事ではないグランドデスホールにとって唯一の遊びを邪魔されたのだ。だが、グランドデスホエールにも誤算があった。水の無い岸の上で止められてしまったので動けなくなってしまったのだ。


 グランドデスホエールが動けないと知ると、ヒポカンポスが集まって来て攻撃を始める。何十年。何百年と続けてきたかもしれない遊びが、たった一度の失敗で死につながったのだ。イイハナシカナー?


「見て下さい。このこ女の子みたいです」


セリスが助けたヒポカンポスの子供を見せてくれた。


どうみても禿げたおっさんです。本当にありがとうございました。




「おいしそう!!食べてもいい?」

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